(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】局部洗浄装置および便器
(51)【国際特許分類】
E03D 9/08 20060101AFI20220114BHJP
E03D 11/02 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
E03D9/08 F
E03D11/02 Z
(21)【出願番号】P 2018059559
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】五味田 愼一
(72)【発明者】
【氏名】渡 光次郎
【審査官】津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-266879(JP,A)
【文献】特開2002-364055(JP,A)
【文献】特開2013-028902(JP,A)
【文献】特開2017-014703(JP,A)
【文献】特開2005-030093(JP,A)
【文献】特開2005-083087(JP,A)
【文献】実開平07-023075(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第103088891(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/08
E03D 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器に設けられる局部洗浄装置において、
進退可能に構成され、
便鉢内に進出した状態で人体の局部洗浄を行
い、前記便鉢から後退した状態で収納される洗浄ノズルと、
前記洗浄ノズルが進退する開口部を開閉するシャッタと、
前記シャッタに水を供給して水膜を形成する水膜形成部と、を有し、
前記水膜形成部は、使用者が前記便器を使用する時に前記シャッタ
の前記洗浄ノズルが収納された状態における前記便鉢側の面となる前面に水を供給するように構成されていることを特徴とする局部洗浄装置。
【請求項2】
前記水膜形成部は、前記洗浄ノズルが進出した状態で前記シャッタに水を供給する請求項1に記載の局部洗浄装置。
【請求項3】
前記水膜形成部は、前記洗浄ノズルが進出し局部洗浄を行う期間に前記シャッタに水を供給する請求項2に記載の局部洗浄装置。
【請求項4】
前記水膜形成部は、進出した前記洗浄ノズルが前記開口部の後方に後退した後にも前記シャッタに水を供給する請求項2または3に記載の局部洗浄装置。
【請求項5】
前記便器を使用する使用者を検知可能な検知部を有し、
前記水膜形成部は、前記検知部が前記使用者を検知すると、前記シャッタに水を供給する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の局部洗浄装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記便器が設けられた領域に進入した使用者を検知可能で、
前記水膜形成部は、前記検知部が前記使用者を検知すると、前記シャッタに水を供給する請求項5に記載の局部洗浄装置。
【請求項7】
前記検知部は、前記使用者が前記便器の便座に着座した着座状態を検知可能で、
前記水膜形成部は、前記検知部が前記使用者の着座状態を検知すると、前記シャッタに水を供給する請求項5または6に記載の局部洗浄装置。
【請求項8】
前記検知部は、前記使用者が前記便器の前側に起立した起立状態を検知可能で、
前記水膜形成部は、前記検知部が前記使用者の起立状態を検知すると、前記シャッタに水を供給する請求項5乃至7のいずれか一項に記載の局部洗浄装置。
【請求項9】
前記水膜形成部は、前記検知部が前記使用者を検知してから、前記洗浄ノズルが進出して局部洗浄を行い、局部洗浄を完了した前記洗浄ノズルが後退して、前記シャッタが開口部を閉鎖するまでの間に、前記シャッタに水を供給する請求項5乃至7のいずれか一項に記載の局部洗浄装置。
【請求項10】
局部洗浄装置を有する便器において、
前記局部洗浄装置は、開口部を通って進退可能に構成され、前記開口部から
便鉢内に進出した状態で人体の局部洗浄を行
い、前記便鉢から後退した状態で収納される洗浄ノズルと、
前記開口部を開閉するシャッタと、
前記シャッタに水を供給して水膜を形成する水膜形成部と、を有し、
前記水膜形成部は、使用者が前記便器を使用する時に前記シャッタ
の前記洗浄ノズルが収納された状態における前記便鉢側の面となる前面に水を供給するように構成されていることを特徴とする便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局部洗浄装置および便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便座に着座した使用者の局部洗浄を行う局部洗浄装置が知られている。局部洗浄装置の洗浄ノズルは、局部洗浄を行う際に前方へ斜め下側に向かって進出し、局部洗浄が終わると後退するように構成されている。特許文献1には、洗浄ノズルが進退する開口部にこの開口部を開閉するシャッタが設けられ、シャッタにおける洗浄ノズル側の面に洗浄ノズルの先端部分へ液体を吐出する吐出口が設けられた局部洗浄装置が開示されている。この局部洗浄装置では、吐出口から吐出された液体によって洗浄ノズルの先端部分を洗浄するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
局部洗浄装置のシャッタは、常時露出しているため汚れてしまうことがある。特に、便器の使用時に汚水や汚物が付着することでシャッタが汚れてしまうことが多い。
【0005】
そこで、本発明は、便器の使用時にシャッタに汚水や汚物が付着することを抑えることができる局部洗浄装置および便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る局部洗浄装置は、便器に設けられる局部洗浄装置において、進退可能に構成され、便鉢内に進出した状態で人体の局部洗浄を行い、前記便鉢から後退した状態で収納される洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルが進退する開口部を開閉するシャッタと、前記シャッタに水を供給して水膜を形成する水膜形成部と、を有し、前記水膜形成部は、使用者が前記便器を使用する時に前記シャッタの前記洗浄ノズルが収納された状態における前記便鉢側の面となる前面に水を供給するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る便器は、局部洗浄装置を有する便器において、前記局部洗浄装置は、開口部を通って進退可能に構成され、前記開口部から便鉢内に進出した状態で人体の局部洗浄を行い、前記便鉢から後退した状態で収納される洗浄ノズルと、前記開口部を開閉するシャッタと、前記シャッタに水を供給して水膜を形成する水膜形成部と、を有し、前記水膜形成部は、使用者が前記便器を使用する時に前記シャッタの前記洗浄ノズルが収納された状態における前記便鉢側の面となる前面に水を供給するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明では、水膜形成部は、使用者が便器を使用するとシャッタに水を供給し、シャッタに水膜が形成するように構成されているため、シャッタに形成された水膜によって、便器の使用時にシャッタに汚水や汚物が付着することを抑えることができる。
