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特許7004709磁気共鳴イメージング(MRI)システムで使用するためのバラン及びバランを使用したMRIシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング(MRI)システムで使用するためのバラン及びバランを使用したMRIシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220114BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20220114BHJP
   G01R 33/36 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
A61B5/055 355
G01N24/00 580Y
G01R33/36
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019521025
(86)(22)【出願日】2017-10-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2017076548
(87)【国際公開番号】W WO2018077679
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-14
(31)【優先権主張番号】62/411,822
(32)【優先日】2016-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ウィン トレーシー
(72)【発明者】
【氏名】ガンティ アースリス
(72)【発明者】
【氏名】フライマン オリ タピオ
(72)【発明者】
【氏名】スペンサー クリストファー
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/090129(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0181716(US,A1)
【文献】居村岳広,非接触電力伝送における電磁誘導と電磁界結合の統一的解釈,電気学会研究会試料.VT,2009年,p.35-40
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00
G01R 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電材料で製作され、少なくとも部分的に中空であるデバイスであって、外面を有するデバイスと
MRIシステムの同軸ケーブルであって、前記同軸ケーブルが第1の端部及び第2の端部を有し、前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記同軸ケーブルの一部分が、第1のインダクタを形成するために前記外面のまわりにL回巻かれ、ここで、Lが1以上の正の整数である、同軸ケーブルと、
互いに電気的に結合される少なくとも第2のインダクタ及び少なくとも第1のキャパシタを有し、前記デバイスの内部に配置される共振回路であって、前記第1のインダクタが、対象の周波数のコモンモードノイズを前記共振回路に磁気的に結合させ、前記共振回路及び前記第1のインダクタが、前記同軸ケーブルに結合インピーダンスを与え、前記対象の周波数において、前記結合インピーダンスが、前記同軸ケーブルを伝搬するコモンモード信号を抑制する高い値を有する、共振回路と
を含む、バラン。
【請求項2】
前記同軸ケーブルが、RF受信コイルからのアナログMR信号をRF受信機に搬送するために前記MRIシステムで使用される、請求項1に記載のバラン。
【請求項3】
前記同軸ケーブルが、1mm以下の直径を有する、請求項に記載のバラン。
【請求項4】
誘電材料で製作されたデバイスであって、外面を有するデバイスと、
MRIシステムの同軸ケーブルであって、前記同軸ケーブルが第1の端部及び第2の端部を有し、前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記同軸ケーブルの一部分が、第1のインダクタ層を形成するために前記外面のまわりに多数回巻かれ、且つ、前記第1のインダクタ層の上に第2のインダクタ層を形成するために前記第1のインダクタ層のまわりに多数回巻かれ、前記第1のインダクタ層及び前記第2のインダクタ層が第1のインダクタを構成し、寄生キャパシタンスが、巻線間に存在し、前記寄生キャパシタンスと前記第1のインダクタの第1のインダクタンスとが、対象の周波数において並列インピーダンスを有する共振回路を設け、前記並列インピーダンスが、前記同軸ケーブル内を伝搬するコモンモード信号を抑制する、同軸ケーブルと
を含む、バラン。
【請求項5】
前記デバイスが、少なくとも部分的に中空であり、前記バランが、前記デバイスの内部に少なくとも部分的に収容される、反磁性スラグをさらに含む、請求項に記載のバラン。
