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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】光学的な生理学的測定システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
A61B5/1455
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2017565276
(86)(22)【出願日】2016-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-08-30
(86)【国際出願番号】 US2016040190
(87)【国際公開番号】W WO2017004260
(87)【国際公開日】2017-01-05
【審査請求日】2019-06-26
(31)【優先権主張番号】62/188,430
(32)【優先日】2015-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500000212
【氏名又は名称】マシモ・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アマー・アル-アリ
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-147746(JP,A)
【文献】特表2013-515528(JP,A)
【文献】特開2009-106373(JP,A)
【文献】特開2004-344668(JP,A)
【文献】特開平09-173322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/145-5/1455
A61B 5/024-5/0245
G01N 21/35-21/359
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある波長の光を放射するエミッタと、
前記光を受光し、拡散させ、拡散光を放射するディフューザであって、前記放射される拡散光は患者の組織測定部位に向けられ、前記放射された拡散光が前記組織測定部位の表面へ分散される表面領域形状を画定する、ディフューザと、
前記放射された光を、前記患者の組織による減衰後に検出するように構成された検出器であって、前記検出された光に応じて少なくとも1つの信号を送信するようにさらに構成された検出器と、
前記組織測定部位に面する光吸収面と、開口部と、を有する検出器フィルタと、
を備えた、光学的な生理学的測定システムであって、
記開口部は、前記放射された拡散光が前記組織測定部位の前記表面へ分散されて画定された前記表面領域形状と同様の形状であることを特徴とする、光学的な生理学的測定システム。
【請求項2】
前記拡散光を、前記患者の組織による減衰後に受光し、前記受光した拡散光を集束させ、前記集束させた光を前記検出器の方向に放射する集束器をさらに備える、請求項1に記載の光学的な生理学的測定システム。
【請求項3】
前記検出された光に応じた、送信された少なくとも1つの前記信号を受信し、生理学的パラメータを決定するように構成されたプロセッサをさらに備える、請求項1または2に記載の光学的な生理学的測定システム。
【請求項4】
前記生理学的パラメータは動脈血酸素飽和度である、請求項3に記載の光学的な生理学的測定システム。
【請求項5】
前記ディフューザは、ガラスディフューザ、すりガラスディフューザ、ガラス玉ディフューザ、乳白ガラスディフューザ、および工学的に設計されたディフューザのうちの少なくとも1つを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の光学的な生理学的測定システム。
【請求項6】
前記ディフューザは、前記拡散光を略一定の強度プロファイルで放射する、請求項1から5のいずれか一項に記載の光学的な生理学的測定システム。
【請求項7】
前記表面領域形状は長方形である、請求項1に記載の光学的な生理学的測定システム。
【請求項8】
前記長方形の表面領域形状は、幅が0.25cm~3cmであり、長さが1cm~6cmである範囲内の寸法を有する、請求項7に記載の光学的な生理学的測定システム。
【請求項9】
前記長方形の表面領域形状は、幅が0.5cm~2cmであり、長さが1cm~4cmである範囲内の寸法を有する、請求項7に記載の光学的な生理学的測定システム。
【請求項10】
前記長方形の表面領域形状は、幅が1cmであり、長さが1.5cmの寸法を有する、請求項7に記載の光学的な生理学的測定システム。
【請求項11】
前記表面領域形状は正方形である、請求項1に記載の光学的な生理学的測定システム。
【請求項12】
前記正方形の表面領域形状は、0.25cm2から10cm2の範囲内の面積を有する、請求項11に記載の光学的な生理学的測定システム。
【請求項13】
ある波長の光を放射するエミッタと、
前記光を受光し、拡散させ、拡散光を放射するディフューザであって、前記放射される拡散光は患者の組織測定部位に向けられ、前記放射された拡散光が前記組織測定部位の表面へ分散される長方形の表面領域形状を画定する、ディフューザと、
前記放射された光を、前記患者の組織による減衰後に検出するように構成された検出器であって、前記検出された光に応じて少なくとも1つの信号を送信するようにさらに構成された検出器と、
を備えた、光学的な生理学的測定システムであって、
前記組織測定部位に面する光吸収面と、開口部とを備える検出器フィルタをさらに備え、前記開口部は寸法を有し、前記開口部の前記寸法は、前記長方形の形状の寸法に実質的に類似している、光学的な生理学的測定システム。
【請求項14】
前記集束器は、ガラス、すりガラス、ガラス玉、乳白ガラス、および複合放物集束器のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の光学的な生理学的測定システムまたは請求項2を引用する請求項3から6のいずれか一項に記載の光学的な生理学的測定システム。
【請求項15】
前記検出器フィルタの前記開口部は、前記拡散光が、前記組織測定部位によって減衰した後、または、前記組織測定部位から反射した後に、集束器によって受光されることを可能にするように構成される、請求項1から14のいずれか一項に記載の光学的な生理学的測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権出願に対する参照による組込み]
本出願は、本明細書において参照によって組み込まれている「Advanced Pulse Oximetry Sensor」と題された2015年7月2日出願の米国仮出願第62/188,430号からの米国特許法第119条(e)の下の優先権の利益を主張する。国外または国内の優先権主張が、本出願とともにファイルされた出願データシートで識別される任意およびすべての出願が、連邦規則法典第37巻1.57の下で参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、非侵襲的な光に基づく生理学的監視センサに関し、さらに詳しくは、種々の生理学的パラメータの中でも特に酸素飽和度の非侵襲性測定精度を高めるためのシステム、デバイス、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