水膜とは、所定の厚さの膜状に広がって流れる水を示し、シャッタに形成される水膜とは、シャッタを膜状に広がって流れる水を示している。
【0009】
また、本発明に係る局部洗浄装置では、前記水膜形成部は、前記洗浄ノズルが進出した状態で前記シャッタに水を供給するように構成されていてもよい。
このように構成されていることにより、洗浄ノズルが進出している便器の使用時に、シャッタに水膜が形成されるため、シャッタに形成された水膜によって、便器の使用時にシャッタに汚水や汚物が付着することを抑えることができる。
【0010】
また、本発明に係る局部洗浄装置では、前記水膜形成部は、前記洗浄ノズルが進出し局部洗浄を行う期間に前記シャッタに水を供給してもよい。
このような構成とすることにより、局部洗浄を行う期間にシャッタに水膜を形成することができる。このため、局部洗浄用の洗浄水が使用者や便器にあたってシャッタに向かってはね返ったとしても、シャッタに形成された水膜によってはね返った洗浄水がシャッタに付着することを抑えることができる。
【0011】
また、本発明に係る局部洗浄装置では前記水膜形成部は、進出した前記洗浄ノズルが前記開口部の後方に後退した後にも前記シャッタに水を供給してもよい。
このような構成とすることにより、洗浄ノズルが開口部の後方に後退した後もシャッタに汚れが付着することを抑えることができるとともに、シャッタに汚れが付着した場合に、付着した汚れを洗い流すことができる。
【0012】
また、本発明に係る局部洗浄装置では、前記便器を使用する使用者を検知可能な検知部を有し、前記水膜形成部は、前記検知部が前記使用者を検知すると、前記シャッタに水を供給するように構成されていてもよい。
このような構成とすることにより、便器の使用時にシャッタに水膜が形成され、シャッタに汚水や汚物が付着することを抑えることができる。また、使用者が洗浄ノズルを使用しない場合でも、便器の使用時にシャッタに汚水や汚物が付着することを抑えることができる。
【0013】
また、本発明に係る局部洗浄装置では、前記検知部は、前記便器が設けられた領域に進入した使用者を検知可能で、前記水膜形成部は、前記検知部が前記使用者を検知すると、前記シャッタに水を供給するように構成されていてもよい。
このような構成とすることにより、便器の使用時にシャッタに水膜が形成され、シャッタに汚水や汚物が付着することを抑えることができる。また、使用者が洗浄ノズルを使用しない場合でも、便器の使用時にシャッタに汚水や汚物が付着することを抑えることができる。
【0014】
また、本発明に係る局部洗浄装置では、前記検知部は、前記使用者が前記便器の便座に着座した着座状態を検知可能で、前記水膜形成部は、前記検知部が前記着座状態を検知すると、前記シャッタに水を供給するように構成されていてもよい。
このような構成とすることにより、便器の使用時にシャッタに水膜が形成され、シャッタに汚水や汚物が付着することを抑えることができる。また、使用者が洗浄ノズルを使用しない場合でも、便器の使用時にシャッタに汚水や汚物が付着することを抑えることができる。
【0015】
また、本発明に係る局部洗浄装置では、前記検知部は、前記使用者が前記便器の前側に起立した起立状態を検知可能で、前記水膜形成部は、前記検知部が前記起立状態を検知すると、前記シャッタに水を供給する。
このような構成とすることにより、便器の使用時にシャッタに水膜が形成され、シャッタに汚水や汚物が付着することを抑えることができる。また、使用者が洗浄ノズルを使用しない起立した状態の小便時でも、シャッタに汚水や汚物が付着することを抑えることができる。
【0016】
また、本発明に係る局部洗浄装置では、前記水膜形成部は、前記検知部が前記使用者を検知してから、前記洗浄ノズルが進出して局部洗浄を行い、局部洗浄を完了した前記洗浄ノズルが後退して、前記シャッタが開口部を閉鎖するまでの間に、前記シャッタに水を供給するように構成されていてもよい。
このような構成とすることにより、便器の使用時にシャッタに水膜が形成され、シャッタに汚水や汚物が付着することを抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、便器の使用時にシャッタに汚水や汚物が付着することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態による便器の一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態による局部洗浄装置の一例を示す斜視図で、第1洗浄ノズルが後退している様子を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態による局部洗浄装置の一例を示す斜視図で、第1洗浄ノズルが進出している様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態による局部洗浄装置および便器について、
図1乃至
図14に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態による局部洗浄装置1は、便器11に設けられている。便器11は、便器本体12と、便器本体12に取り付けられた機能部13と、機能部13を介して便器本体12に取付けられた便座14および便蓋15と、を有している。
便器本体12は、便鉢121が形成され、床面16に設置されて排水配管(不図示)に接続されるように構成されている。
機能部13は、局部洗浄を行う局部洗浄装置1と、局部洗浄装置1を収容するケース2と、を有している。機能部13は、局部洗浄装置1に加えて、温風乾燥を行う温風乾燥装置(不図示)や、脱臭を行う脱臭装置(不図示)、これらの装置に電力を供給する電力供給装置(不図示)などを適宜有していてよい。機能部13に設けられている装置は、ケース2に収容され、ケース2によって外部に露出しないように覆われている。
