(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】スロットル装置、及び、スロットル装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
F02D 11/10 20060101AFI20220114BHJP
F02D 9/02 20060101ALI20220114BHJP
F02D 9/10 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
F02D11/10 B
F02D9/02 351M
F02D9/02 351P
F02D9/02 351J
F02D9/10 G
(21)【出願番号】P 2018236469
(22)【出願日】2018-12-18
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】595054589
【氏名又は名称】株式会社デンソーダイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】特許業務法人服部国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】樋口 彰
(72)【発明者】
【氏名】石原 健一
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-299673(JP,A)
【文献】特開平11-310183(JP,A)
【文献】特開2015-209812(JP,A)
【文献】特開2005-325701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/00-11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路(11)が形成されたボデー(10)と、
前記吸気通路に設けられ、開度が調整されるスロットルバルブ(31)と、
前記ボデーに回転自在に支持され、前記スロットルバルブが固定されたシャフト(32)と、
駆動トルクを出力するアクチュエータ(80)と、
前記アクチュエータから伝達される駆動トルクにより回動するギヤ部(41)、前記ギヤ部に設けられ、円筒状の外壁(425)を有するボス部(42)、及び、前記ボス部の径方向外側において前記ギヤ部から軸方向に延出する一つ以上の延出部(45)が一体に形成されたバルブギヤ(40)と、
前記バルブギヤの前記ボス部の外壁に外挿され、前記ギヤ部側の端部に設けられた第1フック(51)、及び、前記ギヤ部とは反対側の端部に設けられた第2フック(52)が前記延出部の周方向における互いに反対側にそれぞれ係止されたコイル状のスプリング(50)と、
前記ボス部の外壁と前記スプリングの内周との間に円筒状のガイド本体(65)を有し、少なくとも軸方向の前記ギヤ部側において、前記ギヤ部の回動に伴う前記ボス部と前記スプリングとの摺動を緩衝するガイド(601-604)と、
を備え、
前記バルブギヤと前記スプリングと
前記ガイドとが組付けられて構成されたバルブギヤサブアセンブリ(701-704)が前記ボデーのバルブギヤ収容室(13)に収容され、前記スプリングの前記第2フックが前記ボデーに係止されており、
且つ、前記シャフトが前記バルブギヤの前記ボス部に固定されているスロットル装置。
【請求項2】
前記ガイドは、軸方向に二つに分割されている請求項
1に記載のスロットル装置。
【請求項3】
少なくとも一つの前記ガイド(601-603)は、前記ガイド本体の軸方向端部から径外方向に突出するツバ部(66)を有する請求項
1または2に記載のスロットル装置。
【請求項4】
少なくとも一つの前記ガイド(602、603)は、前記ツバ部の周縁から軸方向の中央部に向かって延び、少なくとも軸方向端部において前記スプリングを外側から案内する側壁部(67)をさらに有する請求項
3に記載のスロットル装置。
【請求項5】
少なくとも一つの前記ガイド(603)は、前記ガイド本体の軸方向端部から周方向の一部において径外方向に突出し、前記スプリングの前記第1フック及び前記第2フックを覆うフード部(68)を有する請求項