【請求項6】
前記同軸ケーブルが、RF受信コイルからのアナログMR信号をRF受信機に搬送するために前記MRIシステムで使用される、請求項に記載のバラン。
【請求項7】
前記同軸ケーブルが、1mm以下の直径を有する、請求項に記載のバラン。
【請求項8】
N個のRF受信コイルであって、各RF受信コイルが、対象の周波数を有するRF信号を検出し、MR信号を出力し、ここで、Nが1以上の正の整数である、N個のRF受信コイルと、
N個の増幅器であって、各増幅器が、増幅されたMR信号を生成するためにRF受信コイルによって出力されたMR信号を増幅する、N個の増幅器と、
少なくとも1つのRF受信機と、
前記増幅器の出力部を前記RF受信機の入力部に相互接続する複数の同軸ケーブルであって、増幅された前記MR信号が、前記増幅器の前記出力部から前記RF受信機の前記入力部に前記同軸ケーブルで搬送され、各同軸ケーブルが、請求項1に記載のバランを有する、複数の同軸ケーブルと
を含む、MRIシステム。
【請求項9】
前記共振回路が、前記デバイスの外部に、前記第1のインダクタに隣接して配置される、請求項に記載のMRIシステム。
【請求項10】
前記デバイスの内部に少なくとも部分的に収容される、反磁性スラグをさらに含む、請求項に記載のMRIシステム。
【請求項11】
前記同軸ケーブルが、1mm以下の直径を有する、請求項に記載のMRIシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] MRIは、今までにない組織コントラストで、人体に見出されるものなどの対象物の断面観察を可能にするイメージング技術である。MRIは、核磁気共鳴(NMR)の原理、すなわち、ゼロでないスピンをもつ原子核が磁気モーメントを有するということに基づく。医用イメージングでは、それは、通常、高い濃度で人体に存在する水素原子の原子核である。無線周波数(RF)波が、強い外部磁界中で原子核に導かれ、それにより、陽子の励起及び陽子の緩和がもたらされる。陽子の緩和によって、陽子がRF信号を放射することになり、RF信号は、検出及び処理されて画像を形成する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 典型的なMRIシステムは、一般に、例えば、静磁場を生成する超伝導電磁石などの磁石と、静磁場に線形変動を生成する傾斜磁場コイルと、水素原子の原子核を励起するRF波を生成する無線周波数(RF)送信コイルと、原子核の緩和する陽子によって放射されるRF電磁放射を検出するRF受信コイルとを含む。一般に、多数の送信コイル及び多数のRF受信コイルが、現況技術のMRIシステムで使用されている。同軸ケーブルが、MRIシステムにおいて、コイル内のRF信号の制御された送信のために使用される。同軸ケーブルは外部シールドと内部導体とを有し、それらは誘電材料によって互いに分離される。外部シールドは接地され、内部導体は電流を搬送するために使用される。外部シールドは、内部導体が望ましくない周波数を拾い上げないようにする。このため、同軸ケーブルは、MRIシステムにおいて、RFコイルを相互接続するために、RF送信機をRF送信コイルに相互接続するために、及びRF受信機をRF受信コイルに相互接続するために広く使用されている。
【0003】
[0003] しかしながら、ケーブルの外部にある電源は、意図しない電流を外部シールドに誘導することがある。一般にコモンモードノイズと呼ばれる外部シールド内のこれらの意図しない電流の流れは、意図しない磁場を発生することがある。このようにして、コモンモードノイズは、外部シールドによって与えられるシールド効果を低減し、それによって、ケーブルが他のタイプのノイズの影響を受けやすくなり、それが、MRIシステムの性能を低下させることがある。これらの理由のため、平衡/不平衡回路(バラン)が、一般に、コモンモードノイズを抑制するためにMRIシステムにおいて同軸ケーブルとともに使用される。様々なバラン設計が、この目的のために使用される。
【発明の概要】
【0004】
[0004] 現況技術のMRIシステムでは、画像取得の速度を上げるために、使用されるRF受信コイルの数を増す努力が続けられている。そのようなシステムでは、概して8個から64個のRF受信コイルを有することは珍しくない。これらのRF受信コイルの各々は、一般に、同軸ケーブルによってRF受信機に接続され、RF受信機は、受信したRF信号をサンプリングしデジタル化する。これらのRFチャネル数の増加のため、MRIシステム設計者は、RF受信コイルで使用される構成要素及びサブアセンブリのサイズを低減するように絶え間なく迫られている。現況技術のMRIシステムとして現在使用されている同軸ケーブルの物理的寸法は、バランサイズに下限を設定しており、それは、より新しくより高密度のRFコイルアレイには大きすぎる結果をもたらす。極細同軸ケーブル(1ミリメートル未満の直径)が、何年にもわたって存在しており、医療産業、特に超音波イメージングシステムでの広範な使用が見られる。極細同軸ケーブルが使用される医療分野では、バランは、フェライトビーズなどの非常に小さい強磁性要素を使用することにより非常に小さくされている。強磁性要素は、生成される磁場が大きいため、MRIシステムでは使用することができない。
