(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】造形ヘッド
(51)【国際特許分類】
B65D 83/20 20060101AFI20220114BHJP
B05B 9/04 20060101ALI20220114BHJP
B65D 83/14 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B65D83/20
B05B9/04
B65D83/14 220
(21)【出願番号】P 2018035654
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2020-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 舞
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-128372(JP,A)
【文献】特開2008-001381(JP,A)
【文献】特開2007-106490(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0354230(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/20
B05B 9/04
B65D 83/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が吐出される吐出孔の上方に配設されると共に、上下方向に貫通する成形孔が形成された頂壁部を有し、前記頂壁部のうち上方を向く造形面に前記成形孔を通過した内容物を吐出させる外装体と、
前記外装体内に配設され、前記外装体に対して上下方向に移動自在である中皿と、
前記中皿に固定されて上面が前記頂壁部のうち下方を向く供給面に近接または当接しており、前記中皿を前記外装体に対して下方移動させることによって、前記供給面との間に前記吐出孔からの内容物を前記供給面に沿って拡散させて前記成形孔に供給する拡散室を画成する含浸体と、
を備え、
前記含浸体には、上下方向に貫通し、前記吐出孔と連通する連通孔が形成されており、
前記中皿には、前記連通孔に挿入された案内筒部が設けられており、
前記拡散室の内容物が前記成形孔を通過することによって前記造形面に造形物を形成することを特徴とする造形ヘッド。
【請求項2】
前記中皿には、前記供給面に当接して前記含浸体の変形を規制する変形規制片が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の造形ヘッド。
【請求項3】
前記頂壁部の前記造形面には、上面視で前記成形孔を囲む突出壁部が延設されていることを特徴とする
請求項1または2に記載の造形ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されているような、内容物が吐出される吐出孔の上方に配設されると共に、上下方向に貫通する造形孔が形成された頂壁部を有し、頂壁部のうち上方を向く造形面に成形孔を通過した内容物を吐出させる外装体と、外装体内に配設され、頂壁部のうち下方を向く供給面との間に吐出孔からの内容物を造形面に沿って拡散させて成形孔に供給する拡散室を画成する中皿と、を備える造形ヘッドが知られている。このような造形ヘッドでは、拡散室の内容物が成形孔を通過することによって造形面に造形物を形成している。なお、造形物は、少なくとも一定時間にわたって形状を保持可能なものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような造形ヘッドでは、造形物を経時的に成形孔を通して供給面側に戻すことができなかった。例えば、造形物が泡状の場合、造形物が時間の経過と共に液状に戻されて崩れていった場合に、液状となった内容物を供給面側に戻すことができなかった。