(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】血中カロテノイドバランス改善剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20220203BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20220203BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20220203BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20220203BHJP
A61K 31/047 20060101ALI20220203BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20220203BHJP
A61K 31/01 20060101ALI20220203BHJP
A61K 31/355 20060101ALI20220203BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20220203BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220203BHJP
A61K 31/22 20060101ALI20220203BHJP
A61K 31/23 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L33/10
A23L2/00 F
A61K31/12
A61K31/047
A61K31/045
A61K31/01
A61K31/355
A61K31/375
A61P43/00 121
A61K31/22
A61K31/23
(21)【出願番号】P 2018516896
(86)(22)【出願日】2017-04-04
(86)【国際出願番号】 JP2017014126
(87)【国際公開番号】W WO2017195504
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2016096954
(32)【優先日】2016-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】312007962
【氏名又は名称】グリコ栄養食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】西野 梓
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/046365(WO,A1)
【文献】特表2008-532492(JP,A)
【文献】特表2009-517043(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035790(WO,A1)
【文献】PARK, Jihyun et al.,Changes in carotenoids, ascorbic acids, and quality characteristics by the pickling of paprika (Capsicum Annuum L.) Cultivated in Korea,J. Food Sci.,2011年,Vol. 76,pp. C1075-C1080
【文献】BALCERCZYK, Aneta et al.,Enhanced antioxidant capacity and anti-ageing biomarkers after diet micronutrient supplementation,Molecules,2014年,Vol. 19,pp. 14794-14808
【文献】NISHINO, Azusa et al.,Accumulation of Paprika Carotenoids in Human Plasma and Erythrocytes,J. Oleo Sci.,2015年,Vol. 64,pp. 1135-1142
【文献】ETOH, Hideo et al.,Carotenoids in human blood plasma after ingesting paprika juice,Biosci. Biotechnol. Biochem.,2000年,Vol. 64,pp. 1096-1098
【文献】二瓶秀子 ほか,パプリカキサントフィルが血中の抗酸化力と酸化ストレスに及ぼす影響,体力科学,2015年,Vol. 64,p. 612; 310
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/40- 5/49
A23L 31/00-33/29
A61K 31/00-33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)
カプサンチン、カプソルビン、ククルビタキサンチンA、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種、
(B)
ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種、
(C)
β-カロテン、並びに
(D)
ビタミンE、或はビタミンEとビタミンC及び/又はビタミンC誘導体との組み合わせ、を含有
し、
前記(B)及び(C)成分の血中濃度の低下を抑制し、且つ前記(A)成分の血中濃度を向上させるために使用される、血中カロテノイドバランス改善剤。
【請求項2】
前記(A)成分が、カプサンチン及び/又はその脂肪酸エステルと、カプソルビン及び/又はその脂肪酸エステルと、ククルビタキサンチンA及び/又はその脂肪酸エステルとの組み合わせである、請求項
1に記載の血中カロテノイドバランス改善剤。
【請求項3】
前記(B)成分が、ゼアキサンチン及び/又はその脂肪酸エステルと、β-クリプトキサンチン及び/又はその脂肪酸エステルとの組み合わせである、請求項1
又は2に記載の血中カロテノイドバランス改善剤。
【請求項4】
前記(D)成分が、ビタミンEと、ビタミンC及び/又はビタミンC誘導体との組み合わせである、請求項1~
3のいずれかに記載の血中カロテノイドバランス改善剤。
【請求項5】
前記(A)成分を遊離キサントフィル重量換算の総量で0.0001~60質量%、
前記(B)成分を遊離キサントフィル重量換算の総量で0.0001~10質量%、
前記(C)成分を総量で0.0001~10質量%、及び
前記(D)成分をビタミンEの量及び遊離アスコルビン酸重量換算の量の総量で0.0001~20質量%、
含有する、請求項1~
4のいずれかに記載の血中カロテノイドバランス改善剤。
【請求項6】
飲食品である、請求項1~
5のいずれかに記載の血中カロテノイドバランス改善剤。
【請求項7】
(A)
カプサンチン、カプソルビン、ククルビタキサンチンA、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種、
(B)
ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種、
(C)
β-カロテン、並びに
(D)
ビタミンE、或はビタミンEとビタミンC及び/又はビタミンC誘導体との組み合わせ、
を含有し、
