(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】箱型船
(51)【国際特許分類】
A01G 33/02 20060101AFI20220114BHJP
B63B 35/14 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
A01G33/02 101J
B63B35/14 A
(21)【出願番号】P 2020036038
(22)【出願日】2020-03-03
(62)【分割の表示】P 2017251641の分割
【原出願日】2016-10-26
【審査請求日】2020-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】599048786
【氏名又は名称】光洋通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】笠井 秀城
(72)【発明者】
【氏名】笠井 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】笠井 弘子
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-332406(JP,A)
【文献】特開平03-198728(JP,A)
【文献】特開平05-095740(JP,A)
【文献】特開平09-187142(JP,A)
【文献】特開平08-298885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 33/00 - 33/02
B08B 3/00 - 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸処理液を貯留する酸処理槽と、該酸処理槽内に設けられ、海苔が付着した海苔網を巻き取る一対の巻取ロールとを備える箱型船であって、
前記酸処理槽に設けられ、前記酸処理液のpHを検出するpHセンサと、
前記巻取ロールに巻き取られる前記海苔網と干渉しない位置に設けられ、酸原液を吐出する原液吐出部と、
前記pHセンサの検出値に基づいて前記原液吐出部に供給する前記酸原液の供給量を自動調節する原液供給装置とを備え、
前記原液吐出部は、前記酸処理槽において前記海苔網の進入側
で前記海苔網とは異なる方向に前記酸原液を吐出することを特徴とする箱型船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱型船に関する。
【背景技術】
【0002】
養殖中の海苔には、海水中に生育する珪藻類及び、赤腐れ菌等が付着し、海苔の品質が低下することが知られている。また、この海苔の品質低下に対する対策として、海苔に付着する珪藻類・菌類を、酸処理剤によって除去することが知られている。下記特許文献1には、モグリ船という船を用いて、海苔網の下にその船を潜らせ、酸処理液を海苔網の下側から吹き付け、海苔に付着した珪藻類を除去する海苔網の連続処理方法が開示されている。また、このモグリ船では、pH計で計測された酸処理液のpH計測値に基づいて添加する酸の量を自動制御することにより、酸処理液のpH値を一定に維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のモグリ船を用いた酸処理は、モグリ船を走行させることができる比較的広い海では採用できるものの、モグリ船を操船することができない地域の海苔の養殖では、採用することができない。このようなモグリ船を使用できない状況においては、比較的小型な箱型船を用いた酸処理が行われている。この箱型船は、海苔網を巻き取るローラと、当該ローラに巻き取られた海苔網を酸処理液に浸漬させる処理槽とを備える。
【0005】
