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7004656混成メタロセン担持触媒、およびそれを用いたオレフィン重合体の製造方法
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  • -混成メタロセン担持触媒、およびそれを用いたオレフィン重合体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】混成メタロセン担持触媒、およびそれを用いたオレフィン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6592 20060101AFI20220128BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
C08F4/6592
C08F10/00 510
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018534578
(86)(22)【出願日】2016-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-10
(86)【国際出願番号】 KR2016003178
(87)【国際公開番号】W WO2017115927
(87)【国際公開日】2017-07-06
【審査請求日】2019-03-19
(31)【優先権主張番号】10-2015-0190739
(32)【優先日】2015-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515358285
【氏名又は名称】ハンファ ケミカル コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA CHEMICAL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ア ラ チョ
(72)【発明者】
【氏名】ア ルム キム
(72)【発明者】
【氏名】ラン ファー ピアオ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ホ ソ
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヒ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ソ ジュン イ
(72)【発明者】
【氏名】ユ ジョン イム
(72)【発明者】
【氏名】ドン ウク チョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン イル チェ
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-197722(JP,A)
【文献】特開2014-210937(JP,A)
【文献】特表2017-526773(JP,A)
【文献】国際公開第2016/036204(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/60-4/70
C08F 10/00-10/14
C08F 110/00-110/14
C08F 210/00-210/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体と、
前記担体に担持された下記化学式1で表される化合物のうちの少なくとも一つの第1メタロセン化合物と、
前記担体に担持された下記化学式2で表される化合物のうちの少なくとも一つの第2メタロセン化合物と、
前記担体に担持された助触媒化合物と、を含んでなることを特徴とする、オレフィン共重合体の製造に用られる混成メタロセン担持触媒。
<化学式1>
【化1】

(前記化学式1中、*-MX-*において、Mは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)のいずれかであり、Xは、ハロゲン、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基のいずれかであり、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R10-*は、それぞれ独立して、H-*、C1-20アルキル基、C3-6シクロアルキル基(cycloalkyl group)およびC6-14アリール基(aryl group)のいずれかであり、*は結合サイトを示す。)
<化学式2>
【化2】

(前記化学式2中、*-MX-*において、Mは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)のいずれかであり、Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基のいずれかであり、Qは、炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)またはスズ(Sn)のいずれかであり、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R10-*、R11-*およびR12-*は、それぞれ独立して、*-H、C1-20アルキル基、C3-6シクロアルキル基(cycloalkyl group)およびC6-14アリール基(aryl group)のいずれかであり、R13-*およびR14-*は、それぞれ独立して、C1-10アルキル基であり、*は結合サイトを示す。)