前記(B)及び(C)成分の血中濃度の低下を抑制し、且つ前記(A)成分の血中濃度を向上させるために使用される、血中カロテノイドバランス改善用の飲食品。
【請求項8】
サプリメント又は飲料である、請求項
7に記載の
血中カロテノイドバランス改善用の飲食品。
【請求項9】
下記(B)及び(C)成分の血中濃度の低下を抑制し、且つ下記(A)成分の血中濃度を向上させるために使用される血中カロテノイドバランス改善剤の製造のための、
(A)
カプサンチン、カプソルビン、ククルビタキサンチンA、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種、(B)
ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種、(C)
β-カロテン、並びに(D)
ビタミンE、或はビタミンEとビタミンC及び/又はビタミンC誘導体との組み合わせの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血中カロテノイドバランス改善剤に関する。より具体的には、本発明は、血中に存在する常在カロテノイドの濃度の低下を抑制しつつ、血中に常在していないキサントフィルの濃度を向上させる血中カロテノイドバランス改善剤に関する。更に、本発明は、血中に存在する常在カロテノイドの濃度の低下を抑制しつつ、血中に常在していないキサントフィルの濃度を向上させることができる飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
カロテノイドは植物や動物に広く分布している天然の色素成分であり、その種類は非常に多く、700種類を超えるといわれている。カロテノイドには、抗酸化作用があり、カロテノイドは9個の共役二重結合からなるポリエン部分とその両端に付くエンドグループからなる基本構造を有している。
【0003】
ヒトの血中には、食物から吸収された約20種類のカロテノイドが常在しており、血中に常在するカロテノイド(以下、「常在カロテノイド」と表記することもある)の内、β-カロテン、α-カロテン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、リコピンの6種類が主成分であり、これらで血液中のカロテノイドの90%以上を占めている(非特許文献1参照)。これらの常在カロテノイドは、体内で絶えず発生している活性酸素を消去することにより、生活習慣病、がん、動脈硬化等を予防し、健康維持に寄与している。
【0004】
一方、カロテノイドの一種であるキサントフィルの中には、抗酸化作用が高く、健康維持において有益な役割を果たす成分として、β-クリプトキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、カプソルビン、カプサンチン、カプサントン、ククルビタキサンチンA、アスタキサンチン、ミチロキサンチン等が知られている。これらのキサントフィルの内、β-クリプトキサンチン、ルテイン及びゼアキサンチンは常在カロテノイドとして体内に存在しているが、その他のものは血液中に常在していない(以下、血中に常在していないキサントフィルを「非常在キサントフィル」と表記することもある)。
【0005】
従来、非常在キサントフィルを効率的に摂取させ、健康維持や疾病予防を図る組成物が種々提案されている。例えば、特許文献1には、アスタキサンチン等のキサントフィルを配合した組成物が、認識運動機能の改善・向上用途に有効であることが開示されている。また、特許文献2には、アスタキサンチン等のキサントフィルとペプチドを配合した組成物が、眼の調節機能障害の改善用途に有効であることが開示されている。
【0006】
しかしながら、キサントフィルを単独で摂取させた場合、他の常在カロテノイドの血中濃度を低下させ、血中カロテノイドのバランスが損なわれ、常在カロテノイドが本来発揮している機能が減弱されるという欠点がある。例えば、非特許文献2には、アスタキサンチンを単独で摂取させると、β-クリプトキサンチン、ルテイン、及びゼアキサンチンの血中濃度が有意に低下することが報告されている。また、非特許文献3には、ルテイン及びゼアキサンチンを組み合わせて摂取させると、β-カロテン、α-カロテン、及びβ-クリプトキサンチンの血中濃度が有意に低下することが報告されている。更に、非特許文献4には、カプサンチン、カプソルビン、ククルビタキサンチンA、β-クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、β-カロテン、クリプトカプシン、カプサンチンエポキシド等を組み合わせて摂取させると、総カロテン及びルテインの血中濃度が有意に低下することが報告されている。
【0007】
このような従来技術の下、常在カロテノイドの血中濃度の低下を抑制しつつ、高い抗酸化作用を有する非常在キサントフィルの血中濃度を向上させ得る組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】カロテノイドの多様な生理作用、食品・臨床栄養、2007年、Vol.2、p.3-14、日本生物高分子学会
【文献】Erythrocytes Carotenoids after Astaxanthin Supplementation in Middle-Aged and Ssenior Japanese Subjects. J.Oleo.Sci., 60, (10)495-499(2011)
【文献】Antioxidant effect of lutein towards phospholipid hydroperoxidation in human erythrocytes. British Journal of Nutrition (2009), 2.3, 1280-1284
【文献】Accumulation of paprika carotenoids in human plasma and erythrocytes, J.Oleo.Sci., 64 (10) 1135-1142 (2015)
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-298740号公報
【文献】特開2008-297222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述する従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、常在カロテノイドの血中濃度の低下を抑制しつつ、非常在キサントフィルの血中濃度を向上させる血中カロテノイドバランス改善剤及び飲食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、(A)高い抗酸化作用を有する特定の非常在キサントフィル、(B)常在カロテノイドの中でキサントフィルに該当する成分、及び(C)常在カロテノイドの中でカロテンに該当する成分と共に、(D)ビタミンE、ビタミンC及び/又はビタミンC誘導体を組み合わせることによって、常在カロテノイドの血中濃度の低下を抑制しつつ、高い抗酸化作用を有する非常在キサントフィルの血中濃度を向上させることが可能になり、血中カロテノイドバランスを改善できることを見出した。