(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/427 20060101AFI20220114BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20220114BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B60N2/427
B60N2/68
B60R21/207
(21)【出願番号】P 2017151856
(22)【出願日】2017-08-04
【審査請求日】2020-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】田辺 仁一
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0053291(KR,A)
【文献】特開2015-163488(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0147243(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - 2/90
B60R 21/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートフレームの側部を構成するサイドフレームと、
前記サイドフレームの外側に配されるシートパッドと、
前記シートパッドを覆う表皮と、
エアバッグを具備し、前記シートパッドと前記サイドフレームの間に配されるエアバッグモジュールと、
前記エアバッグモジュールを支持する支持部材と、を備え、
前記表皮は、前記エアバッグの展開時に破断する破断部を有し、
前記シートパッドは、前記表皮の前記破断部に近接して設けられた脆弱部を有し、
前記支持部材は、
前記サイドフレームよりも外側に配される外側板と、
前記サイドフレームよりも内側に配される内側板と、
前記サイドフレームに固定される固定部と、
前記脆弱部に向けて延出し、前記脆弱部に少なくとも一部が配置される前方延出部
と、
前記サイドフレームの端部に係止される係止部と、を有することを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記支持部材は、前記サイドフレームの側板に面した状態で、前記サイドフレームに取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記係止部は、前記サイドフレームの前端部に係止されることを特徴とする請求項
1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記支持部材は、前記エアバッグモジュールの後方に配される後壁部を有することを特徴とする請求項1乃至
3のいずれかに記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記前方延出部は、断面がL字状であることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記脆弱部は、前記シートパッドにおいてスリットが形成される部分であることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記内側板は、前記固定部を有することを特徴とする請求項
1乃至6のいずれかに記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記内側板は、前記係止部を有し、
前記固定部は、前記係止部よりも上方に設けられることを特徴とする請求項
7に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記サイドフレームは、平板状の側板を具備する板状フレームを有し、
前記
サイドフレームの前端部は、シート内側に屈曲していることを特徴とする請求項
8に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記サイドフレームと、前記シートパッドと、前記表皮と、前記エアバッグモジュールと、前記支持部材とを有し、背もたれ部分となるシートバックと、
前記シートバックに連結され、着座部分となるシートクッションと、
前記シートバックの上部に配置されるヘッドレストと、を備えていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに係り、特にサイドエアバッグ装置を備える乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の側面衝突時に車両用シートの側部に設けられたエアバッグを膨出展開させて、乗員を保護するサイドエアバッグ装置を備えた車両用シートが知られている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術ではフレームに力布を取り付けて、力布によりエアバッグの展開方向を案内するようにしている。この力布を取り付けるために、サイドフレームには金具が溶接されている。