【0020】
図2および
図3に示すように、機能部13のケース2のうち、局部洗浄装置1の前側に配置される部分を前板部21とする。前板部21は、その板面が前側に向かって漸次下側に向かう斜め方向を向くように配置されている。この斜め方向は、後述する局部洗浄装置1の第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4の進退方向と略同じ方向となっている。
前板部21のうちの便鉢121(
図1参照)の内部を臨む面を前面21aとし、その反対側の局部洗浄装置1と対向する面を後面21bとする。
前板部21の幅方向の略中央部には、板面を貫通する開口部21cが形成されている。開口部21cは、上下方向よりも幅方向に長い形状に形成されている。開口部21cは、局部洗浄装置1の第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4が通過するように構成されている。
【0021】
機能部13は、便器11を使用する使用者側から見て便器本体12の奥側に取り付けられていて、前側に便器本体12の便鉢121が配置されている。便器本体12に対して機能部13が取り付けられている側を後側とし、その反対側を前側とし、前側と後側とを結ぶ方向を前後方向とする。この前後方向に直交する水平方向を幅方向とする。
【0022】
図2および
図3に示すように、局部洗浄装置1は、肛門洗浄用の第1洗浄ノズル3(洗浄ノズル)と、ビデ用の第2洗浄ノズル4(洗浄ノズル)と、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4を支持する支持部5と、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4に局部洗浄用の温水を供給する局部洗浄用温水供給部(不図示)と、第1洗浄ノズル3の外周面39(
図3参照)に水を供給して第1洗浄ノズル3の外周面39および前端面3cに水膜を形成する第1洗浄ノズル水膜形成部6と、回動することでケース2の開口部21cを開閉可能なシャッタ22と、シャッタ22のシャッタ本体23の前面23aに水を供給して水膜を形成するシャッタ水膜形成部7と、局部洗浄、第1洗浄ノズル水膜形成部6およびシャッタ水膜形成部(水膜形成部)7による水膜の形成を制御する制御部(不図示)と、を有している。
水膜とは、所定の厚さの膜状に広がって流れる水を示し、シャッタ本体23の前面23aに形成される水膜とは、シャッタ本体23の前面23aを膜状に広がって流れる水を示し、第1洗浄ノズル3の外周面39に形成される水膜とは、第1洗浄ノズル3の外周面39を膜状に広がって流れる水を示している。
局部洗浄装置1は、機能部13の幅方向の略中央部に配置されている(
図1参照)。
【0023】
図2-
図5に示すように、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4は、それぞれ断面形状が略円形となる丸棒状に形成されている。第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4は、それぞれの延びる方向(長さ方向)が前側に向かって漸次下側に向かう斜め方向となるように配置されている。第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4は、第1洗浄ノズル3が幅方向の一方側、第2洗浄ノズル4が幅方向の他方側となるように幅方向に並列されている。
上記のように配置された状態における第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4の前側かつ下側の端部を前端部3a,4a(
図3-
図5参照)とし、後側かつ上側の端部を後端部3b,4bする。第1洗浄ノズル3の外周面39とは、第1洗浄ノズル3の前端部3aと、後端部3bとを、結ぶ面で、第1洗浄ノズル3の長さ方向(軸線方向)に沿った面を示す。
【0024】
図5に示すように、第1洗浄ノズル3には、後端部3b近傍に局部洗浄用の温水が供給される給水口31が設けられ、前端部3a近傍に局部洗浄用の温水を吐出する洗浄吐水口32が設けられ、内部に給水口31と洗浄吐水口32とをつなぎ温水が流通する流通管33が設けられている。洗浄吐水口32は、上方かつ前側に向かう斜め方向に開口し、この斜め方向に向かって局部洗浄用の温水を吐出可能に構成されている。
第1洗浄ノズル3の前端面3cは、第1洗浄ノズル3が延びる斜め方向に直交する平面状に形成されている。
【0025】
図6および
図7に示すように、第1洗浄ノズル3の下側には、第1洗浄ノズル3の長さ方向に延びる直線状の第1ラック(ギア)34が設けられている。第1ラック34は下側に突出する歯341が第1洗浄ノズル3の長さ方向に複数配列されている。
第1ラック34は、第1洗浄ノズル3の前端部3a近傍には設けられておらず、第1洗浄ノズル3における前端部3aよりも後側に少し間隔をあけた長さ方向の中間部から後端部3bまでの範囲に設けられている。
【0026】
図5に示すように、第2洗浄ノズル4には、後端部4b近傍に局部洗浄用の温水が供給される給水口41が設けられ、前端部4a近傍に局部洗浄用の温水を吐出する洗浄吐水口42が設けられ、内部に給水口41と洗浄吐水口42とをつなぎ温水が流通する流通管43が設けられている。洗浄吐水口42は、上方かつ前側に向かう斜め方向に開口し、この斜め方向に向かって局部洗浄用の温水を吐出可能に構成されている。
第2洗浄ノズル4の前端面4cは、第2洗浄ノズル4が延びる斜め方向に直交する平面状に形成されている。
【0027】
図8および
図9に示すように、第2洗浄ノズル4の下側には、第2洗浄ノズル4の長さ方向に延びる直線状の第2ラック44(ギア)が設けられている。第2ラック44は下側に突出する歯441が第2洗浄ノズル4の長さ方向に複数配列されている。
第2ラック44は、第2洗浄ノズル4の前端部4a近傍には設けられておらず、第2洗浄ノズル4における前端部4aよりも後側に少し間隔をあけた長さ方向の中間部から後端部4bまでの範囲に設けられている。
【0028】
図4および
図5に示すように、支持部5は、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4それぞれを、前側に向かって漸次下側に向かう斜め方向に進退可能に支持している。第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4が進退する方向の洗浄ノズル進退方向とする。この洗浄ノズル進退方向は、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4の長さ方向と同じ方向に設定されている。
