(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】既製杭の傾斜測定装置及び傾斜測定方法
(51)【国際特許分類】
E02D 13/00 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
E02D13/00 Z
(21)【出願番号】P 2021153675
(22)【出願日】2021-09-21
【審査請求日】2021-10-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ジャパンパイル株式会社が、令和3年2月17日に、東京都港区虎ノ門5丁目101番1,102番1,103番1外にて行った公開試験。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515277300
【氏名又は名称】ジャパンパイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100193286
【氏名又は名称】圷 正夫
(72)【発明者】
【氏名】東海林 大介
(72)【発明者】
【氏名】福井 寿大
(72)【発明者】
【氏名】荒木 繁幸
【審査官】皆藤 彰吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-234450(JP,A)
【文献】特開2020-200650(JP,A)
【文献】特開2003-105761(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0350088(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既製杭の杭頭部と係合可能なキャップ及び前記キャップに連結可能なロッドを備えるヤットコによって杭穴に沈設された既製杭の傾斜測定装置であって、
それぞれ目印が設けられた複数の検尺棒と、
前記複数の検尺棒を、前記ロッドの周方向に相互に離間して保持可能であるとともに前記ロッドに沿って案内可能なガイド機構と、を備え、
前記複数の検尺棒は、前記ガイド機構によって案内されながら、前記キャップと係合している前記既製杭の複数の周方向位置における当該既製杭の上端の鉛直方向位置に応じて上下動可能に配置される
ことを特徴とする既製杭の傾斜測定装置。
【請求項2】
前記ガイド機構は、前記検尺棒1本につき、前記ロッドの軸線方向にて相互に離間して配置され、且つ、前記検尺棒がそれぞれ挿通される複数の筒部を備え、
前記複数の筒部は、それぞれ、前記検尺棒を前記ロッドの軸線方向と直交する方向にて受け入れるための開状態と、前記検尺棒を案内するための閉状態との間で変形可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の既製杭の傾斜測定装置。
【請求項3】
前記ガイド機構は、前記検尺棒1本につき、
前記ロッドの軸線方向にて相互に離間して配置され、且つ、それぞれ前記検尺棒が挿通される複数の筒部と、
前記ロッドの軸線方向に相互に離間して前記ロッドにそれぞれ固定され、前記複数の筒部をそれぞれ支持する複数の支持部材と、を備え、
前記複数の支持部材は、それぞれ、同一形状の一対のブラケットであって、前記ロッドを囲繞するようにボルトによって相互に連結される一対のブラケットを有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の既製杭の傾斜測定装置。
【請求項4】
既製杭の杭頭部と係合可能なキャップ及び前記キャップに連結可能なロッドを備えるヤットコによって杭穴に沈設された既製杭の傾斜測定方法であって、
それぞれ目印が設けられた複数の検尺棒を用意する検尺棒用意工程と、
前記複数の検尺棒を、前記ロッドの周方向に相互に離間して保持可能であるとともに前記ロッドの軸線方向に沿って案内可能なガイド機構を用意するガイド機構用意工程と、
前記複数の検尺棒を、前記ガイド機構によって案内されながら、前記キャップと係合している前記既製杭の複数の周方向位置における当該既製杭の複数の周方向位置における当該既製杭の上端の鉛直方向位置に応じて上下動可能に配置する配置工程と、
前記目印の鉛直方向位置に基づいて前記既製杭の傾斜を測定する測定工程と、
