(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】燃料供給装置、及び、微粒子除去フィルタの再生システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/36 20060101AFI20220114BHJP
F01N 3/025 20060101ALI20220114BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20220114BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
F01N3/36 C
F01N3/025 101
F01N3/24 E
F01N3/035 E
(21)【出願番号】P 2018022653
(22)【出願日】2018-02-12
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 和弘
(72)【発明者】
【氏名】江田 智一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 清孝
(72)【発明者】
【氏名】金井 照昌
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 圭太
(72)【発明者】
【氏名】末田 圭太郎
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-117395(JP,A)
【文献】特開平08-177467(JP,A)
【文献】特開2004-143981(JP,A)
【文献】特開昭48-013720(JP,A)
【文献】特開2007-154725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00-3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気管内に燃料を供給する燃料供給装置であって、
上記排気管に装着され、上記排気管内に上記燃料の蒸気を放散する燃料放散部と、
上記燃料放散部に上記燃料を提供する燃料提供部と、を備え、
上記燃料放散部は、
上記排気管内を流通する排気ガスに接し、かつ、多孔質セラミック体で構成され、上記燃料提供部から供給された上記燃料がしみ出す燃料滲み出し面を有
し、
前記燃料放散部は、
前記燃料提供部から提供された前記燃料を一時的に収容し先端側に溜める収容部を有し、
上記収容部の内壁面のうち、上記収容部内に収容され溜められた上記燃料が触れる接触内壁面の少なくとも一部が、前記燃料滲みだし面をなす前記多孔質セラミック体で構成されてなる
燃料供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料供給装置であって、
前記多孔質セラミック体は、多孔質アルミナセラミックからなる
燃料供給装置。
【請求項3】
内燃機関の排気管に設置された酸化触媒及び微粒子除去フィルタに向けて、上記排気管の上流側から燃料を供給して、上記微粒子除去フィルタの再生処理を行う微粒子除去フィルタの再生システムであって、
請求項1
又は請求項2に記載の燃料供給装置、及び、
上記微粒子除去フィルタの上記再生処理を開始する指示に基づき、前記燃料提供部に、前記燃料放散部に向けて前記燃料を提供させる提供指示手段を備える
微粒子除去フィルタの再生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気管内に設置された酸化触媒及び微粒子除去フィルタに向けて、燃料を供給する燃料供給装置、及び、これを用いた微粒子除去フィルタの再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンなどの内燃機関の排気ガスからPM(Particulate Matter;粒子状物質)を除去するため、DPF(Diesel Particulate Filter),GPF(Gasoline Particulate Filter)などの微粒子除去フィルタが用いられる。例えば、DPFを排気管に接続して排気ガスからPMを捕集すると共に、DPFの上流側に設けたDOC(Diesel Oxidation Catalyst;酸化触媒)で排気ガス中のNOXをNO2とし、このNO2の酸化力でPMを酸化(燃焼)させてPMを除去することが行われる。
