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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】フレームカバー及び乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/58 20060101AFI20220114BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20220114BHJP
【FI】
B60N2/58
B60N2/90
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017103646
(22)【出願日】2017-05-25
(65)【公開番号】P2018199352
(43)【公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】菊地 健太
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-001148(JP,A)
【文献】特開2012-116208(JP,A)
【文献】特開2013-067246(JP,A)
【文献】特開2004-229714(JP,A)
【文献】特開2016-132290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを構成するクッションフレームの少なくとも一部を覆って、該クッションフレームに取り付けられたシートベルト構成部材を挿通可能な開口が形成されたカバー本体と、
前記シートベルト構成部材の一部を覆いつつ、前記開口を塞がずに前記シートベルト構成部材を挿通可能として、前記カバー本体に取り付けられるキャップ部材と、を備え、
該キャップ部材は、爪部と、該爪部よりも下方に配置された係止部と、を有し、
前記係止部は、可撓性を有する爪であり、
前記カバー本体には、前記爪部が挿入される受入穴と、前記係止部が係止する被係止部と、前記係止部を表面側から裏面側に通すための切欠きと、が形成されており、
該被係止部は、前記爪部が前記受入穴に挿入された状態で、前記爪部を回動中心として前記キャップ部材の下側を前記カバー本体に向けて回動させたときの前記係止部の回動領域上に配設されており、
前記切欠きの縁の裏面側に補強リブが形成されていることを特徴とするフレームカバー。
【請求項2】
前記爪部は、第一部と、該第一部から屈曲して形成されて前記第一部に交差する方向に延在する第二部と、から構成されて、複数設けられており、
該第二部は、前記爪部が前記受入穴に挿入された状態で、前記爪部を回動中心として前記キャップ部材の下側を前記カバー本体に向けて回動させたときに、前記受入穴の裏側の縁に当接する部位である、ことを特徴とする請求項1に記載のフレームカバー。
【請求項3】
前記キャップ部材は、ドーム型に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフレームカバー。
【請求項4】
前記キャップ部材は、シート幅方向外側から見たときに半円形状に形成されており、
前記キャップ部材の外周における前記カバー本体側の面には、キャップ側フランジが突出して形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載のフレームカバー。
【請求項5】
前記カバー本体のシート幅方向外側の面と前記キャップ側フランジのシート幅方向内側の面とが面合わせとなる状態で、前記キャップ部材が前記カバー本体に取り付けられていることを特徴とする請求項に記載のフレームカバー。
【請求項6】
前記開口は、前記シートベルト構成部材が挿通する方向に垂直な面において矩形状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載のフレームカバー。
【請求項7】
前記カバー本体における前記開口の縁に、前記キャップ部材側に突出する本体側フランジが形成されており、
該本体側フランジは、前記キャップ部材におけるシート幅方向内側の面に当接していることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載のフレームカバー。
【請求項8】
シートバックフレームを有するシートバックと、
クッションフレームを有するシートクッションと、
請求項1乃至のいずれか一項に記載のフレームカバーと、
シートベルトと、