より具体的には、(A)カプサンチン、カプソルビン、カプサントン、ククルビタキサンチンA、アスタキサンチン、ミチロキサンチン、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種、(B)ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種、(C)β-カロテン、α-カロテン、及びリコピンよりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(D)ビタミンE、ビタミンC、及びビタミンC誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種を組み合わせることによって、常在カロテノイドの血中濃度の低下を抑制しつつ、高い抗酸化作用を有する非常在キサントフィルの血中濃度を向上させることが可能になることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0012】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)カプサンチン、カプソルビン、カプサントン、ククルビタキサンチンA、アスタキサンチン、ミチロキサンチン、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種、
(B)ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種、
(C)β-カロテン、α-カロテン、及びリコピンよりなる群から選択される少なくとも1種、並びに
(D)ビタミンE、ビタミンC、及びビタミンC誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種、
を含有することを特徴とする、血中カロテノイドバランス改善剤。
項2. 前記(A)成分が、カプサンチン、カプソルビン、カプサントン、ククルビタキサンチンA、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の血中カロテノイドバランス改善剤。
項3. 前記(A)成分が、カプサンチン及び/又はその脂肪酸エステルと、カプソルビン及び/又はその脂肪酸エステルと、ククルビタキサンチンA及び/又はその脂肪酸エステルとの組み合わせである、項1又は2に記載の血中カロテノイドバランス改善剤。
項4. 前記(B)成分が、ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1~3のいずれかに記載の血中カロテノイドバランス改善剤。
項5. 前記(B)成分が、ゼアキサンチン及び/又はその脂肪酸エステルと、β-クリプトキサンチン及び/又はその脂肪酸エステルとの組み合わせである、項1~4のいずれかに記載の血中カロテノイドバランス改善剤。
項6. 前記(C)成分が、β-カロテンである、項1~5のいずれかに記載の血中カロテノイドバランス改善剤。
項7. 前記(D)成分が、ビタミンEと、ビタミンC及び/又はビタミンC誘導体との組み合わせである、項1~6のいずれかに記載の血中カロテノイドバランス改善剤。
項8. 前記(A)成分を遊離キサントフィル重量換算の総量で0.0001~60質量%、
前記(B)成分を遊離キサントフィル重量換算の総量で0.0001~10質量%、
前記(C)成分を総量で0.0001~10質量%、及び
前記(D)成分をビタミンEの量及び遊離アスコルビン酸重量換算の量の総量で0.0001~20質量%、
含有する、項1~7のいずれかに記載の血中カロテノイドバランス改善剤。
項9. 飲食品である、項1~8のいずれかに記載の血中カロテノイドバランス改善剤。
項10. (A)カプサンチン、カプソルビン、カプサントン、ククルビタキサンチンA、アスタキサンチン、ミチロキサンチン、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種、
(B)ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種、
(C)β-カロテン、α-カロテン、及びリコピンよりなる群から選択される少なくとも1種、並びに
(D)ビタミンE、ビタミンC、及びビタミンC誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種、
を含有することを特徴とする、飲食品。
項11. サプリメント又は飲料である、項10に記載の飲食品。
項12. 項1~9のいずれかに記載の血中カロテノイドバランス改善剤の有効量を、血中カロテノイドのバランス改善が必要とされている者に適用する工程を含む、血中カロテノイドバランスの改善方法。
項13. 血中カロテノイドバランス改善剤の製造のための、
(A)カプサンチン、カプソルビン、カプサントン、ククルビタキサンチンA、アスタキサンチン、ミチロキサンチン、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種、(B)ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種、(C)β-カロテン、α-カロテン、及びリコピンよりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(D)ビタミンE、ビタミンC、及びビタミンC誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種の使用。
【発明の効果】
【0013】
本発明の血中カロテノイドバランス改善剤及び飲食品は、常在カロテノイドの血中濃度の低下を抑制しつつ、高い抗酸化作用を有する非常在キサントフィルの血中濃度を向上させることができるので、常在カロテノイドが有する機能を維持しつつ、非常在キサントフィルが有する抗酸化作用やプロビタミンA機能等を効果的に付与することが可能になる。また、本発明の血中カロテノイドバランス改善剤及び飲食品は、サプリメントや飲料等の形態で提供することができるので、日常的に簡便な手法でカロテノイドによる健康維持や疾病予防を図ることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.血中カロテノイドバランス改善剤
本発明の血中カロテノイドバランス改善剤は、(A)カプサンチン、カプソルビン、カプサントン、ククルビタキサンチンA、アスタキサンチン、ミチロキサンチン、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種((A)成分と表記することもある)、(B)ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種((B)成分と表記することもある)、(C)β-カロテン、α-カロテン、及びリコピンよりなる群から選択される少なくとも1種((C)成分と表記することもある)、並びに(D)ビタミンE、ビタミンC、及びビタミンC誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種((D)成分と表記することもある)を含有することを特徴とする。以下、本発明の血中カロテノイドバランス改善剤について詳述する。
【0015】
(A)成分
本発明で使用される(A)成分は、カプサンチン、カプソルビン、カプサントン、ククルビタキサンチンA、アスタキサンチン、ミチロキサンチン、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種であり、これらは高い抗酸化作用(一重項酸素の消去活性)を有する非常在キサントフィルである。
