(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 17/08 20060101AFI20220114BHJP
F25D 11/02 20060101ALI20220114BHJP
F25D 29/00 20060101ALI20220114BHJP
F25D 25/02 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
F25D17/08 306
F25D11/02 D
F25D11/02 L
F25D29/00 Z
F25D25/02 C
(21)【出願番号】P 2018157972
(22)【出願日】2018-08-27
【審査請求日】2020-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木澤 崇
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-013263(JP,A)
【文献】特開平06-185847(JP,A)
【文献】特開2017-156013(JP,A)
【文献】特開2006-105407(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00298347(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 17/04-17/08
F25D 11/02
F25D 29/00
F25D 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵室と、
該冷蔵室に配された棚と、
該棚に載置された食品によって検知温度が変動する位置に配され、該冷蔵室下部への食品投入を検出する温度センサと、
該冷蔵室下部の前記棚の上面側に向けて冷気を供給する
第二冷気ダクトと、
開閉により前記第二冷気ダクトへの冷気の供給を制御する第二バッフルと、
該冷蔵室上部に冷気を供給する第一冷気ダクトと、
開閉により前記第一冷気ダクト冷気の供給を制御する第一バッフルと、を有し、
ドアの開閉動作が行われ、かつ、ドアが閉じたときに前記温度センサの検知温度の一定時間の高温化を検知したことに基づいて、
前記第一バッフル及び前記第二バッフルの両方を開状態とし、その後に前記温度センサの検知した温度が所定の閾値以下になった場合、前記第一バッフルを閉じて前記
第二冷気ダクトから供給する冷気を増加させる自動急冷制御を実行可能な冷蔵庫であって、
すぐに急冷却するように手動冷却制御の実行指令をユーザから受付可能であり、
該手動冷却制御の実行指令を受付けると、前記温度センサの検知温度に拘らず
前記第一バッフル及び前記第二バッフルの両方を開状態とし、その後に前記温度センサの検知した温度が所定の閾値以下になった場合、前記第一バッフルを閉じて前記
第二冷気ダクトから供給する冷気を増加させることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記温度センサは、前記棚の一段上の棚の下面、又は、前記棚の下面に配されたことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
温度検知手段で貯蔵室内の温度を適切に検出することで、食品の保存性や信頼性を向上して、省エネルギー性が高い冷蔵庫を提供する技術が提案されている。例えば、特許文献1は、第一の冷気ダクト及び第二の冷気ダクトを形成し、それぞれのダクトにより貯蔵室内の所定の領域に冷気を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、ボタンを使用者が操作することで、「強」、「中」、「弱」のような複数の冷却レベルの設定を切り替え、それぞれの冷却レベルに対応した設定温度に近づくように、冷蔵運転の制御が行われている。しかし、冷蔵室の中で特定のエリアを、効率的に冷却するような設定は、備えられていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記事情に鑑みてなされた本発明は、