を備えた乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレームカバー及び乗物用シートに係り、特に、シートベルト構成部材を挿通可能な開口を有するフレームカバー及び該フレームカバーを備えた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートは、事故等が起きたときの着座者の移動を制限するためのシートベルトが設けられているものが一般的である。シートベルトは、帯状のウェビング、ウェビングに摺動可能に取り付けられたタング、タングに係合するバックル、及びウェビングの端部を固定するアンカー等から構成される。
【0003】
特許文献1の車両用シートにおけるクッションフレームの側方側を覆うカバー本体(同文献にはシールドと記載。)には、バックルを通すための開口が形成されている。バックルは、アンカプレートを介してクッションフレームに取り付けられている。そして、バックルに干渉しないように、カバー本体の開口にキャップ部材(同文献にはカバーと記載。)が被せられている。
【0004】
カバー本体には、嵌合片が形成されており、キャップ部材には、嵌合片に嵌合する挟持片が形成されている。
キャップ部材を組み付ける作業者は、キャップ部材をカバー本体に対して相対的にスライドさせ、挟持片を嵌合片に嵌合させることによって、キャップ部材をカバー本体に取り付けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-132290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バックルをクッションフレームに取り付けるためのボルト等がカバー本体の開口から突出していることにより、キャップ部材のスライドに干渉する場合には、キャップ部材をカバー本体に取り付けることができない。また、シートと車両のドア等の部材との隙間が狭い場合には、キャップ部材をスライドさせてカバー本体に取り付けるためのスペースを確保しづらいことがあった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンパクトな動作でキャップ部材をカバー本体に係止させて容易に取り付けることが可能なフレームカバー及び該フレームカバーを備えた乗物用シートを提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明のフレームカバーによれば、シートを構成するクッションフレームの少なくとも一部を覆って、該クッションフレームに取り付けられたシートベルト構成部材を挿通可能な開口が形成されたカバー本体と、前記シートベルト構成部材の一部を覆いつつ、前記開口を塞がずに前記シートベルト構成部材を挿通可能として、前記カバー本体に取り付けられるキャップ部材と、を備え、該キャップ部材は、爪部と、該爪部よりも下方に配置された係止部と、を有し、前記係止部は、可撓性を有する爪であり、前記カバー本体には、前記爪部が挿入される受入穴と、前記係止部が係止する被係止部と、前記係止部を表面側から裏面側に通すための切欠きと、が形成されており、該被係止部は、前記爪部が前記受入穴に挿入された状態で、前記爪部を回動中心として前記キャップ部材の下側を前記カバー本体に向けて回動させたときの前記係止部の回動領域上に配設されており、前記切欠きの縁の裏面側に補強リブが形成されていることにより解決される。
上記構成によれば、キャップ部材を回動させて係止部を被係止部に係止させることができるため、カバー本体におけるキャップ部材が取り付けられる部位の周りが狭くても、コンパクトな動作でキャップ部材をカバー本体に係止させて容易に取り付けることできる。
また、上記構成によれば、係止部が例えば樹脂等で形成されて可撓性を有することで、キャップ部材の下側をカバー本体に向けて回動させて係止部を被係止部に係止させる際に、切欠きの縁に当接したときに係止部が撓むことで、キャップ部材をスムーズに回動させることが可能となる。さらに、係止部を切欠きに通すようにして裏面側に係止させることで、切欠きの縁によって係止部の移動を制限してガタツキを抑制することができ、切欠きの縁に補強リブが形成されていることで、その剛性を高め、取付強度を高めることができる。
【0009】
また、前記爪部は、第一部と、該第一部から屈曲して形成されて前記第一部に交差する方向に延在する第二部と、から構成されて、複数設けられており、該第二部は、前記爪部が前記受入穴に挿入された状態で、前記爪部を回動中心として前記キャップ部材の下側を前記カバー本体に向けて回動させたときに、前記受入穴の裏側の縁に当接する部位であってもよい。
上記構成によれば、爪部が、第一部と、第一部から屈曲して形成されて第一部に交差する方向に延在する第二部と、から構成されて、複数設けられていることで、受入穴の縁の裏側に、爪部を潜りこませて第二部を当接させるようにして安定して仮組みが可能となり、組付作業性が向上する。また、足蹴り等によってキャップ部材に荷重が加わったとしても、爪部の第二部が受入穴の縁に引っかかることで、キャップ部材がカバー本体から外れることを抑制できる。