このように、エアバッグの展開方向を案内するためには、力布及び力布を取り付けるためには金具等が必要であり、部品点数が多くなってしまっていた。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、エアバッグの展開方向を案内するために必要な部品点数を低減可能な乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、本発明に係る乗物用シートによれば、シートフレームの側部を構成するサイドフレームと、前記サイドフレームの外側に配されるシートパッドと、前記シートパッドを覆う表皮と、エアバッグを具備し、前記シートパッドと前記サイドフレームの間に配されるエアバッグモジュールと、前記エアバッグモジュールを支持する支持部材と、を備え、前記表皮は、前記エアバッグの展開時に破断する破断部を有し、前記シートパッドは、前記表皮の前記破断部に近接して設けられた脆弱部を有し、前記支持部材は、前記サイドフレームよりも外側に配される外側板と、前記サイドフレームよりも内側に配される内側板と、前記サイドフレームに固定される固定部と、前記脆弱部に向けて延出し、前記脆弱部に少なくとも一部が配置される前方延出部と、前記サイドフレームの端部に係止される係止部と、を有することにより解決される。
【0007】
上記の乗物用シートによれば、エアバッグモジュールのエアバッグの展開に応じて、支持部材の前方延出部が脆弱部を押し広げ、脆弱部を破断するように作用する。これにより、支持部材は、エアバッグが脆弱部を通じて表皮の破断部から膨出するようにエアバッグの展開方向を案内することができる。
すなわち、支持部材により、エアバッグの展開方向を案内する力布を代用することができる。これにより、エアバッグの展開方向を案内するために必要な部品点数を低減できる。
また、支持部材は内側から外側に向けた力に対しより対抗することができる。これにより、支持部材は乗員を安定して支持することができる。
【0008】
上記の乗物用シートにおいて、前記支持部材は、前記サイドフレームの側板に面した状態で、前記サイドフレームに取り付けられると好適である。
こうすることで、シート外側から内側への力が働くことにより、サイドフレームに支持された状態で前方延出部が内側に動くようになる。これにより、支持部材の前方延出部が、脆弱部を大きく押し広げるように作用させることができる。
【0010】
上記の乗物用シートにおいて、前記係止部は、前記サイドフレームの前端部に係止されると好適である。
こうすることで、支持部材の前側に掛かる荷重への耐力を向上できる。これにより、乗員をより安定して支持することができる。
また、係止部が支点となることで、前方延出部が脆弱部をより押し広げやすくなる。
【0011】
上記の乗物用シートにおいて、前記支持部材は、前記エアバッグモジュールの後方に配される後壁部を有すると好適である。
こうすることで、シートの後側の形状を保つことができる。また、エアバッグモジュールを後側の荷重から保護できる。
【0012】
上記の乗物用シートにおいて、前記前方延出部は、断面がL字状であると好適である。
こうすることで、前方延出部をエアバッグモジュールに沿って配置できる。これにより、シート内のスペースを有効利用できる。
【0013】
上記の乗物用シートにおいて、前記脆弱部は、前記シートパッドにおいてスリットが形成される部分であると好適である。
こうすることで、シートパッドに簡単な構成で脆弱部を設けることができる。
【0014】
上記の乗物用シートにおいて、前記内側板は、前記固定部を有すると好適である。
こうすることで、支持部材は、シート内側からの荷重への耐力を強化できる。
【0015】
上記の乗物用シートにおいて、前記内側板は、前記係止部を有し、前記固定部は、前記係止部よりも上方に設けられると好適である。
こうすることで、支持部材のサイドフレームへの固定を安定させることができる。
【0016】
上記の乗物用シートにおいて、前記サイドフレームは、平板状の側板を具備する板状フレームを有し、前記サイドフレームの前端部は、シート内側に屈曲していると好適である。
こうすることで、支持部材とサイドフレームの前端部との固定を安定させることができる。
上記乗物用シートにおいて、前記サイドフレームと、前記シートパッドと、前記表皮と、前記エアバッグモジュールと、前記支持部材とを有し、背もたれ部分となるシートバックと、前記シートバックに連結され、着座部分となるシートクッションと、前記シートバックの上部に配置されるヘッドレストと、を備えていると好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、エアバッグの展開方向を案内するために必要な部品点数を低減できる。
本発明によれば、支持部材の前方延出部が、脆弱部を大きく押し広げるように作用させることができる。
本発明によれば、支持部材により乗員を安定して支持することができる。
本発明によれば、前方延出部が脆弱部をより押し広げやすくなる。
本発明によれば、シートの後側の形状を保つことができる。
本発明によれば、シート内のスペースを有効利用できる。
