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  • 特許-ヘヤカット方法 図1
  • 特許-ヘヤカット方法 図2
  • 特許-ヘヤカット方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】ヘヤカット方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 44/00 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
A45D44/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019123759
(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公開番号】P2021007677
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2019-12-03
【審判番号】
【審判請求日】2020-11-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519143638
【氏名又は名称】株式会社ミッシェル
(74)【代理人】
【識別番号】100077539
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 義仁
(72)【発明者】
【氏名】藤抜 志守生
【合議体】
【審判長】佐々木 芳枝
【審判官】田合 弘幸
【審判官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-260028(JP,A)
【文献】特開2016-77437(JP,A)
【文献】特開2003-302895(JP,A)
【文献】国際公開第2012/108010(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 44/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施術者の頭頂部を一方の極としアゴを他方の極として、両極を結ぶ軸の周囲において放射状に該頭頂部から該アゴに向かう湾曲カーブ状の仮想軌道を頭部の全周にわたって想定し、該湾曲カーブ状の仮想軌道に沿って該被施術者の頭髪を区分けするステップと、
前記区分けした頭髪から1つの毛束をとって該毛束の自由端部分をカットするカット操作を行い、このようなカット操作を繰り返すステップと
を含み、該被施術者の頭部の全周にわたって前記区分けするステップ及び前記カット操作を繰り返すステップを行うことからなり、
前記区分けした頭髪から前記1つの毛束をとるとき、該当する箇所の頭髪部分を上向きにシェーピングすることを行い、その際、シェーピングは、前記該当する箇所の頭髪部分の先端寄り部分を前記湾曲カーブ状の仮想軌道に倣わせるよう行い、かつ、前記シェーピングによって持ち上げた頭髪部分の毛束を指間で把持する際に前記湾曲カーブ状の仮想軌道に倣うように毛束を把持し、
前記指間で把持した前記毛束の自由端部分をカットするとき、前記湾曲カーブ状の仮想軌道に倣うようカットする、ことを特徴とするヘヤカット方法。
【請求項2】
前記頭髪を区分けするステップにおいて、前記被施術者の頭髪を区分けするために、頭髪を櫛でスライスすることを行う、請求項1のヘヤカット方法。
【請求項3】
前記区分けした頭髪から前記1つの毛束をとるとき、前記シェーピングは、前記該当する箇所の頭髪部分を根元から上向きに櫛でシェーピングすることにより行う、請求項1又は2のヘヤカット方法。
【請求項4】
前記被施術者の頭部において上下方向に複数のセクションを設定し、
前記カット操作を繰り返すステップは、前記カット操作を各セクションにおいて繰り返す、請求項1乃至のいずれかのヘヤカット方法。
【請求項5】
前記指間で把持した前記毛束の自由端部分をカットするとき、セクション毎にカット量を調整し、前記湾曲カーブ状の仮想軌道に倣うようにカットする、請求項のヘヤカット方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭髪をカットし、ヘアスタイルを見栄えよく綺麗なシルエットに調整するためのヘヤカット方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来知られたヘヤカット方法は、カット対象の頭髪を手指や櫛で所望の方向にパネル状に引き出してパネル状毛束を形成し、該パネル状毛束の先端部を該頭髪の引き出し方向に直交する方向や傾斜する方向に直線状にカットし、このようなカットを繰り返すことで所望のヘアスタイルに調整することからなっている。毛束のとり方に明確な法則性はなく、仕上がりのヘアスタイルを念頭におきながら、施術者の感性で行われるのが一般的である。