【0011】
また、前記キャップ部材は、ドーム型に形成されていると好ましい。
上記構成によれば、キャップ部材がドーム型であることで、キャップ部材を薄型軽量にしつつ剛性を確保することができる。
【0012】
また、前記キャップ部材は、シート幅方向外側から見たときに半円形状に形成されており、前記キャップ部材の外周における前記カバー本体側の面には、キャップ側フランジが突出して形成されていてもよい。
上記構成によれば、キャップ部材が、シート幅方向外側から見たときに半円形状であり、さらに、キャップ部材の外周におけるカバー本体側の面にキャップ側フランジが突出して形成されていることで、キャップ部材を薄肉軽量にしたとしても剛性を確保することができる。さらには、キャップ側フランジをカバー本体の一部に沿わせた状態でキャップ部材をカバー本体に取り付けることで、キャップ部材とカバー本体との取付強度を高めることができる。
【0013】
また、前記カバー本体のシート幅方向外側の面と前記キャップ側フランジのシート幅方向内側の面とが面合わせとなる状態で、前記キャップ部材が前記カバー本体に取り付けられていると好ましい。
上記構成によれば、カバー本体のシート幅方向外側の面とキャップ側フランジのシート幅方向内側の面とが面合わせとなる状態で、キャップ部材がカバー本体に取り付けられていることで、両者の間に隙間が生じることを回避して、強固に取り付けることができる。
【0014】
前記開口は、前記シートベルト構成部材が挿通する方向に垂直な面において矩形状に形成されていると好ましい。
上記構成によれば、開口が、シートベルト構成部材が挿通する方向に垂直な面において矩形状に形成されていることで、シートベルト構成部材の一部をキャップ部材が覆ったときに、シートベルト構成部材及びシートベルト構成部材をシートクッションフレームに取り付けるためのボルト・ナットとキャップ部材との間に隙間が生じることを抑制することができる。
【0015】
前記カバー本体における前記開口の縁に、前記キャップ部材側に突出する本体側フランジが形成されており、該本体側フランジは、前記キャップ部材におけるシート幅方向内側の面に当接していると好ましい。
上記構成によれば、本体側フランジがキャップ部材におけるシート幅方向内側の面に当接することによって、キャップ部材のカバー本体への取付位置が規制され、キャップ部材をカバー本体に強固に取り付けできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カバー本体におけるキャップ部材が取り付けられる部位の周りが狭くても、コンパクトな動作でキャップ部材をカバー本体に係止させて容易に取り付けることできる。
また、受入穴の縁の裏側に、爪部を潜りこませて第二部を当接させるようにして安定して仮組みが可能となり、組付作業性が向上し、また、キャップ部材がカバー本体から外れることを抑制できる。
また、キャップ部材をスムーズに回動させることが可能となり、係止部の移動を制限してガタツキを抑制することができ、剛性を高め、取付強度を高めることができる。
また、キャップ部材を薄型軽量にしつつ剛性を確保することができる。
さらに、キャップ部材とカバー本体との取付強度を高めることができる。
さらには、キャップ部材とカバー本体との間に隙間が生じることを回避して、強固に取り付けることができる。
また、シートベルト構成部材及びボルト・ナットとキャップ部材との間に隙間が生じることを抑制することができる。
キャップ部材のカバー本体への取付位置が規制され、キャップ部材をカバー本体に強固に取り付けできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る車両用シートの斜視図である。
図2】車両用シートの骨格を成すシートフレームの斜視図である。
図3図2に示すシートクッションフレームの一部に右側リクラカバーが取り付けられた状態を示す図であって、図2のIII方向矢視の右側側面図である。
図4図2に示すシートクッションフレームの一部に左側リクラカバー、及び取付部材を介してバックルが取り付けられた状態を示す図であって、図2のIV方向矢視の左側側面図である。
図5】右側リクラカバーと右側リクラカバーに取り付けられる前のキャップ部材を示す表面側側面図である。
図6】右側リクラカバーと右側リクラカバーに取り付けられた後のキャップ部材を示す裏面側側面図である。
図7】キャップ部材の裏面側を示す斜視図である。
図8】右側リクラカバーにキャップ部材が取り付けられる直前の状態を示す、キャップ部材近傍を下方から見た斜視図である。
図9】右側リクラカバーにキャップ部材が取り付けられた状態を示す、キャップ部材近傍を上方から見た斜視図である。
