(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】靴下
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
A41B11/00 J
(21)【出願番号】P 2017222559
(22)【出願日】2017-11-20
【審査請求日】2020-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2017035015
(32)【優先日】2017-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516201629
【氏名又は名称】株式会社Re-style・REVO
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】230110397
【氏名又は名称】田中 雅敏
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】清水 賢二
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0338090(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0047901(KR,A)
【文献】特表2007-506869(JP,A)
【文献】登録実用新案第3203345(JP,U)
【文献】特開2008-121177(JP,A)
【文献】特開2010-000275(JP,A)
【文献】特開2006-193844(JP,A)
【文献】特表2001-511375(JP,A)
【文献】特開2001-258928(JP,A)
【文献】特開2015-165057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B11/00ー11/10
A41D13/05
A61F13/06-13/08
A63B23/10
A61H39/04
A43B7/14-7/30
A61F5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足に装着可能な可撓性を有する基材と、
足の骨格における三角形状のアーチ構造内の、
第1中足骨の骨頭から第5中足骨の骨頭にかけて形成される甲側凸状の横アーチを甲側に押動可能な、第2乃至第4中足骨にかかる第1裏面域に設けられた第1構造部と、前記アーチ構造内の、前記第5中足骨の骨頭から踵骨にかけて形成される甲側凸状の外側縦アーチを甲側に押動可能な、同第5中足骨と前記踵骨の間の第2裏面域に設けられた第2構造部とにより、前記第1中足骨の骨頭から同踵骨にかけて形成される甲側凸状の内側縦アーチを、
アーチ内組織を介して甲側に間接的に押動する、前記基材の足裏側に設けた間接押出し構造とを備える
靴下。
【請求項2】
前記間接押出し構造は、
前記基材の足裏側のうち、前記第1中足骨の骨頭から第1末節骨にかけて形成される第3裏面域に設けられると共に、歩行時の親指への体重の移動を促すことが可能な第3構造部を有する
請求項1に記載の靴下。
【請求項3】
前記第1構造部は、
前記第1裏面域から基材外側へ突出する第1凸状部材を有する
請求項1に記載の靴下。
【請求項4】
前記第2構造部は、
前記第2裏面域から基材外側へ突出する第2凸状部材を有する
請求項1に記載の靴下。
【請求項5】
前記第3構造部は、
前記第3裏面域から基材外側へ突出する第3凸状部材を有する
請求項2に記載の靴下。
【請求項6】
前記間接押出し構造は、
前記第1裏面域に設けられると共に、前記横アーチを甲側に押動可能な、同第1裏面域から前記基材外側へ突出する第1凸状部材と、
前記第2裏面域に設けられると共に、前記外側縦アーチを甲側に押動可能な、同第2裏面域から前記基材外側へ突出する第2凸状部材とを有する
請求項1に記載の靴下。
【請求項7】
前記基材の足裏側のうち、前記第1中足骨の骨頭から第1末節骨にかけて形成される第3裏面域に設けられると共に、親指への体重の移動を促すことが可能な、同第3裏面域から基材外側へ突出する第3凸状部材を有する