【0003】
これに対して、下記特許文献1においては、カット対象の頭髪をパネル状に引き出してパネル状毛束を形成し、該パネル状毛束の自由端部を該自由端部の左右端部を重ね合わせるように折り返して折重自由端部を形成し、該折重自由端部を上記頭髪の引き出し方向に対し傾斜した方向にカットすることにより、頭部の球面形状に沿い易いカットラインを形成することが開示されている。しかし、個別の被施術者の頭部の形状は種々多様であるので、このように頭部の球面形状に沿い易いカットラインを形成する手法は、各被施術者の頭部の個性を活かした仕上がりには適するが、被施術者の頭部の負の個性(例えばゼッペキ等)を打ち消して可及的に普遍的な見栄えのよいヘアスタイルを形成するには余り適していないと思われる。
【0004】
一方、下記特許文献2においては、頭頂部からハチ部を含む頭部の上方に仮想的に設定されるオーバーセクションをカットするとき、頭髪の根元に対してつむじを起点として複数の対数螺旋形状の領域を仮想的に設定し、該領域のうち最も外側の領域から生えている頭髪の根元を指に挟んで該つむじの回転方向に沿って毛先に向かって指を滑らせて、該つむじを起点として該頭髪を対数螺旋の軌道の一部に近づくように複数回転させて引き出して毛先をカットすることが開示されている。このヘアカット手法は、余分な頭髪の重なりを少なくすることにより、頭が立体的で小さく丸みを帯びてみえるような効果が得られることを意図している。しかし、対数螺旋形状の領域を仮想的に設定することなどにおいて、高度なテクニックが要求されると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5806429号
【文献】特許第6332713号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ヘアスタイルを見栄えよく綺麗なシルエットに調整できるような新規なヘヤカット方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るヘヤカット方法は、被施術者の頭頂部を一方の極としアゴを他方の極として、両極を結ぶ軸の周囲において放射状に該頭頂部から該アゴに向かう湾曲カーブ状の仮想軌道を頭部の全周にわたって想定し、該湾曲カーブ状の仮想軌道に沿って該被施術者の頭髪を区分けするステップと、前記区分けした頭髪から1つの毛束をとって該毛束の自由端部分をカットするカット操作を行い、このようなカット操作を繰り返すステップとを含み、該被施術者の頭部の全周にわたって前記区分けするステップ及び前記カット操作を繰り返すステップを行うことからなり、前記区分けした頭髪から前記1つの毛束をとるとき、該当する箇所の頭髪部分を上向きにシェーピングすることを行い、その際、シェーピングは、前記該当する箇所の頭髪部分の先端寄り部分を前記湾曲カーブ状の仮想軌道に倣わせるよう行い、かつ、前記シェーピングによって持ち上げた頭髪部分の毛束を指間で把持する際に前記湾曲カーブ状の仮想軌道に倣うように毛束を把持し、前記指間で把持した前記毛束の自由端部分をカットするとき、前記湾曲カーブ状の仮想軌道に倣うようカットする、ことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、被施術者の頭頂部を一方の極としアゴを他方の極として、両極を結ぶ軸の周囲において放射状に該頭頂部から該アゴに向かう湾曲カーブ状の仮想軌道を頭部の全周にわたって想定し、該湾曲カーブ状の仮想軌道に沿って該被施術者の頭髪を区分けし、前記区分けした頭髪から前記1つの毛束をとるとき、該当する箇所の頭髪部分を上向きにシェーピングすることを行い、その際、シェーピングは、前記該当する箇所の頭髪部分の先端寄り部分を前記湾曲カーブ状の仮想軌道に倣わせるよう行い、かつ、前記シェーピングによって持ち上げた頭髪部分の毛束を指間で把持する際に前記湾曲カーブ状の仮想軌道に倣うように毛束を把持し、前記指間で把持した前記毛束の自由端部分をカットするとき、前記湾曲カーブ状の仮想軌道に倣うようカットするので、どのカット操作を行うときも、カットの方向が下側の極(アゴ)を指向するように方向付けられ、かつ、下側の極(アゴ)を指向するように方向付けられたヘアカットが行われることになる。したがって、被施術者の頭部の全周にわたって繰り返し行われるカット操作のどのカット操作においても、下側の極(アゴ)を指向するように方向付けられたヘアカットが行われることになり、総体的な結果として、全体として頭頂部からアゴに向かう湾曲カーブ状の仮想軌道に沿う仕上がりを得ることができる。