分光学は、溶液の有機成分およびいくつかの無機成分の濃度を測定するための一般的な技術である。この技術の理論的な基礎は、ビール-ランバート法則である。これは、特定の波長λにおける経路長dλ、入射光の強度I0,λ、および吸光係数εi,λが分かっていると、溶液における吸収性物質の濃度ciを、溶液を通って伝わる光の強度によって決定できることを記述している。
【0004】
一般化された式では、ビール-ランバート法則は、次のように表現される。
【0005】
【数1】
【0006】
ここで、μα,λは、バルク吸収係数であり、単位長さ当たりの吸収の確率を表す。式1および式2を解くために必要とされる離散的な波長の最小数は、溶液内に存在する主要な吸収体の数である。
【0007】
この技術の実用的な応用の一つは、パルスオキシメトリである。これは、非侵襲性センサを利用して、種々の生理学的パラメータの中でも特に酸素飽和度および脈拍数を測定する。パルスオキシメトリは、患者の外部に取り付けられたセンサを依拠して、種々の生理学的パラメータの中でも特に、たとえば、動脈酸素飽和度のパーセント値を含む患者の血液成分および/または被検物質のような様々な生理学的パラメータを示す信号を出力する。センサは、1つまたは複数の波長の光線を組織部位へ伝えるエミッタと、組織部位内を流れる脈動動脈血による吸収後の光線の強度に対して応答する検出器とを有する。この応答に基づいて、プロセッサは、酸化ヘモグロビン(HbO2)と脱酸素化ヘモグロビン(Hb)との相対濃度を決定することにより酸素飽和度を導出する。これは、潜在的に危険な患者の酸素供給の減少の早期検出を提供できる。
【0008】
パルスオキシメトリシステムは一般に、患者モニタ、ケーブルのような通信媒体、ならびに/または、1つまたは複数の発光ダイオード(LED)および光検出器のような1つまたは複数の光エミッタおよび検出器を有する生理学的センサを含む。センサは、指、つま先、耳たぶ、鼻、手、足、または1つまたは複数のエミッタからの光が透過できる脈動血流を有する他の部位のような組織部位へ取り付けられる。検出器は、組織部位内を流れる脈動血による減衰または反射後の放射光に応答する。検出器は、検出器信号を、通信媒体を介してモニタへ出力する。モニタは、酸素飽和度(SpO2)および/または脈拍数のような生理学的パラメータの数的読出を提供するために、信号を処理する。パルスオキシメトリセンサは、Low Noise Optical Probeと題された米国特許第6,088,607号に説明されており、パルスオキシメトリ信号処理は、Signal Processing ApparatusおよびSignal Processing Apparatus and Methodと各々題された米国特許第6,650,917号および米国特許第6,699,194号に説明されており、パルスオキシメトリモニタは、Universal/Upgrading Pulse Oximeterと題された米国特許第6,584,336号に説明されており、これらすべては、カリフォルニア州アーヴィンのMasimo Corporationに譲渡され、各々はその全体が本明細書において参照によって組み込まれる。
【0009】
パルスオキシメトリシステムへもたらされる測定誤差の多くの原因が存在する。そのような誤差のいくつかの原因は、エミッタおよび検出器を含むパルスオキシメトリシステムの電子的な構成要素のみならず、患者間の化学的および構造的な生理学的相違を含む。測定誤差の別の原因は、光子の多重散乱の影響である。なぜなら、光子は、患者の組織(動脈血)を通過し、センサの光検出器へ到着するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第6,088,607号
【文献】米国特許第6,650,917号
【文献】米国特許第6,699,194号
【文献】米国特許第6,584,336号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
この開示は、限定しない例によって、酸素、カルボキシヘモグロビン、メトヘモグロビン、総ヘモグロビン、グルコース、タンパク質、脂質、それらのパーセンテージ(たとえば、飽和度)、脈拍数、かん流指数、酸素含有量、総ヘモグロビン、Oxygen Reserve Index(商標)(ORI(商標))のような血液成分、被検物質、および/または物質を測定するための、または、他の多くの生理学的に関連する患者の特徴を測定するための非侵襲性の方法、デバイス、およびシステムの実施形態を説明する。これら特徴は、たとえば脈拍数、水和作用、傾向情報、および分析等に関連させることができる。
【0012】
一実施形態では、光学的な生理学的測定システムは、1つまたは複数の波長の光を放射するように構成されたエミッタを含む。このシステムはまた、放射された光を受光し、受光した光を拡散させ、さらに、拡散光を、エミッタが組織測定部位に光を直接放射することによって透過される場合よりも大きな組織領域へ放射するように構成されたディフューザを含む。組織測定部位は、たとえば、指、手首等を含むことができる。システムはさらに、拡散光が、組織測定部位によって減衰したか、または、組織測定部位から反射した後に、拡散光を受光するように構成された集束器を含む。集束器はまた、受光した光を収集し、集束させ、集束させた光を検出器へ放射するように構成される。検出器は、集束した光を検出し、検出された光を示す信号を送信するように構成される。システムはまた、検出された光を示す、送信された信号を受信し、組織測定部位において、吸収量に基づいて、たとえば動脈酸素飽和度または他のパラメータのような関心対象の被検物質を判定するように構成されたプロセッサを含む。
【0013】
本開示のある実施形態では、ディフューザは、効率的かつ一定な照明を導くことができるガラス、すりガラス、ガラス玉、乳白ガラス、または、マイクロレンズベースの、帯域制限された、工学的に設計されたディフューザを含み、いくつかの実施形態では、ディフューザはさらに、放射された拡散光が組織測定部位の表面へ分散される表面領域形状を画定するように構成される。画定された表面領域形状は、非限定的な例では、とりわけ、実質的に長方形、正方形、円形、楕円形、または円環形である形状を含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、光学的な生理学的測定システムは、組織測定部位に面する光吸収面を有する光学フィルタを含む。光学フィルタはまた、拡散光が、組織測定部位によって減衰した後、集束器によって受光されることを可能にするように構成された開口部を有する。実施形態では、開口部は寸法を有し、開口部の寸法は、画定された表面領域形状に類似しており、これによって、放射された拡散光は組織測定部位の表面へ分散される。実施形態では、開口部は、画定された表面領域形状よりも大きな寸法を有し、これによって、放射された拡散光は組織測定部位の表面へ分散される。他の実施形態では、光学フィルタにおける開口部の寸法は、ディフューザ開口部と同じでないが、その寸法は検出器パッケージよりも大きい。
【0015】
本開示の他の実施形態では、集束器は、ガラス、すりガラス、ガラス玉、乳白ガラス、または、複合放物集束器を含む。いくつかの実施形態では、集束器は、先端を切り取られた円錐構造を有する円筒構造を備える。切り取られた部分は、検出器に隣接する。光集束器は、放射された光線を、組織測定部位による反射後に受光し、反射した光を検出器へ向けるように構成される。