請求項6に記載の靴下。
【請求項8】
前記第1凸状部材、前記第2凸状部材及び前記第3凸状部材は、突出高さが異なる
請求項7に記載の靴下。
【請求項9】
前記第1凸状部材、前記第2凸状部材及び前記第3凸状部材の少なくとも一つは、複数の小片別部材から構成される
請求項7又は請求項8に記載の靴下。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は靴下に関する。詳しくは、足のアーチ構造の所定のアーチ及びそれを支える靭帯等に押上げ力を作用させることにより土踏まずの形成を促進し、偏平足や浮き指の症状を確実に改善する靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今では、人間が二足歩行をするために必要な「土踏まず」が充分に形成されず、足裏が平らな、いわゆる「偏平足」、あるいは立位時に足の指が地面に付かない「浮き指」の状態である児童が増えていることが問題となっている。
【0003】
この偏平足や浮き指は、足の骨格におけるアーチ構造が充分に機能しておらず、足裏全体を使って地面をつかむことができないため倒れやすく、また歩く際の衝撃が吸収されず疲れやすさの原因となっていると言われる。
【0004】
これを改善するため、子供であれば裸足で遊ばせて足裏の靭帯(足底腱膜など)や筋肉を鍛えることで、アーチ構造の自然な形成されることも可能である。しかし、それでも改善が見られない場合には、歩行サポート器具などの装着、あるいは外科的手術によりアーチ構造を強制的に形成させることも行われるが、患者への負担が大きい。
【0005】
このため、特許文献1に示すように、靴下において、足裏の外側部分に対応する部分を足裏の内側部分(土踏まず)に対応する部分よりも厚く形成することで、強制的に足裏が内側へ傾倒するようにした靴下が考案されている。この靴下を着用することで、足が地面に接地する際、足裏部分が足の外側へ逃げながら床面に接触することを防ぐことができるので、足裏全体を地面に接地させることができる。
【0006】
更に、一般には、足の土踏まずに凸状のパットを直接当てて、土踏まずに形成されるアーチである内側縦アーチを押し上げる足底板や中敷きも考案されている。そして、この足底板や中敷きにより土踏まずの空間を埋めることで、下がっていたアーチ部分を押し戻して骨格位置を正常化し、「偏平足」や「浮き指」による諸症状を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載する靴下は、足裏部分が足の側外方へ逃げないように床面に接触させるだけであり、内側縦アーチが形成されるように作用するものではない。また、靴下着用時には足裏部分が内側に傾倒するが、非着用時には足裏部分は足の外側へ逃げながら床面に接触することになり、偏平足や浮き指の症状を改善するためにアーチ構造を支える靭帯や筋肉に働きかけるものではなく、依然として偏平足や浮き指の症状が改善することはない。
【0009】
更に、足の土踏まずに直接当てるパットも、土踏まずの空間を埋めて諸症状を改善するだけであり、内側縦アーチが形成されるように作用するものではない。
【0010】
本発明は以上の点に鑑みて創案されたものであり、足のアーチ構造の所定のアーチ及びそれを支える靭帯等に押上げ力を作用させることにより土踏まずの形成を促進し、偏平足や浮き指の症状を確実に改善する靴下を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の靴下は、足に装着可能な可撓性を有する基材と、足の骨格における三角形状のアーチ構造内の所定のアーチを、足裏側から甲側に向かって押し出すことにより、第1中足骨の骨頭から踵骨にかけて形成される甲側凸状の内側縦アーチを甲側に間接的に押動する、前記基材の足裏側に設けた間接押出し構造とを備える。
【0012】
そして、足に装着可能な可撓性を有する基材によって、足に靴下を適度に密着させて着用することができるので、各着用者の足の甲部分の形状に関わらず、靴下を適切に着用することができる。
【0013】
