IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インデナ エッセ ピ アの特許一覧

特許7004664大気汚染物質からの保護のための化粧品組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】大気汚染物質からの保護のための化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20220203BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220203BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 36/49 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 36/87 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 36/82 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/34
A61Q17/00
A61K36/49
A61K36/87
A61K36/82
A61P17/00
A61P1/02
A61P11/02
A61P39/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018552852
(86)(22)【出願日】2017-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2017058247
(87)【国際公開番号】W WO2017174718
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2020-03-18
(31)【優先権主張番号】102016000036493
(32)【優先日】2016-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】591092198
【氏名又は名称】インデナ エッセ ピ ア
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】マラマルディ、 ジァダ
(72)【発明者】
【氏名】メネギン、 マルティーノ
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスキ、 フェデリーコ
(72)【発明者】
【氏名】トーニ、 ステファーノ
(72)【発明者】
【氏名】マランドリーノ、 サルヴァトーレ
【審査官】山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-533461(JP,A)
【文献】特表2003-533459(JP,A)
【文献】Eye Lift + Circle Reducer, ID# 1607353, Mintel GNPD [online], 2011年7月, [検索日2021.2.15], URL https://www.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 36/49
A61K 36/87
A61K 36/82
A61P 17/00
A61P 1/02
A61P 11/02
A61P 39/02
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気汚染物質からの皮膚、頭皮、毛髪および外部粘膜の保護における、活性成分としてオーク抽出物、ブドウ種子抽出物および緑茶抽出物を含む化粧品組成物の非治療的使用であって、前記大気汚染物質が重金属である使用。
【請求項2】
前記外部粘膜が鼻粘膜または口腔粘膜である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記外部粘膜が唇である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
局所投与のための、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記オーク抽出物は、総ポリフェノール含量が30%~60%w/wの範囲であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記オーク抽出物が、0.01%~5%w/wの範囲の量で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記ブドウ種子抽出物は、総プロアントシアニジン含量(フォリン法により計算され、カテキン類として表される)が95%w/w以上、およびモノマー含量(カテキンとして表されるエピカテキンとカテキンの合計に由来する)が5%~15%w/wの範囲であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記ブドウ種子抽出物が、0.01%~5%w/wの範囲の量で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記緑茶抽出物は、ポリフェノール含量(フォリン法により計算され、カテキン類として表される)が40%w/w以上、およびカテキン含量(エピカテキン-3-O-ガラートとして表される)が15%w/w以上であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記緑茶抽出物が、0.01%~5%w/wの範囲の量で存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
抽出物が水性乾燥抽出物である、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーク抽出物、ブドウ種子抽出物および緑茶抽出物を含み、大気汚染物質からの保護に有用な化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