1~
4のいずれか一項に記載のスロットル装置。
【請求項6】
前記ボデーは、前記バルブギヤ収容室の底部から突出する突出筒部(14)が形成されており、
前記バルブギヤサブアセンブリは、前記バルブギヤ収容室に収容されたとき前記突出筒部が嵌まり込むことが可能な嵌入空間(54)を前記スプリングの内側に有しており、
前記突出筒部の内側には、軸方向において前記スプリングと重複する位置で、前記シャフトの外周との間に軸受(34)が保持されている請求項1~
5のいずれか一項に記載のスロットル装置。
【請求項7】
吸気通路(11)が形成されたボデー(10)と、
前記吸気通路に設けられ、開度が調整されるスロットルバルブ(31)と、
前記ボデーに回転自在に支持され、前記スロットルバルブが固定されたシャフト(32)と、
駆動トルクを出力するアクチュエータ(80)と、
前記アクチュエータから伝達される駆動トルクにより回動するギヤ部(41)、前記ギヤ部に設けられ、円筒状の外壁(425)を有するボス部(42)、及び、前記ボス部の径方向外側において前記ギヤ部から軸方向に延出する一つ以上の延出部(45)が一体に形成されたバルブギヤ(40)と、
前記バルブギヤの前記ボス部の外壁に外挿され、前記ギヤ部側の端部に設けられた第1フック(51)、及び、前記ギヤ部とは反対側の端部に設けられた第2フック(52)が前記延出部の周方向における互いに反対側にそれぞれ係止されたコイル状のスプリング(50)と、
前記ボス部の外壁と前記スプリングの内周との間に円筒状のガイド本体(65)を有し、少なくとも軸方向の前記ギヤ部側において、前記ギヤ部の回動に伴う前記ボス部と前記スプリングとの摺動を緩衝するガイド(601-604)と、
を備えるスロットル装置の製造方法であって、
前記ボデーに前記スロットルバルブ及び前記シャフトが組付けられるバルブ組付け工程(S1)と、
前記バルブギヤと前記スプリングと
前記ガイドとが組付けられ、バルブギヤサブアセンブリ(701-704)が構成されるサブアセンブリ工程(S2)と、
前記バルブ組付け工程及び前記サブアセンブリ工程の後、前記ボデーのバルブギヤ収容室(13)に前記バルブギヤサブアセンブリが収容され、前記スプリングの前記第2フックが前記ボデーに係止される収容工程(S3)と、
前記収容工程の後、前記スロットルバルブの回転位置が調整された状態で前記シャフトが前記バルブギヤの前記ボス部に固定されるシャフト固定工程(S4)と、
を含むスロットル装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットル装置、及び、スロットル装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸気通路に設けられたスロットルバルブの開度を調整するスロットル装置において、アクチュエータから駆動トルクが伝達されるバルブギヤに外挿されたコイル状のスプリングにより、スロットルバルブの開度を所定開度に保持するように付勢力を発生させる構成が知られている。
【0003】
このスロットル装置の組付け工程において、バルブギヤ及びスプリングがそれぞれ単独でボデーに収容される場合、スプリングの両端に形成された二つのフックの一方がバルブギヤに係止され、他方がボデーに係止される。そして、バルブギヤ及びスプリングをボデーへ収容した後、それらの回転位置を調整しながらシャフトと仮組みする作業が必要であった。
【0004】
また、特許文献1に開示されたスロットル装置では、ボデー(スロットルボディ101)の突出筒部(ベアリングボス105)に、バルブギヤ(スロットルギヤ107)、スプリング(捻りコイルばね113)、ガイド(カバー115、117)、及び、シャフト(スロットルシャフト103)が組付けられる。スプリング両端のフック(作動端部113a、113b)がガイドの突出部に収納されることで、フックとボデーのストッパ部(デフォルトボス119)との接触圧が緩和される。なお、括弧内は、特許文献1に記載されている部品名称及び符号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成では、バルブギヤとシャフトとを一体化させた後、ガイド及びスプリングを組付ける必要がある。