(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】塗布容器
(51)【国際特許分類】
A45D 24/22 20060101AFI20220114BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20220114BHJP
B65D 47/42 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
A45D24/22 D
B65D83/00 J
B65D47/42 200
(21)【出願番号】P 2018104151
(22)【出願日】2018-05-30
【審査請求日】2020-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】神村 千秋
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-070809(JP,A)
【文献】実開昭59-066762(JP,U)
【文献】特開2000-041727(JP,A)
【文献】特開2004-149175(JP,A)
【文献】特開2011-230843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 8/00~ 8/40
A45D 24/00~31/00
A45D 42/00~97/00
B65D 35/44~35/54
B65D 39/00~55/16
B65D 83/00~83/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口を備える口部を有し、内容物を収容する容器本体と、
前記口部に保持され、前記上部開口に通じる吐出口を有するとともに該吐出口から吐出される内容物を塗布先に塗るための塗布部を有する栓体と、
前記塗布部を覆う蓋面を有するとともに前記栓体に対して着脱可能に、前記栓体又は前記口部に保持されるキャップ本体と、前記蓋面上に設けられる複数の櫛歯片と、該櫛歯片の相互間において前記蓋面の厚み方向に貫通するように設けられる連通口と、を備える櫛付きキャップと、
を備え、
当該櫛付きキャップが前記栓体に対して装着されたときは、前記吐出口から吐出された前記内容物を前記塗布部を介して前記櫛歯片間から吐出させ、
当該櫛付きキャップが前記栓体から脱着されときは、前記栓体により前記塗布部を前記口部側に保持させた状態で前記塗布先に前記内容物を塗布可能に構成した、塗布容器。
【請求項2】
前記口部又は前記栓体に対して前記櫛付きキャップを着脱可能に保持するねじ機構と、
前記口部又は前記栓体に対する前記櫛付きキャップの締め付け方向への回転が完了した際に、該口部又は該栓体に対する該櫛付きキャップの緩み方向への回転を規制する緩み止め機構と、を備える請求項1に記載の塗布容器。
【請求項3】
前記櫛歯片を覆う蓋体と、
前記櫛付きキャップに対して前記蓋体を着脱可能に保持する他のねじ機構と、を備える請求項1又は2に記載の塗布容器。
【請求項4】
前記塗布部は、前記吐出口を覆う多孔質体を備える請求項1~3の何れか一項に記載の塗布容器。
【請求項5】
前記容器本体は、内容物を収容し減容変形可能な内層体と、該内層体との相互間に位置する内部空間に外気を導入する外気導入口を有するとともに可撓性を有する外層体と、を備える請求項1~4の何れか一項に記載の塗布容器。
【請求項6】
前記吐出口を閉鎖する一方、前記内層体の内圧が高まると該吐出口を開放する内容物用逆止弁と、
前記栓体に設けられ、前記外気導入口に通じる通気口と、
前記内部空間の内圧が高まると前記通気口を閉鎖する一方、該内部空間の内圧が低まると該通気口を開放する空気用逆止弁と、を備える請求項5に記載の塗布容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体に収容した内容物を塗布先に直接塗布することができる塗布容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば白髪染め剤、ヘアマニキュア、ヘアカラー、整髪料等を収容する容器においては、このような内容物を頭髪に直接塗布すべく、複数の櫛歯片の間から内容物を吐出できるようにしたキャップを備える塗布容器が既知である。