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、造形面上の造形物を経時的に成形孔を通して供給面側に戻すことができる造形ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明の造形ヘッドは、内容物が吐出される吐出孔の上方に配設されると共に、上下方向に貫通する成形孔が形成された頂壁部を有し、前記頂壁部のうち上方を向く造形面に前記成形孔を通過した内容物を吐出させる外装体と、前記外装体内に配設され、前記外装体に対して上下方向に移動自在である中皿と、前記中皿に固定されて上面が前記頂壁部のうち下方を向く供給面に近接または当接しており、前記中皿を前記外装体に対して下方移動させることによって、前記供給面との間に前記吐出孔からの内容物を前記供給面に沿って拡散させて前記成形孔に供給する拡散室を画成する含浸体と、を備え、前記含浸体には、上下方向に貫通し、前記吐出孔と連通する連通孔が形成されており、前記中皿には、前記連通孔に挿入された案内筒部が設けられており、前記拡散室の内容物が前記成形孔を通過することによって前記造形面に造形物を形成することを特徴とする。
【0007】
この発明では、中皿に含浸体が固定されており、この含浸体が供給面に当接または近接しているので、造形面上に形成された造形物を時間の経過と共に成形孔を通して含浸体に吸収させることができる。ここで、内容物が揮散剤である場合、含浸体に吸収されている内容物からも成形孔を通して揮散成分を外部に揮散させることができ、必要に応じて、造形面上に形成された造形物から内容物の揮散成分を外部に揮散させることもできる。
また、この発明では、吐出孔から吐出された内容物が含浸体に形成された貫通孔に挿入されている案内筒部を通して拡散室に流入するので、内容物が含浸体を経ずに成形孔を通して造形物を形成できる。
【0008】
また、本発明では、前記中皿には、前記供給面に当接して前記含浸体の変形を規制する変形規制片が設けられてもよい。
この発明では、変形規制片が供給面に当接するので、中皿を外装体に対して上方へ移動させたときに、中皿に固定されている含浸体が供給面に押し付けられて過度に変形されることが抑制される。特に、中皿が外装体に対して常時上方付勢されている場合には、含浸体が供給面に押し付けられることを効果的に抑制できる。これにより、例えば含浸体がスポンジ体などのような圧縮変形可能な材料で形成されている場合に、含浸体内の気泡が潰れることによって含浸体が内容物を吸収しにくくなることを抑制できる。また、中皿を外装体に対して下降させたときに、含浸体が復元変形することによって吐出孔から吐出された内容物が含浸体に吸い込まれて拡散室で拡散しにくくなることを抑制し、造形物の形成精度が低下することを抑制できる。
【0010】
また、本発明では、前記頂壁部の前記造形面には、上面視で前記成形孔を囲む突出壁部が延設されてもよい。
この発明では、造形物が時間の経過と共に液状に戻された場合に、液状となった内容物が外装体の外側へ流れ落ちることを防止できる。
【発明の効果】
【0011】
この発明にかかる造形ヘッドによれば、中皿に含浸体が固定されているので、形成された造形物を経時的に含浸体に吸収させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかる造形ヘッド及び造形ヘッドを備える吐出容器を示す軸方向断面図である。
【
図6】
図1の造形ヘッドの使用方法を説明する軸方向断面図である。
【
図7】同じく、
図1の造形ヘッドの使用方法を説明する軸方向断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態にかかる造形ヘッドを示す軸方向断面図である。
【
図10】
図8の第1及び第2変換筒部を示す側面図である。
【
図11】
図8の造形ヘッドの使用方法を説明する軸方向断面図である。
【
図12】同じく、
図8の造形ヘッドの使用方法を説明する軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による造形ヘッドの第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
本実施形態にかかる造形ヘッド1は、
図1及び
図2に示すように、吐出容器2の一部を構成している。吐出容器2は、造形ヘッド1と、内容物が収容される有底円筒状の容器本体3を備える容器体4と、容器本体3に設けられた吐出器5と、を備える。容器本体3内には、例えば泡体や高粘性材料など、吐出後に少なくとも一定時間にわたって形状を保持可能な内容物が収容されている。また、内容物は、例えば芳香剤、消臭剤、殺虫剤、忌避剤、除菌剤などの揮散性を有する液状の揮散剤となっている。
以下、容器本体3の中心軸線を容器軸Oと称し、
