(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】キックパッド
(51)【国際特許分類】
G10H 1/00 20060101AFI20220114BHJP
G10D 13/10 20200101ALI20220114BHJP
【FI】
G10H1/00 A
G10D13/10 160
(21)【出願番号】P 2018001166
(22)【出願日】2018-01-09
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000111856
【氏名又は名称】パール楽器製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】小泉 貴史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄一
(72)【発明者】
【氏名】竹川 彰人
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-191911(JP,A)
【文献】特開2012-73462(JP,A)
【文献】特開2014-199438(JP,A)
【文献】特開平8-137467(JP,A)
【文献】特開2011-227139(JP,A)
【文献】特開2006-47832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00
G10D 13/00,13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーターにより叩くことで生じる振動を電気信号に変換して出力する圧電素子と、
前記ビーターにより叩く面と前記圧電素子との間に配置された緩衝部材と、
前記叩く面を含む表面を有し、前記緩衝部材を前記圧電素子とともにその裏面側に包み込む、シート状の打面カバーと、
前記圧電素子の前記緩衝部材と反対側に配置された背面部材と、を有し、
前記打面カバーは、前記緩衝部材を押し潰すように、その外周縁を引っ張った状態で前記背面部材に固定されている、
キックパッド。
【請求項2】
前記緩衝部材は、複数枚の発泡シートとスポンジ層を重ねた構造を有する、
請求項1のキックパッド。
【請求項3】
前記打面カバーは、塩化ビニルまたはウレタンにより形成されている、
請求項1のキックパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子ドラムのキックパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
電子ドラムのキックパッドは、例えば、スタンドに取り付けられて使用される。スタンドの下端には、フットペダルが固定される。演奏するときには、フットペダルを足で操作してビーターをキックパッドに打ち付ける。スタンドおよび/或いはフットペダルは、床に敷く防振マットに対する滑りを防止するため、位置ズレ防止用のピンをその下面側に突出して有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のキックパッドでは、ビーターによりキックパッドを叩いたときに、アコースティックドラムのような自然なリバウンドを得ることは難しい。また、上述した従来のキックパッドでは、微妙な強弱をつけてフットペダルを踏んで、ビーターを打ち付ける強さを微妙に変えても、このような微妙な違いを圧電素子を介して音の強弱として出力することは難しい。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、自然なリバウンドを得ることができ、音の強弱を繊細に表現することができる、キックパッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のキックパッドは、ビーターにより叩くことで生じる振動を電気信号に変換して出力する圧電素子と、ビーターにより叩く面と圧電素子との間に配置された緩衝部材と、叩く面を含む表面を有し、緩衝部材を圧電素子とともにその裏面側に包み込む、シート状の打面カバーと、圧電素子の緩衝部材と反対側に配置された背面部材と、を有する。打面カバーは、緩衝部材を押し潰すように、その外周縁を引っ張った状態で背面部材に固定されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のキックパッドを用いると、自然なリバウンドを得ることができ、音の強弱を繊細に表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るキックパッドをスタンドに取り付けた組立体を示す外観斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のキックパッドのパッド本体の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3のパッド本体を背面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