を備えることを特徴とする既製杭の傾斜測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は既製杭の傾斜測定装置及び傾斜測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎杭には、杭打ち機を用いて杭穴を掘削した後、杭穴にセメントミルク等の固化材を注入し、更に既製杭を沈設するプレボーリング工法によって構築されるものがある。そして、プレボーリング工法を実施する際、既製杭の杭頭部を地表よりも深くに配置するために、ヤットコを用いて既製杭を杭穴内に押し込むことがある。従来、このようにして既製杭が沈設された場合、既製杭の杭頭(天端)の深さや、既製杭の傾斜を作業員が検尺棒を持って確認している。
【0003】
具体的には、検尺棒を持った作業員が検尺棒の下端を既製杭の杭頭に当接させた状態で、検尺棒に取り付けられたメモリをレベルという計測器によって読み取り、既製杭の杭頭の深さを測定している。
そして、作業員は、既製杭の杭頭に対し検尺棒を当接させる位置を、既製杭の周方向に数回変更してその都度深さを計り、得られた深さのばらつきから既製杭の傾きを測定している。
一方、特許文献1は、検尺棒を作業員が持つのではなく、ガイドにセットされた1本の検尺棒の下端部を杭頭に対し固定して杭頭深度を測定することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、作業員が検尺棒を持って既製杭の傾斜を測定する場合、検尺棒の当接位置を既製杭の周方向に数回変更しながら、各位置で検尺棒を鉛直に保って杭頭に当接させる必要がある。しかしながら、ソイルセメントや水が杭穴内に存在する状況下では、杭頭の深さが深くなるほど、作業者が検尺棒を持った状態で、既製杭の杭頭に対する検尺棒の当接位置を正確に把握し、調整することは困難になる。このため、杭頭の深さが深い場合、既製杭の傾斜を正確に測定することは困難である。
【0006】
一方、特許文献1が開示するヤットコ及び杭の施工方法によれば、杭頭深度を計測することはできるが、既製杭の傾斜までは計測することはできない。
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、杭穴に沈設された既製杭の傾斜を迅速、正確且つ容易に測定可能な既製杭の傾斜測定装置及び傾斜測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る既製杭の傾斜測定装置は、
既製杭の杭頭部と係合可能なキャップ及び前記キャップに連結可能なロッドを備えるヤットコによって杭穴に沈設された既製杭の傾斜測定装置であって、
それぞれ目印が設けられた複数の検尺棒と、
前記複数の検尺棒を、前記ロッドの周方向に相互に離間して保持可能であるとともに前記ロッドに沿って案内可能なガイド機構と、を備え、
前記複数の検尺棒は、前記ガイド機構によって案内されながら、前記キャップと係合している前記既製杭の複数の周方向位置における当該既製杭の上端の鉛直方向位置に応じて上下動可能に配置される。
【0008】
上記構成(1)によれば、複数の検尺棒に設けられた目印の鉛直方向位置に基づいて既製杭の傾斜を測定可能であるが、複数の検尺棒を用いることで、既製杭の周方向で検尺棒の周方向位置を変更する必要がない。また、複数の検尺棒をガイド機構によって案内・保持することで、複数の検尺棒の周方向位置を適切に保持することができ、所望の複数の周方向位置で既製杭の上端の位置を測定することができる。これらの結果、上記構成(1)によれば、杭穴に沈設された既製杭の傾斜を迅速、正確且つ容易に測定可能である。そして、既製杭が傾斜していることを即座に把握することができるので、既製杭の傾斜を速やかに修正することができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記構成(1)において、
前記ガイド機構は、前記検尺棒1本につき、前記ロッドの軸線方向にて相互に離間して配置され、且つ、前記検尺棒がそれぞれ挿通される複数の筒部を備え、
前記複数の筒部は、それぞれ、前記検尺棒を前記ロッドの軸線方向と直交する方向にて受け入れるための開状態と、前記検尺棒を案内するための閉状態との間で変形可能である。
【0010】
上記構成(2)によれば、筒部を開状態にして検尺棒を受け入れさせ、筒部を閉状態にして検尺棒を案内させることで、検尺棒の長さに拘わらず、検尺棒をガイド機構に容易に案内・保持させることができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記構成(1)又は(2)において、
前記ガイド機構は、前記検尺棒1本につき、
前記ロッドの軸線方向にて相互に離間して配置され、且つ、それぞれ前記検尺棒が挿通される複数の筒部と、
前記ロッドの軸線方向に相互に離間して前記ロッドにそれぞれ固定され、前記複数の筒部をそれぞれ支持する複数の支持部材と、を備え、
前記複数の支持部材は、それぞれ、同一形状の一対のブラケットであって、前記ロッドを囲繞するようにボルトによって相互に連結される一対のブラケットを有する
