(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】蒸発燃料処理装置
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
F02M25/08 Z
F02M25/08 G
(21)【出願番号】P 2018134418
(22)【出願日】2018-07-17
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸博
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-017172(JP,A)
【文献】特開2016-176337(JP,A)
【文献】特開2018-031361(JP,A)
【文献】特開2017-203415(JP,A)
【文献】特開2017-203414(JP,A)
【文献】特開2017-137844(JP,A)
【文献】特開平02-130255(JP,A)
【文献】特開2016-164386(JP,A)
【文献】特開2016-020675(JP,A)
【文献】特開2017-110514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内で発生した蒸発燃料を内燃機関に接続されている吸気管に供給する蒸発燃料処理装置であって、
燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタと、
キャニスタに外気を供給する第1配管と、キャニスタからスロットルバルブ上流側の吸気管にパージガスを供給する第2配管と、を有するパージ配管と、
第2配管上に配置されており、キャニスタと吸気管が連通する連通状態と、キャニスタと吸気管の連通を遮断する遮断状態と、に切替わるパージ制御バルブと、
パージ制御バルブより上流側のパージ配管に設けられており、パージガスをキャニスタから吸気管に圧送するポンプと、
パージ制御バルブとポンプの間に設けられている圧力センサと、
圧力センサの検出値に基づいてパージ経路の状態を判断する判断部と、
を備えており、
判断部は、パージ制御バルブを遮断状態にしてポンプを駆動したときの圧力センサの第1検出値を第1基準値と比較し、次いで、パージ制御バルブを連通状態にしてポンプを駆動したときの圧力センサの第2検出値を
圧力センサより下流で不具合が生じているか否かを判断する第2基準値
及び圧力センサより上流で不具合が生じているか否かを判断する第3基準値の両方と比較することによって、パージ経路の状態を判断する蒸発燃料処理装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の蒸発燃料処理装置であって、
第1検出値に基づいて第2基準値を補正する蒸発燃料処理装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の蒸発燃料処理装置であって、
前記ポンプが、第2配管上に設けられている蒸発燃料処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、蒸発燃料処理装置に関する技術を開示する。特に、パージ経路の状態を判断することが可能な蒸発燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、燃料タンクで蒸発した蒸発燃料を吸気管に供給する蒸発燃料処理装置が開示されている。特許文献1の蒸発燃料処理装置は、過給機を有する車両に用いられており、過給機の上流側と下流側にパージガスを供給している。特許文献1では、過給機の上流側にパージガスを供給する上流側経路上にパージ制御バルブ,ポンプ及び圧力センサを配置している。特許文献1では、上流側経路の状態(不具合の有無)を判断するため、パージ制御バルブを開いた状態でポンプを駆動し(パージガスが吸気管に供給される状態にし)、圧力センサの値を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、圧力センサの検出値と基準値(圧力閾値)を比較し、パージ経路(上流側経路)の状態(不具合の有無)を判断している。