そのため、シャフトはバルブが組付けできるように回転方向の位置合わせが必要であり、バルブギヤもボデーのストッパ部の位置との回転方向の位置合わせが必要である。また、スプリングを所定の回転方向位置にセットするには、バルブギヤ側のガイド(カバー115)及びスプリングのフック(作動端部113a)をバルブギヤに係止させた状態で回転させて組付ける必要がある。したがって、組付けが複雑となる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、バルブギヤ及びスプリングのボデーへの組付け性を向上させるスロットル装置、及び、スロットル装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスロットル装置は、吸気通路(11)が形成されたボデー(10)と、吸気通路に設けられ、開度が調整されるスロットルバルブ(31)と、ボデーに回転自在に支持され、スロットルバルブが固定されたシャフト(32)と、駆動トルクを出力するアクチュエータ(80)と、バルブギヤ(40)と、コイル状のスプリング(50)と、ガイド(601-604)と、を備える。
【0009】
バルブギヤは、アクチュエータから伝達される駆動トルクにより回動するギヤ部(41)、ギヤ部に設けられ、円筒状の外壁(425)を有するボス部(42)、及び、ボス部の径方向外側においてギヤ部から軸方向に延出する一つ以上の延出部(45)が一体に形成されている。
【0010】
スプリングは、バルブギヤのボス部の外壁に外挿される。スプリングは、ギヤ部側の端部に設けられた第1フック(51)、及び、ギヤ部とは反対側の端部に設けられた第2フック(52)が延出部の周方向における互いに反対側にそれぞれ係止されている。
【0011】
ガイドは、ボス部の外壁とスプリングの内周との間に円筒状のガイド本体(65)を有し、少なくとも軸方向の前記ギヤ部側において、ギヤ部の回動に伴うボス部とスプリングとの摺動を緩衝する。
そして、バルブギヤとスプリングとガイドとが組付けられて構成されたバルブギヤサブアセンブリ(701-704)がボデーのバルブギヤ収容室(13)に収容され、スプリングの第2フックがボデーに係止されている。また、シャフトがバルブギヤのボス部に固定されている。
【0012】
本発明のスロットル装置では、スプリングの第1フック及び第2フックがバルブギヤの延設部に共に係止され、バルブギヤとスプリングとが組付けられたバルブギヤサブアセンブリが構成される。そして作業者は、バルブギヤサブアセンブリをボデーのバルブギヤ収容室に収容し、スプリングの第2フックをボデーに係止する。その後、例えばボス部のシャフト挿入穴を貫通したシャフトの先端部を加締めることで、バルブギヤのボス部にシャフトを固定する。
【0013】
その結果、両端のフックがバルブギヤ及びボデーに係止されたスプリングは、スロットルバルブの開度を所定開度に保持するように付勢力を発生させる。本発明では、ボデーへの収容後にバルブギヤ及びスプリングの回転位置を調整しながらシャフトと仮組みする作業が不要となり、組付け性が向上する。また、特許文献1の従来技術のようにバルブギヤとシャフトとを一体化させないため、組付けが容易である。
【0014】
また、本発明は、上記スロットル装置の製造方法の発明として提供される。このスロットル装置の製造方法は、バルブ組付け工程(S1)、サブアセンブリ工程(S2)、収容工程(S3)、及び、シャフト固定工程(S4)を含み、上記のスロットル装置の発明と同様の効果を奏する。
【0015】
バルブ組付け工程では、ボデーにスロットルバルブ及びシャフトが組付けられる。サブアセンブリ工程では、バルブギヤとスプリングとが組付けられ、バルブギヤサブアセンブリが構成される。バルブ組付け工程及びサブアセンブリ工程の後、収容工程では、ボデーのバルブギヤ収容室にバルブギヤサブアセンブリが収容され、スプリングの第2フックがボデーに係止される。収容工程の後、シャフト固定工程では、スロットルバルブの回転位置が調整された状態でシャフトがバルブギヤのボス部に固定される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態のスロットル装置の全体構成を示す断面図。