図1においてこの容器軸Oに沿う容器本体3の底部側を下方、容器本体3の口部3A側を上方と称する。また、容器軸Oから見た平面視で中心軸Oに交差する方向を径方向、容器軸O回りで周回する方向を周方向と称する。
【0014】
まず、容器体4及び吐出器5について説明する。
容器体4は、上述した容器本体3と、容器本体3の口部3Aに固定された円筒状の固定部材6と、を備える。固定部材6は、容器軸Oと同軸に配設されている。
容器本体3の内部は、口部3Aが平面視で円環状の頂板7で覆われることによって密閉されている。この頂板7のうち口部3Aよりも径方向の内側にある部分には、周方向に延在する環状凹部7Aが設けられている。
【0015】
固定部材6は、
図1及び
図2に示すように、吐出器5の後述するステム21を径方向の外側から囲繞しており、容器本体3の口部3Aに対して周方向に回転不能にかつ上下動不能に固定されている。
固定部材6は、頂板7を介して容器本体3の口部3Aに外嵌された円筒状の外嵌筒部11と、外嵌筒部11を径方向の外側から囲繞する円筒状の囲繞筒部12と、外嵌筒部11の下端と囲繞筒部12とを接続する平面視で円環状の第1接続部13と、頂板7の環状凹部7A内に嵌合された円筒状の内嵌筒部14と、内嵌筒部14の下端から径方向の内側に向けて延設された平面視で円環状の受板部15と、外嵌筒部11の上端と内嵌筒部14の上端とを接続する平面視で円環状の第2接続部16と、第2接続部16から上方に延在する円筒状の突出筒部17と、を有する。これら外嵌筒部11、囲繞筒部12、内嵌筒部14、受板部15、第2接続部16及び突出筒部17は、容器軸Oと同軸に配設されている。
【0016】
囲繞筒部12の内周面には、周方向に延在する上側係止部12Aが周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では4つ)形成されている。上側係止部12Aは、囲繞筒部12の内周面から径方向の内側に向けて突出している。また、囲繞筒部12の下端部は、第1接続部13よりも下方に突出している。
第1接続部13の外周縁部には、周方向に延在する分離スリット13Aが周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では4つ)形成されている。これら分離スリット13Aは、周方向で上側係止部12Aと重なる位置に形成されている。
内嵌筒部14は、環状凹部7A内に配設されており、外嵌筒部11との間で口部3A及び頂板7を径方向で挟み込んでいる。
受板部15の上面は、付勢バネ20の下端を支持している。
【0017】
吐出器5は、容器本体3の口部3Aに上方付勢状態で下方移動可能に立設された円筒状のステム21を備える。ステム21は、容器軸Oと同軸に配設されており、環状凹部7Aよりも小径となっている。ステム21は、頂板7を上下方向に貫通している。吐出器5の内部のうち容器本体3内に位置する部分には、図示しない吐出弁及びステム21を上方付勢する付勢手段が設けられている。
【0018】
ステム21が容器本体3に対して押し下げられると、上記吐出弁が開き、容器本体3内の内容物がステム21内を通ってステム21の上端開口部(吐出孔)21Aから吐出される。このとき、ステム21の上端開口部21Aからは、泡状とされた内容物が吐出される。なお、ステム21の上端開口部21Aから吐出される内容物は、泡状でなくてもよい。ステム21の押し下げを解除すると、上記付勢手段の上方付勢力によってステム21が上昇して上記吐出弁を閉じ、内容物の吐出が停止される。
ここで、本実施形態では、容器体4として、内部に泡状で吐出されて時間の経過と共に液状となる内容物が収容されたエアゾール缶を採用している。
【0019】
造形ヘッド1は、
図1から
図5に示すように、有頂円筒状の外装体31と、外装体31内に配設された有頂円筒状の中皿32と、中皿32に固定された円板状の含浸体33と、を備える。
外装体31は、平面視で円状の頂壁部41と、頂壁部41の外周縁から下方に向けて延設された円筒状の周壁部42と、を有する。これら頂壁部41及び周壁部42は、容器軸Oと同軸に配設されている。
【0020】
頂壁部41は、ステム21の上端開口部21Aの上方に配設されており、頂壁部41の上面は、造形面41Aを形成すると共に、頂壁部41の下面は、供給面41Bを形成している。また、頂壁部41には、上下方向に貫通する複数の成形孔41Cが形成されている。