【0009】
これにより、被施術者の頭頂部及び後頭部の辺りにふんわり感を出して、どの被施術者に対しても可及的に普遍的な丸みのある綺麗な頭部外観(シルエット)を演出することができ、また、顔周り、耳周り、首周りを引き締めて小顔効果及びリフトアップ効果を演出することができる。さらに、髪に流れるような動きが出せるので可愛さと華やかさを表現することができ、髪に綺麗なまとまりとツヤを出すことができる。例えば、本発明によれば、どの被施術者に対しても可及的に普遍的な丸みのある綺麗な頭部シルエットを演出することができるので、所謂「ゼッペキ」や「ハチ張り」など骨格的に頭部シルエットを綺麗に見せにくい方、あるいは細毛や剛毛など髪質的に頭部シルエットを綺麗に見せにくい方、あるいは加齢により毛髪のコシがなくなって頭部シルエットを綺麗に見せにくい方、あるいは毛髪の癖が強いことで頭部シルエットを綺麗に見せにくい方などにとって好適な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のヘヤカット方法の一実施例を説明するために、頭部モデルを斜め上方から見た正面図。
図2】同実施例を説明するために、頭部モデルを斜め上方及び斜め後方寄りから見た側面図。
図3】同実施例におけるCカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)に沿うカット例を抽出して示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び図2は、頭部モデルを用いて本発明のヘヤカット方法の一実施例を説明する図である。本実施例においては、頭部の周囲において頭頂部からアゴに向かう湾曲カーブ状の仮想軌道を想定するものとする。このように頭頂部からアゴに向かう湾曲カーブ状の仮想軌道を便宜上「Cカーブ」とも言うことにする。図において、頭頂部を黒点P1で示し、アゴの一点(これを「センターポイント」という)を黒点P2で示し、複数のCカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)を破線CCで示している。なお、頭頂部を1つの黒点P1で示し、アゴを1つの黒点P2で示したのは、説明上の一例にすぎず、黒点P1の周辺領域を「頭頂部」として取り扱い、黒点P2の周辺領域を「アゴ」(センターポイント)として取り扱ってよい。なお、図1及び図2においては、便宜上、Cカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)CCが、あたかも、モデルの頭部(顔を含む)の皮膚表面に密接したラインを描くかのように描いているが、むしろ、皮膚表面から適宜に離れて仮想的に描かれる軌道を示す概念である。すなわち、本発明において、「頭部の周囲」とは、頭部の周りの皮膚表面に密着した領域に限らず、頭部の周りの皮膚表面から適宜に離れて比較的大きな球状で頭部を囲む空間領域をも含む概念である。同様に、本発明において、「頭頂部」とは、頭頂部の皮膚領域に限らず、その適宜の上方の空間領域をも含む概念であり、また、「アゴ」(センターポイント)とは、アゴの皮膚領域に限らず、その適宜の下方(若しくは斜め前方の下方)の空間領域をも含む概念である。
【0012】
本実施例においては、頭部の全周を前記Cカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)に沿って放射状に複数の区画(「湾曲カーブ放射区画」という)に区画し、こうして複数の湾曲カーブ放射区画が想定(設定)される。図において、湾曲カーブ放射区画を符号CRで示しており、各湾曲カーブ放射区画CRは、破線CCで示すCカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)に沿って区画されている。以下、この湾曲カーブ放射区画を、便宜上、「Cカーブ放射区画」とも言う。図1及び図2に示されるように、すべての湾曲カーブ放射区画(Cカーブ放射区画)CRが頭頂部P1及びアゴP2に収束するような仮想的カーブをなす。なお、湾曲カーブ放射区画CRの区画数は任意であり、要は、頭頂部P1及びアゴP2に至るような放射状に複数の湾曲カーブ放射区画(Cカーブ放射区画)CRが想定(設定)されればよい。なお、図2は略右側面から見た図であるが、Cカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)の様相は反対側つまり左側面においても同様である。すなわち、アゴ(センターポイント)P2を指向するCカーブの流れは、頭部の真後ろの下側(うなじの周辺)で左右に分かれることになる。