具体的には、圧力センサの検出値が基準値以下であればパージ経路が正常であると判断し、圧力センサの検出値が基準値を超えていればパージ経路に異常が生じていると判断している。このように、特許文献1の蒸発燃料処理装置は、パージ経路(上流側経路)の不具合の有無を検出することができる。しかしながら、特許文献1では、パージ経路上の不具合が生じている部分(不具合が生じた部品)、不具合の内容までは特定することができない。パージ経路に不具合が生じたときに、不具合が生じている部分等(不具合の種類)を特定することができれば、その後の対応が容易となる。本明細書は、パージ経路に不具合が生じたときに、不具合の種類を特定することが可能な蒸発燃料処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する第1技術は、燃料タンク内で発生した蒸発燃料を内燃機関に接続されている吸気管に供給する蒸発燃料処理装置に関する。その蒸発燃料処理装置は、キャニスタと、パージ配管と、パージ制御バルブと、ポンプと、圧力センサと、判断部を備えていてよい。キャニスタは、燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸着してよい。パージ配管は、キャニスタに外気を供給する第1配管と、キャニスタからスロットルバルブ上流側の吸気管にパージガスを供給する第2配管を有していてよい。パージ制御バルブは、第2配管上に配置されていてよい。また、パージ制御バルブは、キャニスタと吸気管が連通する連通状態と、キャニスタと吸気管の連通を遮断する遮断状態に切替わってよい。ポンプは、パージ制御バルブより上流側のパージ配管に設けられていてよい。また、ポンプは、パージガスをキャニスタから吸気管に圧送してよい。圧力センサは、パージ制御バルブとポンプの間に設けられていてよい。判断部は、圧力センサの検出値に基づいてパージ経路の状態を判断してよい。この蒸発燃料処理装置では、判断部は、パージ制御バルブを遮断状態にしてポンプを駆動したときの圧力センサの第1検出値を第1基準値と比較し、次いで、パージ制御バルブを連通状態にしてポンプを駆動したときの圧力センサの第2検出値を第2基準値と比較することによって、パージ経路の状態を判断してよい。
【0006】
本明細書で開示する第2技術は、上記第1技術の蒸発燃料処理装置であって、第2基準値は、圧力センサより下流のパージ経路の状態を判断するための下流側基準値と、圧力センサより上流のパージ経路の状態を判断するための上流側基準値を含んでいてよい。
【0007】
本明細書で開示する第3技術は、上記第1技術又は第2技術の蒸発燃料処理装置であって、第1検出値に基づいて第2基準値を補正してよい。
【0008】
本明細書で開示する第4技術は、上記第1技術から第3技術のいずれかの蒸発燃料処理装置であって、ポンプが、第2配管上に設けられていてよい。
【発明の効果】
【0009】
第1技術によると、第1検出値と第1基準値を比較することにより、ポンプからパージ制御バルブまでの範囲にガス漏れ等の不具合が生じているか否かを判断することができる。具体的には、パージ制御バルブを閉じてポンプを駆動した場合、ポンプが正常に駆動し、パージ経路に破損等が生じていなければ、圧力センサの検出値(締切圧)はポンプの吐出能力に応じて上昇する。そのため、ポンプの吐出能力に応じて第1基準値を設定し、パージ制御バルブを閉じてポンプを駆動したときの圧力センサの検出値(第1検出値)と第1基準値を比較することにより、ポンプからパージ制御バルブまでの範囲に不具合が生じているか否かを判断することができる。なお、第1基準値は、ポンプ及びパージ経路に不具合が生じていないときの締切圧より若干低い値を設定する。これにより、第1検出値が第1基準値を超えていれば、ポンプ-パージ制御バルブ間に不具合が生じていないことが確認できる。一方、第1検出値が第1基準値以下であれば、ポンプ-パージ制御バルブ間に不具合(ガス漏れ,ポンプ自体の不具合)が生じていることが確認できる。なお、ポンプ自体の不具合として、機械的な不具合(モータ等の故障)、構造的な不具合(ポンプを構成する部品のシール不良)ポンプ吐出口(あるいは、ポンプ吐出口に設けたフィルタ)の完全な閉塞等が挙げられる。すなわち、ポンプ自体の不具合とは、ポンプからガスが吐出されない状態のことを示す。
【0010】