【請求項2】
前記助触媒化合物は、下記化学式3で表される化合物のうちの少なくとも一つの第1助触媒化合物、および下記化学式4で表される化合物のうちの少なくとも一つの第2助触媒化合物の少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1に記載の混成メタロセン担持触媒。
<化学式3>
【化3】

<化学式4>
【化4】

(前記化学式3中、Ra-*は、ハロゲン-*、ハロゲンで置換されたもしくは無置換のC1-20アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C6-14アリール基であり、nは、2以上の整数であり、*は結合サイトを示し、
前記化学式4中、Dはアルミニウムまたはボロンであり、Rb-*乃至Rd-*は、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して、H-*、ハロゲン-*、またはハロゲンで置換されたもしくは無置換のC1-20アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C6-14アリール基であり、*は結合サイトを示す。)
【請求項3】
前記第1メタロセン化合物の担持量と前記第2メタロセン化合物の担持量との合計は、前記担体100重量部を基準に0.5重量部乃至3.0重量部であり、前記助触媒化合物の担持量は、前記担体100重量部を基準に300重量部乃至400重量部であることを特徴とする、請求項1に記載の混成メタロセン担持触媒。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の混成メタロセン担持触媒の存在下でオレフィン単量体を重合することを含む、オレフィン重合体の製造方法。
【請求項5】
前記オレフィン単量体は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンの中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項4に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混成メタロセン担持触媒、およびそれを用いたオレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタロセン(metallocene)化合物は、遷移金属または遷移金属ハロゲン化合物にシクロペンタジエニル基(cycolpentadienyl group、Cp)、インデニル基(indenyl group)、シクロヘプタジエニル基(cycloheptadienyl group)などのリガンドが配位結合された化合物であって、サンドイッチ構造を基本的な形態として有する。
【0003】
メタロセン触媒は、メタロセン化合物とメチルアルミノキサン(methylaluminoxane)などの助触媒を含んで構成されるシングルサイト触媒(single-site catalyst)であって、メタロセン触媒によって重合された高分子は、分子量分布が狭く、共単量体の分布が均一であり、チーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒に比べて共重合活性度が高い。
【0004】
メタロセン触媒は、リガンドの構造に応じて、同一の単量体を使用する場合でも異なる立体規則性を有する高分子を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態は、オレフィン重合体の溶融強度を向上させることができる混成メタロセン担持触媒を提供しようとする。
【0006】
本発明の他の実施形態は、向上した溶融強度を有するオレフィン重合体の製造方法を提供しようとする。
【0007】
本発明の別の実施形態は、向上した溶融強度を有するオレフィン重合体を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る混成メタロセン担持触媒は、担体と、前記担体に担持された下記化学式1で表される化合物のうちの少なくとも一つの第1メタロセン化合物と、前記担体に担持された下記化学式2で表される化合物のうちの少なくとも一つの第2メタロセン化合物と、前記担体に担持された助触媒化合物と、を含んでなる。
<化学式1>
【化1】

【0009】
