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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】光子計数スペクトラルCT
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/24 20060101AFI20220114BHJP
   G01T 1/36 20060101ALI20220114BHJP
   G01T 1/17 20060101ALI20220114BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
G01T1/24
G01T1/36 D
G01T1/17 H
A61B6/03 320R
A61B6/03 373
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020562757
(86)(22)【出願日】2019-05-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 EP2019061721
(87)【国際公開番号】W WO2019215178
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】18171174.8
(32)【優先日】2018-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ステッドマン ブッカー ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】エルハルト クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ブレンデル バーナード ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】デア ハイナー
(72)【発明者】
【氏名】ソッシン アルトゥール
(72)【発明者】
【氏名】スラン アクセル
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-048171(JP,A)
【文献】特表2016-540208(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0284940(US,A1)
【文献】Roger Steadman et al.,ChromAIX2: A large area, high count-rate energy-resolving photon counting ASIC for a Spectral CT Prototype,Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A,2017年08月,vol.862,pp.18-24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/24
G01T 1/36
G01T 1/17
A61B 6/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び第2主面を有し、入射放射線を電荷に変換する直接変換材料と、
前記直接変換材料の第1主面に接続された少なくとも1つの第1電極、及び、前記直接変換材料の第2主面に接続された複数の第2電極であって、前記少なくとも1つの第1電極及び前記複数の第2電極の各々が前記第1及び第2電極の間に印加される電界内で発生される電荷を収集する、前記第1電極及び前記第2電極と、
少なくとも1つの電流測定装置と、
各々が前記入射放射線に関してエネルギ値を弁別するための読出ユニットを有する、複数の信号処理チェーンと、
を有する、漏れ電流を検出する放射線検出器において、各々の前記信号処理チェーンが、前記エネルギ値を弁別するための前記読出ユニットに前記複数の第2電極の1つを電気的に接続する第1信号路上で、又は前記複数の第2電極の前記1つを前記少なくとも1つの電流測定装置の1つに対する入力端に電気的に接続する第2信号路上で、信号を伝送するための切換要素を更に有し、複数の前記切換要素が、入射放射線がない場合に当該放射線検出器の対応する複数の第2電極において受入される漏れ電流を測定するために前記信号を前記第2信号路上で伝送することを特徴とする
放射線検出器。
【請求項2】
前記直接変換材料がCZT結晶である、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記複数の第2電極が前記第2主面上に電極のアレイとして配置される、請求項1又は請求項2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
測定された漏れ電流を記憶するための記憶装置を更に有する、請求項1から3の何れか一項に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記少なくとも1つの電流測定装置がアナログ/デジタル変換器を有する、請求項1から4の何れか一項に記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記信号処理チェーンの少なくとも1つは前記第1及び第2信号路上で伝送される前記信号に対する漏れ電流検出ユニット及び漏れ電流補償ユニットを更に有し、前記漏れ電流検出ユニットの出力端は前記漏れ電流補償ユニットの入力端に接続され、前記漏れ電流補償ユニットの出力端が前記切換要素に接続される、請求項1から5の何れか一項に記載の放射線検出器。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の放射線検出器を複数有する、検出器システム。
【請求項8】
放射線源と物体の画像を再構成するための画像再構成ユニットとを更に有し、前記画像再構成ユニットにおいて、前記物体が前記放射線源と複数の前記放射線検出器との間に配置された場合に該物体を横切る放射線に関する投影データが得られる、請求項7に記載の検出器システム。
【請求項9】
前記画像再構成ユニットが、スペクトルエネルギシフトを補正するために、測定された漏れ電流を使用する検出器モデルを有する、請求項8に記載の検出器システム。
【請求項10】
複数の前記放射線検出器の漏れ電流分布を表示するための表示ユニットを更に有する、請求項7から9の何れか一項に記載の検出器システム。
【請求項11】
直接変換放射線検出器における漏れ電流を検出する方法であって、前記直接変換放射線検出器は直接変換材料の第1主面に接続された少なくとも1つの第1電極、及び、前記直接変換材料の第2主面に接続された複数の第2電極を有すると共に少なくとも1つの電流測定装置を有し、前記少なくとも1つの第1電極及び前記複数の第2電極の各々は前記第1及び第2電極の間に印加される電界内で発生される電荷を収集するように配置され、当該方法が、
収集された電荷を検出信号に変換するステップと、
前記検出信号を、各々が入射放射線に関してエネルギ値を弁別するための読出ユニットを有する複数の信号処理チェーンにより前記入射放射線に関してエネルギ値を弁別することにより処理するステップと、
エネルギ値を弁別するために前記複数の第2電極の1つを前記読出ユニットに電気的に接続する第1信号路に、又は前記複数の第2電極の1つを前記少なくとも1つの電流測定装置の1つに対する入力端に電気的に接続する第2信号路に、信号を伝送するステップと、
を有し、複数の切換要素が、入射放射線がない場合に前記直接変換放射線検出器の対応する前記複数の第2電極において受入される漏れ電流を測定するために、前記信号を前記第2信号路に伝送する、
