IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許-単一光子検出器信号を評価する方法 図1
  • 特許-単一光子検出器信号を評価する方法 図2a
  • 特許-単一光子検出器信号を評価する方法 図2b
  • 特許-単一光子検出器信号を評価する方法 図3
  • 特許-単一光子検出器信号を評価する方法 図4a
  • 特許-単一光子検出器信号を評価する方法 図4b
  • 特許-単一光子検出器信号を評価する方法 図5
  • 特許-単一光子検出器信号を評価する方法 図6
  • 特許-単一光子検出器信号を評価する方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】単一光子検出器信号を評価する方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/42 20060101AFI20220203BHJP
   G01J 1/44 20060101ALI20220203BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G01J1/42 H
G01J1/44 F
G02B21/00
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019177223
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2020056787
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2019-09-27
(31)【優先権主張番号】10 2018 124 123.2
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100165940
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 令子
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー ビアク
(72)【発明者】
【氏名】ベアント ヴィヅゴフスキ
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0187721(US,A1)
【文献】特開2011-033760(JP,A)
【文献】国際公開第2017/042993(WO,A1)
【文献】特開2013-033044(JP,A)
【文献】特表2013-510305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0210235(US,A1)
【文献】LIANG, Y. 外1名,“Chapter 9: High-Speed Single-Photon Detection with Avalanche Photodiodes in the Near Infrared”,OPTOELECTRONICS - MATERIALS AND DEVICES [online],2015年10月07日,Pages 213-234,DOI:10.5772/60481
【文献】CHEN, X. 外3名,“Low-noise high-speed InGaAs/InP-based single-photon detector”,OPTICS EXPRESS [online],2010年03月22日,Volume 18,Number 7,Pages 7010-7018,DOI:10.1364/OE.18.007010
【文献】“Is a high-passed signal the same as a signal minus a low-passed signal?”,SIGNAL PROCERSSING STACK EXCHANGE [online],2015年03月07日,https://dsp.stackexchange.com/questions/21903/is-a-high-passed-signal-the-same-as-a-signal-minus-a-low-passed-signal
【文献】徐雪 外1名,“ローパスフィルタによるAPD単一光子検出器のアフターパルス低減”,第61回応用物理学会春季学術講演会 講演予稿集,2014年03月03日,Page 05-030
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00 - G01J 1/60