冷蔵室と、
該冷蔵室に配された棚と、
該棚に載置された食品によって検知温度が変動する位置に配され、該冷蔵室下部への食品投入を検出する温度センサと、
該冷蔵室下部の前記棚の上面側に向けて冷気を供給する第二冷気ダクトと、
開閉により前記第二冷気ダクトへの冷気の供給を制御する第二バッフルと、
該冷蔵室上部に冷気を供給する第一冷気ダクトと、
開閉により前記第一冷気ダクトへの冷気の供給を制御する第一バッフルと、を有し、
ドアの開閉動作が行われ、かつ、ドアが閉じたときに前記温度センサの検知温度の一定時間の高温化を検知したことに基づいて、前記第一バッフル及び前記第二バッフルの両方を開状態とし、その後に前記温度センサの検知した温度が所定の閾値以下になった場合、前記第一バッフルを閉じて前記第二冷気ダクトから供給する冷気を増加させる自動急冷制御を実行可能な冷蔵庫であって、
すぐに急冷却するように手動冷却制御の実行指令をユーザから受付可能であり、
該手動冷却制御の実行指令を受付けると、前記温度センサの検知温度に拘らず前記第一バッフル及び前記第二バッフルの両方を開状態とし、その後に前記温度センサの検知した温度が所定の閾値以下になった場合、前記第一バッフルを閉じて前記第二冷気ダクトから供給する冷気を増加させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図4】第一冷気ダクト11aで冷却した場合の冷気の流れを示す図
【
図5】第二冷気ダクト11bで冷却した場合の冷気の流れを示す図
【
図6】第一冷気ダクト11aと第二冷気ダクト11bの両方で冷却した場合の冷気の流れを示す図
【
図9】下段冷却をONに設定したときのタイムチャート
【
図10】下段冷却をOFFに設定したときのタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態について添付の図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態に係る冷蔵庫の外観(正面図)である。
図1に示すように本実施形態の冷蔵庫1は、上方から冷蔵室2、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6から構成されている。冷蔵室2は左右に分割された冷蔵室ドア2a、2bを備え、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6は、それぞれ引き出し式の製氷室ドア3a、上段冷凍室ドア4a、下段冷凍室ドア5a、野菜室ドア6aを備えている。以下では、冷蔵室ドア2a、2bを、単にドア2a、2bと呼ぶ。
【0008】
図2は冷蔵室2の内部の正面図で(ドア2a、2bは省略)、
図3は
図2の冷蔵室を拡大したB-B断面図である。第一冷気ダクト11aと第二冷気ダクト11bからなる冷蔵室冷気ダクト11は、冷蔵室ツインダンパ20に設けた2つの開口部からなるバッフル20a、20bにそれぞれ接続されている。具体的には、冷蔵室ツインダンパ20のうち、開口面積の大きいバッフル20a側が、流路断面積が大きく上方まで延びる第一冷気ダクト11aに接続されている。そして、第一冷気ダクト11aで冷却する場合はバッフル20aを開、バッフル20bは閉、第二冷気ダクト11bで冷却する場合はバッフル20aを閉、バッフル20bは開、また、両方のダクトで冷却する場合はバッフル20a、20bをそれぞれ開にする。冷蔵室上部の冷却を行う際は冷気ダクト11aを使用し、冷蔵室下部を冷却する際は冷気ダクト11bを使用する。
【0009】
第一冷気ダクト11aには、上から順番に吐出口30e、30f、30a、30bを設けてあり、それぞれの吐出口から送風される冷気で、天井面63と、2段目の棚34bとで区画された領域2A(
図3参照)、すなわち、棚34a、34b、ドアポケット33a、33bに置かれた食品を主に冷却する。第二冷気ダクト11bには吐出口30c、30dを設けてあり、それぞれの吐出口から送風される冷気で、上から2段目の棚34bと上から4段目(最下段)の棚34eとで区画された領域2B(