【0016】
カプサンチンは、赤パプリカ、赤ピーマン、トウガラシ等のトウガラシ属植物の赤い果実に含まれているキサントフィルである。本発明で使用されるカプサンチンは、これらの植物から抽出したものであってもよく、また化学的に合成されたものであってもよい。
【0017】
カプソルビンは、赤パプリカ、赤ピーマン、トウガラシ等のトウガラシ属植物の赤い果実に含まれているキサントフィルである。本発明で使用されるカプソルビンは、これらの植物から抽出したものであってもよく、また化学的に合成されたものであってもよい。
【0018】
カプサントンは、カプサンチンの酸化物であり、赤パプリカ、赤ピーマン、トウガラシ等のトウガラシ属植物の赤い果実に含まれているキサントフィルである。本発明で使用されるカプサンチンは、これらの植物から抽出したもの、カプサンチンを酸化処理したもの、化学的に合成されたもの、のいずれであってもよい。
【0019】
ククルビタキサンチンAは、赤パプリカ、赤ピーマン、トウガラシ等のトウガラシ属植物の赤い果実;カボチャ等の植物に含まれているキサントフィルである。本発明で使用されるククルビタキサンチンAは、これらの植物から抽出したものであってもよく、また化学的に合成されたものであってもよい。
【0020】
アスタキサンチンは、エビ、カニ等の甲殻類;サケ、タイ、コイ、キンギョ、ヒトデ、フジツボ、オキアミ、イカ、タコ等の魚介類;フクジュ草の花弁等の植物;鶏等の鳥類;緑藻(Haematococcus pluvialis)、ユーグレナ(Euglena heliorubescens)、クロレラ(Chlorela zofingiensis)、赤色酵母(Phaffia rhodozyma)、好熱細菌(Meiothermus ruber)等の微生物等に含まれているキサントフィルである。本発明で使用されるアスタキサンチンは、これらの天然物から抽出したもの、アスタキサンチン産生微生物を培養して得られたもの、化学的に合成したもの、のいずれであってもよい。
【0021】
ミチロキサンチンは、ム一ル貝、カキ等の貝類に含まれるキサントフィル等に含まれているキサントフィルである。本発明で使用されるミチロキサンチンは、これらの貝類から抽出したものであってもよく、また化学的に合成されたものであってもよい。
【0022】
また、これらのキサントフィルは、脂肪酸がエステル結合したエステル体であってもよい。これらのキサントフィルのエステル体は、1つの脂肪酸がエステル結合しているモノエステルであってもよく、また2つの脂肪酸がエステル結合しているジエステルであってもよい。また、これらのキサントフィルのエステル体において結合している脂肪酸は飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよく、更に当該脂肪酸は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。また、これらのキサントフィルのエステル体において結合している脂肪酸の炭素数については、特に制限されないが、例えば、1~20程度、好ましくは2~18程度、更に好ましくは12~18程度が挙げられる。なお、キサントフィルのエステル体がジエステルの場合であれば、結合している2つの脂肪酸は、相互に同一の構造であってもよく、また異なる構造であってもよい。以下、カプソルビン及び/又はその脂肪酸エステルを包括する概念として「カプソルビン類」と表記することがある。また、カプサンチン及び/又はその脂肪酸エステル、カプサントン及び/又はその脂肪酸エステル、ククルビタキサンチンA及び/又はその脂肪酸エステルについても、同様に、「カプサンチン類」、「カプサントン類」、「ククルビタキサンチンA類」と表記することがある。
【0023】
本発明の血中カロテノイドバランス改善剤では、(A)成分として、カプサンチン、カプソルビン、カプサントン、ククルビタキサンチンA、アスタキサンチン、ミチロキサンチン、及びそれらの脂肪酸エステルの中から1種を選択して使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
これらの(A)成分の中でも、常在カロテノイドの血中濃度の低下抑制及び非常在キサントフィルの血中濃度の向上をより一層効果的に図るという観点から、好ましくはカプサンチン類、カプソルビン類、カプサントン類、及びククルビタキサンチンA類の少なくとも1種;更に好ましくはカプサンチン類、カプソルビン類、及びククルビタキサンチンA類の少なくとも1種;特に好ましくはカプサンチン類、カプソルビン類、及びククルビタキサンチンA類の組み合わせが挙げられる。
【0025】
(A)成分として、カカプサンチン類、カプソルビン類、及びククルビタキサンチンA類を組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、カプサンチン類の遊離カプサンチン重量換算100質量部当たり、カプソルビン類が遊離カプソルビン重量換算で1~1000質量部、好ましくは2~100質量部、更に好ましくは5~30質量部;ククルビタキサンチンA類が遊離ククルビタキサンチンA重量換算で1~1000質量部、好ましくは2~100質量部、更に好ましくは5~30質量部となる比率が挙げられる。本明細書において、カプサンチン類の遊離カプサンチン重量換算とは、カプサンチンの場合にはそれ自体の重量の値、カプサンチンの脂肪酸エステルの場合には、脂肪酸残基部分を除いてカプサンチン(フリー体)自体の重量に換算した値を指す。また、カプソルビン類のカプソルビン重量換算、及びククルビタキサンチンA類のククルビタキサンチンA重量換算についても同様である。
【0026】
(B)成分
本発明で使用される(B)成分は、ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種であり、これらは常在カロテノイドの内、キサントフィルに該当する成分である。
【0027】
ゼアキサンチンは、トウモロコシの種子、オレンジ色のパプリカ等の植物部位に含まれるキサントフィルである。本発明で使用されるゼアキサンチンは、これらの植物部位から抽出したものであってもよく、また化学的に合成されたものであってもよい。
【0028】
β-クリプトキサンチンは、ミカン、グレープフルーツ等の柑橘に含まれるキサントフィルである。本発明で使用されるβ-クリプトキサンチンは、これらの植物から抽出したものであってもよく、また化学的に合成されたものであってもよい。
【0029】
ルテインは、ホウレンソウ、ケール、コマツナ等の葉物野菜;マリーゴールドの花びら等の植物に含まれるキサントフィルである。本発明で使用されるルテインは、これらの植物から抽出したものであってもよく、また化学的に合成されたものであってもよい。
【0030】
また、ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、及びルテインは、脂肪酸がエステル結合したエステル体であってもよい。これらのエステル体は、1つの脂肪酸がエステル結合しているモノエステルであってもよく、また2つの脂肪酸がエステル結合しているジエステルであってもよい。また、当該エステル体がジエステルの場合であれば、結合している2つの脂肪酸は、相互に同一の構造であってもよく、また異なる構造であってもよい。なお、当該エステル体に結合している脂肪酸の構造等については、前記(A)成分として使用されるエステル体の場合と同様である。以下、ゼアキサンチン及び/又はその脂肪酸エステルを包括する概念として「ゼアキサンチン類」と表記することがある。また、β-クリプトキサンチン及び/又はその脂肪酸エステル、ルテイン及び/又はその脂肪酸エステル、についても、同様に、「β-クリプトキサンチン類」、「ルテイン類」と表記することがある。