図10】(a)は、図5のX-X断面部分を示す図であり、右側リクラカバーにキャップ部材の爪部が掛けられた状態を示す模式的な説明図、(b)は、右側リクラカバーにキャップ部材の爪部が掛けられ、係止部が係止した状態を示す模式的な説明図である。
図11】左側リクラカバーにキャップ部材及び操作レバーが取り付けられた状態を示す斜視図である。
図12図11に示す左側リクラカバーから操作レバーが取り外された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0019】
また、以下では、本実施形態に係る乗物用シートとして、車両用シートSを例に挙げて説明することとするが、車両用シートSは本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明に係るフレームカバーを備えるシートは、車両以外の乗物にも適用可能であり、例えば、船舶や航空機、シート付きの産業用機械等にも適用可能である。
また、以下において、前後、左右、上下の各方向は、車両用シートSの着座者から見た各方向と一致することとする。
【0020】
<<全体構成について>>
まず、本発明のシートである本実施形態に係る車両用シートSの全体構成について、図1を主に参照し、車両用シートSの骨格を成すシートフレームFについて図2を主に参照して概説する。図1は、車両用シートSの斜視図、図2は、シートフレームFの斜視図である。
車両用シートSは、シートバックS1と、シートクッションS2と、シートベルト5と、から主に構成されている。また、車両用シートSは、骨格部分を成すシートフレームFの上にクッション材を載置した上で、表皮材により被覆することにより構成されている。
【0021】
シートバックS1は、着座者の背部を支持する背もたれ部を構成し、骨格部分を成すシートバックフレーム1を有する。
シートクッションS2は、着座者の臀部を支持する座部を構成し、骨格部分を成すシートクッションフレーム2を有する。
シートクッションS2の後端部に、リクライニング機構4が設けられている。シートバックS1は、シートクッションS2に設けられたリクライニング機構4によって、シートクッションS2に対する相対的な傾斜度を調整可能にシートクッションS2に接続されている。
【0022】
シートフレームFは、図2に示すように、シートバックフレーム1と、シートクッションフレーム2と、から主に構成されている。なお、図2においては、シートバックフレーム1の上部は省略して示す。
シートクッションフレーム2は、本発明のクッションフレームに相当するものであり、左右の両側後端部に設けられた板フレーム25R,25Lと、インナーブラケット14及びシートベルトブラケット15と、パイプフレーム24と、を主に備える。
【0023】
板フレーム25Rは、側面視略L字形状に形成されており、そのシート幅方向外側に、ブラケット6がボルト・ナットにより取り付けられている。ブラケット6には、シートベルト構成部材であるアンカー5cが固定される。
板フレーム25Lは、側面視平行四辺形状に形成されており、その前側の下端部に、インナーブラケット14がボルト・ナットにより取り付けられている。インナーブラケット14とシートベルトブラケット15とは一体的に溶接されており、シートベルトブラケット15には、後述する取付部材5dを介してバックル5eが取り付けられる。
板フレーム25Rは、シートバックフレーム1の右側下端部と連結フレーム11Rによって連結されており、板フレーム25Lは、シートバックフレーム1の左側下端部と連結フレーム11Lによって連結されている。
【0024】
パイプフレーム24は、上面視略U字状に形成されており、その右側後端部が板フレーム25Rに溶接されており、その左側後端部がインナーブラケット14に溶接されて構成されている。
【0025】
また、シートクッションフレーム2のシート幅方向両側には、ワイヤー3が配設されている。
ワイヤー3は、前後方向に延在しており、後方に折り返されて形成された前端部3aがパイプフレーム24に前端近傍に溶接されており、前方に折り返されて形成された後端部3bがパイプフレーム24の後端部に溶接されている。特に、ワイヤー3の後端部3bにおける折り返し部分は、他の部位よりもシート幅方向外側に突出するように形成されている。
ワイヤー3の後端部3bは、シート幅方向外側に突出する突出部であり、後述するように、シートベルト5が引っ張られて右側リクラカバー7又は左側リクラカバー8がシート幅方向内側に移動したときに、右側リクラカバー7又は左側リクラカバー8の内側面に当接するように形成されている。
【0026】
シートベルト5は、帯状のウェビング5aと、ウェビング5aに摺動可能に取り付けられたタング5bと、を備える。
ウェビング5aの一端は、シートクッションフレーム2のブラケット6に取り付けられたアンカー5cによって固定されている。