【0013】
本実施例に従う手法で施術者が被施術者の頭髪をカットするとき、施術者は、被施術者の頭部に関して、上述の要領で、頭部の周囲において頭頂部P1からアゴP2に向かうCカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)CCを想定しつつ、頭部の全周を前記Cカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)CCに沿って放射状に区画してなる複数の湾曲カーブ放射区画(Cカーブ放射区画)CRを想定(設定)する。このとき、あるいはその後のカット操作の前に、該想定(設定)した湾曲カーブ放射区画(Cカーブ放射区画)CRを具体的に区分けするために、被施術者の頭髪を櫛でスライスする(髪を分ける)とよい。このようなスライスの仕方を、例えば、「Cカーブスライス」と言うことにする。
【0014】
施術者は、以上のように想定(設定)した被施術者の頭部における1つの湾曲カーブ放射区画(Cカーブ放射区画)CRから1つの毛束を指でとり、該毛束の自由端部分を鋏でカットすることを行い、このようなカット操作を繰り返す。
【0015】
一例として、各湾曲カーブ放射区画(Cカーブ放射区画)CRにおいて上下方向に複数のセクションを想定(設定)し、1つの湾曲カーブ放射区画の1つのセクションから1つの毛束をとって該毛束の自由端部分をカットする。図においては、一例として、頭髪領域を上下方向に4つのセクションS1,S2,S3,S4に分ける例を示している。一例として、各セクションを、アンダーセクションS1,ミドルセクションS2,トップセクションS3,オーバーセクションS4という。このようなセクションの分け方は一例にすぎず、任意の分け方が可能である。上下方向のセクション毎にヘヤカットの仕方を適宜異ならせることにより、全体として望みのヘヤスタイルに仕上げることができる。
【0016】
本実施例においては、1つの湾曲カーブ放射区画の1つのセクションから1つの毛束をとって該毛束の自由端部分をカットし、このようなカット操作を各湾曲カーブ放射区画の各セクションについて繰り返す。図3は、セクション毎のヘヤカット例を抽出して模式的に示す頭部側面図である。図3においては、理解を深めるために、セクション毎のヘヤカット状態の一例を展開して図示している。
【0017】
具体的な手順を説明すると、1つの湾曲カーブ放射区画から1つの毛束をとるとき、まず、該当する箇所の頭髪部分を根元から上向きに櫛でシェーピングする。その際、シェーピングは、前記該当する箇所の頭髪部分の先端寄り部分を前記Cカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)CCに倣わせるようなやり方で、回し気味に、行うとよい。例えば、上に持ち上げた櫛を、Cカーブに倣わせるようなつもりで、回し気味にコーミング(櫛けずり操作)を行う。これにより、コーミングされた頭髪部分がCカーブに沿ってアゴP2の方を指向するような様相となる。このようなシェーピングの仕方を、例えば、「Cカーブシェープ」と言うことにする。
【0018】
次に、コーミングされた頭髪部分(つまり、シェーピングによって持ち上げた頭髪部分)の毛束を施術者の指間で把持し、該把持した毛束の自由端部分の適量を鋏でカットする。コーミングされた頭髪部分(つまり、シェーピングによって持ち上げた頭髪部分)の毛束を施術者の指間で把持するとき、前記Cカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)CCに倣うように毛束を把持するとよい。このように前記Cカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)CCに倣うように毛束を指間で把持することにより、該把持した毛束の自由端部分を鋏でカットするときに、把持した指の流れが目安となるので、該Cカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)CCに倣うようにカットを行うことがし易くなる。このような毛束の把持の仕方を、例えば、「Cカーブフィンガー」と言うことにする。
【0019】
