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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】熱源水制御方法及び熱源水制御装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/85 20180101AFI20220128BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20220128BHJP
   F24F 140/12 20180101ALN20220128BHJP
   F24F 140/20 20180101ALN20220128BHJP
   F24F 110/12 20180101ALN20220128BHJP
   F24F 110/22 20180101ALN20220128BHJP
【FI】
F24F11/85
F24F11/46
F24F140:12
F24F140:20
F24F110:12
F24F110:22
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020202987
(22)【出願日】2020-12-07
(62)【分割の表示】P 2019503078の分割
【原出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2021036197
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2021-01-04
(31)【優先権主張番号】P 2017039904
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 徳臣
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
(72)【発明者】
【氏名】松本 勇司
(72)【発明者】
【氏名】築山 誠二
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-242001(JP,A)
【文献】特開2017-101907(JP,A)
【文献】特開2002-213802(JP,A)
【文献】特開2009-236465(JP,A)
【文献】特開2013-204833(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052040(WO,A1)
【文献】特開2003-262384(JP,A)
【文献】特開2010-270967(JP,A)
【文献】特開2014-129938(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0033158(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/85
F24F 11/46
F24F 140/12
F24F 140/20
F24F 110/12
F24F 110/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源水制御装置が、
熱源機から複数の利用側熱負荷に対して送水される熱源水の送水差圧を取得する送水差圧取得ステップと、
それぞれの利用側熱負荷に設けられ、前記利用側熱負荷に供給される前記熱源水の供給量を調節するバルブの中から少なくとも1つのバルブの開度を取得する開度取得ステップと、
前記送水差圧取得ステップにおいて取得された前記送水差圧と、前記開度取得ステップにおいて取得された前記開度とに基づき、前記開度を目標値にするための前記送水差圧の目標値である目標送水差圧を算出する目標送水差圧算出ステップと、
前記目標送水差圧算出ステップにおいて算出された前記目標送水差圧の中で最大値となる最大送水差圧に基づき、前記送水差圧を制御する送水差圧制御ステップと
前記熱源水の送水温度と前記熱源水を送水するための送水動力との関係を示す送水動力情報を算出する送水動力算出ステップと、
を実行し、
前記送水動力算出ステップにおいて、
それぞれの前記利用側熱負荷における前記熱源水の入口温度と出口温度を取得して、前記入口温度と前記出口温度の水温差を算出する水温差算出ステップと、
それぞれの前記利用側熱負荷に供給される前記熱源水の流量を取得する流量取得ステップと、
前記流量取得ステップにおいて取得された前記流量と、前記水温差算出ステップにおいて算出された前記水温差に基づき、それぞれの前記利用側熱負荷の負荷率を算出する負荷率算出ステップと、
前記負荷率算出ステップにおいて算出された前記負荷率と、負荷率の変化に対する前記水温差の変化量で示される前記利用側熱負荷を含む利用側機器の特性を示す特性情報と、前記熱源水の送水温度の変化量とに基づき、それぞれの前記利用側熱負荷における熱交換量を一定にしたときの前記流量の変化量を算出し、全ての前記利用側熱負荷における前記流量の変化量を合計して前記熱源水の送水温度を変化させたときに必要となる送水量の変化量を算出する、送水量算出ステップと、を実行する、
熱源水制御方法。
【請求項2】
前記熱源水制御装置が、前記バルブの入口における熱源水の圧力と、前記バルブの出口における熱源水の圧力との差であるバルブ差圧を取得するバルブ差圧取得ステップをさらに有し、
前記目標送水差圧算出ステップにおいて、前記バルブのレンジアビリティと前記バルブの流量特性と前記バルブ差圧とにさらに基づき、前記目標送水差圧を算出する、請求項1に記載の熱源水制御方法。
【請求項3】
前記熱源水制御装置が、
前記熱源水の送水温度と前記熱源水を生成するための生成動力との関係を示す生成動力情報を算出する生成動力算出ステップと、
記生成動力算出ステップにおいて算出された生成動力情報と、前記送水動力算出ステップにおいて算出された送水動力情報とに基づき、前記生成動力と前記送水動力の合計が最小となる前記送水温度を算出する送水温度算出ステップと、
前記送水温度算出ステップにおいて算出された前記送水温度に基づき、前記熱源水の生成動力と送水動力とを制御する、動力制御ステップと
をさらに実行する、請求項1又は2に記載の熱源水制御方法。
【請求項4】
前記熱源水制御装置が、
前記送水動力算出ステップにおいて、前記最大送水差圧と、前記送水量の変化とに基づき前記生成動力情報を算出する、請求項3に記載の熱源水制御方法。
【請求項5】
前記熱源水制御装置が、前記送水動力算出ステップにおいて、
それぞれの前記利用側熱負荷における前記熱源水の入口温度と出口温度を取得して、前記入口温度と前記出口温度の水温差を算出する水温差算出ステップと、
前記水温差の変化に対する前記水温差の変化量で示される前記利用側熱負荷を含む利用側機器の特性を示す特性情報と、前記熱源水の送水温度の変化量とに基づき、それぞれの前記利用側熱負荷における熱交換量を一定にしたときのそれぞれの前記利用側熱負荷に供給される前記熱源水の流量の変化量を算出し、全ての前記利用側熱負荷における前記流量の変化量を合計して前記送水量の変化量を算出する、送水量算出ステップをさらに実行する、請求項4に記載の熱源水制御方法。
【請求項6】
前記熱源水制御装置が、
前記送水温度算出ステップにおいて、前記水温差が下限値より低い水温を前記送水温度として算出しない、請求項に記載の熱源水制御方法。
【請求項7】
前記熱源水制御装置が、
前記送水温度算出ステップにおいて、
前記水温差の変化に対する前記水温差の変化量で示される前記利用側機器の特性を示す特性情報と、前記送水温度算出ステップにおいて算出された送水温度に基づき前記下限値を算出する、請求項に記載の熱源水制御方法。
【請求項8】
前記熱源水制御装置が、
前記送水温度算出ステップにおいて、冷房時における外気露点温度より高い水温を前記送水温度として算出しない、請求項3からのいずれか一項に記載の熱源水制御方法。
【請求項9】
前記熱源水制御装置が、
前記開度取得ステップにおいて、前記利用側熱負荷で熱交換されて室内機に送風される空気の送風温度に基づき調節される前記開度を取得する、請求項1からのいずれか一項に記載の熱源水制御方法。
【請求項10】
前記熱源水制御装置が、
前記開度取得ステップにおいて、前記利用側熱負荷における前記熱源水の入口温度と出口温度の水温差と、前記利用側熱負荷における熱交換量に基づき調節される前記開度を取得する、請求項1からのいずれか一項に記載の熱源水制御方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の熱源水制御方法により前記熱源水の送水又は生成を制御する、熱源水制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、熱源水制御方法及び熱源水制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱源機で生成された熱源水(冷水あるいは温水)を複数のエアハンドリングユニット(以下、「エアハン」という。)のような空調機器や温度管理を必要とする産業機械等の利用側機器にポンプで送水する熱源システムがある。エアハンは空気調和機の一形態であって、外部の熱源機から供給される熱源水を用いて、空気の温度又は湿度を調節する。エアハンは、利用側熱負荷である熱交換器と送風機とを有し、熱源水と熱交換された空気を空調対象に設置された室内機に対して送風機で送風する。熱源機からエアハンに供給された熱源水は、熱交換器において空気と熱交換された後、熱源機に還流される。