更に、足の骨格における三角形状のアーチ構造内の所定のアーチを、足裏側から甲側に向かって押し出すことにより、第1中足骨の骨頭から踵骨にかけて形成される甲側凸状の内側縦アーチを甲側に間接的に押動する、基材の足裏側に設けた間接押出し構造によって、アーチ構造内を構成する骨、靱帯、筋肉等の組織(以下、「アーチ内組織」とする)を介し、土踏まず付近に位置する内側縦アーチ及びそれを支える靭帯や筋肉に、足裏側から甲側に向かって押し出す力(以下、「押上げ力」とする)が作用する。これにより、内側縦アーチを支える靭帯や筋肉が強くかつ柔軟に鍛えられて土踏まずの形成が促進され、偏平足や浮き指の症状を確実に改善することができる。なお、所定のアーチとは、後で詳述する横アーチ、外側縦アーチであって、これらの横アーチ、外側縦アーチの少なくとも一方を甲側に向かって押し出すものである。
【0014】
また、間接押出し構造が、基材の足裏側のうち、第1中足骨の骨頭から第5中足骨の骨頭にかけて形成される甲側凸状の横アーチに対応した第1裏面域に設けられると共に、同横アーチを甲側に押動可能な第1構造部を有する場合は、横アーチを甲側に向かって押し出すことで、アーチ内組織を介し、内側縦アーチ及びそれを支える靭帯や筋肉にも押上げ力が作用し、土踏まずの形成が促進され、偏平足や浮き指の症状を改善することができる。
【0015】
また、間接押出し構造が、基材の足裏側のうち、第5中足骨の骨頭から踵骨にかけて形成される甲側凸状の外側縦アーチに対応した第2裏面域に設けられると共に、同外側縦アーチを甲側に押動可能な第2構造部を有する場合は、外側縦アーチを甲側に向かって押し出すことで、アーチ内組織を介し、内側縦アーチ及びそれを支える靭帯や筋肉にも押上げ力が作用し、土踏まずの形成が促進され、偏平足や浮き指の症状を改善することができる。
【0016】
また、間接押出し構造が、基材の足裏側のうち、第1中足骨の骨頭から第1末節骨にかけて形成される第3裏面域に設けられると共に、歩行時の親指への体重の移動を促すことが可能な第3構造部を有する場合には、歩行時に踵が地面(床)についた後、体重の足裏へのかかりが、第2裏面域から第1裏面域を通って、第3裏面域である足の親指の腹へ移動することを促すことができる。
【0017】
また、第1構造部が、第1裏面域から基材外側へ突出する第1凸状部材を有する場合は、床や地面との間に介装した部材により、横アーチを甲側に向かって押し出すことができ、内側縦アーチ及びそれを支える靭帯や筋肉にも押上げ力が確実に作用し、土踏まずの形成が更に促進され、偏平足や浮き指の症状を短期間で改善することができる。
【0018】
また、第2構造部が、第2裏面域から基材外側へ突出する第2凸状部材を有する場合は、床や地面との間に介装した部材により、外側縦アーチを甲側に向かって確実に押し出すことができ、内側縦アーチ及びそれを支える靭帯や筋肉にも押上げ力が確実に作用し、土踏まずの形成が更に促進され、偏平足や浮き指の症状を短期間で改善することができる。
【0019】
また、第3構造部が、第3裏面域から基材外側へ突出する第3凸状部材を有する場合は、歩行時に踵が地面(床)についた後、体重の足裏へのかかりが、第2裏面域から第1裏面域を通って、第3裏面域である足の親指の腹へ移動することを促すことができる。
【0020】
また、間接押出構造は、基材の足裏側のうち、第1中足骨の骨頭から第5中足骨の骨頭にかけて形成される甲側凸状の横アーチに対応した第1裏面域に設けられると共に、横アーチを甲側に押動可能な、第1裏面域から基材外側へ突出する第1凸状部材と、足裏側のうち、第5中足骨の骨頭から踵骨にかけて形成される甲側凸状の外側縦アーチに対応した第2裏面域に設けられると共に、外側縦アーチを甲側に押動可能な、第2裏面域から基材外側へ突出する第2凸状部材とを有する場合は、横アーチと外側縦アーチを一緒に甲側に向かって押し出すことで、横アーチまたは外側縦アーチのみを押し出すのに比べ、内側縦アーチ及びそれを支える靭帯や筋肉には更に大きな押上げ力が作用し、土踏まずの形成が著しく促進され、偏平足や浮き指の症状を一層改善することができる。
【0021】