方法。
【請求項12】
測定された前記漏れ電流を記憶するステップを更に有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
物体の画像を再構成するステップを有し、これにより前記物体を横切る放射線に関する投影データを得る、請求項11又は請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記画像を再構成するステップが、スペクトルエネルギシフトを補正するために、測定された漏れ電流を用いる検出器モデルを使用するステップを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
漏れ電流分布を表示するステップを更に有する、請求項11から14の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトラルコンピュータトモグラフィ(CT)装置の分野に係り、特には、光子計数スペクトラルCT検出器ユニット及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータトモグラフィ(CT)用途における光子計数検出器ユニットは、2以上のエネルギ値において測定するCTスキャナのためのスペクトラル読出情報を得る1つの方法を提供する。光子計数に基づくCTシステムの性能は、最終的検出信号に寄与する全読出成分の時間的安定性に強く依存する。時間及び温度に伴っても変化し得る光子計数検出器上での漏れ電流は、再構成されたスペクトラルCT画像におけるアーチファクトにつながる。一群の放射線阻止検出ピクセルに関連する平均漏れ電流を検出することにより光子計数検出器における漏れ電流を抑圧すること、及び一群の放射線感知検出器ピクセルの漏れ電流を補償することは、知られた技術であるが、幾つかのピクセルを捨てることになるので利用可能な資源を完全に使用するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、改善された漏れ電流を補正する光子計数検出器に対する要求が存在する。
【0004】
本発明の実施態様の目的は、光子計数スペクトラルCTにおける長期的不安定性の補正のための良好なシステム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、本発明の方法及び装置により達成される。
【0006】
第1態様において、本発明は漏れ電流を検出するように構成された放射線検出器に関するものである。該本発明検出器は、入射放射線を電荷に変換する直接変換材料と、前記直接変換材料の第1主面に接続された少なくとも1つの第1電極と、前記直接変換材料の第2主面に接続された複数の第2電極とを有する。前記第1及び第2電極の各々は、該第1及び第2電極の間に電界が供給された場合に、入射放射線により発生される電荷を収集する。該放射線検出器は、少なくとも1つの電流測定装置及び複数の信号処理チェーンも有し、各信号処理チェーンは、前記入射放射線に関してエネルギ値を弁別するための読出ユニット及び切換要素を有する。切換要素は、前記複数の第2電極の1つを前記エネルギ値を弁別するための読出ユニットに電気的に接続する第1信号路上で、又は前記複数の第2電極の前記1つを前記少なくとも1つの電流測定装置の1つに対する入力端に電気的に接続する第2信号路上で、信号を伝送する。前記複数の信号処理チェーンに含まれる複数の切換要素は、入射放射線がない場合に当該検出器の対応する複数の第2電極において受入される漏れ電流を測定するために信号を前記第2信号路上で伝送するよう構成される。
【0007】
本発明の実施態様の利点は、漏れ電流を非常に高い精度で、且つ、検出器のピクセルを光学的に黒化することを要せずに測定できることである。従って、全てのピクセルが放射線検出測定値の読み出しに利用可能となり得ると共に、一層良好な空間分解能及び/又は一層大きいピクセル数が得られる。漏れ電流の測定のためのピクセルの群化は、漏れ電流測定を妨害するノイズ源に対して平均化作用を果たし、従って、漏れ電流信号の測定に関して一層高い精度及び一層高い信号対雑音比が達成される。漏れ電流測定に貢献する異なるピクセル群は、放射線検出器の感知面積にわたる漏れ電流信号の空間的補間又は補外を可能にする。
【0008】
本発明の実施態様の利点は、漏れ電流検出及び補償に対する専用の追加の電子信号処理回路を回避することができ、従って利用可能な電子回路設計面積に対して余り制限を受けないことである。専用の漏れ電流補償回路が存在する場合、本発明は、補償されない残留漏れ電流信号が高い精度で測定可能となり、該残留漏れ電流信号の向上された更なる補正が依然として可能となるという利点を得る。本発明の実施態様の利点は、より大きなダイナミックレンジの漏れ電流信号が測定可能となり、製造プロセスにおける要求度が低い一層安価なCZT結晶又は他の好適な変換材料を使用できることである。当該変換材料の劣化による漏れ電流信号の増加は、漏れ電流に対する該一層大きなダイナミックレンジにより対処される。
【0009】
本発明の実施態様の更に他の利点は、時間的に変化する及び/又は不均一な漏れ電流により生じるエネルギスペクトルのコヒーレントなシフトの検出及び補償により、再構成されるエネルギ分解画像におけるアーチファクトが低減されることである。より良好なエネルギ分解能及び/又はピクセルに依存しない統計を得ることができ、ベースライン回復ユニット(baseline restoring unit)は必要とされないであろう。
【0010】
当該放射線検出器の前記少なくとも1つの直接変換材料はCZT結晶であり得る。テルル化カドミウム亜鉛(CZT)結晶は常温において電子/正孔対を効率的に発生する直接遷移半導体であり、十分な冷却システムを必要としない。CZT結晶は、高い原子番号の元素を含み、この材料中での高い光子吸収係数につながる。このことは、高い光子吸収度の薄い検出器の製造にとり有利である。
【0011】
前記複数の第2電極は、前記第2主面上に電極のアレイとして配置される。
【0012】
電極のアレイは、より容易に接触されると共に規則的に構造化され、導電性取付手段が、半導体基板に埋め込まれるピクセルの信号処理チェーンとの電気的境界を形成する。この構成は、検出器における死んだ/無反応なピクセルの危険性を低減する。電極のアレイは、当該検出器の良好な空間分解能ももたらす。
【0013】
当該検出器は、測定された漏れ電流を記憶するための記憶装置も更に有する。このように、測定された漏れ電流の記憶された値は、当該検出器により取得される生の画像データに埋め込まれる。このことは、測定された漏れ電流が、スキャンされた物体又は患者の空間的に(エネルギ)分解される画像を、典型的に異なる角度における及び異なるスライスに関する投影である一群の生画像データから再構成する画像再構成ユニットにおいてパラメータとして使用される場合に有用である。該記憶装置は、測定された漏れ電流を比較するための、漏れ電流に対する基準又は校正値を記憶する。この構成は、漏れ電流及びエネルギスペクトルにおける結果的シフトのオンチップハードウェア補正の可能性を提供する。
【0014】
前記少なくとも1つの電流測定装置は、アナログ/デジタル変換器を有する。アナログ/デジタル変換器は、高い精度での大きな範囲の測定可能な電流値に対して設計することができ、異なる範囲及び精度に対して設定可能である。アナログ/デジタル変換器は、各検出器ピクセルに関連する前記信号処理チェーンと同一の半導体基板内にコンパクトな態様で集積でき、漏れ電流が測定される期間において安定な動作を提供する。アナログ/デジタル変換器は、デジタル電子回路における更なる処理に適した、測定された漏れ電流のデジタル表現を提供する。