また、第1技術では、第1検出値と第1基準値の比較を行った後、さらに、パージ制御バルブを開いて圧力センサの検出値(第2検出値)を取得する。なお、ポンプを駆動したままパージ制御バルブを遮断状態から連通状態(閉→開)にしてもよいし、第1検出値を取得した後ポンプを停止し、パージ制御バルブを連通状態にした後に再度ポンプを駆動してもよい。パージ制御バルブを連通状態にしたときに、ポンプが正常に駆動し、パージガスが吸気管に正常に流れていれば、圧力センサの検出値は、第1検出値より低い値(第2検出値)となる。そのため、ポンプの吐出能力に応じて第2基準値を設定し、第2検出値と第2基準値を比較することにより、パージ経路の状態(パージ配管に詰り等の不具合が生じているか否か)を判断することができる。第1技術によると、単にパージ経路に不具合が生じているか否かだけでなく、不具合の種類も特定することができる。
【0011】
第2技術によると、パージ経路に不具合が発生したときに、不具合の発生箇所をより詳細に特定することができる。上記したように、パージ制御バルブを連通状態にしてポンプを駆動すると、パージ経路が正常であれば、圧力センサの検出値(第2検出値)は、第1検出値より低くなる。そのため、圧力センサより下流に不具合(詰り)が生じている場合は、第2検出値が正常な値(第2基準値)より高くなる。そのため、第2基準値をポンプ及びパージ経路に不具合が生じていないときの圧力より若干高い値に設定し、第2検出値と第2基準値を比較したときに、第2検出値が第2基準値より低い値であれば、圧力センサより下流に不具合が生じていないことが確認できる。一方、第2検出値が第2基準値以上であれば、圧力センサより下流に不具合(詰り)が生じていることが確認できる。
【0012】
しかしながら、圧力センサより上流に不具合(詰り)が生じている場合は、ポンプから圧力センサが配置されている部分へのパージガス流量が減少し、圧力センサの検出値(第2検出値)は、正常な値(第2基準値)より低くなる。そのため、第2基準値をポンプ及びパージ経路に不具合が生じていないときの圧力より若干低い値に設定し、第2検出値と第2基準値を比較したときに、第2検出値が第2基準値より高い値であれば、圧力センサより上流に不具合が生じていないことが確認できる。一方、第2検出値が第2基準値以下であれば、圧力センサより上流に不具合(詰り)が生じていることが確認できる。
【0013】
第2技術では、第2基準値は、下流側基準値と上流側基準値を含んでいる。すなわち、第2基準値は、ポンプ及びパージ経路に不具合が生じていないときの圧力より若干高い値(下流側基準値)と、ポンプ及びパージ経路に不具合が生じていないときの圧力より若干低い値(上流側基準値)を有している。これにより、パージ経路の不具合が生じている位置(すなわち、不具合の種類)をさらに具体的に特定することができる。
【0014】
第3技術によると、パージ経路の状態(不具合の有無)を、さらに正確に判断することができる。第1検出値(締切圧)は、ポンプの吐出能力とパージガスの濃度に依存する。すなわち、ポンプの吐出能力が同じでも、パージガスの濃度が高い程、第1検出値が高くなる。同様に、第2検出値も、パージガスの濃度が高くなる程高くなる。そのため、第1検出値に基づいて第2基準値を補正することにより、パージ経路の状態をさらに正確に判断することができる。具体的には、第1検出値よりパージガスの濃度を推定し、推定されたパージガス濃度に基づいて補正係数を算出し、第2基準値に補正係数を乗算して第2基準値を補正する。
【0015】
第4技術によると、キャニスタの圧力損失の影響を受けることがないので、パージ経路の状態判断をさらに正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】パージ経路の状態と圧力センサの検出値の関係を示す。
【
図6】パージガス濃度と補正された第2基準値の関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(蒸発燃料処理装置)
図1を参照し、蒸発燃料処理装置100について説明する。蒸発燃料処理装置100は、自動車等の車両に搭載される。蒸発燃料処理装置100は、エンジン2に空気を供給する吸気系10と、燃料タンク32で発生した蒸発燃料を吸気系10に供給するパージガス供給装置50を備えている。