【0005】
[0005] MRIシステムで現在の使用されている最も小さいバランは、同軸ケーブルを切断し、バランを切断端部間に挿入することを必要とする。ケーブルを切断し、バランを切断端部間に取り付けることは、取付け時間及び困難さを増加させるうんざりする工程である。追加として、ケーブルのサイズが小さくなるにつれて、ケーブルを切断するために特別のツールが使用されなければならず、それらは必ずしも成功するとは限らない。ケーブルを切断する必要のない現在使用されているバランは、そこにMRIシステムが多くのRFチャネル数を有する場合、すべてでないにしてもほとんどの用途には大きすぎる。
【0006】
[0006] その結果、小型同軸ケーブルで使用するのに適しており、ケーブルの切断を必要とせず、多くのRFチャネル数を有するMRIシステムで使用するためにサイズが十分に小さい効果的なバランへの必要性がある。
【0007】
[0008] 代表的な実施形態は、添付図面とともに読まれるとき、以下の詳細な説明から最もよく理解される。様々なフィーチャは必ずしも一定の縮尺で描かれていないことが強調される。実際、寸法は、議論しやすいように任意に拡大又は縮小されることがある。適用可能で実際に役立つ場合はいつでも、同様の参照番号は同様の要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】[0009] 本明細書で説明されるバランを組み込むことができる例示の実施形態によるMRIシステムのブロック図である。
図2】[0010] 各々が本教示によるバランを有するN個の同軸ケーブルによってRF受信機に相互接続されたN個のRF受信コイルのブロック図である。ここで、Nは1以上の正の整数である。
図3】[0011] 第1の代表的な実施形態によるバランの断面ブロック図である。
図4】[0012] 別の代表的な実施形態によるバランの断面ブロック図である。
図5】[0013] 別の代表的な実施形態によるバランの断面ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0014] 以下の詳細な説明において、限定ではなく説明のために、特定の詳細を開示する代表的な実施形態が、本教示の完全な理解を提供するために記載される。しかしながら、本明細書で開示される特定の詳細から外れる本教示による他の実施形態が添付の特許請求の範囲内に留まることが、本開示の利益を有している当業者には明らかであろう。その上、よく知られている装置及び方法の説明は、代表的な実施形態の説明を不明瞭にしないために省略されることがある。そのような方法及び装置は、明らかに、本教示の範囲内にある。
【0010】
[0015] 本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものでないことを理解されたい。定義される用語は、本教示の技術分野において一般に理解され受け入れている定義された用語の技術的及び科学的な意味に加えるものである。
【0011】
[0016] 本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」という用語は、コンテキストが明らかにそうでないことを示さない限り、単数の指示対象と複数の指示対象の両方を含む。したがって、例えば、「1つのデバイス(a device)」は、1つのデバイス及び複数のデバイスを含む。
【0012】
[0017] 明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、及びそれらの通常の意味に加えて、「実質的な」又は「実質的に」という用語は、許容可能な限度又は程度内にあることを意味する。例えば、「実質的に取り消された」は、当業者が取り消しを許容できると見なすことを意味する。
【0013】
[0018] 明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、及びそれらの通常の意味に加えて、「ほぼ」又は「約」という用語は、当業者にとって許容可能な限度又は量内にあることを意味する。例えば、「ほぼ同じ」は、当業者が、比較される事項が同じであると見なすことを意味する。
【0014】
[0019] 本明細書で説明する代表的な実施形態によれば、小型同軸ケーブル(すなわち、直径1mm未満)で使用するのに適し、バランを取り付けるのにケーブルの切断を必要とせず、多くのRFチャネル数を有するMRIシステムで使用するためにサイズが十分に小さい効果的なバランが提供される。MRIシステムのRF受信コイルからRF受信機まで延びる各同軸ケーブルの一部分が、インダクタを形成するためにデバイスのまわりに多数回巻かれる。インダクタは、別個の共振回路の有無にかかわらず使用される。バランが別個の共振回路を含む場合、ケーブルの一部に形成されたインダクタと共振回路とが互いに結合して、対象の周波数で高い値を有する結合インピーダンスを発生し、その結合インピーダンスがケーブルのコモンモードノイズを抑制する。バランが別個の共振回路を含まない場合、ケーブルの一部に形成されたインダクタはインダクタンスを備え、巻線間の寄生キャパシタンスがインダクタンスと結合して、ケーブルに並列インピーダンスを形成し、その並列インピーダンスが、対象の周波数のコモンモードノイズを抑制する。次に、いくつかの代表的な実施形態を、図を参照して説明する。
