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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】パレット及びパレット用の桁部材
(51)【国際特許分類】
   B65D 19/34 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
B65D19/34 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017031418
(22)【出願日】2017-02-22
(65)【公開番号】P2018135132
(43)【公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】597047163
【氏名又は名称】日本モウルド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087778
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 明夫
(72)【発明者】
【氏名】清水 幸浩
(72)【発明者】
【氏名】長尾 周作
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05669315(US,A)
【文献】特開2016-210504(JP,A)
【文献】米国特許第06289823(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 19/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の桁部材を相互に離して天板の下面に配列して成り、相互に離されている桁部材間をアーム挿入空間と成すパレットであって、
前記桁部材は上面視で方形の輪郭を成し、上方に開口する中央凹部と方形の四隅に前記中央凹部を囲むように設けられた4個の周辺凹部とを備え、各凹部の開口の縁部全域の縁上面が同一高さの平坦縁面を成すパルプモールド成形体であり、
前記桁部材は、該桁部材の縁部の前記平坦縁面の全域にて前記天板の下面に固着されることにより前記各凹部を密閉されて成る、
ことを特徴とするパレット。
【請求項2】
請求項1に於いて、
さらに、底板を有し、
前記桁部材は、前記各凹部の底壁部の最下部位の下面全域が同一高さの平坦底面を成すパルプモールド成形体であり、前記平坦底面にて底板の上面に固着されて成る、
ことを特徴とするパレット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に於いて、
前記桁部材の中央凹部と各周辺凹部は隣接する部位を有し、該隣接する部位に於いて両凹部の縁部の前記平坦縁面が一体に連設されている、
ことを特徴とするパレット。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れかに於いて、
前記桁部材の中央凹部の底壁部は、該底壁部と天板との間に介挿されて天板からの荷重を支える紙製補強部材用の受け部を有する、
ことを特徴とするパレット。
【請求項5】
請求項1~請求項3の何れかに於いて、
前記桁部材の中央凹部には、該中央凹部の底壁部と天板との間に、天板からの荷重を支える紙製補強部材が介挿されて成る、
ことを特徴とするパレット。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に於いて、
前記紙製補強部材は、前記桁部材とは別体の円筒形の紙管である、
ことを特徴とするパレット。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れかに於いて、
前記桁部材はパルプモールド成形時に撥水剤を含有されて成る、
ことを特徴とするパレット。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れかのパレットに用いられる桁部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水濡れが生じ易い雨天等の環境下に置かれた場合でも必要な強度を維持できる紙製のパレットと、該パレットに好適な桁部材に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の物品を積載して搬送等の用に供される荷役用のパレットは、天板と、該天板の下面側に設けられてフォークリフト等のアーム挿入用の空間若しくは隙間を確保等する桁部材と、必要に応じて桁部材の下側に設けられる底板とから成る。このパレットを軽量化するとともにワンウェイ化するべく、紙製のパレットが提案されている。