G02B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一光子検出器信号を評価する方法であって、
前記単一光子検出器信号は、第1の信号および第2の信号に複製され、
前記第1の信号は処理され、前記第2の信号は第1の信号とは異なって処理され、
その後、処理された前記第2の信号と、処理された前記第1の信号と、の間の差分信号が形成され、
パルス事象を求めるために前記差分信号が評価され、
前記第1の信号の処理は、ローパスフィルタリングを含み、
前記第2の信号の処理は、前記第1の信号とは異なるカットオフ周波数によるローパスフィルタリングを含み、
前記第1の信号および/または前記第2の信号の処理は、実行時間の差を補償するための遅延および/または差分成分を付加するための遅延を含む、
方法。
【請求項2】
単一光子検出器信号を評価する方法であって、
前記単一光子検出器信号は、第1の信号および第2の信号に複製され、
前記第1の信号は処理され、前記第2の信号は第1の信号とは異なって処理され、
その後、処理された前記第2の信号と、処理された前記第1の信号と、の間の差分信号が形成され、
パルス事象を求めるために前記差分信号が評価され、
前記第1の信号の処理は、ローパスフィルタリングを含み、
前記第2の信号の処理は、前記第1の信号とは異なるカットオフ周波数によるローパスフィルタリングを含み、
前記第1の信号および/または前記第2の信号の処理は、符号依存および/または勾配依存の処理を含む、
方法。
【請求項3】
単一光子検出器信号を評価する方法であって、
前記単一光子検出器信号は、第1の信号および第2の信号に複製され、
前記第1の信号は処理され、前記第2の信号は第1の信号とは異なって処理され、
その後、処理された前記第2の信号と、処理された前記第1の信号と、の間の差分信号が形成され、
パルス事象を求めるために前記差分信号が評価され、
前記第1の信号の処理は、ローパスフィルタリングを含み、
前記第2の信号の処理は、前記第1の信号とは異なるカットオフ周波数によるローパスフィルタリングを含み、
前記第1の信号および/または前記第2の信号の処理は、個々の増幅を含む、
方法。
【請求項4】
単一光子検出器信号を評価する方法であって、
前記単一光子検出器信号は、第1の信号および第2の信号に複製され、
前記第1の信号は処理され、前記第2の信号は第1の信号とは異なって処理され、
その後、処理された前記第2の信号と、処理された前記第1の信号と、の間の差分信号が形成され、
パルス事象を求めるために前記差分信号が評価され、
前記第1の信号の処理は、ローパスフィルタリングを含み、
前記第2の信号の処理は、前記第1の信号とは異なるカットオフ周波数によるローパスフィルタリングを含み、
前記評価は、前記差分信号を積分することを含み、積分値からパルス事象の数が求められる、
方法。
【請求項5】
前記第1の信号の処理は、20MHz~100MHzまたは50MHz~80MHzのカットオフ周波数によるローパスフィルタリングを含む、
請求項1から4までのいずれか1項記記載の方法。
【請求項6】
前記単一光子検出器信号は、前記第1の信号および前記第2の信号の形成前に増幅される、
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記単一光子検出器信号は、前記第1の信号および前記第2の信号の形成前にハイパスフィルタリングされない、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記評価は、前記差分信号を閾値と比較することを含み、各閾値の上回りに対して1つのパルス事象が求められる、
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記単一光子検出器信号、前記第1の信号および前記第2の信号、または前記差分信号は、少なくとも2GHzのサンプリングレートでデジタル化され、さらなる方法ステップが計算によって実施される、
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
計算ユニット(509,510)であって、請求項9記載の方法を実施するように構成されている、
計算ユニット(509,510)。
【請求項11】
単一光子検出器信号を評価する装置であって、
前記装置は、検出器(1)と、増幅器(2)と、第1の処理ユニット(3)と、第2の処理ユニット(4)と、差分形成器(5)と、プロセッシングユニット(6)と、を備え、