図1は、4つの支持具10を介して本実施形態のキックパッド20をスタンド30に取り付けた組立体40を示す外観斜視図である。
図1では、フットペダル50をスタンド30の底部プレート31に取り付けた状態を示してある。キックパッド20の表面は、アコースティックドラムのバスドラムのヘッドに相当し、スタンドの底部プレート31は、バスドラムのリムに相当する。
【0010】
以下の説明では、組立体40のフットペダル50側を演奏者から見た手前側(或いは前面側)と称し、ビーター51がキックパッド20を叩く方向を奥側(或いは背面側)と称する。なお、フットペダル50の構造や底部プレート31への取り付け方法などについては、周知の技術であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0011】
スタンド30は、フットペダル50を取り付けるための略矩形の金属板により形成された底部プレート31を有する。底部プレート31は、床面Fと平行に配置され、その上面奥側の2つの角部に2本のメインフレーム32、32の下端を固定している。フットペダル50は、メインフレーム32、32の下端から離れた底部プレート31の手前側の辺部31aに取り付けられる。
【0012】
2本のメインフレーム32、32は、例えば、金属製のパイプにより形成されており、底部プレート31から上方に互いに略平行に延びている。2本のメインフレーム32、32の上端には、後述するキックパッド20が取り付けられる。
【0013】
2本のメインフレーム32、32の間には、サブフレーム33が架け渡されている。サブフレーム33は、例えば、金属製のプレートにより形成されている。また、各メインフレーム32の奥側には、それぞれ、支えフレーム34、34が設けられている。各支えフレーム34は、細長い2枚の板をその両端で重ねた構造を有する。各支えフレーム34の上端は、サブフレーム33を接続した位置で、回動スリーブ35を介してメインフレーム32の周りで回動可能に取り付けられている。
【0014】
各支えフレーム34の下端には、床面Fに敷いた図示しない防振マットに突き刺すことでスタンド30の移動を防止するための図示しない位置ズレ防止ピンが突出可能に設けられている。各支えフレーム34の下端とそれぞれ対応するメインフレーム32の下端の間には、梁フレーム36が設けられている。梁フレーム36の一端36aは、支えフレーム34に対して回動可能に取り付けられている。梁フレーム36の他端36bには、スライドスリーブ37が回動可能に取り付けられている。スライドスリーブ37は、メインフレーム32の周りで回動可能且つスライド可能に取り付けられている。
【0015】
スライドスリーブ37を
図1の状態からメインフレーム32に沿って上方にスライドさせ、梁フレーム36の他端36bを支えフレーム34の上端に近付けると、支えフレーム34と梁フレーム36がメインフレーム32と平行な状態に近付けられる。つまり、スライドスリーブ37を回動スリーブ35に最も近い位置までスライドさせると、支えフレーム34および梁フレーム36がメインフレーム32と略平行になり、スタンド30が折り畳まれる。
【0016】
スタンド30を
図1の状態に展開して使用する際には、スライドスリーブ37を貫通したネジ孔に螺合した蝶ネジ38を締め、スライドスリーブ37をメインフレーム32の下端近くに固定する。これにより、支えフレーム34が図示の開いた状態に固定され、スタンド30が安定する。このとき、スライドスリーブ37のメインフレーム32に対する固定位置を変えることで、支えフレーム34の角度を調節することができ、メインフレーム32の傾倒角度を調整することができる。つまり、アコースティックドラムのバスドラムを傾けるのと同じように、キックパッド20を支持する角度を変えることができる。
【0017】
なお、2本のメインフレーム32にそれぞれ接続された2本の支えフレーム34は、互いに離接する方向にその開き角度を調整可能な構造を有する。つまり、回動スリーブ35をメインフレーム32に対して回動させ、且つスライドスリーブ37をメインフレーム32に対して回動させることで、支えフレーム34および梁フレーム36をメインフレーム32に対して回動させることができ、支えフレーム34の角度調整が可能となる。このため、組立体40を演奏者の足元の狭い空間に設置し易く、レイアウトの自由度を高めることができる。角度調整した支えフレーム34は、上述した蝶ネジ38を締めることでその角度に固定される。