成形孔41Cは、造形面41A及び供給面41Bに各別に開口している。成形孔41Cは、平面視においてU字状をなしており、このU字部分の開口部分が径方向の内側を向くように、周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では5つ)形成されている。
なお、造形物としては、例えば薔薇、向日葵、桜などの花、文字及びロゴタイプなどの形状とすることができる。成形孔41Cの数や形状、配置を適宜変更することにより、造形する造形物の形状を適宜変更することができる。吐出する内容物の用途などに応じて成形孔41Cの数や形状、配置を適宜変更してもよく、成形孔41Cを1つのみ形成してもよい。また、成形孔41Cは、頂壁部41の造形面41A及び供給面41Bに各別に開口していればよく、容器軸Oに対して傾いた方向で延在してもよい。
【0021】
また、頂壁部41の中央部には、棒状の芯体41Dが下方に向けて突設されており、芯体41Dは、容器軸Oと同軸に配設されている。さらに、頂壁部41の造形面41Aの外周縁には、上方に向けて延在する円筒状の突出壁部41Eが全周にわたって延設されている。突出壁部41Eは、内径及び外径が周壁部42の内径及び外径と同等となっており、上面視で複数の成形孔41Cをまとめて径方向の外側から囲んでいる。
【0022】
周壁部42の下端部は、囲繞筒部12と外嵌筒部11との間に差し込まれており、周壁部42の下端部には、周壁部42の下端から上下方向に延在する切欠部42Aが周方向に間隔をあけて4つ形成されている。これら切欠部42Aによって、周壁部42の下端部は、周方向で一対の短片部43と一対の長片部44とに分離されている。一対の短片部43は、容器軸Oを径方向で挟んで対向するように配設されており、一対の長片部44も、同様に、容器軸Oを径方向で挟んで対向するように配設されている。短片部43の周方向の長さは、長片部44の周方向の長さよりも短くされている。長片部44の下端部の外周面には、径方向の外側に向けて突出し、上側係止部12Aに対して下方から係止する下側係止部44Aが形成されている。
周壁部42のうち頂壁部41よりも下側の部分には、径方向に貫通する矩形状の揮散窓部42Bが周方向に間隔をあけて複数形成されている。これら揮散窓部42Bは、切欠部42Aの上端よりも上方に形成されている。なお、揮散窓部42Bが形成されていなくてもよい。
【0023】
中皿32は、有頂円筒状の中皿本体51と、中皿本体51に連設され、外装体31から径方向の外側に向けて突出する平面視で円環状の操作体52と、を有する。
中皿本体51は、平面視で円状の天板部61と、天板部61の外周縁から下方に向けて延設された円筒状の側筒部62と、を有する。これら天板部61及び側筒部62は、容器軸Oと同軸に配設されている。
【0024】
天板部61の外周縁部の上面には、上方に突出する変形規制片63が周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では4つ)形成されている。変形規制片63は、周方向に沿って延在しており、変形規制片63の上端は、頂壁部41の供給面41Bに当接している。
また、天板部61の中央部には、上下方向に貫通する流通孔61Aが形成されており、天板部61の中央部の上面には、流通孔61Aを径方向の外側から囲む円筒状の案内筒部64が上方へ突出している。流通孔61A及び案内筒部64は、容器軸Oと同軸に配設されており、案内筒部64の内側は、流通孔61Aに連通している。また、案内筒部64の上端は、変形規制片63の上端と同等となっており、案内筒部64の上端は、頂壁部41の供給面41Bに当接している。案内筒部64の内側には、芯体41Dが挿入されている。なお、天板部61の上面の上下方向の位置は、揮散窓部42Bの下端縁の上下方向の位置と同等となっている。そのため、案内筒部64は、変形規制片としても機能する。
【0025】
天板部61の中央部の下面には、円筒状の係止筒部65と、係止筒部65を径方向の外側から囲む円筒状の受筒部66と、が下方に向けて延設されている。これら係止筒部65及び受筒部66は、容器軸Oと同軸に配設されている。
係止筒部65の内側は、流通孔61Aに連通している。係止筒部65の内径は、ステム21の外径と同等となっており、係止筒部65の内周面には、上下方向に延在する係止リブ部65Aが周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では4つ)形成されている。係止リブ部65Aの下端は、ステム21の上端に上方から当接可能となっている。