前記装置は、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成されている、
装置。
【請求項12】
顕微鏡システム、共焦点顕微鏡システム(500)または走査共焦点顕微鏡システムであって、少なくとも1つの光電子増倍管(511)と、請求項10記載の計算ユニット(509,510)と、を備えている、
顕微鏡システム、共焦点顕微鏡システム(500)または走査共焦点顕微鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一光子検出器信号を評価する方法、ならびに該方法を実施する装置、計算ユニット、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、共焦点顕微鏡では、サンプルから発せられる蛍光を可及的に良好な信号/雑音比で、定量的にできるだけ正確に検出するために、可及的に高感度の光検出器が使用される。この目的のために、様々なタイプの光電子増倍管が適している。特に、この目的のために、シリコン光電子増倍管(SiPM)のような半導体光電子増倍管(HlPM)を使用することも望ましい。なぜなら、これらは比較的僅かなコストのもとで、感度、時間分解能、および堅牢性において利点を提供するからである。
【0003】
HlPMの場合、検出された各光子からアナログパルスが生じ、この場合、典型的な信号経過(経時的強度)は、図1に示されている。パルス形状は、ns~サブnsの範囲の急速な立ち上り、ならびに典型的な20~100nsの範囲の立ち下りに分割される。信号レベルは、実質的に、アバランシェ降伏以上のバイアス電圧および単一セルの容量、ならびにもちろん後続の電子機器のゲイン係数によって与えられる。急速な立ち上りは、バイアスされたダイオードの容量が降伏電圧以下まで放電される降伏の結果であり、より遅い立ち下りは、いわゆる「クエンチング」抵抗との組み合わせのRC時定数から生じる。信号曲線の下方の面は、いわば降伏の際に放出された電荷に対応する。共焦点顕微鏡に好適な寸法を有するSiPM(例えば1.3mm×1.3mmの並列に接続された200~1500個の単一セル)は、より大きな均一性で、光子が衝突した各セルに対して等しい大きさの信号もしくは等しい数の電荷を供給する。
【0004】
基本的に、光電子増倍管の場合、データ記録は、カウントモードまたは積分モード(デジタルモードもしくはアナログモードとも称される)で行うことができる。
【0005】
入射光子の数に比例する信号を得るための1つの可能なアプローチは、アナログ信号を閾値と比較し、各上回りの際にカウンタを増分することにより事象をカウントすることにある。いずれにせよ、測定されたカウントレートは、パルスが重なるとすぐに実際の事象の数よりも小さくなる。本明細書の光子統計の知識ならびに検出信号の既知のパルス形状のもとでは、エラーを逆推論することができ、場合によっては修正することができる。パルス励起のケースでは、補正を成功させるために蛍光寿命の知識も必要となる。すなわち、補正は、サンプル依存で行われ、このことはコストの増加に結びついている。
【0006】
パルスのカウントの際のエラーを可及的に少なく抑えるさらなる手段は、パルスを可及的に短い形状にもたらすことにある。このことは、出力信号のハイパスフィルタリングによって、または例えば米国特許出願公開第2013/0099100号明細書(US2013/0099100A1)に示されているように、ダイオードとクエンチング抵抗との間の容量性タップによって実行することができる。ただし、それに伴い信号レベルは低下する。
【0007】
光子の衝突を識別し、単一光子検出器の信号を、特に検出した光子が時間的に密集したシーケンスの場合に高い時間分解能で検出するために、ハイパスフィルタリングされた信号を増幅し、その後、閾値と比較することができる。閾値を上回るとすぐにデジタル信号が生成され、このデジタル信号は、高い時間分解能でさらに処理することができる。ハイパスフィルタリングされた信号を切り離すために、例えばRC受動素子、つまり抵抗とコンデンサとが後続の増幅器と共に使用可能である。
【0008】