【0016】
本開示のある実施形態によれば、プロセッサは、検出器によって検出された光の平均レベルを判定するように構成される。光の平均レベルは、組織測定部位における生理学的パラメータを決定するために使用される。
【0017】
別の実施形態によれば、患者の血液中の成分または被検物質を判定するための方法が開示される。この方法は、少なくとも1つの波長の光をエミッタから放射するステップと、ディフューザを用いて、放射された光を拡散させ、拡散光を、ディフューザから組織測定部位へ放射するステップと、拡散光が組織測定部位によって減衰した後、拡散光を集束器によって受光するステップと、受光した光を、集束器によって集束させ、集束させた光を、集束器から検出器へ放射するステップと、放射された集束した光を、検出器を用いて検出するステップと、検出された光に応じて、検出器から信号を送信するステップと、検出された光に応じた、送信された信号を、プロセッサによって受信するステップと、生理学的パラメータを決定するために、検出された光に応じた、受信した信号を、プロセッサによって処理ステップとを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、患者の血液中の成分または被検物質を判定するための方法は、放射された拡散光の散乱部分を、光吸収検出器フィルタを用いてフィルタリングするステップを含む。一実施形態によれば、光吸収検出器フィルタは、実質的に長方形の形状であり、幅が約1~5cmで、長さが約2~8cmの範囲の外寸を有し、放射された光が通過し得る開口部を有し、開口部は、幅が約0.25~3cmで、長さが約1~7cmの範囲の寸法を有する。別の実施形態では、光吸収検出器フィルタは、実質的に正方形の形状であり、約0.25~10cm2の範囲の外寸を有し、放射された光が通過し得る開口部を有し、開口部は、約0.1~8cm2の範囲の大きさを有する。さらに別の実施形態では、光吸収検出器フィルタは、実質的に長方形の形状であり、幅が約3cmで、長さが約6cmの外寸を有し、放射された光が通過し得る開口部を有し、開口部は、幅が約1.5cmで、長さが約4cmの寸法を有する。
【0019】
患者の血液中の成分または被検物質を判定するための方法のさらに別の実施形態では、ディフューザを用いて、放射された光を拡散させ、拡散光をディフューザから組織測定部位へ放射するステップは、ガラスディフューザ、すりガラスディフューザ、ガラス玉ディフューザ、乳白ガラスディフューザ、および工学的に設計されたディフューザのうちの少なくとも1つによって実行される。いくつかの実施形態では、放射される拡散光は、実質的に一定強度のプロファイルで放射される。そしていくつかの実施形態では、拡散光をディフューザから組織測定部位へ放射するステップは、放射された拡散光が組織測定部位の表面へ分散される表面領域形状を画定するように、放射された光を拡散させるステップを含む。
【0020】
また別の実施形態によれば、パルスオキシメトリが開示される。パルスオキシメトリは、1つまたは複数の波長で光を放射するように構成されたエミッタを含む。パルスオキシメトリはまた、放射された光を受光し、受光した光を拡散させ、組織測定部位に向けた拡散光を放射するように構成されたディフューザを含む。パルスオキシメトリはまた、放射された拡散光を、組織測定部位によって減衰したか、または、組織測定部位から反射した後に検出し、検出された光を示す信号を送信するように構成された検出器を含む。パルスオキシメトリはまた、送信された信号を受信し、点光源または点検出器を用いて実行され得る領域よりも広い測定部位領域上の組織測定部位における血液成分または被検物質の平均吸収率を判定するために、受信した信号を処理するように構成されたプロセッサを含む。いくつかの実施形態では、ディフューザはさらに、放射された拡散光が組織測定部位の表面へ分散される表面領域形状を画定するように構成され、検出器はさらに、放射された拡散光が組織測定部位の表面へ分散される、画定された表面領域形状に対応する検出領域を有するように構成される。いくつかの実施形態によれば、検出器は、検出領域をカバーするように構成された検出器のアレイを備える。さらに別の実施形態では、プロセッサはさらに、検出された光の平均を判定するように構成される。
【0021】
要約する目的のために、本開示のいくつかの態様、利点、および新規の特性が、本明細書において説明された。そのようなすべての利点は、必ずしも、本明細書で開示されたシステム、デバイス、および/または方法のどの特定の実施形態に従っても達成され得るようにする必要はないことが理解されるべきである。したがって、本明細書で開示された主題は、本明細書で教示または示唆され得る他の利点を達成する必要なしに、本明細書で教示されたような1つの利点、または、利点のグループを達成または最適化する方式で具体化または実行され得る。
【0022】
図面全体にわたって、参照符号は、参照された要素間の対応を示すために再使用され得る。図面は、その範囲を限定するためではなく、本明細書で説明された開示の実施形態を例示するために提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】エミッタが点光源として光線を放射するように構成された2次元パルスオキシメトリへの従来のアプローチを例示する図である。
図2】放射された光が図1に関して説明された点光源アプローチと比較して実質的に大きな体積の組織を照射するパルスオキシメトリに関する、開示された3次元アプローチを例示する図である。
図3】本開示の実施形態による3次元パルスオキシメトリセンサの概略的な側面図である。
図4A】本開示の実施形態による3次元パルスオキシメトリセンサの一部の平面図である。
図4B】動作位置に組織測定部位が加えられた、図4Aに図示される3次元パルスオキシメトリセンサの一部の平面図である。
図5】本開示の実施形態による3次元パルスオキシメトリセンサの平面図である。
図6】エミッタが点光源として光線を放射するように構成された反射型パルスオキシメトリへの従来の2次元アプローチを例示する図である。
図7A】本開示の実施形態による反射型3次元パルスオキシメトリセンサの簡略化された概略側面図である。
図7B図7Aの3次元反射型パルスオキシメトリセンサの簡略化された概略平面図である。
図8】本開示の実施形態による、モニタされた患者における1つまたは複数の血液被検物質を非侵襲的に測定することが可能な例示的なパルスオキシメトリシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、パルスオキシメトリへの2次元(2D)アプローチを有する従来のパルスオキシメトリセンサを概略的に例示する。例示されるように、エミッタ104は、点光源、すなわち、点とみなせるように寸法が無視できる光線源として、光線を放射するように構成される。このアプローチは、患者の組織測定部位102の3次元空間へ2次元分析モデルを適用するので、本明細書においては「2次元」パルスオキシメトリと称される。点光源は、画定される、自由に選択可能な、均質な光ビーム領域を特徴とする。LED点光源から放射された光ビームは、しばしば強い集束を呈する。これは通常、しばしば高い強度ダイナミクスを有する、境界が明瞭で、均一に照らされた照明スポットを生成することができる。例示的に、この例では指である組織測定部位102(または「サンプル組織」)の表面を見た場合、組織204の小さな点のような表面領域が、点光源によって照射される。いくつかの実施形態では、点光源の照射環状領域は、8乃至150ミクロンの範囲にある。例示的に、放射された点光源の光は、組織測定部位102に、光の点として入る。この光は、組織102を深さ方向に透過する際、線またはベクトルとして透過し、3次元構造、すなわち、患者の組織102内の2次元構築物を表す。