また、間接押出し構造が、基材の足裏側のうち、第1中足骨の骨頭から第1末節骨にかけて形成される第3裏面域に設けられると共に、親指への体重の移動を促すことが可能な、第3裏面域から基材外側へ突出する第3凸状部材を有する場合には、歩行時に踵が地面(床)についた後、体重の足裏へかかりが、第2裏面域から第1裏面域を通って、第3裏面域である足の親指の腹への移動することを促すことができる。
【0022】
また、第1凸状部材、第2凸状部材及び第3凸状部材が、突出高さが異なる場合は、内側縦アーチの形状に応じて横アーチと外側縦アーチの押上げ量を調整することができ、土踏まずの形成を効率良く行い、偏平足や浮き指の症状を短時間で改善することができる。
【0023】
また、第1凸状部材、第2凸状部材及び第3凸状部材が、単一部材から構成される場合は、第1凸状部材、第2凸状部材及び第3凸状部材がそれぞれ設けられた第1裏面域及び第2裏面域において、横アーチと外側縦アーチを甲側に向かって連動させながら押し出すことができ、アーチ内組織を介し、内側縦アーチ及びそれを支える靭帯や筋肉には均等な押上げ力が作用し、土踏まずの形成が精度良く行われ、偏平足や浮き指の症状を更に一層改善することができると共に、第3裏面域において歩行時に踵が地面(床)についた後、体重の足裏へのかかりが、第2裏面域から第1裏面域を通って、第3裏面域である足の親指の腹へ移動することを促すことができる。
【0024】
また、第1凸状部材、第2凸状部材及び第3凸状部材の少なくとも一つが、複数の小片別部材から構成される場合は、第1裏面域や第2裏面域を局所的に押し上げ、内側縦アーチの形状に応じて横アーチと外側縦アーチの押上げ量の分布を調整することができ、土踏まずの形成が精度良く行われ、偏平足や浮き指の症状を更に一層改善することができると共に、歩行時などの足の裏の動きに沿って第1裏面域、第2裏面域及び第3裏面域の形状を容易に変化させることができる。
【0025】
また、第1凸状部材、第2凸状部材及び第3凸状部材が連続して設けられた場合には、歩行時に踵が地面(床)についた後、体重の足裏へのかかりが、第2裏面域から第1裏面域を通って、第3裏面域である足の親指の腹へ移動することをより確実に促すことができる。
【0026】
また、第1凸状部材、第2凸状部材及び第3凸状部材の少なくとも一部が、互いに離間して設けられた複数の凸状片からなる場合には、歩行時などの足の裏の動きに沿って基材の第1裏面域、第2裏面域及び第3裏面域の形状を容易に変化させることができる。
【0027】
また、第1構造部が、第1裏面域に、第1中足骨と第5中足骨間を接近させる方向に付勢可能な第1付勢構造を有する場合は、横アーチを、そのアーチ両端から圧縮することができ、アーチ内組織を介し、内側縦アーチ及びそれを支える靭帯や筋肉にも押上げ力が作用し、土踏まずの形成が促進され、偏平足や浮き指の症状を改善することができる。
【0028】
また、第2構造部が、第2裏面域に、第5中足骨と踵骨間を接近させる方向に付勢可能な第2付勢構造を有する場合は、外側縦アーチを、そのアーチ両端から圧縮することができ、アーチ内組織を介し、内側縦アーチ及びそれを支える靭帯や筋肉にも押上げ力が作用し、土踏まずの形成が促進され、偏平足や浮き指の症状を改善することができる。
【0029】
また、第3構造部が、第3裏面域に、親指と第1裏面域を接近させる方向に付勢可能な第3付勢構造を有する場合には、足の裏で地面をつかむ力が増大するので、浮き指の症状を改善することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る靴下は、足のアーチ構造の所定のアーチ及びそれを支える靭帯等に押上げ力を作用させることにより土踏まずの形成を促進し、偏平足や浮き指の症状を確実に改善するものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の第1の実施例に係る靴下の使用状態を示す斜視図である。
【
図2】同じく靴下の第1裏面域と第2裏面域を示す斜視図である。
【
図3】同じく靴下着用時の足の骨格におけるアーチ構造を示す説明図である。
【
図4】同じく靴下着用時の付勢状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明の別形態の実施例に係る靴下の使用状態を示す斜視図であって、