この場合、ハイパスフィルタリングされた信号には、通常、静止位置の上下で常に電圧成分があるため、静止位置の上下の面は、ほぼ等しい大きさである。その結果、複数の密集した順次連続するパルスの場合、パルスのレベルは、それらが先行のパルスとどのように重なるかに依存する。これにより、パルスが失われたり、あるいは間違った時点でもしくはリンギングのケースでは過剰にカウントされたりする可能性もある。図2aは、複数の順次連続したパルスを有するハイパスフィルタリングされた信号の可能な曲線経過を、図1よりも長い時間スケールで示している。閾値には、符号100が付されている。例えば、密集して順次連続する3つのパルスの場合、パルスレベルは、場合によっては閾値100以下に低下し、それによって、この例では3番目のパルスはカウントされない。
【0009】
この現象の1つの理由は、とりわけ実際のフィルタの非理想的な特性にある。例えば、数MHzの周波数範囲の実際のフィルタの場合、寄生インダクタンスおよび寄生容量も役割を果たすため、大抵は、一次の単純なハイパスフィルタだけが発生するわけではない。図2bに示されるように、実際のハイパスフィルタリングされた信号201は、例えば、二次のフィルタに対応する。理想的な経過200とは異なり、上方への短いパルスに、大幅なアンダーシュートが続く。第2のパルスの最大値が第1のパルスの最小値に合致するように第2のパルスが重なるならば、それに応じて第2のパルスのレベルは改ざんされる。
【0010】
これについて事態をさらに悪化させるのは、ここでは好適なHlPMの信号が大抵は1~2mVの大きさでしかなく、それゆえ実際には例えば100倍に増幅されてしまうことである。しかもその際にはそれに応じてあらゆるオフセットも増幅される。確かにここでは複数の増幅段を用いて信号を増幅することは可能であるが、その場合各段はそれぞれ、オフセットを小さく抑えるために、先行する段のハイパスフィルタリングされた信号だけを増幅する。しかしながらこれにより、アンダーシュートを伴う実際の特性が優先されてしまう。
【0011】
それゆえ、従来技術の欠点を低減または克服し、単一光子検出器の信号を、より良好な時間分解能とより高い精度とで検出することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、独立特許請求項の特徴を有する単一光子検出器信号を評価する方法、該方法を実施する装置、計算ユニット、コンピュータプログラム、および記憶媒体が提案される。好適な実施形態は、従属請求項ならびに以下の説明の対象である。
【0013】
本発明による、単一光子検出器信号を評価する方法は、単一光子検出器信号が(望ましいケースでは前処理の、特に増幅の後で、ただしハイパスフィルタリングなしで)第1の信号および第2の信号に複製され、ここで、第1の信号は処理され、第2の信号は処理されないかまたは第1の信号とは異なって処理され、その後、処理されたまたは未処理の第2の信号と、処理された第1の信号との間の差分信号が形成され、ここで、パルス事象を求めるために差分信号が評価されることで優れている。例えば、これらのパルスは、カウントすること、かつ/またはパルスのための時点を求めることができる。
【0014】
したがって、本発明は、従来のハイパスフィルタリングを、異なって処理された信号の差分形成と置き換えるという考察に基づいている。
【0015】
特に本発明は、実際のフィルタを用いたハイパスフィルタリングの変形形態とは対照的に、パルスシーケンスに依存するパルスレベルのシフトが全くもしくはほとんど起きないという利点を提供する。さらなる1つの利点は、既存のオフセットが、2つのパスにおける複製と、その後の差分形成とによって、増幅器チェーンの終端において初めて相互に相殺されることである。
【0016】
差分信号の評価は、基本的に、既知の方法、例えば閾値比較を含むことができ、この場合は、差分信号が閾値と比較され、この場合、各閾値の上回りに対して1つのパルス事象が求められる。単一光子事象を、閾値との比較によってカウントする代わりに、差分信号を時間間隔にわたって積分し、光子数に比例する積分値を得るようにすることも可能である。これはとりわけ、個々の事象が非常に密集してまたは同時に発生する場合に有利である。このケースではカウントした場合に、事象は失われるが、それに対して積分の場合、事象ごとにほぼ等しい面が差分信号の曲線の下で生じる。つまり、積分は、高い光強度の場合に、当該光強度に比例している値を供給する。それに対して、閾値比較は、より良好な時間分解能を供給する。
【0017】