【0018】
(吸気系)
吸気系10は、吸気管6とスロットルバルブ4とエアクリーナ8を備えている。吸気管6は、エンジン2に接続されている。吸気管6は、エンジン2に空気を供給するための配管である。吸気管6には、スロットルバルブ4が設けられている。スロットルバルブ4の開度を調整することによって、エンジン2に流入する空気量を制御する。すなわち、スロットルバルブ4は、エンジン2の吸気量を制御する。スロットルバルブ4は、ECU(Engine Control Unit)52によって制御される。
【0019】
エアクリーナ8は、スロットルバルブ4より上流で吸気管6に接続されている。エアクリーナ8は、吸気管6に流入する空気から異物を除去するフィルタを有する。スロットルバルブ4が開くと、エアクリーナ8を通過した空気が、吸気管6を通ってエンジン2に吸気される。エンジン2は、燃料と空気と内部で燃焼し、燃焼後に排気管(図示省略)に排気する。なお、エアクリーナ8の近傍に、流量センサ(図示省略)が配置されている。流量センサは、大気から吸気管6に導入される空気量を検出する。なお、吸気管6のスロットルバルブ4より上流側に過給機を配置してもよい。
【0020】
(パージガス供給装置)
パージガス供給装置50は、燃料タンク32内で発生した蒸発燃料を、吸気管6を介してエンジン2に供給する。パージガス供給装置50は、キャニスタ40と、パージ配管20と、パージ制御バルブ22と、ポンプ26と、圧力センサ24を備える。キャニスタ40は、内部に活性炭40dを備えており、燃料タンク32内で発生した蒸発燃料を活性炭40dで吸着する。これにより、燃料タンク32内で発生した蒸発燃料が大気に放出されることを防止している。
【0021】
キャニスタ40は、大気ポート40a,パージポート40b及びタンクポート40cを備えている。大気ポート40aに、第1配管20aが接続されている。第1配管20aは、大気ポート40aとエアフィルタ28を接続している。パージポート40bに、第2配管20bが接続されている。タンクポート40cに、第3配管30が接続されている。第3配管30は、タンクポート40cと燃料タンク32を接続している。なお、パージガスを吸気管6に供給する(パージする)際、第1配管20aを通じて外気がキャニスタに導入され、第2配管20bを通じてパージガスが吸気管6に供給される。第1配管20aと第2配管20bを併せて、パージ配管20ということができる。また、第1配管20aの端部(エアフィルタ28)から第2配管20bの端部(吸気管6側)までがパージ経路である。
【0022】
上記したように、キャニスタ40の内部に、活性炭40dが収容されている。活性炭40dに面するキャニスタ40の壁面のうち、1つの壁面にポート40a,40b及び40cが設けられている。ポート40a-40cが設けられている側のキャニスタ40の内壁と活性炭40dとの間には、空間が存在する。また、ポート40a-40cが設けられている側のキャニスタ40の内壁に、第1仕切板40eと第2仕切板40fが固定されている。第1仕切板40eは、大気ポート40aとパージポート40bの間において、活性炭40dとキャニスタ40の内壁の間の空間を分離している。第1仕切板40eは、ポート40a-40cが設けられている側と反対側の空間まで伸びている。第2仕切板40fは、パージポート40bとタンクポート40cの間において、活性炭40dとキャニスタ40の内壁の間の空間を分離している。
【0023】
活性炭40dは、燃料タンク32から第3配管30を通じてキャニスタ40の内部に流入する気体から蒸発燃料を吸着する。蒸発燃料が除去された後の気体は、第1配管20a及びエアフィルタ28を通過して大気に放出される。キャニスタ40は、燃料タンク32内の蒸発燃料が大気に放出されることを防止することができる。活性炭40dで吸着された蒸発燃料は、第1配管20aから導入される空気とともにパージガスとして第2配管20bに供給される。
【0024】