前記化学式1中、*-MX-*において、Mは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)のいずれかであり、Xは、ハロゲン、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基のいずれかであり、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R10-*は、それぞれ独立して、H-*、C1-20アルキル基、C3-6シクロアルキル基(cycloalkyl group)およびC6-14アリール基(aryl group)のいずれかであり、*は結合サイトを示す
【0010】
<化学式2>
【化2】
前記化学式2中、*-MX-*において、Mは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)のいずれかであり、Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基のいずれかであり、Qは、炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)またはスズ(Sn)のいずれかであり、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R10-*、R11-*およびR12-*は、それぞれ独立して、H-*、C1-20アルキル基、C3-6シクロアルキル基(cycloalkyl group)およびC6-14アリール基(aryl group)のいずれかであり、R13-*およびR14-*は、それぞれ独立して、C1-10アルキル基であり、*は結合サイトを示す
【0011】
本発明の他の実施形態に係るオレフィン重合体の製造方法は、前記混成メタロセン担持触媒の存在下でオレフィン単量体を重合することを含む。
【0012】
本発明の参考実施形態に係るオレフィン重合体は、分子量分布が2乃至5であり、重量平均分子量が100×10g/mol乃至200×10g/molであり、前記重量平均分子量の測定値に対して190℃で測定された溶融強度測定値の比が0.85×10-3以上である。
【0013】
その他の実施形態の具体的な事項は、詳細な説明および図面に含まれている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態に係る混成メタロセン担持触媒は、オレフィン重合体の溶融強度を向上させることができる。
【0015】
本発明の他の実施形態に係るオレフィン重合体の製造方法は、溶融強度が向上したオレフィン重合体を提供することができる。
【0016】
本発明の別の実施形態に係るオレフィン重合体は、向上した溶融強度を有する。
【0017】
本発明による効果は、以上で例示された内容によって制限されず、更に様々な効果が本明細書内に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】延伸速度(pull-off speed)に対する溶融強度(F)を示すグラフである。
図2】せん断速度(ω)に対するせん断粘度(η)を示すグラフである。
図3】損失モジュラス(G")に対する貯蔵モジュラス(G′)を示すグラフである。
図4】せん断速度(ω)に対するtanδを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の利点及び特徴、これらを達成する方法は、添付する図面と共に詳細に後述する実施例において明確になるであろう。しかし、本発明は、以下で開示する実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現されるものであり、本実施例は、単に本発明の開示を完全にし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範囲によってのみ定義される。明細書全体にかけて同一参照符号は同一構成要素を指称する。図面で層及び領域のサイズ及び相対的なサイズは説明を明瞭にするため誇張したものであり得る。
【0020】
第1、第2などが多様な構成要素を叙述するために使用されるが、これら構成要素はこれらの用語によって制限されないことはいうまでもない。これらの用語は、単に一つの構成要素を他の構成要素と区別するために使用するものである。したがって、以下で言及される第1構成要素は本発明の技術的な思想内で第2構成要素であり得ることは勿論である。
【0021】
本明細書において、用語「CA-B」は炭素数がA以上でB以下であることを意味し、「A乃至B」はA以上でB以下であることを意味する。
【0022】
本明細書において、「*」は結合サイトを意味する。
【0023】
以下、実施例と比較例を参照して、発明の実施形態についてより詳細に説明する。
【0024】
一実施形態に係る混成メタロセン担持触媒は、担体と、担体に担持された下記化学式1で表される化合物のうちの少なくとも一つの第1メタロセン化合物と、担体に担持された下記化学式2で表される化合物のうちの少なくとも一つの第2メタロセン化合物と、担体に担持された助触媒化合物と、を含んでなる。
<化学式1>
【化3】
【0025】