【0015】
前記信号処理チェーンは、前記第1及び第2信号路上で伝送される信号に対する漏れ電流検出ユニット及び漏れ電流補償ユニットを更に有する。この場合、前記漏れ電流検出ユニットの出力端は前記漏れ電流補償ユニットの入力端に接続され、該漏れ電流補償ユニットの出力端は前記切換要素に接続される。
【0016】
この構成は、検出時におけるピクセルレベルでの漏れ電流のハードウェア前置補償を可能にし、従って、如何なる追加の後処理ステップも削除できる。この前置補償は、粗いレベルにおけるものであって、非常に正確なものではなくてよく、このことは、しばしば電子回路の設計スペース及び費用を減少させる。このような前置補償の残留分又は斯様な前置補償が実行される条件の変更による残留分は、依然として測定可能であり、本発明による後の補正のために使用できる。
【0017】
第2態様において、本発明は、本発明の第1態様による放射線検出器を複数有する検出器システムに関するものである。
【0018】
検出器システムは、一層大きな検出面積を可能にするために検出器のアレイを有する。従って、このような検出器システムは、入射放射線に対する一層大きな視野角又はスキャンされる物体/患者の一層大きなスキャンボリュームを可能にする。このことは、良好な品質のスキャンのために必要とされる露光数を潜在的に減少させると共に、スキャンが促進される。
【0019】
このような検出器システムは、放射線源及び物体の画像を再構成するための画像再構成ユニットも更に有することができ、前記物体に関し、前記放射線源と前記複数の放射線検出器との間に配置された場合に該物体を横切る放射線に関する投影データが得られる。
【0020】
これは、スキャニングシステム(例えば、コンピュータトモグラフィスキャニングシステム)のための典型的な構成である。このようなスキャニングシステムにおいては、測定された漏れ電流が特定の検出器/検出器タイル又は検出器のアレイに関して容易に利用可能となり得、各スキャンに関して画像再構成ユニットに対する入力として使用される。従って、改善された再構成画像が、一層高い品質及び一層正確なエネルギ分解能で一層容易に利用可能となり得る。
【0021】
前記画像再構成ユニットは、スペクトルエネルギシフトを補正するために測定された漏れ電流を使用するような検出器モデルを有する。
【0022】
この構成は、測定された漏れ電流を、スキャンの間における当該検出器又は検出器システムの例えば温度変化等の変化する条件を考慮に入れて、該変化を補償するような再構成方法に使用できるという利点を有する。結果として、アーチファクトの存在を低減又は除去できる。
【0023】
第3態様において、本発明はスペクトル(スペクトラル)CTスキャンを実行する方法に関するものである。該方法は、複数のピクセル電極において放射線がない場合に直接変換材料内で発生された電荷を収集するステップ、収集された電荷信号を前記複数のピクセル電極から共通ノードに伝送するステップ、及び前記共通ノードにおいて漏れ電流を測定するステップを有する。その後、放射線信号が供給され、前記複数のピクセル電極の各々により受入される信号が一群のエネルギ閾値に従って弁別される。複数のピクセル電極の各々に関してエネルギ閾値を超える信号の発生数が計数され、かくしてスペクトル(光子)計数を得る。該方法は、上記弁別及び/又は発生数の計数に使用されるエネルギ閾値を測定された漏れ電流に基づいて調整するステップを有する。
【0024】
電荷信号が収集され、漏れ電流を測定するため共通ノードに伝送される複数のピクセル電極は、該共通ノードにおける漏れ電流の反復測定に対して異なるものとすることもできる。
【0025】
このことは、検出器の異なる領域の漏れ電流を互いに別個に測定できるという利点を有する。当該複数のピクセル電極は、例えば、測定される漏れ電流が検出器のエッジピクセルのみに関する測定される漏れ電流とは異なることが予想される、検出器の塊状(バルク)ピクセルのみを有する。当該複数のピクセル電極は、検出器の市松模様の若しくはランダム分布のピクセルとすることができ、又は検出器のピクセルアレイの四象限に対応することもできる。この構成は、漏れ電流測定に対して改善された平均化効果を可能にする。ホットピクセル又はダークピクセルは、漏れ電流測定から除外される。前記複数のピクセル電極に関する反復され異なって選択されるパターンは、漏れ電流測定の精度を改善できると共に、検出器の全感知領域をカバーする。前記複数のピクセル電極に関する選択されるパターンは、漏れ電流測定に寄与しなかったピクセルに関する漏れ電流の推定値を得るために空間的補間を実行するためにも有効であり得る。
【0026】
前記共通ノードにおいて測定された漏れ電流は、デジタル化できる。このことは、測定された漏れ電流を、デジタル後処理又はデジタル処理ユニットにおける使用に適したものにさせる。
【0027】
漏れ電流は、放射線信号がもはや供給されなくなった場合に前記共通ノードにおいて再び測定される。
【0028】
従って、スペクトル計数は、露光の間における入射放射線の変化に対しても、又は露光の間に発生したものであってスペクトル計数に影響を有するような環境変化(例えば、温度変化)に対しても補正できる。
【0029】
前記共通ノードにおける漏れ電流信号は、放射線信号が供給される複数の時間に対して線形に推定できる。これらの時間に対して、漏れ電流測定は、典型的には、長いスキャン時間を避けるために回避される。それにも拘わらず、漏れ電流信号は各スキャンの前後に実行される2つの測定の間で補間することにより推定できる。漏れ電流の推定は、線形に補間することにより、多項式補間、スプライン補間等々により得られる。
【0030】
漏れ電流に関する推定は、測定された光子束、即ち完全なスキャンの間における測定されたスペクトル光子計数の履歴を考慮に入れる。このことは、漏れ電流に関する補間された値を改善する。
【0031】
被検体画像は各ピクセル電極により受入された信号に関して得られるスペクトル計数に基づいて再構成でき、その場合において、被検体画像を再構成するステップは、測定された又は推定された漏れ電流から導出可能なスペクトルエネルギシフトを補償するためにスペクトルモデルのエネルギ閾パラメータを調整するステップを有する。
【0032】
本発明の特定の及び好ましい態様は、添付した独立及び従属請求項に記載されている。独立請求項のフィーチャは、独立請求項のフィーチャ及び他の従属請求項のフィーチャと、適切に且つ当該請求項に単に明示的に記載されているようにではなく組み合わせられる。
【0033】
本発明及び従来技術に勝って達成される利点を要約する目的で、本発明の特定の目的及び利点が上述された。勿論、必ずしも全ての斯様な目的及び利点を本発明の何れかの特定の実施態様により達成できるものではないと理解されるべきである。従って、例えば、当業者であれば、本発明を本明細書において教示される1つの利点又は一群の利点を、本明細書で教示され又は提案され得るように他の目的又は利点を必ずしも達成することを要せずに、達成又は最適化するような態様で具現化又は実行できると理解するであろう。
【0034】
本発明の上記及び他の態様は、後述される実施態様から明らかとなり、斯かる実施態様を参照して解明されるであろう。
【0035】
本発明は、添付図面を参照して例示として更に後述される。
【0036】
尚、各図は概略的に過ぎず、限定するものではない。各図において、構成要素の幾つかの寸法は誇張されており、図示目的で実寸通りに描かれていない場合がある。寸法及び相対寸法は、必ずしも、本発明の実際の実施化に対応するものではない。