【0025】
点光源の使用は、光経路長における不安定性を低減すると考えられ、そのことはより正確なオキシメトリ測定結果につながる可能性がある。しかしながら、実際には、光子は直線経路を移動せず、代わりに、光粒子が散乱し、患者の血液中の様々な不規則な物体(たとえば、赤血球など)の間で方々に弾む。したがって、光子経路長は、とりわけ、測定部位102における組織の中または周囲の特定の移動に応じて変動する。この現象は「多重散乱」と称される。ある研究では、多重散乱の影響は、光子拡散分析の結果を、光経路長の判定において多重散乱を無視するビール-ランバート法則に基づく分析を使用して取得されたものと比較することによって検討された。研究は、赤光子と赤外光子とが移動した経路の平均長さの差分により、オキシメトリの較正曲線(健常者から取得された測定結果に基づく)が、パルスオキシメトリのために使用される2つの波長帯域における組織の合計減衰係数のみならず、脈動する動脈血による吸収にも敏感になることを発見した。
【0026】
図2は、放射された光が、図1に関して説明された2D点光源アプローチと比較して、測定部位102において、大きな体積の組織を照射する3次元(3D)パルスオキシメトリを実施するための開示されたシステム、デバイス、および方法を概略的に例示する。一実施形態では、組織測定部位102の表面を再び見ると、測定部位102の照射された表面領域206は、幅が約0.25~3cmで、長さが約1~6cmの範囲内の寸法を有する、実質的に長方形の形状である。別の実施形態では、測定部位102の照射された表面領域206は、実質的に長方形の形状であり、幅が約1.5cmで、長さが約2cmの寸法を有する。別の実施形態では、測定部位102の照射された表面領域206は、実質的に長方形の形状であり、幅が約0.5cmで、長さが約1cmの寸法を有する。別の実施形態では、測定部位102の照射された表面領域206は、実質的に長方形の形状であり、幅が約1cmで、長さが約1.5cmの寸法を有する。また別の実施形態では、測定部位102の照射された表面領域206は、実質的に正方形の形状であり、約0.25~9cm2の範囲の大きさを有する。いくつかの実施形態では、測定部位102の照射された表面領域206は、幅が約0.5~2cmであり、長さが約1~4cmの範囲内にある。もちろん、当業者であれば、照射された表面領域206の、他の多くの形状および寸法が使用され得ることを認識するであろう。有利なことに、表面領域206を有する組織測定部位102を照射することにより、ここで開示されるシステム、デバイス、および方法は、3次元分析モデルを、測定されている3次元構造、すなわち患者のサンプル組織102に適用する。
【0027】
ビール-ランバート法則によると、物質によって吸収される光の量は、照射された溶液(すなわち、動脈血)における光吸収物質の濃度に比例する。有利なことに、より大きな体積の組織102を照射することによって、組織102によって減衰した(または、反射した)、より大きなサンプルサイズの光が測定される。より大きな3Dサンプルは、患者の血液を通過すると、図1に関して上記で説明した2D点光源アプローチと比較して、放射された光の完全な相互作用をよりよく表すデータセットを提供する。単一の点よりも実質的に大きな表面領域上で検出されるので、検出された光の平均を取ることによって、開示されたパルスオキシメトリシステム、デバイス、および方法は、組織によって吸収された放射光のより正確な測定結果をもたらす。これは、より正確な酸素飽和度測定結果に至る。
【0028】
図3は、本開示の実施形態に従うパルスオキシメトリ3Dセンサ300の側面図を概略的に例示する。例示された実施形態では、3Dセンサ300は、組織測定部位102を照射し、組織測定部位102によって減衰した後の放射された光を検出する。他の実施形態では、たとえば、図7Aおよび図7Bに関して以下に説明されるように、3Dセンサ300は、組織測定部位102によって反射した光を検出するように配置され得る。3Dセンサ300は、エミッタ302、光ディフューザ304、光吸収検出器フィルタ306、光集束器308、および検出器310を含む。いくつかのオプションの実施形態では、3Dセンサ300はさらに反射体305を含む。反射体305は、金属反射体または他のタイプの反射体であることができる。反射体305は、コーティング、フィルム、レイヤ、または他のタイプの反射体であることができる。反射体305は、エミッタ302からの光が、光ディフューザ304の側面または上部から逃げるのではなく、組織内に向けられるように、放射光が、光ディフューザ304の上部から放射されることを阻止するための反射体として作用し得る。それに加えて、反射体305は、最終的には検出された光の中で誤差を引き起こし得る環境光がディフューザ304へ入ることを阻止できる。反射体305はまた、検出器302からの光が、光ディフューザ304から逃げる可能性があり、患者の組織102を通過することなく、検出器310へのセンサ確保メカニズムの周囲でパイピングされる場合に生じ得る光パイピングを阻止する。
【0029】
エミッタ302は、組織測定部位102に向けて伝えられる光線の光線源の役割を果たすことができる。エミッタ302は、LED、レーザダイオード、適切な周波数選択フィルタを備えた白熱電球、これらの組合せ等のような1つまたは複数の光線源を含むことができる。一実施形態では、エミッタ302は、可視および近赤外の光線を放射することが可能な光源のセットを含む。いくつかの実施形態では、エミッタ302は、約650nmおよび約940nmの波長の各々において、赤および赤外の光線を伝える。いくつかの実施形態では、エミッタ302は、単一の光線源を含む。
【0030】
光ディフューザ304は、エミッタ302から放射された光線を受光し、図2に図示される領域206のような領域上に光線を拡散させる。いくつかの実施形態では、光ディフューザ304は、エミッタ302から入力された光ビームを均質化し、受光した光の出力強度プロファイルを整形し、放射された光を組織測定部位102へ分散させる方式(たとえば、形状またはパターン)を定義し得るビーム整形器である。光ディフューザ304を実現するために使用され得る材料は、いくつか例を挙げると、限定はしないが、白い表面、ガラス、すりガラス、ガラス玉、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標)としても知られている)、乳白ガラス、および灰色ガラスを含む。それに加えて、工学的に設計されたディフューザは、強度および分散に関してカスタマイズされた光整形を提供することによって、ディフューザ304を実現するために使用され得る。そのようなディフューザは、たとえば、エネルギー効率に優れた方式で、(たとえば、照射された表面領域206のような)指定されたターゲット領域にわたって実質的に一定の照明を導光し得る。工学的に設計されたディフューザの例は、患者の組織の表面の全体にわたって放射光を拡散させるように設計された特定の形状、パターン、またはテクスチャを用いて成形されたプラスチックを含むことができる。
