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特許70046223次元印刷のための固体粒子の静電ポリマーエアロゾル堆積及び溶融
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  • 特許-3次元印刷のための固体粒子の静電ポリマーエアロゾル堆積及び溶融 図1
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  • 特許-3次元印刷のための固体粒子の静電ポリマーエアロゾル堆積及び溶融 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】3次元印刷のための固体粒子の静電ポリマーエアロゾル堆積及び溶融
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/20 20170101AFI20220114BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20220114BHJP
   B29C 64/321 20170101ALI20220114BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20220114BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220114BHJP
【FI】
B29C64/20
B29C64/153
B29C64/321
B29C64/40
B33Y30/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018143329
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2019038259
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】15/683,531
(32)【優先日】2017-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・マシュー・ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】スコット・エイ・エルロッド
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・ケイ・ビーゲルセン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクター・アルフレッド・ベック
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-127862(JP,A)
【文献】特開2017-128116(JP,A)
【文献】特表2002-542032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
B05D 5/00- 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造システムであって、
粉末源と、
ガスの流れを用いて前記粉末源からの粉末をエアロゾル化してエアロゾル粉末を生成するエアロゾル発生器と、
堆積表面と、
前記堆積表面に一面の電荷を適用する表面荷電要素と、
前記堆積表面から前記一面の電荷の部分を選択的に取り除く荷電プリントヘッドと、
前記エアロゾル発生器から前記堆積表面に前記エアロゾル粉末を移送する、第2のガスの流れまたは真空のいずれかを備える移送システムと、
前記移送システムからのエアロゾル粉末を受け取って、前記エアロゾル粉末を前記堆積表面に分注するノズルと、
前記堆積表面を保持する可動物体作製ステージであって、前記ノズルに対して移動可能な前記物体作製ステージと、
を備え、
前記移送システムが、前記移送システム内で前記エアロゾル粉末に前記一面の電荷とは逆の電荷を適用するエアロゾル荷電要素を有し、それにより、前記エアロゾル粉末が、電荷の残る前記堆積表面の部分上に設けられる部品を形成する、システム。
【請求項2】
前記移送システム内に粒子のサイズを選択するための慣性インパクタを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記移送システム内にフィルタを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記部品の間に支持材料を分注する分注器を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記表面荷電要素がコロトロンを備える、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマースプレー堆積、より具体的には、粉末を使用するポリマースプレー堆積に関する。
【背景技術】
【0002】