【0037】
請求項における如何なる符号も、当該範囲を限定するものと見なしてはならない。
【0038】
異なる図において、同一の符号は同一又は同様の構成要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、放射線検出器の概略図である。
図2図2は、本発明の一実施態様によるピクセル電子回路の例示的電子ブロック図を示す。
図3図3は、部分的漏れ電流補償を実施する本発明の他の実施態様によるピクセル電子回路の例示的電子ブロック図を示す。
図4図4は、本発明の一実施態様による複数の放射線検出器を有するスキャニングシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を特定の実施態様及び特定の図面を参照して説明するが、本発明は、これに限定されるものではなく、請求項によってのみ限定されるものである。
【0041】
当該説明及び請求項において第1、第2等の用語は、同様の要素の間を区別するために用いられるものであり、時間的、空間的、順位付け又は如何なる他の態様での順序を必ずしも記述するためのものではない。また、そのように使用される用語は適切な環境下では入れ替え可能であり、本明細書に記載される本発明の実施態様は、本明細書で記載又は図示されるもの以外の順序で動作できると理解されるべきである。
【0042】
更に、当該説明及び請求項における上部、下部、前、後、先頭、末尾、下、上等の用語は、説明されている図面の向きに対して説明目的で使用されるもので、必ずしも相対位置を記述するために使用されるものではない。本発明の実施態様の構成要素は多数の異なる向きで配置できるので、方向的用語は解説の目的でのみ使用され、そうでないと示されない限り、決して限定することを意図するものではない。従って、そのように使用される用語は適切な環境下では入れ替え可能であり、本明細書に記載される本発明の実施態様は、本明細書で記載又は図示されるもの以外の向きで動作できると理解されるべきである。
【0043】
請求項で使用される“有する”なる用語は、その後に列挙される手段に限定されるものと解釈されるべきではないことに注意されたい。即ち、該用語は他の要素又はステップを排除するものではない。このように、該用語は、参照される記載されたフィーチャ、インテジャ、ステップ又は構成要素の存在を指定するが、1以上の他のフィーチャ、インテジャ、ステップ若しくは構成要素又はこれらのグループの存在若しくは追加を排除するものではないと解釈されるべきである。このように、“手段A及びBを有する装置”なる表現の範囲は、構成要素A及びBのみからなる装置に限定されるべきではない。該表現は、本発明に関し、該装置の関連のある構成要素はA及びBのみであることを意味する。
【0044】
本明細書を通して“一実施態様”又は“実施態様”に対する言及は、該実施態様に関連して記載される特定のフィーチャ、構成又は特徴が、本発明の少なくとも1つの実施態様に含まれることを意味する。このように、本明細書を通して種々の箇所における“一実施態様において”又は“実施態様において”なる語句の出現は、必ずしも全てが同一の実施態様を指すものではないが、そうでもあり得る。更に、上記特定のフィーチャ、構成又は特徴は、1以上の実施態様において、当業者にとり本開示から明らかなように、如何なる好適な態様で組み合わせることもできる。
【0045】
同様に、本発明の例示的実施態様の説明において、本発明の種々のフィーチャは、当該開示を効率化すると共に種々の発明的態様の1以上の理解を助けるために、時には、単一の実施態様、図又はこれらの説明に一緒にグループ化されると理解されるべきである。しかしながら、この開示の方法は、請求項に記載される発明が各請求項に明示的に記載されるものより多くのフィーチャを必要とするという意図を反映すると解釈されるべきでない。むしろ、後の請求項が反映するように、発明的態様は、単一の先行する開示された実施態様の全フィーチャより少ないものに存する。このように、詳細な説明に続く請求項は、これにより、本詳細な説明に明示的に組み込まれるものであり、各請求項は本発明の別個の実施態様として自立する。
【0046】
更に、本明細書に記載される幾つかの実施態様は、他の実施態様に含まれる他のフィーチャでない幾つかのフィーチャを含むが、異なる実施態様のフィーチャの組み合わせは、当業者により理解されるように、本発明の範囲内に入ることが意図されると共に異なる実施態様を形成する。
【0047】
本発明の特定のフィーチャ又は態様を説明する場合における特定の用語の使用は、該用語が、本発明のフィーチャ又は態様の該用語が関連する何らかの特定の特徴を含むように限定されるよう本明細書において再定義されていることを意味するものとしてはならない。
【0048】
本明細書で提供される説明においては、多数の固有の細部が記載される。しかしながら、本発明の実施態様は、これらの固有の細部を伴わずに実施化できると理解される。他の事例において、良く知られた方法、構造及び技術は、本説明の理解を不明瞭にさせないように詳細には示されていない。
[定義]
【0049】
本発明の前後関係において、検出器は衝突する放射線を表す信号を供給する。放射線は検出器に当たり、該検出器において測定可能な信号に変換される。当該衝突する放射線は、例えば、可視光、UV光、赤外光、X線、ガンマ線等の如何なるタイプの電磁放射線とすることもできる。
【0050】
検出器は、恐らくはアレイに配列された、複数のピクセルを有する。検出器のピクセルは、本発明の前後関係においては、上部電極とピクセル電極との間の放射線感知ボリュームにより画定されるバルク(塊状)直接変換材料における特定の幾何学的活性化領域を有する要素を指す。当該ピクセルは、自身のピクセル電極を介して、信号処理チェーンに電気的に接続される。
【0051】
[実施態様の詳細な説明]
図1は検出器100の一実施態様の概略図を示し、該検出器は上部電極108、バルク直接変換材料101、構造化された底部電極を形成する複数のピクセル電極103、少なくとも各ピクセル電極103のための導電性取付手段104及びピクセル電子回路106を備える基板105(例えば、Si)を有する。バルク直接変換材料101は、例えば3.0mm未満、2.0mm未満等のように薄いもの(例えば、約500マイクロメートル厚)とする。該材料の厚さは、当該材料に依存すると共に、自身のバルク体積内で十分な放射線の吸収を提供するように選択される(例えば、50%よりも多い光子吸収を達成する又は、好ましくは、80%より多い光子吸収を達成する厚さ)。当該バルク内でX線等の衝突する放射線を電荷に変換するのに適した直接変換材料101の限定するものでない例は、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、テルル化カドミウム(CdTe)、ガリウムヒ素、アモルファスセレンの合金、又は他の適切な直接変換材料、好ましくは高原子番号の元素を含む半導体である。直接変換材料の他の例はシリコン又は他はゲルマニウムであり、これらは、X線を変換すること以外に、紫外又は他は可視光を変換するのにも適している。本明細書において、直接変換とは、例えば一層長い波長における光の再放出(ルミネッセンス)等の中間過程を除く、1対の電荷の生成を即座に生じる放射線変換過程であると理解される。例えば複数の多エネルギ光子を有するX線ビーム等の放射線の各入力ビームは、自由電荷の量が入射光子のエネルギに比例する自由電荷キャリアの群を発生する。直接変換材料の利点は、入射放射線信号が検出されるべき電荷に直接変換され、DQEが消光等の放射線の再放出(シンチレーション)、導光及び収集損失等に関係する損失により悪化されないことである。本発明の好ましい実施態様において、入射放射線107はX線であり、該X線は直接変換半導体材料(例えば、CZT)内で電子/正孔対を発生する。本発明の前後関係における放射線信号は、検出器100の少なくとも一部に入射する放射線のビーム(例えば、X線光子のビーム)を一般的に指すが、特には制御された放射線のビームを指し、その場合において、ビーム制御は放射線源により放出されるビームのビーム成形(例えば、発散角の制御)、空間フィルタリング、放射線ビームの空間変調(例えば、局部的に吸収する材料による)及び/又は時間変調(例えば、オン/オフスイッチング、パルス列)を有する。従って、例えば放射線源が給電される場合に放射線信号が供給され得る一方、この放射線源がオフされると放射線信号はもはや供給され得ない。
