(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】エンドタブ
(51)【国際特許分類】
B23K 37/06 20060101AFI20220114BHJP
B23K 9/00 20060101ALI20220114BHJP
B23K 9/028 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B23K37/06 R
B23K9/00 501B
B23K9/028 J
(21)【出願番号】P 2018214266
(22)【出願日】2018-11-15
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591175985
【氏名又は名称】株式会社スノウチ
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】奥山 春菜
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-42183(JP,A)
【文献】特開平6-297144(JP,A)
【文献】実開昭58-160691(JP,U)
【文献】実開平3-70889(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 37/06
B23K 9/00
B23K 9/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックス柱の上方部分であり、下部周囲に、開先を形成するための傾斜面が設けられ、溶融メタルを受け止めるための裏当て金が、内側に溶接により仮止めされた上部材と、ルートギャップが設けられた状態で配置されたボックス柱の下方部分であり、上面が平坦な下部材またはダイヤフラム板を、溶接接合する際に使用されるエンドタブであって、
セラミックで形成され、
前記下部材の平坦面に当接する平坦な底部面、
この底部面の一方の側辺から垂直に立ち上がった溶融メタル接触面、
前記底部面の一方の端辺から垂直に、前記溶融メタル接触面に対して、開先角に対応する角度をもって立ち上がった、前記開先の底面に接触する開先底面接触面、および
前記溶融メタル接触面の上辺から溶融メタル接触面に対して開先角に対応する角度で斜め上方に延び、前記底部面と対向した開先面接触面、
を備えた開先の左右端部の一方の端部用のタブ部分、およびこのタブ部分と左右対称な他方の端部用のタブ部分を一体に構成してなり、
前記上部材に裏当て金を溶接により仮止めする際に、前記上部材の開先内に形成されるシーリングビードを回避するための、前記左右端部用のタブ部分の前記開先底面接触面に亘って延び、テーパー部または湾曲凹部であるシーリングビード回避部を備えている、
ことを特徴とするエンドタブ。
【請求項2】
前記セラミックが、ムライト系セラミックである請求項1のエンドタブ。
【請求項3】
全体の厚さが10~20mmである請求項1または2のエンドタブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドタブに関し、更に詳細には、ボックス柱の上方部分であり、下部周囲に、開先を形成するための傾斜面が設けられ、溶融メタルを受け止めるための裏当て金が、内側に溶接により仮止めされた上部材と、ルートギャップが設けられた状態で配置されたボックス柱の下方部分であり、上面が平坦な下部材またはダイヤフラム板を、溶接接合する際に使用されるエンドタブに関する。
【背景技術】
【0002】
ボックス柱継手のコーナー部はこれを挟む両側面の溶接が結合する個所であり、従来は次に示すような方法などが行われてきた。
つまり、コーナー部の両側面の溶接ビードを各々コーナー部寸前で止め、アークエアガウジングにて始終端部溶接金属を若干取り除き、形を整えてから、コーナー部の廻し溶接により溶接金属6を盛り上げて成型する方法が取られている。この方法においては、コンプレッサー設備等を含むアークエアガウジング機器を必要とし、さらに高度な溶接技量が要求されるため、能率よく確実に溶接することはかなり困難といえる。
または、他の方法として、コーナー部に三角形のスチールプレートタブ材を取付け、両側面の溶接を各々このタブ材と結合することによりコーナー部を形成する方法が取られている。しかしながらこの方法においては実際の開先精度のバラツキ等も考慮するとタブ材の取付けがかなり面倒であり、コーナー部溶接内部に欠陥が発生し易く、ビード外観も必ずしも望ましい形状となりにくい。
以上のように、従来からコーナー部を能率よく、健全かつ良好に溶接する適切な方法がなかった。