好適な実施形態では、第1の信号の処理は、好適には20MHz~100MHz、特に好適には50MHz~80MHzのカットオフ周波数によるローパスフィルタリングを含む。ローパスフィルタリングされた第1の信号と、未処理の第2の信号との間の差分形成によって、高周波成分が生成される。ただし、この高周波成分は、実際のフィルタを用いたハイパスフィルタリングされた変形形態とは対照的に、パルスシーケンスに依存したパルスレベルのシフトは持たない。前述のように、単一光子検出器信号は、確かに複製の前に増幅可能であるが、しかしながらハイパスフィルタリングされないため、直流電圧成分(オフセット)を伴って増幅される。したがって、差分形成によって生じた信号を閾値と比較すれば、それによって、すべてのパルス事象を正確に求めることができる。前提条件は、2つのパルスの間で閾値を下回ることだけである。
【0018】
この変形形態の好適な発展形態において、好適には、第2の信号の処理は、第1の信号とは異なるカットオフ周波数によるローパスフィルタリングを含む。一方の信号のローパスフィルタリングのカットオフ周波数は、他方の信号のローパスフィルタリングのカットオフ周波数よりも高いので、増幅された信号の高周波成分のさらに一部が伝送され、差分形成後に残り続ける。この意味では、異なるローパスフィルタリングと差分形成とがバンドパスのように作用する。
【0019】
第1の信号および/または第2の信号が異なる処理の枠内でハイパスフィルタリングおよび/またはバンドパスフィルタリングされることも考えられる。
【0020】
合目的的には、第1の信号および/または第2の信号の処理は、遅延を含み、好適には、実行時間の差を補償するための遅延および/または差分成分を付加するための遅延を含む。特に第2の信号が処理されないケースでは、第1の信号の処理に基づいて実行時間の差が発生し、この実行時間の差は、差分形成前の急速な信号の所期の遅延によって補償される。このようにして、処理された第1の信号と、処理されたまたは未処理の第2の信号との同じ時点を相互に関連付けることができる。
【0021】
さらなる好適な実施形態では、第1の信号および/または第2の信号の処理は、符号依存および/または勾配依存の処理を含む。符号依存の処理の枠内では、特に各信号値および/または各差分値は、符号に依存して処理され得る。1つの可能な符号依存の処理は、負の信号値をフィルタリング除去するかゼロにセットすることにある。勾配依存の処理に対しては、特に各信号値および/または各差分値に対して局所的な勾配を決定することができ、この決定に依存して処理を選択することができる。勾配依存の処理は、最小勾配もしくは最大勾配を有する信号区間のみを通過させることにあってもよい。このようにして、特に単一光子信号の高周波成分をフィルタリング除去することができる。
【0022】
第1の信号および/または第2の信号の処理は、個々の増幅を含むことも考えられる。その際には様々なスケーリングが考えられる。
【0023】
さらに好適な実施形態では、チェーン内の1つ以上の信号、すなわち、検出器信号、第1の信号、第2の信号(それぞれ処理の前または後)、差分信号が、十分に大きなサンプリングレートでデジタル化され(すなわち、約1~2nsの急速な成分を有する1つのパルスをまだ検出できるようにするために)、さらなる方法ステップが計算により実施される。このことは、少なくとも2GHzのサンプリングレートの場合のケースである。このことは有利である。なぜなら、このようにして正確なデジタル計算が可能になるからである。
【0024】
本発明のさらなる利点および実施形態は、説明および添付図面から明らかになるであろう。
【0025】
上述した特徴および以下でさらに説明すべき特徴は、本発明の権利範囲から逸脱することなく、それぞれの与えられた組み合わせにおいてだけでなく、その他の組み合わせにおいても、あるいは単独でも使用可能であることを理解されたい。
【0026】
本発明は、実施例に基づき図面に概略的に示されており、以下ではこれらの図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】単一光子検出器信号の曲線形態を示した図
図2a】ハイパスフィルタリングされた検出器信号の可能な曲線経過を示した図
図2b】理想的なハイパスフィルタリングされた信号と実際のハイパスフィルタリングされた信号との間の比較を示した図
図3】本発明による方法の実施形態の機能性重視の描写図
図4a】本発明の一実施形態による処理された第1の信号の経過と未処理の第2の信号の経過とを示した図
図4b図4aに示した2つの信号の差分の経過を示した図
図5】単一光子検出器信号の直接測定と、本発明による方法の一実施形態による処理後の記録とを伴うオシロスコープ記録を示した図
図6】本発明による方法のさらなる実施形態の機能重視の描写図
図7】共焦点顕微鏡の典型的な素子に関する概要の概略図