【
図2】第1実施形態のバルブギヤサブアセンブリの組付け前の各部品の斜視図。
【
図3】第1実施形態のバルブギヤサブアセンブリの模式外観図。
【
図4】第1実施形態のバルブギヤサブアセンブリの模式断面図。
【
図5】本実施形態によるスロットル装置の製造方法のフローチャート。
【
図7】第2実施形態のバルブギヤサブアセンブリの模式断面図。
【
図8】第3実施形態のバルブギヤサブアセンブリの模式断面図。
【
図9】第4実施形態のバルブギヤサブアセンブリの模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、スロットル装置の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。複数の実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。また、第1~第4実施形態を包括して「本実施形態」という。本実施形態のスロットル装置は、内燃機関の吸気通路に設けられたスロットルバルブの開度を調整する。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態について、
図1~
図6を参照して説明する。最初に
図1を参照し、スロットル装置100の全体構成を説明する。スロットル装置100は、吸気通路11が形成されたボデー10に、スロットルバルブ31、シャフト32、バルブギヤ40、スプリング50、アクチュエータ80、中間ギヤ82等の部品が組み付けられ、カバー20が被せられている。図中、吸気通路11の中心をx軸とし、x軸に直交する平面、すなわち
図1の紙面において互いに直交する2軸をy軸及びz軸とする。
【0019】
スロットルバルブ31は円板状のバタフライバルブであり、吸気通路11に設けられ、開度が調整される。シャフト32は、ボデー10のシャフト支持部12、及び、ボデー10の突出筒部14に設けられた軸受34によりz軸に沿って回転自在に支持され、スロットルバルブ31が固定されている。バルブギヤ40は、ギヤ部41、ボス部42及び延出部45等を有している。ボス部42のシャフト挿入穴43にシャフト32の先端部325が挿入され、シャフト32がバルブギヤ40に固定される。バルブギヤ40の詳細な構成については後述する。
【0020】
直流モータ等のアクチュエータ80は、ボデー10のアクチュエータ収容室18に収容され、駆動トルクを出力する。中間ギヤ82は、ボデー10及びカバー20に支持されたピン83を軸として回転可能であり、アクチュエータ80の出力ギヤ81の回転を減速してバルブギヤ40のギヤ部41に伝達する。アクチュエータ80が通電により回転すると、中間ギヤ82を介して伝達される駆動トルクによりバルブギヤ40が回動し、バルブギヤ40に固定されたシャフト32及びスロットルバルブ31が一体に回動する。
【0021】
スプリング50は、バルブギヤ40のボス部42の外壁に外挿され、駆動トルクに対し、スロットルバルブ31の開度を所定開度に保持するように、捩れ方向の付勢力を発生させる。ガイド601は、バルブギヤ40の回動に伴うバルブギヤ40とスプリング50との摺動を緩衝する。スプリング50及びガイド601の詳細な構成についても後述する。ここで、本実施形態のスロットル装置100は、バルブギヤ40とスプリング50とが組付けられて構成されたバルブギヤサブアセンブリ701がボデー10のバルブギヤ収容室13(
図6参照)に収容される。
【0022】
次に
図2~
図4を参照し、第1実施形態のバルブギヤサブアセンブリ701の構成について説明する。
図2にはバルブギヤサブアセンブリ701を組付ける前の各部品を示す。
図3にはバルブギヤサブアセンブリ701の外観を模式的に示し、
図4にはバルブギヤサブアセンブリ701の軸方向の断面を模式的に示す。
【0023】
図2~
図4に示すように、バルブギヤサブアセンブリ701は、バルブギヤ40、スプリング50及びガイド601を含む。
図4には、バルブギヤサブアセンブリ701がボデー10のバルブギヤ収容室13に収容されたときのボデー10の突出筒部14、シャフト32及び軸受34の位置を破線で示す。
