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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】二酸化炭素吸着材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/20 20060101AFI20220128BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20220128BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20220128BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20220128BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20220128BHJP
   D06M 13/332 20060101ALI20220128BHJP
   D06M 101/40 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
B01J20/20 E
B01J20/22 A
B01J20/30
B01D53/62
C01B32/50
D06M13/332
D06M101:40
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018109482
(22)【出願日】2018-06-07
(65)【公開番号】P2019209293
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】吉川 正晃
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-161843(JP,A)
【文献】特表平03-502774(JP,A)
【文献】特表2014-522298(JP,A)
【文献】特開平08-191879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28、20/30-20/34
C01B 32/00-32/991
D06M 13/00-15/715
B01D 53/02-53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系吸着材に、アミン化合物を担持してなる二酸化炭素吸着材であって、
前記炭素系吸着材の表面が疎水性であり、
前記炭素系吸着材の表面における表面酸素量と表面炭素量との原子比が0.05以下である二酸化炭素吸着材。
【請求項2】
前記炭素系吸着材が活性炭素繊維である請求項1に記載の二酸化炭素吸着材。
【請求項3】
前記活性炭素繊維がPAN系活性炭素繊維またはピッチ系活性炭素繊維である請求項2に記載の二酸化炭素吸着材。
【請求項4】
前記炭素系吸着材のBET比表面積が1500~2000m/gである請求項1~3のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸着材。
【請求項5】
前記アミン化合物が、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンから選ばれる少なくとも一種以上を主成分とするものである請求項1~4のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸着材。
【請求項6】
前記アミン化合物の前記炭素系吸着材に対する担持量が5~15質量%である請求項1~5のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸着材。
【請求項7】
炭素系吸着材に、アミン化合物を担持してなる二酸化炭素吸着材の製造方法であって、
原料活性炭を窒素ガス雰囲気中600~1200℃で0.5~2.0時間熱処理することにより、炭素系吸着材を調製する疎水化工程、
前記炭素系吸着材にアミン化合物を含浸担持する担持工程、