例えば、本願の出願人は、天板と底板をダンボール等で構成し、その間に略直方体の容器形状を成すパルプモールド製の桁部材を介在させたパレットを出願している(特開2016-210504号公報;特許文献1)。
特開2013-091520号公報(特許文献2)には、天板と底板をダンボールで構成したパレットであって、桁部材を天板や底板に取り付ける連結部の構造を工夫することにより強度を高めたパレットが開示されており、その説明中には、桁部材としてパルプモールドを用いてもよい旨が言及されている。
特開2008-285218号公報(特許文献3)には、天板と底板をダンボールで構成するとともに、天板の下面側にダンボール製の9個の桁部材を相互に離して配列して成る、いわゆる四方差しのパレットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-210504号公報
【文献】特開2013-091520号公報
【文献】特開2008-285218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1以前の紙製のパレットは、航空貨物等のコストを考慮して軽量化しようとすると強度が不足する、所要の強度を確保しようとすると軽量化が不十分となる、或いは構造が複雑化して工数の増加を招きコスト高となる、等の問題を有していた。
【0005】
そこで、本願の発明者は、軽量で、且つ、必要十分な強度を有し、リサイクル容易であり、構造も簡単な紙製のパレットを実現するべく、日々、試験・検討を重ねる中で、パルプモールド製で独特の形状の桁部材を用いることを着想して、前述の特許文献1を出願した。即ち、全体が略直方体で容器形状を成すパルプモールド製の桁部材を、その容器形状の開口縁にて天板の下面に糊付けすることを着想して、出願した。
【0006】
この特許文献1のパレットは、軽量で、且つ、必要十分な強度を有し、リサイクル容易であり、構造も簡単で低コストであるため、各種の物品を積載して搬送の用に供するという点に於いて十分に優れている。しかし、雨天環境下や水溜まりの有る場所での荷役作業等によって水がかかり、容器形状を成す桁部材の内部へ水が浸入すると、その水が内側から持続的に吸湿されて強度が低下する可能性があるという問題が判明した。即ち、雨天環境下等での荷役作業には、必ずしも十分では無い場合があることが判明した。
【0007】
本発明は、軽量で且つ必要十分な強度を有し、リサイクル容易であり、構造も簡単で低コストに製造でき、さらに、雨天環境下や水溜まりの有る場所等での荷役作業等によって水濡れが生じた場合でも、その水が桁部材の内部へ侵入して貯留されることがなく、したがって、内側からの持続的な吸湿も生ぜず、必要な強度を維持できるパレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の構成を、下記[1]~[]に記す。なお、この項([課題を解決するための手段])と次項([発明の効果])に於いて、符号は理解を容易にするために付したものであり、本発明を符号の構成に限定する趣旨ではない。
【0009】
[1]構成1
複数個の桁部材3を相互に離して天板1の下面1Lに配列して成り、相互に離されている桁部材3,3間をアーム挿入空間と成すパレットであって、
前記桁部材3は上面視で方形の輪郭を成し、上方に開口する中央凹部30cと方形の四隅に前記中央凹部30cを囲むように設けられた4個の周辺凹部30p,,とを備え、各凹部30c,30p,,の開口の縁部35c,35p,,全域の縁上面が同一高さの平坦縁面350を成すパルプモールド成形体であり、
前記桁部材3は、該桁部材3の縁部35c,35p,,の前記平坦縁面350の全域にて前記天板1の下面1Lに固着されることにより前記各凹部30c,30p,,を密閉されて成る、
ことを特徴とするパレット。
天板1としては、例えば、ダンボール紙を用いることができる。また、ダンボール紙としては、複数層から成り各層のフルートの方向を揃えて積層したダンボール紙(以下「パラレル紙」と言う)、複数層から成り各層のフルートの方向を交差させて積層したダンボール紙(以下「クロス紙」という)、表裏のボール紙間にハニカム状に構成した紙をその紙面方向がボール紙に直交する方向となるように介挿させたダンボール紙(以下「ハニカム紙」と言う)等、種々の公知のダンボール紙を、パレットに要求される性能に応じて適宜に用いることができる。後述の底板5についても同様である。