【0031】
有利なことに、ディフューザ304は、点光源の形態で放射された光を受光し、この光を、組織測定部位102の表面によって定義された平面の所望された表面領域に適合させるように、拡散させることができる。実施形態では、ディフューザ304は、放射された光を、ガウシアン強度プロファイルで拡散させるすりガラスで作られる。別の実施形態では、ディフューザ304は、ガラス玉を含む。いくつかの実施形態では、ディフューザ304は、放射光を、ランバートパターンで拡散させるように構築される。ランバートパターンは、放射強度が分散の領域全体にわたって実質的に一定であるものである。そのような1つのディフューザ304は、乳白ガラスから作られる。乳白ガラスは、すりガラスに類似しているが、光を均一に拡散させるために、1つの面が乳白のコーティングで被覆されている。一実施形態では、ディフューザ304は、放射された光を、平面の表面(たとえば、組織測定部位102の表面)に、あらかじめ定義された形状(たとえば、長方形、正方形、または円)で、実質的に一定の強度プロファイルおよびエネルギー分布で分散させることができる。いくつかの実施形態では、この効率、すなわち、ディフューザ304によって伝えられる光の量は、エミッタ302によって放射された光の70%超である。いくつかの実施形態では、この効率は、放射された光の90%超である。当該技術分野において知られている他の光学素子が、ディフューザ304のために使用され得る。
【0032】
一実施形態では、ディフューザ304は、幅が約0.5~2cmで、長さが約1~4cmの範囲内の寸法を有する実質的に長方形の形状を有する。別の実施形態では、ディフューザ304の実質的に長方形の形状は、幅が約0.5cmで、長さが約1cmの寸法を有する。別の実施形態では、ディフューザ304の実質的に長方形の形状は、幅が約1cmで、長さが約1.5cmの寸法を有する。さらに別の実施形態では、ディフューザ304は、約0.25~10cm2の範囲の大きさの、実質的に正方形の形状を有する。
【0033】
平面図として図4Aにも描写されている光吸収検出器フィルタ306は、放射された光が、組織測定部位102によって減衰した後に通過し得る開口部402を有する平面の表面である。描写された実施形態では、開口部402は、照射された表面領域206と実質的に類似の寸法を有する長方形形状である。一実施形態によれば、光吸収検出器フィルタは、実質的に長方形の形状であり、幅が4cmで、長さが8cmの外寸を有し、放射光が通過し得る開口部を有し、開口部は、幅が2cmで、長さが5cmの寸法を有する。別の実施形態では、光吸収検出器フィルタは、実質的に長方形の形状であり、幅が1~3cmで、長さが2~8cmの範囲の外寸を有し、放射光が通過し得る開口部を有し、開口部は、幅が0.25~2cmで、長さが1~4cmの範囲の寸法を有する。また別の実施形態では、光吸収検出器フィルタは、実質的に長方形の形状であり、幅が3cmで、長さが6cmの外寸を有し、放射光が通過し得る開口部を有し、開口部は、幅が1.5cmで、長さが4cmの寸法を有する。
【0034】
光吸収フィルタ306の上面(組織測定部位102およびエミッタ302に面する)は、たとえば黒色顔料など、光を吸収する材料で被覆されている。他の多くのタイプの光吸収材料が当該技術分野においてよく知られており、検出器フィルタ306とともに使用され得る。動作中、エミッタ302から放射された光は、3Dセンサ300の近隣部分へ向けて、組織測定部位102(または、3Dセンサ300内の他の構造)から反射させることができる。3Dセンサ300のこれら近隣部分が反射面を有していれば、光は組織測定部位102へ反射して戻り、この組織の中を進み、検出器310に到達する可能性がある。そのような多重散乱の結果、検出された光の大半よりも経路長が著しく長い光子を検出する可能性がある。これによって、パルスオキシメトリシ3Dセンサ300の測定結果の精度に影響する、経路長の変動を招く。有利なことに、光吸収フィルタ306は、このようにして反射した放射光の量を低減または削減する。なぜなら、光吸収フィルタ306は、そのような反射光を吸収することによって、散乱イベントの連鎖を止めるからである。いくつかの実施形態では、反射性多重散乱の影響をさらに減少させるために、3Dセンサ300の他の部分のセンサに面する表面が、光吸収材料に覆われる。
【0035】
光集束器308は、組織測定部位102によって減衰した後の放射された光線を受光し、分散した光線を収集し、集束させ、収集し、集束させた光線を検出器310へ向けるための構造である。一実施形態では、光集束器308は、すりガラスまたはガラス玉で作られる。いくつかの実施形態では、光集束器308は、複合放物集束器を含む。
【0036】
図1に関して上記で説明されたように、検出器310は、組織測定部位102からの光を捕捉し、測定する。たとえば、検出器310は、測定部位102における組織によって減衰した、エミッタ302から伝えられた光を捕捉し、測定することができる。検出器310は、捕捉または測定した光に応じて検出信号を出力することができる。検出器310は、1つまたは複数のフォトダイオード、フォトトランジスタ等を使用して実装され得る。それに加えて、複数の検出器310は、組織測定部位から減衰または反射した光を捕捉するために、照射される表面領域208に対応する空間構成を有するアレイ状に配置することができる。
【0037】
図4Aを参照すると、3Dセンサ300の一部の平面図が提供される。光吸収材料で被覆された上面を有する光吸収検出器フィルタ306が例示される。光吸収材料は、黒い不透明な材料もしくはコーティング、または他の任意の暗い色、または光を吸収するように構成されたコーティングであることができる。それに加えて、光が、長方形の開口部402を通過し、光集束器308へ、そして検出器310へ向かうことができるように、長方形の開口部402が、光集束器308(想像線で図示される)および検出器310に対して配置される。図4Bは、動作位置に組織測定部位102が追加された、図4Aにおけるような3Dセンサ300の一部の平面図を例示する。したがって、長方形の開口部402、光集束器308、および検出器310は、組織測定部位102の下にあるものとして想像線で図示される。図4Aおよび図4Bでは、長方形の開口部402の寸法よりも著しく大きな寸法を有するように、光集束器308が図示される。他の実施形態では、光集束器308、長方形の開口部402、および照射面領域206の寸法は、実質的に類似している。
【0038】
図5は、本開示の実施形態に従う3Dパルスオキシメトリセンサ500の平面図を例示する。3Dセンサ500は、患者の指102の上に装着されるように構成される。3Dセンサ500は、3Dセンサ500の中心部分508から外側に延びる正面フラップ504および裏面フラップ506を有する粘着性基板502を含む。中心部分508は、図3図4A、および図4Bに関して説明された3Dパルスオキシメトリセンサ300の構成要素を含む。粘着性基板502の正面側に、エミッタ302と光ディフューザ304とが配置される。粘着性基板502の裏面側に、光吸収検出器フィルタ308、光集束器308、および検出器310が配置され、使用中、粘着性基板の正面部分が折りたたまれて患者の指102の先端の上に重ねられると、エミッタ302および光ディフューザ304が、測定部位102、フィルタ306、光集束器308、および検出器310と整列するように、組織測定部位102となる患者の指が長方形の開口部402の上方に配置される。一旦整列が確立されると、正面フラップ504および裏面フラップ506は、粘着性基板502が患者の皮膚と3Dセンサ500との間の確実な接触を提供するように、指測定部位102に巻くことができる。図8に関して説明されるように、図5はまた、3Dセンサ500をモニタ809へ接続するために使用されるセンサコネクタケーブル510の例も示す。