第1仕切板40eは、大気ポート40aが接続されている空間と、パージポート40bが接続されている空間を分離している。そのため、ポート40a,40b間の流路には、必ず活性炭40dが介在する。第1仕切板40eは、蒸発燃料を含んだ気体が大気に放出されることを防止するとともに、大気ポート40aから導入された気体(空気)が直接パージポート40bから第2配管20bに移動することを防止している。また、第2仕切板40fは、パージポート40bが接続されている空間と、タンクポート40cが接続されている空間を分離している。第2仕切板40fは、タンクポート40cからキャニスタ40に流入する気体(蒸発燃料)が直接第2配管20bに移動することを防止している。第1仕切板40eと第2仕切板40fを設けることにより、活性炭40dに吸着された蒸発燃料と第1配管20aから導入される空気の混合ガスが、パージガスとして第2配管20bに供給される。
【0025】
パージ配管20は、キャニスタ40に吸着された蒸発燃料を、パージガスとして吸気管6に供給するための経路(パージ経路)を構成している。上記したように、パージ配管20は、第1配管20aと第2配管20bを含んでいる。第1配管20aは、キャニスタ40とエアフィルタ28を接続している。第1配管20aは、キャニスタ40に供給される空気が流通する。第2配管20bは、キャニスタ40と吸気管6を接続している。具体的には、第2配管20bは、スロットルバルブ4の上流側で、スロットルバルブ4とエアクリーナ8の間に接続されている。なお、吸気管6のスロットルバルブ4より上流側に過給機が配置されている場合、第2配管20bは、過給機の上流側に接続する。第2配管20bは、第1配管20aを通じてキャニスタ40に供給された空気とキャニスタ40に吸着された蒸発燃料の混合ガス(パージガス)が流通する。パージ配管20の材料として、ゴム、樹脂等の可撓性の材料、鉄等の金属材料等が用いられる。
【0026】
パージ制御バルブ22は、キャニスタ40の下流でパージ配管20(第2配管20b)に配置されている。パージ制御バルブ22が遮断状態の場合、パージガスはパージ制御バルブ22によって停止される。パージ制御バルブ22を開弁し(連通状態にして)、ポンプ26を駆動すると、パージガスが吸気管6内に供給される。具体的には、ポンプ26を駆動すると、第1配管20aを通じてキャニスタ40に空気が供給され、その空気とキャニスタ40に吸着された蒸発燃料との混合ガス(パージガス)が第2配管20bを通じて吸気管6に供給される。なお、パージ制御バルブ22は、電子制御弁であり、ECU52によって制御される。具体的には、パージ制御バルブ22は、ECU52から出力される信号によってデューティ制御される。すなわち、ECU52は、出力する信号のデューティ比を調整することによって、パージ制御バルブ22の開弁時間を調整する。なお、ECU52は、パージ制御バルブ22と同様に、スロットルバルブ4についてもデューティ制御を行い、開度(開弁時間)を調整する。
【0027】
ポンプ26は、キャニスタ40とパージ制御バルブ22の間でパージ配管20(第2配管20b)に配置されている。ポンプ26は、いわゆる渦流ポンプ(カスケードポンプ、ウエスコポンプとも呼ぶ)、遠心ポンプ等が用いられる。ポンプ26は、ECU52によって制御される。なお、特に限定されないが、ポンプ26の吐出口には、異物を除去するためのフィルタが設けられていてもよい。
【0028】
圧力センサ24が、ポンプ26とパージ制御バルブ22の間に配置されている。圧力センサ24は、ポンプ26下流のパージ配管20内の圧力を検出することができる。なお、圧力センサ24は、絶対圧を検出するタイプであってもよいし、ゲージ圧を検出するタイプであってもよい。また、圧力センサ24は、ポンプ26の前後の差圧を検出する差圧センサ(ほぼ、ゲージ圧を検出する圧力センサと同じ検出値が得られる)に代えてもよい。圧力センサ24の検出値は、ECU52内の判断部54に入力される。
【0029】
判断部54は、ECU52の一部であり、ECU52の他の部分(例えばエンジン2を制御する部分)と一体的に配置されている。但し、判断部54は、ECU52と別体であってもよい。判断部54は、CPUとROM,RAM等のメモリを含む。詳細は後述するが、判断部54は、メモリに記憶されている基準値(閾値)と圧力センサ24の検出値に基づいて、パージ経路内の状態(不具合の有無)を判断する。
【0030】
(蒸発燃料処理装置の変形例)