【0003】
但し、PMの除去が十分でなく、DPFにPMが堆積した場合には、排気ガス中に未燃の燃料を添加し、この燃料をDOCで酸化燃焼させて排気ガスの温度を昇温させ、DPFに堆積したPMを強制的に燃焼除去する、いわゆるDPFの再生を行う。排気ガスに未燃の燃料を添加する手法には、燃焼行程を終えた直後のエンジン筒内に燃料インジェクタから未燃燃料を噴射するポスト噴射や、DOCよりも上流側の排気管に設けた排気管インジェクタから未燃燃料を噴射する排気管噴射が知られている。
【0004】
このうち、ポスト噴射では、従来のエンジンシステムの構成のままで実行可能であるが、エンジン筒内のオイル希釈、排気ガスのスモーク発生、運転性への影響などの問題がある。
一方、排気管噴射では、上述の問題を発生させることなく排気ガスを昇温し、DPF再生を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5720229号公報
【文献】特開2013-108444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、排気管噴射に用いる排気管インジェクタは、構造が複雑である。また、排気管噴射では、DOCの上流に配置する排気管インジェクタからDOCまでの距離を十分確保できないために、噴射した燃料液滴が排気管内壁に付着して、DPF再生に寄与しない無駄な燃料が発生する場合がある。また、排気ガス中に燃料(液滴)を十分に分散して供給し難く、多くの燃料を噴射した場合には、DOCで燃料液滴の一部を酸化できず白煙を生じる場合も有る。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、簡単な構造でありながら、排気ガスに適切に分散した燃料を排気管内に供給できる燃料供給装置、及び、これを用いた微粒子除去フィルタの再生システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、内燃機関の排気管内に燃料を供給する燃料供給装置であって、上記排気管に装着され、上記排気管内に上記燃料の蒸気を放散する燃料放散部と、上記燃料放散部に上記燃料を提供する燃料提供部と、を備え、上記燃料放散部は、上記排気管内を流通する排気ガスに接し、かつ、多孔質セラミック体で構成され、上記燃料提供部から供給された上記燃料がしみ出す燃料滲み出し面を有し、前記燃料放散部は、前記燃料提供部から提供された前記燃料を一時的に収容し先端側に溜める収容部を有し、上記収容部の内壁面のうち、上記収容部内に収容され溜められた上記燃料が触れる接触内壁面の少なくとも一部が、前記燃料滲みだし面をなす前記多孔質セラミック体で構成されてなる燃料供給装置である。
【0009】
本発明の燃料供給装置では、燃料放散部のうち多孔質セラミック体の燃料滲み出し面から燃料の蒸気を放散する。このため、燃料噴射の機構などが不要であり、構造が簡単である。また、排気管インジェクタのように、噴射された燃料液滴が排気管の内壁面に付着し、微粒子除去フィルタの再生に寄与しない無駄な燃料が生じることがなく、燃料を排気ガス中に適切に分散して、酸化触媒及び微粒子除去フィルタなどに向けて供給できる。
また、この燃料供給装置では、燃料放散部に燃料を一時的に収容する収容部を有しており、この収容部の接触内壁面の少なくとも一部が、燃料滲みだし面をなす前記多孔質セラミック体で構成されている。このため、収容部に提供された燃料を、燃料滲みだし面をなす多孔質セラミック体を通じて、速やかに燃料滲み出し面から滲み出させることができる。
【0010】
なお、多孔質セラミック体の燃料滲み出し面は、排気管内を流通する排気ガスに接する面で、かつ、燃料が滲み出す面であり、燃料放散部のうち排気管内に位置する部分の全面を構成していても良いし、一部の面を構成していても良い。また、多孔質セラミック体を排気管の内壁面の一部をなす形態とし、多孔質セラミック体の内壁面を燃料滲み出し面に構成しても良い。また、排気管自体あるいは排気管に接続した部材を用いて、排気管に径方向外側に膨出した膨出部を形成し、この膨出部内に、燃料滲み出し面の一部または全部を位置させる形態としても良い。
【0011】
また、燃料放散部の外形形状としては、棒状、半球状、円筒の周方向一部の形状などが挙げられ、燃料放散部の燃料滲み出し面は、燃料放散部の全部または一部をなす形状が挙げられる。