【0052】
検出器100は上部電極108を含み、該上部電極の第1主面は検出器上面102を形成する一方、該上部電極の第2主面はバルク直接変換材料101に接触する。この上部電極108は、典型的に、該電極に入射する放射線107を最小限にしか吸収しない薄い、構造化されていない平面電極である。底部電極は、ピクセル電極103のアレイとして、例えば複数のピクセル電極の規則的又は不規則なパターン(例えば、検出器100の能動ピクセル領域を定める正方形ピクセル電極のパターン)として構造化される。しかしながら、該底部電極は、正方形ピクセル電極103のアレイに限定されるものではなく、円形ピクセル電極、六角形ピクセル電極、又は当該バルク直接変換材料の厚さに対して僅かにオフセットされた面上の垂直及び水平細条の組も該底部電極の更なる限定するものでない例である。ピクセル電極103のアレイは、目標とされる空間分解能、エネルギ分解能、収集される信号強度、典型的な暴露(露光)時間等に依存して、1.0mm以下、例えば500マイクロメートル以下又は200マイクロメートル以下のピクセルピッチを有する。検出器100は、例えば、これらの特定の選択に限定されることなく、ピクセル電極103の8x8、16x16又は32x32のアレイを含む。複数のピクセル電極103は、各々、適切な導電性取付手段104によりピクセル電子回路106に電気的に接続される。このような導電性取付手段104は、例えば、ワイヤ、金スタッド、半田バンプ(凸部)、インジウムバンプ等を有することができ、これらはパターン化された底部電極を備えるバルク直接変換材料101が基板105の上面(例えば、平らな上面)に接着されることを可能にし、これにより一方におけるピクセル電極103の各々と他方におけるピクセル電子回路106との間に電気的接続が確立される。ピクセル電子回路106を有する基板105は、例えば、半導体チップ(例えば、CMOSチップ)とすることができ、該複数のピクセル電子回路106は、例えば、半導体チップ内又は上に製造される集積回路(例えば、ASIC(特定用途向け集積回路))の一部であり得る。
【0053】
空間分解能を犠牲にせずに検出の視野又は他は放射線107の感知表面積を増加させるために、複数の検出器100を検出器アセンブリにおいて同時に使用される。例えば、検出器100は、1、2又はそれ以上の行のタイルを有すると共に各行が多数のタイル(例えば、8、16、32又はそれ以上のタイル)を有するような一層大きな検出器アセンブリにおけるタイルを形成できる。検出器アセンブリは、自身のタイルを可撓性又は剛性支持体上に(例えば、タイル型PCB基板の集合上に)取り付けられる。
【0054】
検出器100の動作中において、当該直接変換材料の内部に強い電界が生成される。例えば、一般的に負の電位が上部電極108(例えばカソード)に印加される一方、より正の電位が底部電極(例えば、アノード)のピクセル電極103に提供され、これにより、上部電極と底部電極との間の電界は電位差の結果である。バルク直接変換材料101及び該材料の厚さに依存して、該電位差は、僅か数ボルト、数十ボルト又は数百ボルトともなり得る。特定の実施形態におけるバルク直接変換材料101としてのCZT結晶の場合、該電位差は、変換材料および厚さに依存して、100Vから1500Vの間の範囲となり得る。結果として、バルク直接変換材料101内の衝突する放射線107の直接変換を介して発生された電荷対は分離され、正及び負の電荷が各電極において収集され(例えば、アノードにおいて電子及びカソードにおいて正孔)、電流が誘起される。このことは、検出器100が光伝導モードで動作されることを意味する。放射線107は、検出器100の上面102に該検出器100の能動ピクセル領域間のクロストークを回避するために好ましくは90度の角度で入射し、本発明の好ましい実施形態においては、これに限定されるものではないが、X線光子を有する。ガンマ線、軟X線、極紫外光、可視光又は赤外光も放射線107の例であり、放射線107のタイプは用途固有である。高度に集積されたピクセル電子回路106は、電荷パルスを、例えばデジタル的に計数(カウント)する数ナノ秒の持続時間の電圧パルスに変換する。個々の光子を登録又はカウントできるのみならず、例えばデュアルエネルギ又はマルチエネルギ検出において個々の光子からのエネルギを測定できる。
【0055】
上記電荷発生過程は、検出器100が放射線107に曝されていない状況においても自発的に起こり得る。このことは、一定のバックグラウンド暗電流が各電極において収集されるようにする。バルク直接変換材料101(例えばCZT結晶)が捕獲中心等の不完全さ又は何らかの他のタイプの不均一性を有する場合、各ピクセル電極103において検出される局所的暗電流は異なるであろう。更に、例えば移動する電荷キャリアの捕獲及び解放又は露光直後の不完全な電荷除去によって引き起こされる時間ドメインの幾らかの残留漏れ電流も存在し得、これは、例えばCTスキャナのディスプレイ上で直接見るための画像再構成の時点においてゴースト画像、帯状アーチファクト等を生じ得る。暗電流は、検出器のダイナミックレンジを制限し、そのスペクトル応答を広げるような一層高い(ショット)ノイズレベルにつながる漏れ電流の1つの形態に過ぎない。他の形態の漏れ電流は、検出器100の上部及び底部電極によって形成される容量性構造を通って移動する電荷、電荷の捕獲及び解放、電荷注入等による漏れ電流を含む。また、温度上昇又は単一の検出器100の間若しくは多数の検出器タイルを含む検出器アセンブリにおけるタイル間の温度勾配も漏れ電流のドリフトを誘起させ得る。それ以外に、ピクセル電子回路106も、回路トポロジー及び実施化に依存して、温度に依存するような各入力ノードにおける無視できないオフセット電流(入力漏れ)を有し得る。これら全ての漏れ電流は、一緒になって、読出ピクセル電子回路106の検出可能なコヒーレントなエネルギシフトに最終的に寄与する。エネルギのコヒーレントなシフト又は平均漏れ電流のコヒーレントなドリフトとは、本発明の文脈においては、全ピクセルにわたる平均シフト/ドリフトが非ゼロの平均を有することを意味する。即ち、例えば温度が一方向に変化する場合、全てのピクセルは平均漏れ電流を1つの同一の方向に増加/減少させる。典型的には、漏れ電流は、検出器100の(電荷)パルス変動よりも遙かに遅いタイムスケールで進展し、従って、通常は検出器信号のDC又は低周波数成分であると見なされる。これは、基準ラインがしばしば予測不可能な態様でシフトするので、通常は検出器100のエネルギ分解能に影響を与え、したがって、パルス高測定を、そして最終的には画像品質及び撮像情報の精度を損なう。例えば、検出器100当たり(例えば、ピクセル電極当たり)1nA未満の漏れ電流の変化は、補正されないままであるか又は補償されない場合、再構成されたCT画像における帯状アーチファクトにつながり得る一方、漏れ電流は経年変化、湿度等によっても数十nAに増加する可能性がある。