【0031】
本発明の血中カロテノイドバランス改善剤では、(B)成分として、ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、及びそれらの脂肪酸エステルの中から1種を選択して使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
これらの(B)成分の中でも、常在カロテノイドの血中濃度の低下抑制及び非常在キサントフィルの血中濃度の向上をより一層効果的に図るという観点から、好ましくはゼアキサンチン類及びβ-クリプトキサンチン類の少なくとも1種;更に好ましくはゼアキサンチン類及びβ-クリプトキサンチン類の組み合わせが挙げられる。
【0033】
(B)成分として、ゼアキサンチン類及びβ-クリプトキサンチン類を組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、ゼアキサンチン類の遊離ゼアキサンチン重量換算100質量部当たり、β-クリプトキサンチン類が遊離β-クリプトキサンチン重量換算で1~2000質量部、好ましくは5~1000質量部、更に好ましくは10~500質量部となる比率が挙げられる。本明細書において、ゼアキサンチン類の遊離ゼアキサンチン重量換算とは、ゼアキサンチンの場合にはそれ自体の重量の値、ゼアキサンチンの脂肪酸エステルの場合には、脂肪酸残基部分を除いてゼアキサンチン(フリー体)自体の重量に換算した値を指す。また、β-クリプトキサンチン類のβ-クリプトキサンチン重量換算についても同様である。
【0034】
本発明の血中カロテノイドバランス改善剤において、(A)成分に対する(B)成分の比率については、特に制限されないが、常在カロテノイドの血中濃度の低下抑制及び非常在キサントフィルの血中濃度の向上をより一層効果的に図るという観点から、(A)成分の遊離キサントフィル重量換算100質量部当たり、(B)成分が遊離キサントフィル重量換算で1~1000質量部、好ましくは10~500質量部、更に好ましくは5~200質量部となる比率が挙げられる。本明細書において、(A)成分の遊離キサントフィル重量換算とは、(A)成分がキサントフィル自体の場合にはそれ自体の重量の値、(A)成分がキサントフィルの脂肪酸エステルの場合には、脂肪酸残基部分を除いてキサントフィル(フリー体)自体の重量に換算した値を指す。また(B)成分のキサントフィル重量換算についても同様である。
【0035】
(C)成分
本発明で使用される(C)成分は、β-カロテン、α-カロテン、及びリコピンよりなる群から選択される少なくとも1種であり、これらは常在カロテノイドの内、カロテンに該当する成分である。
【0036】
β-カロテンは、ニンジン、パセリ、唐辛子、バジル、ヨモギ、ホウレンソウ、明日葉、春菊、ナズナ、大根、ニラ、海藻等の植物に含まれるカロテンである。本発明で使用されるβ-カロテンは、これらの植物から抽出したものであってもよく、また化学的に合成されたものであってもよい。
【0037】
α-カロテンは、ニンジン、カボチャ、海藻等の植物に含まれるカロテンである。本発明で使用されるα-カロテンは、これらの植物から抽出したものであってもよく、また化学的に合成されたものであってもよい。
【0038】
リコピンは、トマト、スイカ、ピンクグレープフルーツ、カキ、ピンクグァバ、パパイヤの植物に含まれるカロテンである。本発明で使用されるリコピンは、これらの植物から抽出したものであってもよく、また化学的に合成されたものであってもよい。
【0039】
本発明の血中カロテノイドバランス改善剤では、(C)成分として、β-カロテン、α-カロテン、及びリコピンの中から1種を選択して使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
これらの(C)成分の中でも、常在カロテノイドの血中濃度の低下抑制及び非常在キサントフィルの血中濃度の向上をより一層効果的に図るという観点から、好ましくはβ-カロテン及びα-カロテンの少なくとも1種;更に好ましくはβ-カロテンが挙げられる。
【0041】
本発明の血中カロテノイドバランス改善剤において、(A)成分に対する(C)成分の比率については、特に制限されないが、常在カロテノイドの血中濃度の低下抑制及び非常在キサントフィルの血中濃度の向上をより一層効果的に図るという観点から、(A)成分の遊離キサントフィル重量換算100質量部当たり、(C)成分が1~70質量部、好ましくは3~50質量部、更に好ましくは5~30質量部となる比率が挙げられる。
【0042】
(A)~(C)成分の一態様
本発明の血中カロテノイドバランス改善剤において、(A)~(C)成分は、それぞれ単独で抽出又は製造されたものであってもよい。また(A)~(C)成分を含む植物、藻類、魚介類等を原料として、これら成分を同時に抽出することによって得られたものであってもよく、この場合、(A)~(C)成分が前述する好適な比率になるように、最適な条件下で抽出・精製・加工した製剤を使用することが望ましい。なお、植物、藻類、魚介類等からキサントフィルの抽出は、公知の方法に従って行うことができる。また、(A)~(C)成分を前述する好適な比率で含むように抽出・精製・加工した製剤として、商品名「パプリックス」(グリコ栄養食品株式会社製)が市販されており、(A)~(C)成分として当該市販品を使用することもできる。
【0043】
(D)成分
本発明で使用される(D)成分は、ビタミンE、ビタミンC、及びビタミンC誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種であり、これらはカロテノイドに分類されないが、常在カロテノイドの血中濃度の低下抑制及び非常在キサントフィルの血中濃度の向上に寄与する成分である。
【0044】
ビタミンEとは、トコフェロール、トコトリエノールは、それらの誘導体、およびそれら塩を含む概念である。
【0045】
トコフェロールとしては、具体的には、d-α-トコフェロール、d-β-トコフェロール、d-γ-トコフェロール、d-δ-トコフェロール、l-α-トコフェロール、l-β-トコフェロール、l-γ-トコフェロール、l-δ-トコフェロール、それらの混合物であるdl-α-トコフェロール、dl-β-トコフェロール、dl-γ-トコフェロール、dl-δ-トコフェロール等が挙げられる。
【0046】
トコフェロールの誘導体としては、可食性であることを限度として特に制限されないが、例えば、酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、リン酸トコフェロール、アスパラギン酸トコフェノール、グルタミン酸トコフェノール、パルミチン酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、リノール酸トコフェロール等が挙げられる。
【0047】
トコトリエノールとしては、具体的には、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノール等が挙げられる。
【0048】