【0012】
上記構成(3)によれば、支持部材が、同一形状の一対のブラケットによって構成されているので、部品点数を削減することができる。この結果として、上記構成(3)の既製杭の傾斜測定装置にあっては、製造コストを削減することができるのみならず、現場での設置や管理が容易である。
【0013】
(4)本発明の少なくとも一実施形態に係る既製杭の傾斜測定方法は、
既製杭の杭頭部と係合可能なキャップ及び前記キャップに連結可能なロッドを備えるヤットコによって杭穴に沈設された既製杭の傾斜測定方法であって、
それぞれ目印が設けられた複数の検尺棒を用意する検尺棒用意工程と、
前記複数の検尺棒を、前記ロッドの周方向に相互に離間して保持可能であるとともに前記ロッドの軸線方向に沿って案内可能なガイド機構を用意するガイド機構用意工程と、
前記複数の検尺棒を、前記ガイド機構によって案内されながら、前記キャップと係合している前記既製杭の複数の周方向位置における当該既製杭の複数の周方向位置における当該既製杭の上端の鉛直方向位置に応じて上下動可能に配置する配置工程と、
前記目印の鉛直方向位置に基づいて前記既製杭の傾斜を測定する測定工程と、
を備える
【0014】
上記構成(4)によれば、複数の検尺棒に設けられた目印の鉛直方向位置に基づいて既製杭の傾斜を測定可能であるが、複数の検尺棒を用いることで、既製杭の周方向で検尺棒の周方向位置を変更する必要がない。また、複数の検尺棒をガイド機構によって案内・保持することで、複数の検尺棒の周方向位置を適切に保持することができ、所望の複数の周方向位置で既製杭の上端の位置を測定することができる。これらの結果、上記構成(4)によれば、杭穴に沈設された既製杭の傾斜を迅速、正確且つ容易に測定可能である。そして、既製杭が傾斜していることを即座に把握することができるので、既製杭の傾斜を速やかに修正することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、杭穴に沈設された既製杭の傾斜を迅速、正確且つ容易に測定可能な既製杭の傾斜測定装置及び傾斜測定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る既製杭の傾斜測定装置及びヤットコを用いながら、既製杭を杭打機によって沈設する様子を示す概略図である。
【
図2】ヤットコ及び既製杭とともに、傾斜測定装置を示す正面図である。
【
図3】
図2中のIII-III線に沿う断面図である。
【
図4】傾斜測定装置の上部をヤットコのロッドとともに概略的に示す斜視図である。
【
図5】ガイド機構を構成するガイド部材を概略的に示す図面であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は側面図である。
【
図6】ガイド部材を構成するブラケットを概略的に示す図面であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は側面図である。
【
図7】ガイド部材を構成するガイド本体を概略的に示す図面であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は左側面図、(d)は右側面図である。
【
図9】ヤットコのキャップとともに、ヤットコの振れ止めを概略的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図10】ヤットコのキャップ及びロッドとともに、ヤットコの振れ止め及びアダプタを概略的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)中のXb-Xb線に沿う断面図である。
【
図11】変形例のガイド本体を概略的に示す図であり、(a)は閉状態、(b)は開状態を示す平面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る既製杭の傾斜測定方法の概略的な手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る既製杭の傾斜測定装置(以下、単に傾斜測定装置ともいう)及びヤットコ2を用いながら、既製杭4を杭打機6によって沈設する様子を示す概略図である。
図2は、ヤットコ2及び既製杭4とともに、傾斜測定装置を示す正面図である。
図3は、
図2中のIII-III線に沿う断面図である。
図4は、傾斜測定装置の上部をヤットコ2のロッド14とともに概略的に示す斜視図である。
【0019】
図1に示したように、杭打機6はマスト8及びマスト8に上下動可能に取り付けられるモータ10を備えている。