従って、不均一な漏れ電流及び斯かる漏れ電流の時間的ドリフトを可能な限り正確に考慮にいれることが重要である。CTスキャンの場合、これは、スキャンが開始する前に、検出器100にわたる、又は検出器アセンブリ内の多数の検出器にわたる漏れ電流を測定することによって達成される。CTスキャンが進行するにつれて、スキャンされる物体の多数の投影は、検出器アセンブリ内の検出器アレイの一部であり得る検出器100の多数の露光を必要とする。入射放射線への各曝露は検出器100の内部に幾らかのエネルギを蓄積するので、検出器100の温度は、CTスキャンの多数の投影の後に著しく上昇され得、例えば、検出器100の温度はスキャン中に直線的に又は指数関数的にさえ上昇し得る。したがって、スキャンが完了するたびに漏れ電流も測定することが好ましい。しかしながら、検出器100の漏れ電流の測定が実行される時点は、各スキャンの前/後に限定されるものではなく、スキャン中に任意選択的に、例えばスキャン中において切換管(switching tube)がオフの場合に規則的な時間間隔で実行することもできる。切換管の使用は、関連技術において知られている。
【0056】
本発明の幾つかの実施態様において、ピクセル電子回路106は漏れ電流検出及び補償回路(例えば、漏れ電流検出ユニット及び時間変化漏れ電流を部分的に補償する補償ユニットを備えるASIC)を含む。しかしながら、ASICのみにより漏れ電流を補償することは困難であることが分かった。ASICは、典型的に、目標とされる仕様(例えば、範囲及び分解能等)のために設計され、このことは非常に多様な既存の直接変換材料(例えば、CZT結晶の非常に多様なプロセス依存性サンプル)と矛盾し、これが汎用的に整合される設計を困難にさせるからである。CZT結晶の経年効果、放射線障害、低品質CZT結晶又は高放射線率も斯様な方法に悪影響を与え得る。漏れ電流が設計された仕様を超えて増大し得るか、又は設計された分解能が量子化エラー及びアーチファクトの出現を回避するほど十分に精細でないこともあるからである。
【0057】
本発明の幾つかの実施態様においては、バルク直接変換材料101の側面に付加される保護環が、捕獲の増加又は表面電流を生じ得る当該検出器の側面への電荷キャリアのドリフトを制限する。ピクセルのクロストークを防止するためのステアリング格子を、ピクセル電極103の間に、好ましくは該ピクセル電極103から絶縁する層上に実施化することもできる。散乱線除去格子又は他の放射線吸収制御層をオフセットとして検出器100より上又は該検出器の上部上に設けることもでき、これにより、90度とは異なる角度で入射するコヒーレントな放射線散乱線が低減され、又は入射放射線量が調整される。
【0058】
本発明の他の実施態様において、当該直接変換材料はバルクユニットではなく、例えばピクセル列にパターン化され、各ピクセル列が上部及び底部電極を含むようにする。
【0059】
図2は、例えば図1に示された検出器100又は該検出器の変形例と共に使用することが可能な、本発明の一実施態様によるピクセル電子回路106の例示的電子ブロック図を示す。バルク直接変換材料101内で及びピクセル電極103において又は上部電極108において発生する、電荷キャリア発生及び収集プロセスのための等価回路211は、説明の完全さ及び容易さのために図2に含まれているが、基板105内又は上に含まれるピクセル電子回路106の一部ではない。等価回路211は、当該検出器の各ピクセルに関して、当該ピクセルにおいて受けられる衝突放射線信号による生じる電荷キャリアの発生及び移動を等価電流源212としてモデル化している。この等価電流源212は、当該ピクセルに関連した漏れ電流も発生する。各ピクセルは、第1近似では対応するピクセル電極103及び上部電極108により形成される関連する入力容量213も有している。
【0060】
図2に示されるように、検出器100の露光の間において単一のピクセル電極103において収集された電荷信号は、この特定のピクセル電極に(即ち、対応する導電性取付手段104により)関連付けられた単一信号処理回チェーン210(ピクセル信号処理チェーンと称される)において処理される。各ピクセルは自身の信号処理チェーン210、220、230を有する。各ピクセル信号処理チェーン210、220、230は、等価電流源212に接続された切換要素214を含む。各切換要素214は、対応するピクセル信号処理チェーン210、220、230に関連付けられた第1信号路2141及び第2信号路2142の間で切り換わるように構成されている。各ピクセルに関し、第1信号路2141は切換要素214を介して電流源212を読出ユニットの入力端に接続する。該読出ユニットはフロントエンド回路215を有することができ、その場合において、第1信号路2141は切換要素214を介して電流源212をフロントエンド回路215の入力端に接続する。フロントエンド回路215は、例えば電荷感知増幅器(CSA)等の前置増幅段及びパルス成形器を含むことができ、これらの両者はプログラマブル、例えば利得、帯域幅又はパルス成形時定数がプログラム可能であり得る。フロントエンド回路215の出力端は、これらも当該読出ユニットに含まれる複数の弁別器(例えば、異なる(例えば調整可能な)閾設定値を持つ図2に示されるような2つの弁別器216、218)に接続される。弁別器216、218の各々において、フロントエンド回路215の出力は閾値と比較され、該閾値を超える信号パルスは特定の弁別器216、218に接続された対応するカウンタ217、219において記録される。これらカウンタ217、219も当該読出ユニットに含まれる。
【0061】
各ピクセルに関し、第2信号路2142は切換要素214を介して電流源212を電流測定装置201(例えば、アナログ/デジタル変換器)の入力端に接続する。該アナログ/デジタル変換器は、ピクセル電子回路106と同じ基板105(例えば、Si)内に、例えばASICの一部として実施化できる。代わりに、該電流測定装置201はトランスインピーダンス増幅器とすることもできる。該増幅器の入力端における測定された電流の結果としてのアナログ出力は、次いで、アナログ/デジタル変換器により変換され、該変換器はピクセル電子回路106と同じ基板105(例えば、Si)内で実施化されるか又は該基板の外部のものとされる。図2に示されるように、少なくとも1つの電流測定装置201(例えば、アナログ/デジタル変換器)が、信号処理チェーン210、220、230を介して単一のみより多いピクセルから入力を受ける。即ち、幾つかのピクセル信号処理チェーンの入力を、共有電流測定装置201の入力端において(例えば、共有アナログ/デジタル変換器の入力端において)合計する。各ピクセル信号処理チェーン210、220、230の第1及び第2信号路2141、2142は互いに十分に分離される。本発明の実施態様によれば、切換要素214は、第1信号路2141上の読出ユニット(例えば、フロントエンド回路215等)が、漏れ電流測定が少なくとも1つの電流測定装置201の入力端においてなされる場合に能動的に切断されることを保証する。従って、当該読出ユニットの入力ノードへの(例えば、フロントエンド回路215の入力端への)電荷の流れは、漏れ電流測定を狂わせないように、効果的に防止される。本発明の前後関係において、第1信号路2141を切換要素214により能動的に切断することは、読出ユニット(例えば、フロントエンド回路215)の接続された入力端に向かう切換要素214のオフ抵抗値が、該切換要素214のオン抵抗値に少なくとも1つの電流測定装置201(例えば、アナログ/デジタル変換器)の入力インピーダンスを加えた合成抵抗値より大幅に高い場合に達成されると考える。当業者であれば、特定の切換要素214をどの様に設計又は選択するかは分かるであろう。