多孔質セラミック体をなす多孔質セラミックとしては、アルミナ系セラミックや、コージェライト系セラミック、炭化ケイ素系セラミックなどが挙げられる。
また、燃料放散部の燃料滲み出し面からより多くの燃料を放散させるため、燃料放散部に供給した燃料を加圧するように構成しても良い。
さらに、燃料提供部としては、燃料を燃料放散部に提供するポンプが挙げられ、燃料や燃料ガスのポンプへの逆流を防止する逆止弁などを含めることもできる。
【0014】
なお、燃料放散部の収容部の形態としては、例えば、有底筒状の多孔質セラミック体のみを収容部とする形態や、金属筒とこの金属筒の一端を閉塞して底部をなす多孔質セラミック体とからなる収容部の形態などが挙げられる。
【0015】
さらに、上述のいずれかに記載の燃料供給装置であって、前記多孔質セラミック体は、多孔質アルミナセラミックからなる燃料供給装置とすると良い。
【0016】
燃料供給装置の燃料放散部は、高温(例えば150~600℃)の排気ガスに曝されるが、この燃料供給装置では、燃料放散部に、多孔質アルミナセラミックからなる多孔質セラミック体を用いているので、耐熱性良好な燃料放散部を有する燃料供給装置とすることができる。
【0017】
あるいは、内燃機関の排気管に設置された酸化触媒及び微粒子除去フィルタに向けて、上記排気管の上流側から燃料を供給して、上記微粒子除去フィルタの再生処理を行う微粒子除去フィルタの再生システムであって、前述のいずれか1項に記載の燃料供給装置、及び、上記微粒子除去フィルタの上記再生処理を開始する指示に基づき、前記燃料提供部に、前記燃料放散部に向けて前記燃料を提供させる提供指示手段を備える微粒子除去フィルタの再生システムとすると良い。
【0018】
この微粒子除去フィルタの再生システムでは、微粒子除去フィルタの再生にあたり、前述の簡単な構造の燃料供給装置を用い、再生処理の指示を受けた提供指示手段が、燃料提供部に燃料放散部に向けて燃料を提供させるので、システム全体としても簡単な構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係り、燃料供給装置を用いてDOCおよびDPFに燃料を供給して、DPFの再生を行う再生システムを示す断面説明図である。
【
図2】実施形態に係り、排気管に取り付けた燃料供給装置の燃料放散部から燃料の蒸気を放散する様子を示す説明図である。
【
図3】変形形態1に係り、排気管に取り付けた燃料供給装置の燃料放散部の形態を示す説明図である。
【
図4】変形形態2に係り、排気管に取り付けた燃料供給装置の燃料放散部の形態を示す説明図である。
【
図5】変形形態3に係り、排気管に取り付けた燃料供給装置の燃料放散部の形態を示す説明図である。
【
図6】変形形態4に係り、排気管に取り付けた燃料供給装置の燃料放散部の形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態)
本実施形態に係る燃料供給装置11及びこれを用いたDPF再生システム100について、
図1,
図2を参照して説明する。
車両(図示せず)に搭載されたディーゼルエンジン(内燃機関、以下単にエンジンとも言う)ENGは、エンジン制御ユニットECUによって制御されている。また、エンジンENGの排気管EXPの途中には、NOx及びPM(微粒子)を取り除くべく、酸化触媒DOC、及び、この酸化触媒DOCの下流側EXDに取り付けられたフィルタ(微粒子除去フィルタ)DPFを備えている。また、排気管EXPのうち、酸化触媒DOCとフィルタDPFとの間、及びフィルタDPFの下流側EXDにはそれぞれ排気温センサST1,ST2が装着されており、各位置での排気ガスEGの排気温データが、エンジン制御ユニットECUに入力されている。
【0021】
さらに、本実施形態では、フィルタDPFの再生処理のために、排気管EXPのうち、酸化触媒DOCの上流側EXUに、燃料供給装置11の燃料放散部17が装着されている。この燃料供給装置11は、フィルタDPFの再生処理時に、タンクTNKに貯留された燃料(軽油)FLを、酸化触媒DOCに排気管EXPの上流側EXUから供給する装置である。燃料供給装置11は、具体的には、燃料FLを排気管EXP内に放散する燃料放散部17及び、燃料放散部17に燃料を提供する燃料提供部16からなる。
このうち、燃料提供部16は、第1燃料パイプ13、第2燃料パイプ14を通じて、タンクTNK内の燃料FLを燃料ポンプ12により燃料放散部17に提供する。また、第2燃料パイプ14の途中には、燃料FLの逆流を防止する逆止弁15を備えている。