桁部材3の縁部35c,35p,35p,35p,35p全域の縁上面の同一高さの平坦縁面350と、天板1の下面1Lとの固着は、例えば、リサイクル時を考慮して、コーンスターチ等のデンプン系の接着剤を用いて行うことができる。なお、デンプン系以外の公知の接着剤、例えば、酢酸ビニル樹脂を主成分とする接着剤等も、適宜、用いることができる。構成3の桁部材3と底板5との固着(接着)についても同様である。また、構成10の平坦上面と、天板1の下面1Lとの固着(接着)についても同様である。
上面視で方形とは、概ね「方形」の意味である。例えば、角部が円弧状(R)を成すR長方形やR正方形であってもよい。
[2]構成2
構成1に於いて、
さらに、底板5を有し、
前記桁部材3は、前記各凹部30c,30p,,の底壁部39c,39p,,の最下部位の下面39cL,39pL,,全域が同一高さの平坦底面390を成すパルプモールド成形体であり、前記平坦底面390にて底板5の上面5Uに固着されて成る、
ことを特徴とするパレット。
底板5は、強度を損なわない限度で、適宜に孔50を設けたり、或いは、1枚ではなく複数枚に分割して構成する等してもよい。上記の孔50は、例えば、ハンドリフトの車輪を通す孔として用いることができる。また、さらなる軽量化も達成できる。
【0010】
[3]構成3
構成1又は構成2に於いて、
前記桁部材3の中央凹部30cと各周辺凹部30p,,は隣接する部位を有し、該隣接する部位に於いて両凹部30c,30pの縁部35c,35pの前記平坦縁面350が一体に連設されている、
ことを特徴とするパレット。
[4]構成4
構成1~構成3の何れかに於いて、
前記桁部材3の中央凹部30cの底壁部39cは、該底壁部39cと天板1との間に介挿されて天板1からの荷重を支える紙製補強部材6用の受け部36を有する、
ことを特徴とするパレット。
受け部36は、紙製補強部材6を嵌めるための凸部でもよいが、必ずしも嵌めるための凸部に限定されない。例えば、紙製補強部材6をセットする際、作業者が、「この凹部に紙製補強部材6をセットする」ということを分かり易くするような、いわゆる目印となる程度のものであってもよい。
[5]構成5
構成1~構成3の何れかに於いて、
前記桁部材3の中央凹部30cには、該中央凹部30cの底壁部39cと天板1との間に、天板1からの荷重を支える紙製補強部材6が介挿されて成る、
ことを特徴とするパレット。
[6]構成6
構成4又は構成5に於いて、
前記紙製補強部材6は、前記桁部材3とは別体の円筒形の紙管6である、
ことを特徴とするパレット。
[7]構成7
構成1~構成6の何れかに於いて、
前記桁部材3はパルプモールド成形時に撥水剤を含有されて成る、
ことを特徴とするパレット。
[8]構成8
構成1~構成7の何れかのパレットに用いられる桁部材3。
【発明の効果】
【0011】
構成1は、複数個の桁部材3を相互に離して天板1の下面1Lに配列して成り、相互に離されている桁部材3,3間をアーム挿入空間と成すパレットであって、前記桁部材3は上面視で方形の輪郭を成し、上方に開口する中央凹部30cと方形の四隅に前記中央凹部30cを囲むように設けられた4個の周辺凹部30p,,とを備え、各凹部30c,30p,,の開口の縁部35c,35p,,全域の縁上面が同一高さの平坦縁面350を成すパルプモールド成形体であり、前記桁部材3は、該桁部材3の縁部35c,35p,,の前記平坦縁面350の全域にて前記天板1の下面1Lに固着されることにより前記各凹部30c,30p,,を密閉されて成るパレットであるため、軽量で且つ必要十分な強度を有し、リサイクル容易であり、構造も簡単で低コストに製造でき、さらに、各凹部が密閉されているため、雨天環境下や水溜まりの有る場所で荷役作業等を行った場合でも、各凹部内に水分が入り込むことを確実に防止でき、したがって、内側から持続的に吸湿することも無く、必要な強度を維持することができる。
構成2は、底板を備えた構成を提供できる。
構成3は、構成1又は構成2に於いて、前記桁部材3の中央凹部30cと各周辺凹部30p,,は隣接する部位を有し、該隣接する部位に於いて両凹部30c,30pの縁部35c,35pの前記平坦縁面350が一体に連設されているパレットであるため、さらに強度を高めることができる。
構成4~構成6は、円筒形の紙管6等の紙製補強部材を、中央凹部30cの底壁部39cと天板1との間に介挿させた構成を提供できる。この構成では、中央凹部30c内が密閉されている結果、該中央凹部内に配置されて天板1を支えている紙製補強部材6も吸湿することが無く、当初の強度を維持することができる。