【0018】
以下、本実施形態のキックパッド20について、
図2乃至
図4を参照して説明する。
図2は、キックパッド20の分解斜視図である。
図3は、
図2のキックパッド20のパッド本体22の分解斜視図である。
図4は、パッド本体22をフレーム24側から見た背面斜視図である。
【0019】
図2に示すように、キックパッド20は、手前側から奥側に向けて、パッド本体22、フレーム24、および背面カバー26を有する。本実施形態のキックパッド20は、2本のビーターを並設したツインペダルに対応して、横長の打面21aを有する略矩形ブロック状に形成されている。
【0020】
図3に示すように、パッド本体22は、略矩形の7枚の発泡シート2および略矩形の2枚のスポンジシート4a、4b(スポンジ層)を重ねた積層体5(緩衝部材)を有する。7枚の発泡シート2は手前側に重ねて配置され、2枚のスポンジシート4a、4bは奥側に重ねて配置されている。発泡シート2およびスポンジシート4a、4bの素材や材質、厚さ、枚数、配置順などは、パッド本体22の打面21aをビーター51で叩いたときに要求されるキックパッド20の吸音性能や応答性能に応じて適宜変更可能である。
【0021】
各発泡シート2は、例えば、不織布に発泡性のアクリル剤を吹き付けて温度をかけて発泡させたシートである。2枚のスポンジシート4a、4bのうち、発泡シート2から離間した背面側のスポンジシート4bは、後述する圧電素子1の配線65(
図4)を背面側に引き出すための円形の貫通孔4cを有する。また、このスポンジシート4bは、パッド本体22をフレーム24に固定する4本のネジ61の先端を受け入れる4つの受孔4dを有する。
【0022】
2枚のスポンジシート4a、4bの間には、圧電素子1を背面3aに備えた矩形の金属板3を有する。圧電素子1は、ビーター51によってキックパッド20を叩いたときに生じる振動を電気信号に変換して出力する。金属板3は、発泡シート2およびスポンジシート4a、4bより一回り小さい。金属板3は、圧電素子1が背面側のスポンジシート4bに対向する図示の向きで配置される。
【0023】
発泡シート2のさらに手前側には、保護シート2aが重ねて配置されている。スポンジシート4bのさらに奥側には、背面プレート6(背面部材)が重ねて配置されている。背面プレート6は、4つの角が切り欠かれた八角形の金属板により形成されており、その中央にスポンジシート4bの貫通孔4cに対向する貫通孔63が設けられている。この貫通孔63は、圧電素子1の配線65を引き出すための孔である。また、背面プレート6は、上述した4本のネジ61を螺合する4つのネジ孔62を有する。
【0024】
パッド本体22の表面側には、ビーター51による打撃を受ける機能と積層体5を裏面側に収容して包んで保持する機能を兼ね備えた1枚のシート状の打面カバー21が設けられている。打面カバー21は、例えば、塩化ビニルやウレタンなどにより形成されている。打面カバー21は、上述した積層体5の手前側の面(前面)および全ての側面を包んで覆うように設けられ、積層体5の奥側の面(背面)で背面プレート6の背面に接着固定される。打面カバー21の素材や材質、厚さなどは、ビーター51が打面カバー21の表面に含まれる打面21aを叩いたときに、所望するリバウンドを得ることができるように選択される。
【0025】
より具体的には、打面カバー21は、その外周縁21bを外側へ引っ張りながらテンションを与えつつ背面プレート6の背面の周縁に接着固定される(
図4参照)。接着は、例えば、両面テープによりなされる。つまり、打面カバー21は、発泡シート2やスポンジシート4a、4bをその重ね方向にわずかに押し潰した状態で、周縁部が背面プレート6に接着固定される。このため、パッド本体22の前面縁部、すなわち打面21aの周縁部は、パッド本体22の側面に向けて緩やかに湾曲している。
【0026】
図2に戻って、フレーム24は、パッド本体22の背面に接触してネジ留め固定するための固定板24aを有する。固定板24aは、上述した圧電素子1に対向する位置に、圧電素子1の配線65を引き出すための開口部24a-1を有する。また、固定板24aは、固定板24aの手前側の面にパッド本体22を締結固定するためのネジ61を挿通する4つの挿通孔24a-2を有する。
【0027】