を行う二酸化炭素吸着材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素系吸着材に、アミン化合物を担持してなる二酸化炭素吸着材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に起因すると考えられる気象変動や災害の頻発が、農業生産、住環境、エネルギー消費等に多大な影響を及ぼしている。地球温暖化の原因物質としては大気中の二酸化炭素が着目されており、その発生源として、火力発電所、製鐵所の高炉、転炉、各種製造所におけるボイラー、キルン等、さらには、ガソリン、重油、軽油等を燃料とする自動車、船舶、航空機等の輸送機器がある。
また、地球温暖化の影響が各所で取りざたされるなか、人の集まる住環境における二酸化炭素濃度の上昇による環境悪化についても着目され始めており、住環境における二酸化炭素濃度を所定レベル以下に維持する技術が求められている。
【0003】
このような状況下、種々環境における二酸化炭素を吸着、吸収、固定化する技術として、種々の二酸化炭素吸着材が研究されている。たとえば、特許文献1には、炭素系吸着材にアミン化合物を担持してなる二酸化炭素吸着材が開示されている。これによると、アミン化合物を担持した炭素系吸着材は、高い二酸化炭素吸着能力を有するものと考えられている。
【0004】
また、特許文献2,3には、炭素系吸着材表面における酸素原子に基づいて親水性を発揮する親水性部分を除去することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-119958号公報
【文献】国際公開第97/01388号パンフレット
【文献】国際公開第97/12671号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、実際の室内空気や、燃焼排ガスから二酸化炭素を吸着除去する際には、二酸化炭素吸着材が空気や排ガスに含まれる水分を優先的に吸着するため、二酸化炭素吸着材の二酸化炭素の吸着能力は、乾燥環境に比べて乏しくなる欠点があった。そこで、供給するガスをあらかじめ除湿して、二酸化炭素吸着材の二酸化炭素吸着能力を高く維持するように構成することも考えられるが、除湿装置等を追加することにより装置構成が大掛かりになり、一般の住環境に適用しにくくなるため、二酸化炭素吸着材自体の性能改善が望まれている
【0007】
したがって、本発明は上記実状に鑑み、相対湿度の高い環境中でも二酸化炭素吸着能力が高く維持される二酸化炭素吸着材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、炭素系吸着材に、アミン化合物を担持してなる二酸化炭素吸着材を鋭意研究の結果、これに用いられる炭素系吸着材として、表面が疎水性であるものを用いた場合に、有意に二酸化炭素吸着能力が高くなることを実験的に見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、上記目的を達成するための本発明の二酸化炭素吸着材の特徴構成は、
炭素系吸着材に、アミン化合物を担持してなる二酸化炭素吸着材であって、前記炭素系吸着材の表面が疎水性であり、前記炭素系吸着材の表面における表面酸素量と表面炭素量との原子比が0.05以下である点にある。
【0010】
また、表面が疎水性の炭素系吸着材としては、粒状活性炭、活性炭素繊維、粉末状活性炭、分子ふるい炭素、等が用いられるが、中でも活性炭素繊維であれば、比表面積が大きくかつ、粒状活性炭に比べて疎水性が高いという性質を有するので好ましい。活性炭素繊維としては、ピッチ系、PAN系、フェノール系、セルロース系などの各種の活性炭素繊維が挙げられるが、中でもPAN系活性炭素繊維またはピッチ系活性炭素繊維は、窒素および酸素含有量が少なく、特に天然物由来の活性炭に比して表面酸素がきわめて少ないことから、疎水性がきわめて高いために特に好ましい。このような炭素系吸着材のBET比表面積は、1500~2000m/gであると二酸化炭素の吸着表面が十分に大きく、高い吸着性を発揮できることから好ましい。
【0011】
また、アミン化合物としては、ポリエチレンイミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエチレンアミンペンタミン、メチルジエタノールアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサエチレンジアミン、ベンジルアミン等が挙げられるが、中でも、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンから選ばれる少なくとも一種以上を主成分とするものが好適に用いられ、高い二酸化炭素吸収性を発揮する。このようなアミン化合物の炭素系吸着材に対する担持量は、少なすぎても多すぎても十分な効果を発揮せず、好適な担持量として5~15質量%であることが明らかになっている。さらに好ましくは7~12質量%である。