支持部5は、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4が出し入れされる支持部本体51と、第1洗浄ノズル3の第1ラック34(
図6および
図7参照)と噛み合い第1ラック34とともにラックアンドピニオン機構を構成する第1ピニオン52と、第2洗浄ノズル4の第2ラック44(
図8および
図9参照)と噛み合い第2ラック44とともにラックアンドピニオン機構を構成する第2ピニオン53と、第1ピニオン52および第2ピニオン53を回転させるモータ54と、を有している。
【0029】
支持部本体51は、第1洗浄ノズル3を出し入れ可能な第1洗浄ノズル挿入部511と、第2洗浄ノズル4を出し入れ可能な第2洗浄ノズル挿入部512と、を有している。第1洗浄ノズル挿入部511と第2洗浄ノズル挿入部512とは、平行に設けられている。
【0030】
第1洗浄ノズル挿入部511は、洗浄ノズル進退方向に支持部本体51を貫通するように形成され、洗浄ノズル進退方向の下側かつ前側の開口から第1洗浄ノズル3が進退可能に構成されている。本実施形態では、支持部本体51には、第1洗浄ノズル挿入部511の下側かつ前側の端部近傍の上側の部分に下側かつ前側に開口する切欠き部513が形成されている。この切欠き部513は、第1洗浄ノズル挿入部511に挿入された第1ノズルの上面を上方に露出させている。
【0031】
第2洗浄ノズル挿入部512は、洗浄ノズル進退方向に支持部本体51を貫通するように形成され、洗浄ノズル進退方向の下側かつ前側の開口から第2洗浄ノズル4が進退可能に構成されている。
【0032】
図6および
図7に示すように、第1ピニオン52は、円板状に形成され、外周部全体に歯521が形成されている。
第1ピニオン52は、回転軸が幅方向に延びる向きで第1ラック34の下側に配置され、外周部に形成された歯521が第1ラック34の歯341と噛み合うように構成されている。第1ピニオン52は、モータ54(
図4および
図5参照)の駆動によって回転軸回りに回転することによって、第1ラック34を斜め方向(線状ラックの進退方向)に移動させるように構成されている。
【0033】
第2ピニオン53は、円板状に形成され、外周部全体に歯531が形成されている。
第2ピニオン53は、回転軸が幅方向に延びる向きで第2ラック44の下側に配置され、外周部に形成された歯531が第2ラック44の歯441と噛み合うように構成されている。第2ピニオン53は、モータ54(
図4および
図5参照)の駆動によって回転軸回りに回転することによって、第2ラック44を斜め方向(洗浄ノズルの進退方向)に移動させるように構成されている。
【0034】
図4-
図7に示すように、第1洗浄ノズル水膜形成部6は、第1洗浄ノズル3の外周面39(
図5参照)に水を供給する水膜形成用給水管61と、水膜形成用給水管61に水を供給する水膜形成用水供給部(不図示)と、を有している。
【0035】
水膜形成用給水管61は、支持部本体51の上部に設置されている。水膜形成用給水管61の水膜吐水口62は、支持部本体51に形成された切欠き部513の上部に配置されている。水膜吐水口62は、第1洗浄ノズル3の軸線の鉛直方向上側に配置されている。水膜吐水口62から吐水された水は、第1洗浄ノズル3の軸線の上方となる外周面39の上部側39aに落ちるように構成されている。水膜形成用給水管61の水膜吐水口62は、前側かつ下側に向かって開口し、この方向に水膜形成用の水を吐出するように構成されている。水膜吐水口62から吐水される水の方向と、第1洗浄ノズル3の進退方向(長さ方向)とは、鋭角を成すように交差している。
【0036】
第1洗浄ノズル水膜形成部6は、第1洗浄ノズル3が進出した状態となると、第1洗浄ノズル3に水膜吐水口62からを吐水するように制御されている。本実施形態では、第1洗浄ノズル水膜形成部6は、第1洗浄ノズル挿入部511に収容された状態の第1洗浄ノズル3が第1洗浄ノズル挿入部511から進出し始めた状態から、進出したノズルが後退し第1洗浄ノズル挿入部511に収容される直前まで、第1洗浄ノズル3の外周面39に水膜吐水口62から吐水するように制御されている。
【0037】
水膜吐水口62から第1洗浄ノズル3に吐水されると、吐水された水が第1洗浄ノズル3の外周面39の上部側39aに沿って斜め方向に前端面3cに向かって流れ、前端面3cに入り込んだ水が前端面3cに沿って下側に流れるとともに、第1洗浄ノズル3の外周面39の上部側39a側から幅方向の両側に流れ、外周面39に沿って外周面39の下部側39bに流れるように構成されている。これにより、水膜吐水口62から第1洗浄ノズル3に吐水された水によって、第1洗浄ノズル3の外周面39および前端面3cに水膜を形成するように構成されている。
水膜吐水口62から吐水されて第1洗浄ノズル3の洗浄吐水口32のまわりに水膜を形成している水の水勢は、第1洗浄ノズル3の洗浄吐水口32から吐水される局部洗浄用の温水の水勢よりも弱くなるように設定されている。
水勢とは、吐出する水や流れる水の勢いを示し、吐出する水や流れる水の量や速さによって決定される。
【0038】
制御部は、使用者が操作する操作部からの信号を受信可能に構成されている。操作部には、肛門洗浄、ビデ洗浄、温風乾燥などの開始・停止や、肛門洗浄、ビデ洗浄、温風乾燥などの強弱などを操作できるボタンなどの操作手段が設けられている。
【0039】
シャッタ22は、開口部21cを前側から開閉するシャッタ本体23と、ケース2に支持された回動軸部24と、シャッタ本体23と回動軸部24とを連結する一対の連結アーム25と、を有している。シャッタ22のシャッタ本体23の上部には、シャッタ本体23の前面23aに吐水する水膜形成吐水部71が取り付けられている。
【0040】
図2、
図3、
図10および
図11に示すように、シャッタ本体23は、ケース2の開口部21c(
図2参照)よりもやや大きく、開口部21cを閉塞可能な大きさの板状に形成されている。シャッタ本体23の板面は、縦方向よりも横方向に長い形状に形成され、横方向が幅方向となり、縦方向が上下方向または、縦方向の一方側が上側、他方側が下側となる斜め方向となる向きに配置されている。以下のシャッタ22の説明では、シャッタ本体23の縦方向の一方側を上側とし、他方側を下側とする。
シャッタ本体23は、開口部21cを閉塞すると、前板部21と重なり、洗浄ノズルの進退方向と略同じ方向を向くように配置される。
シャッタ本体23は、開口部21cを閉塞した際に便鉢121(
図1参照)の内部を向く面を前面23aとし、その反対側の開口部21cと対向する面を後面23bとする。
【0041】