【0003】
エアハンの負荷状態は、外気温や室内機の稼働状況等によって変化するため、エアハンで熱交換された熱源水が熱源機に還流されたときの水温や流量はエアハンの負荷状態によって変化する。熱源機は、エアハン等の利用側機器に送水する熱源水の水量(以下、「送水量」という。)を安定させるために、利用側機器の負荷状態が変化しても熱源水を送水する水圧である送水圧を一定に保つ制御を行う場合がある。また、熱源機は、利用側機器に送水する熱源水の水温(以下、「送水温度」という。)を安定させるために、利用側機器の負荷状態が変化しても送水温度を一定に保つ制御を行う場合がある。
【0004】
しかし、利用側機器の負荷状態は、熱源機において検知することができないため、熱源機は、送水圧や送水温度にある程度の余裕を持って運転する場合がある。この場合、利用側機器の実際の負荷状態に比べて必要以上の送水圧や送水温度の熱源水を生成して送水し、必要以上の動力を発生させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-224182号公報
【文献】特開2014-066389号公報
【文献】特開平11-063631号公報
【文献】特開2003-262384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、熱源水を生成して送水するときの動力を削減することができる、熱源水制御方法及び熱源水制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の熱源水制御方法は、熱源水制御装置が、送水差圧取得ステップと、開度取得ステップと、目標送水差圧算出ステップと、送水差圧制御ステップと、送水動力算出ステップとを実行する。送水差圧取得ステップは、熱源機から複数の利用側熱負荷に対して送水される熱源水の送水差圧を取得する。開度取得ステップは、それぞれの利用側熱負荷に設けられ、利用側熱負荷に供給される熱源水の供給量を調節するバルブの中から少なくとも1つのバルブの開度を取得する。目標送水差圧算出ステップは、送水差圧取得ステップにおいて取得された送水差圧と、開度取得ステップにおいて取得された開度とに基づき、開度を目標値にするための送水差圧の目標値である目標送水差圧を算出する。送水圧制御ステップは、目標送水差圧算出ステップにおいて算出された目標送水差圧の中で最大値となる最大送水差圧に基づき、送水差圧を制御する。送水動力算出ステップは、前記熱源水の送水温度と前記熱源水を送水するための送水動力との関係を示す送水動力情報を算出する。前記送水動力算出ステップは、水温差算出ステップと、流量取得ステップと、負荷率算出ステップと、送水量算出ステップと、を実行する。水温差算出ステップは、それぞれの前記利用側熱負荷における前記熱源水の入口温度と出口温度を取得して、前記入口温度と前記出口温度の水温差を算出する。流量取得ステップは、それぞれの前記利用側熱負荷に供給される前記熱源水の流量を取得する。負荷率算出ステップは、前記流量取得ステップにおいて取得された前記流量と、前記水温差算出ステップにおいて算出された前記水温差に基づき、それぞれの前記利用側熱負荷の負荷率を算出する。送水量算出ステップは、前記負荷率算出ステップにおいて算出された前記負荷率と、負荷率の変化に対する前記水温差の変化量で示される前記利用側熱負荷を含む利用側機器の特性を示す特性情報と、前記熱源水の送水温度の変化量とに基づき、それぞれの前記利用側熱負荷における熱交換量を一定にしたときの前記流量の変化量を算出し、全ての前記利用側熱負荷における前記流量の変化量を合計して前記熱源水の送水温度を変化させたときに必要となる送水量の変化量を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の熱源水制御システムの一例を示す図。
図2】負荷側の第1実施形態の一例を示す図。
図3】負荷側の第2実施形態の一例を示す図。
図4】実施形態の熱源水制御装置のソフトウェアの構成の一例を示す図。
図5】実施形態の熱源水制御装置のハードウェアの構成の一例を示す図。
図6】実施形態の熱源水制御装置における目標水圧算出動作の一例を示すフローチャート。
図7】実施形態の熱源水制御装置における送水温度算出動作の一例を示すフローチャート。
図8】実施形態の熱源水制御装置における送水量算出動作の第1の例を示すフローチャート。
図9】実施形態の熱源水制御装置における送水量算出動作の第2の例を示すフローチャート。
図10】実施形態の熱源水制御装置における動力制御動作の一例を示すフローチャート。
図11A】実施形態のエアハンの第1の特性情報の一例を示す図。
図11B】実施形態のエアハンの第1の特性情報の一例を示す図。
図11C】実施形態のエアハンの第1の特性情報の一例を示す図。
図12A】実施形態のエアハンの第2の特性情報の一例を示す図。
図12B】実施形態のエアハンの第2の特性情報の一例を示す図。
図12C】実施形態のエアハンの第2の特性情報の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の熱源水制御方法及び熱源水制御装置を、図面を参照して説明する。なお、以下に示す各図において、同一構成については同一の符号を付す。
【0010】
先ず、図1を用いて、実施形態の熱源水制御システムの一例を説明する。
【0011】
図1において、熱源水制御システム1は、熱源水制御装置として使用される中央監視装置10、熱源機12、差圧計13、バイパス弁14、往水温度センサ15、水量計16、還水温度センサ17、利用側機器であるエアハン20、バルブ21、温度計22、指示調節計23を有する。熱源水制御システム1は、複数のエアハン20に対して熱源機12で生成した熱源水を送水する。図1では、エアハン20aとエアハン20bの2台のエアハン20を図示しているが、エアハン20の台数は3台以上であってもよい。バルブ21、温度計22及び指示調節計23は、それぞれのエアハン20毎に設置されている。エアハン20aには、バルブ21a、温度計22a及び指示調節計23aが設置され、エアハン20bには、バルブ21b、温度計22b及び指示調節計23bが設置されている。
【0012】
熱源機12は、例えば、冷凍サイクル装置と一次側ポンプ123を備えたモジュールタイプチリングユニットであって、複数のモジュール120、MC(Main controller)121、GC(Group controller)122を有する。MC121は、熱源機12から送水される熱源水の送水差圧を制御する。送水差圧は、差圧計13で測定される、熱源機から送水される往水と熱源機に還流される還水の差圧である。GC122は、熱源機12から送水される熱源水の水温を制御する。モジュール120は、3台の空気熱交換機に対して1台の一次側ポンプ123を有する。モジュール120は、図示しないコンプレッサによって冷媒を冷却又は加熱して、水との熱交換によって熱源水を生成する。生成する熱源水の水温は、往水温度センサ15において測定される。
【0013】
GC122は、中央監視装置10から指示された熱源水の送水温度と往水温度センサ15において測定された水温に基づき、モジュール120に対して、生成する熱源水の水温を指示する。熱源水の水温は、例えば、冷媒を冷却又は加熱するコンプレッサの回転数や圧縮率を変更することにより、変更することができる。例えば、冷房においては、熱源水を冷却する。冷房において熱源水の水温を低くすると、コンプレッサを駆動する動力が増加する。一方、冷房において熱源水の水温を高くするとコンプレッサを駆動する動力を減少させることができる。ここで、熱源水の送水温度を指示するのはGC122とし、中央監視装置10は、バルブ開度の情報を収集しGC122への情報送信を行うようにしてもよい。
【0014】
MC121は、中央監視装置10から指示された熱源水の送水差圧と差圧計13において測定された差圧に基づき、モジュール120の一次側ポンプ123の回転数を制御する。図1は、複数のモジュール120において、それぞれ一次側ポンプ123が設置され、熱源機12から送水される熱源水の水量は、それぞれ一次側ポンプ123から吐出される熱源水の水量の合計となる。MC121は、熱源機12のそれぞれ一次側ポンプ123の回転数を制御する。例えば、中央監視装置10から指示された熱源水の送水差圧が低い場合、MC121は、一次側ポンプ123の回転数を下げて吐出圧を小さくする。一方、指示された送水差圧が高い場合、MC121は、一次側ポンプ123の回転数を上げて吐出圧を大きくする。また、中央監視装置10から指示された熱源水の送水量が小さい場合、MC121は、一次側ポンプ123の運転台数を減らして送水量を小さくする。一方、指示された送水量が大きい場合、MC121は、一次側ポンプ123の運転台数を増やして送水量を大きくする。なお、MC121は、送水量を一定にさせるポンプの運転をしたり、送水差圧を一定にするポンプの運転をしたりしてもよい。
【0015】