【0003】
例えば特許文献1には、上部を開口させた容器本体と、複数の櫛歯片の間に吐出口を有し容器本体に装着される櫛付きキャップとを備え、容器本体に対して櫛付きキャップを回転させることによって、容器本体から吐出口に通じる通路を開閉することができる塗布容器が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献1をはじめとする従来の塗布容器は、櫛歯片を使って長い髪を梳かしながら内容物を塗布するものである。すなわち、このような塗布容器は、主に髪全体に対して内容物を塗布するものである。一方、白髪染め剤等は、髪の生え際に対して部分的に塗布することもあるが、このような櫛付きキャップでは塗布しにくいため、局所的に塗布することのできる別の容器を使わなければならず、手間を要している。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであって、容器本体に収容した内容物を、髪を梳かしながら塗布することも局所的に塗布することも可能な塗布容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上部開口を備える口部を有し、内容物を収容する容器本体と、
前記口部に保持され、前記上部開口に通じる吐出口を有するとともに該吐出口から吐出される内容物を塗布先に塗るための塗布部を有する栓体と、
前記塗布部を覆う蓋面を有するとともに前記栓体に対して着脱可能に、前記栓体又は前記口部に保持されるキャップ本体と、前記蓋面上に設けられる複数の櫛歯片と、該櫛歯片の相互間において前記蓋面の厚み方向に貫通するように設けられる連通口と、を備える櫛付きキャップと、
を備え、
当該櫛付きキャップが前記栓体に対して装着されたときは、前記吐出口から吐出された前記内容物を前記塗布部を介して前記櫛歯片間から吐出させ、
当該櫛付きキャップが前記栓体から脱着されときは、前記栓体により前記塗布部を前記口部側に保持させた状態で前記塗布先に前記内容物を塗布可能に構成した、塗布容器である。
【0008】
前記口部又は前記栓体に対して前記櫛付きキャップを着脱可能に保持するねじ機構と、
前記口部又は前記栓体に対する前記櫛付きキャップの締め付け方向への回転が完了した際に、該口部又は該栓体に対する該櫛付きキャップの緩み方向への回転を規制する緩み止め機構と、を備えることが好ましい。
【0009】
前記櫛歯片を覆う蓋体と、
前記櫛付きキャップに対して前記蓋体を着脱可能に保持する他のねじ機構と、を備えることが好ましい。
【0010】
前記塗布部は、前記吐出口を覆う多孔質体を備えることが好ましい。
【0011】
前記容器本体は、内容物を収容し減容変形可能な内層体と、該内層体との相互間に位置する内部空間に外気を導入する外気導入口を有するとともに可撓性を有する外層体と、を備えることが好ましい。
【0012】
前記吐出口を閉鎖する一方、前記内層体の内圧が高まると該吐出口を開放する内容物用逆止弁と、
前記栓体に設けられ、前記外気導入口に通じる通気口と、
前記内部空間の内圧が高まると前記通気口を閉鎖する一方、該内部空間の内圧が低まると該通気口を開放する空気用逆止弁と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の塗布容器では、栓体に設けた塗布部を使って内容物を局所的に塗布することができる。またこの塗布容器は、塗布部を覆って容器本体の口部又は栓体に着脱可能に保持され、複数の櫛歯片を有するとともにこれらの櫛歯片の相互間に栓体の吐出口に通じる連通口を有する櫛付きキャップを備えているため、この櫛付きキャップを取り付けた状態で使用すれば、髪を梳かしながら内容物を塗布することができる。
【0014】