シャッタ本体23は、上縁部および下縁部が幅方向に延び、上縁部よりも下縁部のほうが短く、上側から下側に向かって幅方向の寸法が小さくなる形状に形成されている。シャッタ本体23の両側縁部(幅方向の両側の縁部)は、上部側が上下方向に延び、下部側が下側に向かって漸次幅方向の内側に向かって互いに近接する斜め方向に延びている。
【0042】
シャッタ本体23の外縁部には、前側に突出する第1、第2、第3リブ(突出壁)232a,232b,232cが設けられている。
第1リブ232aは、シャッタ本体23の外縁部のうちの幅方向一方側の側縁部全体と、下縁部の幅方向一方側の端部近傍の部分に連続して設けられている。
第2リブ232bは、シャッタ本体23の外縁部のうちの幅方向他方側の側縁部全体と、下縁部の幅方向他方側の端部近傍の部分に連続して設けられている。
第3リブ232cは、シャッタ本体23の外縁部のうちの下縁部の幅方向の中間部に設けられている。
【0043】
第1リブ232aと第2リブ232bとの間に第3リブ232cが設けられている。第3リブ232cは、第1リブ232aおよび第2リブ232bと幅方向に離間している。
第1リブ232aと第3リブ232cとの間の空間を第1切り欠き部233aとし、第2リブ232bと第3リブ232cとの間の空間を第2切り欠き部233bとする。
第1切り欠き部233aは、第1洗浄ノズル3と前後方向および上下方向に重なる位置に配置されている。第2切り欠き部233bは、第2洗浄ノズル4と前後方向および上下方向に重なる位置に配置されている。
シャッタ本体23の外縁部のうちの上縁部にはリブが設けられていない。
シャッタ本体23の後面23bには、幅方向の他方側で第2洗浄ノズル4と対向する位置に突起部231(
図3および
図11参照)が形成されている。
【0044】
回動軸部24は、軸線が直線となる棒状に形成され、軸線方向が幅方向となる向きに配置されている。回動軸部24は、前板部21の後側に配置され、その両端部が前板部21の後側で開口部21cの上方に設けられた軸支持部26(
図2および
図3参照)に支持されている。回動軸部24は、軸支持部26に支持されると幅方向に延びる軸線回りに回動可能に構成されている。
【0045】
一対の連結アーム25は、それぞれ略C字形状形成されている。一対の連結アーム25は、C字形を形成する一方の端部25aが回動軸部24と接続され、他方の端部25bがシャッタ本体23の上縁部と接続されている。
一対の連結アーム25のうちの一方の連結アーム25は、シャッタ本体23および回動軸部24の幅方向の一方側の端部近傍と接続され、他方の連結アーム25は、シャッタ本体23および回動軸部24の幅方向の他方側の端部近傍と接続されている。一対の連結アーム25は、回動軸部24を中心とした回動によって、開口部21cの内部に挿通可能な位置に配置されている。
【0046】
図2に示すように、シャッタ本体23が開口部21cを閉鎖している状態では、一対の連結アーム25は、それぞれ前板部21の後側(ケース2の内部)に配置され、シャッタ本体23側の端部(他方の端部)25bが回動軸部24側の端部(一方の端部)25aよりも下側かつ後側に配置され、外形のC字形が前側かつ下側を向く斜め方向に開口する向きとなっている。
【0047】
この状態から、回動軸部24を中心にシャッタ22が前側に回動すると、
図3に示すように、一対の連結アーム25の回動軸部24側の端部25aよりもシャッタ本体23側の端部25bが上側かつ前側となり、外形のC字形が前側かつ上側を向く斜め方向に開口する向きとなり、シャッタ本体23が前板部21から離れて開口部21cを開口した状態となる。
この状態では、一対の連結アーム25それぞれの内側(外形のC字形の内部)に前板部21における開口部21cの上側の部分が配置されている。シャッタ本体23は、前面23aが前側かつ上側となる斜め方向を向き、後面23bが後側かつ下側となる斜め方向を向いている。
【0048】
シャッタ22は、開口部21cを閉鎖している状態となるように付勢されている。このため、シャッタ22は、開口部21cを開口する方向への外力が作用すると回動して開口部21cを開口し、開口部21cを開口する方向への外力が無くなると、復元されて開口部21cを閉鎖している。
【0049】
図10-
図13に示すように、シャッタ水膜形成部7は、シャッタ本体23の上部にとりつけられてシャッタ本体23の前面23aに吐水する水膜形成吐水部71と、水膜形成吐水部71の前側に設けられるカバー部72と、水膜形成吐水部71に水を供給する水膜形成用水供給部(不図示)と、を有している。
図10-
図14に示すように、水膜形成吐水部71は、長尺の部材で、幅方向に延びる向きでシャッタ本体23の状縁部に沿って設けられている。水膜形成吐水部71の内部には、長さ方向に延びる空部で水が流通する流水部73が形成されている。流水部73は、水膜形成吐水部71を長さ方向に貫通しないように形成されている。
【0050】
水膜形成吐水部71の幅方向の一方側には、流水部73と水膜形成吐水部71の外部とを連通する給水口74が形成されている。給水口74には水膜形成用水供給部の給水管が接続されている。水膜形成用水供給から供給される水は、給水口74から流水部73に流れ込むように構成されている。給水口74から流水部73に流れ込んだ水は、流水部73の幅方向の一方側(給水口74に近接する側)から他方側(給水口74と離間する側)に向かって流れる。流水部73に対して、幅方向の一方側が流水方向の上流側、幅方向の他方側が流水方向の下流側となっている。
【0051】
水膜形成吐水部71には、水膜形成吐水部71の長さ方向全体にわたって互いに長さ方向に間隔をあけた位置に前側に開口する複数の吐水口76,76…が形成されている。複数の吐水口76,76…は、水膜形成吐水部71の長さ方向に配列されて、それぞれ流水部73の内部と水膜形成吐水部71の前方とを連通している。
複数の吐水口76,76…は、シャッタ本体23の前面23aの上方に配置されていている。複数の吐水口76,76…から吐水された水は、シャッタ本体23の前面23aを伝わって下方に流れるように構成されている。
複数の吐水口76,76…の内径は、流水部73の上流側に接続されている吐水口76よりも流水部73の下流側に接続されている吐水口76のほうが漸次大きくなるように設定されている。
【0052】
カバー部72は、水膜形成吐水部71における複数の吐水口76,76…の上側から前側に延びる上板部721と、上板部721の前縁部から下側に延びる前板部722と、を有している。前板部722は、複数の吐水口76,76…と前後方向(複数の吐水口76,76…が開口する方向)に重なる位置に配置されている。複数の吐水口76,76…から吐水された水は、水膜形成吐水部71と前板部722との隙間を下側に向かって流れ、シャッタ本体23の前面23aに流れ込み、シャッタ本体23の前面23aに水膜を形成するように構成されている。