【0015】
[0020] 図1は、本明細書で説明するバランを組み込むことができる例示の実施形態によるMRIシステム100のブロック図を示す。MRIシステム100は、1組の主コイル101と、傾斜増幅器(図示せず)及び傾斜制御ユニット108を含む傾斜ドライバユニット103に接続された多数の傾斜磁場コイル102と、RFコイルドライバユニット105に接続されたRF送信コイル(図示せず)及びRF受信機106bに接続されたRF受信コイル106aを含むRFコイルシステム104とを含む。この代表的な実施形態によれば、受信コイル106aは、以下でより詳細に説明する本教示によるバランを備えたそれぞれの小型同軸ケーブルによってRF受信機106bに接続される。
【0016】
[0021] 受信コイル106aは、RFコイルシステム104のRF送信コイルによって励起された領域の少なくとも一部分からMR信号を取得する。RF受信機106bは、MR信号の検出及び回復のためのRF受信機回路(例えば、同調、復調、及び増幅回路)と、MR信号をデジタル信号に変換するためのアナログ-デジタル変換(ADC)回路とを含む。デジタル化されたMR信号は、RF受信機106bからネットワークハブ110に通信リンク107によって移送される。
【0017】
[0022] 傾斜磁場コイルドライバユニット103及びRFコイルドライバユニット105は、電源ユニット109によって電力供給される。例えば患者テーブルなどの搬送システム111が、例えば患者などの対象者112をMRIシステム100内に位置づけるために使用される。ネットワークハブ110は、MRIシステムの動作を制御する制御及びデータ取得システム(図示せず)を含む。再構成ユニット113は、ネットワークハブ110からMRデータを受け取り、最終MRI画像を再構成する。例えば、モニタ画面又はプロジェクタなどのディスプレイユニット114は、再構成画像を表示する。ストレージユニット115は、データ及びコンピュータ命令を格納する。例えばキーボード、マウス、トラックボールなどのようなユーザ入力デバイス116は、ユーザがMRIシステム100を操作できるようにする。
【0018】
[0023] 主コイル101は、安定した均一の静磁場を発生する。主コイル101は、一般に対象者112が導入されるトンネル形状検査空間(図示せず)を囲むように配置される。別の一般の構成は、対向する磁極面を含み、磁極面間に空隙があり、その中に、対象者112が、搬送システム111を使用することによって導入される。MRイメージングを可能にするために、静磁場に重畳される時間的に可変の傾斜磁場が、傾斜ドライバユニット103により供給される電流に応じて多数の傾斜磁場コイル102によって発生される。電源ユニット109は、多数の傾斜磁場コイル102に電流を供給し、その結果として、傾斜パルス(傾斜パルス波形とも呼ばれる)が発生される。
【0019】
[0024] 傾斜制御ユニット108は、適切な傾斜波形を作り出すために、傾斜磁場コイル102に流れる電流の特性、特に、その強度、継続期間、及び方向を制御する。RFコイルシステム104のRF送信コイルは、対象者112内にRF励起パルスを発生させ、一方、RF受信コイル106aは、RF励起パルスに応じて対象者112によって発生されたMR信号を受信する。RFコイルドライバユニット105は、RFコイルシステム104のRF送信コイル要素に電流を供給して、RF送信コイルにRF励起パルスを送信させる。
【0020】
[0025] 送信されるRF励起パルスの特性、特に、その強度及び継続期間は、ネットワークハブ110の制御及びデータ取得システムによって制御される。RFコイルシステム104のRF送信コイルは、一般に、T/Dスイッチ116を介して制御及びデータ取得システムによって、2つのモード、すなわち、送信モード及び離調モードの一方で操作される。T/Dスイッチ116には、RF送信コイルを2つのモード間で切り替え、RF受信コイル106aによる信号取得の間RF送信コイルがノイズを結合させないようにする電子回路が備えられている。T/Dスイッチ116は、さらに、動作中に2つのモード間で、すなわち、受信モードと離調又は非結合モードとの間でRF受信コイル106aを切り替える。RF受信コイル106aは、RF送信コイルの送信モードの間非結合モードに切り替えられ、RF送信コイルの非結合モードの間受信モードに切り替えられる。RF送信コイル及び受信コイルの両方の2つのモード間の切替えは、ネットワークハブ110の制御及びデータ取得システムによって、一般に、制御及びデータ取得システムの1つ又は複数のプロセッサによって実行されるソフトウェア及び/又はファームウェアの制御下で調整される。