タング5bは、取付部材5dを介してシートクッションフレーム2に取り付けられたバックル5eによって保持されている。
特に、アンカー5c及び取付部材5dは、本発明に係るシートベルト構成部材に相当する。
【0027】
<<リクラカバーについて>>
次に、本発明のフレームカバーとしての右側リクラカバー7及び左側リクラカバー8の概要について、図3及び図4を参照して説明する。図3は、図2に示すシートクッションフレーム2の一部に右側リクラカバー7が取り付けられた状態を示す図であって、図2のIII方向矢視の右側側面図である。図4は、図2に示すシートクッションフレーム2の一部に左側リクラカバー8、及び取付部材5dを介してバックル5eが取り付けられた状態を示す図であって、図2のIV方向矢視の左側側面図である。
【0028】
右側リクラカバー7は、開口7bが形成されたカバー本体7aと、開口7bの縁に取り付けられるキャップ部材7cと、から構成される。
カバー本体7aは、シートクッションフレーム2の後端側を右側方から覆う部材である。カバー本体7aに形成された開口7bは、シートクッションフレーム2に取り付けられたアンカー5cをカバー本体7aの外側に挿通可能とするために形成されている。
キャップ部材7cは、アンカー5cの下側の一部を覆って、カバー本体7aの開口7bの周縁に取り付けられる部材である。キャップ部材7cは、カバー本体7aに形成された開口7bの上縁までを完全には塞いでいない。このため、アンカー5cは、キャップ部材7cと開口7bの上縁との間に隙間が形成されていることで、開口7bの隙間からカバー本体7aの外側に挿通可能となっている。
【0029】
左側リクラカバー8は、開口8bが形成されたカバー本体8aと、開口8bの縁に取り付けられるキャップ部材8cと、リクライニング機構4に作用してシートバックS1の傾斜度合いを操作可能とする操作レバー8dと、から構成される。
【0030】
カバー本体8aは、シートクッションフレーム2の後端側を左側方から覆う部材である。カバー本体8aに形成された開口8bは、シートクッションフレーム2に取り付けられたシートベルト構成部材である取付部材5dをカバー本体8aの外側に挿通可能とするために形成されている。
【0031】
キャップ部材8cは、取付部材5dの下側の一部を覆って、カバー本体8aの開口8bの周縁に取り付けられる部材である。キャップ部材8cは、カバー本体8aに形成された開口8bの上縁までを完全には塞いでいない。このため、取付部材5dは、キャップ部材8cと開口8bの上縁との間に隙間が形成されていることで、開口8bの隙間からカバー本体8aの外側に挿通可能としている。
【0032】
<右側リクラカバーについて>
次に、右側リクラカバー7について、図3に加え、図5図9を参照して詳細に説明する。
図5は、右側リクラカバー7と左側リクラカバー8に取り付けられる前のキャップ部材7cを示す表面側側面図、図6は、右側リクラカバー7に取り付けられた後のキャップ部材7cを示す裏面側側面図である。図7は、キャップ部材7cの裏面側を示す斜視図、図8は、右側リクラカバー7にキャップ部材7cが取り付けられる直前の状態を示す、キャップ部材7c近傍を下方から見た斜視図である。また、図9は、右側リクラカバー7にキャップ部材7cが取り付けられた状態を示す、キャップ部材7c近傍を上方から見た斜視図である。
【0033】
右側リクラカバー7のカバー本体7aは、キャップ部材7cが取り付けられる開口7bの周縁に、カバー本体7aにおけるシート幅方向外側にある他の外面よりも一段高く形成された座面70aを有する。
座面70aは、キャップ部材7cが取り付けられた状態において面で当接される部位であり、側面視略U字状に形成され、後ろ側に若干傾いた角度で形成されている。座面70aには、後述するキャップ部材7cの爪部71cが挿入される2個の長穴状の受入穴70bが一対の上側端部に、厚さ方向に貫通して形成されている。
受入穴70bが長穴状に形成されていることで、受入穴70bに通した後に回動する爪部71cの回動動作との干渉を回避しやすくなる。
【0034】
また、座面70aには、キャップ部材7cの係止部71dを表面側(シート幅方向における外側の側面側)から裏面側(シート幅方向における内側の側面側)に通すための切欠き70dが形成されている。切欠き70dは、座面70aの中央部分において、開口7bから下方に延在するように形成されている。
【0035】
図6に示すように、座面70aの裏面における切欠き70dの下側の縁面は、キャップ部材7cの係止部71dが係止する被係止部70cである。被係止部70cには、3個の小壁である補強リブ70eが裏面からシート幅方向内側に突出して形成されている。補強リブ70eがカバー本体7aに形成されていることで、係止部71dに係止される部位の剛性が高められ、キャップ部材7cとカバー本体7aとの取付強度が高められることとなる。