【0053】
続いて、本実施形態の局部洗浄装置1による局部洗浄を行う際の動作について説明する。
操作部が操作されて、制御部が肛門洗浄開始の信号を受信すると、
図9に示すように、第2洗浄ノズル4が洗浄ノズルの進退方向の前側に進出する。第2洗浄ノズル4の前端部4aがシャッタ22の突起部231と当接し、さらに前側に進出すると、シャッタ22を回動させて押し上げ、シャッタ22が開口部21cを開口した状態となる。第2洗浄ノズル4は、シャッタ22を押し上げて開口部21cを開口する位置となると、さらに前方への進出が停止される。このとき、第2洗浄ノズル4は、前端部4aが突起部231と当接し、シャッタ本体23の前端部よりも後側に配置されている。
【0054】
第2洗浄ノズル4の進出と同時または少し遅れて、第1洗浄ノズル3が洗浄ノズルの進退方向の前側に進出する。このとき、シャッタ22は開口部21cを開口している状態であるため、
図7に示すように、第1洗浄ノズル3は、ケース2の開口部21cから進出し、シャッタ22と当接せずに開口部21cを通過し、シャッタ22の下側を通って前端部3aがシャッタ22よりも前側となる位置に進出する。
第1洗浄ノズル3は、シャッタ本体23の後面23bの下側に配置され、シャッタ本体23の後面23bと上下方向に離間している。また、第1洗浄ノズル3は、開口部21cの縁部とも離間している。
第1洗浄ノズル3が最前端まで進出すると、第1洗浄ノズル3の洗浄吐水口32から局部洗浄用の温水が吐水され、肛門洗浄が行われる。
【0055】
肛門洗浄が開始してから所定の時間が経過する、または制御部が肛門洗浄を停止する信号を受信すると、第1洗浄ノズル3の洗浄吐水口32からの吐水が終了する。
局部洗浄が終了すると、第1洗浄ノズル3は、洗浄ノズルの進退方向の後側に後退し、支持部5の第1洗浄ノズル挿入部511に収容される。第1洗浄ノズル3が第1洗浄ノズル挿入部511に収容されると、第2洗浄ノズル4も洗浄ノズルの進退方向の後側に後退し、支持部5の第2洗浄ノズル挿入部512に収容される。
上述したように、シャッタ22は、開口部21cを閉鎖している状態となるように付勢されているため、第2洗浄ノズル4が後退し、シャッタ22に開口部21cを開口する方向への外力が作用しなくなると、シャッタ22は開口部21cを閉鎖する方向に回動して開口部21cを閉鎖する。
【0056】
第2洗浄ノズル4の進出が開始してから、第1洗浄ノズル3も進出し、進出した第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4が後退して支持部5の第1洗浄ノズル挿入部511および第2洗浄ノズル挿入部512に収容されるまでの間、シャッタ水膜形成部7が駆動し、水膜形成吐水部71の複数の吐水口76,76…からシャッタ本体23の前面23aに上側から水膜を形成するための水を吐水する。
【0057】
複数の吐水口76,76…から吐水された水は、水膜形成吐水部71と前板部722との隙間を下側に向かって流れ、シャッタ本体23の前面23aに上側から流れ込み、シャッタ本体23の前面23aに沿って下側に向かって流れ、シャッタ本体23の前面23aに水膜を形成する。
シャッタ本体23の前面23aを流れる水は、シャッタ本体23から幅方向の外側に流れようとしても、第1リブ232aおよび第2リブ232bによって下側にガイドされるため、シャッタ本体23の前面23aに水膜を形成することができる。
【0058】
シャッタ本体23の前面23aを流れた水は、シャッタ本体23の下縁部の第1切り欠き部233aおよび第2切り欠き部233bから下側に流れる。第1切り欠き部233aおよび第2切り欠き部233bとの間には前側に突出する第3リブ232cが設けられているため、第3リブ232cの上に流れてきた水は、第3リブ232cに沿って幅方向に移動し、第1切り欠き部233aおよび第2切り欠き部233bから下側に流れる。
第1切り欠き部233aの下側には、進出した第1洗浄ノズル3(
図3参照)が配置されているため、シャッタ本体23の前面23aを流れて、第1切り欠き部233aに入り込んだ水は、第1洗浄ノズル3に流れ込む。
【0059】
本実施形態では、複数の吐水口76,76…の内径は、流水部73の上流側に接続されている吐水口76よりも流水部73の下流側に接続されている吐水口76のほうが漸次大きくなるように設定されている。このため、流水部73の内部において、下流側のほうが上流側よりも水圧が小さい場合でも、下流側の吐水口76の内径のほうが上流側の吐水口76の内径よりも大きいため、下流側の吐水口76からの流量を上流側の吐水口76からの流量とほぼ同じ流量とすることができる。
【0060】
また、第1洗浄ノズル3の進出が開始してから、第1洗浄ノズル3が後退して支持部5の第1洗浄ノズル挿入部511に収容されるまでの間、
図5に示すように、第1洗浄ノズル水膜形成部6が駆動し、水膜吐水口62から第1洗浄ノズル3の外周面39の上部側39aに上方から水膜を形成するための水を吐水する。
水膜吐水口62から吐出された水は、第1洗浄ノズル3の外周面39の上部側39aに沿って斜め方向に前端面3cに向かって流れ、前端面3cに入り込んだ水が前端面3cに沿って下側に流れるとともに、第1洗浄ノズル3の外周面39の上部側39a側から幅方向の両側に流れ、外周面39に沿って外周面39の下部側に流れる。そして、水膜吐水口62から第1洗浄ノズル3に吐水された水によって、第1洗浄ノズル3の外周面39および前端面3cに水膜を形成する。第1洗浄ノズル3が最前端に進出している状態では、水膜吐水口62から吐出された水は、第1洗浄ノズル3の後端部3b近傍の上側に供給される。
【0061】
上述したように、シャッタ水膜形成部7によってシャッタ本体23の前面23aを流れた水が第1切り欠き部233aから第1洗浄ノズル3に流れ込むため、シャッタ水膜形成部7によってシャッタ本体23の前面23aに水膜を形成した水のうちの第1洗浄ノズル3に流れ込んだ水は、第1洗浄ノズル水膜形成部6の水膜吐水口62から吐水された水とともに第1洗浄ノズル3の外周面39および前端面3cに水膜を形成する。
【0062】
なお、上述したように水膜吐水口62から吐水されて第1洗浄ノズル3の洗浄吐水口32のまわりに水膜を形成している水の水勢は、第1洗浄ノズル3の洗浄吐水口32から吐水される局部洗浄用の温水の水勢よりも弱くなるように設定されているため、第1洗浄ノズル3から洗浄水が吐水されている際に、第1洗浄ノズル3から吐水された局部洗浄用の温水に水膜を形成する水が混ざることを防止することができる。