固定板24aの外周縁には、天板24b、底板24c、および2枚の側板24dが連続して一体に設けられている。天板24b、底板24c、および2枚の側板24dは、固定板24aと略直交するように背面側に折り曲げられている。
【0028】
パッド本体22は、打面カバー21の外周縁を固定板24aの手前側の面との間に挟んだ状態で、固定板24aの手前側に重ねられる。そして、パッド本体22は、4本のネジ61(
図3、4)を用いて、フレーム24の固定板24aに締結固定される。つまり、4本のネジ61をフレーム24の内側から固定板24aの挿通孔24a-2に通して、パッド本体22の背面プレート6のネジ孔62に螺合する。4本のネジ61を締め付けることで、打面カバー21の外周縁が背面プレート6と固定板24aにより挟持され、打面カバー21がフレーム24にも固定される。
【0029】
フレーム24の底板24cは、固定板24aとの間の折り曲げ部分にかけて、スタンド30の2本のメインフレーム32、32の上端を通す2つの開口部25、25を有する。開口部25の大きさは、キックパッド20をスタンド30に取り付けた状態で、メインフレーム32がキックパッド20のフレーム24に接触しない大きさに設計されている。
【0030】
2枚の側板24dは、それぞれ、2つの支持具10を取り付けるための取付孔27、27を有する。また、各側板24dは、対応する背面カバー26の側板26aを固定するためのネジ28(
図1)を挿通する挿通孔24d-1を有する。
【0031】
背面カバー26は、それぞれ、フレーム24の側板24dの内側に配置される2枚の側板26a、26aを有する。側板26a、26aは、背面板26bの水平方向の両端から手前側に一体に折り曲げて設けられている。
【0032】
各側板26aは、フレーム24の側板24dに設けた2つの取付孔27にそれぞれ重なる2つの切り欠き26a-1を有する。切り欠き26a-1の大きさ(長さおよび幅)は、取付孔27に取り付けた支持具10に干渉しない大きさに設計されている。各側板26aの上端縁には、フレーム24の天板24bに沿って内側に折れ曲がった支持片26a-2が設けられている。各側板26aは、フレーム24の側板24dに設けた挿通孔24d-1に重なるネジ孔26a-3を有する。
【0033】
背面カバー26をフレーム24に取り付ける場合、背面カバー26の2枚の側板26aをフレーム24の2枚の側板24dの内側に重ね、挿通孔24d-1を通してネジ孔26a-3にネジ28を螺合する。このとき、支持具10をフレーム24の取付孔27に取り付けた状態で、背面カバー26を取り付け可能となっている。なお、背面カバー26をフレーム24に取り付けた状態で、背面カバー26の支持片26a-2は、フレーム24の天板24bの下に配置される。
【0034】
背面カバー26は、背面板26bの両端の側板26a、26aを手前側に折り曲げた構造を有する。背面板26bは、中央が背面側に膨出するようにわずかに湾曲している。背面板26bの下端縁には、複数の支持片26b-1が設けられている。各支持片26b-1は、フレーム24の底板24cに沿って手前側に折り曲げられている。各支持片26b-1には、フレーム24の底板24cに固定するための図示しないネジを挿通するための孔が設けられている。
【0035】
背面カバー26の上端には、LEDユニット29aを取り付けるためのU字状の取付プレート29bが設けられている。LEDユニット29aは、図示しないネジにより取付プレート29bの上面に固定される。取付プレート29bは、図示しないネジにより背面カバー26の側板26aの支持片26a-2に締結固定される。LEDユニット29aは、背面カバー26をフレーム24に取り付けた状態で、天板24bによって概ね覆われるが、フレーム24の天板24bの下面と背面カバー26の背面板26bの上端との間のわずかな隙間から一部が露出する。
【0036】
支持具10は、スタンド30のメインフレーム32の上端とフレーム24の間に配置した図示しない弾性部材を有する。4つの支持具10は、同じ構造を有し、2本のメインフレーム32それぞれに2つずつ割り当てられている。本実施形態によると、キックパッド20をスタンド30に直接固定するのではなく、4つの支持具10を介してキックパッド20をスタンド30に取り付けた。
【0037】
以上のように、本実施形態によると、ビーター51により叩く面(打面21a)と圧電素子1との間に複数枚の発泡シート2とスポンジシート4aを重ねて配置し、テンションをかけた状態の打面カバー21で包んで覆うことで、キックパッド20のパッド本体22を構成した。つまり、打面カバー21は、発泡シート2とスポンジシート4a、4bの積層体5を保持する保持カバーとして機能するとともに、ビーター51を打ち付ける打面21aを構成するドラムヘッドとして機能する。このため、キックパッド20を構成する部品の点数を少なくすることができ、キックパッド20の製造コストを安くすることができる。