【0022】
本実施形態では、燃料供給装置11及びコントローラ10が、DPF再生システム100を構成しており、燃料供給装置11は、コントローラ10により制御される。具体的には、エンジン制御ユニットECUがフィルタDPFの再生処理の要否を監視しており、フィルタDPFの再生処理が可能となったタイミングで、エンジン制御ユニットECUからコントローラ10に向けて再生処理開始の信号が入力される。すると、コントローラ10は、エンジン制御ユニットECUからのフィルタDPFの再生処理の指示に基づき、燃料ポンプ12の駆動を制御する。具体的には、フィルタDPFの再生処理に適切な量の燃料FLを燃料放散部17に提供するべく、必要な期間(例えば5秒間)に亘り燃料ポンプ12を駆動し、第2燃料パイプ14を通じて燃料FLを燃料放散部17に提供する。
【0023】
次いで、燃料放散部17の詳細について説明する。燃料放散部17は、放散部材19と、この放散部材19を保持する保持部材18とからなる。放散部材19は、その全体が、アルミナ系の多孔質セラミックからなる多孔質セラミック体で構成されている。この放散部材19は、本実施形態では、先端が半球殻状とされて閉じられた先端有底の円筒状で、基端部分がフランジ状とされた形態を有する。一方、保持部材18は、金属製で、放散部材19の基端部分を保持している。
なお、本実施形態の燃料放散部17では、排気管EXP内に露出しているのは、放散部材19のみであり、保持部材18は排気管EXP内に露出していない。
【0024】
フィルタDPFの再生処理の際には、第2燃料パイプ14を通じて提供された燃料FLが、燃料放散部17の収容部17Cに一時的に収容される。収容部17Cは、保持部材18の円筒状の保持部材収容部18C、及び放散部材19の有底円筒状の放散部材収容部19Cとからなり、収容部17Cの内壁面17CNは、保持部材収容部18Cの内壁面18CN、及び、放散部材収容部19Cの内壁面19CNからなる。
【0025】
本実施形態では
図2に示すように、燃料FLは、燃料ポンプ12により、放散部材19の放散部材収容部19Cの一部に溜まる量だけ提供される。このため、収容部17Cの内壁面17CNのうち、放散部材収容部19Cの内壁面19CNの下方の一部である接触内壁面19CNSのみが燃料FLに接して、接触内壁面17CNSをなしている。
【0026】
収容部17C(放散部材収容部19C)に提供された燃料FLは、接触内壁面17CNSのうち接触内壁面19CNSから、放散部材19(多孔質セラミック体)をなす多孔質セラミックの三次元網目状の隙間を通じて、放散部材19の表面をなす燃料滲み出し面19SSに滲み出す。すると、排気管EXP内を流通する排気ガスEGに暖められて気化し、燃料FLの蒸気FLGとなって、排気ガスEGの流れに乗って排気管EXP内に放散される。これにより、既に説明した排気管内噴射と同様に、排気ガスEG中に未燃の燃料FL(蒸気FLG)が添加され、この燃料FLを酸化触媒DOCで酸化燃焼させて排気ガスEGの温度を昇温させ、フィルタDPFに堆積したPMを強制的に燃焼除去して、フィルタDPFの再生を行うことができる。
【0027】
なお、本実施形態の燃料供給装置11では、燃料放散部17の燃料滲み出し面19SSから、燃料FLの蒸気FLGが放散され、酸化触媒DOC及びフィルタDPFに向けて供給される。このため、燃料FLの液滴を噴射する従来の排気管噴射とは異なり、排気管EXPの内壁EXPNに噴射された燃料FLが付着して、フィルタDPFの再生に寄与しない燃料FLが無駄になることが防止される。かくして、燃料FLを排気ガスEG中に適切に分散して、酸化触媒DOC及びフィルタDPFなどに向けて供給できる。このため、酸化触媒DOCにおいて燃料FLの一部を酸化できず、白煙を生じるなどの不具合も生じ難い。
【0028】
しかもこの燃料供給装置11では、燃料放散部17に燃料FLを一時的に収容する収容部17C(18C,19C)を有しており、この収容部17C(放散部材収容部19C)の接触内壁面17CNSの少なくとも一部(本実施形態では全部)が、放散部材19の接触内壁面19CNSで構成されているので、収容部17Cに提供された燃料FLを、放散部材19を通じて、速やかに燃料滲み出し面19SSから滲み出させることができる。
【0029】