差圧計13は、熱源機12から送水される熱源水(往水)の圧力と、熱源機12に還流される熱源水(還水)の圧力の差圧を測定する。差圧計13で測定される差圧を「送水差圧」という。上述の通り、MC121は差圧計13で測定された送水差圧に基づき一次側ポンプ123の運転を制御する。一次側ポンプ123の運転を制御するために、送水差圧は熱源機12の熱源水の出入口付近において測定される。一方、エアハン20は、熱源機12から離れた場所に設置されるため、熱源機12からエアハン20までの配管抵抗によって圧力低下が発生する。それぞれのエアハン20までの圧力低下は、熱源機12からエアハン20までの配管抵抗によって異なる場合がある。例えば、熱源機12からエアハン20aまでの距離が短い場合、熱源機12からエアハン20aまでの配管抵抗が小さくなるためエアハン20aの供給される熱源水の圧力低下が小さくなる。一方、熱源機12からエアハン20bまでの距離が長い場合、配管抵抗が大きくなるため圧力低下が大きくなる。したがって、それぞれのエアハン20に提供される熱源水の実際の水圧は推定値となる。
【0016】
バイパス弁14は、熱源機12の熱源水の出入口付近において設置されるバイパス配管に流れるバイパス水の流量を調整する。バイパス弁14の開度を大きくするとバイパス水の流量が増加して送水差圧が低下する。一方、バイパス弁14の開度を小さくするとバイパス水の流量が減少して送水差圧の低下が小さくなる。例えば、一次側ポンプ123を定速で運転する場合、ポンプを運転するためには所定の通水量が必要となる。エアハン20の負荷が小さく、エアハン20に供給される熱源水の水量が少ない場合であっても、バイパス水の流量によって一次側ポンプ123の運転に必要な通水量を確保することが可能となる。また、送水差圧が高くなり過ぎた場合、バイパス弁14の開度を増加させることにより、送水差圧を低下させることができる。
【0017】
往水温度センサ15は、熱源機12からエアハン20a及びエアハン20bに送水する熱源水の送水温度を計測する。なお、送水温度は、熱源機12からエアハン20に送水される途中の配管等で変化しないものとする。すなわち、熱源機12から送水される熱源水の水温は、それぞれのエアハン20の入口における水温と同じであるものとする。計測された送水温度は、GC122に入力される。
【0018】
水量計16は、熱源機12からエアハン20に送水された熱源水の送水量を計測する。送水量は、複数のエアハン20に送水された熱源水の水量の合計である。計測された送水量は、MC121およびGC122を経由して中央監視装置10に入力される。
【0019】
還水温度センサ17は、エアハン20から熱源機12に還流される熱源水の還水温度を計測する。送水温度と還水温度の差は、エアハン20における熱交換量によって変化する。計測された還水温度は、GC122に入力される。エアハン20における熱交換量については後述する。エアハン20は、熱源水に対する熱負荷であり、例えばエアハンである。
【0020】
バルブ21は、エアハン20に供給する熱源水の流量をバルブ開度によって調節する。温度計22は、エアハン20の温度を計測する。温度計22は、1又は複数のセンサによって構成することができる。指示調節計23は、温度計22で計測されたエアハン20の温度に基づき、バルブ21のバルブ開度を調節する。バルブ21のバルブ開度は、中央監視装置10に入力されるとともにGC122にも入力される。
【0021】
バルブ21は、バルブ開度の変化によって流量を変化させる。バルブ開度の変化に対する流量の変化の特性をバルブの流量特性という。流量を調節するバルブにおいては、リニア特性あるいはイコールパーセント特性のバルブが用いられる場合が多い。リニア特性とは、バルブ開度に比例して流量が変化する流量特性である。イコールパーセント特性とは、バルブ開度がどの位置で変化しても、流量の変化量が変化前の流量と同じになる特性である。すなわち、イコールパーセント特性においては、流量の変化率が流量に比例する。
【0022】
<負荷側の第1実施形態>
次に、図2を用いて、負荷側の第1実施形態の一例を説明する。負荷側とは、熱源機12で生成された熱源水を利用するエアハン20側の構成である。
【0023】
図2において、エアハン20は、利用側熱負荷である熱交換器201と送風機202を有する。エアハン20は、例えば、エアハンである。エアハン20は、外調機と外調機以外の空調機のいずれも含む。外調機は、熱交換によって外気を調整する。外調機と外調機以外の空調機では、後述する熱交換の特性が異なる。以下の説明では、エアハン20には、外調機を含み、外調機以外の空調機を「CAV(Constant Air Volume)」又は「VAV(Variable Air Volume)」という。CAVは、室温等の条件が変わっても一定風量を維持する。VAVは、室温等の条件によって風量を可変とする。
【0024】
熱交換器201には熱源水が供給される。エアハン20の熱源水の出口側には、バルブ21が設置され、熱源水の水量を調節する。熱交換器201は、熱源水と空気を熱交換する。送風機202は、熱交換された空気を室内機に送風する。
【0025】
センサ111は、バルブ21のバルブ開度を計測する。センサ111は、例えば、バルブ開度に基づき、4-20mAの電流を出力する。センサ111のバルブ開度は、中央監視装置10に出力される。なお、中央監視装置10は、バルブ開度を取得したバルブ21が、リニア特性であるのか、あるいはイコールパーセント特性であるのかの情報を取得できるものとする。例えば、中央監視装置10は、バルブ21の流量特性を予め取得して記憶しておく。
【0026】
センサ112は、バルブ21の入口圧を計測する。センサ112は、計測した入口圧を中央監視装置10に出力する。センサ113は、バルブ21の出口圧を計測する。センサ113は、計測した出口圧を中央監視装置10に出力する。
【0027】
センサ114は、熱源水の入口温度を計測する。センサ115は、熱源水の出口温度を計測する。また、センサ116は、バルブ21における熱源水のバルブ流量を計測する。入口温度は、熱交換器201に供給される熱交換前の熱源水の水温である。出口温度は、熱交換器201において熱交換された後の熱源水の水温である。熱交換器201における熱交換量は、入口温度と出口温度の水温差とバルブ流量によって算出することができる。センサ114は、計測した入口温度を中央監視装置10に出力する。センサ115は、計測した入口温度を中央監視装置10に出力する。センサ116は、計測したバルブ流量を中央監視装置10に出力する。
【0028】
センサ221及びセンサ222は、図1の温度計22の一例である。また、送風温度PID調節計231及び室内温度PID調節計232は、図1の指示調節計23の一例である。センサ221は、室内機に送風する熱交換された空気の送風温度を計測する。センサ221は、計測した送風温度を送風温度PID調節計231に出力する。センサ222は、熱交換器201において熱交換されて送風された空気の、室内機における吸込温度を計測する。センサ222は、計測した吸込温度を室内温度PID調節計232に出力する。
【0029】
室内温度PID調節計232は、センサ222において計測された吸込温度に基づき、送風温度の目標値を算出する。室内温度PID調節計232は、算出した送風温度の目標値を送風温度PID調節計231に出力する。送風温度PID調節計231は、室内温度PID調節計232から取得した送風温度の目標値と、センサ221から取得した送風温度とに基づき、バルブ21のバルブ開度を調節する。バルブ開度を大きくすることにより、熱源水の流量が増加して、熱交換量の増加に伴い送風温度が変化する。
【0030】
熱源水の温度や流量を変化させると、熱交換器201における熱交換によって、例えば5~10分程度で送風温度が変化する。一方、吸込温度が変化するのは、送風ダクトにおける空気の熱容量を考慮すると、熱源水の温度や流量を変化させてから、例えば30~60分後となる。負荷側の第1実施形態においては、センサ221から取得した送風温度を送風温度PID調節計231の調節に使用しているため、バルブ21の開度の調節による応答速度が向上して、制御を安定させることができる。これにより、後述するバルブ開度を入力値とする中央監視装置10の制御を安定させることができ、送水差圧や送水温度のオーバーシュートを防止することで動力を削減することができる。
【0031】
なお、図2においては、室内機が1台の場合を図示したが、1台のエアハン20に対して複数の室内機が接続されて熱交換後の空気が送風されてもよい。室内機が複数台の場合、センサ222は、室内機毎に設置されてもよい。
【0032】
<負荷側の第2実施形態>
次に、図3を用いて、負荷側の第2実施形態の一例を説明する。負荷側の第2実施形態は、バルブ21のバルブ開度の調節方法において、負荷側の第1実施形態と異なる実施形態である。図3において、図2と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0033】
センサ114は、熱交換器における熱源水の入口温度を計測する。センサ115は、熱交換器における熱源水の出口温度を計測する。また、センサ116は、バルブ21における熱源水のバルブ流量を計測する。センサ114は、計測した入口温度を中央監視装置10と流量演算器234に出力する。センサ115は、計測した出口温度を中央監視装置10と流量演算器234に出力する。センサ116は、計測したバルブ流量を中央監視装置10と2方弁流量PID調節計233に出力する。
【0034】
室内温度PID調節計232は、センサ222から取得した室内機における吸込温度に基づき、交換熱量の目標値を算出する。例えば、室内温度PID調節計232は、冷房時に室内機の設定値と吸込温度の差が小さい場合、吸込温度を下げるため、交換熱量の目標値を大きくする。
【0035】