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、単一光子検出器信号の曲線形態を示している。検出された各光子では、高速成分(約1~2ns)を有するパルスが生じ、それにやや遅い成分(約30~60ns)が追従している。パルス形状は、ns~サブnsの範囲の急速な立ち上り、ならびに典型的な30~60nsの範囲の立ち下りに分割される。信号レベルは、実質的に、アバランシェ降伏以上のバイアス電圧および単一セルの容量、ならびにもちろん後続の電子機器のゲイン係数によって与えられる。急速な立ち上りは、バイアスされたダイオードの容量が降伏電圧以下まで放電される降伏の結果であり、より遅い立ち下りは、いわゆる「クエンチング」抵抗との組み合わせのRC時定数から生じる。
【0029】
図2aは、ハイパスフィルタリングされた単一光子検出器信号の可能な曲線経過を示している。光子の衝突を識別するために、従来技術では、ハイパスフィルタリングされた単一光子検出器信号が増幅され、その後、閾値と比較される。閾値を上回るとすぐにデジタル信号が生成され、このデジタル信号は高い時間分解能でさらに処理することができる。高周波成分を切り離すために、通常は既に上述したようにコンデンサが使用される。この場合、ハイパスフィルタリングされた信号には、静止位置の上下で常に電圧成分があるため、静止位置の上下の面はほぼ等しくなる。その結果、複数の密集した順次連続するパルスの場合、パルスのレベルは、それらが先行のパルスとどのように重なるかに依存する。
【0030】
これにより、パルスが失われたり、あるいは間違った時点でもしくはリンギングのケースでは過剰にカウントされたりする可能性もある。
【0031】
図3は、本発明による方法の一実施形態を実施する装置を示す。ここでは、検出器1において単一光子検出器信号が生成される。この信号は、本明細書の例では、最初に増幅器2に転送される。そこでこの信号は増幅され、2つの信号に複製される。第1の信号は第1の処理ユニット3に転送され、第2の信号は第2の処理ユニット4に転送される。
【0032】
第1の処理ユニット3では、第1の信号が処理され、好適にはローパスフィルタリングされる。第2の処理ユニット4では、第2の信号が未処理で転送されるか、または第1の処理ユニット3の第1の信号とは異なって処理される。好適には、第2の処理ユニット4の第2の信号は、第1の信号と第2の信号との間の実行時間の差を補償するために実行時間遅延がなされる。
【0033】
次いで、処理された第1の信号と処理された第2の信号とが、差分形成器5に転送され、該差分形成器5において、処理された第1の信号と、未処理のまたは処理された第2の信号と、の間の差分信号が形成され、プロセッシングユニット6に転送される。
【0034】
プロセッシングユニット6において、差分信号は例えばデジタル化され、次いで評価され得る。特にこの差分信号は、閾値と比較され、この比較から、各閾値の上回りに対して1つのパルス事象、例えば1つのパルスのための時点が求められる。
【0035】
図4aは、本発明の一実施形態による処理された第1の信号の経過と、未処理の第2の信号の経過と、を示す。未処理の信号は、増幅された単一光子検出器信号に対応する。
【0036】
処理された信号は、50MHzのカットオフ周波数を用いた処理ステップとしてローパスフィルタリングされたものである。ローパスフィルタリングされた信号では、急速なパルス立ち上りの高周波成分がフィルタリング除去されたものとみなされ、もはやローパスフィルタリングされた信号内に現れないものとみなされ得る。
【0037】
図4bは、図4aに示した2つの信号の差分形成の結果を示す。この結果は、パルスの急速な立ち上りの際の高周波成分に対応する強いパルスである。その他に、より小さな振動が見られるが、これはいずれにせよあまり重要ではない。
【0038】
図5は、オシロスコープの記録を示し、この場合、上方の曲線は、個々のパルスが密集して順次連続する光量での直接測定を示す。下方の曲線に到達するために、最初にオシロスコープでの計算を用いて80MHzのカットオフ周波数によるローパスフィルタリングが実施され、次いで、そこから上方の曲線が減算された。次いで、残っているパルスは、履歴に依存することなくほぼ同じ高さである。
【0039】
図6は、本発明による方法の一実施形態を実施する代替的な装置を示す。ここでは、検出器1において単一光子検出器信号が生成される。この信号は増幅器2に転送される。そこでこの信号は増幅され、デジタル化ユニット7に転送される。そこでは増幅された信号が、少なくとも2GHzのサンプリングレートでデジタル化される。さらなるステップは、ここでは計算によって行うことができる。それゆえ、以下で説明するユニットは、特にソフトウェアの形態で存在し得ることを理解されたい。