把持した毛束の自由端部分をカットするとき、前記Cカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)CCに倣うような傾斜若しくはカーブを持たせてカットするものとする。あるいは、前記Cカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)CCに沿うように、鋏を持つ手を該Cカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)CCに倣うように回しぎみにカットするとよい。このようなカットの仕方を、例えば、「Cカーブストローク」と言うことにする。
【0020】
以上のようにして、1つのCカーブ放射区画(湾曲カーブ放射区画)CRの1つのセクション(S1~S4のいずれか)から1つの毛束をとって該毛束の自由端部分をカットする。そして、このようなカット操作を繰り返す(各CカーブCCの各セクションS1~S4について繰り返す)ことで、所望のヘヤスタイルに仕上げる。勿論、1つのCカーブ放射区画(湾曲カーブ放射区画)CRの1つのセクション(S1~S4のいずれか)から一度にとる(カットする)毛束の数は1に限らず、任意である。すなわち、1つのCカーブ放射区画(湾曲カーブ放射区画)CRの1つのセクション(S1~S4のいずれか)において、毛束を適宜複数回とりカットしてよい。なお、前記Cカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)CCに倣うような傾斜若しくはカーブを持たせてカットするときの該傾斜若しくはカーブの度合い及びそのカット量は、随時、適宜に可変調整してよい。例えば、少なくともセクション毎に該傾斜若しくはカーブの度合い及びそのカット量を調整する(異ならせる)ようにしてよい。また、同じセクションであっても、前頭部側と後頭部側とでは、該傾斜若しくはカーブの度合い及びそのカット量を適宜異ならせてもよい。このようにして、所望のヘヤスタイルに仕上げることができる。なお、所望のヘヤスタイルが完成するまでの全過程を本実施例に従うヘヤカット方法のみで施術するやり方に限らず、本実施例に従うヘヤカット方法以外のヘヤカット方法(例えば通常のヘアカット方法)を必要に応じて部分的に組み合わせてもよいのは勿論である。
【0021】
図3は、側面からみて連続しているようにみえる2つのCカーブ放射区画CR1,CR2におけるヘヤカット例を示している。後頭部側のCカーブ放射区画CR1における4つのセクションS1~S4の頭髪ブロックH1,H2,H3,H4において、それぞれ、前記「Cカーブシェープ」及び前記「Cカーブフィンガー」の手法で1以上の毛束がとられ、かつ、前記「Cカーブストローク」の手法で各毛束がカットされることで、概ねセクションS1~S4毎に異なる長さ調整をしたヘヤカットが行われることを模式的に示している。同様に、前頭部側のCカーブ放射区画CR2における4つのセクションS1~S4の頭髪ブロックH4,H5,H6,H7がそれぞれ、前記「Cカーブシェープ」及び前記「Cカーブフィンガー」の手法で1以上の毛束がとられ、かつ、前記「Cカーブストローク」の手法で各毛束がカットされることで、概ねセクションS1~S4毎に異なる長さ調整をしたヘヤカットが行われることを示している。破線CC1、CC2は、頭部の皮膚表面から適宜に離れた空間領域において仮想される後頭部側及び前頭部側の前記Cカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)を例示する。P1’は、皮膚領域の頭頂部P1の上方の空間領域に仮想される「頭頂部」を示し、P2’は、皮膚領域のアゴP2の斜め前方下方の空間領域に仮想される「アゴ」(センターポイント)を示す。
【0022】
なお、図示例では、オーバーセクションS4の頭髪ブロックH4は、後頭部側及び前頭部側のCカーブ放射区画CR1、CR2において同様の態様(長さ調整)のカットがなされるので、便宜上、同じ頭髪ブロックH4として図示されている。しかし、この例に限らず、後頭部側及び前頭部側のCカーブ放射区画CR1、CR2のオーバーセクションS4におけるカットの態様(長さ調整)を適宜異ならせてもよい。
【0023】
図3では、簡略化のために2つのCカーブ放射区画CR1,CR2におけるヘヤカット例を示しているが、頭部の全周における各Cカーブ放射区画(湾曲カーブ放射区画)CRが同様にカットされる。前述したように、各Cカーブ放射区画(湾曲カーブ放射区画)CRは、頭頂部P1からアゴP2に向かうCカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)CCに沿って頭部の全周を放射状に区画してなるものであり、カット操作は、総体的に、これらCカーブ放射区画(湾曲カーブ放射区画)CRに沿うように行われるので、全体として頭頂部P1からアゴP2に向かうCカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)CCに沿うヘアカット仕上がりを得ることができる。