受筒部66の外周面には、付勢バネ20の上端部が配設されており、付勢バネ20の上端部が径方向で位置ズレすることを規制している。付勢バネ20の上端は、天板部61の下面によって支持されている。
【0026】
側筒部62の外径は、周壁部42の内径と同等となっており、側筒部62は、周壁部42の内周面に沿って上下動可能となっている。また、側筒部62の内径は、突出筒部17の外径と同等となっており、側筒部62の下端部内には、突出筒部17の上端部が挿入されている。
【0027】
操作体52は、中皿本体51の側筒部62の下端部から径方向の外側に向けて突出し、平面視で円環状の操作板部67と、操作板部67の外周縁から下方に延設された円筒状の操作筒部68と、を有する。これら操作板部67及び操作筒部68は、容器軸Oと同軸に配設されている。
操作板部67の内周縁部には、周方向に間隔をあけて2対の挿入スリット67Aが形成されている。第1の対の挿入スリット67Aは、容器軸Oを径方向で挟む両側に形成され、周方向の長さが短片部43の周方向の長さと同等とされている。これにより、第1の対の挿入スリット67Aには、短片部43が挿通されている。同様に、第2の対の挿入スリット67Aは、容器軸Oを径方向で挟む両側に形成され、周方向の長さが長片部44の周方向の長さと同等となっている。これにより、第2の対の挿入スリット67Aには、長片部44が挿通されている。このようにして、中皿32が外装体31に対して周方向に回転することが規制されると共に、外装体31に対する中皿32の上下方向の移動が案内される。
【0028】
含浸体33は、多孔質材、例えば濾紙やスポンジ体などによって形成されている。含浸体33の上面は、外装体31の頂壁部41の供給面41Bに当接または近接しており、含浸体33の外周面は、外装体31の周壁部42の内周面に当接または近接している。ここで、含浸体33の上面が供給面41Bに近接しているとは、造形面41A上に形成された造形物を成形孔41Cを通して経時的に吸い込むことができる程度に離間していることを意味している。また、含浸体33の中央部には、上下方向に貫通する連通孔33Aが形成されており、連通孔33Aには、案内筒部64が挿入されている。
付勢バネ20は、下端が固定部材6に支持されており、上端が中皿32に支持されている。そのため、付勢バネ20は、中皿32を外装体31に対して上方付勢している。
【0029】
次に、以上のような構成の造形ヘッド1の使用方法を説明する。
まず、
図6に示すように、操作板部67を付勢バネ20の付勢力に抗して押し下げて中皿32を外装体31に対して下降させると、中皿32の係止リブ部65Aがステム21の上端に上方から当接する。また、含浸体33の上面と外装体31の頂壁部41の供給面41Bとの間には、拡散室Sが画成される。ここで、中皿32を外装体31に対してさらに下降させると、ステム21が上方付勢力に抗して下降することによって、容器本体3内の内容物は、ステム21の上端開口部21A、流通孔61A及び案内筒部64の内側を通して拡散室Sに流入する。ここで、ステム21の上端開口部21Aから吐出された内容物が案内筒部64内を通して拡散室Sに流入するので、拡散室Sに到達する前に含浸体33に吸い込まれることが抑制される。
【0030】
拡散室Sに流入した内容物は、芯体41Dの外周面上を上下方向に流動して芯体41Dに保持される。このとき、内容物は、例えば平面視において芯体41Dを中心とした円状をなすように芯体41Dに保持される。内容物のステム21からの吐出量の増加に伴って芯体41Dへの内容物の供給量が増加すると、内容物が芯体41D上で成長し、径方向の外側に向けて漸次膨張する。これにより、拡散室Sが扁平形状に形成されていることと相まって、拡散室S内に供給された内容物は、径方向に拡散されて複数の成形孔41Cに供給される。
成形孔41Cに流入した内容物は、頂壁部41の造形面41Aに向けて流動する。そして、複数の成形孔41Cを通過した内容物は、造形面41Aに吐出されて複数の造形片を形成し、複数の造形片を組み合わせて造形物が形成される。
【0031】
その後、
