(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】印加電流カソード防食のためのシステム
(51)【国際特許分類】
C23F 13/04 20060101AFI20220114BHJP
B63B 59/04 20060101ALI20220114BHJP
C23F 13/02 20060101ALI20220114BHJP
C23F 13/20 20060101ALI20220114BHJP
C23F 13/10 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
C23F13/04
B63B59/04 A
C23F13/02 H
C23F13/02 B
C23F13/20 A
C23F13/10 B
(21)【出願番号】P 2019532988
(86)(22)【出願日】2017-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2017083790
(87)【国際公開番号】W WO2018115108
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-17
(32)【優先日】2016-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デルデン マーク
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第99/025929(WO,A1)
【文献】特表2004-517592(JP,A)
【文献】特表2015-536382(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0116400(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 13/00-13/22
B63B 1/00-85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に接触した海洋構造物の印加電流カソード防食のためのシステムであって、前記システムが、
前記印加電流カソード防食のために水に対する前記海洋構造物の電位を生成する電源電流を提供する電源と、
前記海洋構造物に配置され、水に接触する
電気的な負荷装置と、
を備え、
前記負荷装置が、
水を介して前記電源電流を伝達するため前記負荷装置から水中に延びる少なくとも1つの電極と、
少なくとも1つの給電ノードと、
前記電極と前記給電ノードとの間に結合され、負荷電流を得る少なくとも1つの負荷と、
を備え、
前記電源が、前記海洋構造物に接続されるための第1の極性部と、前記給電ノードに接続されるための第2の極性部とを含み、
前記負荷装置が、前記電源電流を使用して前記負荷電流を提供する、
システム。
【請求項2】
前記負荷装置が、水に接触する
複数の面を含み、前記少なくとも1つの電極が、前記
複数の面の所定の面にわたって分布した多数の電極である、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの負荷が、前記少なくとも1つの電極に結合された多数の負荷であり、前記負荷が、前記負荷装置にわたって分布されている、
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記電源が、
前記海洋構造物の前記電位を生成するためのDC成分と、
前記負荷電流の少なくとも一部を提供するための交流成分と、
を含む前記電源電流を提供し、
前記交流成分が、前記少なくとも1つの電極における電気化学的状態に対する正味の寄与を避ける高周波で交番する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記DC成分が、DCオフセットを含み、及び/又は、前記DC成分が、前記交流成分のパルスのパルス幅を調節することにより提供される、
請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記電源が、20kHzから200kHzの範囲
内の周波数をもつ前記交流成分を提供する、
請求項4又は5に記載のシステム。
【請求項7】
前記電源が、100kHzの周波数をもつ前記交流成分を提供する、
請求項4又は5に記載のシステム。
【請求項8】
前記電源が、あるインターバルで、前記DC成分及び/又は前記交流成分を無効化して前記海洋構造物の前記電位の測定を可能にする、
請求項4乃至
7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記負荷装置が、前記電極と前記給電ノードとの間において前記電源電流を伝達するための、及び、前記負荷電流を提供するために前記負荷を介して前記電源電流の少なくとも一部を伝導するための電源回路を備える、
請求項1乃至
8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記電源回路が、前記電極と前記給電ノードとの間において前記電源電流の一部を伝達するためのツェナーダイオードを備える、
請求項
9に記載のシステム。
【請求項11】
前記負荷が、前記負荷装置の防汚、及び/又は、水に接触する前記海洋構造物の表面の防汚のための防汚光を出射するためのUV光源を備え、当該水が、汚損生物を含有する汚損液体である、
請求項1乃至
10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
水に接触した海洋構造物の印加電流カソード防食のためのシステムにおける使用のための
電気的な負荷装置であって、前記システムが、
前記印加電流カソード防食のために水に対する前記海洋構造物の電位を生成する電源電流を提供する電源であって、前記海洋構造物に接続されるための第1の極性部と、前記負荷装置の給電ノードに接続されるための第2の極性部とを含む前記電源をさらに備え、
前記負荷装置が、前記海洋構造物に配置されて、水に接触し、
前記負荷装置が、
水を介して前記電源電流を伝達するため前記負荷装置から水中に延びる少なくとも1つの電極と、
少なくとも1つの前記給電ノードと、
前記電極と前記給電ノードとの間に結合され、負荷電流を得る少なくとも1つの負荷と、
を備え、前記負荷装置が、前記電源電流を使用して前記負荷電流を提供し、前記負荷装置が、相互接続された多数の前記電極と前記負荷とを支持するキャリアシートを備える、
負荷装置。
【請求項13】
前記負荷装置が、複数の前記キャリアシートを備え、各前記キャリアシートが、隣接した前記キャリアシートの前記給電ノードを接続するための少なくとも1つのコネクタ要素を含む、
請求項
12に記載の負荷装置。
【請求項14】
水にさらされる表面を含む海洋構造物であって、前記海洋構造物が、請求項1乃至
11のいずれか一項に記載のシステムを備え、
前記負荷装置が、前記海洋構造物の前記表面上に配置され、
前記電源の前記第1の極性部が、前記印加電流カソード防食のために水に対する前記海洋構造物の前記電位を生成するために、前記電源から前記負荷装置に前記電源電流を伝達するために、前記海洋構造物に接続され、
前記電源の前記第2の極性部が、前記少なくとも1つの給電ノードにガルバニッ
ク接続される、
海洋構造物。
【請求項15】