【0062】
放射線測定を実行する前に、検出器100は漏れ電流測定可能モードに設定される。可能化信号を受信すると、一群のピクセルの切換要素214は第2信号路2142へと操作され、当該検出器の残りのピクセルは、第1信号路2141に沿って、これらピクセルの読出ユニットに接続された(例えば、フロントエンド回路215の入力端に接続された)ままとなる。プロセッサ又は適切な信号処理ユニットが適切な可能化信号を切換要素214に供給する。このプロセッサ又は信号処理ユニットは、検出器100の外部のものであるか、又は該検出器に含まれる(例えば、ピクセル電子回路106と同じ基板(例えば、Si)内にASICの一部として実施化されるプロセッサ又は信号処理ユニット)。一群のピクセルは、検出器100の少なくとも2つのピクセル、好ましくは3以上のピクセル、例えば10より多くのピクセルを有する。一群のピクセルは、検出器100の全ピクセルを有することさえできる。一群のピクセルに対して異なる空間分布が存在するか、又は1より多い群のピクセル(例えば、互いに独立した2以上の群のピクセル)が存在し得る。本発明の幾つかの実施態様においては、例えば、検出器100の全てのエッジピクセルを一緒に群化することができ、又はその補集合とする、即ち検出器100における検出器エッジに位置しない全塊状ピクセルを一緒に群化できる。本発明の他の実施態様においては、例えば検出器100のピクセルのランダムな選択又は規則的なパターン(例えば、市松模様)等の、分散された空間ピクセル分布が一群を形成でき、両ケースにおける群はピクセル電極103のアレイの異なる位置からの寄与度を有する。本発明の更に他の実施態様においては、例えばピクセル電極103の一層大きなアレイの一部としての2x2ピクセル電極副アレイ等の、多数の小さな群のピクセルを形成すると共に互いに独立に選択/可能化し、多数の斯様な副アレイが全体のアレイをカバーするようにするか、又はピクセル電極103の正方形又は長方形アレイの各象限のピクセルを一緒に群化するようにする。これらの実施態様の各々において、電流測定装置201(例えば、アナログ/デジタル変換器)は、単一のピクセル信号処理チェーン210、220、230よりは多いチェーンから電流入力を受け、これら電流入力は該装置の入力ノードにおいて合計される。漏れ電流測定は放射線検出に先行して可能化されるので、漏れ電流のみが電流測定装置201により合計されて平均される(例えば、前記アナログ/デジタル変換器により合計されて平均される)。電流測定装置201(例えば、アナログ/デジタル変換器)において測定される平均漏れ電流は、現在可能化されているピクセルの群にわたり測定される平均漏れ電流に相当する。当該ピクセルの群に関するピクセル当たりの正しい平均漏れ電流を導出するために、当該プロセッサ又は適切な信号処理ユニットは、電流測定装置201により測定された合計漏れ電流の当該群における選択された/可能化されたピクセルの数に一致するような重み付けのための情報を提供し又は斯かる重み付けを実行する。この目的のために、検出器100又は外部ソフトウェア/ハードウェアはピクセルの群パターン及び群パターンの関連するピクセル数を記憶できる。このような平均漏れ電流測定は、各放射線検出に先立ちピクセルの同一の又は異なる群に対して反復できる。このことは、漏れ電流測定に対するノイズレベルを低減できると共に、この測定の精度を向上させるという利点を有する。本発明の幾つかの実施態様の利点は、単一の電流測定装置、例えば単一のアナログ/デジタル変換器しか必要とされないことである。本発明の他の実施態様においては、ピクセル当たり1以上の電流測定装置201のみならず1以下の電流測定装置210が設けられる。従って、複数群のピクセルを同時に可能化することができ、これらに対応するピクセル当たりの平均漏れ電流を、これらの第2信号路2142を対応する電流測定装置201に接続することにより、独立に測定できる。この構成は、各ピクセルにおける及び各ピクセル処理チェーン210、220、230のための回路設計の複雑さを低減させる。即ち、ピクセル毎の専用の電流測定装置201は必要とされず、検出器100の全ピクセルアレイに対する単一の又は少数の電流測定装置201しか必要とされない。更に、電流測定装置201における(例えば、アナログ/デジタル変換器における)平均漏れ電流の測定は、当該群の全ての可能化されたピクセルの電流入力を使用しているので、単一ピクセル測定と比較して一層大きな電流信号が電流測定装置201において得られ、該電流測定装置は簡単な設計を有する。例えば、当該アナログ/デジタル変換器の分解能は低減させ(平均化効果)、該アナログ/デジタル変換器の動作帯域幅も、ピクセル群当たり単一の測定で十分であり得るので、低減できる。
【0063】
検出器100が撮像用途に使用される実施態様において、測定されるピクセル当たりの平均漏れ電流は、放射線スキャンに関して取得される画像データに埋め込む、例えばスペクトルCTスキャンのスペクトル画像データ(例えば、エネルギ弁別チャンネルの計数)に埋め込む。これに加えて又は代えて、電流測定装置201により取得される変換されたデジタル結果は、記憶装置(例えば、基板105の電子回路に含まれる内部レジスタ)に記憶しアクセスできる。
【0064】
検出器100が校正又は基準データ(例えば、スペクトルCTにおけるスペクトルファントム)と一緒に使用される実施態様において、漏れ電流測定は該校正又は基準データに対しても実行でき、後の放射線検出測定に使用して該校正又は基準データに対する等価なエネルギシフトを推定できる。本発明の幾つかの実施態様によれば、校正ステップにおいて取得された平均漏れ電流値は、検出器100に、例えば同じ基板105(例えば、Si)においてピクセル電子回路106として(例えば、ASICのレジスタとして)実施化される検出器100のハードウェアに記憶する。この記憶された値は、例えば差を確定すると共にピクセル当たりの平均漏れ電流を減算することにより、後の測定に対する偏差を補正する(ハードウェアで)ために使用される。検出器100のアレイの場合(例えば、検出器アセンブリの場合)、校正ステップにおいて得られた平均漏れ電流値は、該アレイの個々の検出器に対して別個に記憶できる。このようなオンチップ実施態様は、取得後の補正ステップを回避できるという利点を有する。
【0065】
検出器100が、例えば物質分離を実施する投影ベースの反復スペクトラルCTにおけるように、画像再構成のためにスペクトル検出器モデルと一緒に使用される実施態様において、さもなければ誤った結果につながり得るスペクトル検出器モデルは、例えばスペクトルモデルにおける(等価なエネルギシフトにより発生される計数を補正する順方向モデルおける)閾値を調整することにより、スペクトルエネルギシフトに対し、少なくとも1つのピクセル群に関して取得された平均電流測定値に基づいて補正できる。
【0066】
本発明の実施態様において、各ピクセル処理チェーン210、220、230の弁別器216、218の閾値は、一群のピクセルに対して実行された平均漏れ電流測定の結果として調整される。これに加えて又は代えて、各ピクセル処理チェーン210、220、230のカウンタ217、219において得られた計数を、一群のピクセルに対して実行された平均漏れ電流測定の結果として調整できる。
【0067】