また、シャッタ水膜形成部7によってシャッタ本体23の前面23aに水膜を形成した水の水勢も第1洗浄ノズル3の洗浄吐水口32から吐水される局部洗浄用の温水の水勢よりも弱くなるように設定されている。このため、第1洗浄ノズル3から吐水された局部洗浄用の温水に、シャッタ水膜形成部7によってシャッタ本体23の前面23aに水膜を形成した水が混ざることを防止することができる。
【0063】
操作部が操作されて、制御部がビデ洗浄開始の信号を受信すると、
図9に示すように、第2洗浄ノズル4が洗浄ノズルの進退方向の前側に進出する。第2洗浄ノズル4がシャッタ22の突起部231と当接し、さらに前側に進出すると、シャッタ22を押し上げてシャッタ22が開口部21cを開口した状態となる。第2洗浄ノズル4は、さらに前方への進出し、最前端(
図9の二点鎖線の位置)まで進出すると、第2洗浄ノズル4の洗浄吐水口42から局部洗浄用の温水が吐水され、ビデ洗浄が行われる。
【0064】
ビデ洗浄が開始してから所定の時間が経過する、または制御部がビデ洗浄を停止する信号を受信すると、第2洗浄ノズル4の洗浄吐水口42からの吐水が終了する。
ビデ洗浄が終了すると、第2洗浄ノズル4は、洗浄ノズルの進退方向の後側に後退し、支持部5の第2洗浄ノズル挿入部512に収容される。上述したように、シャッタ22は、開口部21cを閉鎖している状態となるように付勢されているため、第2洗浄ノズル4が後退し、シャッタ22に開口部21cを開口する方向への外力が作用しなくなると、シャッタ22は開口部21cを閉鎖する方向に回動して開口部21cを閉鎖する。
【0065】
第2洗浄ノズル4の進出が開始してから、第2洗浄ノズル4が後退して支持部5の第2洗浄ノズル挿入部512に収容されるまでの間、シャッタ水膜形成部7が駆動し、水膜形成吐水部71の複数の吐水口76,76…からシャッタ本体23の前面23aに上側から水膜を形成するための水を吐水する。シャッタ水膜形成部7の駆動は、上述した第1洗浄ノズル3の進出が開始してから、第1洗浄ノズル3が後退して支持部5の第1洗浄ノズル挿入部511に収容されるまでの間の駆動と同様である。
【0066】
そして、シャッタ本体23の前面23aを流れた水は、シャッタ本体23の下縁部の第1切り欠き部233aおよび第2切り欠き部233bから下側に流れる。第2切り欠き部233bの下側には、進出した第2洗浄ノズル4が配置されているため、シャッタ本体23の前面23aを流れて、第2切り欠き部233bに入り込んだ水は、第2洗浄ノズル4(
図9参照)に流れ込む。第2洗浄ノズル4に流れ込んだ水は、第2洗浄ノズル4に沿って下方に流れ、第2洗浄ノズル4の外周面および前端面4cに水膜を形成する。
なお、本実施形態の局部洗浄装置1には、第2洗浄ノズル4に直接水を供給して水膜が形成する機構が設けられていない。
【0067】
次に、上述した本実施形態による局部洗浄装置および便器の作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した本実施形態による局部洗浄装置1では、シャッタ水膜形成部7は、第2洗浄ノズル4の進出が開始してから、第1洗浄ノズル3も進出し、進出した第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4が後退して支持部5の第1洗浄ノズル挿入部511および第2洗浄ノズル挿入部512に収容されるまでの間、および第2洗浄ノズル4の進出が開始してから、第2洗浄ノズル4が後退して支持部5の第2洗浄ノズル挿入部512に収容されるまでの間に、シャッタ本体23の前面23aに水を供給する。これにより、第1洗浄ノズル3または第2洗浄ノズル4が進出している便器11の使用時に、シャッタ本体23の前面23aに水膜が形成される。そして、シャッタ本体23の前面23aに形成された水膜によって、便器11の使用時にシャッタ本体23の前面23aに汚水や汚物が付着することを抑えることができる。
【0068】
また、第1洗浄ノズル3または第2洗浄ノズル4で局部洗浄を行う期間にシャッタ本体23の前面23aに水膜を形成することができるため、局部洗浄用の洗浄水が使用者や便器11の便鉢121(
図1参照)にあたってシャッタ本体23の前面23aに向かってはね返ったとしても、シャッタ本体23の前面23aに形成された水膜によってはね返った洗浄水がシャッタ本体23の前面23aに付着することを抑えることができる。
【0069】
以上、本発明による局部洗浄装置および便器の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、シャッタ水膜形成部7は、第2洗浄ノズル4の進出が開始してから、第1洗浄ノズル3も進出し、進出した第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4が後退して支持部5の第1洗浄ノズル挿入部511および第2洗浄ノズル挿入部512に収容されるまでの間、および第2洗浄ノズル4の進出が開始してから、第2洗浄ノズル4が後退して支持部5の第2洗浄ノズル挿入部512に収容されるまでの間に、シャッタ本体23の前面23aに水を供給するように構成されている。
【0070】
これに対し、シャッタ水膜形成部7は、第1洗浄ノズル3または第2洗浄ノズル4が進出し、第1洗浄ノズル3または第2洗浄ノズル4で局部洗浄を行う期間のみに、シャッタ本体23の前面23aに水を供給するように構成されていてもよい。
また、シャッタ水膜形成部7は、進出した第1洗浄ノズル3または第2洗浄ノズル4が後退してシャッタ22が開口部21c閉鎖した後にもシャッタ22の前面23aに水を供給して水膜を形成するように構成されていてもよい。
【0071】
また、便器11を使用する使用者を検知可能な検知部が設けられていて、シャッタ水膜形成部7は、検知部が使用者を検知すると、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4の進退にかかわらずシャッタ22の前面23aに水を供給して水膜を形成するように構成されていてもよい。
このような場合、検知部は、便器11が設けられた便所や、便器と洗面所などが設けられた水回り室、または便器11の近傍の所定の領域に使用者が親友したことを検知可能で、シャッタ水膜形成部7は、検知部が使用者を検知するとシャッタ22の前面23aに水を供給して水膜を形成するように構成されていてもよい。
また、検知部は、使用者が便器11の便座14に着座した着座状態を検知可能で、シャッタ水膜形成部7は、検知部が使用者の着座状態を検知すると、シャッタ22の前面23aに水を供給して水膜を形成するように構成されていてもよい。