図2を参照し、蒸発燃料処理装置200について説明する。蒸発燃料処理装置200は、蒸発燃料処理装置100の変形例であり、パージガス供給装置50aの構造が蒸発燃料処理装置100のパージガス供給装置50と異なる。蒸発燃料処理装置200について、蒸発燃料処理装置100と実質的に同じ構成については、蒸発燃料処理装置100に付した参照番号と同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0031】
蒸発燃料処理装置200では、ポンプ26及び圧力センサ24が、第1配管20aに配置されている。具体的には、ポンプ26及び圧力センサ24は、エアクリーナ8とキャニスタ40(大気ポート40a)の間に配置されている。圧力センサ24は、ポンプ26の下流(キャニスタ40側)に配置されている。蒸発燃料処理装置200においても、パージ制御バルブ22を開弁し、ポンプ26を駆動すると、第1配管20aを通じてキャニスタ40に空気が供給され、その空気とキャニスタ40に吸着された蒸発燃料との混合ガス(パージガス)が第2配管20bを通じて吸気管6に供給される。
【0032】
(パージ経路の状態判断プロセス1)
上記したように、判断部54は、圧力センサ24の検出値を利用して、パージ経路内の状態(不具合の有無)を判断する。
図3及び
図4を参照し、蒸発燃料処理装置100におけるパージ経路内の状態判断プロセス1について説明する。なお、判断部54は、ポンプ26とパージ制御バルブ22の間(ポンプ26及びパージ制御バルブ22自体を含む)のパージ経路の状態を判断する。
【0033】
まず、パージ制御バルブ22を閉じた状態(ステップS2)でポンプ26を駆動する(ステップS4)。パージ制御バルブ22を閉じた状態でポンプ26を駆動すると、ポンプ26の出力に応じて、ポンプ26とパージ制御バルブ22間の圧力(圧力センサ24の検出値)が上昇する。しかしながら、ポンプ26に不具合(ポンプ26を構成する部品のシール不良,ポンプ26の出力口の詰り等)が生じていたり、ポンプ26とパージ制御バルブ22の間のパージ配管20(第2配管20b)が破損(配管漏れ)が生じていると、ポンプ26とパージ制御バルブ22間の圧力(圧力センサ24の検出値)が十分に上昇しない。
【0034】
ポンプ26とパージ制御バルブ22間で上記したような不具合が生じていなければ、圧力センサ24の検出値は基準値aを越え(
図4のプロット60)、上記した不具合が生じていれば、基準値aより低くなる(
図4のプロット62)。なお、基準値aは、ポンプ26の能力に応じて予め設定された値であり、判断部54のメモリに記憶されている。基準値aは、上記した不具合が生じているか否かを判断する閾値であり、上記した不具合が生じていないときのポンプ26とパージ制御バルブ22間の圧力より低い値である。以下、ポンプ26自体の不具合、または、第2配管20bの破損等の不具合が生じている状態を、「異常A」と称することがある。
【0035】
ポンプ26を駆動した(ステップS4)後、圧力センサ24の検出値が安定したときの圧力P1(第1検出値)を取得する(ステップS6)。次に、判断部54において、圧力P1と基準値aの比較を行う(ステップS8)。圧力P1が基準値a以下の場合(ステップS8:NO,
図4のプロット62)、判断部54は、上記した不具合(異常A)が生じていると判断し(ステップS20)、警告灯(図示省略)で報知する(ステップS26)。圧力P1が基準値aを越えている場合(ステップS8:YES,
図4のプロット60)、ステップS10に進み、パージ制御バルブ22を所定開度で開弁する。
【0036】
パージ制御バルブ22を開弁すると、パージガスが吸気管6に供給され、ポンプ26とパージ制御バルブ22間の圧力(圧力センサ24の検出値)は、圧力P1より低くなる。しかしながら、圧力センサ24より下流のパージ配管20(第2配管20b)に詰り(部分的な詰り)が生じていたり、パージ制御バルブ22が正常に開弁しない場合(パージ制御バルブ22が閉状態で固着する場合等)、パージ配管20から吸気管6に移動するパージガスの流量が低下し、圧力センサ24の検出値が十分に低下しない。この場合、圧力センサ24の検出値は基準値bより大きくなる(
図4のプロット64)。
【0037】