図7に示すように、操作板部67の押し下げ操作を解除すると、ステム21が上方に向けて復元変形しつつ、中皿32が付勢バネ20によって外装体31に対して上方に向けて復元変位する。これにより、含浸体33の上面は、外装体31の頂壁部41の供給面41Bに当接または近接する。ここで、中皿本体51の天板部61に変形規制片63及び案内筒部64が形成されており、これら変形規制片63及び案内筒部64の上端が外装体31の頂壁部41の供給面41Bに当接するので、含浸体33が外装体31の頂壁部41の供給面41Bに押し付けられることが防止される。
【0032】
造形面41A上に形成された造形物は、時間の経過と共に成形孔41Cを通して含浸体33に吸収される。また、泡状の造形物が時間の経過と共に液状に戻って崩れていく場合にも、成形孔41Cを通して含浸体33に吸収される。ここで、含浸体33の上面が外装体31の頂壁部41の供給面41Bに近接または当接しているので、成形孔41Cを通って戻る内容物は、効率よく含浸体33に吸収される。含浸体33に吸収された内容物は、成形孔41Cや揮散窓部42Bを通して吐出容器2の外部に揮散される。なお、造形面41A上に形成された造形物からも揮散させてもよい。
また、造形面41A上の造形物が時間の経過と共に含浸体33に吸収されるので、造形面41A上に液状に戻っても内容物が長期にわたって残存することが抑制される。これにより、造形面41Aや成形孔41Cに汚れなどの不純物が付着することが抑制され、次に中皿32を操作して造形物を形成する際に所望の形状の造形物を形成しにくくなることが抑制される。さらに、造形物が造形面41A上で液状に戻されても、突出壁部41Eは、液状の内容物が外装体31の外側へ流れ落ちることを阻止する。
以上のようにして、造形ヘッド1を使用する。
【0033】
以上、本実施形態にかかる造形ヘッド1によれば、造形面41A上に形成された造形物を時間の経過と共に成形孔41Cを通して含浸体33で吸収できる。また、内容物が揮散剤であるので、含浸体33に吸収された内容物を成形孔41Cや揮散窓部42Bを通して吐出容器2の外部へ揮散させることができる。さらに、必要に応じて、造形面41A上に形成された造形物から揮散成分を吐出容器2の外部へ揮散させてもよい。
また、変形規制片63及び案内筒部64が供給面41Bに当接しているので、中皿32が付勢バネ20によって外装体31に対して常時上方付勢されていても、含浸体33が供給面41Bに押し付けられることによって圧縮変形されることを抑制できる。これにより、含浸体33が圧縮されて造形物を時間の経過と共に吸収することが阻害されることを抑制できる。また、中皿32を外装体31に対して下降させたときに含浸体33が復元変形することによって、ステム21から吐出された内容物が含浸体33に吸い込まれて拡散室Sで拡散しにくくなることを抑制し、造形物の成形精度が低下することを抑制できる。
さらに、吐出器5から吐出された内容物が案内筒部64を通って拡散室Sに流入するので、拡散室Sに到達する前に内容物が含浸体33に吸い込まれることが抑制される。
その上、造形面41Aに突出壁部41Eが設けられているので、造形面41A上に形成された造形物が時間の経過と共に液状に戻されても、液状に戻った内容物が外装体31から流れ落ちることを抑制できる。
【0034】
次に、本発明による造形ヘッドの第2実施形態を図面に基づいて説明する。なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した実施形態と同様であり、上述した実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、以下の図面において上記図面と同一構成要素に同一符号を付し、この説明を省略する。
【0035】
本実施形態にかかる造形ヘッド100は、
図8から
図10に示すように、第1実施形態にかかる造形ヘッド1とは異なり、容器体101の固定部材102及び外装体103に対して中皿104を周方向に回転させることによって内容物を吐出させている。
固定部材102は、円筒状の外嵌筒部111と、円筒状の囲繞筒部112と、平面視で円環状の第1接続部113と、円筒状の内嵌筒部114と、平面視で円環状の第2接続部115と、円筒状の突出筒部116と、平面視で円環状の受板部117と、受板部117の内周縁から上方に向けて延設された円筒状の第1変換筒部118と、を備える。これら外嵌筒部111、囲繞筒部112、第1接続部113、内嵌筒部114、第2接続部115、突出筒部116、受板部117、第1変換筒部118は、容器軸Oと同軸に配設されている。
【0036】