本発明の好ましい実施態様によれば、漏れ電流測定は各放射線測定の前に、例えば物体又は患者のCTスキャンの前に実行する。好ましくは、他の漏れ電流測定は各放射線測定の直後に実行される。このことは、放射線測定プロトコルの間に(例えば、完全なCTスキャンの間に)発生した漏れ電流及び等価エネルギシフトの正確な推定を可能にする。しかしながら、本発明の実施態様は単一の事前及び/又は事後漏れ電流測定に限定されるものではない。実際に、漏れ電流測定の複数の反復を単一及び/又は複数の群のピクセルに対して、各放射線測定プロトコルの前又は直後に(例えば、各CTスキャンの前又は直後に)実行する。更に、本発明の幾つかの実施態様は、複数の漏れ電流測定を放射線測定プロトコルの間に(例えば、CTスキャンの複数の投影の間に)、例えば検出器100に入射する放射線を規則的な時間間隔でオフすることにより(例えば、切換管を備えるスキャニングシステムを使用することにより)実行することもできる。
【0068】
本発明の幾つかの実施態様によれば、線形(一次)補間等の高速モデルを、放射線測定プロトコルの持続時間内に位置する時点に関して平均漏れ電流を推定するために、例えば完全なCTスキャンの幾つかの又は全ての投影に関してピクセル当たりの平均漏れ電流を推定するために使用できる。しかしながら、二次、三次又はスプライン補間法も実施することができ、補間に関する他の限定するものでない例を構成できる。他の例として、放射線測定プロトコルの期間において、例えば単一の放射線測定の積分期間の間に(例えば、完全なCTスキャンの単一の投影の間に)発生した平均漏れ電流及び等価なエネルギシフトの一層進んだ正確な推定は、個々のピクセルの又は1以上の群のピクセルの完全な放射束履歴(例えば、X線束履歴)を考慮に入れることを含み得る。
【0069】
本発明の好ましい実施態様において、検出器100により実行される各放射線測定プロトコル(例えば、複数の角度的投影を有するCTスキャン)は、漏れ電流推定を伴う。この漏れ電流推定は、平均漏れ電流測定値に関する前後の構成における時間的補間を有することができ、及び/又は1以上の異なるピクセル群構成による検出器ピクセルのサブサンプリングに関する空間的補間(例えば、検出器100の多数のピクセルの漏れ電流の群化された測定として、市松模様に関する1つ置きのピクセルの平均漏れ電流値を空間的に補間する)を有し得る。図3に示されるような本発明の他の実施態様において、幾つかの又は全てのピクセル処理チェーン210、220、230は、漏れ電流検出ユニット301及び漏れ電流補償ユニット302を含む。漏れ電流検出ユニット301は、検出器100のピクセル電極103に及び漏れ電流補償ユニット302に動作的に結合される。漏れ電流補償ユニット302の出力端は、当該読出ユニットの入力端に動作的に結合される(例えば、フロントエンド回路215の入力端に結合される)。このような実施態様において、幾つか又は全てのピクセル処理チェーン210、220、230の漏れ電流補償ユニット302の出力は、ここでも、切換要素214を介して一緒に群化され、少なくとも1つの電流測定装置201の入力端(例えば、少なくとも1つのアナログ/デジタル変換器の入力端)において合計される。この構成は、検出器100が漏れ電流に対する前置補償を既に提供しているが、この前置補償が過度に不正確である(常に幾らかの量子化エラーを有する漏れ電流補償ユニット302に含まれるデジタル/アナログ変換器から生じる不正確さ)ケースにおいて特に有利である。従って、当該補償電流は所与の精度限界内でしか制御することができず、該限界は設計努力、設計空間利用可能性、費用等に依存し、かくして、漏れ電流前置補償は一般的に不完全であり、残余電流が存続する。本発明の実施態様において、漏れ電流補償のためのデジタル/アナログ変換器は非常に精密であることを必要とされない。例えば1nA未満のピクセル当たりの平均残存漏れ電流は、少なくとも1つの電流測定装置201により1以上のピクセル群に関して依然として測定可能であるからである。本発明の実施態様の利点は、前記デジタル/アナログ変換器が典型的なバルク直接変換材料(例えば、一連のCZT結晶)の仕様をカバーする設計において、当該少なくとも1つの電流測定装置201(例えば、少なくとも1つのアナログ/デジタル変換器)が、残余及び余剰の電流が測定されると共に考慮に入れられるので更に広い範囲の仕様を可能にすることである。このことは、検出器100の経年により生じる過度に多い漏れ電流による障害を回避することに特に関連する。
【0070】
本発明は、検出器システム400(例えば、検出器100のアレイ)及び同システムを有するスキャニングシステム401にも関するものである。図4は、回転可能なガントリ402の湾曲面上に配列された複数の放射線検出器400を有するCTスキャニングシステム401を概略的に示す。例えば2以上の異なるエネルギにおいて動作する切り換え可能なX線源等の放射線源403が、検出器システム400に対向して配置され、回転可能なガントリ402に固定されている。放射線源403により放出されるX線等の放射線107は、被検者又は患者404が存在するスキャン領域を経て伝搬した後、検出器システム400の検出器100によりエネルギスペクトル領域において検出される。被検体又は患者404は当該放射線と、該放射線107を散乱させ又は吸収することにより作用し合い、該被検体又は患者404の異なる部分を回転可能なガントリ402に対して、異なる角度における複数のスライス及び投影をCTスキャニングシステム401により取得できるように、移動できる。画像再構成ユニット405を、スキャニングシステム401に接続でき又は該システムの一部とされる。画像再構成ユニット405は、スキャンされた被検体又は患者404の画像を再構成するのに適したものであり、画像を投影データセットに基づいて、例えば反復スペクトル順方向アルゴリズム(iterative spectral forward algorithm)に基づいて再構成する処理手段を有する。本発明の実施態様によれば、検出器システム400の各検出器100は、ピクセルの群に関する1以上の漏れ電流測定を少なくとも各スキャンの前及び/又は後に実行するように構成される。これらの1以上の漏れ電流測定は、漏れ電流補償が実行された後に得られる残留漏れ電流の測定であり得る。CTスキャニングシステム401により得られた画像生データは、画像再構成ユニット405に送信され、測定された平均漏れ電流値を含むこともできる。従って、画像再構成ユニット405は、この情報を用いて、例えばスペクトラル順方向モデルにおける異なるエネルギ窓/チャンネルの閾値設定を補正することにより、画像品質を改善し及び/又はアーチファクトを防止すべくスペクトルシフトを補正できる。上記の再構成された画像を視覚化するための表示ユニットを、スキャニングシステム401に加えて設けられる。
【0071】
以上、本発明を図面及び上記記載において図示及び詳細に説明したが、このような図示及び説明は解説的又は例示的なもので限定するものではないと見なされるべきである。上記記載は、本発明の特定の実施態様を詳述したものである。しかしながら、本文において上記がどの様に詳細に見えようとも、本発明は多数の方法で実施できることが分かるであろう。本発明は開示された実施態様に限定されるものではない。
【0072】
開示された実施態様の他の変形例は、当業者によれば請求項に記載された本発明を実施するに際して図面、本開示及び添付請求項の精査から理解し実施できる。尚、請求項において、“有する”なる文言は他の要素又はステップを除外するものではなく、単数形は複数を除外するものではない。また、特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これら手段の組合せを有利に使用できないということを示すものではない。また、請求項における如何なる符号も、当該範囲を限定するものと見なしてはならない。
図1
図2
図3
図4