図3参照)、すなわち棚34c、34d、34eに置かれた食品を主に冷却する。棚34eよりも下部の領域2C(
図3参照)には減圧貯蔵室35や製氷タンク36が設けられており、第一冷気ダクト11aと第二冷気ダクト11bの両方からの冷気によって共通に冷却され、また冷蔵室2の下部に設けた冷凍温度帯室の影響により冷却され易い領域となる。
【0010】
冷蔵室2の領域2A内に第一の温度センサ43、領域2B内に第二の温度センサ42、領域2C内に第三の温度センサ45を設けている。
第一の温度センサ43は、冷蔵室2の天井面63に設けている。
第二の温度センサ42は、棚34dと34eとの間に位置しており、冷蔵室2の奥側に設けた冷蔵室冷気ダクト11を形成するパネルカバー30に設けている。
第三の温度センサ45は、同様にパネルカバー30に設けられ、第一冷気ダクト11aの吐出口30e、30f、30a、30bと第二冷気ダクト11bの吐出口30c、30dから送風された冷気が共通して循環する領域2C(製氷タンク36や減圧貯蔵室35の周囲温度)の温度を検出する。
【0011】
ここで、一般的な冷蔵庫で冷蔵室内を冷却する場合、冷蔵室上部領域2Aと冷蔵室下部領域2Bは同時に冷却される。しかし、どちらかの領域のみに冷蔵庫外から食品が投入された場合、もう一方の領域で既に冷却されている食品はさらに冷却されることになり、凍結や品質の劣化が懸念される。そこで、本実施形態では、第一の温度センサ43、第二の温度センサ42及び第三の温度センサ45で検出される温度に基づいて、冷蔵室上部領域2Aを冷却する第一冷気ダクト11aと、冷蔵室下部領域2Bを冷却する第二冷気ダクト11bと、を適宜切り替えることにより、過度の冷却を抑制して省エネルギー性を高めている。
【0012】
図4に、第一冷気ダクト11aで冷却した場合の、冷蔵室2の冷気の流れを示す。冷蔵室ツインダンパ20のバッフル20aを開(バッフル20bは閉)状態にすると、第一冷気ダクト11aに設けた吐出口30a、30b、30e、30fから冷気が吐出する。吐出した冷気は、最上段の棚34a、34bとドアポケット33a、33bの配された領域2Aの食品を主に冷却した後、最下段の棚34eと断熱仕切壁28で区画された領域2Cへ到達して、この空間の冷却を行う。
【0013】
領域2Aに食品が投入され、第一の温度センサ43が領域2Aの温度上昇を検知し、かつ、第二の温度センサ42が領域2Bの温度上昇を検知しなかった場合、冷気ダクト11aでの冷却パターンを実行する。領域2A内に新たに投入された食品のみを主に冷却するため、領域2B内の食品を冷やし過ぎることがなく、省エネルギー性の向上も可能である。
【0014】
一方、
図5に、第二冷気ダクト11bで冷却した場合の、冷蔵室2の冷気の流れを示す。冷蔵室ツインダンパ20のバッフル20bを開(バッフル20aは閉)状態にすると、第二冷気ダクト11bに設けた吐出口30c、30dから冷気が吐出する。吐出した冷気は、棚34c、34d、34eの配された領域Bの食品を主に冷却した後、最下段の棚34eと断熱仕切壁28で区画された領域2Cへ到達して、この空間の冷却を行う。
【0015】
領域2Bに食品が投入され、第一の温度センサ43が領域2Aの温度上昇を検知せず、かつ、第二の温度センサ42が領域2Bの温度上昇を検知した場合、冷気ダクト11bでの冷却パターンを実行する。冷気ダクト11aでの冷却パターンに対して、領域2B内を効率よく冷却できる。
【0016】
さらに、
図6に示すように、冷蔵室ツインダンパ20のバッフル20aと20bの両方を開状態にすれば、第一冷気ダクト11aと第二冷気ダクト11bの両方を用いた冷却パターンも実行できる。この冷却パターンを実施すれば、領域2A、2B内に同時に食品が投入された場合でも効率よく冷却できる。
【0017】
本実施形態では、各温度センサを用いて、冷蔵室内の各領域の温度を検知し、その検知結果に応じて、風量調整装置を制御することで、それぞれの領域の温度が適切になるように冷却できる。このため、既に冷えている領域を過度に冷却することがなく、省エネルギー性を高めた冷却が実施でき、食品の凍結や品質の劣化を抑止する効果が得られる。