さらに、本実施形態の燃料供給装置11の燃料放散部17は、高温(例えば150~600℃)の排気ガスEGに曝される。しかし、この燃料供給装置11では、燃料放散部17に、多孔質アルミナセラミックからなる放散部材19を用いているので、耐熱性良好な燃料放散部17を有する燃料供給装置11とすることができる。
【0030】
エンジンENGの排気管EXPに設置された酸化触媒DOC及びフィルタDPFに向けて、排気管EXPの上流側EXUから燃料FLを供給して、フィルタDPFの再生処理を行う、本実施形態のDPF再生システム100では、フィルタDPFの再生にあたり、上述の簡単な構造の燃料供給装置11を用い、再生処理の指示を受けたコントローラ10が、燃料提供部16(具体的には燃料ポンプ12)に、燃料放散部17に向けて燃料FLを提供させる。このため、システム全体としても簡単な構造とすることができる。
【0031】
(変形形態1)
次いで、上述の実施形態の第1の変形形態にかかる燃料供給装置21ついて、
図3を参照して説明する。但し、本変形形態1の燃料供給装置21のうち、燃料提供部16(燃料ポンプ12、第1燃料パイプ13、第2燃料パイプ14、逆止弁15)については、実施形態と同じであるので、説明を省略し、燃料放散部27についてのみ詳細に説明する。
【0032】
燃料放散部27は、放散部材29と、この放散部材29を保持する保持部材28とからなる。放散部材29も、実施形態の放散部材19と同じく、アルミナ系の多孔質セラミックからなり、先端が半球殻状とされて閉じられた先端有底の円筒状で、基端部分がフランジ状とされた形態を有する多孔質セラミック体である。保持部材28も、金属製で、放散部材29の基端部分を保持している。
但し、実施形態の燃料放散部17では、放散部材19のみ排気管EXP内に露出していたが、本変形形態1では、放散部材29のほか、保持部材28の先端側の一部も排気管EXP内に露出している。
【0033】
変形形態1の燃料供給装置21も、フィルタDPFの再生処理の際には、第2燃料パイプ14を通じて提供された燃料FLが、燃料放散部27の収容部27Cに一時的に収容される。収容部27Cは、保持部材28の円筒状の保持部材収容部28C、及び放散部材29の有底円筒状の放散部材収容部29Cとからなり、収容部27Cの内壁面27CNは、保持部材収容部28Cの内壁面28CN、及び、放散部材収容部29Cの内壁面29CNからなる。
【0034】
本変形形態1の燃料供給装置21では、燃料FLは、放散部材29の放散部材収容部29Cのみならず、保持部材28の保持部材収容部28Cの先端側(図中下方)の一部にまで達する量だけ提供される。このため、収容部27Cの内壁面27CNのうち、放散部材収容部29Cの内壁面29CN全体が、燃料FLに接する接触内壁面29CNSとなるほか、保持部材収容部28Cの内壁面28CNの先端側の一部も燃料FLに接する接触内壁面28CNSとなって、接触内壁面27CNSをなしている。
【0035】
燃料放散部27の収容部27Cに提供された燃料FLは、接触内壁面27CNSのうち、放散部材収容部29Cの接触内壁面29CNSから、多孔質セラミックからなる放散部材29内を浸透して、放散部材29の表面をなす燃料滲み出し面29SSに滲み出す。これにより、実施形態と同じく、排気ガスEGに暖められて燃料FLが、蒸気FLGとなって、排気ガスEGの流れに乗って排気管EXP内に放散される。これにより、フィルタDPFに堆積したPMを強制的に燃焼除去して、フィルタDPFの再生を行うことができる。
【0036】
かくして、実施形態の燃料供給装置11と同様、変形形態1の燃料供給装置21でも、燃料FLを排気ガスEG中に適切に分散して、酸化触媒DOC及びフィルタDPFなどに向けて供給できる。
【0037】
また、収容部27Cの接触内壁面27CNSの先端側(図中下方)の一部が、放散部材29の接触内壁面29CNSで構成されているので、収容部27Cに提供された燃料FLを、放散部材29を通じて、速やかに燃料滲み出し面29SSから滲み出させることができる。
しかも、多孔質アルミナセラミックからなる放散部材29を用いているので、耐熱性良好な燃料放散部27を有する燃料供給装置21とすることができる。
【0038】
(変形形態2)
次いで、第2の変形形態にかかる燃料供給装置31ついて、
図4を参照して説明する。本変形形態2の燃料供給装置31も、燃料提供部16については、実施形態と同じであるので説明を省略し、燃料放散部37についてのみ詳細に説明する。
【0039】