【0036】
係止部71dを切欠き70dに通すようにして座面70aの裏面側に係止させることで、切欠き70dの縁によって係止部71dの移動を制限してガタツキを抑制することができる。さらに、切欠き70dの縁にあたる被係止部70cに補強リブ70eが形成されていることで、その剛性を高めて、取付強度を高めることができる。
【0037】
図8に示すように、カバー本体7aにおける開口7bの縁のうち座面70aよりも開口7b側に、キャップ部材7c側であるシート幅方向外側に突出する本体側フランジ70hが形成されている。本体側フランジ70hの外側面は、図7に示して後述するキャップ部材7cに形成されたキャップ側フランジ71eの内側面に当接して、キャップ部材7cの移動や振れを抑制する機能を有する。
【0038】
カバー本体7aの裏面の前側には、突き当てリブ70fが、裏面からシート幅方向内側に向かって突出して上下に延在するように形成されている。突き当てリブ70fは、カバー本体7aがシートクッションフレーム2に取り付けられたときに、シート幅方向右側に配設されたワイヤー3の後端部3bに対向する位置に形成されている。
突き当てリブ70fは、シートベルト5が引っ張られて右側リクラカバー7(具体的には、カバー本体7a)がシート幅方向に変形しようとする際に、ワイヤー3の後端部3bに早いタイミングで当接するようにワイヤー3側に突出して形成されている。このように、突き当てリブ70fがワイヤー3に早いタイミングで当接することで、右側リクラカバー7のシート幅方向の変形を抑制し、カバー本体7aが破損することを抑制できる。
【0039】
<キャップ部材の構成について>
キャップ部材7c、及びカバー本体7aにおけるキャップ部材7cが取り付けられる部位は、キャップ部材8c、及びカバー本体8aにおけるキャップ部材8cが取り付けられる部位と略同一の構成である。このため、以下においてキャップ部材7cを主として説明する。
【0040】
キャップ部材7cは、図7に示すように、全体としてドーム型に形成されており、裏面側から突出する2個の爪部71cと、爪部71cの下方に配設された1個の係止部71dと、裏面側外周に設けられたキャップ側フランジ71eと、を主に有する。このように、キャップ部材7cがドーム型であることで、キャップ部材7cを薄型軽量にしつつ剛性を確保することができる。また、キャップ部材7cは、図5に示すように、シート幅方向外側から見たときに半円形状に形成されている。
【0041】
爪部71cは、カバー本体7aの受入穴70bに挿入されて、受入穴70bの縁に掛けられる部位である。
爪部71cは、キャップ部材7cのキャップ側フランジ71eの裏面から垂直に立設する第一部71xと、第一部71xに交差する方向に延在しており、第一部71xの端部から上方に屈曲して形成された第二部71yと、から構成されている。
第一部71xは、キャップ部材7cがカバー本体7aに取り付けられた状態において、受入穴70bを挿通する位置に配置される部位である。また、第二部71yは、爪部71cが受入穴70bに挿入された状態で、爪部71cを回動中心としてキャップ部材7cの下側をカバー本体7aに向けて回動させたときに、受入穴70bの裏側の縁に当接する部位である。なお、爪部71cを受入穴70bに挿入させ、カバー本体7aを回動させる動作の詳細については後述する。
【0042】
係止部71dは、キャップ部材7cをカバー本体7aに係止させるためのものであり、可撓性を有する樹脂製の爪である。係止部71dは、キャップ部材7cのキャップ側フランジ71eの裏面から垂直に立設する延在部71sと、延在部71sに交差する方向に延在しており、延在部71sの端部から下方に屈曲して形成された係止端71tと、から構成されている。
【0043】
延在部71sは、側面視略五角形状に形成された板状の部位である。キャップ部材7cには、延在部71sの上面から平面部71fに至る部位まで、キャップ部材7cの裏面から立設する立壁状のリブ71gが形成されている。リブ71gは、カバー本体7aに係止する際に撓む係止部71dが破損することがないように、係止部71dを補強するためのものである。
係止端71tは、カバー本体7aの裏面側に形成された被係止部70cに当接して係止する部位である。
【0044】
キャップ側フランジ71eは、キャップ部材7cの外周におけるカバー本体7a側の面に突出して形成されている。本体側フランジ70hの外側面が、図7に示して後述するキャップ部材7cに形成されたキャップ側フランジ71eの内側面に当接して、キャップ部材7cの移動や振れを抑制する機能を有する。さらに、キャップ側フランジ71eを本体側フランジ70hに沿わせた状態で、キャップ部材7cをカバー本体7aに取り付けることで、キャップ部材7cとカバー本体7aとの取付強度を高めることができる。さらには、カバー本体7aにキャップ部材7cが取り付けられた状態において、本体側フランジ70hの外周にキャップ側フランジ71eの内周が沿うように形成されていることで、両者間の位置ずれを防止することができる。