【0024】
バルブギヤ40は、例えばPA(ポリアミド)6T等の樹脂材料で成形され、ギヤ部41、ボス部42及び延設部45が一体に形成されている。ギヤ部41は、アクチュエータ80の出力ギヤ81から中間ギヤ82を経由して伝達される駆動トルクにより回動する。
図4においてギヤ部41の回転軸をzと記す。なお、ギヤ部41の全周のうち、実際に歯が形成されているのは3分の1程度の範囲であるが、歯が形成されていない部分も含めた平板部分の全体を「ギヤ部41」とする。
【0025】
ボス部42はギヤ部41に設けられ、円筒状の外壁425を有する。本実施形態では、ボス部42は、ギヤ部41の回転軸zと同軸に設けられる。ボス部42の内側には、シャフト32の先端部325が挿入されるシャフト挿入穴43が形成される。シャフト挿入穴43は、例えば樹脂にインサートされた金属部材で形成されてもよい。シャフト32の先端部325は、ギヤ部41側から加締め可能なように、シャフト挿入穴43を貫通してギヤ部41側に露出する。
【0026】
本実施形態では、ボス部42の長さはスプリング50及びガイド601の高さより短いため、スプリング50及びガイド601の内側のボス部42が存在しない部分に、太い二点鎖線で示す嵌入空間54が形成される。嵌入空間54は、バルブギヤサブアセンブリ701がバルブギヤ収容室13に収容されたとき、突出筒部14が嵌まり込むことが可能な空間である。
【0027】
延設部45は、ボス部42の径方向外側においてギヤ部41から軸方向に延出する。
図3に示すように、ギヤ部41に近い根元側における図示左側の辺には、スプリング50の第1フック51を係止する第1係止部451が設けられる。また、ギヤ部41から遠い先端側における図示右側の辺には、スプリング50の第2フック52を係止する第2係止部452が設けられる。
【0028】
これらの第1係止部451、第2係止部452は、スプリング50の付勢力を受ける。そのためバルブギヤ40の材料には、駆動トルクやスプリング荷重に対する強度を有する材料としてPA6T等が選定される。なお、
図2の斜視図には、第1係止部451及び第2係止部452の図示を省略する。また、
図3では延設部45の外径形状は略台形であるが、
図2では簡略化して略長方形で記載する。
【0029】
スプリング50は、コイル体53の軸方向におけるギヤ部41側(以下、符号「41」を省略し「ギヤ部側」と記す。)の端部に第1フック51が設けられている。また、軸方向におけるギヤ部41とは反対側(以下、「反ギヤ部側」と記す。)の端部に第2フック52が設けられている。コイル体53は、バルブギヤ40のボス部42の外壁425に外挿される。第1フック51及び第2フック52は、バルブギヤ40の延出部45の周方向における互いに反対側にそれぞれ係止される。
【0030】
バルブギヤサブアセンブリ701がボデー10のバルブギヤ収容室13に収容されたとき、第2フック52は、
図4に破線で示すボデー係止部16に係止される。また、バルブギヤ40にシャフト32が固定されることにより、スプリング50は、スロットルバルブ31の開度を所定開度に保持するように付勢力を発生させる。
【0031】
ガイド601は、摺動性の良い樹脂材料として、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)入りのPA(ポリアミド)等で円筒状に形成されている。薄肉の円筒状であるため、ガイド601の容積はバルブギヤ40の容積に比べて小さく、成形に使用される材料の量が少ない。また、ガイド601は、軸方向に、第1ガイド611及び第2ガイド621の二つに分割されている。本実施形態では、ギヤ部側の第1ガイド611は軸方向の長さが相対的に短く、反ギヤ部側の第2ガイド621は軸方向の長さが相対的に長く形成されている。ただし、第1ガイド611及び第2ガイド621の基本形状は共通である。
【0032】