大気汚染が人間の健康に重大な影響を及ぼしていることは長い間知られており、最近、その影響に関するいくつかの特別な警告が当局によって発せられた。例えば、2014年に、米国環境保護庁は、1億4,200万人を超えるアメリカ人が、大気環境が国家環境大気質基準(https://www.epa.gov/air-trends)を満たさない地域に住んでいると報告した。
【0003】
同年、WHOは、700万人の早期死亡を大気汚染への暴露に帰し(http://who.int/mediacentre/news/releases/2014/air-pollution/en/)、大気汚染物質が内臓器官に悪影響を及ぼすという証拠が増えている(Curr. Vasc. Pharmacol., 2006, 4, 199-203)。
【0004】
内臓器官に加えて、呼吸器管は明らかに大気汚染物質の主要な標的であり(Annu. Rev. Public Health, 1994, 15, 107-132)、皮膚は、その広い表面と継続的な暴露のために、最も露出した標的器官の1つである。
【0005】
今日まで、皮膚の健康に対する環境の影響は、主に太陽光からの紫外線の皮膚への影響に関して評価されている(J. Invest. Dermatol., 2003, 120, 1087-1093、Prog. Biophys. Mol. Biol., 2006, 92, 119-131)。しかしながら、紫外線に加えて、汚染には、潜在的に皮膚の健康にさらなる危険を伴う可能性がある有機物や無機物も含まれる。
【0006】
環境汚染物質の中には、NO、COおよびSO2などのガス状汚染物質や揮発性有機化合物(VOC)から、残留有機汚染物質(農薬やダイオキシン様化合物を含む)まで様々な化学物質が分類されている。
【0007】
さらに、粒子状物質(ガス中の懸濁液中の液体の液滴および/または固体の複雑な混合物や、カドミウム、鉛、クロムおよび水銀のような重金属は、一般的な大気汚染物質である)は、典型的には空気中に懸濁した炭素粒子によって吸収され、皮膚に浸透して蓄積することができるため、生体蓄積による健康リスクの原因である(Environ. Pollut., 2008, 151, 362-367)。
【0008】
環境汚染物質が皮膚に損傷を与え得る全体的なメカニズムの説明がない場合、現在利用可能なデータに基づいて皮膚損傷の主要な原因として特定されているいくつかのメカニズムがある。主に重金属に関する該メカニズムは、以下を含む。
-フリーラジカルの生成(J. Toxicol. Cut & Ocular Toxicol., 1987, 6 (3), 183-191)
-炎症カスケードの誘発(重金属を含む粉末は、炎症性サイトカインの遺伝子発現を増加させることが明らかとなっている)(Toxicol. Lett., 1999, 105, 92-99)
-自然防御メカニズムの減少
【0009】
皮膚の外部組織は、大気汚染物質(特に重金属)に最も暴露される組織であり、フリーラジカルに対する細胞の防御を低減させる。そして、重金属は、自然防御メカニズムの有効性を低下させ、皮膚の老化を促進するため、他のガス状汚染物質の毒性を悪化させる。
【0010】
これらの事象は、特に、(皺および黒ずんだ斑点の形成の増加を伴う)外因性皮膚老化の加速(Biol. Chem., 2010, 391, 1235-1248、J. Investig. Dermatol., 2010, 130, 2719-2726)およびアトピー性皮膚炎の増加(Allergy, 1996, 51, 532-539)をもたらすことが実証されている。
【0011】
大気汚染物質が皮膚に有害な影響を及ぼすメカニズムを完全に理解するためには、さらなる詳細な研究が必要であるが、科学的な証拠が限られていることから、頭皮や毛髪への暴露を制限することの他に、大気汚染から頭皮や毛髪を保護するためのガイドラインはない(JEADV, 2015, 29, 2326-2332)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の要因を考慮すると、特に大気汚染物質から皮膚、頭皮、毛髪および外部粘膜を効果的に保護する化粧品組成物を見出す必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明は、オーク抽出物、ブドウ種子抽出物および緑茶抽出物を含み、大気汚染物質から皮膚、頭皮、毛髪および外部粘膜を保護するために有用な化粧品組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の説明
本発明は、オーク抽出物、ブドウ種子抽出物および緑茶抽出物を含み、大気汚染物質から皮膚、頭皮、毛髪および外部粘膜を保護するために有用な化粧品組成物の使用に関する。
【0015】
好ましい態様によれば、本発明に係る組成物は、外部粘膜、特に鼻および口腔の粘膜(唇など)を保護するために有用である。
【0016】
オーク抽出物(Q)は、総ポリフェノール含量が、好ましくは30%~60%w/wの範囲、より好ましくは45%w/w以上であることを特徴とする抽出物である。オーク抽出物(Q)は、好ましくは水性乾燥抽出物である。
【0017】
好ましい態様によれば、オーク抽出物は樹皮から得ることができる。
【0018】
オーク抽出物は、組成物中に0.01%~5%w/w、好ましくは0.05%~1%w/w、より好ましくは0.05%~0.25%w/wの範囲、さらにより好ましくは0.1%w/wの量で存在することができる。
【0019】
ブドウ種子(GS)抽出物は、好ましくは、総プロアントシアニジン含量(フォリン法により計算され、カテキン類として表される)が95%w/w以上、およびHPLC法によって評価されるモノマー含量(カテキンとして表されるエピカテキンとカテキンの合計に由来する)が5%~15%w/wの範囲であることを特徴とする抽出物であり、より好ましくは水性乾燥抽出物である。
【0020】
ブドウ種子抽出物は、組成物中に0.01%~5%w/w、好ましくは0.05%~1%w/w、より好ましくは0.05%~0.25%w/wの範囲、さらにより好ましくは0.1%w/wの量で存在することができる。
【0021】
緑茶(GT)抽出物は、好ましくは、ポリフェノール含量(フォリン法により計算され、カテキン類として表される)が40%w/w以上、およびHPLC法によって評価されるカテキン含量(エピカテキン-3-O-ガラートとして表される)が15%w/w以上であることを特徴とする抽出物であり、より好ましくは水性乾燥抽出物である。