また、口部又は栓体に対して櫛付きキャップを着脱可能に保持するねじ機構と、櫛付きキャップの締め付け方向への回転が完了した際に櫛付きキャップの緩み方向への回転を規制する緩み止め機構と、を設ける場合は、櫛付きキャップの着脱が簡単に行えるうえ、櫛付きキャップを取り付けた際には緩み止め機構によって不用意に外れることがないため、使い勝手に優れている。
【0015】
また、櫛歯片を覆う蓋体と、櫛付きキャップに対して蓋体を着脱可能に保持する他のねじ機構を設ける場合は、櫛歯片に対する埃等の付着を防止できるとともに、内容物が櫛歯片や吐出口の周辺で固化する不具合を有効に防止することができる。また、上述した緩み止め機構を設けたものに適用する場合は、取り外しにあたって蓋体を回転させても、櫛付きキャップが共回りすることがない。
【0016】
そして塗布部が、吐出口を覆う多孔質体を備える場合は、吐出口から吐出する内容物を多孔質体全体から染み出させることができるため、局所的に塗布するにあたって内容物が一部分だけに過剰に付いてしまう等の不具合が防止できる。
【0017】
また容器本体を、内容物を収容し減容変形可能な内層体と、内層体との相互間に位置する内部空間に外気を導入する外気導入口を有するとともに可撓性を有する外層体と、を備えるものとする場合は、内層体に空気を取り込むことなく内容物を吐出することができるため、内層体に収容した内容物の品質を維持することができる。また、容器本体の姿勢によらずに内容物を吐出することができるため、例えば側頭部に塗布する際にも内容物を安定的に吐出することができる。
【0018】
このような内層体と外層体を備えるものにあっては、上述した内容物用逆止弁と空気用逆止弁とを設けることが好ましく、この場合は、内層体への空気の侵入をより確実に防止できる。また、外層体を押圧した際には内容物が確実に吐出され、押圧を解除した際には、内容物の吐出が直ちに停止するため、意図した通りに内容物を吐出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に従う塗布容器の第一実施形態を示す半断面図である。
【
図2】
図1に示した塗布容器から蓋体を取り外した状態を示す、(a)は平面図であり、(b)は半断面図であり、(c)は(a)に示すB-Bに沿う断面図である。
【
図3】
図2に示した塗布容器から櫛付きキャップを取り外した状態を示す半断面図である。
【
図4】本発明に従う塗布容器の第二実施形態を示す半断面図である。
【
図5】
図4に示した塗布容器から蓋体を取り外した状態を示す、(a)は平面図であり、(b)は半断面図であり、(c)は(a)に示すE-Eに沿う断面図である。
【
図6】
図5に示した塗布容器から櫛付きキャップを取り外した状態を示す半断面図である。
【
図7】
図5に示した塗布容器において、外層体を押圧して内容物を吐出させる状況を説明する図である。
【
図8】
図7に示す状態の後、外層体が復元する状況を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に従う塗布容器の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書等における「上」、「下」の関係は、特に言及しない場合は、
図1に示すように容器本体(符号1)を正立させた状態での向きをいう。
【0021】
まず、
図1~
図3を参照しながら、本発明に従う塗布容器の第一実施形態について説明する。本実施形態の塗布容器は、容器本体1、栓体2(内栓3、外栓4で構成される)、櫛付きキャップ5、蓋体6を備えている。
【0022】
容器本体1は、有底筒状をなすものであって、内側に内容液を収容する収容空間Sを備えている。容器本体1の上部には、円筒状をなすとともに、上部開口1aを備える口部1bが設けられている。口部1bの上端部には、外向き爪部1cが設けられている。また口部1bの上下方向中間部分には、雄ねじ部1dが設けられている。更に口部1bの下端部には、
図1のA-A断面図に示すように、径方向外側に向けて突出する小突起1eと、径方向外側に向けて小突起1eよりも大きく突出するとともに小突起1eに対して周方向に間隔をあけて設けられる大突起1fが設けられている。
【0023】