水に接触した海洋構造物の印加電流カソード防食のための方法であって、
電源が、前記海洋構造物に配置され、
電気的な負荷装置が、前記海洋構造物に配置されて、水に接触し、
前記負荷装置が、
水を介して電源電流を伝達するため前記負荷装置から水中に延びる少なくとも1つの電極と、
少なくとも1つの給電ノードと、
前記電極と前記給電ノードとの間に結合され、負荷電流を得る少なくとも1つの負荷と、
を備え、
前記電源の第1の極性部が、前記海洋構造物に接続され、第2の極性部が、前記給電ノードに接続されていて、
前記方法は、
前記印加電流カソード防食のために水に対する前記海洋構造物の電位を生成するように前記電源から前記電源電流を提供するステップと、
前記負荷電流を提供するために前記電源電流を前記負荷装置において使用するステップと、
を有する、
方法。
【請求項16】
請求項1乃至
11のいずれか一項に記載のシステムを設置する方法であって、前記方法は、
前記海洋構造物の表面に少なくとも1つの
前記負荷装置を装着するステップと、
前記電源の前記第2の極性部を前記少なくとも1つの給電ノードに接続するステップと、
前記印加電流カソード防食のために水に対する前記海洋構造物の電位を生成するように、及び、前記負荷電流を提供するために前記電源電流を前記負荷装置において使用するように、前記電源から前記電源電流を提供するために、前記電源の前記第1の極性部を前記海洋構造物に接続するステップと、
を有する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印加電流カソード防食のためのシステムに関する。システムは、電源と、水に接触する海洋構造物に配置された負荷装置とを備える。電源は、印加電流カソード防食のために水に対する海洋構造物の電位を生成するように配置されている。負荷装置は、電源から電源電流を受け取る。
【背景技術】
【0002】
天然の水、例えば、海水、又は、湖若しくは川の真水内で動作する、金属部品を含む構造物、例えば、船、石油採掘装置のみならず、突堤、熱交換ユニット、船の海水箱、海における風力タービン、潮流発電機などは、本明細書において海洋構造物と呼ばれる。自然腐食に対処するために、このような海洋構造物は、コーティング又は塗装される。さらに、このような海洋構造物は、多くの場合、受動的な、又は能動的なカソード防食システムを具備する。従って、保護コーティング又は塗装が局所的に劣化した場合でも、むき出しの金属が腐食から保護される。受動的カソード防食システムは、経時的に電気化学的に溶解する犠牲となる亜鉛、アルミニウム、又は鉄のアノードを使用するのに対し、能動的なカソード防食システムは、MMO-Ti(混合金属酸化物)によりコーティングされたチタン又はPt/Ti(白金によりコーティングされたチタン)から作られたアノードを使用するときにDC電流を印加する。水に対する海洋構造物の電位を生成するために水にDC電流を印加する能動システムは、印加電流カソード防食(impressed current cathodic protection)又はICCPと呼ばれる。
【0003】
米国特許出願公開第2006/0065551号の文献が、ICCPにより保護される金属構造体の保護レベルを試験するための腐食試験器について説明する。ICCPシステムに給電すること自体は説明されないが、電力は、船の電池から提供される。腐食測定器を動作させるための電力は、内蔵電池により提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
様々な種類の電気負荷が、海洋構造物の表面に配置されることを必要とする。例えば、このような負荷は、水を監視するか、又は、水に影響を与える、様々なパラメータを測定する、及び/又は、海洋構造物の表面における状態を能動的に制御するセンサー又は能動要素である。例えば、負荷は、生物汚損に対処するするUV LEDなどのUV光源である。負荷は、キャリアに埋設され、電源から給電されることが必要である。
【0005】
このような負荷、電気回路、及び負荷に給電するための配線のうちの1つ又は複数の組立体が、本明細書において負荷装置と呼ばれる。組立体は、1つ又は複数の負荷及び電力回路を物理的に支持する、機械的要素としてのキャリア又は任意の他の種類のエンクロージャを含む。各負荷を電源に接続するために、接続は、高価であり信頼できない、例えば、電力線及び電力コネクタを使用して作られる必要がある。
【0006】
本発明は、利便性の高い、及び信頼可能な手法により海洋構造物の表面における負荷に電力を供給することができるICCPシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、水に接触した海洋構造物の印加電流カソード防食(ICCP)のためのシステムが提供される。システムは、電源電流を提供して、印加電流カソード防食のために水に対する海洋構造物の電位を生成するように配置された電源と、海洋構造物に配置されて、水に接触する負荷装置とを備える。負荷装置は、水を介して電源電流を伝達するため負荷装置から水中に延びるように配置された少なくとも1つの電極と、少なくとも1つの給電ノードと、電極と給電ノードとの間に結合され、負荷電流を得るように配置された少なくとも1つの負荷とを備える。
【0008】
電源は、海洋構造物に接続されるための第1の極性部と、給電ノードに接続されるための第2の極性部とを含む。負荷装置は、負荷電流を提供するために電源電流を使用するように配置されている。負荷装置は、相互接続された多数の電極と負荷とを支持するキャリアシートを備える。
【0009】
本発明によると、水に接触した海洋構造物の印加電流カソード防食(ICCP)のための方法が提供され、
- 電源が、海洋構造物に配置されており、
- 負荷装置が、海洋構造物に配置され、水に接触し、負荷装置が、水を介して電源電流を伝達するため負荷装置から水中に延びるように配置された少なくとも1つの電極と、少なくとも1つの給電ノードと、電極と給電ノードとの間に結合された、及び、負荷電流を得るように配置された少なくとも1つの負荷とを備え、電源の第1の極性部が、海洋構造物に接続され、第2の極性部が、給電ノードに接続される。本方法は、印加電流カソード防食のために水に対する海洋構造物の電位を生成するように電源から電源電流を提供するステップと、負荷装置において、負荷電流を提供するために電源電流を使用するステップとを有する。
【0010】
本発明によると、ここまでに規定されるようにシステムを設置するための方法が提供され、方法は、水にさらされる海洋構造物の表面に少なくとも1つの負荷装置を装着することと、電源の第2の極性部を少なくとも1つの給電ノードに接続することと、印加電流カソード防食のために水に対する海洋構造物の電位を生成するように、及び、負荷電流を提供するために電源電流を負荷装置において使用するように、電源から電源電流を提供するために、電源の第1の極性部を海洋構造物に接続することとを有する。
【0011】
上述の特徴は、システムが水に接触した海洋構造物に設置されたとき、以下の効果をもつ。ICCPシステムは、電源と海洋構造物の表面に配置された負荷装置とを含む。電源は、印加電流カソード防食のために水に対する海洋構造物の電位を生成するために、電源電流を提供する。加えて、電源は、海洋構造物に接続された第1の極性部とガルバニック接続、例えば、電力線又はケーブルを介して負荷装置の給電ノードに接続されるための第2の極性部とを含む。