本発明によれば、シートパッドに簡単な構成で脆弱部を設けることができる。
本発明によれば、支持部材は、シート内側からの荷重への耐力を強化できる。
本発明によれば、支持部材のサイドフレームへの固定を安定させることができる。
本発明によれば、支持部材とサイドフレームの前端部との固定を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1乃至
図6を参照しながら、本発明の実施の形態(以下、本実施形態)に係る乗物用シートとしての車両用シートSについて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0020】
以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの着座者から見たときの前後方向を意味し、車両の走行方向と一致する方向である。「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向を意味し、車両用シートの着座者から見たときの左右方向と一致する。また、「高さ方向」とは、車両用シートの高さ方向を意味し、車両用シートを正面から見たときの上下方向と一致している。
【0021】
まず、
図1乃至
図6の各図の概要について説明する。
図1は、車両用シートSの斜視図である。
図2は、シートバックフレーム10の斜視図である。
図3は、左側のサイドフレーム13の外側面図である。
図4は、左側のサイドフレーム13の内側面図である。
図5は、
図4のV-V断面図である。
図6は、
図4のVI-VI断面図である。
【0022】
図1に示すように、車両用シートSは、背もたれ部分となるシートバックS1と、着座部分となるシートクッションS2と、シートバックS1の上部に配され乗員の頭部を支持するヘッドレストS3を備える。
【0023】
シートバックS1は、
図2に示す骨格となるシートバックフレーム10に、シートパッド40を被せ、さらにシートパッド40を表皮50により被覆して構成したものである。
そして、シートバックS1の左側部の内側には、エアバッグモジュール20が設けられている。具体的には、
図5に示されるように、エアバッグモジュール20は、シートパッド40(第1パッド部40A)と、サイドフレーム13(パイプフレーム11と板状フレーム12の連結部)との間に配される。
【0024】
[エアバッグモジュール20の説明]
エアバッグモジュール20は、車両の衝突時の衝撃を吸収し乗員を保護する装置である。エアバッグモジュール20は、モジュールケースを有しないケースレスエアバッグモジュールとしてもよいし、モジュールケースを有していてもよく、特に限定されない。
【0025】
本実施形態では、エアバッグモジュール20は、エアバッグ21と、インフレータ22とを備えており、エアバッグ21とインフレータ22とは共にラップ材に包まれて保持されている。
ここで、インフレータ22は、図示しないハーネスからの入力信号に応じてガスを発生する装置である。具体的には、車両に設けられたセンサが衝突を検知した場合に、ハーネスを介してインフレータ22に作動信号が入力され、これにより、インフレータ22はガスを発生させてエアバッグ21にガスを注入する。こうして、車両の衝突時に、エアバッグ21が膨出展開するようになっている。
【0026】
[シートバックフレーム10の説明]
次に、エアバッグモジュール20が取り付けられるシートバックフレーム10の構成について説明する。なお、シートバックフレーム10は、車両用シートSの骨格をなすシートフレームのうち、シートバックS1部分の骨格部分である。すなわち、シートバックフレーム10は、シートフレームの一部である。
【0027】
図2に示されるように、シートバックフレーム10は、逆さU字形のパイプフレーム11と、それぞれシート幅方向端部をなす一対の板状フレーム12と、一対の板状フレーム12の下端部の間に架設される下部フレーム15と、を備える。
【0028】
パイプフレーム11の上部は、シートバックフレーム10の上部フレーム11Aを構成する。そして、上部フレーム11Aには、ヘッドレストホルダ16が二箇所形成される。このヘッドレストホルダ16に、ヘッドレストS3が取り付けられる。
【0029】
パイプフレーム11の側部11Bと、板状フレーム12の上端部はそれぞれ上下方向で重なるように配置されており、パイプフレーム11の側部11Bと、板状フレーム12の上端部は溶接により接合されている。
なお、本実施形態では、パイプフレーム11の側部11Bと、板状フレーム12とにより構成されるシートバックフレーム10の側部をサイドフレーム13とする。
【0030】
シートバックフレーム10には、パイプフレーム11の上部を架設するクロスメンバーフレーム14が設けられている。ここで、上記の「パイプフレーム11の上部」とは、パイプフレーム11において板状フレーム12よりも上部とする。換言すれば、上記の「パイプフレーム11の上部」とは、パイプフレーム11において上部フレーム11Aに向けて屈曲した部分である。
【0031】