【0021】
[0026] 本教示によるバランが使用されるMRIシステムの例を説明した。次に、バランの代表的な実施形態を説明する。図2は、N個の同軸ケーブル221によってRF受信機106bに相互接続されたN個のRF受信コイル106aのブロック図を示し、各同軸ケーブル221は、同軸ケーブル221の第1の端部と第2の端部との間に配置された本教示によるバラン230を有する。ここで、Nは1以上の正の整数である。一般に、Nは、2以上であり、8から64に及ぶ。各RF受信コイル106aは、RF信号を検出し、アナログ電気MR信号を発生する。RF受信コイル106aの出力部は、それぞれの増幅器222に接続される。それぞれの増幅器222は、それぞれのRF受信コイル106aによって出力されたそれぞれのMR信号を増幅し、それぞれの増幅されたアナログMR信号をそれぞれの同軸ケーブル221に出力する。各同軸ケーブル221は、それぞれの同軸ケーブル221からのコモンモードノイズを除去するバラン230を備えている。以下で図3図5を参照してより詳細に説明するように、各バラン230は、誘電材料で製作されたデバイスのまわりにそれぞれのケーブル221を多数回巻回することから形成されたインダクタを含む。このようにして、バラン230は、ケーブル221を切断する必要なしにそれぞれのケーブル221に結合される。バラン230は、RF受信コイル106aの対象の周波数に等しい共振周波数を有するように設計され、その結果、バラン230は、共振周波数で高いインピーダンスを示し、その高いインピーダンスはコモンモードノイズを抑制する。
【0022】
[0027] バラン230は様々な構成を有することができ、次に、そのうちのいくつかを、図3図5を参照して説明する。図3は、第1の代表的な実施形態によるバラン230aの断面ブロック図を示す。図3には、図2に示した同軸ケーブル221aのうちの1つが、ケーブル221aにインダクタ236を形成するためにデバイス235の外面のまわりに巻かれて示されている。インダクタ236の巻線、すなわち、巻回の方向は、図3に矢印で示されている。デバイス235の内部に配置された共振回路237は、ケーブル221aのインダクタ236に磁気的に結合される。この実施形態によれば、デバイス235は、その中に共振回路237を受け取るために少なくとも部分的に中空である。デバイス235は、固体プラスチック材料などの誘電材料で製作される。共振回路237は、キャパシタ239と並列に電気的に結合されたインダクタ238によってブロック図形式で示されている。共振回路237は、様々な回路構成があり得るが、MRIシステム100で空間を効率的に利用するという本教示の目的のうちの1つを達成するようにサイズを非常に小さくすべきである。当業者は、本明細書で提供される教示に照らして、この目的を達成するようにサイズが十分に小さい共振回路237を構成するやり方を理解するであろう。
【0023】
[0028] 共振回路237の目標共振周波数は、共振回路237のインダクタンス及び/又はキャパシタンスを調節することによって、及び/又はケーブル221aの巻線で形成されるインダクタ236の巻数Lを調節することによって達成される。ここで、Lは1以上の正の整数である。同軸ケーブル221aは、一般に1.0mm以下の直径を有する。ケーブル221aの直径が小さいので、インダクタ236は小さい区域内に多くの巻数を有することができ、それは、非常に大きいインダクタンスを有するインダクタ236をもたらす。インダクタ236の大きいインダクタンスが、ケーブル221a内のコモンモード電流によって作り出された磁場を並列共振回路237に結合すると、コモンモード信号に対する大きい直列インピーダンスが作り出され、それは、ケーブル221を伝搬するコモンモード信号に対してコモンモード抑制を行う。このようにして、バラン230aは、非常に小さい区域内で、及びバラン230aを取り付けるためにケーブル221aを切断する必要なしに、効果的なコモンモードノイズ抑制を行うことができる。共振回路237の目標共振周波数は、共振回路237のインダクタンス及び/又はキャパシタンスを調節することによって、及び/又はケーブル221bの巻線で形成されるインダクタ236の巻数を調節することによって達成される。
【0024】
[0029] 図4は、別の代表的な実施形態によるバラン230bの断面ブロック図を示す。バラン230bは、図4に示す共振回路237がデバイス235及びインダクタ236の外部にあることを除いて、図3に示したバラン230aと同一である。図4において、図2に示した同軸ケーブル221bのうちの1つが、ケーブル221bにインダクタ236を形成するためにデバイス235の外面のまわりにL回巻かれている。ここで、Lは1以上の正の整数である。インダクタ236の巻線、すなわち、巻回の方向は、図4に矢印で示されている。共振回路237は、インダクタ236に隣接して、しかしインダクタ236の外部に配置される。