【0018】
また、本実施形態の冷蔵庫では、上述の第一の温度センサ43、第二の温度センサ42、第三の温度センサ45とは別に、
図2に例示するように、冷蔵室下部への食品投入を検知するための第四の温度センサ(食品検知センサ)48を設けている。
【0019】
図2に示すように、最下段棚34eとその上の棚34dとの間で中央より右側(
図2の領域2D)は吐出口30dから冷気戻り口39に至る冷気の通り道となっている。この領域2Dを急速冷却可能領域とすることで、冷却効率を高めることができる。そして、本実施形態では、吐出口30dと冷気戻り口39のとの間に食品検知センサ48を配置することで、この急速冷却可能領域に温かい食品が置かれたことに起因する温度上昇を検知し、自動的に急速冷却を開始できる。なお、急速冷却可能領域に、アルミトレイを配置したり、棚34cの着色を行なったりすれば、使用者が急速冷却用の空間であることを認識しやすくなる。
【0020】
なお、第二冷気ダクト11bは、冷蔵室2の中間高さ付近にある棚34bのすぐ下にも吐出口30cが設けられているため、棚34cと棚34bとの間の空間(
図2の領域2E)も急速冷却可能領域にすることができる。ここで、食品検知センサ48は棚34cのすぐ下にあり、棚34cの上の空間に食品が置かれた場合でも検知が可能である。また、領域2Eには、左右を仕切る部材が存在しないので、領域2Cと比べて幅広い空間、すなわち、左側の棚34dのすぐ上の領域を、急速冷却の対象にすることもできる。
【0021】
ここで、食品検知センサ48による自動急冷却の制御について、
図7および
図8を用いて説明する。まず、自動急冷却モードの設定がONであるか否かを判定する(ステップS1)。自動急冷却モードの設定がONの状態のときに、ステップS2においてドア2a、2bの開閉動作が行われた場合、急速冷却を許可するか否かを判定するための監視状態に移行する。ステップS3において、監視状態へ移行した後、急冷却許可判定閾値以上の温度状態を食品検知センサ48が一定時間(急冷却開始判定時間)維持した場合、冷蔵室2の下部に食品が投入されたとみなして、急速冷却を開始する。ここで、急冷却許可判定閾値は、ドア2a、2bを閉じたときの食品検知センサ48の検知温度に対して一定温度高い値を設定する。
【0022】
急速冷却が開始されると、圧縮機(図示せず)を高速回転(2000rpm~4000rpm)させ、庫内ファン(図示せず)も高速回転させるとともに、第一冷気ダクト11a用のバッフル20aと第二冷気ダクト11b用のバッフル20bの両方を開状態にし、冷蔵室2の上部と下部の両方に冷気が供給され、まず冷蔵室2の全体を冷却する。その後、食品検知センサ48の検知した温度が、所定の閾値(バッフル20a閾値)以下になった場合、第一冷気ダクト11aのバッフル20aを閉状態にする。このとき、第二冷気ダクト11bからのみ冷気が供給されるが、第二冷気ダクト11bは冷蔵室2の下部にしか吐出口がないため、冷蔵室2の下部である領域2D及び領域2Eが集中的に冷却される。
【0023】
次に、食品検知センサ48の検知した値が、バッフル20a閾値より低い所定の閾値(バッフル20b閾値)以下になった場合、第二冷気ダクト11bのバッフル20bも閉状態にし、圧縮機24および庫内ファン(図示せず)の回転を停止させて、急速冷却を終了する。なお、バッフル20aやバッフル20bを閉状態にするタイミングは、急速冷却が開始してから所定時間が経過したか否かを基にして判定しても良い(ステップS4)。
【0024】
このように、本実施形態では、ドア2a、2bの開閉後、冷蔵室下部に食品が投入されたことを食品検知センサ48で検知した場合、上部を主に冷却する第一冷気ダクト11aと、下部を主に冷却する第二冷気ダクト11bと、の両方を用いて冷気を供給して冷蔵室全体をまず冷却した後、第二冷気ダクト11bだけを用いて冷気を供給して冷蔵室下部を集中的に冷却する。特に、本実施形態では、第一冷気ダクト11aに設けられた吐出口30e、30f、30a、30bの開口面積の合計より、第二冷気ダクト11bに設けられた吐出口30c、30dの開口面積の合計が小さくなっているので、冷蔵室2下部の急速冷却可能領域へ供給される冷気の風速が高まり、この空間を効果的に冷却できる。なお、ドア2a、2bの開閉後、すぐ第二冷気ダクト11bだけを用いた冷却を行った場合、冷蔵室全体の温度の高いことが影響して、下部の食品も冷え難くなっているので、上述のように、まず両方のダクトを用いた冷却を行う。