燃料放散部37は、放散部材39と、この放散部材39を保持する保持部材38とからなる。放散部材39も、実施形態等の放散部材19,29と同じく、アルミナ系の多孔質セラミックからなるが、先端部分が中実の半球殻状とされ、基端部分がフランジ状とされた形態を有する。保持部材38も、金属製で、放散部材39の基端部分を保持している。
また、変形形態1と同じく、放散部材39のほか、保持部材38の先端側の一部も排気管EXP内に露出している。
【0040】
変形形態2の燃料供給装置31も、フィルタDPFの再生処理の際には、第2燃料パイプ14を通じて提供された燃料FLが、燃料放散部37の収容部37Cに一時的に収容される。但し、収容部37Cは、保持部材38の円筒状の保持部材収容部38Cのほか、放散部材39のうち中実半球状の放散部材収容部39Cとからなり、収容部37Cの内壁面37CNは、保持部材収容部38Cの円筒状の内壁面38CNと、放散部材収容部39Cの平坦で円形の内壁面39CNとからなる。
図4を見れば理解出来るように、放散部材収容部39C自体は、燃料FLを収容する凹部を構成していない。
【0041】
変形形態2の燃料供給装置31では、燃料FLは、保持部材38の保持部材収容部38Cの一部に提供される。このため、収容部37Cの内壁面37CNのうち、放散部材収容部39Cの内壁面39CNが、燃料FLに接する接触内壁面39CNSとなるほか、保持部材収容部38Cの内壁面38CNの先端側の一部も燃料FLに接する接触内壁面38CNSとなって、接触内壁面37CNSをなしている。
【0042】
燃料放散部37の収容部37Cに提供された燃料FLは、接触内壁面37CNSのうち、放散部材収容部39Cの接触内壁面39CNSから、放散部材39内を浸透して、放散部材39の表面をなす燃料滲み出し面39SSに滲み出す。これにより、実施形態と同じく、排気ガスEGに暖められて燃料FLが、蒸気FLGとなって、排気ガスEGの流れに乗って排気管EXP内に放散される。これにより、フィルタDPFに堆積したPMを強制的に燃焼除去して、フィルタDPFの再生を行うことができる。
【0043】
かくして、実施形態の燃料供給装置11等と同様、変形形態2の燃料供給装置31でも、燃料FLを排気ガスEG中に適切に分散して、酸化触媒DOC及びフィルタDPFに向けて供給できる。
また、変形形態2の燃料供給装置31では、中実半球状の放散部材収容部39Cを有しているので、実施形態等の燃料供給装置11,21に比して、放散部材39に、クラックや欠損による致命的な不具合が発生しにくく、耐久性が高い利点が有る。
【0044】
また、収容部37Cの接触内壁面37CNSの先端側(図中下方)の一部が、放散部材39の接触内壁面39CNSで構成されているので、収容部37Cに提供された燃料FLを、放散部材39を通じて、速やかに燃料滲み出し面39SSから滲み出させることができる。
しかも、多孔質アルミナセラミックからなる放散部材39を用いているので、耐熱性良好な燃料放散部37を有する燃料供給装置31とすることができる。
【0045】
(変形形態3)
次いで、第3の変形形態にかかる燃料供給装置41ついて、
図5を参照して説明する。本変形形態3の燃料供給装置41も、燃料提供部16については、実施形態と同じであるので説明を省略し、燃料放散部47についてのみ詳細に説明する。
但し、本変形形態3では、使用する排気管EXPの形態が異なり、断面三角形状の膨出部EXPBを有する。即ち、
図5に示すように、変形形態3の燃料供給装置41の燃料放散部47の放散部材49が、排気管EXPの膨出部EXPB内に収まるように装着される。
【0046】
本変形形態3の燃料放散部47は、実施形態の燃料放散部17等と同様に、放散部材49と、この放散部材49を保持する保持部材48とからなる。このうち、放散部材49は、実施形態の放散部材19と同様である。即ち、アルミナ系の多孔質セラミックからなり、先端が半球殻状とされて閉じられた先端有底の円筒状で、基端部分がフランジ状とされた形態を有する。また、保持部材48も、金属製で、放散部材49の基端部分を保持している。
燃料放散部47のうち、排気管EXP内に露出しているのが、放散部材49のみであり、保持部材48は排気管EXP内に露出していない点も同様である。
但し、本変形形態3の燃料放散部47は、排気管EXPの膨出部EXPBをなす斜面に取り付けられるので、保持部材48は、途中部分で「く」字状に屈曲した形態とされている。
【0047】