【0022】
好ましい態様によれば、緑茶抽出物は、葉から得ることができる。
【0023】
緑茶抽出物は、組成物中に0.01%~5%w/w、好ましくは0.05%~1%w/w、より好ましくは0.05%~0.25%w/wの範囲、さらにより好ましくは0.1%w/wの量で存在することができる。
【0024】
すべての抽出物は、市販されているか、または当業者が既知の技術を用いて容易に調製することができる。
【0025】
組成物は、好ましくは、局所的に投与することができる。
【0026】
本発明に係る組成物を含む製剤は、例えば、米国ニューヨーク州のMack Publishing Co.の「Remington’s Pharmaceutical Handbook」に記載されているような従来の技術によって得ることができる。
【0027】
局所製剤の例は、エマルション、ゲル、ファンデーション、口紅および軟膏である。
【0028】
驚くべきことに、オーク抽出物、ブドウ種子抽出物および緑茶抽出物を含む組成物は、それらの抽出物を別々に使用した場合に得られるよりも、大気汚染物質に対する皮膚、頭皮、毛髪および外部粘膜の高い保護活性を示し、すなわち相乗的な活性を実証することが明らかとなった。これは、実施された実験的研究の結果によって裏付けられている。
【0029】
特に、本発明に係る組成物は、大気汚染物質としての重金属によって引き起こされる有害な影響を低減するために有用であることが判明した。
【0030】
以下の実施例は、本発明をさらに説明する。
【実施例
【0031】
[製剤実施例1]
【0032】
【表1】
【0033】
実施例1の化粧品組成物、および該組成物中に存在する量と等しい量の、使用された個々の抽出物について、保護効果を評価するために行った実験を以下に記載する。
【0034】
[実施例2]細胞生存率における有効性の評価
この試験に用いる実験モデルは、ヒト皮膚由来線維芽細胞(ATCC-CRL-2703)によって代表される。細胞を、10%ウシ胎仔血清を含む完全DMEM培地で培養し、37℃、5%CO2の培養器中で保持した。試験を行うために、細胞がコンフルエンスになるまで増殖させた。試験を実施するために、ヒト線維芽細胞培養物を、空気分散汚染条件下で通常存在する既知の汚染物質である重金属の混合物(Pb-Ef-Cr、各金属90μM)により24時間処理した。環境損傷と同時に、該細胞培養物を、予備細胞毒性試験で細胞毒性を示さなかったものの中から選択した3つの濃度の試験製品で処理した。
【0035】
該細胞培養物を48時間サンプルに暴露した。試験期間の終わりに、細胞生存率をMTT試験によって評価した。MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)試験は、細胞生存率の測定のための簡単で正確な標準比色法である。この試験は、ミトコンドリア酵素コハク酸デヒドロゲナーゼによる、黄色のテトラゾリウム塩の、青/紫ホルマザン結晶への細胞内還元に基づく。したがって、この反応は、代謝的に活性な細胞でのみ起こり、分光光度計から得られる光学濃度値は、存在する生存細胞の量と相関させることができる。各処理の終わりに、全てのウェルをPBSで洗浄し、0.5mg/mLのMTT溶液で染色し、36.5℃/5%CO2雰囲気下で3時間培養した。次いで、ウェルをイソプロパノールで処理し、室温で2時間培養した。培養後、吸光度の読み取り値を、マイクロプレートリーダー(ブランクとしてイソプロパノール溶液を使用)中、570nmで採取した。各実験条件において、処理された培養物の平均光学密度と、陰性対照の平均光学密度との比が細胞生存率を決定する。
【0036】
陰性対照培養物(未処理、CTR-)および陽性対照培養物(重金属のみで処理した、CTR+)の結果を比較した。処理は3回実施した。
【0037】
以下の表(表1)は、タンパク質含量および陽性対照と比較した保護%として表した結果を示す。統計的に有意なt検定値は、p<0.05については(*)、p<0.95については(**)によって示される。
【0038】
【表2】
【0039】
[実施例3]細胞代謝(タンパク質含量)における有効性の評価
この試験に用いる実験モデルは、ヒト皮膚由来線維芽細胞(ATCC-CRL-2703)によって代表される。細胞を、10%ウシ胎仔血清を含む完全DMEM培地で培養し、37℃、5%CO2の培養器中で保持した。試験を行うために、細胞がコンフルエンスになるまで増殖させた。試験を実施するために、ヒト線維芽細胞培養物を、空気分散汚染条件下で通常存在する既知の汚染物質である重金属の混合物(Pb-Ef-Cr、各金属90μM)により24時間処理した。環境損傷と同時に、該細胞培養物を、予備細胞毒性試験で細胞毒性を示さなかったものの中から選択した3つの濃度の試験製品で処理した。
【0040】
該細胞培養物を48時間サンプルに暴露した。試験期間の終わりに、細胞代謝を、培養培地中のタンパク質含量を分析することによって評価した。
【0041】
前記評価は、細胞培養培地上のローリー比色分析法によって行った。ローリー試験は、ビウレット法と同じ原理、すなわち、アルカリ媒体中でタンパク質とCu+イオンとの錯体を形成し、チロシンおよびトリプトファン残基の酸化プロセスを触媒する反応を用いる。前記酸化は、特徴的な黄色から青色に変わるフォリンチオカルトー試薬の還元を生じさせる。青色が濃いほど、生物学的マトリックス中に存在するタンパク質が多くなる。定量的測定は、既知の標準アルブミン濃度の増加により構築された検量線を使用する。
【0042】
以下の表は、タンパク質含量および陽性対照と比較した保護%として表した結果を示す。統計的に有意なt検定値は、p<0.05については(*)、p<0.95については(**)によって示される。
【0043】
【表3】
【0044】
上記の実施例により明らかに示されるように、本発明に係る組成物を投与することによって得られる効果は、オーク、ブドウ種子および場合により緑茶抽出物を別々に投与することによって得られる個々の効果の合計よりも大きい。換言すれば、個々の活性成分間の相互作用は、明らかな相乗効果をもたらす。