上記化学式1中、*-MX-*において、Mは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)のいずれかであり、Xは、ハロゲン、C1-10アルキル基およびC2-10アルケニル基のいずれかである。上記化学式1中、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R10-*は、それぞれ独立して、H-*、C1-20アルキル基、C3-6シクロアルキル基(cycloalkyl group)およびC6-14アリール基(aryl group)のいずれかである。
【0026】
上記化学式1において、R-*(mは1乃至10)の中で、隣接した2つのR-*とRn+1-*(nは1乃至9)は、C1-4アルキル基が置換されたもしくは無置換のC1-15単環式または多環式化合物を形成することができる。このとき、R-*とRn+1-*を除いた残りのR-*は、それぞれ独立して、H-*、C1-20アルキル基、C3-6シクロアルキル基およびC6-14アリール基のいずれかである。C1-4アルキル基が置換されたもしくは無置換のC1-15単環式化合物は、脂肪族環式化合物或いは芳香族環式化合物であってもよく、C1-15多環式化合物は、脂肪族環式化合物、芳香族環式化合物、または脂肪族環式化合物と芳香族環式化合物との混成環式化合物であり得る。
【0027】
第1メタロセン化合物は、例えば、下記化学式1-1乃至下記化学式1-24で表される化合物のうちの少なくとも一つであり得る。
<化学式1-1>
【化4】
【0028】
<化学式1-2>
【化5】
【0029】
<化学式1-3>
【化6】
【0030】
<化学式1-4>
【化7】
【0031】
<化学式1-5>
【化8】
【0032】
<化学式1-6>
【化9】
【0033】
<化学式1-7>
【化10】
【0034】
<化学式1-8>
【化11】
【0035】
<化学式1-9>
【化12】
【0036】
<化学式1-10>
【化13】
【0037】
<化学式1-11>
【化14】
【0038】
<化学式1-12>
【化15】
【0039】
<化学式1-13>
【化16】
【0040】
<化学式1-14>
【化17】
【0041】
<化学式1-15>
【化18】
【0042】
<化学式1-16>
【化19】
【0043】
<化学式1-17>
【化20】
【0044】
<化学式1-18>
【化21】
【0045】
<化学式1-19>
【化22】
【0046】
<化学式1-20>
【化23】
【0047】
<化学式1-21>
【化24】
【0048】
<化学式1-22>
【化25】
【0049】
<化学式1-23>
【化26】
【0050】
<化学式1-24>
【化27】
【0051】
上記化学式1-1乃至1-24中、Me-*はメチル基であり、Bu-*はブチル基であり、Ph-*はフェニル基であり、Tol-*はトルエン基またはフェニル基であり、Naph-*はナフタレン基である。
<化学式2>
【化28】
【0052】
上記化学式2中、*-MX-*において、Mは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)のいずれかであり、Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基のいずれかである。上記化学式2中、*-Q-*において、Qは、炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)およびスズ(Sn)のいずれかであり、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R-*、R10-*、R11-*およびR12-*は、それぞれ独立して、H-*、C1-20アルキル基、C3-6シクロアルキル基(cycloalkyl group)およびC6-14アリール基(aryl group)のいずれかであり、R13-*およびR14-*は、それぞれ独立して、C1-10アルキル基である。
【0053】
上記化学式2において、R-*(mは1乃至12)の中で、隣接した2つのR-*とRn+1-*(nは1乃至11)は、C1-4アルキル基が置換されたもしくは無置換のC1-15単環式または多環式化合物を形成することができる。このとき、R-*とRn+1-*を除いた残りのR-*は、それぞれ独立して、H-*、C1-20アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C6-14アリール基のいずれかである。C1-4アルキル基が置換されたもしくは無置換のC1-15単環式化合物は、脂肪族環式化合物または芳香族環式化合物であってもよく、C1-15多環式化合物は、脂肪族環式化合物、芳香族環式化合物、または脂肪族環式化合物と芳香族環式化合物との混成環式化合物であり得る。
【0054】
また、上記化学式2において、C1-20アルキル基、C1-4アルキル基が置換されたもしくは無置換のC1-15単環式または多環式化合物は、一つ以上の炭素元素が窒素元素(N)、酸素元素(O)および硫黄元素(S)のいずれかで置換できる。
【0055】
第2メタロセン化合物は、例えば、下記化学式2-1乃至下記化学式2-20で表される化合物のうちの少なくとも一つであり得る。
<化学式2-1>
【化29】
【0056】