以下、第1ガイド611及び第2ガイド621の共通事項については、ガイド601を主語として記載する。ガイド601は、円筒状のガイド本体65、及び、ガイド本体65の軸方向端部から径外方向に突出するツバ部66を有する。ツバ部66の外径は、スプリング50のコイル体53の外径と同等、又はわずかに大きく形成されている。第1ガイド611及び第2ガイド621は、ツバ部66とは反対側のガイド本体65の端部同士が付き合わされた格好となっている。
【0033】
ボス部42の外壁425のうちギヤ部側の約半分の範囲には、第1ガイド611のガイド本体65が外挿される。また、反ギヤ部側の約半分の範囲には、第2ガイド621のガイド本体65におけるツバ部66とは反対側の部分が外挿される。第1ガイド611及び第2ガイド621におけるボス部42の外壁425に外挿される部分は、ギヤ部41の回動に伴うボス部42とスプリング50との摺動を緩衝する。すなわち、ガイド601が間に介在することにより、バルブギヤ40とスプリング50とが直接摺動せず、摺動抵抗による応力が低減される。
【0034】
第2ガイド621のガイド本体65におけるツバ部66側の部分は、ボデー10の突出筒部14の外壁145に嵌合する。第2ガイド621の当該部分は、スプリング50の捩れに伴う突出筒部14とスプリング50との摺動を緩衝する。すなわち、ガイド601が間に介在することにより、ボデー10とスプリング50とが直接摺動せず、摺動抵抗による応力が低減される。
【0035】
次に
図5のフローチャート及び
図6を参照し、本実施形態によるスロットル装置100の製造方法について説明する。フローチャートにおいて、記号Sは「ステップ」を意味する。このフローチャートでは、主に、バルブギヤ40及びスプリング50をサブアセンブリとしてボデー10のバルブギヤ収容室13に収容する工程に着目して記載し、その他の部品の組付け工程や検査工程に関しては簡略化又は省略する。
【0036】
バルブ組付け工程S1では、ボデー10にスロットルバルブ31及びシャフト32が組付けられる。
図6に、バルブ組付け工程S1後かつ収容工程S3前の状態を示す。詳しくは、ボデー10の突出筒部14の内側には、シャフト32の外周との間に軸受34が保持される。そして、吸気通路11に配置されたスロットルバルブ31と、ボデー10に回転自在に支持されたシャフト32とがビス等により固定される。
【0037】
サブアセンブリ工程S2では、バルブギヤ40、スプリング50及びガイド601が組付けられ、
図2~
図4に示すバルブギヤサブアセンブリ701が構成される。なお、バルブ組付け工程S1とサブアセンブリ工程S2との順序は、どちらが先でもよい。
【0038】
バルブ組付け工程S1及びサブアセンブリ工程S2の後、収容工程S3では、
図6に示す状態のボデー10のバルブギヤ収容室13にバルブギヤサブアセンブリ701が収容され、スプリング50の第2フック52がボデー10のボデー係止部16に係止される。このとき、内側に軸受34が保持された突出筒部14は、バルブギヤサブアセンブリ701のスプリング50の内側に形成された嵌入空間54に嵌まり込む。こうして軸受34は、軸方向においてスプリング50と重複する位置で、シャフト32の外周と突出筒部14との間に保持される。また、シャフト32の先端部325は、ボス部42のシャフト挿入穴43に隙間嵌めで挿入され、ギヤ部41側に貫通する。
【0039】
収容工程S3の後、シャフト固定工程S4では、スロットルバルブ31の回転位置が調整された状態でシャフト32がバルブギヤ40のボス部42に連結される。具体的には、例えばボス部42のシャフト挿入穴43を貫通したシャフト32の先端部325が加締められる。
【0040】
シャフト固定工程S4の後、アクチュエータ・カバー組付工程S5では、アクチュエータ80がアクチュエータ収容室18に収容され、中間ギヤ82がピン83に取り付けられた後、カバー20がボデー10に取り付けられる。アクチュエータ・カバー組付工程S5の詳細については省略する。
【0041】
(効果)
上記第1実施形態のスロットル装置100、及び、スロットル装置100の製造方法の効果は、以下の通りである。
【0042】