構成7は、構成1~構成6の何れかに於いて、前記桁部材3はパルプモールド成形時に撥水剤を含有されて成るパレットであるため、各凹部30c,30p,,内への水分の進入を遮断する効果をさらに高めることができる。
構成8は、構成1~構成7の何れかのパレットに用いられる桁部材3を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施の形態で用いる桁部材3を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図。
図2図1の桁部材3を示し、(a)は正面図、(b)は図1(b)内A-A線断面図。なお、背面図、左側面図、及び、右側面図は、正面図と同一である。
図3】桁部材3の中央凹部30cへ紙製補強部材(紙管)6をセットする様子を示す斜視図。
図4】第1の実施の形態のパレットを示す斜視図(a)と、(a)に於いて天板1については縁10を除いて透視して示す斜視図(b)。
図5図4のパレットの平面図(a)、正面図(b)、底面図(c)。(a)では天板1は縁10を除いて透視して示している。なお、背面図、左側面図、及び、右側面図は、正面図と同一である。
図6】第2の実施の形態で用いる桁部材3bを示し、(a)は斜視図、(b)は平面図。
図7図6の桁部材3bを示し、(a)は右側面図、(b)は図6(b)内B-B線断面図、(c)は同C-C線断面図。なお、左側面図は右側面図と同一である。
図8図6の桁部材3bを示し、(a)は正面図、(b)は図6(b)内D-D線断面図。なお、背面図は正面図と同一である。
図9】縁10bを除いて天板1bを透視した状態で第2の実施の形態のパレットを示し、(a)は斜視図、(b)は平面図。
図10図9のパレットの正面図(a)、底面図(b)、及び、右側面図(c)。なお、背面図は正面図と同一であり、左側面図は右側面図と同一である。
図11】(a)は図1の桁部材3の底面図、(b)は図4のパレットの平面図であって図4(a)とは異なり天板1を透視しない状態で示す。
図12】(a)は図6の桁部材3bの底面図、(b)は図9のパレットの平面図であって図9(b)とは異なり天板1bを透視しない状態で示す。
図13図9のパレットの斜視図であって図9(a)とは異なり天板1bを透視しない状態で示す。
図14】第3の実施の形態で用いる桁部材3Bを示し、(a)は平面図、(b)は右側面図、(c)は正面図、(d)は(a)内E-E線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
(1)第1の実施の形態(図1図5
図1図3は第1の実施の形態のパレットで用いる桁部材3を示し、図1(a)は斜視図、(b)は平面図、図2(a)は正面図、(b)はA-A線断面図、図3は桁部材3に紙管6をセットする様子を示す斜視図である。また、図4図5は第1の実施の形態のパレットを示し、図4(a)(b)は斜視図(ただし、(b)では天板1は縁10を除き透視して示す)、図5(a)は平面図(ただし、天板1は縁10を除き透視)、(b)は正面図、(c)は底面図である。
【0014】
まず、パレットの構成を説明する。
図示のパレットは、天板1と、相互に間隔を空けるように(離すように)配列されて天板1の下面1L側に接着された複数個(3行3列の9個)の桁部材3と、該複数個の桁部材3の下側に接着された底板5とから成る。桁部材3は、上面視で正方形を成す天板1の四隅の各位置と、該四隅の各位置の任意の2位置を結ぶ仮想線上の中央位置とに、相互に間隔を空けて配置されている。これら9個の桁部材3の無い位置に、天板1の下方空間が形成され、これが、フォークリフトやハンドリフト等のアーム挿入空間となる。このように配置されて接着されているため、アーム挿入方向としては、天板1の縁10に交叉する各方向が可能となる。即ち、いわゆる四方差しが可能となる。このアームを挿入可能な方向を、図5(a)に2点鎖線矢印X,-X,Y,-Yで示す。
【0015】
接着剤としては、ここでは、リサイクル時を考慮して、デンプン系の接着剤を用いている。具体的には、トウモロコシを原料とするコーンスターチを用いている。本第1の実施の形態のみならず、後述の第2の実施の形態でも同様である。なお、先述したように、デンプン系以外の公知の接着剤、例えば、酢酸ビニル樹脂を主成分とする接着剤等を用いることもできる。
【0016】
天板1や底板5としては、ダンボール紙を単層で、又は、積層したものを、好適に用いることができる。また、天板1としてハニカム紙(ボール紙間にハニカム状に構成した紙をその紙面方向がボール紙に直交する方向となるように介挿させたダンボール紙)を用いると、荷重による圧縮に対する強度を十分に高めることができる。