トコトリエノールの誘導体としては、可食性であることを限度として特に制限されないが、例えば、酢酸トコトリエノール、コハク酸トコトリエノール、リン酸トコトリエノール、アスパラギン酸トコトリエノール、グルタミン酸トコトリエノール、パルミチン酸トコトリエノール、ニコチン酸トコトリエノール等が挙げられる。
【0049】
塩の形態のビタミンEとしては、具体的には、トコフェロールの誘導体のアルカリ金属塩(例えばカルシウム塩等)、トコトリエノールの誘導体のアルカリ金属塩(例えばカルシウム塩等)等が挙げられる。
【0050】
これらのビタミンEは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
ビタミンCとは、L-アスコルビン酸及びその塩を包含する概念である。
【0052】
L-アスコルビン酸の塩としては、可食性であることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
【0053】
ビタミンCとして、L-アスコルビン酸及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、またこれらの中から2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
ビタミンC誘導体とは、L-アスコルビン酸の誘導体及びその塩を包含する概念である。
【0055】
L-アスコルビン酸の誘導体としては、可食性であることを限度として特に制限されないが、例えば、L-アスコルビン酸グルコシド(L-アスコルビン酸-2グルコシド、L-アスコルビン酸-6グルコシド等)、L-アスコルビン酸リン酸エステル(L-アスコルビン酸-2-リン酸エステル、L-アスコルビン酸-3-リン酸エステル、L-アスコルビン酸-6-リン酸エステル等)、L-アスコルビン酸-2-ポリリン酸エステル、L-アスコルビン酸-2-硫酸エステル、L-アスコルビン酸-2-パルミチン酸エステル、L-アスコルビン酸-6-パルミチン酸エステル、L-アスコルビン酸-2-ステアリン酸エステル、L-アスコルビン酸-6-ステアリン酸エステル等が挙げられる。また、L-アスコルビン酸の誘導体の塩としては、可食性であることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
【0056】
これらのビタミンC誘導体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
本発明の血中カロテノイドバランス改善剤では、(D)成分として、ビタミンE、ビタミンC、及びビタミンC誘導体の中から1種を選択して使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
これらの(D)成分の中でも、常在カロテノイドの血中濃度の低下抑制及び非常在キサントフィルの血中濃度の向上をより一層効果的に図るという観点から、好ましくはビタミンE単独、又はビタミンEとビタミンC及び/又はビタミンC誘導体との組み合わせが挙げられる。以下、ビタミンC及び/又はビタミンC誘導体を包括する概念として「ビタミンC類」と表記することがある。
【0059】
(D)成分として、ビタミンE及びビタミンC類を組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、ビタミンE100質量部当たり、ビタミンC類が遊離アスコルビン酸重量換算で100~20000質量部、好ましくは500~10000質量部、更に好ましくは1000~5000質量部となる比率が挙げられる。本明細書において、ビタミンC類の遊離アスコルビン酸重量換算とは、アスコルビン酸の場合にはそれ自体の重量の値、アスコルビン酸の塩の場合にはアスコルビン酸(フリー体)の重量に換算した値、アスコルビン酸誘導体の場合には、アスコルビン酸に結合している置換基や塩を除いてアスコルビン酸自体の重量に換算した値を指す。
【0060】
本発明の血中カロテノイドバランス改善剤において、(A)成分に対する(D)成分の比率については、特に制限されないが、常在カロテノイドの血中濃度の低下抑制及び非常在キサントフィルの血中濃度の向上をより一層効果的に図るという観点から、(A)成分の遊離キサントフィル重量換算100質量部当たり、(D)成分がビタミンEの量及び遊離アスコルビン酸重量換算の量の総量が1~10000質量部となる比率が挙げられる。より具体的には、(D)成分としてビタミンEを単独で使用する場合であれば、(A)成分の遊離キサントフィル重量換算100質量部当たり、ビタミンEが、好ましくは1~5000質量部、更に好ましくは10~200質量部、特に好ましくは20~100質量部が挙げられる。また、(D)成分としてビタミンEとビタミンC類を組み合わせて使用する場合であれば、(A)成分の遊離キサントフィル重量換算100質量部当たり、ビタミンEが、好ましくは1~5000質量部、更に好ましくは10~200質量部、特に好ましくは20~100質量部;且つビタミンC類が遊離アスコルビン酸重量換算で、好ましくは500~10000質量部、更に好ましくは1000~6000質量部、特に好ましくは1500~3000が挙げられる。また、(D)成分としてビタミンC類を単独で使用する場合であれば、(A)成分の遊離キサントフィル重量換算100質量部当たり、ビタミンC類が遊離アスコルビン酸重量換算で、好ましくは500~10000質量部、更に好ましくは1000~6000質量部、特に好ましくは1500~3000が挙げられる。
【0061】
また、本発明の血中カロテノイドバランス改善剤において、(A)~(C)成分の総量に対する(D)成分の比率については、特に制限されないが、常在カロテノイドの血中濃度の低下抑制及び非常在キサントフィルの血中濃度の向上をより一層効果的に図るという観点から、(A)~(C)成分の遊離カロテノイド重量換算の総量100質量部当たり、(D)成分がビタミンEの量及び遊離アスコルビン酸重量換算の量の総量で1~20000質量部が挙げられる。より具体的には、(D)成分としてビタミンEを単独で使用する場合であれば、(A)~(C)成分の遊離カロテノイド重量換算の総量100質量部当たり、ビタミンEが、好ましくは1~1000質量部、更に好ましくは5~500質量部、特に好ましくは10~100質量部が挙げられる。(D)成分としてビタミンEとビタミンC類を組み合わせて使用する場合であれば、(A)~(C)成分の遊離カロテノイド重量換算の総量100質量部当たり、ビタミンEが、好ましくは1~1000質量部、更に好ましくは5~500質量部、特に好ましくは10~100質量部;且つビタミンC類が遊離アスコルビン酸重量換算で、100~20000質量部、更に好ましくは500~10000質量部、特に好ましくは1000~2000質量部が挙げられる。また、(D)成分としてビタミンC類を単独で使用する場合であれば、ビタミンC類が遊離アスコルビン酸重量換算で、100~20000質量部、更に好ましくは500~10000質量部、特に好ましくは1000~2000質量部が挙げられる。本明細書において、(A)~(C)成分の遊離カロテノイド重量換算の総量とは、(A)成分の遊離キサントフィル換算重量の値、(B)成分の遊離キサントフィル換算重量の値、及び(C)成分の重量の値の総和を指す。
【0062】
用途
本発明の血中カロテノイドバランス改善剤は、常在カロテノイドの血中濃度の低下を抑制しつつ、高い抗酸化作用(一重項酸素の消去活性)を有する非常在キサントフィルである(A)成分の血中濃度を向上できるので、生体内の抗酸化力を向上させ、健康維持や疾患の予防の目的で使用される。