【0025】
その結果、温かい鍋物を冷蔵室下部に収納しても、冷蔵室下部における鍋物の周囲にある食品の温度上昇を抑えて劣化を防ぐことが可能となる。また、温かい鍋物から遠い冷蔵室上部を過剰に冷却するのを抑制し、消費電力を低減できる。
【0026】
ここで、上述の
図5における冷却パターンでも、第二冷気ダクト11bで冷却することを説明したが、
図5の冷却パターンでは、冷蔵室下部のあくまで庫内温度を検知する第二の温度センサ42を用いて制御しており、圧縮機(図示せず)および庫内ファン(図示せず)の回転速度も低速回転となっている。これに対して、自動急冷却の冷却パターンでは、冷蔵室下部の急速冷却可能領域の近傍に設けた食品検知センサ48を用いて制御しており、圧縮機(図示せず)および庫内ファン(図示せず)の回転速度を高速回転に上昇させている。このため、温かい食品の投入を精度よく検知し、かつ、その食品に対してすばやく効果的に冷気を当てることが可能となる。
【0027】
しかし、食品検知センサ48による食品検知は、ドア2a、2bの開閉による外気流入と、実際の食品投入とを区別して誤検知を抑制するための判定にある程度の時間がかかってしまう。また、食品がある程度以上の温度と熱容量を持っていなかったり、食品のが小さかったり、センサ48から遠方に投入された場合は検出出来ない可能性がある。そのため、ユーザが今すぐに急冷却を行ないたいと考えている様な場合や検知が難しい小さな食品を急いで冷却したい場合には、自動急冷却だけではニーズに応え切れない可能性がある。そこで、上記自動急冷却とは別に、手動で急冷却を行なう機能を設けている。
【0028】
手動急冷却機能は、ユーザ操作に従って実行され、自動急冷却と同様の動作を行なう。
図7の自動急冷却のフローと比較すると、S2、S3を無視して「急冷却開始」する。自動急冷却と手動急冷却の二つの機能を同時に持つことで、幅広いユーザのニーズに対応することができる。
【0029】
次に、各温度センサと各冷気ダクトを利用して、冷蔵室2の下部の温度を、冷蔵室2の上部の温度と比べて2℃以上低くなるように保つ、冷蔵室下段冷却の制御について説明する。冷蔵室下段冷却モードはコントロールパネルでON/OFFの設定が可能であり、このモードがONに設定された場合には、設定されなかった場合と比べて、バッフル20bの開状態を長く(バッフル20aの開状態時間に対するバッフル20bの開状態時間の割合を高く)する。具体的には、OFF設定の場合と異なり、バッフル20aが閉状態でバッフル20bのみ開状態となる時間を設ける。ただし、冷蔵室下段冷却の運転中における圧縮機(図示せず)の回転速度は、急速冷却のときのような高速回転にはせず、低速回転(1000rpm~2000rpm)を維持している。
【0030】
次に、冷蔵室下段冷却モードがONに設定された場合における制御に関し、
図9を用いて説明する。冷蔵室下段冷却の運転では、圧縮機(図示せず)が停止してから所定時間が経過した場合、または第二の温度センサ42の検知温度が所定の閾値(バッフル開閾値)以上になった場合、圧縮機(図示せず)を低速回転させると共に、バッフル20a、20bを両方開状態にする。その後、第二の温度センサ42の検知温度が所定の閾値(バッフル20a閾値)以下になった場合、バッフル20aを閉状態にする。さらに、第二の温度センサ42の検知温度が所定の閾値(バッフル20b閾値)以下になった場合、バッフル20bも閉状態にする。
【0031】