左側のサイドフレーム13には、支持部材30を介してエアバッグモジュール20が取り付けられる。以下、支持部材30について説明する。
【0032】
[支持部材30の説明]
支持部材30は、車両に加わる外力からシート幅方向において乗員を支持する。また、支持部材30は、エアバッグモジュール20を支持するとともに、エアバッグモジュール20のエアバッグ21の展開方向を案内する機能も兼ねる。すなわち、本実施形態では、一般にエアバッグの展開方向を案内するために設けられる力布の代わりに、支持部材30が力布としての機能を果たす。
なお、支持部材30は、例えばTPO(Thermo Polyolefin)、TPU(Thermoplastic Polyurethane)等の樹脂を材料として形成されることとしてよい。
以下、支持部材30の構成の詳細について説明する。
【0033】
支持部材30は、
図2乃至
図6に示すように、外側板31、上壁部32、後壁部33、前方延出部34、内側板35及びリブ39を有する。
【0034】
外側板31は、サイドフレーム13のシート幅方向外側に配される。具体的には、外側板31は、板状フレーム12の側板12Aに面した状態で、サイドフレーム13に取り付けられる。
また、
図2及び
図3に示されるように、外側板31の下部には、第1穴31A及び第2穴31Bが形成される。この第1穴31Aと第2穴31Bは、板状フレーム12に形成されるエアバッグモジュール20の取付穴と対向する位置に設けられる。
【0035】
図2に示されるように、第1穴31Aと第2穴31Bにはそれぞれ、エアバッグモジュール20のインフレータ22から延出したスタッドボルト22Aが挿通される。
そして、エアバッグモジュール20のスタッドボルト22Aが、支持部材30の第1穴31A及び第2穴31Bと、板状フレーム12の取付穴に通されて、ナット等の締結具を用いて固定される。これにより、エアバッグモジュール20が外側板31に面した状態で、サイドフレーム13に対して固定されることとなる。
【0036】
上壁部32は、外側板31の上端部に設けられたフランジ部である。この上壁部32は、外側板31の上端からシート外側に向けて延出している。
この上壁部32は、エアバッグモジュール20の上部の位置を規制する。これにより、エアバッグモジュール20の上方への位置ずれを防止することができる。
【0037】
後壁部33は、外側板31の後端部に設けられたフランジ部である。この後壁部33は、外側板31の後端からシート外側に向けて延出している。なお、後壁部33と上壁部32とは、外側板31の後方上側の角部において接続している。
後壁部33は、エアバッグモジュール20の後方に配され、エアバッグモジュール20の後部の位置を規制する。これにより、支持部材30は、エアバッグモジュール20の後部への位置ずれを防止することができる。
また、後壁部33を設けることにより、車両用シートSの後部の形状を規定することも可能となっている。
【0038】
前方延出部34は、外側板31と内側板35の連結部から前方に延出した部分である。前方延出部34は、シート外側に延出する部分からシート前方に屈曲した部分を有する。
ここで、
図5に示されるように、前方延出部34は、断面がL字状に形成され、シートパッド40に設けられた脆弱部41に向けて延出し、脆弱部41に少なくとも一部が配置される。具体的には、前方延出部34の先端部が、シートパッド40の脆弱部41に差し込まれた状態で配置される。
【0039】
なお、
図5及び
図6に示されるように、シートパッド40は、第1パッド部40A及び第2パッド部40Bを有する。
第1パッド部40Aは、シート幅方向の外側に配され、第2パッド部40Bは、シート前部に配される。そして、第1パッド部40Aと第2パッド部40Bとは、シート前方の端部、すなわち脆弱部41において連結している。
【0040】
脆弱部41は、上下方向に形成され、第1パッド部40Aや第2パッド部40Bに比べて強度が弱い部分である。
例えば、脆弱部41は、第1パッド部40Aと第2パッド部40Bの接続部に1以上のスリットを形成することにより構成される。
また、脆弱部41は、スリットに限らず、第1パッド部40Aと第2パッド部40Bの接続部を周囲よりも強度の弱い部材により形成することで構成してもよい。
そして、脆弱部41の前方には、表皮50の破断部51が設けられる。すなわち、脆弱部41は、表皮50の破断部51に近接して設けられる。
【0041】
表皮50は、シートパッド40を被覆する部材であり、例えば革やクロスである。そして、表皮50は、第1パッド部40Aを被覆する側部表皮50Aと、第2パッド部40Bを被覆する前部表皮50Bとを有する。
ここで、側部表皮50Aと前部表皮50Bとは、破断部51において縫合されている。この破断部51は、上下方向に形成され、エアバッグモジュール20のエアバッグ21がシート内部から膨出する際の出口となっている。
【0042】
そして、車両に一定以上の衝撃が加わった場合に、エアバッグモジュール20のインフレータ22が作動して、エアバッグ21にガスを注入して、エアバッグ21を急膨張させる。これにより、エアバッグ21は、支持部材30をシート内側に押し付ける。