内栓3は、上部開口1aに挿入されるとともに口部1bの内周面に液密に当接する筒状壁3aと、筒状壁3aから径方向外側に突出して口部1bの上端に当接するフランジ3bと、上方に向けて突出するように湾曲するとともに筒状壁3aの上端部を閉鎖する天壁3cと、天壁3cを貫通する吐出口3dとを備えている。また天壁3cの上面には、吐出口3dを覆って天壁3cに固着される多孔質体3eが設けられている。ここで多孔質体3eは、内部に形成された細かい孔によって表裏が連通しているものであり、吐出口3dから吐出される内容物を染み出させて内容物を局所的に塗布する塗布部として機能するものである。このような多孔質体3eとしては、繊維を寄せ集めたものや材料を発泡させたものなど、種々のものが挙げられるが、本実施形態ではスポンジを使用している。
【0024】
外栓4は、概略円筒状をなすように形成されていて、その下端部には、外向き爪部1cに係合する内向き爪部4aが設けられている。これにより外栓4は、容器本体1に保持される。また外栓4の内周面には、フランジ3bを収めて内栓3の容器本体1からの抜け出しを阻止する凹部4bが設けられている。
【0025】
櫛付きキャップ5は、有蓋筒状をなし、多孔質体3eを覆うとともに外栓4と口部1bを取り囲むキャップ本体5aを備えている。キャップ本体5aの内周面には、雄ねじ部1dに係合する雌ねじ部5bが設けられている。これにより、雄ねじ部1dと雌ねじ部5bが締め付けられる方向に櫛付きキャップ5を回転させると、櫛付きキャップ5を容器本体1に保持することができる。なお本実施形態の雄ねじ部1dと雌ねじ部5bは、本明細書等において「ねじ機構」と称した部位になる。
【0026】
またキャップ本体5aの内周面下端部には、
図1のA-A断面図に示すように、径方向内側に向けて突出する係止突起5cが設けられている。ここで係止突起5cは、櫛付きキャップ5を締め付け方向へ回転させると、回転が完了する直前で小突起1eを乗り越えて、大突起1fに当接して回転が完了するものである。そして櫛付きキャップ5の回転が完了した際、係止突起5cは、小突起1eと大突起1fの間に収まるため、櫛付きキャップ5の緩み方向への回転を規制することができる。なお本実施形態の小突起1e、大突起1f、及び係止突起5cは、本明細書等で「緩み止め機構」と称した部位になる。
【0027】
そしてキャップ本体5aの上部には、
図2に示すように平行に並ぶ複数の櫛歯片5dが設けられていて、櫛歯片5dの相互間には、表裏を貫通するとともに多孔質体3eを介して吐出口3dに通じる連通口5eが設けられている。
【0028】
更に、
図1に示すように櫛歯片5dの下方におけるキャップ本体5aの外周面には、雄ねじ部(第二雄ねじ部)5fが設けられている。
【0029】
蓋体6は、有蓋筒状をなし、櫛歯片5dを覆うようにして設けられるものである。蓋体6の内周面下端部には、第二雄ねじ部5fに係合する雌ねじ部(第二雌ねじ部)6aが設けられている。これにより、第二雄ねじ部5fと第二雌ねじ部6aが締め付けられる方向に蓋体6を回転させると、蓋体6を櫛付きキャップ5に保持することができる。なお本実施形態の第二雄ねじ部5fと第二雌ねじ部6aは、本明細書等で「他のねじ機構」と称した部位になる。
【0030】
このような構成になる塗布容器によって、髪を梳かしながら内容物を塗布するには、まず、
図1に示す蓋体6を緩み方向に回転させてこれを櫛付きキャップ5から取り外す。ここで本実施形態の櫛付きキャップ5は、上述した緩み止め機構によって緩み方向への回転が規制されているため、蓋体6を回転させた際に一緒に連れ回ることがない。そして、
図2のように櫛歯片5dを露出させた後は、例えば容器本体1を倒立姿勢に変位させるとともに、容器本体1の胴部を押圧することによって、容器本体1の内容物を、吐出口3d、多孔質体3eを介して連通口5eから吐出させることができるため、櫛歯片5dで髪を梳かしながら内容物を塗布することができる。
【0031】