外嵌筒部111の下端部には、径方向の内側に向けて突出する第1嵌合突部111Aが周方向に間隔をあけて複数形成されており、外嵌筒部111は、頂板7の外周縁部にアンダーカット嵌合されている。
第1接続部113は、外嵌筒部111の上端と囲繞筒部112の上端とを接続している。
突出筒部116は、外嵌筒部111の上端に連続して形成されており、第2接続部115に対して上方に突出している。突出筒部116の外周面には、径方向の外側に向けて突出する第1装着突部119が形成されている。第1装着突部119の外周面には、径方向の外側に向けて突出する上側係止部119Aが形成されている。
【0037】
第1変換筒部118の内周面には、径方向の内側に向けて突出する第1摺動突部118Aが周方向に間隔をあけて複数形成されている。第1摺動突部118Aは、径方向から見て直角三角形状をなしており、上下方向に延在する第1垂直面118Bと、第1垂直面118Bの上端から周方向の一方向(時計回り方向)に向かうにしたがって下方に向かうように傾斜した第1傾斜面118Cと、を有する。第1傾斜面118Cの上端部は、下方に向けて突となる第1曲面118Dとされている。
【0038】
外装体103は、平面視で円状の頂壁部41と、円筒状の周壁部121と、を有する。頂壁部41及び周壁部121は、容器軸Oと同軸に配設されている。
周壁部121の下端部の内周面には、径方向の内側に向けて突出し、突出筒部116の第1装着突部119に対して下方から係止する第2装着突部122が形成されている。また、周壁部121の外周面には、径方向の外側に向けて突出する操作突部121Aが周方向に複数設けられている。操作突部121Aの外面は、平面視で時計回り方向に進むにしたがって径方向の内側に向かうように傾斜している。
また、周壁部121の内周面には、上下方向に延在する回止リブ部121Bが周方向に間隔をあけて複数形成されている。さらに、周壁部121の下端部の内周面には、径方向の内側に向けて突出し、上側係止部119Aに対して下方から係止する下側係止部121Cが形成されている。
【0039】
中皿104は、平面視で円板状の天板部131と、天板部131の下面から下方に向けて延設された円筒状の第2変換筒部132と、を備える。これら天板部131及び第2変換筒部132は、容器軸Oと同軸に配設されている。
天板部131の外周縁部には、径方向内側に陥没し、周壁部121に形成された回止リブ部121Bに対して周方向で係止する回止凹部131Aが周方向に間隔をあけて複数形成されている。これにより、中皿104が外装体103に対して周方向に回転することが規制される。
【0040】
第2変換筒部132の外径は、第1変換筒部118の内径よりも小径とされており、第2変換筒部132の下端部は、第1変換筒部118の内側に配設されている。第2変換筒部132の外周面には、径方向の外側に向けて突出する第2摺動突部132Aが周方向に間隔をあけて複数形成されている。第2摺動突部132Aは、第1摺動突部118Aと同様に、径方向から見て直角三角形状をなしており、上下方向に延在する第2垂直面132Bと、第2垂直面132Bの下端から時計回り方向に向かうにしたがって下方に向かうように傾斜した第2傾斜面132Cと、を有する。第2垂直面132Bと第2傾斜面132Cとの接続部分は、上方に向けて突となる第2曲面132Dとされている。
第2摺動突部132Aは、全体として第1摺動突部118Aよりも大きく、第1摺動突部118Aとほぼ相似な形状とされている。また、第2垂直面132Bと第2傾斜面132Cとがなす角度は、第1垂直面118Bと第1傾斜面118Cとがなす角度と同等となっている。
【0041】
第1傾斜面118C及び第2傾斜面132Cによって、中皿104の容器体101に対する平面視における時計回り方向の回転が許容されている。また、第1垂直面118B及び第2垂直面132Bと付勢バネ20による中皿104への上方付勢力とによって、中皿104の容器体4に対する平面視における周方向の他方向(反時計回り方向)の回転が規制される。このように、第1摺動突部118A、第2摺動突部132A及び付勢バネ20は、中皿104の容器体4に対する周方向の回転を時計回り方向にのみ許容するラチェット機構を構成している。なお、このラチェット機構は、平面視において中皿104の容器体4に対する反時計回りの回転を許容すると共に時計回りの回転を規制するように構成されてもよい。