このような箱型船を用いた酸処理では、箱型船が比較的小型なこと等に起因して酸処理液のpHの自動調節は行われておらず、専ら作業者の判断でpH調節が行われている。したがって、箱型船を用いた酸処理では、酸処理液を所望のpH値に維持管理することが困難である。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、酸処理液を所望のpH値に維持することが可能な箱型船を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、酸処理液を貯留する酸処理槽と、該酸処理槽内に設けられ、海苔が付着した海苔網を巻き取る一対の巻取ロールとを備える箱型船であって、前記酸処理槽に設けられ、前記酸処理液のpHを検出するpHセンサと、前記巻取ロールに巻き取られる前記海苔網と干渉しない位置に設けられ、酸原液を吐出する原液吐出部と、前記pHセンサの検出値に基づいて前記原液吐出部に供給する前記酸原液の供給量を自動調節する原液供給装置とを備え、前記原液吐出部は、前記酸処理槽において前記海苔網の進入側に前記酸原液を吐出する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、酸処理液のpHを自動調節するので、酸処理液を所望のpH値に維持することが可能な箱型船を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る酸処理装置の上面視における機能構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る酸処理装置の側面視における
図1の(a)X-X断面図、(b)Y-Y断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る酸処理装置の上面視における機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
本実施形態に係る箱型船Aは、養殖中の海苔網上の海苔を酸処理する酸処理装置である。箱型船Aは、船本体1、酸処理液2が貯留する酸処理槽3、海苔網4を巻き取る一対の巻取ロール5a、5b、吊り棒6(棒状部材)、樹脂シート7(シート部材)、チューブ8A、8B(管状部材)、pHセンサ9、pH制御器10、酸原液ポンプ11、酸原液12を貯蔵する酸原液タンク13、巻出ロール14a、14bを備える。なお、pH制御器10、酸原液ポンプ11及び酸原液タンク13は、本発明における原液供給装置を構成している。
【0011】
船本体1は、箱型に成形された樹脂製浮体である。この船本体1は、前後方向の寸法が幅方向の寸法よりも若干短い長方形の平面形状を備えており、例えば前後方向の寸法が約1.5m、幅方向の寸法が約2mである。また、この船本体1は、図示しないエンジンを備えており、巻き取り及び巻き出しロールを回転させる原動力となる。このような船本体1には、酸処理槽3、吊り棒6、pH制御器10、酸原液ポンプ11、酸原液タンク13及び不図示のバッテリ等が設けられている。
【0012】
酸処理液2は、海苔網4上の海苔を酸処理するのに適した所望のpH値、例えばpH=0.4~2.6を有する酸希釈液である。すなわち、この酸処理液2は、所定の有機酸あるいは塩酸等の酸原液12が海水によって希釈された液体である。酸処理液2は、酸処理槽3に一定量が貯留されており、海苔網4と接触することによって海苔網4に付着した海苔を酸処理する。
【0013】
酸処理槽3は、船本体1の上部中央に形成された略直方体の窪み部であり、所定量の酸処理液2を貯留する。この酸処理槽3の容量は、例えば400~800リットルである。
海苔網4は、海苔が付着した長尺状の網である。この海苔網4は、海苔の養殖場に複数条が配置されている。すなわち、海苔の養殖では、養殖場となる海域に複数条の海苔網4を配置し、海苔を海苔網4に付着させた状態で養殖する。なお、船本体1には、酸処理槽3を幅方向に挟む状態で一対の窪み部が形成されている。これら一対の窪み部は、幾つかの機器を配置するためのスペースであると共に作業者が乗船するためのスペースでもある。
【0014】
一対の巻取ロール5a、5bは、酸処理槽3内に一定距離を隔てて平行かつ水平に配置された回転軸である。すなわち、この巻取ロール5a、5bは、船本体1の前後方向に直交する姿勢で船本体1に回転自在に取り付けられている、このような一対の巻取ロール5a、5bのうち、一方の巻取ロール5aは船本体1が前進した際に前方から侵入してくる海苔網4を順次巻き取るためのものであり、他方の巻取ロール5bは、船本体1が後進した際に後方から侵入してくる海苔網4を順次巻き取るためのものである。
【0015】
吊り棒6は、酸処理液2の液面に対峙するように酸処理槽3の上方に設けられた棒状部材である。すなわち、この吊り棒6は、一対の巻取ロール5a、5bの中間、かつ、当該巻取ロール5a、5bと平行な姿勢になるように、両端が船本体1の上部に固定されている。このような吊り棒6は、一対の巻取ロール5a、5bに各々巻き取られる海苔網4と干渉しない位置に、つまり海苔網4の侵入方向に対して各々の巻取ロール5a、5bの後方に設けられている。