変形形態3の燃料供給装置41も、フィルタDPFの再生処理の際には、第2燃料パイプ14を通じて提供された燃料FLが、燃料放散部47の収容部47Cに一時的に収容される。収容部47Cは、保持部材48の屈曲円筒状の保持部材収容部48C、及び放散部材49の有底円筒状の放散部材収容部49Cからなり、収容部47Cの内壁面47CNは、保持部材収容部48Cの内壁面48CN、及び、放散部材収容部49Cの内壁面49CNからなる。
【0048】
本変形形態3の燃料供給装置41では、燃料FLは、放散部材49の放散部材収容部49Cのみならず、保持部材48の保持部材収容部48Cの一部にまで達する量だけ提供される。このため、収容部47Cの内壁面47CNのうち、放散部材収容部49Cの内壁面49CN全体が、燃料FLに接する接触内壁面49CNSとなるほか、保持部材収容部48Cの内壁面48CNの先端側の一部も燃料FLに接する接触内壁面48CNSとなって、接触内壁面47CNSをなしている。
【0049】
燃料放散部47の収容部47Cに提供された燃料FLは、接触内壁面47CNSのうち、放散部材収容部49Cの接触内壁面49CNSから、放散部材49内を浸透して、放散部材収容部49Cの表面をなす燃料滲み出し面49SSに滲み出す。これにより、実施形態等と同じく、排気ガスEGに暖められて燃料FLが、蒸気FLGとなって、排気ガスEGの流れに乗って排気管EXP内に放散される。これにより、フィルタDPFに堆積したPMを強制的に燃焼除去して、フィルタDPFの再生を行うことができる。
【0050】
かくして、実施形態の燃料供給装置11等と同様、変形形態3の燃料供給装置41でも、燃料FLを排気ガスEG中に適切に分散して、酸化触媒DOC及びフィルタDPFなどに向けて供給できる。
しかも、本変形形態3の燃料供給装置41では、燃料放散部47の放散部材49が、排気管EXPのうち断面三角形状の膨出部EXPB内に収まるように、装着される。このため、燃料放散部47の多孔質セラミック体からなる放散部材49に、PMが付着しにくくなる利点がある。
【0051】
また、収容部47Cの接触内壁面47CNSの先端側(図中下方)の一部が、放散部材49の接触内壁面49CNSで構成されているので、収容部47Cに提供された燃料FLを、放散部材49を通じて、速やかに燃料滲み出し面49SSから滲み出させることができる。
しかも、多孔質アルミナセラミックからなる放散部材49を用いているので、耐熱性良好な燃料放散部47を有する燃料供給装置41とすることができる。
【0052】
(変形形態4)
次いで、第4の変形形態にかかる燃料供給装置51ついて、
図6を参照して説明する。本変形形態4の燃料供給装置51も、燃料提供部16については、実施形態と同じであるので説明を省略し、燃料放散部57についてのみ詳細に説明する。
但し、前述の変形形態3では、排気管EXPに膨出部EXPBを設けたが、本変形形態4では、燃料放散部57自身に、放散部材59を排気管外に位置させる凹設部58Bを設けた。
【0053】
本変形形態4の燃料放散部57は、実施形態の燃料放散部17などと同様に、放散部材59と、この放散部材59を保持する保持部材58とからなる。このうち、放散部材59は、実施形態の放散部材19と同様である。即ち、アルミナ系の多孔質セラミックからなり、先端が半球殻状とされて閉じられた先端有底の円筒状で、基端部分がフランジ状とされた形態を有する。
また、保持部材58も、実施形態等と同様、金属製で、放散部材59の基端部分を保持している。但し、保持部材58は、放散部材59よりも先端側(図中下方)に延び、放散部材59を内部に囲む、上方が閉じた円筒状の凹設部58Bを有しており、この凹設部58Bの先端部分で排気管EXPに結合している。
【0054】
変形形態4の燃料供給装置51も、フィルタDPFの再生処理の際には、第2燃料パイプ14を通じて提供された燃料FLが、燃料放散部57の収容部57Cに一時的に収容される。収容部57Cは、保持部材58の円筒状の保持部材収容部58C、及び放散部材59の有底円筒状の放散部材収容部59Cとからなり、収容部57Cの内壁面57CNは、保持部材収容部58Cの内壁面58CN、及び、放散部材収容部59Cの内壁面59CNからなる。
【0055】
本変形形態4の燃料供給装置51では、燃料FLは、放散部材59の放散部材収容部59Cのみならず、保持部材58の保持部材収容部58Cの一部にまで達する量だけ提供される。このため、収容部57Cの内壁面57CNのうち、放散部材収容部59Cの内壁面59CN全体が、燃料FLに接する接触内壁面59CNSとなるほか、保持部材収容部58Cの内壁面58CNの先端側の一部も燃料FLに接する接触内壁面58CNSとなって、接触内壁面57CNSをなしている。