また、検知部は、使用者が便器11の前側に起立した起立状態を検知可能で、シャッタ水膜形成部7は、検知部が使用者の起立状態を検知すると、シャッタ22の前面23aに水を供給して水膜を形成するように構成されていてもよい。
【0072】
シャッタ水膜形成部7は、検知部が使用者を検知してから使用者を検知しなくなるまでの期間に、シャッタ22の前面23aに水を供給して水膜を形成するように構成されていてもよいし、検知部が使用者を検知してから一定期間が経過するまでの期間にシャッタ22の前面23aに水を供給して水膜を形成するように構成されていてもよい。
【0073】
また、検知部が使用者を検知してシャッタ水膜形成部7がシャッタ22の前面23aに水を供給して水膜を形成している間に、第1洗浄ノズル3または第2洗浄ノズル4による局部洗浄が行われる場合は、シャッタ水膜形成部7は、検知部が使用者を検知してから進出して局部洗浄行った第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4が後退して、シャッタ22が開口部21cを閉鎖するまでの期間に、シャッタ22の前面23aに水を供給して水膜を形成するように構成されていてもよい。
また、シャッタ22の前面23aに水を供給して水膜を形成しているシャッタ水膜形成部7は、シャッタ22が開口部21cを閉鎖した後に所定の時間が経過するまでシャッタ22の前面23aに水を供給して水膜を形成するように構成されていてもよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、シャッタ本体23の前面23aの外縁部には、前側に突出する第1~第3リブ232a~232cおよび第1、第2切り欠き部233a,233bが形成されているが、第1~第3リブ232a~232cおよび第1、第2切り欠き部233a,233bが形成されていなくてもよい。
また、シャッタ本体23の前面23aの外縁部には、前側に突出するリブのみが形成され、切り欠き部が形成されていなくてもよい。また、シャッタ本体23の前面23aの外縁部に、前側に突出するリブ、および切り欠き部が形成される場合は、切り欠き部の位置や数は適宜設定されてよい。
【0075】
また、上記の実施形態では、シャッタ水膜形成部7は、シャッタ本体23の前面23aに水膜を形成しているが、シャッタ本体23の後面23bや、シャッタ本体23の前面23aおよび後面23bに水膜を形成してもよい。また、シャッタ水膜形成部7は、シャッタ本体23の後面23bや、シャッタ本体23の前面23aおよび後面23bの全体でなく、部分的に水膜を形成してもよい。
【0076】
また、上記の実施形態では、シャッタ水膜形成部7の複数の吐水口76,76…は、シャッタ本体23の前面23aの上縁部に沿って間隔をあけて配列されている、吐水口76の数や位置は適宜設定されてよい。例えば、吐水口が1つだけ設けられていてもよいし、1つだけ設けられた吐水口がスリット状に形成されていてもよい。
また、上記の実施形態では、シャッタ水膜形成部7の複数の吐水口76,76…の内径は、流水部73の上流側に接続されている吐水口76よりも流水部73の下流側に接続されている吐水口76のほうが漸次大きくなるように設定されているが、吐水口76の内径は適宜設定されてよい。
【0077】
また、上記の実施形態では、シャッタ本体23の後面に突起部231が形成され、第2洗浄ノズル4が突起部231と当接してシャッタ22を押し上げることで開口部21cを開口するように構成されているが、シャッタ本体23には突起部231が形成されておらず、第2洗浄ノズル4に設けられた突起部231がシャッタ本体23と当接してシャッタ本体23を押し上げて開口部21cを開口するように構成されていてもよい。
また、シャッタ本体23を押し上げるためのリンク機構が設けられていて、第2洗浄ノズル4の進退によってリンク機構が作動し、シャッタ22を回動させるように構成されていてもよい。
【0078】
また、上記の実施形態では、第2洗浄ノズル4の進退によってシャッタ22を開閉するように構成されているが、第1洗浄ノズル3の進退によってシャッタ22を開閉するように構成されていてもよい。
例えば、シャッタ本体23の後側の面における第1洗浄ノズル3と対向する位置に突起部が設けられていて、進退する第1洗浄ノズル3がこの突起部を押し上げたり、突起部と離間したりすることでシャッタ22を開閉するように構成されていてもよい。また、第1洗浄ノズル3に外周面39から突出する突起部が設けられていて、進退する第1洗浄ノズル3の突起部がシャッタ本体23を押し上げたりシャッタ本体23と離間したりすることでシャッタ22を開閉するように構成されていてもよい。
【0079】
このような場合も、第1洗浄ノズル3の外周面39は、シャッタ本体23と当接することがなく、第1洗浄ノズル3の外周面39に形成された水膜にシャッタ本体23が干渉することがない。
また、局部洗浄装置1には、シャッタ22を開閉するモータなどが設けられていて、第1洗浄ノズル3や第2洗浄ノズル4の進退によらずモータの駆動によってシャッタ22を開閉するように構成されていてもよい。
【0080】
また、上記の実施形態では、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4の進退機構は、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4の下側に設けられた線状のラック34,44とそれぞれのラック34,44の下側に設けられたピニオン52,53で構成されている。これに対し、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4の進退機構は、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4に接続されたベルト状のラックがそれぞれピニオンに巻き取り巻き出しされることで第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4を進退させるように構成されていてもよい。
【0081】
また、上記の実施形態による局部洗浄装置1には、第1洗浄ノズル3の外周面39および前端面3cに水膜を形成する第1洗浄ノズル水膜形成部6が設けられているが、第1洗浄ノズル水膜形成部6が設けられていなくてもよい。また、第2洗浄ノズル4の外周面に水膜を形成する機構が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 局部洗浄装置
3 第1洗浄ノズル(洗浄ノズル)
4 第2洗浄ノズル(洗浄ノズル)
7 シャッタ水膜形成部(水膜形成部)
11 便器
21c 開口部
22 シャッタ
23 シャッタ本体
23a 前面