【0016】
樹脂シート7は、略長方形かつ可撓性を有するシート部材であり、例えば塩化ビニル製の白色シートである。この樹脂シート7は、一方の長辺(上端)が吊り棒6に固定され、当該吊り棒6から酸処理液2の液面に向かって垂下する。また、この樹脂シート7は、図示するように、他方の長辺(下端)が酸処理液2の液面から間隔Dを空けた位置となるように、酸処理液2の液面より上方に位置するように設けられている。
【0017】
チューブ8A、8Bは、樹脂シート7の両側に吊り棒6に沿って設けられた管状部材である。このチューブ8A、8Bには、複数の吐出孔8a、8bが長さ方向に所定間隔で形成されており、例えば塩化ビニル製である。各吐出孔8a、8bは、酸原液12を樹脂シート7に向かって吐出するように、下方に対して樹脂シート7側に傾斜した角度で形成されている。
【0018】
ここで、吊り棒6、樹脂シート7及びチューブ8A、8Bは、本発明における原液吐出部を構成している。すなわち、吊り棒6、樹脂シート7及びチューブ8A、8Bは、一対の巻取ロール5a、5bの間に酸原液12を吐出する。
【0019】
pHセンサ9は、酸処理液2のpH値を検出するセンサである。このpHセンサ9は、
図2(b)に示すように、酸処理槽3内において上記原液吐出部の近傍に設けられている。すなわち、このpHセンサ9は、酸処理槽3内において、吊り棒6の両端のどちらか一端側に酸処理槽3の底面に接触しないように当該底面から若干の距離をあけて設けられている。pHセンサ9は、pH制御器10に接続されており、検出値をpH制御器10に出力する。
【0020】
pH制御器10は、pHセンサ9から入力される検出値と予め記憶している制御しきい値とに基づいて酸原液ポンプ11をフィードバック制御する制御装置である。すなわち、このpH制御器10は、酸処理液2のpH値が制御しきい値を維持するように酸原液ポンプ11を制御する。
【0021】
酸原液ポンプ11は、pH制御器10から入力される操作信号に基づいて動作する容量ポンプである。すなわち、この酸原液ポンプ11は、所定の配管によって酸原液タンク13及び一対のチューブ8A、8Bに接続されており、操作信号に応じた流量の酸原液12を酸原液タンク13から汲み出して一対のチューブ8A、8Bに供給する。なお、酸原液ポンプ11の吐出量は、例えば400~22000ml/分である。
【0022】
酸原液12は、所定pH値を有する酸の水溶液である。この酸原液12は、酸処理液2のpH値よりも低いpH値、つまり酸処理液2よりも高い酸性度を有する酸であり、例えばリンゴ酸や乳酸、クエン酸等の有機酸あるいはpH調整剤としての食品添加物の塩酸である。また、この酸原液12は、白色の樹脂シート7の表面を流下する際に視認可能なように白以外の所定色に着色されている。この酸原液12は、例えば、カラメルによって茶色に着色されている。
【0023】
酸原液タンク13は、酸原液12を貯蔵する所定容量の容器である。酸原液タンク13は、所定の配管によって酸原液ポンプ11と接続されており、当該酸原液ポンプ11に酸原液12を供給する。
【0024】
ここで、pH制御器10、酸原液ポンプ11及び酸原液タンク13は、本発明における原液供給装置を構成している。すなわち、pH制御器10、酸原液ポンプ11及び酸原液タンク13は、pHセンサ9の検出値に基づいて、原液吐出部に供給する酸原液12の供給量を自動調節する。
【0025】
一対の巻出ロール14a、14bは、作業開始時においては、海苔が付着していない状態の海苔網が巻き付けられている回転軸である。この巻出ロール14a、14bは、巻取ロール5a、5bと平行に酸処理槽3内に設けられている。
【0026】
次に、このように構成された箱型船Aの動作について、
図1及び
図2を用いて詳しく説明する。また、船本体1が前進する場合と、船本体1が後進する場合とでは、同様の動作である為、本実施形態においては、船本体1が前進する場合についてのみ説明する。
【0027】
まず、作業者は、これから酸処理する海苔網4が設置されている海上まで、船本体1を移動させる。そして、例えば
図1の矢印で示したように、船本体1が前進する場合は、船本体1が前進するにつれて、海苔網4が酸処理槽3に前方から侵入する。酸処理槽3内に侵入した海苔網4は、巻取ロール5aが回転することによって、順次巻取ロール5aに巻き取られる。