【0003】
上述した実情に鑑みて、特開平9-174237号公報(特許文献1)においては、ボックス柱継手の溶接に際し、そのコーナー部に耐火性を有する固形フラックスタブ材を当接し、コーナー部を健全かつ良好にアーク溶接する方法が提案された。
【0004】
このアーク溶接法は、ボックス柱継手の溶接を行なう場合に際し、耐火性溶剤を主成分とする固形剤をボックス柱継手コーナー部に当接し、ボックスの相対する2面をアーク溶接した後、固形フラックスタブ材を取りはずし、残り2面をアーク溶接して、ボックス柱継手コーナー部の溶接を完了する固形フラックスタブ材を使用するボックス柱継手コーナー部の溶接方法である。
【0005】
ところで、上記のようにボックス柱の上部材と下部材とを溶接する際には、通常、ルートギャップを確保するため、前記上部材の下端に、金属製裏当て金を一部が下方に突出するようにして、仮溶接止めしておくことが通常である。
【0006】
ここでルートギャップとは、溶接溶込みにより溶接強度や耐久性を高めるために、溶接部材間に設けられる所定幅の溶接用間隙のことである。ルートギャップは、当接する溶接部材間での溶接溶け込みを実現するのに適した数ミリメートルの幅をとって設けられる。
【0007】
上記したように、上部材に裏当て金を溶接すると、シーリングビードが形成され、実際のボックス柱の溶接の際には、このシーリングビードが開先空間に突出するので、上記のように、溶接部にタブ材を設置するには、前記シーリングビードについて何らかの対策が必要である。しかし、上記した特許文献1の方法にあっては、何ら対策が立てられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、ボックス柱の構築の際の溶接において使用されるエンドタブであって、前記シーリングビードについて充分に考慮したセラミックス製エンドタブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、下記(1)~(3)の構成の本発明のエンドタブによって達成される。
(1)
ボックス柱の上方部分であり、下部周囲に、開先を形成するための傾斜面が設けられ、溶融メタルを受け止めるための裏当て金が、内側に溶接により仮止めされた上部材と、ルートギャップが設けられた状態で配置されたボックス柱の下方部分であり、上面が平坦な下部材またはダイヤフラム板を、溶接接合する際に使用されるエンドタブであって、
セラミックで形成され、
前記下部材の平坦面に当接する平坦な底部面、
この底部面の一方の側辺から垂直に立ち上がった溶融メタル接触面、
前記底部面の一方の端辺から垂直に、前記溶融メタル接触面に対して、開先角に対応する角度をもって立ち上がった、前記開先の底面に接触する開先底面接触面、および
前記溶融メタル接触面の上辺から溶融メタル接触面に対して開先角に対応する角度で斜め上方に延び、前記底部面と対向した開先面接触面、
を備えた開先の左右端部の一方の端部用のタブ部分、およびこのタブ部分と左右対称な他方の端部用のタブ部分を一体に構成してなり、
前記上部材に裏当て金を溶接により仮止めする際に、前記上部材の内側に形成されるシーリングビードを回避するための、前記左右端部用のタブ部分の前記開先底面接触面に亘って延び、テーパー部または湾曲凹部であるシーリングビード回避部を備えている、
ことを特徴とするエンドタブ。
(2)
前記セラミックが、ムライト系セラミックである前記(1)のエンドタブ。
(3)
全体の厚さが10~20mmである前記(1)または(2)のエンドタブ。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエンドタブにおいては、上記したように、テーパー部または湾曲凹部であるシーリングビード回避部を、その開先底面接触面に亘って延びるように設けたので、溶接の際のエンドタブの機能を充分に発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態によるエンドタブの斜視図であり、(A)は、左右の部分を一体にした全体を表す図、(B)は、左右の部分を便宜上別体に分解した構造を表す図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態によるエンドタブの斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明のエンドタブ2つを、ボックス柱の継手部に取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の第1実施態様によるエンドタブ10について説明する。