また局所的に内容物を塗布するには、櫛付きキャップ5に対して緩み方向にやや強めに力を加える。これにより、小突起1eと大突起1fの間に収まっていた係止突起5cが小突起1eを乗り越えて、櫛付きキャップ5を緩み方向に回転させることができるため、容器本体1から櫛付きキャップ5を取り外すことができる。そして櫛付きキャップ5を取り外すことで、
図3に示すように多孔質体3eを露出させることができるため、多孔質体3eを塗布先に当てるようにして内容物を局所的に塗布することができる。
【0032】
内容物の塗布が終了した後は、
図1に示すように、蓋体6を櫛付きキャップ5に装着する。これにより、櫛歯片5dを覆い隠すことができるため、埃等の付着が防止されて衛生的に保管することができる。また、蓋体6を取り付けることによって櫛歯片5dや多孔質体3eに付着した内容物の乾燥を抑えることができるため、内容物が櫛歯片5d等の周辺で固化する不具合を防止することができる。
【0033】
次に、
図4~
図8を参照しながら、本発明に従う塗布容器の第二実施形態について説明する。本実施形態の塗布容器は、容器本体7(内層体8、外層体9で構成される)、栓体10(内栓11、内容物用逆止弁12、外栓13、空気用逆止弁14で構成される)、櫛付きキャップ15、蓋体16を備えている。
【0034】
内層体8は、その内側に内容物を収容可能な収容空間Sを備えている。本実施形態の内層体8は、薄肉の合成樹脂製であって、減容変形可能である。
【0035】
外層体9は、可撓性を有する合成樹脂製であって、有底筒状をなし、内側に内層体8を収めている。外層体9の上部には、円筒状をなすとともに、上方を開口させた口部9aが設けられている。ここで、口部9aの内側に収められた内層体8は、口部9aの上端部で外側に巻き返されていて、上方が開放した上部開口8aを備える状態で外層体9に収められている。また口部9aには、その上部に位置して上下方向に延びる溝部9bと、溝部9bの下方に位置して径方向外側に突出する係止部9cと、係止部9cの下方に位置して口部9aを径方向に貫通する外気導入口9dが設けられている。
【0036】
また内層体8と外層体9との相互間には、外気導入口9dに通じる内部空間Nが形成される。
【0037】
本実施形態における内層体8と外層体9は、相互に相溶性が低い合成樹脂を剥離可能に積層させたものである。内層体8及び外層体9を構成する合成樹脂としては、例えばナイロン樹脂(PA)、エチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、変性ポリオレフィン樹脂(例えば三井化学株式会社製「アドマー」(登録商標)等)、ポリプロピレン樹脂(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)や高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)をはじめとするポリエチレン樹脂(PE)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)等を採用することができる。このような内層体8と外層体9は、内層体8を形成する合成樹脂素材と外層体9を形成する合成樹脂素材とが積層されたパリソンを、ブロー成形することによって得ることができるが、他にも、内層体8の合成樹脂素材と外層体9の合成樹脂素材とを積層させた試験管状のプリフォームを準備し、このプリフォームを2軸延伸ブロー成形して形成することや、内層体及び外層体を個別に形成し、その後、内層体を外層体の内側に配置したものも採用することができる。
【0038】
内栓11は、上部開口8aに挿入されるとともに口部9aとの間で内層体8を挟持する筒状壁11aと、筒状壁11aから径方向外側に突出して口部9aの上端との間で内層体8を挟持するフランジ11bと、水平方向に延在して筒状壁11aの上端部を閉鎖する天壁11cと、天壁11cの中央部を貫通する縦向き挿入孔11dと、縦向き挿入孔11dの径方向外側において天壁11cを貫通する吐出口11eとを備えている。
【0039】