部品のカスタム製造は、成長産業であり、広範囲の用途を有する。物体の原型を作製または物体自体を作製するために、従来、射出成形機及び他の加工技法が使用されていた。より具体的には、ガラス、金属、熱可塑性プラスチック、及び他のポリマーのような被加熱材料が、所望の物体の形状に具体的に形成された射出金型に注入される。材料は、金型内で冷却され、金型の形状を取り、物体を形成し得る。射出金型は、作製が高価でかつ時間を要し、物体の形状への変更は、時間及び物体の作製費を更に増加すること無しに対応するのが困難である。
【0003】
付加製造業界は、原型または物体自体を作製するための射出金型を変更する費用、時間、及び困難に応えて生じた。既知の付加製造技術には、中でも、溶融堆積法(FDM)、光造形法(SLA)、選択的レーザ焼結(SLS)、及び噴射システムが含まれる。各既知の付加製造技術は、熱可塑性材料の一式を使用する小規模のカスタマイズされた製造及び原型作製の製作を妨げる、材料、費用、及び/または体積能の限界を有する。更に、既知の付加製造技術は、射出成形のような従来の技術によって製作された高品質の物体の機械特性、表面仕上げ、及び特徴の複製を有する部品を正確に作製することができない。
【0004】
付加製造がある用途に対して十分な性能の部品を製作しない状況において、低コストのツールを使用する高速コンピュータ数値制御(CNC)機械加工及び高速射出成形の産業全体が生じた。しかしながら、これらの技術は、付加製造技術より著しく高価であり、かつそれら自身のプロセス制限を有する。
【0005】
この産業は、射出成形のような従来の高価で柔軟性のない時間のかかる技術によって製作された高品質、高体積能の物体と、恐らく所望の構造的統合性無しで、時には所望の材料無しで、しかしより優れた速度かつ柔軟性を有する、より低い品質の物体を製作していた付加製造技術との間で決定を強いられてきた。
【0006】
例えば、FDM及びSLSは、使用することができる材料の種類が限定され、100%未満の密度の物体を作製する。高速CNC成形は、より優れた特徴の詳細及び仕上げを有するより良好な品質の物体を有するが、高価なままである。既知の付加製造技術で作製された原型は、多くの場合、最終設計が選択されるまで改良され、その時点で、大規模で高品質の射出成形製作のための射出金型が作製される。そのような複数段階の製作プロセスも、時間がかかり、かつ高価である。
【0007】
一方法は、ポリマースプレー堆積(PSD)を伴う。このプロセスは、ポリマー滴のスプレーまたはエアロゾルを形成し、それらを荷電して、荷電された表面上に選択的に堆積させるようにする。エアロゾルの形成は、多くの形態をとり得る。それらの多くは、典型的には、制御された温度及び不活性雰囲気を必要とする。これらは、典型的には、より高いコスト及びより複雑な製造環境をもたらす。
【発明の概要】
【0008】
実施形態は、粉末をエアロゾル化するエアロゾル発生器と、堆積表面と、堆積表面に一面の電荷を適用する表面荷電要素と、堆積表面から一面の電荷の部分を選択的に取り除く荷電プリントヘッドと、エアロゾル発生器から堆積表面にエアロゾル粉末を移送する移送システムとを有する付加製造システムであり、移送システムは、エアロゾル粉末に一面の電荷とは逆の電荷を適用するエアロゾル荷電要素を有する。
【0009】
別の実施形態は、スプレー発生器で粉末からエアロゾルを生じさせることと、エアロゾルを荷電して第1の電荷を有する荷電されたエアロゾルを生成することと、第1の電荷とは逆の極性の第2の電荷を有する一面の電荷を堆積表面上に形成することと、一面の電荷の領域を選択的に取り除くことと、荷電された領域に荷電されたエアロゾルを移送して、荷電された領域上で荷電されたエアロゾルから構造物を形成することとを含む、付加製造プロセスである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】3次元付加製造システムの実施形態を示す。
図2】3次元付加製造システムの別の図を示す。
図3】戻り及び再循環経路の実施形態を示す。
図4】支持材料を有する3次元付加製造システムの実施形態を示す。
図5】3次元付加製造方法の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で、実施形態は、そうでなければ達成可能であるよりもより広い範囲の熱可塑性材料を有する3次元デジタル付加製造技術の利益を提供する。それらは、複雑性及び構造的統合性において、射出成形プロセスのような、より従来的な製造技術と同様の製作された物体の特徴サイズ解像度をもたらす。本明細書で、システム及び方法は、高分子量ポリマー粉末及びナイロン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスルホン、及びアセタールのような他の熱可塑性プラスチックからエアロゾル化して3次元の物体を作製することができる。粉末の使用は、流体に影響する気温及び雰囲気に関する製造の抑制のうちのいくつかを緩和し得る。
【0012】
図1は、エアロゾル発生器102、移送システム104、マルチノズルアレイ106、及び物体製作ステージ108を含む例示的なポリマー堆積システム100のブロック図を示す。エアロゾル発生器102は、粉末源110から粉末を受ける。粉末のエアロゾルは、米国特許第2,862,646号で開示されている、またはwww.tsi.com/small-scale-powder-disperser-3443で見出されるもののような、当技術分野で周知の多数の異なる方法で形成され得る。一実施形態において、高速ガスの流れは、電力で部分的に充填された容器内に吹込まれる。気流は粒子を巻き込み、流れの混沌とした性質が空気と粉末とを混ぜ、それにより、エアロゾルが生じる。このエアロゾルは、別の流れまたは真空で容器から除去され得る。