【0056】
燃料放散部57の収容部57Cに提供された燃料FLは、接触内壁面57CNSのうち、放散部材収容部59Cの接触内壁面59CNSから、放散部材59内を浸透して、放散部材収容部59Cの表面をなす燃料滲み出し面59SSに滲み出す。これにより、実施形態と同じく、排気ガスEGに暖められて燃料FLが、蒸気FLGとなって、排気ガスEGの流れに乗って排気管EXP内に放散される。これにより、フィルタDPFに堆積したPMを強制的に燃焼除去して、フィルタDPFの再生を行うことができる。
【0057】
かくして、実施形態の燃料供給装置11等と同様、変形形態4の燃料供給装置51でも、燃料FLを排気ガスEG中に適切に分散して、酸化触媒DOC及びフィルタDPFなどに向けて供給できる。
【0058】
しかも、本変形形態4の燃料供給装置51では、燃料放散部57のうち放散部材59が、保持部材58の凹設部58Bで囲まれている。このため、排気管EXPに燃料放散部57を取り付けた状態で、放散部材59は、凹設部58Bで形成した排気管EXPの膨出部に位置していることとなり、多孔質セラミック体59にPMが付着しにくくなる利点がある。
【0059】
また、収容部57Cの接触内壁面57CNSの先端側(図中下方)の一部が、放散部材59の接触内壁面59CNSで構成されているので、収容部57Cに提供された燃料FLを、放散部材59を通じて、速やかに燃料滲み出し面59SSから滲み出させることができる。
しかも、多孔質アルミナセラミックからなる放散部材59を用いているので、耐熱性良好な燃料放散部57を有する燃料供給装置51とすることができる。
【0060】
以上において、本発明を実施形態及び変形形態1~4に即して説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態では、DPF再生システム100として、燃料供給装置11のほかに、エンジン制御ユニットECUからの再生処理の指示に基づき、燃料提供部16に燃料放散部17に向けて燃料FLを提供させるコントローラ10を設けた例を示した。
しかし、エンジン制御ユニットECU自身が、自身の生成した再生処理の指示に基づき、コントローラの機能をも果たして、燃料提供部16に燃料放散部17に向けて燃料FLを提供させるように制御して、燃料供給装置11とエンジン制御ユニットECUとで、DPF再生システム(微粒子除去フィルタの再生システム)を構成するようにしても良い。
【0061】
また、例えば、実施形態及び変形形態1~4の燃料供給装置11,21,31,41,51では、いずれも全体が多孔質セラミック体からなる放散部材19,29,39,49,59を用いた。しかし、放散部材の一部を多孔質セラミックからなる多孔質セラミック体で構成して、この多孔質セラミック体で燃料滲み出し面を構成するようにしても良い。
また、燃料放散部17等の燃料滲み出し面19SS等から、より多くの燃料FLを放散させるべく、収容部17C等に提供された燃料FLを加圧して、燃料滲み出し面19SS等への燃料FLの滲み出しを促進させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0062】
100 DPF再生システム(微粒子除去フィルタの再生システム)
10 コントローラ(提供指示手段)
11,21,31,41,51 燃料供給装置
16 燃料提供部
17,27,37,47,57 燃料放散部
17C,27C,37C,47C,57C 収容部
17CN,27CN,37CN,47CN,57CN (収容部の)内壁面
17CNS,27CNS,37CNS,47CNS,57CNS (内壁面のうち)接触内壁面
18,28,38,48,58 保持部材
58B 凹設部
19,29,39,49,59 放散部材(多孔質セラミック体)
19SS,29SS,39SS,49SS,59SS 燃料滲み出し面
19C,29C,39C,49C,59C 放散部材収容部
19CNS,29CNS,39CNS,49CNS,59CNS (内壁面のうち)接触内壁面
ENG エンジン(ディーゼルエンジン,内燃機関)
EXP 排気管
EXU (排気管の)上流側
EXD (排気管の)下流側
EXPB (排気管の)膨出部
EG 排気ガス
DOC 酸化触媒
DPF フィルタ(微粒子除去フィルタ)
ECU エンジン制御ユニット
FL 燃料
FLG 燃料蒸気