【0038】
また、本実施形態によると、圧電素子1と打面カバー21の間に複数枚の発泡シート2とスポンジシート4aを配置したため、ビーター51を打面21aに打ち付けたときに発生する振動を適度に吸収して圧電素子1に伝えることができる。これにより、ビーター51が打面21aを叩くことで生じる振動の強さを圧電素子1に精度よく正確に伝えることができ、微妙な強弱をつけた繊細な演奏に対応することができる。
【0039】
また、この場合、打面21aと圧電素子1の間に配置する発泡シート2やスポンジシート4a、4bなどの緩衝部材の素材や材質、厚さ、枚数、重ね順などを適宜変更することで、キックパッド20の打感を変えることもできる。基本的に、打面21aと圧電素子1の間に複数枚の発泡シート2とスポンジシート4aを配置することで、ビーター51が打面21aを叩く衝撃音を吸収させることができ、騒音の問題を抑制することができる。
【0040】
言い換えると、本実施形態によると、弱い力でフットペダル50を踏んで小さな音を出したいときに、キックパッド20が過剰に反応して、予想を超える大きな音が出てしまうといった不具合を生じることがなく、一方で、強い力でフットペダル50を踏んでも騒音をある程度抑えることができる。つまり、本実施形態のキックパッド20は、アコースティックドラムと同等の打感で演奏することができ、音の強弱を繊細に表現することができる。
【0041】
また、本実施形態によると、ビーター51を打ち付ける打面21aを表面に有する打面カバー21を、テンションをかけた状態で背面プレート6に固定してパッド本体22を構成しているため、アコースティックドラムのヘッドと同様に、ビーター51を打ち付けたときに自然なリバウンドを得ることができる。このため、本実施形態のキックパッド20を用いると、アコースティックドラムと略同じ感覚で演奏することができる。
【0042】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0043】
例えば、上述した実施形態では、ビーター51を打ち付ける打面21aと圧電素子1の間に配置した緩衝部材として、発泡シートやスポンジシートを用いた場合について説明したが、これに限らず、ゴムシートや空気を入れた袋など、他の緩衝部材を用いてもよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、キックパッド20の打面21aを含む打面カバー21として、塩化ビニルやウレタンなどを用いた場合について説明したが、これに限らず、メッシュ素材などの他の打面カバーを用いてもよい。
また、上述した実施形態では、圧電素子1を有する電子ドラムのキックパッド20に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、圧電素子1を持たないキックパッドに本発明を適用することもできる。この場合、張設した打面カバー21を有するため、アコースティックドラムと同等の打感やリバウンドを得ることができ、静音性も確保することができる。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
ビーターにより叩くことで生じる振動を電気信号に変換して出力する圧電素子と、
前記ビーターにより叩く面と前記圧電素子との間に配置された緩衝部材と、
前記叩く面を含む表面を有し、前記緩衝部材を前記圧電素子とともにその裏面側に包み込む、シート状の打面カバーと、
を有するキックパッド。
[2]
前記圧電素子の前記緩衝部材と反対側に配置された背面部材をさらに有し、
前記打面カバーは、前記緩衝部材を押し潰すように、その外周縁を引っ張った状態で前記背面部材に固定されている、
[1]のキックパッド。
[3]
前記緩衝部材は、複数枚の発泡シートとスポンジ層を重ねた構造を有する、
[2]のキックパッド。
[4]
前記打面カバーは、塩化ビニルまたはウレタンにより形成されている、
[2]のキックパッド。
[5]
緩衝部材と、
叩く面を含む表面を有し、前記緩衝部材をその裏面側に包み込む、シート状の打面カバーと、
を有するキックパッド。
【符号の説明】
【0045】
1…圧電素子、 2…発泡シート、 3…金属板、 4a、4b…スポンジシート、 5…積層体、 6…背面プレート、 20…キックパッド、 21…打面カバー、 21a…打面、 21b…外周縁、 22…パッド本体、 51…ビーター。