図5(a)は第2の実施例に係る靴下の凸状部材の形状を示す斜視図、
図5(b)は第3の実施例に係る靴下の凸状部材の形状を示す斜視図である。
【
図6】本発明の第4の実施例に係る靴下の使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の靴下について
図1乃至
図6を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0033】
[第1の実施の形態]
まず、本発明の第1の実施の形態について、
図1乃至
図4を用いて説明する。
図1に示すように、本発明に係る靴下Sは、基材の一例である靴下本体1と、第1凸状部材の一例である横ゴムシート2、及び第2凸状部材の一例である縦ゴムシート3とからなる間接押出構造より構成される。
【0034】
図1乃至
図3に示すように、間接押出構造においては、足指を通す爪先側の指孔と足首を通す踵側の開口とを有する袋状の靴下本体1の裏面10において、指孔の直後部分の左右幅方向に延びる位置であって、足の第1中足骨B1から第5中足骨B5にかけた部分に対応した位置を第1裏面域11とし、この第1裏面域11に横ゴムシート2が設けられている。更に、前述の裏面10において、外側半部で指孔の直後部分から踵を覆う踵布まで延びる位置であって、足の第5中足骨から踵骨にかけた部分に対応した位置を第2裏面域12とし、この第2裏面域12に縦ゴムシート3が設けられている。これらの間接押出構造の構造部としての横ゴムシート2と縦ゴムシート3は、連続して形成されておらず、互いに離間して設けられている。
【0035】
ここで、足の骨格を構成する骨の間は、靭帯や筋肉によって連結されており、歩く際の衝撃を吸収するなどの機能を有する、骨格のアーチ構造A(足底弓蓋)が形成されている。このアーチ構造Aは、親指の第1中足骨B1の骨頭を支点A1とし、小指の第5中足骨B5の骨頭を支点A2とし、踵付近を支点A3とした3点支持構造であり、支点A1と支点A2の間には甲側に凸の円弧状の横アーチA4が橋架され、支点A2と支点A3の間にも同じく円弧状の外側縦アーチA5が橋架され、支点A3と支点A1の間にも同じく円弧状の内側縦アーチA6が橋架されている。そして、これらの横アーチA4、外側縦アーチA5、内側縦アーチA6は、前述したアーチ内組織を介し、互いに牽引可能に連結されている。
【0036】
先述した横ゴムシート2は、支点A1と支点A2の間の第1裏面域11に設けられていることから、足が地面や床に接地した際、横アーチA4を足裏から甲側に押し上げる機能を有する。縦ゴムシート3は、支点2と支点3の間の第2裏面域12に設けられていることから、横ゴムシート2と同様、外側縦アーチA5を足裏から甲側に押し上げる機能を有する。
【0037】
そして、このように横アーチA4や外側縦アーチA5が押し上げられると、アーチ内組織を介して内側縦アーチA6も一緒に押し上げられ、着用者が靴下Sを着用した状態で足裏を地面や床に接地している間(以下、「靴下使用中」とする)、押し上げられた状態で内側縦アーチA6の形状が維持される。この間、内側縦アーチA6を支える靭帯や筋肉に負荷がかかって鍛えられることで、靭帯や筋肉が強くかつ柔軟なものとなって、土踏まずの形成が促進され、偏平足や浮き指の症状が改善される。
【0038】
なお、ゴムシートは、少なくとも第1裏面域11または第2裏面域12の一方にのみ設けてもよく、土踏まずの形成状況によっては、必ずしも第1裏面域11と第2裏面域12の双方に設ける必要はない。
【0039】
[横アーチA4にゴムシート2が及ぼす作用の詳細]
横ゴムシート2を靴下本体1の第1裏面域11に設けることで、靴下使用中は、地面や床からの反力により、第2中足骨B2、第3中足骨B3と第4中足骨B4が、足裏から甲側へ横ゴムシート2の厚み相当分持ち上げられる。このとき、第1中足骨B1と第5中足骨B5は、第1裏面域11の端部に相当する部分に位置することから、横ゴムシート2による押上げ力が、第2中足骨B2~第4中足骨B4ほどは作用しないため、わずかしか持ち上げられない。これにより、第1中足骨B1から第5中足骨B5にかけて、円弧状の横アーチA4が精度良く形成される。
【0040】