なお、第2摺動突部132Aの周方向の間隔は、第1摺動突部118Aの周方向の幅よりも大きくされている。これにより、第2摺動突部132Aと第1摺動突部118Aとの間に周方向の遊びが生じ、中皿104に過剰に大きな回転力が加えられた際に、例えば第1摺動突部118Aが第2摺動突部132Aを連続して周方向に乗り越えて内容物が連続して吐出されることが抑制される。
なお、中皿104には、第1実施形態にかかる造形ヘッド1のようには案内筒部64が設けられていない。
【0042】
以上のような構成の造形ヘッド100の使用方法も、上述した第1実施形態にかかる造形ヘッド1の使用方法と同様である。
外装体103を容器体101に対して時計回り方向に回転させると、中皿104は、外装体103と一体に固定部材102に対して時計回り方向に回転し、第2変換筒部132に形成された第2傾斜面132Cは、第1変換筒部118に形成された第1傾斜面118Cに対して周方向で当接する。この状態で外装体103を中皿104と共に時計回り方向にさらに回転させると、
図10の矢印A1に示すように、第2摺動突部132Aは、第1傾斜面118Cに沿って下降する。これにより、
図11に示すように、中皿104は、付勢バネ20の上方付勢力に抗して下降し、中皿104の天板部131の内周縁部がステム21を下降させると共に、含浸体33と外装体103との間に拡散室Sを画成する。そして、容器本体3内の内容物は、拡散室Sに流入し、成形孔41Cを通して造形面41Aに向けて流れ、造形物を形成する。
【0043】
外装体103を容器体101に対してさらに時計回り方向に回転させると、
図10の矢印A2に示すように、第2摺動突部132Aは、第1摺動突部118Aの第1傾斜面118Cの下端部に達し、第1曲面118Dを時計回り方向で乗り越える。そして、
図12に示すように、中皿104は、付勢バネ20の上方付勢力によって上昇する。
内容物を再度吐出させる場合には、外装体103を同じ時計回り方向で回転させる操作を行う。
【0044】
以上のように構成された造形ヘッド100によっても、上述した第1実施形態にかかる造形ヘッド1と同様の効果を奏する。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、第1実施形態において、案内筒部が設けられていなくてもよく、同様に、第2実施形態において案内筒部が設けられていてもよい。
内容物は、吐出後に少なくとも一定時間にわたって形状を保持可能であれば、揮散剤に限られないが、揮散剤とすることにより、含浸体に吸収された内容物が成形孔や揮散窓部と通して吐出容器の外部へ揮散されるので、含浸体に残存したままとなりにくくなる。
変形規制片や案内筒部は、一方のみが設けられていてもよく、双方が設けられていなくてもよい。
突出壁部は、平面視で複数の成形孔をまとめて径方向の外側から囲んでいるが、成形孔を各別に囲むなど、他の形状であってもよい。また、突出壁部が設けられていなくてもよい。
中皿は、付勢バネによって上方付勢されているが、付勢バネによって常時上方付勢されていなくてもよい。また、付勢バネを調整することにより、容器体対する中皿の押し込みを解除したときに含浸体の上面が供給面に当接または近接するが供給面に押し付けられないようにしてもよい。
中皿を外装体に対して上下動させる機構は、上述したように中皿の操作体を操作する機構や中皿を周方向に回転させる機構に限らず、他の機構であってもよい。
含浸体は、濾紙やスポンジ体などのような上下方向に圧縮変形可能な材料に限らず、造形物を経時的に吸収できる材料であれば、圧縮変形しない材料で形成されてもよい。
容器体として内部に液状の内容物が収容されたエアゾール缶を採用しているが、エアゾール缶以外の他の吐出機構を有する容器体であってもよい。
各構成部材の説明において、「円筒状」などと記載しているが、楕円状や、三角形状、矩形状のような他の多角形状など、適宜他の形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明によれば、造形面上の造形物を経時的に成形孔を通して供給面側に戻すことができる造形ヘッドに関して、産業上の利用可能性が認められる。
【符号の説明】
【0047】
1,100 造形ヘッド、21A 上端開口部(吐出孔)、31,103 外装体、32,104 中皿、33 含浸体、33A 連通孔、41 頂壁部、41A 造形面、41B 供給面、41C 成形孔、41E 突出壁部、63 変形規制片、64 案内筒部