【0039】
図6は、エミッタが点光源として光線を放射するように構成された反射型パルスオキシメトリへの従来の2Dアプローチの簡略化された概略例示である。反射型パルスオキシメトリは、エミッタと検出器とが、組織測定部位102の同じ側に配置される方法である。光は、組織測定部位102へ放射され、減衰する。放射された光は、組織102内を通過し、その後、組織測定部位102のエミッタと同じ側へ反射する。図6に例示されるように、描写された反射型2Dパルスオキシメトリセンサ600は、エミッタ602、遮光部606、および検出器610を含む。エミッタ602と検出器610とは、組織測定部位102の同じ側に配置されるので、遮光部606は必要である。したがって、遮光部606は、組織測定部位102に入らなかった入射放射光が、検出器610に到達することを阻止する。描写された2Dパルスオキシメトリセンサ600は、点光源として光を放射するように構成される。図6に描写されるように、エミッタ602から、組織測定部位102を通じて、検出器610へ至る放射される光の光経路620の簡略化された例示が提供される。特に、点光源の光が放射され、点光源の光が検出される。図1に関して上記で論じたように、点光源の使用は、結果的に、多重散乱現象の結果生じる経路長の不安定性による実質的な測定誤差になる可能性がある。2D点光放射源によって提供されるサンプル空間は、経路長の不安定性を考慮するのに十分な長さではなく、これは測定結果を歪ませる。
【0040】
図7Aおよび図7Bは各々、本開示の実施形態に従う3D反射型パルスオキシメトリセンサ700の簡略化された概略側面図および概略平面図である。例示された実施形態では、3Dセンサ700は、組織測定部位102を照射し、測定部位102によって反射した放射光を検出する。エミッタ702および検出器710が組織測定部位102の同じ側に配置されるので、3Dセンサ700は、たとえば手首のような、比較的平らな表面を有する患者の身体の一部上に配置され得る。3Dセンサ700は、エミッタ702、光ディフューザ704、遮光部706、光集束器708、および検出器710を含む。
【0041】
以前に説明されたように、エミッタ702は、組織測定部位102に向かって伝えられた光線の光源の役割を果たすことができる。エミッタ702は、1つまたは複数の光線の光源を含むことができる。そのような光線の光源は、LED、レーザダイオード、適切な周波数選択フィルタを備えた白熱電球、これらの組合せ等を含むことができる。一実施形態では、エミッタ702は、可視および近赤外の光線を放射することが可能な光源のセットを含む。いくつかの実施形態では、エミッタ702は、それぞれ約650nmおよび約940nmの波長の各々で赤および赤外の光線を伝える。いくつかの実施形態では、エミッタ702は、単一の光線の光源を含む。
【0042】
光ディフューザ704は、エミッタ302から放射された光線を受光し、図7Bに描写されるように、光ディフューザ704によって輪郭が描かれる領域のような、広い、ドーナッツ形状の領域全体にわたって光線を均質に拡散させる。有利なことに、ディフューザ704は、2D点光源の形態(または、他の任意の形態)で放射された光を受光することができ、組織測定部位102の表面によって定義される平面上の所望の表面領域に適合させるために、この光を拡散させることができる。一実施形態では、ディフューザ704は、すりガラスまたはガラス玉で作られる。当業者であれば、他の多くの材料が光ディフューザ704を作るために使用され得ることを理解するであろう。
【0043】
遮光部706は、光集束器708および検出器710のための光分離チャンバを形成するようにサイズ設定および整形されたカバー部707を有する円環リングを含む(例示の目的のため、遮光部カバー707は図7Bには例示されない)。遮光部706およびカバー707は、光集束器708および検出器710を光学的に分離する任意の材料から作られ得る。遮光部706およびカバー708によって形成された光分離チャンバは、検出器710によって検出された光のみが、組織測定部位から反射した光であることを保証する。
【0044】
光集束器708は、先端が切り取られた円錐構造の円筒構造であり、切り取られた部分は、検出器710に隣接している。光集束器708は、組織測定部位102によって反射された後の放射された光線を受光し、反射光を検出器710へ向けるように構成される。実施形態では、光集束器708は、すりガラスまたはガラス玉から作られる。いくつかの実施形態では、光集束器708は、複合放物集束器を含む。
【0045】
以前に説明したように、検出器710は、組織測定部位102からの光を捕捉し、測定する。たとえば、検出器710は、測定部位102における組織から反射した、エミッタ702から伝えらえた光を捕捉し、測定することができる。検出器710は、捕捉または測定した光に応じて、検出器信号を出力することができる。検出器710は、1つまたは複数のフォトダイオード、フォトトランジスタ等を使用して実装され得る。それに加えて、組織測定部位からの反射光を捕捉するために、光集束器708によって図7Bに描写された照射表面領域に対応する空間構成を有するアレイ状に、複数の検出器710が配置され得る。
【0046】
有利なことに、図7Aに例示された光経路720は、光ブロッカ706およびカバー707によって形成された光分離チャンバに入る反射光の実質的なサンプルを描写する。以前に論じられたように、組織によって吸収された放射光のより正確な測定結果を導出するために、(2D点光源アプローチを使用して収集された反射光と比較して)反射光の大きなサンプルが、検出光の平均を取るための機会を提供する。これは、より正確な酸素飽和度測定結果に至る。
【0047】
次に図7Bを参照すると、図示の容易さのためにエミッタ702と遮光部カバー707との両方が削除された3Dセンサ700の平面図が例示される。外側のリングは、光ディフューザ704の設置領域を例示する。光は、エミッタ702(図7Bでは図示せず)から放射されると、均質的に拡散され、組織測定部位102へ向けられる。遮光部706は、入射光が、検出器710によって感知されることを回避するために、光分離チャンバの環状壁を形成する。遮光部カバー707は、入射光が、上部から光分離チャンバへ入ることを阻止する。光集束器710は、組織測定部位102からの反射光を収集し、反射光を、3Dセンサ700の中心にある検出器710に向かって上方へ送る。
【0048】