【0025】
[0030] バラン230bは、図3を参照して上述したようにバラン230aが動作するのと同じように動作する。共振回路237の目標共振周波数は、共振回路237のインダクタンス及び/又はキャパシタンスを調節することによって、及び/又はケーブル221bの巻線で形成されたインダクタ236の巻数を調節することによって達成される。加えて、オプションの反磁性スラグ234を、デバイス235の内部に取り付け、デバイス235内に少なくとも部分的に収容して、インダクタ236の領域内のケーブル221bの磁化率を変更することができる。スラグ234が製作される反磁性材料は、例えば、アルミニウム又は銅とすることができる。
【0026】
[0031] 対象の目標周波数において、インダクタ236が、ケーブル221bに流れるコモンモード電流によって作り出された磁場を並列共振回路237に結合し、コモンモード信号に対して大きい直列インピーダンスを作り出し、それは、コモンモードノイズ抑制をもたらす。このようにして、バラン230bは、非常に小さい区域内で、及びバラン230bを取り付けるためにケーブル221bを切断する必要なしに、効果的なコモンモードノイズ抑制を行うことができる。
【0027】
[0032] 図5は、別の代表的な実施形態によるバラン230cの断面ブロック図を示す。図5において、図2に示した同軸ケーブル221cのうちの1つが、ケーブル221cにインダクタ240を形成するために、デバイス235の外面にL回(ここで、Lは1以上の正の整数である)、M層(ここで、Mは1以上の正の整数である)に巻かれる。インダクタ240の巻線、すなわち、巻回の方向は、図5に矢印で示されている。図5に示した代表的な実施形態によれば、Lは2よりも大きく、Mは2に等しい。インダクタ240は以下のように形成される。ケーブル221cの一部221cから始めて、ケーブル221cは、インダクタ240の第1のインダクタ層240aを形成するために、図面ページを見てデバイス235のまわりに左から右に巻かれ、次いで、一部221cから始めて、ケーブル221cは、インダクタ240の第2のインダクタ層240bを形成するために、第1のインダクタ層240aの上においてデバイス235のまわりに右から左に巻かれる。
【0028】
[0033] この実施形態によれば、バランは、図3及び図4に示した共振回路237を含まない。インダクタ240の巻線間に寄生キャパシタンスがある。インダクタ240の巻線数L及び層数Mは、インダクタによって与えられるインダクタンスが、インダクタ240の巻線間のキャパシタンスと組み合わされて、対象の目標周波数で自己共振するLC共振回路を設けるように選ばれる。インダクタンスがキャパシタンスと結合されて、対象の目標周波数で並列インピーダンスが設けられ、その結果、ケーブル221cのコモンモードノイズが抑制される。対象の目標周波数は、インダクタ240の巻数、及び/又はインダクタ240が有する層数、及び/又は巻回の直径を調節することによって達成される。
【0029】
[0034] バラン230cは、非常に小さい区域内で、及びバラン230cを取り付けるためにケーブル221cを切断する必要なしに、効果的なコモンモードノイズ抑制を行うことができる。インダクタ240は、2つの層240a及び240bを有するように示されているが、任意の層数Mを有することができる。図4を参照して上述した実施形態と同様に、反磁性材料(例えば、アルミニウム又は銅)で製作された反磁性スラグ234をデバイス235の内部に取り付けて、インダクタ240の領域のケーブル221cの磁化率を変更することができる。
【0030】
[0035] 本教示が、本教示の原理及び概念を実証する目的でいくつかの代表的な実施形態を参照して説明されたことに留意されたい。当業者は、本明細書に明示的に説明されていない他の実施形態を達成するために本教示と矛盾せずに実施形態を変更する方法を理解するであろう。さらに、図3図5を参照して上述したバラン構成は、本発明の原理及び概念を実証する好適なバラン構成の単なる例であることに留意されたい。例えば、図3及び図4に示したインダクタ236は、図5に示したインダクタ240と同様にM層の巻線を有することができる。さらに、図5に示したバラン230cは、図3及び図4に示した共振回路237と同様の別個の共振回路を含むことができ、その場合、共振回路は、デバイス235の内部にあってもよく又は外部にあってもよい。本明細書で提供する説明に照らして当業者が理解するであろうように、依然として本教示の目的を達成しながら、本明細書で説明した実施形態に多くの変更を加えることができ、すべてのそのような変更は本発明の範囲内にある。さらに、図1に示し本明細書で説明したMRIシステム100は、バランの使用から利益を得ることができるMRIシステムの一例であるが、本発明は、この特定のMRIシステムで使用されているバランに限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5