<化学式2-2>
【化30】
【0057】
<化学式2-3>
【化31】
【0058】
<化学式2-4>
【化32】
【0059】
<化学式2-5>
【化33】
【0060】
<化学式2-6>
【化34】
【0061】
<化学式2-7>
【化35】
【0062】
<化学式2-8>
【化36】
【0063】
<化学式2-9>
【化37】
【0064】
<化学式2-10>
【化38】
【0065】
<化学式2-11>
【化39】
【0066】
<化学式2-12>
【化40】
【0067】
<化学式2-13>
【化41】
【0068】
<化学式2-14>
【化42】
【0069】
<化学式2-15>
【化43】
【0070】
<化学式2-16>
【化44】
【0071】
<化学式2-17>
【化45】
【0072】
<化学式2-18>
【化46】
【0073】
<化学式2-19>
【化47】
【0074】
<化学式2-20>
【化48】
【0075】
上記化学式2-1乃至2-20中、Ph-*はフェニル基である。
【0076】
上記第1メタロセン化合物と上記第2メタロセン化合物は、助触媒化合物と共に使用され、オレフィン重合体の製造のための重合触媒として使用できる。
【0077】
助触媒化合物は、メタロセン触媒分野で広く使用されたものであれば特に制限されず、例えば、下記化学式3で表される化合物のうちの少なくとも一つの第1助触媒化合物、および下記化学式4で表される化合物のうちの少なくとも一つの第2助触媒化合物の少なくとも一つであり得る。
<化学式3>
【化49】
【0078】
上記化学式3中、Ra-*は、ハロゲン-*、ハロゲンで置換されたもしくは無置換のC1-20アルキル基、C3-6シクロアルキル基およびC6-14アリール基のいずれかであり、nは2以上の整数である。
<化学式4>
【化50】
【0079】
上記化学式4中、Dはアルミニウムまたはボロンであり、Rb-*乃至Rd-*は、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して、H-*、ハロゲン-*、またはハロゲンで置換されたもしくは無置換のC1-20アルキル基、C3-6シクロアルキル基およびC6-14アリール基のいずれかであり、nは2以上の整数である。
【0080】
担体は、第1メタロセン化合物、第2メタロセン化合物および助触媒化合物を担持することができるものであれば特に制限されないが、例えば、炭素、シリカ、アルミナ、ゼオライト、塩化マグネシウムなどであり得る。
【0081】
担体に第1メタロセン化合物、第2メタロセン化合物および助触媒化合物を担持する方法としては、物理的吸着方法または化学的吸着方法などが使用できる。
【0082】
物理的吸着方法は、例えば、第1メタロセン化合物、第2メタロセン化合物および助触媒化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後、乾燥させる方法、または、第1メタロセン化合物と第2メタロセン化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後、乾燥させて第1メタロセン化合物と第2メタロセン化合物の担持された担体を製造し、これとは別に、助触媒化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後、乾燥させて助触媒化合物の担持された担体を製造した後、これらを混合する方法などであり得る。
【0083】
化学的吸着方法は、例えば、担体の表面に助触媒化合物を先ず担持させた後、助触媒化合物に第1メタロセン化合物と第2メタロセン化合物とを担持させる方法、または担体の表面の官能基(例えば、シリカの場合、シリカ表面の水酸基(-OH))と第1メタロセン化合物と第2メタロセン化合物を共有結合させる方法などであり得る。
【0084】
第1メタロセン化合物および第2メタロセン化合物の担持量の合計は、担体1gを基準に、0.5重量部乃至3.0重量部であり得る。助触媒化合物の担持量は、担体1gを基準に、20重量部乃至30重量部であり得る。
【0085】
一方、本発明の他の実施形態に係るオレフィン重合体の製造方法は、前述した混成メタロセン担持触媒の存在下でオレフィン単量体を重合する段階を含む。
【0086】
オレフィン単量体は、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンセン、1-ドデセン、1-テトラデセンおよび1-ヘキサデセンなどであり得る。オレフィン重合体は単独重合体または共重合体であり得る。共重合体は、例えば、エチレンとα-オレフィンの共重合体であり得る。α-オレフィンは、1-ブテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンの中から選ばれる1種以上であり得る。
【0087】