圧力センサ24より下流のパージ配管20が完全に詰まっていると、パージ制御バルブ22を開弁しても、圧力センサ24の検出値は圧力P1からほとんど低下しない(プロット60から低下しない)。すなわち、圧力センサ24より下流でパージガスの流路が正常に確保されていれば、圧力センサ24の検出値は基準値bより低くなり(
図4のプロット66)、圧力センサ24より下流でパージガスの流路が正常な状態より狭くなっていると、基準値bより高くなる(
図4のプロット64)。基準値bは、圧力センサ24より下流で不具合が生じているか否かを判断する閾値であり、圧力センサ24より下流に不具合が生じていないときのポンプ26とパージ制御バルブ22間の圧力より高い値である。基準値bは、下流側基準値の一例である。以下、圧力センサ24より下流に不具合が生じている状態を、「異常B」と称することがある。
【0038】
圧力センサ24より上流に部分的な詰りが生じていると、圧力センサ24が配置されている部分へのパージガスの流量が低下し、圧力センサ24の検出値が正常な値よりも低下する。この場合、圧力センサ24の検出値は基準値cより小さくなる(
図4のプロット68).例えば、圧力センサ24より上流のパージ配管20(第2配管20b)に部分的な詰りが生じていたり、ポンプ26の出力口(吐出口に設けられたフィルタを含む)に部分的な詰りが生じている場合、圧力センサ24の検出値は基準値cより小さくなる。
【0039】
圧力センサ24より上流でパージガスの流路が正常に確保されていれば、圧力センサ24の検出値は基準値cより高くなり(
図4のプロット66)、圧力センサ24より上流でパージガスの流路が正常な状態より狭くなっていると、基準値cより低くなる(
図4のプロット68)。基準値cは、圧力センサ24より上流で不具合が生じているか否かを判断する閾値であり、圧力センサ24より上流に不具合が生じていないときのポンプ26とパージ制御バルブ22間の圧力より低い値である。基準値cは、上流側基準値の一例である。以下、圧力センサ24より上流に不具合が生じている状態を、「異常C」と称することがある。
【0040】
なお、基準値b及び基準値cは、パージ制御バルブ22とポンプ26の能力に応じて予め設定された値であり、判断部54のメモリに記憶されている。上記したように、基準値b及び基準値cは、異常B又は異常Cが生じているか否かを判断する閾値である。そのため、圧力センサ24の検出値が基準値bと基準値cの間であれば、パージガスの流路が正常に確保されている(パージ経路が正常である)ことを示している。
【0041】
状態判断プロセス1の説明に戻る。
図3に示すように、ポンプ26を駆動した状態でパージ制御バルブ22を開弁した(ステップS10)後、圧力センサ24の検出値が安定したときの圧力P2(第2検出値)を取得する(ステップS12)。次に、判断部54において、圧力P2と基準値bの比較を行う(ステップS14、S16)。圧力P2が基準値bより大きい場合(ステップS14:NO,
図4のプロット64)、判断部54は、「異常B」が生じていると判断し(ステップS22)、警告灯で報知する(ステップS26)。一方、圧力P2が基準値bより小さい場合(ステップS14:YES)、ステップS16に進み、基準値cとの比較を行う。圧力P2が基準値cより小さい場合(ステップS16:NO,
図4のプロット68)、判断部54は、「異常C」が生じていると判断し(ステップS24)、警告灯で報知する(ステップS26)。一方、圧力P2が基準値cより大きい場合(ステップS16:YES)、ステップS18に進み、パージ経路が正常であると判断する。なお、ステップS14とステップS16の順番は任意であり、ステップS16を実行した後にステップS14を実行してもよい。
【0042】
上記したように、蒸発燃料処理装置100では、パージ制御バルブ22を締めた状態でポンプ26を駆動したしたときの圧力P1(第1検出値)を検出した後、パージ制御バルブ22を開いた状態でポンプ26を駆動したときの圧力P2(第2検出値)を検出することにより、単にパージ経路に不具合が生じているか否かの判断だけでなく、パージ経路に不具合が生じている場合に、その不具合の種類(「異常A」,「異常B」,「異常C」)を特定することができる。不具合の種類が特定されることにより、その後のメンテナンス等を容易にすることができる。