【0028】
巻き取られた海苔網4は、酸処理槽3内に貯留されている酸処理液2に浸漬される。したがって、海苔網4上の海苔が酸処理液2に接触することによって、海苔が酸処理される。
【0029】
酸処理槽3内には、pHセンサ9が設けられており、pHセンサ9は酸処理槽3内に貯留されている酸処理液2のpH値を検出する。pHセンサ9が検出した検出値は、pH制御器10に出力される。pH制御器10は、pHセンサから入力された検出値と予め記憶している制御しきい値とに基づいて、酸原液ポンプ11をフィードバック制御する。酸原液ポンプ11は、pH制御器10から入力される操作信号に基づいて、操作信号に応じた流量の酸原液12を酸原液タンク13から汲み出して一対のチューブ8A、8Bに供給する。
【0030】
具体的に例えば、pH制御器10が予め記憶している制御しきい値と、pHセンサ9の検出値が同じ場合は、酸処理液2のpH値を制御しきい値に維持するように、酸処理液2に供給される酸原液12の量は少なくてよい。したがって、pH制御器10は、酸処理液2のpH値を維持するのに必要な量の酸原液12を、酸処理液2に供給するように酸原液ポンプ11の運転を制御する。
一方、pH制御器10の制御しきい値とpHセンサ9の検出値に乖離がある場合は、酸処理液2のpH値を制御しきい値と同じ値になるように低下させる必要がある。したがって、酸処理液2のpH値を低下させる為に必要な量の酸原液12を酸処理液2に供給するように、pH制御器10は、酸原液ポンプ11の運転を制御する。
したがって、本箱型船Aによれば、pHセンサ9の検出値に基づいて、酸処理液2に供給される酸原液12の供給量を自動調節することが可能である。
【0031】
pH制御器10からの操作信号を受信した酸原液ポンプ11によって酸原液タンク13から汲み出された酸原液12は、一対のチューブ8A、8Bに供給される。酸原液12は、一対チューブ8A、8Bに設けられた複数の吐出孔8a,8bから樹脂シート7に向けて吐出され、樹脂シート7の表面をつたって流下する。樹脂シート7の表面をつたって流下した酸原液12は、樹脂シート7の下端が酸処理液2の液面から、間隔Dを空けて設けられていることにより、酸処理液2上に滴下される。酸処理液2よりも比重の重い酸原液12は、酸処理液2上に滴下されることにより、酸処理液2内に溶かされやすくなる。さらに、酸処理液2上に滴下された酸原液12は、船本体1の揺動及び海苔網4を巻き取る際に巻取ロール5a又は巻取ロール5bが回転することによって酸処理液2中に生成される水流によって、酸処理液2が攪拌されることによって、酸処理液2内に拡散される。したがって、本箱型船Aによれば、酸処理液2中のpH値を均一にすることができる。
【0032】
また、酸原液12は茶色に着色されている為、酸原液12が、チューブ8A、8Bの吐出孔8a,8bから吐出され、白色の樹脂シート7の表面をつたって流下する為、酸原液12が酸処理液2に供給されているかどうかを、作業者が視認できる。したがって、本箱型船Aによれば、酸原液12が酸処理液2へ正常に供給されているかどうかを、作業者が目視で判断することができる。
【0033】
海苔の付着した海苔網4が全て巻き取られ、海苔網4上の海苔が酸処理された後、巻出ロール14aに巻き付けられている、海苔が付着していない状態の海苔網は、船本体1が前進するにつれて、船本体1外へ巻き出され、海苔の付着した海苔網4が設置されていた場所に設置される。
【0034】
〔第2実施形態〕
次に、第2次実施形態に係る箱型船Bについて説明する。この箱型船Bは、
図3に示すように、第1実施形態に係る箱型船Aと同様な全体構成を備えるが、第1実施形態のチューブ8A、8Bに代えて、
図3に示すパイプ8C、8Dを、さらに酸原液ポンプ11A、バルブ15c、15dを備える。また、第2実施形態において、本発明における原液吐出部は、パイプ8C、8Dによって構成され、巻出ロール14a、14bは、巻取ロール5a、5bと平行に酸処理槽3内に近接して設けられている。
なお、第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0035】