【0063】
より具体的には、本発明の血中カロテノイドバランス改善剤は、生体の抗酸化力の向上によって生体の酸化ストレスに対する保護作用を増強できるので、身体機能の向上に有効であり、特に運動中又は運動後の身体機能又は回復に有効である。従って、本発明の血中カロテノイドバランス改善剤は、抗酸化力の向上剤、身体機能の向上剤、心肺機能の向上剤、運動中又は運動後の身体機能の回復剤等としても使用することができる。
【0064】
また、生体内における酸化ストレスに対する保護は、脳の機能維持や機能改善にも有効であるので、本発明の血中カロテノイドバランス改善剤は、脳機能の維持又は改善剤として使用することもできる。
【0065】
更に、生体内における酸化ストレスに対する保護は、赤血球の酸素運搬能の向上を図ることができるので、本発明の血中カロテノイドバランス改善剤は、赤血球の酸素運搬能の低下が一因となって生じる疾患の予防又は治療剤としても使用することができる。赤血球の酸素運搬能の低下が一因となって生じる疾患としては、具体的には、アルツハイマー型認知症等の認知症、動脈硬化、高血圧、糖尿病、高脂血、白内障、脳卒中等が挙げられる。
【0066】
血中カロテノイドバランス改善剤の使用形態
本発明の血中カロテノイドバランス改善剤の適用形態については、生体内に吸収される態様であることを限度として特に制限されないが、例えば、経口、経腸、経静脈、経動脈、皮下、筋肉内等が挙げられる。これらの適用形態の中でも、簡便性や効率性等の観点から、好ましくは経口適用が挙げられる。
【0067】
本発明の血中カロテノイドバランス改善剤は、飲食品、医薬品等の商品形態で提供することができる。
【0068】
本発明の血中カロテノイドバランス改善剤の剤型については、特に制限されず、固形状、半固形状、液状等のいずれであってもよく、当該剤の商品形態の種類や用途に応じて適宜設定される。
【0069】
また、本発明の血中カロテノイドバランス改善剤には、その商品形態の種類や剤型等に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で、前述する成分の他に、食品素材、食品添加剤、栄養成分、薬学的に許容される基材、薬学的に許容される添加剤、薬理成分等が含まれていてもよい。
【0070】
また、本発明の血中カロテノイドバランス改善剤には、前述する(A)~(C)成分以外のカロテノイドが含まれていてもよい。本発明の血中カロテノイドバランス改善剤に、(A)~(C)成分以外のカロテノイドを含有させる場合、本発明の血中カロテノイドバランス改善剤に含まれる遊離カロテノイド重量換算の総量100質量部当たり、(A)~(C)成分の遊離カロテノイド重量換算の総量が0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、特に好ましくは70質量部以上であることが望ましい。
【0071】
本発明の血中カロテノイドバランス改善剤を飲食品の形態で提供する場合、前述する(A)~(D)成分を、そのまま又は他の食品素材や添加成分と組み合わせて所望の形態に調製すればよい。このような飲食品としては、一般の飲食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、病者用食品等が挙げられる。これらの飲食品の形態として、特に制限されないが、具体的にはパン類、麺類等の主菜;チーズ、ハム、ウインナー、魚介加工品等の副菜;ガム、チョコレート、ソフトキャンディー、ハードキャンディー、グミ、ビスケット、クッキー、クラッカー、おかき、煎餅、膨化スナック等の菓子類;アイスクリーム、ソフトクリーム、シャーベット、氷菓等の冷菓類;錠剤、顆粒、粉剤、ハードカプセル、ソフトカプセル、グミ等のサプリメント等;清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、粉末飲料、ゼリー飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、エナジードリンク、ノンアルコール飲料、アルコール飲料等の飲料類等が挙げられる。
【0072】
これらの飲食品の中でも、摂取の簡便性や効率性等の観点から、好ましくはサプリメント(錠剤、顆粒、粉剤、ハードカプセル、ソフトカプセル、グミ等)、及び飲料(特に、栄養飲料、エナジードリンク)が挙げられる。
【0073】
また、本発明の血中カロテノイドバランス改善剤を医薬品として提供する場合、前述する(A)~(D)成分を単独で、又は他の薬理成分、薬学的に許容される基剤や添加剤等と組み合わせて所望の剤型に調製すればよい。このような医薬品の形態としては、特に制限されないが、具体的には、錠剤、顆粒剤、粉剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤、シロップ剤等の内服用医薬品;注射剤、輸液等の全身投与用医薬品等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは内服用医薬品が挙げられる。
【0074】
(A)~(D)の適用量及び含有量
本発明の血中カロテノイドバランス改善剤の適用量については、常在カロテノイドの血中濃度の低下を抑制しつつ、非常在キサントフィルである(A)成分の血中濃度を向上させるのに有効量であればよく、使用される製品の種類や形態、用途、期待される効果、適用形態等に応じて適宜設定すればよい。
【0075】
例えば、成人1日当たりの摂取又は投与量が、(A)成分の遊離キサントフィル重量換算で、0.05~40mg、好ましくは0.3~30mg、更に好ましくは0.5~17mg、特に好ましくは0.8~11mgとなるように設定すればよい。
【0076】
また、例えば、成人1日当たりの摂取又は投与量が、(B)成分の遊離キサントフィル重量換算で、0.01~10mg、好ましくは0.07~7mg、更に好ましくは0.1~4mg、好ましくは0.3~3mgとなるように設定すればよい。
【0077】
また、例えば、成人1日当たりの摂取又は投与量が、(C)成分が0.01~10mg、好ましくは0.07~7mg、更に好ましくは0.1~4mg、好ましくは0.3~3mgとなるように設定すればよい。
【0078】
また、例えば、成人1日当たりの摂取又は投与量が、(D)成分がビタミンEの量及び遊離アスコルビン酸重量換算の量の総量が0.01~2000mgとなるように設定すればよい。より具体的には、(D)成分としてビタミンEを単独で使用する場合であれば、成人1日当たりのビタミンEの摂取又は投与量として、好ましくは0.01~500mg、更に好ましくは0.1~300mg、特に好ましくは1~50mgが挙げられる。また、(D)成分としてビタミンEとビタミンC類を組み合わせて使用する場合であれば、成人1日当たりのビタミンEの摂取又は投与量が、好ましくは0.01~500mg、更に好ましくは0.1~300mg、特に好ましくは1~50mg;且つビタミンC類の摂取又は投与量が遊離アスコルビン酸重量換算で、好ましくは10~2000mg、更に好ましくは50~1500mg、特に好ましくは100~1000mgが挙げられる。また、(D)成分としてビタミンC類を単独で使用する場合であれば、ビタミンC類の摂取又は投与量が遊離アスコルビン酸重量換算で、好ましくは10~2000mg、更に好ましくは50~1500mg、特に好ましくは100~1000mgが挙げられる。