【0012】
また、炭素系吸着材の疎水性に関して、炭素系吸着材の表面における表面酸素量と表面炭素量との原子比が0.05以下であると、炭素系吸着材自体が十分に疎水性となっており、二酸化炭素含有ガス中に水蒸気が含まれていても、水蒸気の影響を受けることなく、二酸化炭素吸着材はその炭素系吸着材表面において二酸化炭素と接触することができる。そして、二酸化炭素吸着材に接触した二酸化炭素は、二酸化炭素吸着材に担持されたアミン化合物と反応するため、二酸化炭素を吸着固定することができる。
【0013】
また、本発明の二酸化炭素吸着材の製造方法の特徴構成は、
炭素系吸着材に、アミン化合物を担持してなる二酸化炭素吸着材の製造方法であって、 原料活性炭を窒素ガス雰囲気中600~1200℃で0.5~2.0時間熱処理することにより、炭素系吸着材を調製する疎水化工程、前記炭素系吸着材にアミン化合物を含浸担持する担持工程を行う点にある。
【0014】
つまり、疎水化工程において、原料活性炭の表面酸素を非酸化雰囲気中で熱処理することにより除去し、表面が疎水性の炭素系吸着材を得ることができる。この炭素系吸着材にアミン化合物を担持すると、アミン化合物により炭素系吸着材表面に生成したアミン残基が二酸化炭素を捕捉して、吸着する能力を付与することができる。
【0016】
非酸化雰囲気としては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス雰囲気や、水素含有窒素ガス等の還元性雰囲気を採用できるが上記特徴構成では、窒素ガス雰囲気が取り扱い容易で、安価であるので、汎用性が高く用いられる。熱処理温度としては、原料活性炭の多孔質構造を破壊することなく表面の含酸素官能基を除去できる600~1200℃とする。また、熱処理の反応時間は、短すぎると表面酸素が十分除去されずに、炭素系吸着材が疎水性を十分に発揮し得なくなるので、0.5時間以上とし、長すぎても、経済的ではないので、2時間未満とする。
【0017】
その結果、上述の構成により、表面の親水性酸素官能基を表面処理により除去した活性炭素繊維を支持担体として用い、これに二酸化炭素の吸着能力が優れるアミン化合物を担持して、相対湿度の高い環境中でも有効に二酸化炭素を吸着する吸着材を得ることができた。
【発明の効果】
【0018】
したがって、室内空気中の二酸化炭素の除去や、発電所、工場などの燃焼排ガスから二酸化炭素を除去するのに、水分の影響を受けにくくなった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態にかかる二酸化炭素吸着材およびその製造方法を説明する。尚、以下に好適な実施例を記すが、これら実施例はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0020】
本発明の実施形態にかかる二酸化炭素吸着材は、
炭素系吸着材に、アミン化合物を担持してなる二酸化炭素吸着材であって、
前記炭素系吸着材の表面が疎水性であるものである。
【0021】
このような二酸化炭素吸着材は、
原料活性炭を非酸化雰囲気中で熱処理することにより、炭素系吸着材を調製する疎水化工程、
前記炭素系吸着材にアミン化合物を含浸する担持工程、
を行うことによって製造される。
【0022】
〔疎水化工程〕
上記疎水化工程では、原料活性炭を非酸化雰囲気中で熱処理することにより、炭素系吸着材を調製する。原料活性炭の性状は特に限定されるものではないが、粒状活性炭、活性炭素繊維、粉末状活性炭、分子ふるい炭素等が用いられるが、中でも活性炭素繊維であれば、比表面積が大きくかつ、粒状活性炭に比べて疎水性が高い。活性炭素繊維としては、ピッチ系、PAN系、フェノール系、セルロース系などの各種の活性炭素繊維が挙げられるが、中でもPAN系活性炭素繊維またはピッチ系活性炭素繊維は、窒素および酸素含有量が少なく、特に天然物由来の活性炭に比して表面酸素がきわめて少ないことから、疎水性がきわめて高いために特に好ましい。非酸化雰囲気としては、水蒸気や二酸化炭素等の賦活用ガスを含まない、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス雰囲気や、水素含有窒素ガス等の還元性雰囲気を採用でき、中でも窒素ガス雰囲気が取り扱い容易で、安価であるので、汎用性が高く用いられている。熱処理温度としては、原料活性炭の多孔質構造を破壊することなく表面の含酸素官能基を除去できる600~1200℃とする。また、熱処理の反応時間は、短すぎると表面酸素が十分除去されずに、炭素系吸着材が疎水性を十分に発揮し得なくなり、長すぎても、経済的ではないので、0.5~2.0時間とする。