パイプ8C、8Dは、酸処理槽3において海苔網4の進入側に幅方向に沿って設けられている。すなわち、一方のパイプ8Cは、酸処理槽3において箱型船Bの前進方向側かつ幅方向に沿って設けられ、他方のパイプ8Dは、酸処理槽3において箱型船Bの後進方向側かつ幅方向に沿って設けられている。このようなパイプ8C、8Dは、複数の吐出孔8c、8dが長さ方向に所定間隔で形成されており、例えば塩化ビニル製である。各吐出孔8c、8dは、酸原液12を酸処理槽3の壁面に向かって吐出するように、下方又は下方に対して酸処理槽3の壁面側に傾斜した角度で形成されている。
【0036】
pHセンサ9は、
図3に示すように、酸処理槽3内において各パイプ8C、8Dの近傍である酸処理槽3内の四隅のうちの任意の一箇所に設けられている。また、このpHセンサ9は、酸処理槽3の底面に接触しないように当該底面から若干の距離をあけて設けられている。
【0037】
酸原液ポンプ11Aは、pH制御器10から入力される操作信号に基づいて動作する容量ポンプである。すなわち、この酸原液ポンプ11Aは、所定の配管によって酸原液タンク13に接続され、また後述するバルブ15c、15dを介して一対のチューブ8C、8Dに接続されており、操作信号に応じた流量の酸原液12を酸原液タンク13から汲み出して一対のチューブ8C、8Dに供給する。
【0038】
バルブ15c、15dは、
図3に示すように、酸原液ポンプ11Aと各パイプ8C、8Dとの間にそれぞれ設けられており、手動操作によって酸原液12の流量を調節する流量調節バルブである。バルブ15c、15dは、一対のパイプ8C、8Dに同量の酸原液12が供給されるように手動操作される。
【0039】
pHセンサ9は、酸処理槽3内に貯留されている酸処理液2のpH値、つまり酸処理槽3内のpH値を検出する。pHセンサ9が検出した検出値は、pH制御器10に出力される。pH制御器10は、pHセンサ9から入力された検出値と予め記憶している制御しきい値とに基づいて、酸原液ポンプ11Aをフィードバック制御する。すなわち、pH制御器10は、pHセンサ9から入力されたpH値に基づいて、パイプ8C及び8Dに供給する酸原液12の供給量を自動制御する。
【0040】
このような箱型船Bでは、バルブ15c、15dによってパイプ8C、8Dに供給される酸原液12の流量比が1対1に調整され、またpH制御器10によってパイプ8C、8Dに供給される酸原液12の全体流量が酸処理液2のpH値が所望の値を維持するように調節される。また、酸原液12は、パイプ8C、8Dに設けられた複数の吐出孔8c、8dから酸処理槽3の壁面へ向けて吐出され、当該壁面をつたって流下し、酸処理液2へ流入する。
【0041】
一対のパイプ8C、8Dから酸処理液2内に流入した酸原液12は、船本体1の揺動及び海苔網4を巻き取る際に巻取ロール5a又は巻取ロール5bが回転することによって酸処理液2中に生成される水流によって、酸処理液2が攪拌されることによって、酸処理液2内に拡散される。
【0042】
また、このような箱型船Bでは、酸原液12が茶色に着色され、一方、酸処理槽3の壁面が例えば淡い水色であるため、酸原液12が一対のパイプ8C、8Dから酸処理液2(酸処理槽3)に供給されているか否かを作業者が容易に視認できる。したがって、本箱型船Bによれば、酸原液12が酸処理液2(酸処理槽3)へ正常に供給されているか否かを作業者が容易に判断することができる。
【0043】
このような第1、第2実施形態に係る箱型船A、Bによれば、海苔網4上の海苔の酸処理を行うにあたって、酸処理液のpHを自動調節するので、酸処理液2を所望のpH値に維持することが可能である。
【0044】
さらに、このような箱型船A、Bによれば、pH制御器10、酸原液ポンプ11、11A及び不図示のバッテリ等の電気を使用する部材と、酸原液12が貯蔵されている酸原液タンク13は、酸処理槽3を挟んで、船本体1内に離間して設置されている。したがって、電気を使用する部材が、酸原液12と接触することによって、故障することを防ぐことが可能となる。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記第1実施形態において、吊り棒6の下側に一対のチューブ8A、8Bを設けたが、本発明は、これに限定されない。一対のチューブ8A、8Bを設けず、吊り棒6から酸原液12を酸処理液2に供給しても良い。つまり、吊り棒6の下部に、一対の吐出孔8a、8bを、巻取ロール5a側及び巻取ロール5b側の両側に線対称に、長さ方向に所定間隔で複数形成しても良い。上記構成においても、各吐出孔8a、8bは、酸処理液2を樹脂シート7に向かって吐出するように、下方に対して樹脂シート7側に傾斜した角度で形成される。上記構成を採用することによって、一対のチューブ8A、8Bが不要となり、部品点数を減らすことができる。尚、上記構成を採用する場合は、吊り棒6の素材としては、酸に対して耐性のある素材を採用することが望ましい。