流量演算器234は、室内温度PID調節計232から取得した交換熱量の目標値と、センサ114から取得した入口温度とセンサ115から取得した出口温度の水温差とに基づき、バルブ21を通過する流量の目標値を算出する。流量演算器234は、算出したバルブ21の流量の目標値を2方弁流量PID調節計233に出力する。2方弁流量PID調節計233は、センサ116から取得したバルブ流量と、流量演算器234から取得したバルブ21の流量の目標値に基づき、バルブ21のバルブ開度を調節する。
【0036】
負荷側の第2実施形態は、負荷側の第1実施形態において測定した室内機に送風する空気の送風温度を測定する代わりに、熱交換器における熱源水の出入口の水温差を計測している点で負荷側の第1実施形態と異なる。熱源水の温度や流量を変化させてからの熱交換器の出入口の水温差の変化は、送風温度に比べてさらに応答速度が向上する。このため、バルブ21の開度の調節による応答速度が向上して、制御をさらに安定させることができ、送水差圧や送水温度のオーバーシュートを防止することで動力をさらに削減することができる。
【0037】
なお、図3においても図2と同様に、室内機が1台の場合を図示したが、1台のエアハン20に対して複数の室内機が接続されて熱交換後の空気が送風されてもよい。室内機が複数台の場合、センサ222は、室内機毎に設置されてもよい。
【0038】
次に、図4を用いて、実施形態の熱源水制御装置のソフトウェアの構成を説明する。
【0039】
図4において、中央監視装置10は、送水差圧取得部51、開度取得部52、バルブ差圧取得部53、流量取得部54、目標送水差圧算出部61、生成動力算出部62、送水動力算出部63、水温差算出部64、送水量算出部65、負荷率算出部66、送水温度算出部67、動力制御部71、送水差圧制御部72及び送水温度制御部73の機能を有する。
【0040】
送水差圧取得部51~流量取得部54は、中央監視装置10の外部から所定の情報を取得する機能である。目標送水差圧算出部61~送水温度算出部67は、取得された情報に基づき、所定の演算を実行する機能である。また、動力制御部71~送水温度制御部73は、取得された情報又は実行された演算結果に基づき、中央監視装置10の外部に対して制御を実行する機能である。本実施形態において、これらの各機能は、ソフトウェア(プログラム)を実行することにより実現されるものとして説明する。すなわち、図4は、熱源水制御処理を実行する熱源水制御プログラムの一態様を示している。
【0041】
送水差圧取得部51は、熱源機12から複数の熱交換器201に対して送水される熱源水の送水差圧を取得する。送水差圧取得部51は、差圧計13から送水差圧を取得する。なお、以下で説明する中央監視装置10において取得される「送水差圧」、「開度」、又は「バルブ差圧」等は、圧力や開度を電気データとして表した情報のことを言う。例えば、「送水差圧」あるいは「開度」は、圧力あるいは百分率の情報を4-20mAの電流や0-5Vの電圧の情報に変換した情報である。これらの情報の取得は、例えば、常時、又は所定の時間間隔で取得することができる。取得したこれらの情報は、図示しない記憶部に記憶することができる。
【0042】
開度取得部52は、バルブ21の開度を取得する。バルブ21の開度は、例えば0-100%の百分率であらわされる。バルブ21は、それぞれのエアハン20の熱交換器201の熱源水の出口側に設けられる。バルブ21は、開度によって熱交換器201に供給する熱源水の水量を調節する。開度取得部52は、それぞれの熱交換器に設けられたバルブ21の中から少なくとも1つのバルブの開度を取得する。例えば、エアハンが複数設置されて、熱交換器201が複数ある場合、開度取得部52は、全てのバルブ21の開度を取得する。また、開度取得部52は、代表となるバルブ21の開度を取得してもよい。例えば、負荷状態が近似しているエアハンが複数存在する場合、開度取得部52は、それぞれのエアハンに設置されたバルブ21の中の1つのバルブ21の開度を取得する。また、例えば、複数のバルブ21の内、開度が最大となっているもののみの開度を取得してもよい。
【0043】
バルブ差圧取得部53は、バルブ21の入口と出口の差圧を取得する。バルブ差圧取得部53は、センサ112から取得したバルブ21の入口の圧力とセンサ113から取得したバルブ21の出口の圧力の差から差圧を取得する。差圧は、バルブ21の開度と熱源水の流量によって変化する。例えば、バルブ開度が小さい程又は熱源水の流量が大きい程差圧が大きくなる。ここで、バルブ差圧取得部53は、センサ112およびセンサ113から取得したバルブ21の入口および出口の圧力から算出したバルブ差圧を取得するものに限らず、センサの故障等で圧力を検出できない場合は所定の設定値をバルブ差圧として認識してもよい。この所定の設定値とは、例えば、バルブ21の開度と流量計の検知流量に基づいて算出される値でもよい。
【0044】
目標送水差圧算出部61は、送水差圧取得部51において取得された送水差圧と、開度取得部52において取得されたバルブ21の開度とに基づき、バルブ21の開度を目標値にするための目標送水差圧を算出する。目標送水差圧は、差圧計13から取得される送水差圧の目標値である。目標送水差圧算出部61は、複数のバルブにおける開度を取得したときには、それぞれのバルブにおける目標送水差圧を算出する。目標開度は、例えば、指示調節計23から取得することができる。なお、目標送水差圧算出部61は、予め定められた目標開度において目標送水差圧を算出してもよい。
【0045】
送水差圧制御部72は、目標送水差圧算出部61において算出された目標送水差圧の中で最大値となる最大送水差圧に基づき、送水差圧を制御する。送水差圧の制御は、例えば、一次側ポンプ123の運転台数、ポンプの回転数、又はバイパス弁14の開度を可変とすることにより制御することができる。送水差圧制御部72は、例えば、一次側ポンプ123を駆動するモータの回転数をインバータ等の変速手段によって可変する。
【0046】
熱源機12からエアハン20までの熱源水の配管経路における配管抵抗は、それぞれのエアハン20によって異なる。配管抵抗は、配管経路の設計図に基づき計算することができる。計算された配管抵抗は、例えば配管抵抗曲線として表すことができる。それぞれのエアハンにおける配管抵抗曲線を予め用意することにより、熱源水の流量が変化したときの熱源機12からエアハン20までの圧力損失を得ることができるので、熱源機12から送水するときの目標送水差圧を算出することができる。しかし、配管抵抗曲線を配管距離や配管の分岐等により計算しても、実際の配管経路には、エルボやティー等の配管継手やバルブを含むため、計算値と実測値が乖離してしまう場合が多い。また、詳細な計算をするには労力を要する。したがって、配管抵抗の実測値が計算値に比べて大きくなる場合、エアハンにおいて十分な水圧を得られないおそれがある。一方、熱源機12における送水差圧に余裕を持たせた場合、一次側ポンプ123の運転等において不必要な動力が必要となる。
【0047】
次に、目標送水差圧算出部61における目標送水差圧の算出方法を説明する。目標送水差圧算出部61は、バルブのレンジアビリティとバルブの流量特性とにさらに基づき目標送水差圧を算出する。
【0048】
バルブのレンジアビリティとは、バルブが調節できる最大流量と最小流量の比である。レンジアビリティが高いバルブは、流量を制御できる制御範囲が広くなる。目標送水差圧をバルブの流量特性毎に算出する。
【0049】
<流量特性がイコールパーセント特性である場合>
目標送水差圧算出部61は、先ず、目標差圧偏差dΔPVを式(1)で算出し、次に、目標送水差圧Psを式(2)で算出する。
【0050】
dΔPV=ΔPV{ρ2(σ-σs)-1} ・・・式(1)
(但し、ρ:レンジアビリティ、σ:開度、σs:目標開度、ΔPV:バルブ差圧)
Ps=P+dΔPV ・・・式(2)
(但し、P:前回計算で設定された目標送水差圧Ps)
【0051】
<流量特性がリニア特性である場合>
目標送水差圧算出部61は、先ず、目標差圧偏差dΔPVを式(3)で算出し、次に、目標送水差圧Psを式(2)で算出する。
【0052】
dΔPV=ΔPV[〔{1/ρ+(1-1/ρ)σ}/{1/ρ+(1-1/ρ)σs}〕―1]
・・・式(3)
(但し、ρ:レンジアビリティ、σ:開度、σs:目標開度、ΔPV:バルブ差圧)
Ps=P+dΔPV ・・・式(2)
(但し、P:前回計算で設定された目標送水差圧Ps)
【0053】
本実施形態においては、バルブ21における開度σとバルブ差圧ΔPVを取得して目標送水差圧Psを算出するので、必要十分な送水差圧で一次側ポンプ123の運転等の制御をすることができる。また、目標送水差圧の行き過ぎによるポンプ回転数やバルブ21の開度のハンチングを防止することができる。また、流量特性及びレンジアビリティは、バルブ21の口径(サイズ)に関係なくバルブ21の型式で共通の固定値であるため、目標送水差圧Psの算出が容易になる。
【0054】