[外側縦アーチA5にゴムシート3が及ぼす作用の詳細]
縦ゴムシート3を靴下本体1の第2裏面域12に設けることで、靴下使用中は、地面や床からの反力により、第5中足骨B5の骨頭から踵骨B6にかけた部分が、足裏から甲側へ縦ゴムシート3の厚み相当分持ち上げられる。このとき、第5中足骨B5の骨頭と踵骨B6は、第2裏面域12の端部に相当する部分に位置することから、縦ゴムシート3による押上げ力が、第5中足骨B5の踵骨B6側部分や立方骨(図示せず)等ほどは作用しないため、わずかしか持ち上げられない。これにより、第5中足骨B5の骨頭から踵骨B6にかけて、円弧状の外側縦アーチA5が精度良く形成される。
【0041】
[内側縦アーチA6に横アーチA4と外側縦アーチA5が及ぼす作用の詳細]
図3に示すように、前述した横アーチA4が足裏から甲側に向かって押し上げられることで、支点A1と支点A2には、互いに接近する左右内方向に、それぞれ力F1a、F1bが発生し、これに伴う横アーチA4の変形により、アーチ内組織を介して、内側縦アーチA6及びそれを支える靭帯や筋肉にも押上げ力が作用する。
【0042】
すると、この押上げ力により、内側縦アーチA6の長手方向略中央部が上方に最も膨らむことから、円弧状の内側縦アーチA6が形成される。これに伴い、前述した横アーチA4、外側縦アーチA5と同様、この内側縦アーチA6の形状を維持しようと、第1中足骨B1の骨頭から踵骨B6にかけた部分の周囲の靭帯や筋肉が機能し始め、強くかつ柔軟に鍛えられる。
【0043】
また、外側縦アーチA5についても同様であって、外側縦アーチA5が足裏から甲側に向かって押し上げられることで、支点A2と支点A3には、互いに接近する前後内方向に、それぞれ力F2a、F2bが発生し、これに伴う外側縦アーチA5の変形により、アーチ内組織を介して、内側縦アーチA6及びそれを支える靭帯や筋肉にも押上げ力が作用する。すると、この押上げ力により、前述の横アーチA4の場合と同様、内側縦アーチA6の形状を維持しようと、第1中足骨B1の骨頭から踵骨B6にかけた部分の周囲の靭帯や筋肉が機能し始め、強くかつ柔軟に鍛えられる。
【0044】
[靴下使用中の効果]
以上のようにして、靴下Sを着用するだけで、靴下使用中は、横アーチA4は横ゴムシート2により甲側に向かって押し上げられる状態が維持され、また外側縦アーチA5も縦ゴムシート3により甲側に向かって押し上げられる状態が維持される。
【0045】
これにより、靴下Sを着用した状態で足裏を地面や床に接地させるだけで、横アーチA4と外側縦アーチA5に押上げ力を作用させ、アーチ内組織を介して、内側縦アーチA6及びそれを支える靭帯や筋肉にも押上げ力を作用させることができ、これら周囲の靭帯や筋肉が機能し始めて強くかつ柔軟に鍛えられ、その結果、土踏まずの形成が促進され、偏平足や浮き指の症状を改善することができる。
【0046】
また、人によって足の構造は異なっており、またアーチ構造の形成の具合もさまざまであることから、例えば、横ゴムシート2と縦ゴムシート3を異なる厚みとすることで、足の構造や各アーチの形成具合に適合した靴下Sとすることができる。なお、横ゴムシート2、縦ゴムシート3の厚みについては、ゴムシートごとに厚みの異なるものを複数準備したり、同一ゴムシート内で場所によって厚みの異なるようにしてもよく、これにより、足の構造や各アーチの形成具合に一層適合した靴下Sとすることができる。
【0047】
具体的には、内側縦アーチA6の形状に応じて横アーチA4と外側縦アーチA5の押し上げ量を調整することで、土踏まずの形成を効率よく行い、偏平足や浮き指の症状を短時間で改善することができる。
【0048】
また、アーチ構造Aの形成が進むにつれて、横ゴムシート2や縦ゴムシート3は不要となるので、例えば、横ゴムシート2や縦ゴムシート3を着脱自在にすることで、アーチ構造の形成具合に応じた靴下Sとすることができる。
【0049】
具体的には、アーチ構造Aの形成の進み具合に応じ、適切な厚みを有する横ゴムシート2若しくは縦ゴムシート3を準備して交換可能にすることで、靴下Sを着用による違和感のないものにすることができる。
【0050】