【0017】
積層したダンボール紙としては、各層のダンボール紙のフルート(表裏の板紙間に介在させる波状紙)の方向を同一方向に揃えて積層したダンボール紙(パラレル紙)と、フルートの方向を交差方向となるようにして積層したダンボール紙(クロス紙)の何れも、用いることができる。また、パラレル紙とクロス紙の何れの場合も、フルートの密度や組み合わせを適宜に変えたものを用いることができる。例えば、A-Aシート(Aフルート紙とAフルート紙を積層したパラレル紙/クロス紙)や、B-Bシート(Bフルート紙とBフルート紙を積層したパラレル紙/クロス紙)、或いは、A-Bシート(Aフルート紙とBフルート紙を積層したパラレル紙/クロス紙)等を、適宜に用いることができる。ここで、Aフルート紙やBフルート紙は、波状紙の波の周期・振幅(密度)により決められた規格である。また、積層の層数は2層に限らず、若干重くてもよい用途では、3層以上に積層した構成を用いてもよい。
【0018】
また、天板1や底板5には、要求される強度を損なわないことを限度として、軽量化や低コスト化等のために、適宜、孔部を設ける等してもよい。例えば、本第1の実施の形態では、底板5に孔部50を設けている。このため、この孔部50を通して、ハンドリフトの車輪を床面上に到達させることができる。また、後述の第2の実施の形態では、底板を複数枚(3枚)に分割して、底板5b,5b,5bとしている。
【0019】
天板1(や底板5)として、パラレル紙、クロス紙、ハニカム紙の何れを用いるか、また、フルートの密度として、A,B,C,,,の何れの密度を用いるかは、例えば、パレットの用途(輸送時間/距離,長期間の保管)や、想定される荷重、或いは、想定荷重のかかり方等に応じて、適宜に決めることができる。また、用途や環境(湿潤環境下での保管等)によっては、公知の撥水剤(例:パラフィン系エマルジョン,ロジン乳化液,ロジンサイズ,アルキルケテンダイマー,等)を、天板1、及び/又は、桁部材3、及び/又は、底板5に、添加する(含有させる)/塗布する等して、防水性能を高めてもよい。
【0020】
桁部材3は、上面視の輪郭形状が略正方形(コーナーが円弧状のR正方形)を成し、上方に開口する中央凹部30cと、上面視正方形の四隅に中央凹部30cを囲むように設けられ上方に開口する4個の周辺凹部30p,30p,30p,30pとを備えた容器形状を成す。各周辺凹部30p,,の深さは、中央凹部30cと同一の深さとされている。言い換えれば、中央凹部30c及び周辺凹部30p,,の各側壁部の高さは同一に設定されており、これら複数個の凹部30c,30p,,の側壁部によって、天板1側からの荷重を、分散して受け得るように構成されている。
【0021】
これら複数個の凹部30c,30p,,の開口の縁部35c,35p,,は、その全域の縁上面が、同一高さの平坦縁面350を成す。この同一高さの平坦縁面350の全域が天板1の下面1L(図5(b))に糊付けされる(固着される)ため、糊付け後には、各凹部30c,30p,,は密閉空間となり、外気から遮断される。このため、雨天環境下や水溜まりの有る場所等での荷役作業等によりパレットに水がかかる等した場合でも、各凹部30c,30p,,内への水の侵入を確実に防止できる。したがって、凹部内側に水が貯留して持続的に桁部材3が吸湿するような不具合を確実に防止でき、強度の低下を防止できる。言い換えれば、当初の強度を維持することができる。
【0022】
このように密閉される中央凹部30c内には、図3に示すように、適宜、紙管(紙製補強部材)6がセットされる。紙管6は、厚手のダンボール紙を円筒形状と成したものであり、その筒長は、中央凹部30cの深さ(=周辺凹部30p,,の深さ)と同じに設定されている。言い換えれば、中央凹部30c内にセットされて該中央凹部30cの底壁部39cにより下端を支持される紙管6は、その上端で天板1の下面1Lを支持し得る筒長に設定されている。したがって、天板1から加わる荷重は、中央凹部30cや周辺凹部30p,,の側壁部により支えられるとともに、紙管6によっても支えられることとなる。結果、より大きな荷重を支えることができるようになる。なお、紙管6の形状は、図示の例では円筒形状であるが、円筒形状に限定されない。天板1から加わる荷重を、中央凹部30cや周辺凹部30p,,の側壁部とともに分散して支え得る形状であれば、例えば、楕円筒形状、断面多角形の筒形状でもよく、非筒形状でもよい。
【0023】