生成動力算出部62は、熱源水の送水温度と熱源水を生成するための生成動力との関係を示す生成動力情報を算出する。熱源機12は、例えば、冷凍サイクル装置のコンプレッサによって圧縮/搬送された冷媒を冷却又は加熱して熱源水と熱交換することにより、熱源水を生成する。熱源水を生成するための生成動力は、生成する熱源水の温度と熱源水の流量によって定められる。例えば、冷房においては、熱源水の温度を低くするには熱源水の顕熱の変化が大きくなるので冷却した冷媒からの熱交換量を増加させるために冷媒の冷却が必要となり、生成動力を増加させる。一方、冷房において、熱源水の温度を高くすると熱源水の顕熱の変化が小さくなり生成動力が減少する。生成動力算出部62は、熱源機12において予め用意された熱源水の生成能力に基づき、熱源水の送水温度と熱源水を生成するための生成動力との関係を示す生成動力情報を算出する。送水温度と熱源水を生成するための生成動力との関係は、例えば、横軸を送水温度、縦軸を生成動力とした場合、送水温度と生成動力との関係は、生成する熱源水の顕熱の量の増加に応じて生成動力の増加の割合が大きくなる。
【0055】
送水動力算出部63は、送水温度と熱源水を送水するための送水動力との関係を示す送水動力情報を算出する。送水動力算出部63は、目標送水差圧算出部において算出された最大送水差圧と、熱源水の送水温度を変化させたときに必要となる送水量の変化とに基づき生成動力情報を算出する。
【0056】
送水動力は、送水差圧と送水量の積によって求めることができる。上述の通り、熱源水から熱交換器201において空気に熱交換される熱交換量は、熱交換器201の出入口における水温差と熱交換器に供給される熱源水の水量によって決定される。例えば、熱交換量を一定にする制御を行う場合、水温差が大きくなれば熱源水の水量を減少させ、水温差が小さくなれば熱源水の水量を増加させる。したがって、送水温度によって決定される熱交換器201における熱源水の送水温度差が小さくなると送水量が増加して、送水動力が増加する。一方、送水温度差が大きくなると送水量が減少し、送水動力が減少する。例えば、横軸を送水温度、縦軸を送水動力とした場合、送水温度と送水動力との関係は、送水する熱源水の温度差の増加に応じて送水動力の減少の割合が大きくなる。送水動力算出部63の詳細を以下に説明する。
【0057】
送水動力算出部63は、水温差算出部64、送水量算出部65及び負荷率算出部66を有する。
【0058】
水温差算出部64は、それぞれの熱交換器における熱源水の入口温度と出口温度を取得して、入口温度と出口温度の水温差を算出する。熱交換器における熱源水の入口温度は、センサ114から取得することができる。熱交換器における熱源水の出口温度は、センサ115から取得することができる。水温差算出部64は、取得した入口温度と出口温度から水温差を算出する。上述の通り、熱源水の水温差は、流量一定の場合、熱交換器における熱交換量に比例する。一方、水温差は、熱交換量が一定の場合、流量に反比例する。ここで、上記の他にも、往水温度センサ15と還水温度センサ17から複数の熱交換器の平均水温差を算出し、熱交換器の水温差としてもよい。
【0059】
<水温差-水温差変化量特性を利用した送水量の算出>
送水量算出部65は、水温差の変化に対する水温差の変化量で示される熱交換器を含むエアハンの特性を示す特性情報と、熱源水の送水温度の変化量とに基づき、それぞれの熱交換器における熱交換量を一定にしたときのそれぞれの熱交換器に供給される熱源水の流量の変化量を算出し、全ての熱交換器における流量の変化量を合計して送水量の変化量を算出する。
【0060】
エアハンの特性を示す特性情報は、予め用意されている。特性情報は、例えば、水温差を横軸、水温差の変化量を縦軸にしたグラフで表される情報である。特性情報に基づき、横軸を選択すると、その温度差において、熱源水の温度が1℃変化したときの温度差の変化量を求めることができる。なお、水温差による特性図の具体例は後述する。特性情報は、例えば中央監視装置10の図示しない記憶部に記憶されて、送水量算出部65から読出される。
【0061】
水温差は、熱交換量が一定の場合、流量に反比例する。したがって、水温差を変化させた場合、水温差の変化量が変わると、変化量に比例して流量が変化する。送水量算出部65は、それぞれの熱交換器における、水温差の変化に対する流量の変化量を合計し、送水量を算出する。
【0062】
<負荷率-水温差変化量特性を利用した送水量の算出>
流量取得部54は、それぞれの熱交換器に供給される熱源水の流量をセンサ116から取得する。熱交換器に供給される熱源水の流量は、バルブ21の開度によって調節される。
【0063】
負荷率算出部66は、流量取得部54において取得された流量と、水温差算出部64において算出された水温差に基づき、それぞれの熱交換器の負荷率を算出する。負荷率とは、熱交換器201において熱交換可能な最大熱交換量を100%とした場合の実際の熱交換量である。熱交換器における熱交換量は、水温差と流量の積によって求めることができる。熱交換量は、流量が一定の場合、水温差が大きくなる程大きくなり、水温差が小さくなる程小さくなる。
【0064】
送水量算出部65は、負荷率算出部66において算出された負荷率と、負荷率の変化に対する水温差の変化量で示される熱交換器を含むエアハンドリングユニットの特性を示す特性情報と、熱源水の送水温度の変化量とに基づき、それぞれの熱交換器における熱交換量を一定にしたときの流量の変化量を算出し、全ての熱交換器における流量の変化量を合計して送水量の変化量を算出する。
【0065】
エアハンの特性を示す特性情報は、予め用意されている。特性情報は、例えば、負荷率を横軸、水温差の変化量を縦軸にしたグラフで表される情報である。特性情報に基づき、横軸を選択すると、その負荷率において、熱源水の温度が1℃変化したときの温度差の変化量を求めることができる。なお、負荷率による特性図の具体例は後述する。特性情報は、例えば中央監視装置10の図示しない記憶部に記憶されて、送水量算出部65から読出される。
【0066】
負荷率は、熱交換量が一定の場合、流量に比例する。したがって、負荷率を変化させた場合、水温差の変化量が変わると、変化量に反比例して流量が変化する。送水量算出部65は、それぞれの熱交換器における、水温差の変化に対する流量の変化量を合計し、送水量を算出する。
【0067】
送水温度算出部67は、生成動力算出部62において算出された生成動力情報と、送水動力算出部63において算出された送水動力情報とに基づき、生成動力と送水動力の合計が最小となる送水温度を算出する。冷房において、熱源水の温度が低下すると冷却に要する生成動力は増加し、一方、送水動力は減少する。暖房において、熱源水の温度が上昇すると加熱に要する生成動力は増加し、一方、送水動力は減少する。したがって、生成動力と送水動力を合計した場合、合計値が最小となる送水温度が存在する。送水温度算出部67は、それぞれの送水温度における合計値を算出することにより、合計値が最小となる送水温度を算出(選択)することができる。
【0068】
送水温度算出部67において、水温差が下限値より低い水温を前記送水温度として算出しない。送水温度算出部67において、水温差の変化に対する水温差の変化量で示される熱交換器を含むエアハンドリングユニットの特性を示す特性情報と、送水温度算出部において算出された送水温度に基づき下限値を算出する。水温差の変化量で示される熱交換器を含むエアハンドリングユニットの特性を示す特性情報において、水温差の下限値は、熱交換器201の熱交換能力の限界である。このため、水温差が下限値以下となる送水温度を算出対象から除外する。
【0069】
また、送水温度算出部67は、冷房時における外気露点温度より高い水温を送水温度として算出しない、冷房時における外気露点温度より高い水温においては、結露が発生しないため、空気の除湿ができない。なお、送水温度算出部67は、冷房時における外気露点温度に対して所定の温度以下の送水温度を算出するようにしてもよい。
【0070】
動力制御部71は、送水温度算出部67において算出された送水温度に基づき、熱源水の生成動力と送水動力とを制御する。動力制御部71は、送水温度制御部73において、熱源機12で生成する熱源水の温度を生成動力と送水動力の合計値が最小となる送水温度になるように制御する。送水温度制御部73は、冷媒を冷却又は加熱するコンプレッサの回転数や圧縮率を変更することにより、熱源水の送水温度を制御する。
【0071】
また、動力制御部71は、送水差圧制御部72において、送水温度における熱源水の送水差圧を制御する。これにより、動力制御部71は、生成動力と送水動力の合計値を最小にした熱源水の制御をすることが可能となる。
【0072】
なお、図4においては、中央監視装置10が有する、送水差圧取得部51、開度取得部52、バルブ差圧取得部53、流量取得部54、目標送水差圧算出部61、生成動力算出部62、送水動力算出部63、水温差算出部64、送水量算出部65、負荷率算出部66、送水温度算出部67、動力制御部71、送水差圧制御部72及び送水温度制御部73の各機能がソフトウェアによって実現される場合を説明した。しかし、中央監視装置10が有する上記1つ以上の機能は、ハードウェアによって実現されるものであっても良い。
【0073】
また、中央監視装置10が有する上記各機能は、1つの機能を複数の機能に分割して実施してもよい。また、中央監視装置10が有する上記各機能は、2つ以上の機能を1つの機能に集約して実施してもよい。
【0074】
また、中央監視装置10は、1つの筐体によって実現される装置であっても、ネットワーク等を介して接続された複数の装置から実現されるシステムであってもよい。例えば、中央監視装置10は、サーバ装置、ノート型PC、タブレット型PC、PDA、又はスマートフォン等の装置であってもよく、クラウドコンピューティングシステムによって提供されるクラウドサービス等、仮想的な装置であってもよい。
【0075】