図2に示したように、ヤットコ2は既製杭4の杭頭部に同軸に係合可能な円筒形状のキャップ12、及び、キャップ12と同軸に接続されるロッド14を備えており、ロッド14の上端がモータ10に接続される。杭打機6は、モータ10を下方に移動させることにより、既製杭4を杭穴16の所望深度まで押し込むことができる。この際、必要に応じて、モータ10によってヤットコ2及び既製杭4を回転させながら、既製杭4を杭穴16に押し込むことが可能である。
【0020】
図2~
図4に示したように、傾斜測定装置は、複数の検尺棒20及びガイド機構22を備える。
複数の検尺棒20は、それぞれ、例えば異形棒鋼によって構成されるが、検尺棒20は適当な長さ及び剛性を有していればよく、異形棒鋼に限定されることはない。検尺棒20は、測定対象の深さ以上の長さを有していればよく、複数の異形棒鋼を溶接や機械式継手等により連結したものであってもよい。測定対象の深さは、例えば5m以上であるが、これに限定されることはない。
複数の検尺棒20の上端側には、それぞれ目印(目盛り)24が設けられている。目印24は、検尺棒20の下端から計って所定の位置に設けられている。目印24は、例えば定規によって構成され、粘着テープや接着剤等によって検尺棒20に固定される。
【0021】
本実施形態では、傾斜測定装置は、好ましい態様として4本の検尺棒20を有しているが、少なくとも2本以上、好ましくは3本以上の検尺棒20を有していればよい。複数の検尺棒20は、ロッド14の周方向に相互に離間して配置される。本実施形態では、4本の検尺棒20が、周方向に60°、120°、60°の間隔で配置されているが、間隔はこれに限定されることはなく、90°の等間隔であってもよい。
【0022】
ガイド機構22は、複数の検尺棒20を、ロッド14の周方向に相互に離間して保持可能であるとともにロッド14に沿って案内可能に構成されている。
複数の検尺棒20は、ガイド機構22によって案内されながら、キャップ12と係合している既製杭4の上端に当接するように配置される。複数の検尺棒20が既製杭4の上端に当接する位置は、既製杭4の中心から径方向に離間しているとともに、既製杭4の周方向に異なっており、複数の検尺棒20は、当接する既製杭4の上端の部分の鉛直方向位置に応じて上下動可能に配置される。
なお、本実施形態では、検尺棒20が、ヤットコ2のキャップ12の天井壁に設けられた開口を通じて既製杭4の上端に直接当接しているが、既製杭4の上端の鉛直方向位置に間接的に連動するように構成されていてもよい。
【0023】
上記構成の既製杭の傾斜測定装置によれば、複数の検尺棒20が、杭穴16に沈設された既製杭4の上端に当接しており、対応する既製杭4の上端の部分の鉛直方向位置に応じて上下動する。そこで、複数の検尺棒20に設けられた目印24の鉛直方向位置を例えばレベルという計測装置を用いて測定すれば、得られた目印24の鉛直方向位置に基づいて既製杭4の傾斜を測定可能である。
【0024】
この際、複数の検尺棒20を用いることで、既製杭4の周方向で検尺棒20の周方向位置を変更する必要がない。また、複数の検尺棒20をガイド機構22によって案内・保持することで、複数の検尺棒20の周方向位置を適切に保持することができ、所望の複数の周方向位置で既製杭4の上端の位置を測定することができる。これらの結果、上記構成によれば、杭穴16に沈設された既製杭4の傾斜を迅速、正確且つ容易に測定可能である。そして、既製杭4が傾斜していることを、既製杭4がヤットコ2に係合している状態のままでも即座に、換言すれば、既製杭4の沈設作業中にリアルタイムで把握することができるので、既製杭4の傾斜を速やかに修正することができる。
【0025】
幾つかの実施形態では、
図4に示したように、各検尺棒20の上端には、抜け止め26が設けられる。これにより、既製杭4を分離してヤットコ2を引き上げるときに、検尺棒20が落下することを防止することができる。本実施形態では、抜け止め26は、鉤型の金属板によって構成されている。
【0026】
図5は、ガイド機構22を構成するガイド部材28を概略的に示す図面であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は側面図である。
図6は、ガイド部材28を構成するブラケット30を概略的に示す図面であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は側面図である。
図7は、ガイド部材28を構成するガイド本体32を概略的に示す図面であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は左側面図、(d)は右側面図である。