【0045】
キャップ側フランジ71eのシート幅方向内側の面とカバー本体7aのシート幅方向外側にある座面70aとが面合わせとなる状態で、キャップ部材7cはカバー本体7aに取り付けられる。このようにして、カバー本体7aとキャップ部材7cとの間に隙間が生じることを回避し、ガタツキが生じるのを抑えられるため、カバー本体7aはキャップ部材7cに強固に取り付けられることとなる。
【0046】
上記のように、キャップ部材7cが、シート幅方向外側から見たときに半円形状であり、さらに、キャップ部材7cの外周にキャップ側フランジ71eが突出して形成されていることで、キャップ部材7cを薄肉軽量にしたとしても剛性を確保することができる。
【0047】
キャップ部材7cは、その裏面側の中央部分に、平面状に形成された平面部71fを有する。この平面部71fは、キャップ部材7cがカバー本体7aに取り付けられた状態において、アンカー5cに対向する位置にある面である。そして、キャップ部材7cがカバー本体7aに取り付けられた状態において、カバー本体7aとキャップ部材7cとの隙間である開口7bは、アンカー5cが開口7bを挿通する方向に垂直な面において、図9に示すように、略矩形状に形成されている。
このように、キャップ部材7cが平面部71fを有して、開口7bの上記の面が矩形状に形成されていることで、アンカー5cの一部をキャップ部材7cが覆ったときに、アンカー5c及びアンカー5cをシートクッションフレーム2に取り付けるためのボルト・ナットとキャップ部材7cとの間に隙間が生じることを抑制して、車両用シートS全体としてコンパクトにすることが可能となる。
なお、キャップ部材7cは、裏面側に平面部71fを有するだけでなく、平面部71fに対向する部位の表面側も平面状の平面部71aを有する。
【0048】
<キャップ部材の取り付けについて>
次に、図10を主に参照して、カバー本体7aへのキャップ部材7cの取り付けについて説明する。図10(a)は、図5のX-X断面部分を示す図であり、右側リクラカバー7にキャップ部材7cの爪部71cが掛けられた状態を示す模式的な説明図、図10(b)は、右側リクラカバー7にキャップ部材7cの爪部71cが掛けられ、係止部71dが係止した状態を示す模式的な説明図である。
【0049】
まず、キャップ部材7cのカバー本体7aへの取付作業を行う作業者は、図10(a)に示すように、キャップ部材7cの2個の爪部71cをカバー本体7aの2個の受入穴70bに差し込む。このとき、作業者は、爪部71cの第二部71yが受入穴70bの縁面のうち裏面側にある裏側縁70gに対向する位置に至るまで、爪部71cを差し込む。
【0050】
そして、作業者は、爪部71cが受入穴70bに挿入された状態で、爪部71cを回動中心として、キャップ部材7cの下側をカバー本体7aに向けて回動させる。
このとき、作業者は、係止部71dを撓ませつつ切欠き70dに通す。なお、係止部71dが可撓性を有することで、キャップ部材7cが回動する際に、係止部71dが切欠き70dの縁に当接したときに撓むこととなる。このため、作業者は、係止部71dに力を加えて撓ませなくとも、係止部71dが自然に撓み、係止部71dが切欠き70dの裏面側の縁に至るまで、キャップ部材7cをスムーズに回動させることが可能となる。
【0051】
被係止部70cは、上記のように爪部71cを回動中心としてキャップ部材7cの下側をカバー本体7aに向けて回動させたときの係止部71dの回動領域R上に配設されている。このため、図10(b)に示すように、係止部71dは、切欠き70dの裏面側の縁に至るまで回動したときに、復元力によって被係止部70cに当接・係止することとなる。
【0052】
キャップ部材7cがカバー本体7aに取り付けられた状態において、本体側フランジ70hは、キャップ部材7cにおけるキャップ側フランジ71eと平面部71fの間にあるとより湾曲面71hに当接している。本体側フランジ70hが湾曲面71hに当接することによって、キャップ部材7cのカバー本体7aへの取付位置が規制され、キャップ部材7cを強固にカバー本体7aに強固に取り付けることができる。
【0053】
上記のように、2個の爪部71cが、第一部71xと、第一部71xから屈曲して形成されて第一部71xに交差する方向に延在する第二部71yと、から構成されていることで、受入穴70bに、爪部71cを潜りこませて第二部71yを裏側縁70gに当接させることができる。このため、キャップ部材7cをカバー本体7aに安定して仮組みすることが可能となり、組付作業性が向上する。また、乗員の足蹴り等によってキャップ部材7cに荷重が加わったとしても、爪部71cの第二部71yが受入穴70bの裏側縁70gに引っかかることでキャップ部材7cがカバー本体7aから外れることを抑制できる。