(1)本実施形態のスロットル装置100は、スプリング50の第1フック51及び第2フック52がバルブギヤ40の延設部45に係止されるため、バルブギヤ40とスプリング50とが組付けられた状態のバルブギヤサブアセンブリ701が構成される。そして作業者は、バルブギヤサブアセンブリ701をボデー10のバルブギヤ収容室13に収容した後、例えばボス部42のシャフト挿入穴43を貫通したシャフト32の先端部325を加締めることで、バルブギヤ40のボス部42にシャフト32を固定する。
【0043】
これにより、ボデー10への収容後にバルブギヤ40及びスプリング50の回転位置を調整しながらシャフト32と仮組みする作業が不要となり、組付け性が向上する。また、特許文献1(特開2003-120335号公報)の従来技術のようにバルブギヤとシャフトとを一体化させないため、組付けが容易である。
【0044】
(2)第1実施形態では、バルブギヤサブアセンブリ701の構成要素として、さらにガイド601を備える。ガイド601は、ボス部42の外壁425とスプリング50との間に円筒状のガイド本体65を有し、軸方向のギヤ部側において、ギヤ部41の回動に伴うボス部42とスプリング50との摺動を緩衝する。すなわち、ガイド601が間に介在することにより、バルブギヤ40とスプリング50とが直接摺動せず、摺動抵抗による応力が低減される。また、軸方向の反ギヤ部側では、同様にボデー10とスプリング50とが直接摺動せず、摺動抵抗による応力が低減される。
【0045】
ガイド601を備えず、バルブギヤ40とスプリング50、又は、ボデー10とスプリング50とが直接摺動する形態では、例えばPTFEを含有する摺動性の良い材料で、容積の大きいバルブギヤ40を成形する必要があり、材料コストが高くなる。これに対し、ガイド601を備える第1実施形態では、円筒状で容積の小さいガイド601のみを摺動性の良い材料で成形すればよい。したがって、材料コストを低減することができる。
【0046】
(3)第1実施形態のガイド601は、軸方向に、ギヤ部側の第1ガイド611、及び反ギヤ部側の第2ガイド621の二つに分割されている。これにより、スプリング50の両端部の捩れに対し、第1ガイド611及び第2ガイド621がそれぞれギヤ部側及び反ギヤ部側において追従して回動可能であるため、摺動抵抗による応力がより低減される。また、ガイド601はツバ部66を有しているため、スプリング50の軸方向両端部の位置を規制し、サブアセンブリ状態でのスプリング50の脱落を防止することができる。
【0047】
(4)バルブギヤサブアセンブリ701は、ボデー10のバルブギヤ収容室13に収容されたとき突出筒部14が嵌まり込むことが可能な嵌入空間54を、スプリング50の内側に有している。これにより、バルブギヤサブアセンブリ701と、突出筒部14に保持された軸受34とが軸方向に重複するため、バルブギヤ収容室13のスペースを低減することができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、バルブギヤサブアセンブリにおけるガイドの構成を第1実施形態から一部変更した第2~第4実施形態について説明する。各実施形態のガイド及びバルブギヤサブアセンブリの符号は、それぞれ、「60」及び「70」に続く3桁目に実施形態の番号を付す。また、ガイドが二分割された第1ガイド及び第2ガイドの符号は、「61」及び「62」に続く3桁目に実施形態の番号を付す。
【0049】
図7に示すように、第2実施形態のバルブギヤサブアセンブリ702において、ガイド602は、軸方向に二つに分割された第1ガイド612及び第2ガイド622からなる。第1ガイド612及び第2ガイド622は、ツバ部66に加え、ツバ部66の周縁から軸方向の中央部に向かって延びる側壁部67を有する。なお、
図7の左側に二点鎖線で示すように、第1フック51及び第2フック52と干渉する箇所では側壁部67は除かれる。
【0050】
側壁部67は、少なくとも軸方向端部においてスプリング50を外側から案内する。したがって、第1ガイド612及び第2ガイド622は、径方向内外両側でのスプリング50のガイド機能を有する。
図7に示す例では、側壁部67の長さはスプリング線径の1~1.5倍程度であるが、側壁部67はもっと長く設定されてもよい。
【0051】
(第3実施形態)