【0079】
本発明の血中カロテノイドバランス改善剤において、(A)~(D)成分の含有量については、その商品形態に応じて、前述する各成分の比率や適用量を充足できる範囲で適宜設定すればよい。例えば、本発明の血中カロテノイドバランス改善剤において、(A)成分の含有量として、遊離キサントフィル重量換算で0.0001~60質量%、好ましくは0.001~10質量%;(B)成分の含有量として、遊離キサントフィル重量換算で0.0001~10質量%、好ましくは0.001~1質量%;(C)成分の含有量として、0.0001~10質量%、好ましくは0.001~1質量%;(D)成分の含有量として、ビタミンEの量及び遊離アスコルビン酸重量換算の量の総量で0.0001~20質量%、好ましくは0.001~10質量%が挙げられる。
【0080】
より具体的には、本発明の血中カロテノイドバランス改善剤がサプリメントの場合であれば、(A)成分の含有量として、遊離キサントフィル重量換算で0.1~60質量%、好ましくは1~10質量%;(B)成分の含有量として、遊離キサントフィル重量換算で0.02~10質量%、好ましくは0.1~1質量%;(C)成分の含有量として、0.02~10質量%、好ましくは0.1~1質量%;(D)成分の含有量として、ビタミンEの量及び遊離アスコルビン酸重量換算の量の総量で0.1~20質量%、好ましくは1~10質量%が挙げられる。
【0081】
また、本発明の血中カロテノイドバランス改善剤が飲料の場合であれば、(A)成分の含有量として、遊離キサントフィル重量換算で0.0001~0.1質量%、好ましくは0.001~0.01質量%;(B)成分の含有量として、遊離キサントフィル重量換算で0.0001~0.1質量%、好ましくは0.001~0.01質量%;(C)成分の含有量として、0.0001~0.1質量%、好ましくは0.001~0.01質量%;(D)成分の含有量として、ビタミンEの量及び遊離アスコルビン酸重量換算の量の総量で0.0001~10質量%、好ましくは0.001~10質量%が挙げられる。
【0082】
2.飲食品
本発明の飲食品は、(A)カプソルビン、カプサンチン、カプサントン、ククルビタキサンチンA、アスタキサンチン、ミチロキサンチン、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種、(B)ルテイン、ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、及びそれらの脂肪酸エステルよりなる群から選択される少なくとも1種、(C)β-カロテン、α-カロテン、及びリコピンよりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(D)ビタミンE、ビタミンC、及びビタミンC誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0083】
本発明の飲食品において、使用される(A)~(D)成分の種類、それらの比率、摂取量、含有量、形態等については、前記「1.血中カロテノイドバランス改善剤」の欄に示す通りである。
【0084】
本発明の飲食品の摂取目的については、特に制限されないが、血中カロテノイドのバランス改善用途で好適に使用される。血中カロテノイドのバランス改善用途の具体例についても、前記「1.血中カロテノイドバランス改善剤」の欄に示す通りである。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0086】
参考例1(公知技術)
以下、非特許文献2に示されている実験データについて説明する。非特許文献2では、表1に示す組成のカプセル剤を健常人10名に1日1カプセルの頻度で28日間摂取させ、摂取前と28日間摂取後の赤血球中カロテノイド濃度についてHPLCを用いて測定している。
【0087】
【0088】
非特許文献2に示されている結果を表2に示す。アスタキサンチンを単独で摂取させると、アスタキサンチンの赤血球中濃度の向上が認められるものの、常在カロテノイドであるβ-クリプトキサンチン、ルテイン及びゼアキサンチンの赤血球中濃度が顕著に低下し、更に赤血球中の総カロテノイド濃度の著しい低下も認められている。
【0089】
【0090】
参考例2(公知技術)
以下、非特許文献3に示されている実験データについて説明する。非特許文献3では、表3に示す組成のカプセル剤を健常人6名に1日1カプセルの頻度で28日間摂取させ、摂取前と28日間摂取後の血漿中カロテノイド濃度についてHPLCを用いて測定している。
【0091】
【0092】
非特許文献3に示されている結果を表4に示す。ルテイン及びゼアキサンチンを組み合わせて摂取させると、ルテインの血漿中濃度の向上が認められるものの、常在カロテノイドであるβ-カロテン、α-カロテン、及びβ-クリプトキサンチンの血漿中濃度が顕著に低下ており、更に血漿中の総カロテノイド濃度はほとんど変化していない。
【0093】
【0094】
参考例3(公知技術)
以下、非特許文献4に示されている実験データについて説明する。非特許文献4では、表5に示す組成の飲料を健常人5名に朝と晩に分けて1日当たり200mlを28日間摂取させ、摂取前と28日間摂取後の血漿中カロテノイド濃度についてHPLCを用いて測定している。
【0095】
【0096】
非特許文献4に示されている結果を表6に示す。非常在キサントフィルと共に、常在カロテノイド(キサントフィル及びカロテン)を摂取させると、非常在キサントフィルの血漿中濃度の向上が認められるものの、常在カロテノイドである総カロテン、及びルテインの血漿中濃度の顕著な低下が認められている。
【0097】
【0098】
実施例1
表7に示す組成の飲料を製造し、当該飲料の摂取によって血漿中カロテノイドの変化を測定した。具体的には、健常人1名に1日1回、1回当たり100mlを28日間摂取させた。摂取前と28日間摂取後に採血して血漿を得て、当該血漿中の各カロテノイド濃度をHPLCによって定量した。
【0099】
【0100】
得られた結果を表8に示す。この結果、非常在キサントフィルと常在カロテノイド(キサントフィル及びカロテン)と共に、ビタミンE及びビタミンCを摂取させると、常在カロテノイド(キサントフィル及びカロテン)の血漿中濃度を低下させることなく、非常在キサントフィルの血漿中濃度を顕著に向上でき、更に血中の総カロテノイド濃度も著しく向上していた。また、常在カロテノイドの内、β-クリプトキサンチンの血漿中濃度の著しい向上も認められた。
【0101】
【0102】
実施例2
表9に示す組成のカプセル(ハードカプセル)を製造し、当該カプセルの摂取によって血漿中カロテノイドの変化を測定した。具体的には、健常人1名に1日1回、1回当たり1錠を28日間摂取させた。摂取前と28日間摂取後に採血して血漿を得て、当該血漿中の各カロテノイド濃度をHPLCによって定量した。
【0103】
【0104】
得られた結果を表10に示す。この結果からも、非常在キサントフィルと常在カロテノイド(キサントフィル及びカロテン)と共に、ビタミンE及びビタミンCを摂取させることにより、常在カロテノイドの血漿中濃度を低下させることなく、非常在キサントフィルの血漿中濃度の顕著な向上、及び総カロテノイドの血漿中濃度の顕著な向上が認められた。また、実施例1の場合と同様に、常在カロテノイドの内、β-クリプトキサンチンの血漿中濃度の著しい向上も認められた。
【0105】