紙管6は、後述の実験結果に示されるように、水濡れした場合には、その強度が大きく低下する(表2参照)。しかしながら、本第1の実施の形態では、紙管6がセットされる中央凹部30c内は、前述のように、糊付けされて確実に密閉される。このため、該密閉空間内への水の侵入も確実に防止され、紙管6が水濡れ・吸湿することもなく、それによる強度の低下も確実に防止される。したがって、雨天環境下や水溜まりの有る場所等での荷役作業等によりパレットに水がかかる等した場合でも、紙管6が水濡れする不具合を確実に防止でき、強度の低下を防止できる。つまり、紙管6についても当初の強度を確実に維持でき、これにより、桁部材3としての強度も維持することができる(表1参照)。
【0024】
中央凹部30cや周辺凹部30pの密閉性は、天板1の下面1Lに糊付けされるべき平坦縁面350が、桁部材3の製造時に綺麗な面(型転写面)として仕上げられることにより、さらに、向上されている。即ち、本第1の実施の形態では、凹部30c,30p,,の内壁面側が、パルプモールド成形時に金型面(正確には、金型面を覆う金網)を転写されて、綺麗な仕上がりとされる面である。このため、平坦縁面350も綺麗な仕上がりとなって良好な平坦性を有するため、糊付け後の密閉性をより高めることができる。
【0025】
ここで、パルプモールド成形とは、植物繊維を含む古紙等の材料を水に溶かした泥漿中に、所定の製品形状(桁部材の形状)を転写するための型面を有する金型(成形型)を浸漬し、型面に開口する多数の細孔を通して吸引し、その表面の金網上にパルプ繊維を付着させて堆積させた後、剥離し、乾燥させることにより成形品を得る手法である。本第1の実施の形態では、雨天環境下等での吸湿防止性能をさらに高めるべく、上記泥漿中に撥水剤(例:パラフィン系エマルジョン,ロジン乳化液,ロジンサイズ,アルキルケテンダイマー,等の公知の撥水剤)を添加して成形品(桁部材3)に含有させている。パルプモールド成形法や、撥水剤を添加する手法は公知であるため、これ以上の説明は割愛する。
【0026】
また、本第1の実施の形態では、前述のように9個の桁部材3を配置して、隣接する桁部材3-3間の空隙をアーム挿入口としているのであるが、この空隙を、結束バンド(天板1上に載置される荷物固定用の結束バンド)の挿通口として用いることもできる。例えば、図4(a)でX(-X)方向からアームを挿入するときには、Y(-Y)方向に対応する桁部材3-3間を結束バンド挿通口として用いることができ、Y(-)方向からアームを挿入するときには、X(-X)方向に対応する桁部材3-3間を結束バンド挿通口として用いることができる。なお、アーム挿入方向と同方向に対応する桁部材3-3間を結束バンドの挿通口としてもよい。
【0027】
このように、本第1の実施の形態では、隣接する桁部材3-3間の空隙を結束バンドの挿通口としても利用できるため、桁部材3自体に結束バンド挿通用の空隙を設ける必要が無い。仮に、桁部材3自体に結束バンド挿通用の空隙を設けようとすると、例えば、桁部材3の周縁部の中央部351付近に溝部を設けることになるのであるが、その場合、該溝部が水の通孔となり、中央凹部30cの密閉性を確保できなくなるのであるが、本第1の実施の形態では、そのような畏れがなく、密閉性を確保できる。
【0028】
また、本第1の実施の形態では、中央凹部30cの縁部35cの縁上面が、該中央凹部30cに隣接する周辺凹部30pの縁部35pの縁上面と、隣接する部位に於いて一体化されている。即ち、一体に連設されている。このため、当該一体化された部位の高さを良好に揃えることができ、したがって、平坦縁面350全域の高さを良好に同一にでき、良好な密閉性を得ることができる。また、このように隣接する部位に於いて一体化されている中央凹部30cと周辺凹部30pとにより天板1側からの荷重を支えるため、荷重に対する強度をより高めることができる。
【0029】
また、本第1の実施の形態では、桁部材3は、各凹部30c,30p,,の底壁部39c,39p,,の底壁下面39cL,39pL,,の最下部位が、同一高さの平坦底面390として形成されている。言い換えれば、各凹部30c,30p,,の最深部位が、同一深さに形成されている。このように、同一の高さに設定された平坦底面(底壁下面39cL,39pL,,)390にて底板5の上面5Uに糊付けされる。このため、天板1側からの荷重を、同一高さの中央凹部30cの側壁部と周辺凹部30p,,の側壁部とで分散して受けることとなり、荷重に対する十分な強度を確保することができる。
【0030】
実験結果:
第1の実施の形態のパレットで用いる桁部材3について、前述のように糊付けにより密閉空間とされた中央凹部30c内に紙管6を配置せずに水濡れ環境下に置いた場合と、紙管6を配置して水濡れ環境下に置いた場合とで、強度の低下度合いを調べた。