【0043】
(パージ経路の状態判断プロセス2)
上記したように、蒸発燃料処理装置100では、圧力P1を取得した後に基準値aと比較し、その後圧力P2を取得した後に基準値b,cと比較することにより、パージ経路における不具合の有無を判断するとともに、不具合の種類を特定することができる。上記「パージ経路の状態判断プロセス1」では、基準値a,b及びcは、判断部54のメモリに記憶されている固定値である。しかしながら、パージ配管内の圧力は、パージガス流量が同じ場合、パージガスの濃度が高くなる程高くなる。そのため、本状態判断プロセスでは、パージガスの濃度に応じて、基準値b及びcを補正し、不具合発生の閾値を変動させる。以下、
図5及び
図6を参照し、状態判断プロセス2について説明する。本プロセスでは、圧力P1と基準値aを比較するまでのステップ(ステップS8)とパージ制御バルブ22を開くまでのステップ(ステップS10)の間に、判断部54のメモリに記憶されている基準値b
0及びc
0を補正し、比較するための基準値b及びcを算出する。すなわち、本プロセスの場合、判断部54には、パージガスの濃度が特定濃度(例えば20%)のときの基準値a,b
0,c
0が記憶されている。
【0044】
まず、圧力P1が基準値aを越えている場合(ステップS8:YES)、圧力P1に基づいて、補正係数αを算出する(ステップS40)。例えば、
図6に示すように、圧力P1より算出したパージガス濃度が20%の場合(プロット70)、補正係数αを「1」とする。判断部54のメモリに記憶されている基準値b
0及びc
0に「1」を乗算し(ステップS42,S44)、圧力P2の比較を行う。すなわち、判断部54のメモリに記憶されている基準値b
0及びc
0をそのまま用いる。圧力P1より算出したパージガス濃度が40%の場合(プロット72)、補正係数αとして「1」より大きい値を設定し、基準値b
0及びc
0を補正する(ステップS42,S44)。一方、圧力P1より算出したパージガス濃度が10%の場合(プロット74)、補正係数αとして「1」より小さい値を設定し、基準値b
0及びc
0を補正する(ステップS42,S44)。このように、圧力P1に基づいて基準値b及びcを補正することにより、パージ経路に不具合が生じているか否かをより正確に判断することができる。
【0045】
なお、上記状態判断プロセス1,2では、蒸発燃料処理装置100のパージ経路の状態を判断する例について説明したが、上記状態判断プロセスは、蒸発燃料処理装置200に適用することもできる。
【0046】
(他の実施形態)
本明細書が開示する技術において重要なことは、パージ経路上に、キャニスタ,パージ制御バルブ,ポンプ,圧力センサを配置し、パージ制御バルブを閉じた状態でポンプを駆動したときの圧力センサの検出値(締切圧)によってパージ経路の不具合の有無を判断した後、さらに、パージ制御バルブを開いた状態でポンプを駆動したときの圧力センサの検出値によってパージ経路の不具合の有無を判断することである。そのため、パージ制御バルブをキャニスタの下流に配置し、パージ経路の上流からポンプ,圧力センサ及びパージ制御バルブの順に配置されていれば、これらの部品を配置する位置は上記した実施形態に限定されない。例えば、ポンプを第1配管に配置し、圧力センサを第2配管に設けてもよい。
【0047】
また、第2基準値は、必ずしも基準値b(下流側基準値)と基準値c(上流側基準値)を備えていなくてもよい。第2検出値と第2基準値の比較は、第1検出値と第1基準値を比較し、上記「異常A」が生じていないことが確認された後に行う。そのため、第2基準値が基準値b(下流側基準値)と基準値c(上流側基準値)のいずれか一方であっても、第2検出値と第2基準値を比較することにより、「異常A」とは異なる異常(「異常B」又は「異常C」)が生じているか否かの判断を行うことができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0049】
2:内燃機関
4:スロットルバルブ
6:吸気管
20:パージ配管
20a:第1配管
20b:第2配管
22:パージ制御バルブ
24:圧力センサ
26:ポンプ
32:燃料タンク
40:キャニスタ
54:判断部
100:蒸発燃料処理装置