一般の冷蔵庫でも、冷蔵室内の低温空気は下方へ集まり易く、冷蔵室内でも上部より下部の方が低温化される傾向にあるが、本実施形態によれば、上部と下部の温度をより差別化でき、保存に適した温度帯が異なる食品であっても収納場所を選び分けることが可能となる。特に、冷蔵室下部が一般の冷蔵庫と比べて低温に保たれるので、低温保存用の減圧貯蔵室35等が食品で一杯の場合に、この冷蔵室下部の空間を代わりに利用でき、使い勝手が良くなる。なお、冷蔵室下段冷却モードがOFFに設定された場合は、
図10のような制御となり、ダンパ20a、20bは常に同じタイミングで両方を開状態にし、常に同じタイミングで閉状態にする。また、冷蔵室下段冷却モードの対象空間は、上述の自動急冷却モードの対象空間である2D+2E(
図2)よりも広く、棚34bと棚34eとの間の空間全体である。
【0032】
本実施形態では、冷蔵室下部の所定コーナに食品が投入されたことを検知すると自動で急冷却する自動急冷却モードと、冷蔵室下部を低温化してOFF設定時よりも冷蔵室上部との温度差を大きくする冷蔵室下段冷却モードと、を有しているが、これらのモードは1度の操作で上記2つのモードを同時に切り替えられる様にしている。これは上記2つの機能を同時にON設定とすることで、相乗効果による冷却効果向上が見込めるため、個別にON/OFF設定するよりも、使用者の利便性が向上する。
【0033】
仮に自動急冷却モードだけONに設定されていた場合、急速冷却可能領域に投入した食品を早く冷やすことはできるが、急速冷却可能領域以外の冷蔵室スペースに既に置かれていた他の食品は、比較的温度が高い状態にある。したがって、急速冷却可能領域に食品を投入した直後、既存の他の食品の温度が上昇した場合に、冷蔵温度帯を超えてしまう可能性がある。一方、仮に下段冷却モードだけONに設定されていた場合、急速冷却可能領域に投入した食品を冷やすのが遅くなるのは勿論のこと、既に比較的温度が低い状態にあった他の食品が過剰に冷却されてしまう可能性がある。このように、自動急冷却モードと下段冷却モードとを同時にONに設定することで、新たに投入された食品を早く冷やしつつ、既存の食品への温度影響を抑えた冷却運転が可能となる。
【0034】
また、手動での急冷却機能は自動急冷却と冷蔵室下段冷却モードと設定が独立しており、ユーザが任意のタイミングで実行できる様にしている。
【0035】
これは、自動検出を待たず、すぐに急冷却を行ないたいというユーザのニーズや、自動検出が難しい小さな食品に対応すると同時に、冷蔵室下段冷却モードの有無によって冷蔵室全体の急冷却と急冷却コーナを優先した急冷却を切替えることで、より幅広いユーザのニーズに対応することが可能となる。
【0036】
各機能の表示についてはいくつかの方法が考えられる。特に図示しないが、本実施形態では、自動急冷却と冷蔵室下段冷却モードのON/OFF状態を示すLEDと、手動急冷却のON/OFF状態を示すLEDとの2種類のLEDを持たせており、各機能の状態をユーザに報知している。自動急冷却の表示については、ユーザが直接操作しないため、機能実行の有無が分かりにくいため、自動急冷却用、冷蔵室下段冷却モード用、手動急冷蔵用とLEDを3種に分けても良いし、LEDの色や表示パターンを変えて、いずれかのLEDと表示を共用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 冷蔵庫、2 冷蔵室、2a、2b 冷蔵室ドア、3 製氷室、3a 製氷室ドア、3b 収納容器、4 上段冷凍室、4a 上段冷凍室ドア、5 下段冷凍室、5a 下段冷凍室ドア、6 野菜室、6a 野菜室ドア、10 断熱箱体、11 冷蔵室冷気ダクト、11a 第一冷気ダクト、11b 第二冷気ダクト、20 冷蔵室ツインダンパ、20a バッフル、20b バッフル、25 真空断熱材、28 断熱仕切壁、30 パネルカバー、30a、30b、30c、30d、30e、30f 吐出口、33a、33b、33c、33d ドアポケット、34a、34b、34c、34d、34e 棚、35 減圧貯蔵室、36 製氷タンク、39 冷蔵室戻り口、41、42 第二の温度センサ、43 第一の温度センサ、45 第三の温度センサ、48 食品検知センサ、55 ハンドル、56 減圧貯蔵室ドア、63 天井面、64 給水パイプ 65 減圧貯蔵室温度保障ヒータ 66 給水パイプ温度保障ヒータ