オレフィン重合体は、例えば、気相重合法、溶液重合法またはスラリー重合法などで製造できる。オレフィン重合体が溶液重合法またはスラリー重合法で製造される場合、使用される溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、およびこれらの異性体のようなC5-12脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロベンゼンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒;およびこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
本発明の別の実施形態に係るオレフィン重合体は、分子量分布が2乃至5であり、重量平均分子量が100×10g/mol乃至200×10g/molであり、重量平均分子量の測定値に対して190℃で測定された溶融強度測定値の比が0.85×10-3以上、好ましくは0.90×10-3以上、より好ましくは0.95×10-3以上である。
【0089】
溶融強度測定値が125cN以上、好ましくは140cN以上である。また、せん断速度とtanδとの関係グラフの傾きが0.1rad/s乃至100rad/sのせん断速度範囲で-0.20以上である。Han plotの傾きが10dyne/cm乃至10dyne/cmの損失モジュラス範囲で1.24以下である。密度が0.920kg/cm超過乃至0.950kg/cm未満であり、190℃で測定されたメルトインデックスが1.0g/10min超過乃至1.5g/10min未満であり、荷重21.6kgでの10分間の押出量を荷重2.16kgでの10分間の押出量によって割った値が20超過乃至40未満であり得る。
【0090】
以下、本発明の一実施形態に係る混成メタロセン担持触媒の実施例と本発明の他の実施形態に係るオレフィン重合体の実施例を具体的に説明する。
(第1メタロセン化合物の実施例)
【化51】
【0091】
ドライボックス内でインデン(5g、0.043mol)をヘキサン(150mL)に溶かした後、十分に混ぜ、-30℃まで冷却させた。その後、このヘキサン溶液に2.5Mのn-ブチルリチウム(n-BuLi)ヘキサン溶液(17ml、0.043mol)をゆっくりと滴下し、常温で一晩撹拌した。白色の懸濁液をガラスフィルターで濾過して白色固体を十分に乾燥させた後、インデンリチウム塩5.2gを99%の収率で得た。
【化52】
【0092】
グローブボックス内でシクロペンタジエニルジルコニウムトリクロリド(Cyclopentadienyl Zirconium Trichloride:CpZrCl)(2.24g、8.53mmol)をエーテル(30mL)にゆっくりと溶かした後、-30℃まで冷却させた。このエーテル溶液に、エーテル(15mL)に溶かしたインデンリチウム塩(1.05g、8.53mmol)をゆっくりと滴下した後、一晩攪拌した。真空減圧下で、生成された黄色の懸濁液からエーテルを除去した後、塩化メチレン(50mL)で抽出した。セライト(Celite)を通過させて塩化リチウム(LiCl)を除去した後、乾燥させることにより、精製された第1メタロセン化合物2.82gを97%の収率で得た。
【0093】
(第2メタロセン化合物の実施例)
【化53】
【0094】
A段階:2-メチル-7-フェニル-1H-インデン(2-methyl-7-Phenyl-1H-indene)の合成
7-ブロモ-2-メチル-1H-インデン(7-Bromo-2-methyl-1H-indene)(7g、1当量)、[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)クロリド([1,3-Bis(diphenylphosphino)propane]nickel(II)chloride:Ni(dppp)Cl)(363mg、0.02当量)をエーテル(100mL)に入れ、0℃で3.0Mのフェニル臭化マグネシウム(Phenylmagnesium bromide:PhMgBr)エーテル溶液(8.23g、1.05当量)を1時間添加した後、温度を徐々に上げて50℃で12時間還流撹拌した。
【0095】
反応終結後、溶液を氷浴に浸した後、1N塩酸を添加して水素イオン濃度指数をpH4まで下げた。有機層を抽出した後、硫酸マグネシウム(MgSO)で処理をして水を除去し、溶媒を乾燥させた後、白色の固体である2-メチル-7-フェニル-1H-インデン(2-methyl-7-Phenyl-1H-indene)6.68g(収率:97%)を得た。
H-NMR(CDCl,300MHz),7.61-7.12(m,8H),6.54(s,1H),3.38(s,2H),2.14(s,3H)]
【0096】
B段階:ジメチルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)シラン(Dimethylbis(2-methyl-4-phenylindenyl)silane)の合成