内容物用逆止弁12は、円柱状をなすとともに下端部を径方向外側に膨出させた軸部12aと、軸部12aの外周面から径方向外側に向けて延在するドーナツ板状の弁体12bとを備えている。そして、上方から軸部12aを縦向き挿入孔11dに挿入して内栓11に保持される。ここで、内容物用逆止弁12を内栓11に保持させた状態において、弁体12bは、吐出口11eを覆って天壁11cの上面に着座している。
【0040】
なお、先に述べた第一実施形態の多孔質体3eと同様、
図4に示すように本実施形態の内栓11も、内容物を局所的に塗布することができる塗布部として機能する多孔質体11fを備えている。本実施形態の多孔質体11fは、その中央部が軸部12aによって支持されていて、弁体12bの上方には、弁体12bの天壁11cからの離反を許容する空間が設けられている。
【0041】
外栓13は、概略円筒状をなすように形成されていて、その上下方向中央部には、径方向内側に突出して係止部9cに係合し、外層体9に対して外栓13を保持する被係止部13aが設けられている。また外栓13の内周面には、フランジ11bを収めて内栓11の外層体9からの抜け出しを阻止する凹部13bと、溝部9bに挿入されて外層体9に対して外栓13を回り止め保持するリブ13cが設けられている。
【0042】
また外栓13の外周面には、雄ねじ部13dが設けられていて、雄ねじ部13dの下方には、先に述べた第一実施形態の小突起1e及び大突起1fと同様の構成になる小突起13e及び大突起13fが設けられている(
図4のC-C断面図を参照)。そして小突起13e及び大突起13fの下方には、外栓13を径方向に貫通する横向き挿入孔(通気口)13gが設けられている。なお、外栓13を外層体9に保持した状態において、外栓13の下端部における内周面は、口部9aの外周面に気密に当接している。
【0043】
空気用逆止弁14は、
図4のD部拡大図に示すように、円柱状をなす柱状部14aと、柱状部14aの一端部に設けられる円板状部14bと、柱状部14aの他端部に設けられる膨出部14cを備えている。本実施形態の空気用逆止弁14は、外栓13の横向き挿入孔13gに挿入され、円板状部14bが外栓13の径方向外側に位置するとともに膨出部14cが外栓13の径方向内側に位置するようにして取り付けられる。ここで空気用逆止弁14は、横向き挿入孔13gに対してスライド可能に保持されている。また空気用逆止弁14は、柱状部14aの外周面において柱状部14aの軸線に沿って延在し、その後、円板状部14bの内側面において円板状部14bの径方向内側から外側に向かって延在する溝部14dを備えている。
【0044】
櫛付きキャップ15は、有蓋筒状をなし、多孔質体11fを覆うとともに外栓13と空気用逆止弁14を取り囲むキャップ本体15aを備えている。キャップ本体15aの内周面には、雄ねじ部13dに係合する雌ねじ部15bが設けられている。これにより、雄ねじ部13dと雌ねじ部15bが締め付けられる方向に櫛付きキャップ15を回転させると、櫛付きキャップ15を外栓13に保持することができる。なお、雄ねじ部13dと雌ねじ部15bは、先に述べた第一実施形態の雄ねじ部1dと雌ねじ部5bと同様に、本明細書等における「ねじ機構」として機能する。
【0045】
またキャップ本体15aの内周面において、雌ねじ部15bの下方には、係止突起15cが設けられている。
図4のC-C断面図に示したように係止突起15cは、先に述べた第一実施形態の係止突起5cと同様、小突起13e及び大突起13fとともに本明細書等における「緩み止め機構」として機能する。
【0046】
そしてキャップ本体15aの上部には、
図5に示すように平行に並ぶ複数の櫛歯片15dが設けられていて、櫛歯片15dの相互間には、表裏を貫通するとともに多孔質体11fを介して吐出口11eに通じる連通口15eが設けられている。更に
図4に示すように、櫛歯片15dの下方におけるキャップ本体15aの外周面には、雄ねじ部(第二雄ねじ部)15fが設けられている。
【0047】
蓋体16は、櫛歯片15dを覆うようにして設けられるものであって、その内周面下端部には、第二雄ねじ部15fに係合する雌ねじ部(第二雌ねじ部)16aが設けられている。なお、第二雄ねじ部15fと第二雌ねじ部16aも、先に述べた第二雄ねじ部5fと第二雌ねじ部6aと同様に、「他のねじ機構」として機能する。