【0023】
このように疎水化工程を行うと、細孔径10~30Å程度、細孔容積0.3~1.8ml/g程度、BET比表面積500~2000m/g、表面酸素量/表面炭素量の原子比が0.1~0.3程度の原料活性炭が、細孔径10~30Å程度、細孔容積0.3~1.8ml/g程度、BET比表面積500~2000m/g、表面酸素量/表面炭素量の原子比が0.05以下程度の炭素系吸着材に変換される。
【0024】
尚、細孔径は、比表面積と細孔容積からの解析に従う値であり、細孔容積、BET比表面積はそれぞれ、JISK1477に定められる比表面積測定方法に従って求めた。また、表面酸素量と表面炭素量との原子比(表面酸素量/表面炭素量)は、XPS(光電子分光分析装置)に従って測定することができる。
【0025】
〔担持工程〕
上記疎水化工程で得られた炭素系吸着材は、アミン化合物を含浸する担持工程により、その表面にアミン由来の残基を有する二酸化炭素吸着材となる。
前記アミン化合物としては、ポリエチレンイミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエチレンアミンペンタミン、メチルジエタノールアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサエチレンジアミン、ベンジルアミン等が挙げられるが、中でも、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンから選ばれる少なくとも一種以上を主成分とするものが好適に用いられる。また、担持工程は、これらアミン化合物の水溶液や、アルコール溶液を炭素系吸着材と混合し、十分浸透させつつ、水やアルコールを除去することにより行うことができる。この際、アミン化合物は、炭素系吸着材に対して5~15質量%、好ましくは7~12質量%に担持されるようにアミン化合物濃度、炭素系吸着材に対する混合比を調節する。
【0026】
このようにして得られた二酸化炭素吸着材は、高湿度で二酸化炭素を含有する排ガスから効率よく二酸化炭素を吸着除去できることが明らかになった。以下に二酸化炭素吸着材の好適な実施例を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
<実施例I>
炭素系吸着材として、石炭ピッチを原料とするBET比表面積1500m/gの活性炭素繊維(大阪瓦斯社製、15A)を用い、窒素雰囲気中で1100℃に加熱し、1時間保持する疎水化工程を行い、表面酸素官能基を除去して疎水性にした活性炭素繊維(15A-H1100)を得た。尚、ここで用いた活性炭素繊維は、
細孔径が、15~20Å、(比表面積と細孔容積からの解析による以下同じ)
細孔容積が、1.0~1.5ml/g(JISK1477に定められる比表面積測定方法による以下同じ)、
BET比表面積が、1300~1600m/g(JISK1477に定められる比表面積測定方法による以下同じ)、
表面酸素量/表面炭素量が0.15(XPS(光電子分光分析装置)による以下同じ)、
であった。
【0028】
〔担持工程〕
これを、アミン化合物としてのエチレンジアミンのエタノール溶液に24時間含浸させた(含浸ステップ)。その後、余剰の溶液を濾過してアミン担持活性炭素繊維を取り出し、次いで、これを100℃で重量が安定するまで乾燥して(溶媒除去ステップ)二酸化炭素吸着材を得た。すなわち、含浸ステップと溶媒除去ステップを順に行う担持工程を行って二酸化炭素吸着材を得た。この時のエチレンジアミンの担持量は、エタノール溶液に含まれるアミン化合物濃度を種々変更して作成することにより、0~20質量%の範囲で担持量の異なる、各種二酸化炭素吸着材として得ることができた。ここで、アミン化合物の担持量は、炭素系吸着材の担持工程前後の質量変化より、
A0=炭素系吸着材の担持工程前の質量(g)
A1=炭素系吸着材の担持工程後の質量(g)
として、
アミン化合物の担持量(質量%)=[(A1-A0)/A1]×100