【0012】
負荷装置は、負荷装置から水中に延びるように配置された少なくとも1つの電極を含む。負荷装置は、電極と給電ノードとの間に結合された少なくとも1つの負荷を含む。結合回路は、電源から負荷への負荷電流を得るように配置されている。電極は、電源電流を、水を介して海洋構造物に伝達するために配置されている。
【0013】
電源からの電源電流は、第1の極性部から海洋構造物に、水を介して、電極に伝導される。続いて、負荷装置において、電源電流が、電極から給電ノードに、結合回路と負荷とを介して伝導される。最後に、電源電流は、給電ノードから、ガルバニック接続を介して、電源の第2の極性部に伝導される。従って、負荷電流を提供するために電源に負荷を結合する、及び、ICCP電位をさらに提供する2機能伝導回路が形成される。連続して、電源の第1の極性部において始まる伝導回路において、電源電流が、まず、海洋構造物に流れる。次に、水中に浸された海洋構造物から、水中に電流が流れる。この時点において、ICCPのための電位が生成される。次に、水から、電流が、水中に延びた電極に流れ込む。次に、負荷電流が誘発されて、電極から負荷に流れ、次に、給電ノードに流れる。最後に、電流が給電ノードから電源の第2の極性部に流れる。
【0014】
効果的に、負荷装置は、電源電流を使用して負荷電流を提供するように配置されている。これに対応して、電源が、負荷のための追加的な電力、例えば、ACコンポーネント及び/又はICCPに必要な電圧に加えられた追加的なDC電圧を提供するように構成されている。例えば、電源電流の一部が負荷を介して伝導されて、負荷電流を構成するとともに、別の部分が、結合回路の他の要素を介して電極に伝導される。
【0015】
有益なことに、ICCPに必要な電流は、ガルバニック接続及び負荷装置を介して電極に向けて伝導される。従って、電極は、ICCPシステムのアノードを構成すると同時に、負荷に給電するためにさらに使用される電源電流のための伝導回路を形成する。伝導回路において、水は、電極までの電気伝導媒体を構成する。提案されるICCPシステムは、海洋構造物に位置する電気負荷に給電するために、及び、ICCPに必要な電流をさらに提供するために、電源から負荷装置までの単一のガルバニック接続のみを必要とするに過ぎない。さらに、このような単一のガルバニック接続は簡単に設置することができ、設置中に配線の誤りが発生しないようにすることができる。
【0016】
一実施形態において、負荷装置は、水に接触する前面を含み、少なくとも1つの電極が、前面にわたって分布した多数の電極である。有益なことに、ICCP電流は、表面にわたって分布した各電極において比較的小さな電流により水に局所的に提供されることにより、単一のアノードにおける大きな電流の集中を避ける。
【0017】
一実施形態において、少なくとも1つの負荷が、少なくとも1つの電極に結合された多数の負荷であり、これらの負荷は、負荷装置にわたって分布している。有益なことに、分布した負荷は、負荷装置にわたって、例えば、負荷装置によりカバーされた船の表面にわたって、それらのそれぞれの機能を実施するために提供される。さらに、負荷及び対応する電極が表面にわたって分布しているとき、分布した電極は、ICCPをもたらすように形成される。
【0018】
一実施形態において、電源は、海洋構造物の電位を生成するためのDC成分と、負荷電流の少なくとも一部を提供するための交流成分とを含む電源電流を提供するように構成されており、交流成分は、少なくとも1つの電極における電気化学的状態に対する正味の寄与を避ける高周波で交番する。DC成分は、海洋構造物に対して、すなわち、水とその海洋構造物の金属伝導部との間にDC電圧がかかるように、印加される。DC成分は、ICCPに必要な印加電流を効果的に提供する。交流成分は、ICCPに寄与せず、さらに、十分に高い周波数であることにより、少なくとも1つの電極における電気化学的状態に対する正味の寄与を避ける。加えて、電源は、20kHzから200kHzの範囲内、好ましくは、約100kHzの周波数をもつ交流成分を提供するように構成される。電源に対する給電ノードのガルバニック結合は、有益なことに、負荷にとって適切な任意の種類のAC電流及びDC電流を伝達することを可能にする。任意選択的に、DC成分は、交流成分のパルスのパルス幅を調節することにより提供される。
【0019】
さらに、又は代替的に、DC成分は、DCオフセットを含む。有益なことに、ICCPは、防汚のためのUV光源などの、保護される表面において動作する負荷と組み合わされて提供される。さらに、負荷及び対応する電極が表面にわたって分布しているとき、分布した電極がICCPをもたらすように形成される。負荷装置までの電源の接続は、電源が、電源電圧に追加されたDCオフセットを介して、海洋構造物の印加電流カソード防食をもたらすことを可能にする。
【0020】
任意選択的に、電源は、あるインターバルで、DC成分及び/又は交流成分を無効化し、海洋構造物の電位を測定するように配置されている。さらに、任意選択的に、ICCPに必要な電流が、ICCPインターバルにおいて供給されるのに対し、負荷に必要な電流は、さらなるインターバルにおいて供給され、インターバルは、負荷とICCP機能との両方を実質的に独立して、及び断続的に行うために、必要に応じて繰り返される。電位の測定は、DC成分及び/又は交流成分と測定値との干渉を減らすために、例えば、測定値を平均化しながら、連続的に、又は、1つ又は複数の特定のインターバルにおいて実施される。
【0021】
一実施形態において、負荷装置は、電極と給電ノードとの間において電源電流を伝達するための、及び、負荷電流を提供するために負荷を介して電源電流の少なくとも一部を伝導するための電源回路を備える。効果的に、負荷がICCP電流より小さな電流を要求するとき、電源回路は、給電ノードから電極に直接的にICCP電流の一部を伝導する。任意選択的に、電源回路は、電極と給電ノードとの間において電源電流の一部を伝達するためのツェナーダイオードを備える。
【0022】
一実施形態において、負荷装置は、相互接続された多数の電極と負荷とを支持する少なくとも1つのキャリアシートを備える。有益なことに、シート形キャリアが、海洋構造物の表面に簡単に設置される。任意選択的に、負荷装置は、複数のキャリアシートを備え、各シートが、隣接したシート間において給電ノードを接続するための少なくとも1つのコネクタ要素を含む。有益なことに、ガルバニック接続は、コネクタ要素を介して利便性高く作られている。
【0023】
一実施形態において、負荷は、負荷装置の防汚、及び/又は、水に接触する海洋構造物の表面の防汚のための防汚光を出射するためのUV光源を備え、水は、汚損生物を含有する汚損液体である。任意選択的に、負荷装置は、光学媒体を備える。実用的な実施形態では、負荷装置は、スラブ又はシートの形態の光学媒体であり、前面が防汚光を出射するための出射面であるとともに、光学媒体の前面及び後面は、実質的に平面であり、互いに実質的に平行に広がっている。このような実施形態において、光学媒体は、海洋構造物の露出された表面に対するカバーとして適用されることに非常に適している。負荷は、UV LEDなどの、紫外光を出射するように適応された光源である。生物防汚のための紫外光を使用することの概括的な利点は、きれいに維持される表面に微生物が接着すること、及び根を下ろすことが防止されることである。光源は、光学媒体に埋設されるか、又は、光学媒体に隣接した位置において光学媒体の外側に配置される。