また、前述した、支点A1、支点A2間を接近させる方向の力F1a、F1bと、支点A2、支点A3間を接近させる方向の力F2a、F2bを設けるように、左右内方向または前後内方向に付勢可能な付勢構造の一例である網目構造(図示せず)を備えた靴下とすることも考えられる。
【0051】
この網目構造によっても、靴下使用中は横アーチA4、外側縦アーチA5の双方をアーチ両端から圧縮され、いずれのアーチA4、A5も甲側に向かって押し上げられる状態が維持される。これにより、アーチ内組織を介して、内側縦アーチA6及びそれを支える靭帯や筋肉にも押し上げ力を作用させることができるので、土踏まずの形成が促進され、偏平足や浮き指の症状を改善することができる。
【0052】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態について、
図5(a)を用いて説明する。なお、第1の実施の形態と相違ない点については説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
【0053】
図5(a)に示すように、本発明に係る靴下S1は、基材の一例である靴下本体1と、第1凸状部材である横ゴムシート2と第2凸状部材である縦ゴムシート3が連結した一体型ゴムシート4とから成る。
【0054】
この一体型ゴムシート4は、足裏側を覆う靴下本体1の裏面10において、第1裏面域11から第2裏面域12にかけて連続して設けられているので、歩行に伴う体重の移動は、踵から第2裏面域12及び第1裏面域11の順に移動するように誘導される。このように、歩行時の、踵から第2裏面域12及び第1裏面域11に移動するという正常な体重の移動を促すことができるので、偏平足や浮き指の症状が改善される。
【0055】
更に、一体型ゴムシート4は、その前部が第1裏面域11に位置することから、横アーチA4を甲側へ押し上げると共に、その後部が第2裏面域12に位置することから外側縦アーチA5を甲側へ押し上げる機能を有する。
【0056】
このように横アーチA4と外側縦アーチA5が一体となって押し上げられると、アーチ内組織を介して内側縦アーチA6も押し上げられ、靴下使用中は、押し上げられた状態で内側縦アーチA6の形状が維持される。このように、内側縦アーチA6を支える靭帯や筋肉にも反力による負荷がかかって鍛えられることで、靭帯や筋肉が強くかつ柔軟なものとなって、土踏まずの形成が促進され、偏平足や浮き指の症状が改善される。
【0057】
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態について、
図5(b)を用いて説明する。なお、第1の実施の形態と相違ない点については説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
【0058】
図5(b)に示すように、本発明に係る靴下S2は、基材の一例である靴下本体1と、第1凸状部材と第2凸状部材が5つの小片別部材50a~小片別部材50eから形成された、不連続ゴムシート5とから成る。
【0059】
不連続ゴムシート5は、前述の第1裏面域11と第2裏面域12にかけて、5つの小片別部材50a乃至50eが列状に配置されている。
【0060】
不連続ゴムシート5のうち、小片別部材50aが第1裏面域11に位置することから、横アーチA4を甲側へ押し上げると共に、小片別部材50b~小片別部材50eが第2裏面域12に位置することから、外側縦アーチA5を甲側へ押し上げる機能を有する。
【0061】
そして、横アーチA4と外側縦アーチA5は、小片別部材50a~小片別部材50eにより局所的に押し上げられるため、内側縦アーチA6の形状に応じて、横アーチA4と外側縦アーチA5の押し上げ量の分布を調整することができ、土踏まずの形成が精度よく行われ、偏平足や浮き指の症状を更に一層改善することができる。
【0062】
更に、小片別部材50は互いに離間して設けられていることから、小片別部材50が横アーチA4と外側縦アーチA5を局所的に押圧するので、横アーチA4と外側縦アーチA5を押上げ力を若干弱めることができ、着用時に横アーチA4と外側縦アーチA5が押し上げられることにより生じる痛みなどを適度に緩和することができる。