により求めた。
【0029】
〔吸着性能の測定〕
得られた二酸化炭素吸着材は、
細孔径10~15Å、
細孔容積0.8~1.2ml/g、
BET比表面積1000~1400m/g、
表面酸素量/表面炭素量0.05以下、
となっていた。
【0030】
また、二酸化炭素吸着性能を、以下の条件のガス流通試験により測定し(実施例1~11)、後述の吸着材比質量に基づき比較した。
【0031】
(二酸化炭素吸着性能の測定方法)
・装置:常圧型固定床ガス流通式反応器
・サンプル充填量:1.0g
・二酸化炭素濃度:200ppm
・バランスガス:調湿空気、湿度0%、40%、60%
・流通ガス量:300ml/min
・温度:30℃
【0032】
尚、二酸化炭素吸着性能を示す吸着材比質量は、二酸化炭素吸着材のガス流通前後の質量変化より、
C0=二酸化炭素吸着材のガス流通前の質量(g)
C1=二酸化炭素吸着材のガス流通後の質量(g)
として、
吸着材比質量(%)=[(C1-C0)/C0]×100
により求めた。結果を表1に示す。
【0033】
<比較例>
(1)実施例で用いた活性炭素繊維(15A)を、表面処理しない(疎水化工程を行わない)そのままの状態で用い、担持工程を行い、二酸化炭素吸着性能を測定した(比較例12~16)。
(2)市販の二酸化炭素吸着材として流通する、ゼオライト13X(水澤化学(株)製)を用い、二酸化炭素吸着性能を測定した(比較例17~19)。
【0034】
これらの二酸化炭素吸着材の二酸化炭素吸着性能を、実施例と同様に調べた結果を表1にあわせて示す。
【0035】
【表1】
【0036】
〔結果〕
表1の実施例1~8に示す通り、疎水化工程を行った活性炭素繊維15A-H1100では、相対湿度0%の乾燥空気を通流させると、0~12質量%の範囲で、アミン化合物の担持量を増やすほど二酸化炭素吸着量は増加した。ただし、それ以上の15,20質量%担持した場合には、二酸化炭素吸着量は減少した。これは、アミン担持量が多すぎると、活性炭素繊維の細孔を塞いでしまうためであると考えられる。
【0037】
アミン化合物の担持量を12質量%とした15A-H1100を用い、相対湿度を40,60%とした場合の結果を比較すると、相対湿度40%の時に、相対湿度0%の乾燥空気中よりも二酸化炭素吸着量は増加した。相対湿度60%とすると、吸着量は減少したが、0.71%と、比較的高い値を示した。
【0038】
比較例では、表面処理をしておらず、アミン化合物を担持していない、親水性酸素官能基を持つ活性炭素繊維15Aからなる二酸化炭素吸着材(比較例12~13)と、それに12質量%のアミンを担持した二酸化炭素吸着材(比較例14~16)、およびゼオライト13Xからなる二酸化炭素吸着材(比較例17~19)の結果をまとめて示す。親水性酸素官能基を持つ活性炭素繊維15Aからなる二酸化炭素吸着材の場合、二酸化炭素吸着量は小さく、アミンを12質量%担持した二酸化炭素吸着材は、吸着量は増加しているものの、同じ湿度条件の実施例と比べるといずれも吸着量は低いことがわかる。さらに、ゼオライト13Xからなる二酸化炭素吸着材は、乾燥空気中で二酸化炭素を少し吸着したが、湿度を与えると、吸着量は非常に小さくなっている。
【0039】
これらの結果から、炭素系吸着材として表面が疎水性のものを用いると、従来の二酸化炭素吸着材に比べて高湿度環境下でも高い二酸化炭素吸着性能を示すことが分かった。また、アミン化合物の炭素系吸着材に対する担持量が5~15質量%、さらに好ましくは7~15質量%である場合には、吸着性能として、吸着材比質量がきわめて高く、特に好ましい二酸化炭素吸着材が得られていることがわかった。
【0040】
<実施例II>
実施例Iのエチレンジアミンに代え、ジエチレントリアミンを用いて二酸化炭素吸着材を作成し、同様に二酸化炭素吸着性能を測定したところ、表2のようになった。
【0041】
【表2】
【0042】
実施例20~22を実施例1~3と比較すると、ジエチレントリアミンについても、エチレンジアミンよりも十分高い二酸化炭素吸着能を発揮することがあきらかになった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明で得られる二酸化炭素吸着材は、ビル管理法に基づき二酸化炭素濃度を下げるため換気を頻繁に行う必要のある事務所、商業施設、映画館等に適する。また、高濃度の二酸化炭素を排出し、地球温暖化の要因となる火力発電所、各種工場等に用いる事ができる。