【0024】
光源が紫外光を出射するように適応されるとき、光学媒体が紫外線透過シリコーンなどの紫外線透過材料を含むことが有益である。総じて、防汚光の少なくとも一部が光学媒体を通して配光されることを可能にするように構成された材料を光学媒体が含むことは、例えば、光学媒体が防汚光に対して実質的に透過性の材料を含むことを意味すると理解される。
【0025】
本発明による負荷装置が、単一の光学媒体と負荷としての複数の光源とを備えることが実際に実現可能である。媒体は、出射面に光を反射するための1つ又は複数のミラーをさらに備える。このような場合において、負荷装置の光学媒体は、任意の適切な形状及び寸法であり得、LEDなどの光源は、光学媒体にわたって分布しており、光源の各々により出射された光は、最適化された程度で光学媒体の出射面にわたって配光される。光源は、各電極及び給電ノードへの一連の並列接続として配置され得る。
【0026】
本発明は、様々な例に適用可能である。例えば、本発明による負荷装置は、船舶の例に適用される。任意選択的に、水にさらされる海洋構造物は、上述の負荷装置を備える表面を含み、負荷装置は、露出された表面に装着され、例えば、負荷は、汚損生物を含有する汚損液体に浸されたときの露出された表面の防汚のためのUV光源を備える。
【0027】
本発明の上述の態様及び他の態様が、以下の実施形態から明確にされ、その詳細な説明を参照しながら説明される。
【0028】
本発明のこれらの態様及び他の態様が以下の説明において例示として添付図面を参照しながら説明される実施形態から明確にされ、その実施形態を参照しながら説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】容量性前電極を含む負荷装置の第2の例を示す図である。
【
図3】ガルバニック前電極を含む負荷装置の第3の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図は概略的なものに過ぎず、一定の縮尺で描かれない。図中、既に説明されている要素に対応した要素は、同じ参照符号をもつ。
【0031】
本発明は、水、例えば海水に接触した金属構造体の腐食防止のためのシステムに関する。2つの異種金属(例えば、青銅のプロペラを含む鉄の船)が、(例えば、プロペラシャフト軸受、又は、異なる鉄のアンカーにより)互いに電気的に接触させられ、及び、両方の金属の一部又はすべてが(海)水に接触させられたとき、一方の物質(船殻)が他方(青銅のプロペラ)より簡単に溶解する。さらに、より簡単に溶解可能な金属は、第2の金属が溶解し始める前に消失し、通常、さび果てると表現される。
【0032】
(海)水中で、鉄はゆっくりではあるが着実に溶解する。従って、適切な保護がなければ、鉄の船はゆっくりではあるが着実に溶解、最終的に、船殻の貫通孔に起因して沈むことさえある。
【0033】
鉄の船を保護する1つの手法は、鉄の船を塗装することである。さらに、第1の塗装パッチが劣化するとすぐに、鉄はその部分においてすぐに溶解し始める。さらに悪いことに、新しい塗装コーティングであっても孔を含み、船殻に接触したプロペラ及びかじは、多くの場合未塗装であるか、又は、使用中のキャビテーションに起因してそれらの塗装層から剥がれる。従って、防食は必須である。
【0034】
溶解から船を保護するために、異なる保護方法が適用され得る。よく知られた方法である受動カソード防食は、さらに顕著に溶解可能な金属、例えば、亜鉛又はアルミニウムのブロックを海洋構造物にボルト止めすることを必要とする。本方法は、亜鉛又はアルミニウムから鉄の海洋構造物への電子の提供に起因して動作し、それにより、海洋構造物は、腐食を抑制する化学的ポテンシャルを獲得し、すなわち、亜鉛又はアルミニウムが存在する限り、海洋構造物の保護が確実なものとされ、及び持続するようにされる。
【0035】
腐食を抑制する化学的ポテンシャルを獲得するさらなる方法は、DC電源により必要な電子を供給する印加電流カソード防食(ICCP)と呼ばれる。ICCPは、保護される金属において電位を生成することにより腐食を止めることを目的とし、必要な電位は、基準電極に対して測定された0.8~0.9Vである。電子は、印加電流アノードから海洋構造物に向けてDC電流として送られる。アノードの材料は、(海)水中に溶解しないように選択され、例えば、白金、又は、白金によりコーティングされたチタンが挙げられる。受動システムにおいて、電子の流れは、主に自己制御である。ICCPにおいて、電流の流れは制御されなければならず、例えば、鉄が腐食を抑制する電位を獲得した場合、電流は測定するために一時的に遮られる。鉄に送られた過度に多くの電子は水分解を結果的にもたらすので、制御が必要とされる。そうでなければ、水素ガスが形成され、続いて、鉄において溶解し得、鉄を脆化する。過度に高い電位によるいわゆる「過剰保護」は避けられなければならない。さらに、過度に小さな電流が印加された場合、防食が不適切となる。従って、電位を測定することに基づいて、電源からの電流を制御することは、ICCPシステムにおいてよく知られている。ICCPシステムに関する概括的な背景は、参考文献[1]及び[2]においてさらに見出される。
【0036】
特に、海洋産業の荒れた厳しい環境における、電気と水との組み合わせは、現実の課題を提起する。水は電流の影響を受けて分解する。海水の場合、DC電流のもとで塩素と水素ガスとに分解する。AC電流のもとで、両方のガスが各電極において交互に形成される。このようなガスは、既に自然に発生している鋼の船殻の腐食を進め、他の物質の劣化を加速する。
【0037】
提案されるシステムは、アノードと電源との間において直列に追加された負荷に給電することと組み合わされて、ICCP保護を達成する。電力の一部を使用する負荷に起因して電力消費が増加するが、同じ印加電流が負荷を使用して、又は使用せずに生成されるときに、同レベルの防食が実現される。電位を測定することに基づいてDC電流を制御することにより、海洋構造物は、ICCPのための適切な電位を獲得する。負荷は、以下でさらに説明されるように、ガスを形成しないように、電源電流、例えば、高周波の追加的なAC電流の少なくとも一部を使用して給電される。
【0038】
以下、本発明が適用例を参照しながら説明され、この説明において、負荷装置は、生物汚損に対処するために船の船殻の露出された表面に搭載されるUV光源(特にLED)に給電するために使用される。しかし、海洋構造物の表面における任意の他の負荷、例えば、ソナーユニット又は他のセンサーが本発明により給電される。開示される主題の様々な実施形態の詳細が説明される前に、このような適用例において生物汚損に対処する一般的なアイデア及び知られたアプローチが説明される。
【0039】
それらの耐用期間の少なくとも一部にわたって水にさらされた表面の生物汚損は、多くの分野で重大な問題をもたらすよく知られた現象である。例えば、海運の分野では、船の船殻における生物汚損は、船の抗力の深刻な増加をもたらし、その結果、船の燃料消費量の増加をもたらすことが知られている。この点について、最大40%の燃料消費量の増加が生物汚損に起因し得ると推定される。
【0040】