図8は、本明細書においてパルスオキシメトリシステム800とも称され得る光学的な生理学的測定システム800の例を示す。いくつかの実施形態では、パルスオキシメトリシステム800は、酸素、カルボキシヘモグロビン、メトヘモグロビン、総ヘモグロビン、グルコース、タンパク質、脂質、それらのパーセンテージ(たとえば、飽和度)、脈拍数、かん流指数、酸素含有量、総ヘモグロビン、Oxygen Reserve Index(商標)(ORI(商標))、または他の多くの生理学的に関連する患者特徴のような血液被検物質を非侵襲性に測定する。これらの特徴は、たとえば脈拍数、水和作用、傾向情報、および分析等に関連する場合がある。システム800はまた、患者の健康の状態または傾向を判定する際に役立つ追加の血液被検物質および/または他の生理学的パラメータを測定することができる。
【0049】
パルスオキシメトリシステム800は、測定部位102において組織によって減衰した光線を検出することによって、少なくとも部分的に、被検物質濃度を測定することができる。測定部位102は、指、足、耳たぶ、手首、額等のような患者の身体における任意の場所であることができる。
【0050】
パルスオキシメトリシステム800は、処理デバイスまたは生理学的モニタ809へ結合されたセンサ801(または複数のセンサ)を含むことができる。一実施形態では、センサ801およびモニタ809は、単一のユニットへ共に統合される。別の実施形態では、センサ801およびモニタ809は、互いに離れており、ワイヤ接続またはワイヤレス接続を介するなど、任意の適切な方式で互いに通信する。センサ801およびモニタ809は、ユーザまたは介護人の利便性のため、保管の容易さのため、衛生問題等のために、互いに対して着脱可能とすることができる。
【0051】
図8に示される描写された実施形態では、センサ801は、エミッタ804、検出器806、およびフロントエンドインターフェース808を含む。エミッタ804は、測定部位102へ伝えられる光線の光源の役割を果たすことができる。エミッタ804は、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード、適切な周波数選択フィルタを備えた白熱電球、これらの組合せ等のような1つまたは複数の光線源を含むことができる。一実施形態では、エミッタ804は、可視および近赤外の光線を放射することが可能な光源のセットを含む。
【0052】
パルスオキシメトリシステム800はまた、エミッタ804を駆動するドライバ811を含む。ドライバ811は、モニタ809によって制御される回路等であることができる。たとえば、ドライバ811は、エミッタ804に電流のパルスを提供することができる。一実施形態では、ドライバ811は、交互方式のような段階的な様式でエミッタ804を駆動する。ドライバ811は、比較的良好に組織を透過できるいくつかの波長、および、組織に著しく吸収される傾向のある他の波長に対して、一連のパルスを用いてエミッタ804を駆動することができる。様々な実施形態において、種々様々な他の駆動電力および駆動方法が使用され得る。ドライバ811は、エミッタ804から放射される光線のパルスのタイミングにおけるジッタを最小化または低減するために、センサ801の他の部分と同期され得る。いくつかの実施形態では、ドライバ811は、変動が約10ppm未満のパターンで光線を放射するようにエミッタ804を駆動することができる。
【0053】
検出器806は、組織測定部位102からの光を捕捉し、測定する。たとえば、検出器806は、測定部位102の組織において減衰した、または、反射したエミッタ804から伝えられた光を捕捉し、測定することができる。検出器806は、捕捉し、測定した光に応じて、検出器信号107を出力することができる。検出器806は、1つまたは複数のフォトダイオード、フォトトランジスタ等を使用して実装され得る。いくつかの実施形態では、検出器806は、患者の組織測定部位102からの光を捕捉し、測定するために、検出器パッケージ内に実装される。検出器パッケージは、リードへ取り付けられ、封入体に囲まれたフォトダイオードチップを含むことができる。いくつかの実施形態では、検出器パッケージの大きさは、約2平方センチメートルである。他の実施形態では、検出器パッケージの寸法は、幅が約1.5センチメートル、長さが約2センチメートルである。
【0054】
フロントエンドインターフェース808は、検出器806の出力を適応させるインターフェースを提供し、出力は、所望される生理学的パラメータに対応する。たとえば、フロントエンドインターフェース808は、検出器806から受信した信号807を、モニタ809によって、たとえば、モニタ809における信号プロセッサ810によって、処理できる形式へ適応させることができる。フロントエンドインターフェース808は、センサ801、モニタ809、接続ケーブル(使用される場合)、これらの組合せ等において組み込まれた構成要素を有することができる。フロントエンドインターフェース808の場所は、構成要素のために所望される空間、所望されるノイズ低減またはノイズ制限、所望される熱低減または熱制限等を含む様々な要因に基づいて選択され得る。
【0055】
フロントエンドインターフェース808は、バス、ワイヤ、電気ケーブルまたは光ケーブル、フレックス回路、または他のいくつかの形態の信号接続を使用して、検出器806、および、信号プロセッサ810へ結合され得る。フロントエンドインターフェース808はまた、検出器806のような様々な構成要素と少なくとも部分的に統合され得る。たとえば、フロントエンドインターフェース808は、検出器806と同じ回路基板上にある1つまたは複数の集積回路を含むことができる。他の構成も使用され得る。
【0056】
図8に図示されるように、モニタ909は、信号プロセッサ810と、ディスプレイ812のようなユーザインターフェースとを含むことができる。モニタ809はまた、記憶デバイス814およびネットワークインターフェース816のようなオプションの出力を単独で、または、ディスプレイ812と組み合わせて含むことができる。一実施形態では、信号プロセッサ810は、検出器806から受信した信号に基づいて、所望の被検物質の測定結果を判定する処理ロジックを含む。信号プロセッサ810は、1つまたは複数のマイクロプロセッサまたはサブプロセッサ(たとえば、コア)、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、これらの組合せ等を使用して実装され得る。
【0057】
プロセッサ信号810は、センサ801の動作を制御する様々な信号を提供することができる。たとえば、信号プロセッサ810は、ドライバ811へエミッタ制御信号を提供することができる。この制御信号は、エミッタ804から放射されるパルスのタイミングにおけるジッタを同期、最小化、または低減するために有用であり得る。したがって、この制御信号は、エミッタ804から放射された光線パルスを正確なタイミングおよび一貫したパターンに従わせるために有用であり得る。たとえば、トランスインピーダンスに基づくフロントエンドインターフェース808が使用される場合、信号プロセッサ810からの制御信号は、エイリアシング、クロストーク等を回避するために、アナログデジタル変換器(ADC)との同期を提供することができる。さらに図示されるように、オプションのメモリ813が、フロントエンドインターフェース808および/または信号プロセッサ810に含まれ得る。このメモリ813は、種々の用途の中でも特に、フロントエンドインターフェース808および/または信号プロセッサ810のためのバッファまたは記憶場所の役割を果たすことができる。
【0058】