また、中央監視装置10の上記各機能の1以上の機能を他の装置において実現するようにしてもよい。すなわち、中央監視装置10は上記全ての機能を有している必要はなく、一部の機能を有するものであってもよい。
【0076】
また、中央監視装置10の一部機能または全部機能がMCやGCに設けられてもよい。例えば、送水差圧取得部51、開度取得部52、バルブ差圧取得部53、流量取得部54、目標送水差圧算出部61、生成動力算出部62、送水動力算出部63、水温差算出部64、送水量算出部65、負荷率算出部66、送水温度算出部67、動力制御部71、送水差圧制御部72及び送水温度制御部73等の機能は、MC121とGC122に設けられていてもよい。また、中央監視装置10ではなく、MC121またはGC122により、バルブ21の流量特性を取得し記憶してもよい。また、MC121やGC122に備えられている制御機能を用いて熱源制御システムの動作の一部を行ってもよい。これにより、中央監視装置10の機能を必要以上に拡大することなく、システム全体の動作を良好に行うことができる。
【0077】
また、本実施形態における熱源水制御装置は中央監視装置10として説明しているが、MCやGCの少なくとも何れか一方を含めて熱源水制御装置としてもよい。すなわち、MCやGCを熱源水制御装置として機能させてもよい。
【0078】
次に、図5を用いて、実施形態の中央監視装置10のハードウェアの構成を説明する。
【0079】
図5において、中央監視装置10は、CPU101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、HDD104、操作部105、表示部106、及び通信I/F(Interface)107を有する。
【0080】
中央監視装置10には、デスクトップ型PC、サーバ装置等の汎用のコンピュータを用いることができる。また、中央監視装置10には、熱源機専用の制御装置、又はPLC(Programmable Logic Controller)等の産業用制御機器を用いてもよい。また、中央監視装置10は、MC121又はGC122とハードウェアを共用するものであってもよい。中央監視装置10は、図4で説明した熱源水制御プログラムを実行する。
【0081】
CPU101は、RAM102、ROM103又はHDD104に記憶された作業者育成プログラムを実行することにより、中央監視装置10の制御を行う。熱源水制御プログラムは、例えば、熱源水制御プログラムを記録した記録媒体、又はネットワークを介してプログラムを提供するサーバ等から取得されて、HDD104にインストールされ、RAM102にCPU101から読出し可能に記憶される。
【0082】
操作部105は、中央監視装置10のオペレータによる操作入力を可能にする、例えば、キーボード、マウス、又はスイッチ等である。表示部106は、オペレータに情報を表示する表示機能を有する、例えば、液晶ディスプレイ、又はランプ等である。なお、操作部105及び表示部106は、操作表示機能を有する、例えばタッチパネル等であってもよい。
【0083】
通信I/F107は、無線LAN通信、有線LAN通信、赤外線通信、近距離無線通信等を介して他の装置との通信を制御する。通信I/F107は、例えば、PLC124、MC121、GC122、又はネットワーク9を介したクラウドサーバ91との通信を制御する。PLC124は、例えばセンサ111~センサ116から取得する圧力の情報等を中継する。クラウドサーバ91は、例えば、中央監視装置10の運転状態をモニタし又は記録する。
【0084】
次に、図6を用いて、実施形態の中央監視装置10における目標水圧算出動作を説明する。なお、図6から図10において図示するフローチャートの動作は、図4において説明した中央監視装置10の各機能による動作であって、CPU101が熱源水制御プログラムを実行することによって実現することができる。各動作は中央監視装置10が実行するものとして説明する。
【0085】
図6において、中央監視装置10は、目標送水差圧の算出動作を開始するか否かを判断する(ステップS11)。目標送水差圧の算出動作を開始するか否かは、例えば、中央監視装置10のオペレータによる指示、所定の時間間隔が設定されたタイマから指示等があったか否かで判断される。目標送水差圧の算出動作を開始しないと判断した場合(ステップS11:NO)、中央監視装置10は、ステップS11の処理を繰返して算出動作の開始を待機する。
【0086】
一方、目標送水差圧の算出動作を開始すると判断した場合(ステップS11:YES)、中央監視装置10は、初期状態における送水ポンプの運転を開始する(ステップS12)。初期状態における運転とは、例えば、予め設定された、ポンプの稼働台数、ポンプの回転数、バルブの開度等の条件における運転である。
【0087】
ステップS12の処理を実行した後、中央監視装置10は、送水差圧を取得する(ステップS13)。送水差圧の取得は、送水差圧取得部51が、熱源機12から複数の熱交換器201に対して送水される熱源水の送水差圧を差圧計13から取得することにより実行できる。
【0088】
ステップS13の処理を実行した後、中央監視装置10は、開度を取得する(ステップS14)。開度の取得は、開度取得部52が、それぞれのエアハン20の熱交換器201の熱源水の出口側に設けられたバルブ21の開度をセンサ111から取得することにより実行できる。開度取得部52は、それぞれの熱交換器に設けられたバルブ21の中から少なくとも1つのバルブの開度を取得する。
【0089】
ステップS14の処理を実行した後、中央監視装置10は、バルブ差圧を取得する(ステップS15)。バルブ差圧の取得は、バルブ差圧取得部53が、センサ112から取得したバルブ21の入口の圧力とセンサ113から取得したバルブ21の出口の圧力の差から差圧を取得することにより実行できる。
【0090】
なお、センサ112、113の故障やセンサそのものを設置していない場合等の要因で、バルブ21の入口または出口での圧力計測ができない場合は、所定の設定値をバルブ差圧として認識してもよい。この所定の設定値は例えば、データテーブル等であらかじめ定められた値や、バルブ21の開度と流量計の検知流量に基づいて算出される値でもよい。
【0091】
ステップS15の処理を実行した後、中央監視装置10は、目標送水差圧を算出する(ステップS16)。目標送水差圧の算出は、目標送水差圧算出部61が、送水差圧取得部51において取得された送水差圧と、開度取得部52において取得されたバルブ21の開度とに基づき、目標送水差圧を算出することにより実行できる。
【0092】
ステップS16の処理を実行した後、中央監視装置10は、目標送水差圧を記憶する(ステップS17)。目標送水差圧の記憶は、例えば、目標送水差圧算出部61が、算出した目標送水差圧をHDD104等に記憶することにより実行できる。
【0093】
ステップS17の処理を実行した後、中央監視装置10は、目標送水差圧の算出を終了するか否かを判断する(ステップS18)。目標送水差圧の算出を終了するか否かの判断は、例えば、目標送水差圧の算出開始から所定の時間が経過して、算出される数値が安定したときに終了してもよい。目標送水差圧の算出を終了しないと判断した場合(ステップS18:NO)、中央監視装置10は、ステップS13の処理に戻り、目標送水差圧の算出を繰返す。一方、目標送水差圧の算出を終了すると判断した場合(ステップS18:YES)、中央監視装置10は、スローチャートで示した処理を終了する。
【0094】
次に、図7を用いて、実施形態の中央監視装置10における送水温度算出動作を説明する。
【0095】
図7において、中央監視装置10は、送水温度の算出動作を開始するか否かを判断する(ステップS21)。送水温度の算出動作を開始するか否かは、例えば、中央監視装置10のオペレータによる指示、所定の時間間隔が設定されたタイマから指示等があったか否かで判断される。送水温度の算出動作を開始しないと判断した場合(ステップS21:NO)、中央監視装置10は、ステップS21の処理を繰返して算出動作の開始を待機する。
【0096】
一方、送水温度の算出動作を開始すると判断した場合(ステップS21:YES)、中央監視装置10は、生成動力を算出する(ステップS22)。生成動力の算出は、生成動力算出部62が、熱源水の送水温度と熱源水を生成するための生成動力との関係を示す生成動力情報を算出することにより実行できる。生成動力は、生成する熱源水の温度と熱源水の流量によって定められる。生成動力算出部62は、熱源機12において予め用意された熱源水の生成能力に基づき、熱源水の送水温度と熱源水を生成するための生成動力との関係を示す生成動力情報を算出する。
【0097】
ステップS22の処理を実行した後、中央監視装置10は、送水動力を算出する(ステップS23)。送水動力の算出は、送水動力算出部63が、送水温度と熱源水を送水するための送水動力との関係を示す送水動力情報を算出することにより実行できる。送水動力算出部63は、目標送水差圧算出部において算出された最大送水差圧と、熱源水の送水温度を変化させたときに必要となる送水量の変化とに基づき生成動力情報を算出する。
【0098】
ステップS23の処理を実行した後、中央監視装置10は、送水温度を算出する(ステップS24)。送水温度の算出は、送水温度算出部67が、生成動力算出部62において算出された生成動力情報と、送水動力算出部63において算出された送水動力情報とに基づき、生成動力と送水動力の合計が最小となる送水温度を算出することにより実行できる。送水温度算出部67は、それぞれの送水温度における合計値を算出することにより、合計値が最小となる送水温度を算出(選択)する。