概して、生物汚損は、表面における微生物、植物、藻、小動物などの蓄積である。ある推定によると、4,000の生物を含む1,800を越える種が生物汚損の原因とされる。従って、生物汚損は幅広い様々な生物によりもたらされ、表面へのフジツボ及び海藻の付着よりもはるかに多くのものが関与する。生物汚損は、生物膜の形成及び細菌付着を含むマイクロ汚損と、より大きな生物の付着を含むマクロ汚損とに分類される。何がそれらの定着を防止するかを特定するための確立した化学及び生物学に基づいて、生物はさらに硬質又は軟質に分類される。硬質汚損生物として、フジツボ、表面を覆うコケムシ、軟体動物、多毛類の動物及び他の棲管虫、及びカワホトトギスガイなどの石灰質生物が挙げられる。軟質汚損生物として、海藻、ヒドロ虫、藻及び生物膜「粘着物」などの非石灰質生物が挙げられる。これらの生物が一緒に汚損コミュニティを形成する。
【0041】
ここまでに説明されるように、生物汚損は重大な問題を生み出す。上述の船の抗力の増加の他に否定的な結果をもたらすものを2つだけ挙げると、生物汚損は、機械が動作を停止すること、及び、水口が詰まることをもたらし得る。従って、生物防汚の話題、すなわち、生物汚損の除去又は防止の工程はよく知られている。
【0042】
UVC光としても知られる、特にC型の紫外光、さらに、より具体的には、おおよそ220nmから300nmの間の波長の光を出射するための負荷装置における光源が防汚のために選択される。実際には、約265nm付近でピーク効率が達成され、より高い波長及びより低い波長に向かって低下する。220nmにおいて、及び300nmにおいて、効率は約10%まで低下する。
【0043】
特定の線量の紫外光に汚損生物をさらすことにより最も多くの汚損生物が殺されるか、不活性にされるか、又は繁殖することが不可能とされることが見出された。生物防汚を実現するために適していると考えられる典型的な強度は、10mW毎平方メートルである。光は、連続的に、又は適切な頻度で、所与の状況において適切でありさえすれば、特に、所与の光の強さで印加される。LEDは、負荷装置の光源として適用されるUVCランプの一種である。LEDは、概して、比較的小さなパッケージに含まれ得ること、及び、他の種類の光源より消費電力が少ないことが言える。さらに、LEDは、材料のスラブに非常に適切に埋設され得る。さらに、LEDは、様々な所望の波長の光(紫外線)を出射するように製造され得、それらの動作パラメータ、とりわけ出力パワーが大幅に制御され得る。LEDは、いわゆる側面発光LEDであり、シートの平面に沿った方向に防汚光を出射するように光学媒体内に配置される。
【0044】
防汚光は、シリコーン材料及び/又はUVグレード(溶融)シリカを含む光学媒体を通して配光されて、光学媒体から、及び海洋構造物の表面から防汚光を出射する。UV-Cの照射は、例えば船殻における、微生物及びマクロ生物の(初期)定着を防止する。生物膜に付随する問題は、生物の成長に起因してそれらの厚さが経時的に増加するにつれて、その表面が粗くなることである。従って、抗力が増加し、船の巡航速度を維持するためにエンジンがより多くの燃料を消費することを必要とし、その結果、運航コストが増加する。生物汚損の別の影響は、パイプ放熱器の冷却容量の低下、又は、食塩水吸入フィルタ及びパイプの流量容量の低下であり得る。従って、サービス及び保守コストが増加する。
【0045】
船殻の生物汚損に対処するための考えられる解決策は、例えば、埋設されたUV-C LEDを含むUV-C透過性材料のスラブによる外部船殻のカバーであり得る。これらのスラブ、又は、概して、任意の負荷装置(すなわち、光を生成するために電気エネルギーを消費する要素又は装置)は、水線より下方に位置する。これは、沈んだ表面が圧倒的に生物汚損を受けやすく、従って、抗力の増加の原因となるからである。従って、電力が負荷に向けて水線より下方で送達される必要がある。当然に、防汚解決策は、ICCPシステムが機能しない状態にしてはならない。
【0046】
生物汚損防止システムのUV LEDなどの様々な負荷が電力を必要とする。UV LEDは、2本のリード線が延びた、動作するためにDC電流を必要とする極性に敏感な光源である。従来のアプローチでは、有線接続された伝導体が、ガルバニック接触により電源電流を提供するために使用され得る。しかし、従来の完全に有線接続されたアプローチは、電源を負荷に接続するために複雑な配線及びコネクタスキームを必要とする。海水中に浸された電力送信器、例えば、電源の一方の極性部に接続された金属の船の船殻(の部分)に対する共通の伝導媒体として海水を使用する単線アプローチがここで説明される。後述のように、単線が、伝導媒体から絶縁された伝導体装置により提供される。
【0047】
図1は、ICCPシステムの一例を示す。本システムは電源1と負荷装置100とを含む。電源は、印加電流カソード防食のために、水10に対する海洋構造物50の電位を生成する電源電流を提供するように配置されている。負荷装置100は、海洋構造物に配置されており、水10に接触している。負荷装置は、負荷装置から水中に延びた電極130と、給電ノード120と、負荷20とを含む。負荷は、電極130と給電ノード120との間に結合されており、電源から負荷電流を得るように配置されている。
【0048】
電源は、海洋構造物に接続された第1の極性部1bと、伝導体装置110、例えば、電力線を介して給電ノードに接続されるための第2の極性部1aとを含む。様々な実施形態において、電源からの電源電流は、第1の極性部から海洋構造物に、及び、構造物の表面から水を介して電極に伝導される。続いて、負荷装置において、電源電流が電極から、結合回路と負荷とを介して、給電ノードに伝導される。最後に、電源電流が給電ノードから、ガルバニック接続を介して、電源の第2の極性部に伝導される。ガルバニック接続は、任意の絶縁された伝導体、例えば、電力線、電力ストリップ、ケーブル、又は、任意のさらなる伝導体装置により構成される。
図1の例において、電極及び給電ノードに対する負荷の結合は、直接的な有線接続体2a、2cとして示される。負荷装置における結合は、電源電流を使用して負荷電流を提供するように配置されている。様々な他の結合回路が想定され、後で説明される。電源は、ICCPのための印加電流と、負荷に給電するための負荷電流とを生成するための電源電圧を提供するように構成されている。例えば、電源電圧は、
図4を参照して後で説明されるように、印加電流を生成するDCオフセットと、負荷に給電するAC成分とを含む。実際には、電源は、AC及び/又はDC成分を生成するための独立したユニット、例えば、AC電源から独立してDC成分を提供する整流器を含み、場合によっては、総電力の制御及び/又は測定のためのさらなる電子要素を含む。
【0049】
本例において、負荷は、電気伝導媒体を構成する水10、例えば、汚損生物を含有する海水にさらされた海洋構造物50の表面30の防汚のための光源20である。負荷装置100は、破線により示されるようにキャリア4を備える。伝導体装置110が給電ノード120を電源の第2の極性部1aに接続することが示される。キャリアは、水を向いた前面102と、海洋構造物の表面30を少なくとも部分的にするカバーする後面101とを含む。負荷20がキャリアに埋設されていること、及び、電源1から電源電流を受け取るために給電ノード120と電極130との間に結合されていることが示される。電極130は、前面101に位置し、伝導体2cを介して負荷に接続されている。前電極130は、水10中に延びて電気伝導媒体を形成する。給電ノード120は、後面に位置しており、伝導体2aを介して負荷に接続されている。