その結果を、水濡れ環境の態様(4mmの水溜まりに1時間/2時間、5cmの水漬けを5分間/10分間/15分間、雨環境下に5分、水無し)とともに、表1に示す。
また、紙管6が吸水した場合の強度の低下度合いを調べた。その結果を表2に示す。
【表1】
【表2】
【0031】
表1から明らかなように、紙管6(厚さ2mm)を配置する方が、水濡れ環境下での強度低下(水濡れ無しの場合からの強度低下)が小さい。これは、表2を参照して分かるように、中央凹部30c内の紙管6の水濡れ・吸湿が防止された結果、その強度の低下を免れたことによる影響が大きいためと考えられる。
【0032】
(2)第2の実施の形態(図6図10
第2の実施の形態は、パレットが上面視で正方形ではなく長方形を成しており、これに応じて、上面視で略長方形(四隅が円弧状のR長方形)を成すように桁部材3bを構成した点で、第1の実施の形態と異なる。また、長手状のダンボール紙を用いて底板5bを3枚で構成した点でも異なる。
基本的な構成は第1の実施の形態と同様であるため、第1の実施の形態と同等の部位を同じ符号の末尾に「b」を付した符号で示し、説明は割愛する。
【0033】
(3)第3の実施の形態等
前述の第1の実施の形態、第2の実施の形態では、中央凹部30c/30cbを囲むように、その周辺に、中央凹部30c/30cbと同一深さの周辺凹部30p/30pbを設けているが、必ずしも、周辺凹部でなくてもよい。例えば、中央凹部30c/30cbの深さと同一高さの周辺凸部を設け、その上端面を天板1の下面1Lに固着(糊付け)するように構成してもよい。
【0034】
つまり、天板1側からの荷重を、中央凹部の側壁部とともに支え得る側壁部を有する周辺凸部を一体に設けてもよい。当然ながら、周辺凹部と周辺凸部の両者を設けるように構成してもよい。要は、糊付けにより密閉される中央凹部30c/30cbを、その周囲から支え得るような凹凸部であればよく、好ましくは、中央凹部30c/30cbの密閉性をさらに向上させ得るような構造であればよい。
【0035】
図14に、その一例を示す。
図14に示されるパレット用の桁部材3Bは、上方に開口する中央凹部30cBと、該中央凹部30cBの周辺に設けられ上端部に平坦面35pBを有する周辺凹凸部33とを備え、中央凹部30cBの開口の縁部35cBの縁上面と、周辺凹凸部33の上端部の平坦面35pBとが、同一高さの平坦上面を成すパルプモールド成形体である。
【0036】
このパルプモールド成形体では、同一高さを成す平坦上面(中央凹部30cBの開口の縁部35cBの縁上面,周辺凹凸部33の上端部の平坦面35pB)が、前述の第1の実施の形態と同様に、天板1の下面1Lに糊付けされる。それにより、中央凹部30cBが密閉されて、第1の実施の形態と同様の効果を得る。
【0037】
図14に示す例では、周辺凹凸部33は、中央凹部30cBの外周部に該中央凹部30cBを囲むように設けられた単一の円環状の部位として構成されているが、これに限定されず、例えば、周方向で複数個の部分に分割されていてもよい。つまり、複数個の周辺凹凸部が中央凹部30cBを囲むように構成されていてもよい。
また、図14に示す例では、周辺凹凸部33は一重のみであるが、2重以上に構成されていてもよい。つまり、周辺凹凸部33の外側に、さらに、別の周辺凹凸部が設けられていてもよい。
また、図14に示す例では、周辺凹凸部33は、中央凹部30cBの深さと同一高さの凸部分と、その内側に設けられた浅い凹部分とから成るが、この浅い凹分の深さを深く構成してもよい。例えば、中央凹部30cBと同等の深さに構成してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1,1b 天板
10,10b (天板の)縁
1L,1Lb 天板の下面
3,3b,3B 桁部材
30c,30cb,30cB 中央凹部
30p,30pb 周辺凹部(周辺凹凸部)
33 周辺凹凸部
35c,35cb,35cB (中央凹部の)開口の縁部
35p,35pb (周辺凹部の)開口の縁部
35pB 周辺凹凸部の上端部の平坦面
350,350b 平坦縁面(平坦上面)
36 受け部
39c,39cb (中央凹部の)底壁部
39p,39pb (周辺凹部の)底壁部
39cL,39cLb (中央凹部の)底壁部の下面
39pL,39pLb (周辺凹部の)底壁部の下面
390,390b 平坦底面
5,5b 底板
5U,5Ub 底板の上面
50 (底板の)孔
6 紙製補強部材(紙管)
図1
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