【0099】
ステップS24の処理を実行した後、中央監視装置10は、送水温度を記憶する(ステップS25)。送水温度の記憶は、例えば、送水温度算出部67が、算出した送水温度をHDD104等に記憶することにより実行できる。
【0100】
ステップS25の処理を実行した後、中央監視装置10は、送水温度の算出を終了するか否かを判断する(ステップS26)。送水温度の算出を終了するか否かの判断は、例えば、送水温度の算出開始から所定の時間が経過して、算出される数値が安定したときに終了してもよい。送水温度の算出を終了しないと判断した場合(ステップS26:NO)、中央監視装置10は、ステップS22の処理に戻り、送水温度の算出を繰返す。一方、送水温度の算出を終了すると判断した場合(ステップS26:YES)、中央監視装置10は、スローチャートで示した処理を終了する。
【0101】
次に、図8を用いて、実施形態の熱源水制御装置における送水量算出動作の第1の例を説明する。送水量算出動作の第1の例は、上述した、水温差と水温差変化量特性を利用した送水量の算出に係る動作である。
【0102】
図8において、中央監視装置10は、送水量の算出動作を開始するか否かを判断する(ステップS31)。送水量の算出動作を開始するか否かは、例えば、中央監視装置10のオペレータによる指示、所定の時間間隔が設定されたタイマから指示等があったか否かで判断される。送水量の算出動作を開始しないと判断した場合(ステップS31:NO)、中央監視装置10は、ステップS31の処理を繰返して算出動作の開始を待機する。
【0103】
一方、送水量の算出動作を開始すると判断した場合(ステップS31:YES)、中央監視装置10は、水温差を算出する(ステップS32)。水温差の算出は、水温差算出部64が、それぞれの熱交換器における熱源水の入口温度と出口温度を取得して、センサ114から取得した入口温度と、センサ115から取得した出口温度の温度差から水温差を算出することにより実行できる。ここで、上記の他にも、 往水温度センサ15と還水温度センサ17から複数の熱交換器の平均水温差を算出し、熱交換器の水温差としてもよい。
【0104】
ステップS32の処理を実行した後、中央監視装置10は、送水量を算出する(ステップS33)。送水量算出動作の第1の例において、送水量の算出は、送水量算出部65が、水温差の変化に対する水温差の変化量で示される熱交換器を含むエアハンの特性を示す特性情報と、熱源水の送水温度の変化量とに基づき、それぞれの熱交換器における熱交換量を一定にしたときのそれぞれの熱交換器に供給される熱源水の流量の変化量を算出し、全ての熱交換器における流量の変化量を合計して送水量の変化量を算出することにより実行できる。
【0105】
ステップS33の処理を実行した後、中央監視装置10は、送水量を記憶する(ステップS34)。送水量の記憶は、例えば、送水量算出部65が、算出した送水量をHDD104等に記憶することにより実行できる。
【0106】
ステップS34の処理を実行した後、中央監視装置10は、送水量の算出を終了するか否かを判断する(ステップS35)。送水量の算出を終了するか否かの判断は、例えば、送水量の算出開始から所定の時間が経過して、算出される数値が安定したときに終了してもよい。送水量の算出を終了しないと判断した場合(ステップS35:NO)、中央監視装置10は、ステップS32の処理に戻り、送水量の算出を繰返す。一方、送水量の算出を終了すると判断した場合(ステップS35:YES)、中央監視装置10は、スローチャートで示した処理を終了する。
【0107】
次に、図9を用いて、実施形態の熱源水制御装置における送水量算出動作の第2の例を説明する。送水量算出動作の第2の例は、上述した、負荷率と水温差変化量特性を利用した送水量の算出に係る動作である。なお、送水量算出動作の第2の例において、送水量算出動作の第1の例と同じ処理は、同じステップ番号を付して説明を省略する。
【0108】
図9において、ステップS32の処理を実行した後、中央監視装置10は、負荷率を算出する(ステップS41)。負荷率の算出は、負荷率算出部66が、流量取得部54において取得された流量と、水温差算出部64において算出された水温差に基づき、それぞれの熱交換器の負荷率を算出することにより実行できる。
【0109】
ステップS41の処理を実行した後、中央監視装置10は、送水量を算出する(ステップS42)。送水量算出動作の第2の例において、送水量の算出は、送水量算出部65が、負荷率算出部66において算出された負荷率と、負荷率の変化に対する水温差の変化量で示される熱交換器を含むエアハンドリングユニットの特性を示す特性情報と、熱源水の送水温度の変化量とに基づき、それぞれの熱交換器における熱交換量を一定にしたときの流量の変化量を算出し、全ての熱交換器における流量の変化量を合計して送水量の変化量を算出することにより実行できる。送水量算出部65は、それぞれの熱交換器における、水温差の変化に対する流量の変化量を合計し、送水量を算出する。
【0110】
次に、図10を用いて、実施形態の熱源水制御装置における動力制御動作を説明する。
【0111】
図10において、中央監視装置10は、動力制御の動作を開始するか否かを判断する(ステップS51)。動力制御とは、動力が最小になるように熱源水を生成して送水するための制御である。動力制御の動作を開始するか否かは、例えば、中央監視装置10のオペレータによる指示、所定の時間間隔が設定されたタイマから指示等があったか否かで判断される。動力制御の動作を開始しないと判断した場合(ステップS51:NO)、中央監視装置10は、ステップS51の処理を繰返して算出動作の開始を待機する。
【0112】
一方、動力制御の動作を開始すると判断した場合(ステップS51:YES)、中央監視装置10は、送水温度を取得する(ステップS52)。送水温度の取得は、ステップS25の処理で記憶された送水温度を取得することにより実行することができる。
【0113】
ステップS52の処理を実行した後、中央監視装置10は、送水量を取得する(ステップS53)。送水量の取得は、ステップS34の処理で記憶された送水量を取得することにより実行することができる。
【0114】
ステップS53の処理を実行した後、中央監視装置10は、送水差圧を取得する(ステップS54)。送水差圧の取得は、ステップS17の処理で記憶された送水差圧を取得することにより実行することができる。
【0115】
ステップS54の処理を実行した後、中央監視装置10は、ステップS52~ステップS54において取得した、送水温度、送水量、送水差圧の指示値を出力する。
【0116】
中央監視装置10は、GC122に対して、送水温度の指示値を出力する。GC122は、中央監視装置10から指示された熱源水の送水温度の指示値に基づき、往水温度センサ15において測定される水温が指示値になるようにモジュール120を制御する。なお、中央監視装置10は、GC122に対してさらに送水量の指示値を出力するようにしてもよい。送水温度と送水量の積がモジュール120における熱源水生成の負荷となる。
【0117】
また、中央監視装置10は、MC121に対して、送水差圧の指示値を出力する。MC121は、中央監視装置10から指示された熱源水の送水差圧の指示値に基づき、差圧計13において測定される差圧が指示値になるように一次側ポンプ123を制御する。MC121は、例えば、一次側ポンプ123の回転数、バイパス弁14の開度を制御する。なお、中央監視装置10は、MC121に対してさらに送水量の指示値を出力するようにしてもよい。MC121は、例えば、送水量の指示値に合せて稼働する一次側ポンプ123(モジュール120)の台数を制御する。
【0118】
ステップS55の処理を実行した後、中央監視装置10は、動力制御の動作を終了するか否かを判断する(ステップS56)。動力制御の動作を終了するか否かの判断は、例えば、熱源水の送水を終了するときに中央監視装置10のオペレータの操作が行われたか否かで判断する。動力制御の動作は、例えば、動力制御をしない、従来の熱源機12の運転に切替えるときに終了してもよい。なお、本実施形態では、送水温度、送水量、及び送水差圧の全てを制御する場合を示したが、中央監視装置10は、例えば、送水差圧の指示値のみを出力するようにしてもよい。この場合、熱源水の送水温度は一定値で運転される。
【0119】
動力制御の動作を終了しないと判断した場合(ステップS56:NO)、中央監視装置10は、ステップS52の処理に戻り、動力制御の動作を繰返す。一方、動力制御の動作を終了すると判断した場合(ステップS56:YES)、中央監視装置10は、スローチャートで示した処理を終了する。
【0120】
次に、図11を用いて、実施形態のエアハンの第1の特性情報を説明する。エアハンの第1の特性情報は、上述の、エアハンにおける水温差と水温差変化量特性情報である。
【0121】
図11Aは、エアハンが、外調機以外の場合であって、冷房時におけるCAVの特性情報である。横軸は、熱源水のエアハンの出入口の温度差(水温差)である。縦軸は、熱源水のエアハンの出入口の温度差(水温差)の変化量である。水温差は、熱交換量に比例する。すなわち、図11Aは、熱交換量に対する、熱源水の温度を1℃変化させたときの熱交換量の変化量を示している。水温差の変化量は、水温差が小さくなるにつれて大きくなり、水温差が一定値以下においては、変化量が変わらなくなる。図11Aにおいては、水温差が約11℃以下で変化量が一定値となることを示している。すなわち、水温差が約11℃以下の場合、熱源水の温度を変更しても熱交換による温度差の変化量が同じとなるため、熱交換器の性能の限界となる。冷房時におけるCAVにおいて熱源水の送水水温を算出する場合、温度差が11℃以下にならないようにする。