【0040】
特に、デジタル化された信号は2つの信号に複製され、この場合、第1の信号は第1の処理ユニット3に転送され、第2の信号は第2の処理ユニット4に転送される。第1の処理ユニット3では、第1の信号が処理され、好ましくはローパスフィルタリングされ、第2の処理ユニット4では、第2の信号が未処理で転送されるか、または第1の処理ユニット3の第1の信号とは異なって処理される。好適には、第2の処理ユニット4の第2の信号は、第1の信号と第2の信号との間の実行時間の差を補償するために実行時間遅延がなされる。
【0041】
次いで、処理された第1の信号と、処理されたまたは未処理の第2の信号と、が差分形成器5に転送され、該差分形成器5において、処理された第1の信号と未処理または処理された第2の信号との間の差分信号が形成されてプロセッシングユニットに転送される。このプロセッシングユニットでは、差分信号が評価され、この場合、特に差分の経過が閾値と比較され、この場合、各閾値の上回りに対して1つのパルスのための時点が求められる。
【0042】
図7は、典型的なコンポーネントを備えた共焦点顕微鏡を概略的に示している。符号500はシステム全体を示す。共焦点走査および検出ユニットは符号505で示されている。それに属する照明装置は符号506で示されている。符号508はレーザー光源であり、このレーザー光源508は、照明ファイバ507を介して照明装置506に接続されている。符号504は、顕微鏡スタンド501における共焦点走査および検出ユニット505用の光学アダプタを示す。この顕微鏡スタンド501の一部は、検査すべきサンプル503を有するサンプルステージ502である。制御ユニット509として構成された本発明による装置の計算ユニットは、対応する接続線路を介して個々のコンポーネント508,506,505,および501に接続されている。制御プログラムとプレゼンテーションプログラムとを備えた計算機は、符号510で示されている。この計算機510も制御ユニット509と接続されている。
【0043】
検査すべきサンプル503は、顕微鏡光学系を介して照明され、ならびに同じ顕微鏡光学系を介して、特に本発明による装置のセンサ装置511上に結像される。このセンサ装置511は、共焦点走査および検出ユニット505の実施形態に応じて、光電子増倍管または光電子増倍管アレイからなる。
【0044】
共焦点走査および検出ユニット505の内部に、第1の変形形態では、古典的な共焦点ビームパスが配置されており、この共焦点ビームパスは、公知の手法で単一のピンホールおよびビームスキャナ、例えばミラースキャナを用いて構築されている。
【0045】
第2の変形形態では、共焦点走査および検出ユニット505の内部に、一方向に延びる1つ以上の照明点と同時にサンプルが照明されるビームパスが存在している。それに応じて、検出すべき光子は、例えばピンホール(Pinholes)の幾何学的配置で選択される。したがって、センサ装置511は、光電子増倍管アレイからなる。
【0046】
センサアレイを備えた顕微鏡を含むシステム全体の第2の変形形態では、複数の単一光電子増倍管、特にSiPMは、直線状または2次元の光電子増倍管マトリックスとして配置されており、それらは本発明の好適な一実施形態に従って評価される。
【0047】
システム全体の第1の変形形態は、共焦点走査および検出ユニット505の内部に(上述したような)古典的な共焦点ビームパスを有する。このケースでは、結像されたビームは、1つの単一光電子増倍管、特にSiPMに結像され、これは本発明の好ましい実施形態に従って評価される。
【0048】
図7に示されているシステム500の機能方式は、それ自体十分に公知であり、それゆえ本明細書では説明されない。
【符号の説明】
【0049】
1 検出器
2 増幅器
3 第1の処理ユニット
4 第2の処理ユニット
5 差分形成器
6 プロセッシングユニット
7 デジタル化ユニット
100 閾値
500 共焦点顕微鏡
501 顕微鏡スタンド
502 サンプルステージ
503 サンプル
504 光学アダプタ
505 走査および検出ユニット
506 照明装置
507 照明ファイバ
508 レーザー光源
509 制御ユニット
510 計算機
511 センサ装置
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7