ユーザインターフェース812は、パルスオキシメトリシステム800のユーザへ提示するために、たとえば、ディプレイに出力を提供することができる。ユーザインターフェース812は、タッチスクリーンディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、有機LEDディスプレイ等として実装され得る。代替実施形態では、パルスオキシメトリシステム800は、ユーザインターフェース812なしで提供され得るものであり、単に個別のディスプレイまたはシステムに出力信号を提供することができる。
【0059】
記憶デバイス814およびネットワークインターフェース816は、モニタ809に含まれ得る他のオプションの出力接続を表す。記憶デバイス814は、メモリデバイス、ハードディスクストレージ、EEPROM、フラッシュドライブ等のような任意のコンピュータ可読媒体を含むことができる。信号プロセッサ810または、モニタ809の別のプロセッサによって実行され得る様々なソフトウェアアプリケーションおよび/またはファームウェアアプリケーションは、記憶デバイス814に記憶され得る。ネットワークインターフェース816は、シリアルバスポート(RS-232/RS-485)、ユニバーサルシリアルバス(USB)ポート、イーサネットポート、ワイヤレスインターフェース(たとえば、内部ワイヤレスカードを含む任意の802.1xインターフェースのようなWiFi)、または、モニタ809が他のデバイスと通信し、データを共有することを可能にする他の適切な通信デバイスであることができる。モニタ809はまた、ユーザインターフェース812を出力するために、データ通信を制御するために、データ傾向を計算するために、または、他の動作を実行するために、マイクロプロセッサ、グラフィックプロセッサ、またはコントローラのような、図示されない他の様々な構成要素を含むことができる。
【0060】
描写された実施形態には図示されていないが、パルスオキシメトリシステム800は、他の様々な構成要素を含むことができるか、または、異なる方式で構成され得る。たとえば、センサ801は、組織測定部位102の同じ側にエミッタ804と検出器806との両方を有することができ、被検物質を測定するために反射率を使用することができる。
【0061】
先述した開示は、いくつかの好適な実施形態に関して説明されているが、本明細書で説明されたものとは異なる他の多くのバリエーションが、当業者に明らかになるであろう。
【0062】
とりわけ、「できる」、「かもしれない」、「し得る」、「たとえば」等のように、本明細書で使用されている条件文は、具体的に別の意味が述べられていない、または、使用される際に文脈の中で別の意味で理解されないのであれば、一般に、いくつかの特徴、要素、および/または状態を、いくつかの実施形態が含む一方、他の実施形態は含まないことを伝えることが意図される。したがって、そのような条件文は、特徴、要素、および/もしくは状態が、1つまたは複数の実施形態のために必要とされる任意の手法にあること、または、これらの特徴、要素、および/もしくは状態が、任意の特定の実施形態に含まれるかどうか、または実行されるべきであるかどうかを、1つまたは複数の実施形態が、著者による入力またはプロンプトを伴って、または伴わずに決定するためのロジックを必ず含むことを示唆するようには一般には意図されていない。「備える」、「含む」、「有する」等のような用語は、同意語であり、包括的にオープンエンド様式で使用され、追加の要素、特徴、行為、動作等を排除しない。また、「または」という用語は、たとえば、要素のリストを接続するために使用される場合、「または」という用語が、リスト内の要素のうちの1つ、いくつか、またはすべてを意味するように、包括的な意味で(かつ排他的な意味ではなく)使用される。さらに、「各々」という用語は、本明細書では、通常の意味を有することに加えて、「各々」という用語が適用される要素の集合の任意の部分集合を意味することができる。
【0063】
上記の詳細説明は、様々な実施形態へ適用されるものとして新規の特徴を図示、説明、および指摘しているが、例示されたシステム、デバイス、またはアルゴリズムの形態および詳細における様々な省略、置換、および変更が、本開示の主旨から逸脱することなくなされ得ることが理解されるであろう。認識されるように、いくつかの特徴は他と分離して使用または実現され得るため、本明細書で説明された開示のいくつかの実施形態は、本明細書で延べられる特徴および利点を必ずしもすべては提供しない形態として具体化され得る。
【0064】
本明細書における「および/または」という用語は、開示がAのみ、Bのみ、AとBとの両方とも、または、AまたはBを二者択一的に含むが、AとBとの両方を必要とする訳ではなく、または、Aのうちの1つ、または、Bのうちの1つを必要とする、最も広く、最も限定的でない意味を有する。本明細書で使用される場合、A、B、「および」C「のうちの少なくとも1つ」は、非排他的な論理orを使用して、論理的なAまたはBまたはCを意味するように解釈されるべきである。
【0065】
本明細書において説明された装置および方法は、1つまたは複数のプロセッサによって実行される1つまたは複数のコンピュータプログラムによって実施され得る。コンピュータプログラムは、非一時的な有形のコンピュータ可読媒体に記憶されたプロセッサ実行可能な命令を含む。コンピュータプログラムはまた、記憶されたデータをも含み得る。非一時的な有形のコンピュータ可読媒体の限定しない例は、不揮発性メモリ、磁気ストレージ、および光ストレージである。先述した開示は、いくつかの好適な実施形態に関して説明されているが、本明細書の開示から他の実施形態が当業者に明らかになるであろう。それに加えて、他の組合せ、省略、代替、および変更が、本明細書の開示の観点から当業者に明らかになるであろう。したがって、本発明は、好適な実施形態の説明によって限定されることは意図されておらず、特許請求の範囲への参照によって定義されるべきである。
【0066】
それに加えて、この明細書において述べられたすべての出版物、特許、および特許出願は、本明細書では、あたかも個別の出版物、特許、または特許出願がそれぞれ参照によって組み込まれるように、具体的かつ個別に示されているのと同じ程度に参照によって組み込まれる。
【符号の説明】
【0067】
102 組織測定部位
104 エミッタ
206 表面領域
300 パルスオキシメトリセンサ
302 エミッタ
304 ディフューザ
305 反射体
306 光吸収検出器フィルタ
308 光吸収検出器フィルタ
310 検出器
402 開口部
502 粘着性基板
504 正面フラップ
508 中心部分
506 裏面フラップ
510 センサコネクタケーブル
600 パルスオキシメトリセンサ
602 エミッタ
606 光ブロック
610 検出器
620 光経路
700 反射型パルスオキシメトリセンサ
702 エミッタ
704 光ディフューザ
706 遮光部
707 遮光部カバー
708 光集束器
710 検出器
720 光経路
800 パルスオキシメトリシステム
801 センサ
804 エミッタ
806 検出器
807 信号
808 フロントエンドインターフェース
809 モニタ
810 信号プロセッサ
811 ドライバ
812 ユーザインターフェース
813 メモリ
814 記憶装置
816 ネットワークインターフェース
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8