【0013】
次に、移送システム104は、エアロゾル化された粉末を、エアロゾル発生器102から、物体製作ステージの表面上に粉末を分注するマルチノズルアレイ106に移送する。移送システム104は、第1の極性の電荷を有するスプレーを荷電する荷電要素116を含む。後程より詳細に記述されるように、堆積表面は、エアロゾル化された粉末粒子をそれらの領域に引き付ける逆の電荷を有する領域を有する。次いで、荷電されたエアロゾルは、堆積表面に対してマルチノズルアレイを使用して、表面に適用される。任意の「廃棄物」または残りの材料は、材料再循環器120によって再循環されてもよい。
【0014】
図2は、付加製造システム200の代替的な図を示す。エアロゾル発生器206は、粒子204として示される粉末をエアロゾル化する。空気流202からなる場合がある移送システム208は、エアロゾル化粉末をエアロゾル発生器206から堆積表面214に移送する。一実施形態において、移送システムは、必要に応じて絶縁体、空気のシース流、及び可能な濾過作用を有する配管を含み得る。加えて、移送の流れは、サイズ選択、ならびに必要に応じてフィルタを可能にするための慣性インパクタを含み得る。
【0015】
荷電要素210は、エアロゾルに第1の極性の電荷を適用する。これは、エアロゾルが通過する電界を発生させるために、移送システムのいずれかの側の電極のセットを伴い得る。堆積表面214は、216のような荷電された粒子を受ける。一実施形態において、堆積表面は、堆積ノズルアレイに対して移動する3軸(x、y、及びz)ステージであり得るステージ218上に存在する。
【0016】
荷電された粒子が堆積表面に到達する前に、堆積表面の選択的領域は逆の電荷を受けた。一実施形態において、コロトロン220のような第1の荷電装置(コロナ荷電装置)は、堆積表面に一面の電荷を適用し、その電荷は第1の極性とは逆の極性である。図2は、荷電装置220を示しているが、これは粉末スプレーの到着前にのみ存在する。
【0017】
一面の電荷を堆積表面上で形成したあと、イオノグラフィックプリントヘッドのような別の荷電装置が、表面の非部品部分から電荷を中和する。粒子は、逆の電荷をまだ有する堆積表面の部分に引き付けられる。
【0018】
粉末スプレーからの粒子が堆積表面に到達し、逆に荷電された領域に「付着」すると、部品または他の構造物が形成され始める。部品の形成中またはその後、粉末材料は加熱を受けて、部品内に材料を溶融することができる。溶融は、熱及び/または圧力の適用によって達成され得る。熱は、赤外光源、加熱ローラの使用、または高温空気の使用によって適用され得る。他の実施形態は、UV硬化性粉末から作製された粉末組成物を硬化するための紫外線の適用を伴い得る。加えて、粉末エアロゾルは、溶融を補助するために加圧されてもよい。
【0019】
粉末材料が堆積表面の選択された領域に集まるとき、粉末スプレーの部分は堆積表面から落下する。いくつかの実施形態において、付着しない粉末材料は、エアロゾル発生器206に再循環で戻され得る。材料再循環は、典型的には、堆積表面の荷電された領域で形成する部品を溶融するために使用される熱または他のエネルギーから離れて生じる。図3は、図1の再循環経路120の実施例を示す。粉末材料は、堆積表面214を過ぎて流れ、粒子216のいくつかは、堆積表面214の領域に引き付けられる。
【0020】
図4に示されるように、300のような部品を形成するために粉末材料が溶融されると、任意選択の支持材料302が、308のような間隙を充填し、平滑な平坦表面を作り出し得る。材料は、ノズル304から間隙に到達することができ、より構造的に堅固な部品を提供するために、ドクタブレード306または他の器具は間隙に対して材料を平滑にする。
【0021】
図5は、全体のプロセスフローの実施形態を示す。400において、400で堆積表面は一面の電荷を受ける。イオノグラフィックプリントヘッドのような別の装置は、402で堆積表面から選択的に電荷を中和する。一方、システムは、404で粉末からエアロゾルを発生させ、406でそれを堆積表面に移送する。408でエアロゾルは移送中であるが、荷電を受ける。エアロゾルが堆積表面に到達するとき、410で表面上に溶融されて、所望の構造物を形成する。任意選択の工程では、支持材料が前述したように間隙を充填する。
【0022】
この様式において、3次元付加製造は、粉末を使用する製造プロセスで部品を作製できる。これは、スプレー堆積のためのポリマー形成のための、より複雑及び高価ではない製造プロセスを提供し得る。
【0023】
上で開示されたならびに他の特徴及び機能の変形またはそれらの代替案が、多くの他の異なるシステムまたは用途になるため組み合わされることができることが理解されるだろう。本明細書における様々な現在予測不能または予想外の代替案、改変、変形、または改善は、当業者により後に作製され得、以下の特許請求の範囲により包含されることが、また、意図される。
図1
図2
図3
図4
図5