【0063】
また、小片別部材50は互いに離間して列状に設けられているので、歩行に伴う体重の移動は、踵から第2裏面域12及び第1裏面域11の順に移動するように誘導される。このように、歩行時の、踵から第2裏面域12及び第1裏面域11に移動するという正常な体重の移動を促すことができるので、偏平足や浮き指の症状が改善される。
【0064】
このように、横アーチA4と外側縦アーチA5が局所的に押し上げられると、アーチ内組織を介して内側縦アーチA6も押し上げられ、靴下使用中は、押し上げられた状態で内側縦アーチA6の形状が維持される。このように、内側縦アーチA6を支える靭帯や筋肉に負荷がかかって鍛えられることで、靭帯や筋肉が強くかつ柔軟なものとなって、土踏まずの形成が促進され、偏平足や浮き指の症状が改善される。
【0065】
[第4の実施の形態]
本発明の第4の実施の形態について、
図2、
図3及び
図6を用いて説明する。なお、第1の実施の形態と相違ない点については説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
【0066】
図6に示すように、本発明に係る靴下S3は、基材の一例である靴下本体1と、第1裏面域11に設けられた、第1凸状部材である第1凸状片群6と、第2裏面域12に設けられた、第2凸状部材である第2凸状片群7、第3裏面域13に設けられた、第3凸状部材である第3凸状片8から成る。
【0067】
第1凸状片群6は、長さが異なる、複数の帯状の各小片部材60から成り、各小片部材60は、足裏の長手方向に対して傾斜して、かつ互いに離間して平行に配置されている。
【0068】
第2凸状片群7は、踵周辺に面状に広がって形成された凸状片70と、土踏まず周辺に帯状に形成された複数の小片部材71と、第2裏面域内の第1裏面域近傍に面状に広がって形成された凸状片72とから成る。
【0069】
図2及び
図3に示すように、靴下本体1の裏面10において、第1裏面域11の近傍から親指の付け根を通って親指の腹まで延びる位置であって、第1中足骨の骨頭から第1末節骨B7にかけた部分に対応した位置を第3裏面域13とし、この第3裏面域1に第3凸状片8が面状に広がって設けられている。
【0070】
第1凸状片群6、第2凸状片群7、第3凸状片8は連続して設けられているので、歩行に伴う体重の移動は、踵から第2裏面域12及び第1裏面域11を通って、第3裏面域13の順に移動するように誘導される。このように、歩行時の、踵から第2裏面域及び第1裏面域を通って第3裏面域に移動するという正常な体重の移動を促すことができるので、偏平足や浮き指の症状が改善される。
【0071】
また、直立した状態においては、裏面10のうち、第1凸状片群6、第2凸状片群7、第3凸状片8が設けられていない領域よりも、第1凸状片群6、第2凸状片群7、第3凸状片8が設けられた領域、即ち、第1裏面域11、第2裏面域12及び第3裏面域13に体重がかかりやすくなる。これにより、足の裏全体を使って身体を支えることが可能となり、浮き指の症状を改善することができる。
【0072】
なお、実施例1乃至実施例3で説明した、横ゴムシート2、縦ゴムシート3、一体型ゴムシート4、不連続ゴムシート5は、必ずしも靴下本体1に貼着したりして用いることに限られるものではない。例えば、靴下本体1に、上記各ゴムシートが設けられたカバー(図示せず)を別体として準備し、このカバーを靴下本体1に重ねて着用すれば、実施例1乃至実施例3で説明した効果と同様の効果が得られる。
【0073】
このように、本願発明は、足のアーチ構造の所定のアーチ及びそれを支える靭帯等に押上げ力を作用させることにより土踏まずの形成を促進し、偏平足や浮き指の症状を確実に改善する靴下となっている。
【符号の説明】
【0074】
1 靴下本体(基材)
2 横ゴムシート(第1凸状部材)
3 縦ゴムシート(第2凸状部材)
10 裏面(基材の足裏側)
11 第1裏面域
12 第2裏面域
13 第3裏面域
50a、50b、50c、50d、50e 小片別部材
A アーチ構造
A4 横アーチ
A5 外側縦アーチ
A6 内側縦アーチ
B1 第1中足骨
B5 第5中足骨
B6 踵骨
S、S1、S2、S3 靴下