【0050】
伝導体装置110は、電源線1aを介して電源1の極性部に接続されている。例えば、伝導体装置は、金属ストリップ、格子若しくはメッシュ、又は、海洋構造物の表面にわたって分布して電源に接続された別の形態の絶縁された伝導体を含む。電源の他方の極性部は、液体中に浸された伝導部を含む海洋構造物自体、例えば、金属の船の船殻(の部分)に結合されている。
【0051】
キャリアは光学媒体を備え、シート形態に形作られる。光学媒体の前面は出射面を構成し、キャリアの後面に対して実質的に平面であり、表面は互いに実質的に平行に広がっている。本図は、光学媒体の一部、光学媒体に埋設された負荷を構成するLED、及び、光学媒体の後面付近に存在するミラー40の断面図を概略的に示す。光ビームの取り得る経路は矢印により概略的に示される。光源は、紫外光を出射するように適応され、例えば、ここまでのセクションにおいて説明されるようなUV-C LEDである。光学媒体は、光源から出る矢印により示されるように、光の少なくとも一部が光学媒体の層において内部で伝搬及び反射しながら、光学媒体を通して配光することを可能にする。本例では、1つの光源が示され、及び説明される。実際には、負荷装置は、単一の光学媒体、複数の光源、及び、対応する関係する複数のミラーを備える。ミラーの各々は、光源のうちの1つ又は複数に電気的に結合される。
【0052】
ミラーは給電ノードを構成し、導電性でありリード線2aにより負荷に電気的に結合されている。例えば、ミラーは、反射性であり伝導性の金属の薄い金属層である。ミラーの少なくとも一部は、散乱層である。
【0053】
実際には、負荷装置は、複数の負荷、例えば、複数の光源及び関係する電極のパターンを含む。複数のミラーが、出射面から一様な光の出射を実質的に提供しながら、より広いエリアをカバーする。このような装置において、電極は、複数の負荷により共有される。
【0054】
図2は、負荷にも給電するICCPシステムの第2の実施形態を示す。本システムは、電源201と負荷装置200とを含む。電源は、AC波形生成器を含み、印加電流カソード防食のために水10に対する海洋構造物50の電位を生成する電源電流を提供するように配置されている。例えば、海洋構造物は、船の外部船殻、プロペラ、かじ、アンカーなどを含む。負荷装置200は、海洋構造物に配置されており、水10に接触している。負荷装置は、給電ノード220、負荷225、及び、例えばPtから作られた少なくとも1つの電極230を含む。電極は、負荷装置から水中に延びるアノードを構成する。電極と海洋構造物50との間に共通の(海)水伝導路が形成される。負荷は、電極230と給電ノード220との間に結合されており、本例ではGraetz型のブリッジ整流器である整流器回路235を介して、電源から負荷電流を得るように配置されている。
【0055】
電源は、海洋構造物50に接続された第1の極性部202と、例えば、コネクタ要素を介して負荷装置における給電ノードに接続された絶縁された金属ストリップの電力ストリップ装置といった伝導体装置210を介して給電ノードに接続されるための第2の極性部203とを含む。実際には、伝導体装置は、例えば、コファダムとしても知られる船の船殻のフィードスルーを介して、海洋構造物の外部を通ることを必要とする。
【0056】
電源からの電源電流は、第1の極性部から海洋構造物に、及び、構造物の表面から水を介して電極230に伝導される。続いて、負荷装置において、電源電流は、電極から、整流器回路及び負荷を介して、給電ノード220に伝導される。最後に、電源電流は、給電ノードから、伝導体装置を介して、電源の第2の極性部203に伝導される。
【0057】
図2における例は、塗装されるか、又は、部分的に非保護状態にされる船の外部船殻に搭載又は接着された2つのLEDストリップ又はセクションを示す。複数のLED又はストリップの各セットは、共通の海水戻りを形成する少なくとも1つの海水に接触したアノードと、共通の電源ノードとを含む。海水は、海洋構造物50の非保護金属エリア、例えば、船の船殻の部分、プロペラ若しくはかじ、又は、海洋構造物の海水中に沈められた他の金属領域(例えば、バウスラスタートンネル)に共通の電気伝導路を提供する。効果的に、送信器から、船殻、かき傷、アンカー、プロペラ、及び、他の短絡部に向けて、どのように電流が戻るように流れるかは問題とならない。要素は、キャリア、例えば、シリコーンエンクロージャに埋設される。より多くの海水アノード、及び、より大きな表面にわたる配光が、より均一な防食と、より低い船のeシグネチャを提供する。
【0058】
図2において、負荷装置における結合は、次のように、電源電流を使用して負荷電流を提供するように配置されている。電源電流の任意のDC又はAC成分は、整流された後、本例ではLEDである負荷に伝導される。DC成分は、ICCP保護のための電流を提供し、ICCPに必要な(基準電極に対して)約0.8から0.9ボルトDCの電位を生成するように制御される。船殻電位を測定するために基準が必要とされ、この基準に対してその電位が測定される。この電極は、いわゆる基準電極である。基準電極の電位は化学的な組成によって決まり、異なる化学物質及び電極材料の様々な反応が存在する。海水は塩であり、塩素を含有し、ほぼ一定の組成をもち、銀/塩化銀の基準電極が最適である。さらなる詳細は、https://www.corrosionpedia.com/an-overview-of-cathodic-protection-potential-measurement/2/2494.1を参照されたい。
【0059】
AC成分は整流され、従って、負荷電流を提供する。本例において、総負荷電流は、DC成分と整流されたAC成分との和である。電気化学的状態に対する正味の寄与を避けるために、負荷装置は、20kHzから200kHzの比較的高い周波数におけるACを使用して動作させられる。限界は、水の電気分解におけるガス形成の速度により下端において決定され、従って、実際には、少なくとも20kHzより高く、好ましくは約100kHzである。
【0060】
干渉に関しては、上限が、保護される船又は構造物の長さに基づいて決定される。無線送信を防止するために、生成器信号の波長は、船の長さの約1/10未満でなければならない。例えば、100kHzは、空気中で3000mの波長と言い換えられる。負荷装置は、約2の誘電率をもつシリコーンに埋設される。従って、効果的には、この波長は、最大150mの長さの船に適している。船尾及び船首コファダムを含めると、300mの長さであり得る。船が75mの長さである場合、200kHzが使用される。電力レベル及び周波数にともなって生成器のコストが上昇するので、より低い周波数、例えば、100kHzを採用することが好ましい。さらに放送又は他の送信の目的のために確保されていない周波数、すなわち、自由に使用される周波数が選択される。
【0061】