【0046】
(2)上記第1実施形態において、吊り棒6を設けたが、吊り棒6は、一対の巻取ロール5a、5bの中間、かつ、当該巻取ロール5a、5bと平行な姿勢になるように設けられるとしたが、本発明は、これに限定されない。吊り棒6は、必ずしも一対の巻取ロール5a、5bの中間に設けられていなくても良く、どちらか一方の巻取ロール5a又は巻取ロール5b側へ変位していても良い。また、吊り棒6は、巻取ロール5a、5bと平行に設けられていなくても良く、巻取ロール5a、5bに対して傾斜して設けられていても良い。
【0047】
(3)上記第1実施形態において、樹脂シート7は、樹脂シート7の下端が酸処理液2の液面より上方に位置するように設けるとしたが、本発明は、これに限定されない。樹脂シート7の下端が酸処理液2の液面と接触していても良い。上記構成の場合であっても、樹脂シート7の表面を流下し、酸処理液2中に供給された酸原液12は、船本体1の揺動及び巻取ロール5a又は巻取ロール5bが海苔網4を巻き取る際に回転することによって酸処理液2中に生成される水流によって、酸処理液2が攪拌されることによって、酸処理液2内に拡散される。
【0048】
(4)上記第1実施形態において、pHセンサ9を吊り棒6の片側に1つ設けたが、本発明はこれに限定されない。pHセンサ9を吊り棒6の左右両側に設けても良い。上記構成を有することにより、酸処理液2のpH値をより正確に検出することが可能となる。
【0049】
(5)上記第1実施形態において、樹脂シート7として白色のシートを採用したが、本発明はこれに限定されない。上記とは異なる色のシートを採用しても良い。上記樹脂シート7の色の変更に伴い、樹脂シート7の表面をつたって流下する酸原液12が視認可能なように、樹脂シート7の色以外の色に、酸原液12の着色料の色を変更する必要がある可能性がある。
【0050】
(6)上記第2実施形態において、pHセンサ9を酸処理槽3の四隅のうちの任意の1ヶ所に設けるとしたが、本発明はこれに限定されない。酸処理槽3の四隅全てにpHセンサを配置し、4つのpHセンサのpH検出値の平均値を酸処理液2のpH値とし、上記酸処理液2のpH値とpH制御器10が予め記憶している制御しきい値とに基づいて、酸原液ポンプ11Aをフィードバック制御しても良い。
【0051】
(7)上記第1、第2実施形態において、酸原液12は、カラメルを用いて茶色に着色したが、本発明はこれに限定されない。樹脂シート7の色と補色である、環境に影響を及ぼさない着色料を用いるのであれば、どのような着色料を用いて着色しても良い。
【0052】
(8)上記第1、第2実施形態において、樹脂シート7を採用したが、本発明はこれに限定されない。樹脂シート7の代わりに白色の仕切板を採用しても良い。
【0053】
(9)上記第1、第2実施形態において、酸原液タンク13は1つ設けたが、本発明はこれに限定されない。酸原液タンク13を複数設け、それらを手動の切換弁を介して酸原液ポンプ11に接続し、酸原液12を供給する酸原液タンク13を手動で切り替えても良い。
【0054】
更に、酸原液タンク13毎に貯蔵する酸原液12を異なる色で着色しても良い。上記構成を有することにより、どの酸原液タンク13の酸原液12が酸処理液2に供給されているかを作業者が視認できる。したがって、作業者が、船本体1に設置されている酸原液タンク13の残量を把握することができる。
【0055】
(10)上記第1、第2実施形態に加えて、海苔網4が巻き取られる際に、海苔網4に付着した海水が酸処理槽3内に混入することによって増加する酸処理液2の一部を、船本体1の外に排出する為の排出ポンプを備えていても良い。
【符号の説明】
【0056】
A、B 箱型船
1 船本体
2 酸処理液
3 酸処理槽
4 海苔網
5a、5b 巻取ロール
6 吊り棒(棒状部材)
7 樹脂シート(シート部材)
8A、8B チューブ(管状部材)
8C、8D パイプ
8a、8b、8c、8d 吐出孔
9 pHセンサ
10 pH制御器(原液供給装置)
11、11A 酸原液ポンプ(原液供給装置)
12 酸原液
13 酸原液タンク(原液供給装置)
14a、14b 巻出ロール
15c、15d バルブ