図8は、ガイド部材28の概略的な分解斜視図である。
【0027】
図2~
図4に示したように、ガイド機構22は、ロッド14に固定される複数のガイド部材28によって構成されている。本実施形態では、1つのガイド部材28は、ロッド14の直径方向に離間した2本の検尺棒20を保持・案内するように構成されている。従って、4本の検尺棒20を保持・案内するために、2個のガイド部材28が上下方向に隣接して配置される。そして、例えば、4本の検尺棒20を上下方向で3箇所保持・案内する場合、6個のガイド部材28が用意される。
【0028】
幾つかの実施形態では、
図5~
図8に示したように、ガイド部材28は、それぞれ2個のブラケット30及びガイド本体32によって構成されている。ブラケット30は、ロッド14の外径に対応する半円筒部34と、半円筒部34の周方向両端から径方向に一体に突出する矩形形状の耳部36,38とを有する。耳部36,38にはボルト穴が設けられており、2つのブラケット30でロッド14を挟みながら、耳部36,38をボルトによって締結することで、ガイド部材28がロッド14に固定される。
なお、ガイド部材28の落下を防止するために、例えば、滑り止め用のゴムシートを半円筒部34とロッド14の間に挟んでもよく、あるいは、ロッド14に滑り止め用の突起を設けておいてもよい。
【0029】
ガイド本体32は、検尺棒20が挿通される筒部40と、筒部40と一体に設けられた耳部42とを有する。筒部40には検尺棒20が挿通され、筒部40は検尺棒20を案内可能である。耳部42にはボルト穴が設けられている。ブラケット30の一方の耳部38は、他方の耳部36よりも長く、ブラケット30の耳部38とガイド本体32の耳部42が締結されることで、ガイド本体32がブラケット30に取り外し可能に固定される。
【0030】
上記ガイド部材28によって構成されるガイド機構22は、1本の検尺棒20につき、ロッド14の軸線方向にて相互に離間して配置され、且つ、それぞれ検尺棒20が挿通される複数の筒部40と、ロッド14の軸線方向に相互に離間してロッド14にそれぞれ固定され、複数の筒部40をそれぞれ支持する複数の支持部材と、を備えていることになる。そして、複数の支持部材は、それぞれ、同一形状の一対のブラケット30であって、ロッド14を囲繞するようにボルトによって相互に連結される一対のブラケット30を有することになる。
【0031】
上記構成によれば、支持部材が、同一形状の一対のブラケット30によって構成されているので、部品点数を削減することができる。この結果として、上記構成の既製杭の傾斜測定装置にあっては、製造コストを削減することができるのみならず、現場での設置や管理が容易である。
【0032】
幾つかの実施形態では、
図6及び
図8等に示したように、ブラケット30にはロッド14の径方向に離間するように複数のボルト穴が設けられており、ブラケット30とガイド本体32を締結するボルト穴を適宜選択することにより、筒部40の径方向位置を適宜選択可能である。
上記構成によれば、異なる径の既製杭4に容易に対応することができる。なお、ロッド14の径方向に離間する複数のボルト穴は、ガイド本体32に設けてもよい。また、複数のボルト穴を設けることに代えて、長穴を設けてもよい。更に、筒部40の支持部材は、ロッド14の径方向での長さが可変のパンタグラフ等によって構成されていてもよい。
【0033】
図9は、ヤットコ2のキャップ12とともに、ヤットコ2の振れ止め46を概略的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
幾つかの実施形態では、傾斜測定装置は、
図9に示すように、ヤットコ2の振れ止め46を有する。振れ止め46は、例えばヤットコ2のキャップ12の振れを防止するものであり、キャップ12の外径と略同径の内径の円筒によって構成される。振れ止め46は、杭打機6のマスト8の下端部に固定可能である。なお、振れ止め46は、キャップ12とともに上下動可能にマスト8に取り付けられていてもよい。
【0034】
図10は、ヤットコ2のキャップ12及びロッド14とともに、ヤットコ2の振れ止め46及びアダプタ48を概略的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)中のXb-Xb線に沿う断面図である。
幾つかの実施形態では、
図10に示したように、傾斜測定装置は、アダプタ48を更に備えている。アダプタ48は、ヤットコ2のロッド14の振れを防止するためのものであり、振れ止め46に着脱自在に固定される。
例えば、アダプタ48は、