2-メチル-7-フェニル-1H-インデン(2-methyl-7-Phenyl-1H-indene)(2.14g、1当量)をヘキサン50mLに入れ、1.6Mのn-ブチルリチウム(n-BuLi)ヘキサン溶液(7.8mL、1.2当量)を-30℃でゆっくりと添加した後、温度を徐々に常温に上げて12時間攪拌した。生成された固体を濾過してヘキサンで洗浄した後、真空下で乾燥させた。生成された2-メチル-4-フェニルインデニルリチウム(2-Methyl-4-phenylindenyllithium)(1.5g、2当量)にトルエン20mL、テトラヒドロフラン(THF)5mLを入れ、ジメチルジクロロシラン(dimethyldichlorosilane)(456mg、1当量)を-30℃でゆっくりと添加した後、温度を徐々に上げて2時間80℃で攪拌した。反応終結後、溶媒を除去し、エーテルと水との混合溶液を用いて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムで処理をして水を除去した。カラムクロマトグラフィーを用いて分離し、ジメチルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)シラン(Dimethylbis(2-methyl-4-phenylindenyl)silane)1.3g(収率:80%)を得た。このとき、ヘキサンと塩化メチレンの体積比が20:1である混合液が移動相として使用された。
H-NMR(CDCl,300MHz),7.56-7.14(m,16H),6.80(m,2H),3.80(S,2H),2.25(s,3H),2.17(s,3H),0.17(m,6H)]
【0097】
C段階:rac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライド(rac-dimethylsilylbis(2-methyl-4-phenylindenyl)zirconiumdichloride)の合成
ジメチルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)シラン(Dimethylbis(2-methyl-4-phenylindenyl)silane)(1.4g、1当量)をエーテル20mLに溶かした溶液に、1.6Mのn-ブチルリチウムヘキサン溶液(4mL、2.1当量)を-30℃でゆっくりと添加した後、温度を徐々に常温に上げて12時間攪拌した。溶媒を乾燥させた後、生成された固体をヘキサンで洗浄し、真空下で乾燥させてジリチウム塩(dilithium salt)を得た。塩化ジルコニウム(ZrCl)(484mg、1当量)にジリチウム塩(1g、2当量)とエーテル100mL溶液を-30℃でゆっくりと添加し、温度を徐々に上げて4時間撹拌した。反応終結後、溶媒を除去し、再結晶化溶媒として塩化メチレンを用いて再結晶法によってrac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド(rac-dimethylsilylbis(2-methyl-4-phenylindenyl)zirconium dichloride)130mg(収率:10%)を得た。
H-NMR(CDCl,300MHz),7.68-7.10(m,16H),6.95(s,2H),2.26(s,6H),1.34(s,6H)]
【0098】
(第1混成メタロセン担持触媒の実施例)
第1および第2メタロセン化合物と助触媒であるメチルアルミニウムオキサン(MAO)は、空気中の水分または酸素と反応すると、活性を失ってしまうので、すべての実験は、グローブボックス、シューリンク・テクニックを用いて窒素条件下で行った。10Lの担持触媒反応器は、洗浄して異物を除去し、110℃で3時間以上乾燥させながら、反応器を密閉した後、真空を用いて水分などを完全に除去した状態で使用した。
【0099】
第1メタロセン化合物2.862g、第2メタロセン化合物3.469gに10%メチルアルミニウムオキサン(MAO)溶液(メチルアルミニウムオキサン:1188g)を加え、1時間常温で攪拌した。シリカ300gを反応器に投入した後、精製されたトルエン900mLを反応器に加えて攪拌した。1時間の攪拌段階が完了した後、反応器を攪拌しながら、第1メタロセン化合物、第2メタロセン化合物およびメチルアルミニウムオキサンを混合溶液に投入した。反応器を約60℃まで昇温させた後、2時間撹拌した。
沈殿反応の後、上澄み液を除去した。
【0100】
(第2混成メタロセン担持触媒の実施例)
2.389gの第1メタロセン化合物を使用し、4.387gの第2メタロセン化合物を使用した以外は、第1混成メタロセン担持触媒の実施例と同様にして第2混成メタロセン担持触媒を製造した。
【0101】
(第1オレフィン系重合体の実施例)
第1混成メタロセン担持触媒を単一気相重合工程に投入してポリオレフィン共重合体を製造した。共単量体としては1-ヘキセンが使用された。表1には操業条件がまとめられている。
【0102】
(第2オレフィン系重合体の実施例)
第2混成メタロセン担持触媒を単一気相重合工程に投入してポリオレフィン共重合体を製造した。共単量体としては1-ヘキセンが使用された。表1には操業条件がまとめられている。
【表1】
【0103】
[実験例]
実施例に係るオレフィン系重合体と下記の比較例を用いて密度、メルトインデックス、メルトフローレート、分子量、分子量分布、溶融強度、流変物性などを測定した。下記表2および表3には物性測定結果が纏められている。下記表2および表3において、実施例1は第1オレフィン系重合体であり、実施例2は第2オレフィン系重合体である。