【0024】
次に、本実施例によるヘアカットの仕上がりについて考察する。まず、Cカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)CCに倣うカットによって、仕上がり頭髪が全体的にアゴP2を指向するようになるので、被施術者のアゴを指向して髪が集まり易くなり、顔周り、耳周り、首周りを引き締めて、被施術者の顔を小さく見せる「小顔効果」が得られる。また、頭頂部周辺領域(オーバーセクションS4の領域)のヘアボリュームを確保したCカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)CCに倣うカットを行うことにより、被施術者の頭頂部のヘアボリュームを増した「ふんわり感」を出すことができる。同様に、後頭部周辺領域のヘアボリュームを確保したCカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)CCに倣うカットを行うことにより、被施術者の後頭部のヘアボリュームを増した「ふんわり感」を出すことができる。従って、被施術者の後頭部が所謂「ゼッペキ」形状であっても、あるいは頭頂部が所謂「ペタンコ」形状であっても、あるいは所謂「ハチ張り」形状であっても、頭部全体に丸みのある綺麗なヘアスタイル(頭部外観)を演出することができる。このように、被施術者の頭頂部及び後頭部の辺りにふんわり感を出して、どの様な頭部骨格を持つ被施術者に対しても可及的に普遍的な丸みのある綺麗な頭部外観を演出することができる。
【0025】
また、上述のように頭頂部周辺領域においてヘアボリュームを増した「ふんわり感」を出すことができ、かつ、頬からアゴにかけて髪が集まることで引き締まり感が出されるので、全体的に、顔の下側がアゴを指向して引き締まり、顔の上側が上向きにボリューム感を増すことで、「リフトアップ効果」を演出することができる。また、Cカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)CCはアゴP2を指向するので、該Cカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)CCの流れは、後頭部下側(うなじの周辺)で左右に分かれることになり、これにより、後頭部下側のうなじの周辺のシルエットが引き締まることで、仕上がり後の頭部を後方から見たときに頭の大きさが小さい印象を見る人に与えやすくなり、「小頭効果」を演出することができる。さらに、Cカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)に倣うカットによって、髪に流れるような動きが出せるので可愛さと華やかさを表現することができ、かつ、Cカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)に倣う光の反射によりツヤを出すことができるものとなり、こうして、髪に綺麗なまとまりとツヤを出すことができる。
【0026】
なお、上述した本発明に従うヘアカット方法は、如何なるヘヤスタイル(例えば、ボブ、ショートボブ、グラデーション、ワンレン、ミディアムスタイル、ロングスタイル、その他)をカットする場合にも、適用することができる。
【0027】
また、図示例では、頭部の上下方向の領域(セクション)においてCカーブ放射区画(湾曲カーブ放射区画)CRの数が同じように描いているが、これに限らない。例えば、頭部の上寄りの領域(セクション)においてCカーブ放射区画CRの数を少なく想定し、頭部の中間及び下寄りの領域(セクション)においてCカーブ放射区画CRの数を相対的に多く想定してもよい。また、頭部の上下方向の領域(セクション)の数は、前頭部分と他の頭部分とで異なっていてよい。例えば、前頭部分における上下方向の領域(セクション)の数を少なく想定し、他の頭部分における上下方向の領域(セクション)の数を相対的に多く想定してもよい。
【符号の説明】
【0028】
P1、P1’ 頭頂部
P2、P2’ アゴ(センターポイント)
CC、CC1、CC2 Cカーブ(湾曲カーブ状の仮想軌道)
CR、CR1、CR2 Cカーブ放射区画(湾曲カーブ放射区画)
S1,S2,S3,S4 セクション
H1~H7 頭髪ブロック
図1
図2
図3