実際、高周波においても電気化学的状態が発生するが、周波数が十分高く、かつ、波形が対称である場合、高周波に起因して電極において発生する電気化学的状態に対する正味の寄与がなく、正味の寄与は、残りの化学的効果を意味する。例えば、DCバイアスによる正味のDCオフセット、又は非対称な波形といった任意の非対称性が導入される場合、正味の電気化学的状態が両方の電極において発生する。従って、電気化学的状態自体は、ガス形成又は蓄積があることを意味しない。DCに対して残りの効果が存在し、一方の電極がガス形成を示すのに対し、他方は固体の蓄積を示す。塩を含む海の海洋環境では、蓄積は石灰質である。この蓄積は、高周波ACに起因して形成されるのではなく、この蓄積は、ICCPのDC成分に起因して形成される。電気化学的状態に対する正味の寄与を避けることに関するさらなる説明は、例えば、電気化学的状態に関係した周波数及びパルス形状について説明した文献[3]に見られる。
【0062】
効果的には、AC成分を介してLEDを駆動することは、ICCPとLEDとの独立した制御を可能にする。例えば、LEDに対する波形が対称である場合、ICCPに対する正味の電流の寄与がなく、独立したDCオフセット電流がICCPのために提供され得る。代替的に、LEDが非対称なAC波形を使用して駆動される場合、独立したDCオフセットは省略される。
【0063】
一実施形態において、負荷に必要な電流は、ICCPに必要な電流と概ね等しいか、又は、ICCPに必要な電流より小さいものである。加えて、負荷装置は、電極と給電ノードとの間において任意の過剰な供給電力を伝達する電源回路を含む。過剰な電力は、負荷のために必要とされない電源電流の部分を意味するとともに、有用な電源電流の部分が、負荷電流を提供するために負荷を介して伝導される。従って、電源回路は、過電流保護の機能をもつ。例えば、電源回路は、電極と給電ノードとの間において電源電流の大幅な部分を直接伝達する制御可能なバイパス回路、例えば、制御されるFET半導体スイッチを含む。図中、電源回路は、負荷にかかる電圧が所定の最大値を上回ったときに電源電流の一部を伝導する保護ダイオード250により形成されている。特に、電源回路は、電極と給電ノードとの間において電源電流の一部を伝達するためのツェナーダイオードを備える。さらに、LEDが故障した場合、ICCP保護は、バイパスを提供する電源回路により依然として持続され得る。実際には、このようなフェイルセーフ機能は、重要な特徴である。
【0064】
実用的な実施形態では、また、正常な動作ICCP電流が負荷電流未満であっても、上述の電源回路が適用される。例えば、船のコーティングが大幅に損傷を受けたとき、ICCP電流の要求が非常に高まる。電源回路が負荷のための過電流保護として機能するので、この場合、ICCP制御ユニットが実際にICCP電流を増やす。
【0065】
多くの種類の負荷に対して、必要な電流は、ICCPのための電流より大幅に大きなものである。このような負荷電流がAC成分を介して提供されるとともに、負荷は、AC電流を直接、又は、整流器を追加することにより使用することができる。電源は、パルス、例えば、正及び負のパルスのシーケンスによりAC成分を生成する。DC成分は、DCオフセット及び対称なAC波、又は、パルスシーケンスにより生成される。さらに、DC成分は、例えば、高さ、幅、時間制御された、周期的な、又はそれらの任意の組み合わせのパルス変調により達成される。
【0066】
一実施形態において、ICCPのためのDC成分は、電源電圧の正及び負のパルスにおける非対称性により提供される。非対称性は、それぞれのパルスのパルス幅、及び/又は、パルス形状を変調することにより達成される。その結果、海洋構造物が充電及び放電され、非対称性に起因して正味の結果として得られる充電量をもつ。
【0067】
さらなる一実施形態において、電源は、あるインターバルで、DC成分及び/又は交流成分を無効化するように、及び、海洋構造物の電位を測定するように配置される。船殻自体が電位を提供する場合に限り、船殻電位の測定が行われる。船は、必要な電位まで常に充電されなければならない浮遊電池と解釈される。電位が目標未満である場合、DC成分が大きくされ、逆も同様である。
【0068】
さらなる一実施形態において、ICCPに必要な電流がICCPインターバルにおいて供給されるとともに、負荷に必要な電流は、負荷インターバルにおいて供給される。負荷機能とICCP機能との両方を実質的に独立して、及び断続的に制御するためにICCP及び負荷インターバルが必要に応じて繰り返される。例えば、短いインターバルにおいてUV光源を一時的にスイッチオフすることは、防汚を妨げない。
【0069】
さらなる一実施形態において、測定インターバルは、DC成分が変化させられるか否かを検出するために、規則的な時点においてこのようなシーケンスに挿入される。さらに、測定は、DC成分及び/又は交流成分と測定との干渉を減らすために、特定のインターバル中に実行される。DC成分は、例えば、規則的な時点におけるこのような測定に基づいて断続的に調節される実質的に一定のDC電流成分により構成されることに留意されたい。実際には、大きな海洋構造物は、充電及び放電する大きな電池にある程度類似した振る舞いをし、この充電及び放電は比較的遅い現象である。代替的に、電位の測定は、連続的に、例えば、測定値を平均化しながら実施される。
【0070】
任意選択的に、キャリアは、タイルとして形作られ、負荷のうちの複数を備える。負荷は、相互接続された給電ノードを含む。複数のキャリア、例えば、防汚層をタイル状に並べた場合、伝導体装置は、タイル間に接続されるさらなる配線を含む。この目的において、タイルの層の下方において、伝導体装置は、この伝導体層の上の防汚タイルの給電ノードに局所的にガルバニック的に結合された配線メッシュ、魚の骨状、又は同様のパターンの独立した層を含む。
【0071】
代替的に、タイルの下方の層における局所相互接続パッチのグリッドは、タイルにおける相補的部分と接続するために使用され得る。例えば、負荷装置は、隣接したタイルを相互接続するための、タイルの縁部に対応したコネクタ要素を含む。キャリアが縁部にコネクタ要素を備えるとともに、伝導体装置は、縁部に対応した位置に相補的コネクタ要素を含む。
【0072】
図3は、ガルバニック前電極を含む負荷装置の第3の例を示す。本例において、負荷は、電極と黒色のドットとして示される給電ノードとの間に結合された防汚光を出射するための逆平行UV-C LEDの集合325である。負荷装置は、破線により示されるようなキャリア300と、コネクタ320に結合された伝導体として示される伝導体装置310とを備える。実用的な実施形態では、伝導体装置は、1つ又は複数のキャリアの多数のコネクタ要素に結合するための、海洋構造物の表面にわたって分布したパターンで配置された金属伝導体を含む。コネクタ要素は、負荷装置の後側及び/又は縁部に位置する。伝導体装置は、リード線を電源の一方の極性部に接続するように構成された、及び、多数のコネクタ要素に結合するために海洋構造物の表面にわたってリード線を分離するための、及び分布させるための多リード線ケーブルを含む。代替的に、伝導体装置は、多数のキャリアにおける多数のコネクタ要素に結合するために、海洋構造物の表面にわたって配線メッシュを分布させるために構造化された配線メッシュを含む。コネクタ要素は、金属伝導体に対するガルバニック結合のために配置される。
【0073】
負荷装置は、
図2に示される例と同様であり、液体10中に延びた配線電極により構成された、例えば、Pt/Tiから作られた電極330を含む。このように、電極は、海水を介した電源301までの伝導電気接続体を構成する。
【0074】