【0054】
上記のように、キャップ部材7cを回動させて、係止部71dを被係止部70cに係止させることができるため、コンパクトな動作でキャップ部材7cをカバー本体7aに係止させて容易に取り付けることできる。つまり、カバー本体7aにおけるキャップ部材7cが取り付けられる部位の周りが狭くても、キャップ部材7cをスライドさせるのではなく、回動させることによって、カバー本体7aに取り付けることが可能となる。
【0055】
<左側リクラカバーについて>
次に、左側リクラカバー8について図11及び図12を参照して説明する。図11は、左側リクラカバー8にキャップ部材8c及び操作レバー8dが取り付けられた状態を示す斜視図、図12は、図11に示す左側リクラカバー8から操作レバー8dが取り外された状態を示す斜視図である。なお、図11及び図12において、カバー本体8aに形成された開口8bから、図4に示すように取付部材5dが突出し、図2に示すシートベルトブラケット15が露出するものであるが、これを省略している。
【0056】
図11に示すように、着座者は、左側リクラカバー8のカバー本体8aに取り付けられた操作レバー8dを回動させ、シートバックS1の傾斜度の調整ができる。
【0057】
左側リクラカバー8は、図12に示すカバー本体8aから操作レバー8dを取り外された状態で露出する、操作レバー8dに覆われる被覆部8eを有する。
被覆部8eは、リターンバネ27の中央側を覆うように形成されたバネカバー部82aと、バネカバー部82aからシート幅方向外側に突出して形成されたリブ82b、カバー本体8aからシート幅方向外側に突出して形成されたリブ82cと、を有する。
【0058】
リクライニング機構4を構成するリターンバネ27の前後の一部は、支持ブラケット28によって覆われている。支持ブラケット28は、操作レバー8dとともに回動する部材である。
【0059】
バネカバー部82aは、リターンバネ27を縦断するように延在して、リターンバネ27の前後方向中央部を覆うように形成されている。カバー本体8aにおけるバネカバー部82aの前後に切欠き8fが形成されており、リターンバネ27が露出するように形成されている。このように、切欠き8fが形成されて、リターンバネ27を露出していることにより、リターンバネ27の交換等のメンテナンスが容易となる。
また、リブ82b及びリブ82cは、操作レバー8dと係止するために形成されたものであり、略円弧状に形成されてシート幅方向外側に突出して形成されている。
【0060】
また、カバー本体8aとキャップ部材8cとの隙間である開口8bは、バックル5eを取り付けるための取付部材5dが開口8bを挿通する方向に垂直な面において、図11に示すように略矩形状に形成されている。このように開口8bが形成されていることで、上記の開口7bを形成するカバー本体7aとキャップ部材7cとの構成による効果と同様の効果を奏し得る。
具体的には、取付部材5dをキャップ部材8cが覆ったときに、取付部材5d及び取付部材5dをシートクッションフレーム2に取り付けるためのボルト・ナットとキャップ部材8cとの間に隙間が生じることを抑制して、車両用シートS全体としてコンパクトにすることが可能となる。
【符号の説明】
【0061】
S 車両用シート(シート)
S1 シートバック
S2 シートクッション
F シートフレーム
R 回動領域
1 シートバックフレーム
2 シートクッションフレーム(クッションフレーム)
3 ワイヤー
3a 前端部
3b 後端部
4 リクライニング機構
5 シートベルト
5a ウェビング
5b タング
5c アンカー(シートベルト構成部材)
5d 取付部材(シートベルト構成部材)
5e バックル
6 ブラケット
7 右側リクラカバー(フレームカバー)
7a カバー本体
70a 座面
70b 受入穴
70c 被係止部
70d 切欠き
70e 補強リブ
70f 突き当てリブ
70g 裏側縁
70h 本体側フランジ
7b 開口
7c キャップ部材
71a 平面部
71c 爪部
71d 係止部
71e キャップ側フランジ
71f 平面部
71g リブ
71h 湾曲面
71s 延在部
71t 係止端
71x 第一部
71y 第二部
8 左側リクラカバー(フレームカバー)
8a カバー本体
8b 開口
8c キャップ部材
8d 操作レバー
8e 被覆部
82a バネカバー部
82b,82c リブ
8f 切欠き
11R,11L 連結フレーム
14 インナーブラケット
15 シートベルトブラケット
24 パイプフレーム
25R,25L 板フレーム
27 リターンバネ
28 支持ブラケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12