このとき、
図6に示されるように、支持部材30の外側板31は、板状フレーム12の側板12Aに当接し、支持されているため、外側板31の位置は略変わらない。
【0043】
一方で、支持部材30の前方延出部34は、エアバッグ21によりシート内側に押し付けられてシートパッド40の脆弱部41を押し広げるように作用する。
そして、前方延出部34が脆弱部41を押し広げることで、エアバッグ21が脆弱部41から破断部51に向けて展開し、その膨張の勢いで脆弱部41及び破断部51を破断しながらシート外側に膨出する。
このように、支持部材30は、前方延出部34を設けたことにより、エアバッグモジュール20のエアバッグ21の展開方向を案内することができる。なお、上記の展開方向とは、膨張前のエアバッグ21から破断部51に向かう方向である。
【0044】
次に、支持部材30の内側板35について説明する。内側板35は、支持部材30のうちシート幅方向内側に配される板状部である。また、図5に示されるように、内側板35は、前後において段差を有する段差構造をなし、前方に対し後方において外側板31との間隔が広がる形状となっている。
【0045】
図4及び
図5に示されるように、内側板35の後方端部には、2つの固定部36が設けられている。
固定部36は、ビス貫通孔と、ビス貫通孔の周囲の肉厚部とから構成される。ビス貫通孔は、ビス等の締結具37が挿通される孔である。このように、固定部36には、ビス貫通孔の周囲に肉厚部を設けていることにより、固定部36の剛性を向上させている。
【0046】
そして、
図5に示されるように、内側板35と外側板31の間にパイプフレーム11及び板状フレーム12の連結部が配される。そして、パイプフレーム11において固定部36と対向する位置には、例えばビス取り付け穴が設けられており、締結具37により固定部36とパイプフレーム11を締結する。このようにして、支持部材30は、パイプフレーム11と板状フレーム12の連結部分に固定される。
なお、固定部36は、締結具を用いた固定に限らず、溶接によりパイプフレーム11に対して接合されてもよい。
【0047】
このように、支持部材30の上部は、シート内側に配される内側板35において、パイプフレーム11に対して固定されている。
また、
図4に示されるように、支持部材30の下部は、内側板35の下部に設けられた係止部38により、板状フレーム12の前端部12Bに係止されている。そして、係止部38は、固定部36よりも下方に設けられる。
具体的には、本実施形態では、内側板35の下部には、複数のJフック形状の係止部38が形成されている。なお、係止部38の形状は、図示した形状に限られるものではなく、上下に延出した1つのJフックとしてもよい。
なお、係止部38は、板状フレーム12の前端部12Bに係止されるものとしたが、板状フレーム12の後端部12Cに係止されるものとしてもよい。
また、支持部材30は、板状フレーム12の前端部12Bに係止される係止部38と、板状フレーム12の後端部12Cに係止される係止部38を有していてもよい。
【0048】
一方で、支持部材30において、シート外側に配される外側板31については、板状フレーム12の側板12Aと当接してはいるものの締結されておらず、自由端となっている。
【0049】
このように、支持部材30の内側を固定し、外側を自由端としたことにより、支持部材30に対し、外側からの荷重が加わった場合には、固定部36及び係止部38が固定端となって外側板31の動き及び変形を促し、荷重を逃がすことができる。
すなわち、支持部材30の内側を固定端とし、外側を自由端としたことにより、外側からの衝撃吸収性を向上させている。その一方で、シート内側からの荷重に対しては、シート内側が固定端となっていることで、乗員を支持することができる。
【0050】
また、上述したように、本実施形態では、エアバッグモジュール20のエアバッグ21が膨張した際に、板状フレーム12の前端部12Bに係止された係止部38を支点として、前方延出部34が作用点として脆弱部41を押し広げることができる。これにより、エアバッグ21が脆弱部41及び破断部51を開裂させながらシート外側に膨出するように、エアバッグ21の展開方向を案内することができる。
【0051】
また、支持部材30において、内側板35と外側板31との間には1以上のリブ39が設けられる。
図
5に示されるように、リブ39は、シート前後方向に延出し、内側板35及び外側板31を連結している。リブ39は、複数設けられていることとしてよい。こうした場合、各々のリブ39は、内側板35と外側板31との間において、上端近傍から下端近傍にかけて略等間隔で配置することとしてよい。
また、リブ39のシート前後方向の長さは、内側板35及び外側板31よりも短くなっており、リブ39よりもシート後方において、内側板35と外側板31との間には空間が形成される。そして、かかる空間に、パイプフレーム11と板状フレーム12の連結部分が配置されることとなる。
なお、
図5に示されるように、リブ39と板状フレーム12は少なくとも一部が当接していることとしてよい。
【0052】