図10に示したように、振れ止め46と係合可能な係合部50、ロッド14と当接可能な当接部52、及び、係合部50と当接部52を連結する腕部54とを有する。本実施形態では、例えば、3つのアダプタ48が振れ止め46に固定される。なお、アダプタ48は、ガイド部材28と干渉しないように設置されるのが好ましい。
【0035】
図11は、変形例のガイド本体56を概略的に示す図であり、(a)は閉状態、(b)は開状態を示す平面図である。
図11に示すように、ガイド本体56の筒部58は、検尺棒20をロッド14の軸線方向と直交する方向にて受け入れるための開状態と、検尺棒20を案内するための閉状態との間で変形可能である。例えば、筒部58は、相互にピン結合された2つの半円筒部によって構成され、半円筒部はボルトによって閉状態に固定可能である。
【0036】
上記構成によれば、筒部58を開状態にして検尺棒20を受け入れさせ、筒部58を閉状態にして検尺棒20を案内させることで、検尺棒20の長さに拘わらず、検尺棒20をガイド機構22に容易に案内・保持させることができる。
【0037】
図12は、本発明の一実施形態に係る既製杭の傾斜測定方法(以下、単に傾斜測定方法ともいう)の概略的な手順を示すフローチャートである。傾斜測定方法は、既製杭4の杭頭部と係合可能なキャップ12及びキャップ12に連結可能なロッド14を備えるヤットコ2によって杭穴16に沈設された既製杭4の測定方法である。
【0038】
図12に示したように、傾斜測定方法は、検尺棒用意工程S1、ガイド機構用意工程S3、配置工程S5、及び、測定工程S9を備えている。
検尺棒用意工程S1では、それぞれ目印24が設けられた複数の検尺棒20を用意する。
ガイド機構用意工程S3では、複数の検尺棒20を、ロッド14の周方向に相互に離間して保持可能であるとともにロッド14の軸線方向に沿って案内可能なガイド機構22を用意する。
配置工程S5では、複数の検尺棒20を、ガイド機構22によって案内されながら、キャップ12と係合している既製杭4の複数の周方向位置における当該既製杭4の複数の周方向位置における当該既製杭4の上端の鉛直方向位置に応じて上下動可能に配置する。
そして、測定工程S9は、既製杭4を沈設する杭沈設工程S7の後に行われ、目印24の鉛直方向位置に基づいて既製杭4の深度及び傾斜を測定する。
測定の結果、既製杭4が傾斜していなければ杭沈設工程S7は終了し、既製杭4の周囲のソイルセメントの強度がある程度発現した後に、ヤットコ2が取り外される。一方、既製杭4が傾斜している場合、既製杭4を引き上げ、鉛直度を確認し、杭沈設工程S7が再度行われる。
【0039】
上記構成によれば、複数の検尺棒20に設けられた目印24の鉛直方向位置に基づいて既製杭4の傾斜を測定可能であるが、複数の検尺棒20を用いることで、既製杭4の周方向で検尺棒20の周方向位置を変更する必要がない。また、複数の検尺棒20をガイド機構22によって案内・保持することで、複数の検尺棒20の周方向位置を適切に保持することができ、所望の複数の周方向位置で既製杭4の上端の位置を測定することができる。これらの結果、上記構成によれば、杭穴16に沈設された既製杭4の傾斜を迅速、正確且つ容易に測定可能である。そして、既製杭4が傾斜していることを即座に把握することができるので、既製杭4の傾斜を速やかに修正することができる。
【0040】
最後に本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変更を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0041】
2 ヤットコ
4 既製杭
6 杭打機
8 マスト
10 モータ
12 キャップ
14 ロッド
16 杭穴
20 検尺棒
22 ガイド機構
24 目印
26 抜け止め
28 ガイド部材
30 ブラケット
32 ガイド本体
34 半円筒部
36,38 ブラケットの耳部
40 筒部
42 ガイド本体の耳部
46 振れ止め
48 アダプタ
50 係合部
52 当接部
54 腕部
56 ガイド本体
58 筒部
【要約】
【課題】杭穴に沈設された既製杭の傾斜を迅速、正確且つ容易に測定可能な既製杭の傾斜測定装置及び傾斜測定方法を提供する。
【解決手段】既製杭の傾斜測定装置は、既製杭の杭頭部と係合可能なキャップ及びキャップに連結可能なロッドを備えるヤットコによって杭穴に沈設された既製杭の傾斜測定装置であって、それぞれ目印が設けられた複数の検尺棒と、複数の検尺棒を、ロッドの周方向に相互に離間して保持可能であるとともにロッドに沿って案内可能なガイド機構と、を備え、複数の検尺棒は、ガイド機構によって案内されながら、キャップと係合している既製杭の複数の周方向位置における当該既製杭の上端の鉛直方向位置に応じて上下動可能に配置される。
【選択図】
図2