【0104】
(比較例1)
商業用パイプ製品であるSKイノベーション社製のDX900を使用した。
【0105】
(比較例2)
商業用パイプ製品であるLG化学社製のSP988を使用した。
【0106】
(比較例3)
商業用フィルム製品であるハンファトータル社製のC910Aを使用した。
【0107】
(比較例4)
商業用瓶栓製品であるSKイノベーション(SK INNOVATION)社製のHDPE 7303を使用した。
【0108】
(比較例5)
LG化学社製の商業用LG ME2500製品を使用した。
【0109】
物性測定方法
1)密度はASTM1505に基づいて測定した。
2)メルトインデックス(I、2.16kg)は、荷重2.16kgでの10分間の押出量であり、測定温度190℃でASTM1238に基づいて測定した。
3)メルトフローレート(MFR):流動指数(I21、21.6kg荷重)をメルトインデックス(I、2.16kg荷重)で割った比率である。
4)分子量および分子量分布(PDI):測定温度160℃でゲル透過クロマトグラフィー-FTIR(GPC-FTIR)を用いて数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量を測定した。分子量分布(PDI、Mw/Mn)は重量平均分子量と数平均分子量の比で示した。
5)溶融強度
溶融強度の測定は、Gottfert Rheotester2000キャピラリーレオメーターに取り付けられたGottfert Rheotensで行った。2.0mmのキャピラリー直径および10の縦横比(キャピラリーの長さ/キャピラリーの直径)を有する平らな入口角度を有するキャピラリーを介して重合体を押し出した。190℃で5分間サンプルを平衡化させた後、ピストンを0.32mm/sの一定のピストン速度で運動させた。実験温度は190℃であった。2.4mm/sの加速度を用いて、ダイ100mmの下に位置した加速ニップによってセットでサンプルを延伸させた。引張強度をニップロールの巻取り速度の関数として記録した。
6)流変物性の測定:
周波数の変化に応じた動的粘弾性特性の測定(Dynamic frequency sweep test):流変物性の測定は、流変物性測定器(Advanced Rheometric Expansion System、ARES)を用いて行われた。周波数領域は0.1乃至500rad/sであり、実験温度は190℃であり、窒素雰囲気下で行われた。歪み率(strain)は10%であった。
【表2】

【表3】
【0110】
0.1rad/s乃至100rad/sのせん断速度(ω)におけるlog(tanδ)の傾きはlog(tanδ)およびlog(w)値の傾きである。例えば、実施例1のlog(tanδ)の傾き値は、下記式1で計算された。
(式1)
{log(1.274)-log(4.547)}/{log(100)-log(0.1)}=-0.18
【0111】
Han plotは、一定の範囲のlog(G")(例えば、log(G")値が4.4、5.8である。)によるlog(G′の傾きを比較した。例えば、実施例1のHan plotの傾き値は、下記式2で計算された。
(式2)
{log(421803)-log(7864)}/{log(636940)-log(25551)}=1.24
【0112】
図1乃至図4および表2乃至表3を参照すると、実施例1および2は、Mwが少ないにもかかわらず、M.S.が大きい傾向性を示す。一般的に、Mwが高いほどM.S.が増加する傾向性を示す。しかし、実施例1および2は、比較例1、2および3と同様のMwを有しながらM.S.がさらに優れるうえ、比較例4および5に比べてMwが低いにも拘わらずM.S.がさらに優れる。また、実施例1および2は、比較例と同等程度の加工性を示す。一方、tanδの傾きが大きいほど、物質の弾性(elasticity)が大きいことを意味し、Han plotの傾きが2に近いほど樹脂内の混和性(miscibility)が良いことを意味し、樹脂内の長鎖分岐(Long Chain Branching、LCB)が存在する部分が大きくなるほど混和性が低下し、Han plotの傾きは1に近づく。樹脂内に長鎖分岐が導入される場合、物質の弾性が大きくなり、混和性は若干悪くなるおそれがある。実施例1および2は、比較例に比べて、弾性および混和性が同等かより優れることが分かる。実施例1および2は、比較例に比べて同等以上の弾性と混和性の特性を有しながら、優れた溶融強度特性を有する。
【0113】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造でき、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想または必須的な特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できることを理解することができるだろう。したがって、以上で記述した実施形態は、あらゆる面で例示的なもので、限定的なものではないと理解すべきである。
図1
図2
図3
図4