このように、リブ39が設けられていることで、内側板35と外側板31の剛性を高め、乗員のホールド性を高めるとともに、衝撃吸収性を高めることができる。なお、リブ39の形状は、図示する形状に限定されるものではなく、例えば上下に延在する平板状のものであってもよい。
【0053】
[その他の実施形態]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
例えば、支持部材30において、上壁部32や後壁部33を設けないようにしてもよい。
【0054】
また、上記の実施形態では、車両用シートを乗物シートの一例として説明したが、本発明は、飛行機用シート、船舶用シート等に対しても適用可能である。
【0055】
また、上記の実施形態では、車両用シートSの左側に支持部材30及びエアバッグモジュール20が取り付けられる構成について説明したが、車両用シートSの右側、又は左右の両方に支持部材30及びエアバッグモジュール20を取り付けるようにしてもよい。
【0056】
[車両用シートSにより奏される効果]
車両用シートS(乗物用シートに相当)によれば、エアバッグモジュール20のエアバッグ21の展開に応じて、支持部材30の前方延出部34が脆弱部41を押し広げ、脆弱部41を破断するように作用する。これにより、支持部材30は、エアバッグ21が脆弱部41を通じて表皮50の破断部51から膨出するようにエアバッグ21の展開方向を案内することができる。
すなわち、支持部材30により、エアバッグ21の展開方向を案内する力布を代用することができる。これにより、エアバッグ21の展開方向を案内するために必要な部品点数を低減できる。
【0057】
車両用シートSでは、支持部材30は、サイドフレーム13の側板12Aに面した状態で、サイドフレーム13に取り付けられる。
こうすることで、シート外側から内側への力に対し、支持部材30がサイドフレーム13に支持された状態で支持部材30の前方延出部34が内側に動くようになる。これにより、支持部材30の前方延出部34が、脆弱部41を大きく押し広げるように作用させることができる。
【0058】
車両用シートSでは、支持部材30は、サイドフレーム13の端部に係止される係止部38を有する。
こうすることで、支持部材30は内側から外側に向けた力に対し、より対抗することができる。これにより、乗員を安定して支持することができる。
【0059】
車両用シートSでは、係止部38は、サイドフレーム13の前端部12Bに係止される。
こうすることで、支持部材30の前側に掛かる荷重への耐力を向上できる。これにより、支持部材30は乗員をより安定して支持することができる。
また、係止部38が支点となることで、前方延出部34が脆弱部41をより押し広げやすくなる。
【0060】
車両用シートSでは、支持部材30は、エアバッグモジュール20の後方に配される後壁部33を有する。
こうすることで、シートの後側の形状を保つことができる。また、エアバッグモジュール20を後側の荷重から保護できる。
【0061】
車両用シートSでは、前方延出部34は、断面がL字状である。
こうすることで、前方延出部34をエアバッグモジュール20に沿って配置できる。これにより、シート内のスペースを有効利用できる。
【0062】
車両用シートSでは、脆弱部41は、シートパッド40においてスリットが形成される部分である。
こうすることで、シートパッド40に簡単な構成で脆弱部41を設けることができる。
【0063】
車両用シートSでは、支持部材30は、サイドフレーム13よりも外側に配される外側板31と、サイドフレーム13よりも内側に配される内側板35と、を有し、内側板35は、固定部36を有する。
こうすることで、支持部材30は、シート内側からの荷重への耐力を強化できる。
【0064】
車両用シートSでは、内側板35は、係止部38を有し、固定部36は、係止部38よりも上方に設けられる。
こうすることで、支持部材30のサイドフレーム13への固定を安定させることができる。
【0065】
車両用シートSでは、サイドフレーム13は、平板状の側板を具備する板状フレーム12を有し、前端部12Bは、シート内側に屈曲している。
こうすることで、支持部材30とサイドフレーム13の前端部12Bとの固定を安定させることができる。
【符号の説明】
【0066】
S 車両用シート(乗物用シート)
S1 シートバック
S2 シートクッション
S3 ヘッドレスト
10 シートバックフレーム(シートフレーム)
11 パイプフレーム
11A 上部フレーム
11B 側部
12 板状フレーム
12A 側板
12B 前端部
12C 後端部
13 サイドフレーム
14 クロスメンバーフレーム
15 下部フレーム
16 ヘッドレストホルダ
20 エアバッグモジュール
21 エアバッグ
22 インフレータ
22A スタッドボルト
30 支持部材
31 外側板
31A 第1穴
31B 第2穴
32 上壁部
33 後壁部
34 前方延出部
35 内側板
36 固定部
37 締結具
38 係止部
39 リブ
40 シートパッド
40A 第1パッド部
40B 第2パッド部
41 脆弱部
50 表皮
50A 側部表皮
50B 前部表皮
51 破断部