図1、
図2,
図3、
図4は、それぞれ、本発明の第1実施形態によるエンドタブの斜視図、正面図および左側面図である。
【0014】
このエンドタブ10は、ボックス柱100の上部材110と下部材120とを溶接接合する際に用いられるものである。前記上部材110は、ボックス柱100の溶接継手部における、ボックス柱の上方部分であり、下部周囲に、開先を形成するための傾斜面(開先面)112が設けられ、溶融メタルを受け止めるための裏当て金Bが、内側に仮付け溶接部W1、W2により仮止めされている(
図11)。前記下部材120は、前記上部材110に対し、ルートギャップGが設けられた状態で配置されたボックス柱の溶接継手部の下方部分であり、通常、上面が平坦面122となっている。このエンドタブは、上部材の下部に平坦なダイヤフラム板を溶接する際にも用いられる。
【0015】
前記仮付け溶接部W1、W2のうち、下側の溶接部W2は、溶接継手部において、開先空間Sに突出するシーリングビードとなっており、エンドタブを配置するためには何らかの対策が必要である。
【0016】
本エンドタブ10は、セラミック、好ましくは熱衝撃性に強いムライト系セラミックで形成され、
図1(B)に示したように、開先の左右端部の一方の端部用のタブ部分10b(左端部用)、およびこのタブ部分と左右対称な他方の端部用のタブ部分10a(右端部用)を一体に構成してなるものである。以下、左端部用タブ部分10bを代表させて説明する。なお、右端部用タブ部分10aの各部分については、対応する部分を示す参照数字に「a」を付してその説明を省略する。
前記タブ部分10bは、前記下部材120の平坦面122に当接する平坦な底部面12b、この底部面12bの一方の側辺14bから垂直に立ち上がった溶融メタル接触面16b、前記底部面12bの一方の端辺14bから垂直に、前記溶融メタル接触面16bに対して、開先角に対応する角度をもって立ち上がった、前記開先の底面に接触する開先底面接触面18b、および前記溶融メタル接触面16bの上辺20bから溶融メタル接触面16bに対して開先角に対応する角度で斜め上方に延び、前記底部面12bと対向した開先面接触面22bを備えている。
なお、タブ部分の先端は、左右のタブ部分を連結する垂直面である連結面24となっている。
【0017】
本エンドタブ10の前記タブ部分10bは、該エンドタブ10をボックス柱の継手部に設置した際に、前記シーリングビードW2を回避する(干渉しないようにする)ためのシーリングビード回避部30bを備えている。シーリングビード回避部30bは、前記タブ部分の前記開先底面接触面18bに亘って延びるテーパー部として形成されている。
このテーパー角は、前記底部面12bに対して40~60度であることが好ましい。
【0018】
次に、
図5~
図8を参照して、本発明の第2実施形態によるエンドタブ50を説明する。
図5~
図8は、第2実施形態によるエンドタブ50の斜視図、正面図、平面図および左側面図であり、上述した第1実施形態によるエンドタブ10の
図1、
図2,
図3、
図4に対応する図である。
【0019】
この第2実施形態によるエンドタブ50は、湾曲状のシーリングビード回避部52a、52bを備えている。この湾曲は、円弧、楕円の一部、他の2次曲線等で形成される、円弧を採用した場合、曲率半径は、5~8mmが好ましい。
この第2実施形態によるエンドタブ50は、シーリングビード回避部が湾曲状であること以外は、第1実施形態によるエンドタブと同じ形状であるので、これ以上の説明は省略する。
【0020】
本発明のエンドタブは、全体の厚さを10~20mmと、極めて薄くすることができる。本発明のエンドタブにおいては、上記したように材料として、熱衝撃性に強いムライト系セラミックを用いたことと、開先の左右端部用のタブ分を一体化して厚みをかせいだことによる。
【0021】
本発明の実施形態によるエンドタブ10は、
図9に示したように、ボックス柱継手部の一辺の開先の左右端部に設置され、この間の開先を用いて溶接接合する。
【0022】
本発明のエンドタブにおいては、上記したように、テーパー部または湾曲凹部であるシーリングビード回避部を、その開先底面接触面に亘って延びるように設けたので、溶接部に正確に収まり、エンドタブの機能を充分に発揮できる。
【符号の説明】
【0023】
10:エンドタブ
10a、10b:タブ部分
12b:底部面
14b:一方の側辺
16b:溶融メタル接触面
18b:開先底面接触面
20b:溶融メタル接触面の上辺
30b:シーリングビード回避部
W2 :シーリングビード