負荷に給電することは、海洋構造物に設置されるICCPシステムに組み合わされる。ICCPは、電源301又は独立したICCP電源から、DC電流を使用して独立して給電される。過電流状況及び電気化学的状態を避けるために、負荷装置は、比較的高い周波数におけるACを使用して動作させられるのに対し、ICCPに関係した部分はDCで動作する。従って、依然として同じ配線接続されたインフラストラクチャーを使用しながら、負荷装置及びICCPにわたる独立した制御が可能であり、このことがコストを下げる。LEDの給電のために選択された高周波は、LEDに対するAC電流により電気化学的状態が発生することを避ける。その一方で、ICCPシステムは、LEDを介して流れる小さな電流を必要とするだけである。従って、ICCP電流は防汚のためのUVC LED出力に大幅に影響を与えることはない。有益に、ICCP構造物は、防食の信頼性を改善する、海水中に延びた送信器(電極330)により構成されたアノードの分布した集合を備える。さらに、非常に高密度のICCP電流を伝導するいくつかの別々のアノードではなく、小さなICCP電流を伝導する複数のアノードが船殻にわたって分布することにより、船舶の電気的な、及び磁気的なシグネチャを減らす。
【0075】
損傷を受けたときの電気的な安全性及び継続した動作のために、伝導体装置における共通電源線は、冗長で、十分に絶縁されており、ヒューズ付きとされる。電源線の損傷の場合、1つ又は複数の電流に制限のない短絡が海水に向かって、従って、かじ及び/又はプロペラ(シャフト)に、又は直接船殻に発生する。冗長な、及び/又はヒューズ付きの電源線が、次に、無効化され、例えば、伝導体装置の電源線から接続解除される。例えば、複数の負荷を含むキャリアは、コネクタ要素を介した、伝導体装置の異なる部分への複数の接続体をさらに含む。このような部品のうちのいくつかが無効化されたとき、伝導体装置の他の部分を介して、又は、他のキャリアへの1つ又は複数のループスルー接続体を介して依然として電力が提供される。ループスルーは、内側の、又は、他のタイルに向かういくつかの接続体が壊れた状態で、タイルのうちの大部分に対する電気接続を維持するための方法を提供する。サポート層におけるメッシュ配線の部分が壊れた場合に、同様の冗長性が発生する。しかし、損傷は、さらに、主給電リード線と海水又は船殻との間に直接的な電気接続をもたらす。この場合、電流制限又はヒューズアプローチが提案される。
【0076】
図4は、電源の出力電圧を示す。概略
図400において、Y軸に沿った縦方向に電源電圧が示され、X軸に沿って水平に時間が示される。出力電圧は、
図1、
図2、又は
図3に示される電源1、201、301により生成される。
図4は、対称な正弦波としてのAC成分410と、ICCPをもたらす定電圧DCオフセットとしてのDC成分420とを示す。正弦波の周波数は、約100kHzである。
【0077】
本発明はここまでに説明される例に限定されず、そのいくつかの修正例及び変形例が考えられることが当業者に明らかとなる。本発明が図及び説明において詳細に例示及び説明されるが、このような例示及び説明は単なる例示又は一例とみなされ限定とはみなされない。本発明は、開示される実施形態に限定されない。図面は概略図であり、本発明を理解するために必要とされない詳細は省略される場合があり、及び一定の縮尺とは限らない。
【0078】
図面、説明、及び添付の特許請求の範囲の考察により、請求項に記載された発明を実施するときに、開示される実施形態の変形例が当業者により理解及び実施され得る。特許請求の範囲において、「備える(含む、有する、もつ)」という用語は、他のステップも要素も排除せず、英語の「a」又は「an」という不定冠詞に対応した表現は、複数を排除しない。本明細書において使用される「備える(含む、有する、もつ)」という用語は、「からなる」という用語を内包すると当業者により理解される。従って、「備える(含む、有する、もつ)」という用語は、一実施形態に関連して「からなる」を意味する場合があるが、別の一実施形態において「少なくとも規定の種及び任意選択的に1つ又は複数の他の種を含有/を含む」ことを意味する場合がある。特許請求の範囲における参照符号は、いずれも本発明の範囲を限定するように解釈されてはならない。
【0079】
特定の実施形態に対して、又は特定の実施形態に関係して説明される要素及び態様は、明示的に別段の記載がない限り他の実施形態の要素及び態様と適切に組み合わされる。従って、単に特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているということが、利点を得るためにこれらの手段の組み合わせが使用不可能なことを示すわけではない。
【0080】
最後に、上述のシステムの使用、特に、汚損生物を含有する汚損液体に浸されたときの露出された表面の防汚のための海洋構造物の露出された表面に設置された負荷装置の使用が予見される。従って、本発明による負荷装置は、船舶の船殻に設けられる。露出された表面の他の例として、箱形冷却器の外面、海中海洋機器の表面、船舶のバラストタンクなどの貯水容器の内壁、及び淡水化プラントにおけるフィルタシステムのフィルタ面が挙げられる。
【0081】
要約すると、ICCPシステムは、海洋構造物の印加電流カソード防食を提供し、海洋構造物に配置された、及び水に接触した負荷装置における負荷に給電する。電源は、海洋構造物の電位を生成する電源電流を提供する。負荷装置は、水を介して電源電流を伝達するための、負荷装置から水中に延びるように配置された電極を含む。負荷は、電極と給電ノードとの間に結合される。電源は、海洋構造物に、及び給電ノードに接続される。負荷装置は、電源電流を使用して負荷に電力を提供するように配置される。加えて電源電圧は、高周波におけるAC成分を含む。負荷は、防汚光を出射するためのUV-C LEDである。
【0082】
参考文献:
[1]「The 10 most frequently asked questions about corrosion」、David Moran著、Corrintec Ltd(International seminar for the construction,management and operation of luxury yachts;Project 2002-Amsterdam - Holland 2002において発表された論文)
[2]「Low Signature Impressed Current Cathodic Protection - New Developments - Future Concepts」Barry Torrance著、Aish Technologies Limited、Poole UK(「Underwater Defence Technology Europe」、Amsterdam、2005年6月、及び、「Recent Advances in Cathodic Protection」、University of Manchester、2006年2月、において発表された論文)
[3]「Transient nanobubbles in short-time electrolysis」、Vitaly B Svetovoy著、Remco G P Sanders and Miko C Elwenspoek;Journal of Physics:Condensed Matter 25(18.04.2013)