図8に示すように、第3実施形態のバルブギヤサブアセンブリ703において、ガイド603は、軸方向に二つに分割された第1ガイド613及び第2ガイド623からなる。第1ガイド613及び第2ガイド623は、ツバ部66及び側壁部67に加え、ガイド本体65の軸方向端部から周方向の一部において径外方向に突出し、第1フック51及び第2フック52を覆うフード部68を有する。これにより、第2フック52とボデー係止部16との当接箇所における接触面積が増加し、面圧が低下するため、ボデー10の摩耗量が低減する。また、初期回転位置における第2フック52とボデー係止部16との隙間が減り、ガタつきが抑制される。
【0052】
(第4実施形態)
図9に示すように、第4実施形態のバルブギヤサブアセンブリ704において、ガイド604は、軸方向に二つに分割された第1ガイド614及び第2ガイド624からなる。第1ガイド614及び第2ガイド624は、円筒状のガイド本体65のみで構成され、第1~第3実施形態のようなツバ部66、側壁部67、フード部68を有していない。この構成でもバルブギヤ40とスプリング50とが直接摺動しないため、バルブギヤ40を摺動性の良い材料で成形する必要がなく、材料コストを低減可能である。
【0053】
第4実施形態の変形例として、第1ガイド又は第2ガイドの一方の端部にのみツバ部66を有し、他方の端部にツバ部66が無い構成、すなわち、少なくとも一つのガイドがツバ部66を有する構成としてもよい。同様に、少なくとも一つのガイドが側壁部67やフード部68を有する構成としてもよい。また、ガイドを二つに分割せず、一体の円筒状としてもよい。一体のガイドであっても、摺動性の良い材料で成形されることで、バルブギヤ40とスプリング50との摺動を緩衝可能である。ガイドを一部品とすることで、部品点数を低減することができる。
【0054】
(その他の実施形態)
(a)上記第1~第4実施形態は、いずれもガイド601-604を備えている。ただし、材料コスト低減の要求が低い場合や摺動性の良い材料を低コストで入手可能な場合等には、バルブギヤ40を摺動性の良い材料で成形することにより、ガイドを備えなくてもよい。
【0055】
(b)上記実施形態では、バルブギヤ40の一つの延出部45の周方向の一方側に第1フック51が係止され、周方向の他方側に第2フック52が係止される。他の実施形態では、第1フック51が係止される第1延出部と、第2フック52が係止される第2延出部とが、それぞれバルブギヤ40に設けられてもよい。
【0056】
(c)上記実施形態では、バルブギヤ40のボス部42の長さはスプリング50の高さより短いため、スプリング50の内側のボス部42が存在しない部分に、突出筒部14が嵌まり込むことが可能な嵌入空間54が形成される。しかし、ボス部42の長さがスプリング50の高さと同等以上であり、スプリング50の内側に嵌入空間54が形成されなくてもよい。この場合、ボデー10の突出筒部14とスプリング50とは摺動せず、スプリング50の全長にわたって、バルブギヤ40とスプリング50との摺動がガイド601等により緩衝される。
【0057】
また、この場合、軸受34は、軸方向においてスプリング50と重複しない位置に配置されることとなる。なお、嵌入空間54に突出筒部14が嵌まり込む構成であっても、軸受34が突出筒部14の端面から奥深く、軸方向においてスプリング50と重複しない位置に配置されてもよい。
【0058】
(d)ボス部42は、ギヤ部41の回転軸zと同軸でなく、回転軸zに対して偏心していてもよい。また、ボス部42の円筒状の外壁425は、全体としてほぼ円筒状であればよく、外周又は内周の一部に溝や突起等が形成されていてもよい。
【0059】
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0060】
100・・・スロットル装置、
10・・・ボデー、 11・・・吸気通路、 13・・・バルブギヤ収容室、
31・・・スロットルバルブ、 32・・・シャフト、
40・・・バルブギヤ、 41・・・ギヤ部、 42・・・ボス部、
425・・・外壁、 45・・・延出部、
50・・・スプリング、 51・・・第1フック、 52・・・第2フック、
701-704・・・バルブギヤサブアセンブリ、
80・・・アクチュエータ。