【0122】
図11Bは、エアハンが、外調機以外の場合であって、冷房時におけるVAVの特性情報である。また、図11Cは、エアハンが、外調機の場合の冷房時における特性情報である。なお、図11A図11B及び図11Cにおいては、冷房時におけるエアハンの特性情報を示したが、暖房時においても同様の特性情報が用意されている。
【0123】
次に、図12を用いて、実施形態のエアハンの第2の特性情報を説明する。エアハンの第2の特性情報は、上述の、エアハンにおける負荷率と水温差変化量特性情報である。
【0124】
図12Aは、エアハンが、外調機以外の場合であって、冷房時におけるCAVの特性情報である。横軸は、エアハンの負荷率である。縦軸は、熱源水のエアハンの出入口の温度差(水温差)の変化量である。負荷率は、負荷率算出部66によって算出される。すなわち、負荷率は、水温差と流量によって算出される0(1%)~1(100%)の数値である。熱源水の温度を1℃変化させたときの熱交換量の変化量は、負荷率に応じて増加する。換言すれば、熱源水の温度を1℃変化させたときの水温差の変化量は、負荷率に応じて増加する。
【0125】
図12Bは、エアハンが、外調機以外の場合であって、冷房時におけるVAVの特性情報である。また、図12Cは、エアハンが、外調機の場合の冷房時における特性情報である。なお、図12A図12B及び図12Cにおいては、冷房時におけるエアハンの特性情報を示したが、暖房時においても同様の特性情報が用意されている。
【0126】
以上のように、本実施形態は、熱源水制御方法は、熱源水制御装置が、熱源機から複数の利用側熱負荷に対して送水される熱源水の送水差圧を取得する送水差圧取得ステップと、それぞれの利用側熱負荷に設けられ、利用側熱負荷に供給される熱源水の供給量を調節するバルブの中から少なくとも1つのバルブの開度を取得する開度取得ステップと、バルブの入口と出口の差圧を取得するバルブ差圧取得ステップと、送水差圧取得ステップにおいて取得された送水差圧と、開度取得ステップにおいて取得された開度とに基づき、開度を目標値にするための送水差圧の目標値である目標送水差圧を算出する目標送水差圧算出ステップと、目標送水差圧算出ステップにおいて算出された目標送水差圧の中で最大値となる最大送水差圧に基づき、送水差圧を制御する送水差圧制御ステップとを実行する。これにより、熱源水を生成して送水するときの動力を削減することができる。
【0127】
また、本実施形態における熱源水制御方法は、熱源水制御装置が、目標送水差圧算出ステップにおいて、バルブのレンジアビリティとバルブの流量特性とにさらに基づき、目標送水差圧を算出する。これにより、バルブの口径(サイズ)に関係ないバルブの型式で共通の固定値を用いることができるので、目標送水差圧の算出が容易になる。
【0128】
また、本実施形態における熱源水制御方法は、熱源水制御装置が、熱源水の送水温度と熱源水を生成するための生成動力との関係を示す生成動力情報を算出する生成動力算出ステップと、送水温度と熱源水を送水するための送水動力との関係を示す送水動力情報を算出する送水動力算出ステップと、生成動力算出ステップにおいて算出された生成動力情報と、送水動力算出ステップにおいて算出された送水動力情報とに基づき、生成動力と送水動力の合計が最小となる送水温度を算出する送水温度算出ステップと、送水温度算出ステップにおいて算出された送水温度に基づき、熱源水の生成動力と送水動力とを制御する、動力制御ステップとをさらに実行する。これにより、熱源水の生成動力と送水動力を低減させることができる。
【0129】
また、本実施形態における熱源水制御方法は、熱源水制御装置が、送水動力算出ステップにおいて、最大送水差圧と、熱源水の送水温度を変化させたときに必要となる送水量の変化とに基づき生成動力情報を算出する。これにより、生成動力情報を算出することができる。
【0130】
また、本実施形態における熱源水制御方法は、熱源水制御装置が、送水動力算出ステップにおいて、それぞれの利用側熱負荷における熱源水の入口温度と出口温度を取得して、入口温度と出口温度の水温差を算出する水温差算出ステップと、水温差の変化に対する水温差の変化量で示される利用側熱負荷を含むエアハンドリングユニットの特性を示す特性情報と、熱源水の送水温度の変化量とに基づき、それぞれの利用側熱負荷における熱交換量を一定にしたときのそれぞれの利用側熱負荷に供給される熱源水の流量の変化量を算出し、全ての利用側熱負荷における流量の変化量を合計して送水量の変化量を算出する、送水量算出ステップをさらに実行する。これにより、送水量を算出することができる。
【0131】
また、本実施形態における熱源水制御方法は、熱源水制御装置が、送水動力算出ステップにおいて、それぞれの利用側熱負荷における熱源水の入口温度と出口温度を取得して、入口温度と出口温度の水温差を算出する水温差算出ステップと、それぞれの利用側熱負荷に供給される熱源水の流量を取得する流量取得ステップと、流量取得ステップにおいて取得された流量と、水温差算出ステップにおいて算出された水温差に基づき、それぞれの利用側熱負荷の負荷率を算出する負荷率算出ステップと、負荷率算出ステップにおいて算出された負荷率と、負荷率の変化に対する水温差の変化量で示される利用側熱負荷を含むエアハンドリングユニットの特性を示す特性情報と、熱源水の送水温度の変化量とに基づき、それぞれの利用側熱負荷における熱交換量を一定にしたときの流量の変化量を算出し、全ての利用側熱負荷における流量の変化量を合計して送水量の変化量を算出する、送水量算出ステップをさらに実行する。これにより、送水量を算出することができる。
【0132】
また、本実施形態における熱源水制御方法は、熱源水制御装置が、送水温度算出ステップにおいて、水温差が下限値より低い水温を送水温度として算出しない。これにより、利用側熱負荷の能力を超えた送水温度を算出しないようにすることができる。
【0133】
また、本実施形態における熱源水制御方法は、熱源水制御装置が、送水温度算出ステップにおいて、水温差の変化に対する水温差の変化量で示される利用側熱負荷を含むエアハンドリングユニットの特性を示す特性情報と、送水温度算出ステップにおいて算出された送水温度に基づき下限値を算出する。これにより、利用側熱負荷の能力を超えた送水温度を算出しないようにすることができる。
【0134】
また、本実施形態における熱源水制御方法は、熱源水制御装置が、送水温度算出ステップにおいて、冷房時における外気露点温度より高い水温を送水温度として算出しない。これにより、除湿ができない送水温度を算出しないようにすることができる。
【0135】
また、本実施形態における熱源水制御方法は、熱源水制御装置が、送水温度算出ステップにおいて、水温差の変化に対する水温差の変化量で示される利用側熱負荷を含むエアハンドリングユニットの特性を示す特性情報と、送水温度算出ステップにおいて算出された送水温度に基づき下限値を算出する。これにより、送水温度を安定させて動力を低減させることができる。
【0136】
また、本実施形態における熱源水制御方法は、熱源水制御装置が、開度取得ステップにおいて、利用側熱負荷における熱源水の入口温度と出口温度の水温差と、利用側熱負荷における熱交換量に基づき調節される開度を取得する。これにより、送水温度を安定させて動力を低減させることができる。
【0137】
また、本実施形態は、熱源水制御装置は、上述した熱源水制御方法により熱源水の送水又は生成を制御する。これにより、熱源水を生成して送水するときの動力を削減することができる。
【0138】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、熱源水制御方法は、熱源水制御装置が、送水差圧取得ステップと、開度取得ステップと、バルブ差圧取得ステップと、目標送水差圧算出ステップと、送水差圧制御ステップとを実行することにより、熱源水を生成して送水するときの動力を削減することができる。
【0139】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0140】
例えば、上記実施形態では、熱源機の一次側ポンプにより熱源水を搬送し、バイパス流路に設けられたバイパス弁による流量調節を行う熱源水制御システムについて説明したが、この形態に限らない。例えば、バイパス配管にバイパス弁を有さず、ヘッダ等に設けられた二次側ポンプとでシステム流量を調節する熱源水制御システムであってもよい。
【0141】
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0142】
1…熱源水制御システム、10…中央監視装置(熱源水制御装置)、12…熱源機、121…MC、122…GC、120…モジュール、123…一次側ポンプ、13…差圧計、14…バイパス弁、15…往水温度センサ、16…水量計、17…還水温度センサ、20…エアハン、201…熱交換器(利用側熱負荷)、202…送風機、21…バルブ、22…温度計、23…指示調節計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C