【0048】
このような構成になる第二実施形態の塗布容器も、櫛付きキャップ15を使って髪を梳かしながら内容物を塗布することができる。また、
図6に示すように、櫛付きキャップ15を取り外すことによって、多孔質体11fを使って内容物を局所的に塗布することができる。
【0049】
ところで第二実施形態の塗布容器から内容物を吐出させるには、
図7に示すように外層体9の胴部を押圧する。これにより、内部空間Nを介して内層体8にも圧力が加わるため、収容空間Sが加圧される。そして収容空間Sの内容物は、弁体12bを天壁11cから離反させつつ、吐出口11eを通過して多孔質体11fに浸透して、連通口15eから吐出させることができる。なお、内部空間Nが加圧された際、空気用逆止弁14は径方向外側にスライドして、膨出部14cが横向き挿入孔13gを閉鎖するため、内部空間Nの空気が外界に漏れることはなく、内層体8を確実に加圧することができる。
【0050】
内容物の吐出を停止させるには、外層体9への押圧を解除すればよい。これにより、内部空間Nへの加圧も停止するため、
図8に示すように弁体12bが復元して天壁11cに着座し、吐出口11eは閉鎖される。また外層体9は可撓性を有するために復元し始めるが、このとき内部空間Nは減圧されるため、外気は、櫛付きキャップ15と外栓13との隙間を通り、空気用逆止弁14に設けた溝部14dを通過して、外気導入口9dを介して内部空間Nに導入される。従って、内層体8を減容変形させたまま、外層体9だけを復元させることができるため、次回内容物を吐出する際は、そのまま外層体9の胴部を押圧すればよい。
【0051】
以上、本発明について具体的な実施形態を示しながら説明したが、本発明に従う塗布容器は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に従う範疇で種々の変更を加えたものも含まれる。例えば、第一実施形態のねじ機構は、櫛付きキャップ5の雌ねじ部5bを容器本体1の雄ねじ部1dに係合させるものであったが、雄ねじ部1dは外栓4に設けてもよい。また第二実施形態のねじ機構は、櫛付きキャップ15の雌ねじ部15bを外栓13の雄ねじ部13dに係合させるものであったが、雄ねじ部13dは外層体9に設けてもよい。また、上述した実施形態においては、内栓3、11の天壁3c、11cに多孔質体3e、11fを設けたが、多孔質体3e、11fを省略して、天壁3c、11cによって内容物が塗り拡げられるように構成してもよい。また空気用逆止弁14は、内容物用逆止弁12のように、弁体が外栓13の壁面に着座、離反して横向き挿入孔13gを開閉するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1:容器本体
1a:上部開口
1b:口部
1c:外向き爪部
1d:雄ねじ部
1e:小突起
1f:大突起
2:栓体
3:内栓
3a:筒状壁
3b:フランジ
3c:天壁
3d:吐出口
3e:多孔質体(塗布部)
4:外栓
4a:内向き爪部
4b:凹部
5:櫛付きキャップ
5a:キャップ本体
5b:雌ねじ部
5c:係止突起
5d:櫛歯片
5e:連通口
5f:第二雄ねじ部
6:蓋体
6a:第二雌ねじ部
7:容器本体
8:内層体
8a:上部開口
9:外層体
9a:口部
9b:溝部
9c:係止部
9d:外気導入口
10:栓体
11:内栓
11a:筒状壁
11b:フランジ
11c:天壁
11d:縦向き挿入孔
11e:吐出口
11f:多孔質体(塗布部)
12:内容物用逆止弁
12a:軸部
12b:弁体
13:外栓
13a:被係止部
13b:凹部
13c:リブ
13d:雄ねじ部
13e:小突起
13f:大突起
13g:横向き挿入孔(通気口)
14:空気用逆止弁
14a:柱状部
14b:円板状部
14c:膨出部
14d:溝部
15:櫛付きキャップ
15a:キャップ本体
15b:雌ねじ部
15c:係止突起
15d:櫛歯片
15e:連通口
15f:第二雄ねじ部
16:蓋体
16a:第二雌ねじ部
N:内部空間
S:収容空間