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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】医療用フード装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 10/00 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
A61G10/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020084082
(22)【出願日】2020-05-12
(65)【公開番号】P2021177895
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2020-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】592145039
【氏名又は名称】協栄プリント技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 明宏
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】医療従事者を感染から守る!飛沫感染防止アクリルボックスを医療機関に無償提供します,[オンライン],コムネット,2020年04月17日,https://web.archive.org/web/20200423042721/https://www.comnet-network.co.jp/blog/acrylic-safety-box/,[検索日:2021.04.26]インターネット
【文献】医療従事者の“盾”となれ 段ボール製のコロナシールド寄贈,[オンライン],西日本新聞,2020年05月09日,https://www.nishinippon.co.jp/item/n/606855/,[検索日:2021.05.31]インターネット
【文献】エアロゾルボックスRタイプ埼玉県内無償提供のお知らせ 【KOTOBUKI Medical株式会社】~医療現場における飛沫感染リスク低減~,[オンライン],KOTOBUKI Medical株式会社,2020年04月27日,https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000050581.html,[検索日:2021.05.31]インターネット
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質のシート材を折り曲げて自立可能に形成され、遠位端が開放され近位端が閉止された横断面形状を有する衝立板と、
前記衝立板の上部開口を閉じる屋根板と、
前記衝立板に形成され医療従事者の手が挿入可能な少なくとも2つの穴と、を備えた使い捨て可能な医療用フード装置であって
前記衝立板は、使用前と使用後に折り畳み可能であると共に、使用時に展開可能であり、
前記屋根板は、使用前と使用後に前記衝立板から分離され、使用時に前記衝立板に組み付けられ、
前記シート材は、透明なプラスチック段ボールであり、
前記屋根板は、透明な樹脂材料からなるシート材により形成される
ことを特徴とする医療用フード装置。
【請求項2】
前記屋根板は、使用時に前記衝立板に両面テープで接着される
請求項に記載の医療用フード装置。
【請求項3】
前記衝立板は、前記シート材を1箇所以上で同一方向に折り曲げて形成される
請求項1または2に記載の医療用フード装置。
【請求項4】
前記衝立板は、前記シート材を2箇所で同一方向に90°折り曲げて形成される
請求項1~何れか一項に記載の医療用フード装置。
【請求項5】
使用時の状態において、前記屋根板の少なくとも近位側部分は、近位側ほど下方に向かうよう傾斜されている
請求項1~何れか一項に記載の医療用フード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用フード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場では、呼吸器感染症の患者に対して気管挿管等の処置が行われる際に、患者の口からウイルスを含んだ微粒子が飛散されることで、医療従事者がウイルスに感染する場合がある。この感染を抑制するための手段として、寝た状態の患者の頭部を隔離する医療用フード装置(所謂エアロゾル・ボックス)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-344320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような医療用フード装置は、1人の患者の医療処置が完了する毎に、洗浄及び消毒されて、繰り返し使用されるのが通常である。
【0005】
しかしながら、洗浄及び消毒には時間と手間が掛かるため、例えば短時間で多数の患者に対して医療処置を行わなければならない場合には、医療従事者の負担が増大する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、医療従事者の負担を軽減できる医療用フード装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様によれば、硬質のシート材を折り曲げて自立可能に形成され、遠位端が開放され近位端が閉止された横断面形状を有する衝立板と、前記衝立板の上部開口を閉じる屋根板と、前記衝立板に形成され医療従事者の手が挿入可能な少なくとも2つの穴と、を備え、前記衝立板は、使用前と使用後に折り畳み可能であると共に、使用時に展開可能であることを特徴とする医療用フード装置が提供される。
【0008】
好ましくは、前記屋根板は、使用前と使用後に前記衝立板から分離され、使用時に前記衝立板に組み付けられる。
【0009】
また、前記シート材は、プラスチック段ボールであり、前記屋根板は、透明なシート材により形成される。
【0010】
また、前記屋根板は、使用時に前記衝立板に両面テープで接着される。
【0011】
また、前記衝立板は、前記シート材を1箇所以上で同一方向に折り曲げて形成される。
【0012】
また、前記衝立板は、前記シート材を2箇所で同一方向に90°折り曲げて形成される。
【0013】
また、使用時の状態において、前記屋根板の少なくとも近位側部分は、近位側ほど下方に向かうよう傾斜されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る医療用フード装置によれば、医療従事者の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】医療用フード装置の使用時の状態を示す概略斜視図である。
図2】医療用フード装置の分解斜視図である。
図3図2に示した衝立板を水平方向に切った横断面図である。
図4】衝立板を形成するシート材の展開図である。
図5図2に示した屋根板のV-V線の縦断面図である。
図6】屋根板を形成するシート材の展開図である。
図7】衝立板を折り畳む際の横断面図である。
図8】屋根板を折り畳む際の縦断面図である。
図9】第1変形例の衝立板を示す概略斜視図である。
図10図9に示した衝立板の使用後の状態を示す横断面図である。
図11】第2変形例の衝立板を示す横断面図である。
図12】第3変形例の医療用フード装置を示す展開図である。
図13】第4変形例の衝立板を示す概略斜視図である。
図14】第5変形例の医療用フード装置を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、図中に示す上下前後左右の各方向は、説明の便宜上定められたものに過ぎないものとする。また、本発明は以下の実施形態に限定されない点に留意されたい。
【0017】
先ず、図1図6を参照して、医療用フード装置1の概略構成を説明する。図1中、符号Bは、ストレッチャー等の医療用の寝台を示し、符号Pは、寝台Bに仰向けに寝た状態の患者を示し、符号Dは、患者Pの頭部Pa及び寝台Bの前方かつ近傍に立つ医師等の医療従事者を示す。
【0018】
本実施形態では、医療従事者Dから見て、手前側が近位側ないし前側であり、奥側が遠位側ないし後側であり、右側が右側であり、左側が左側である。患者Pは、頭部Paが胴体Pbよりも前側になるように寝かされる。
【0019】
図1に示すように、医療用フード装置1は、寝た状態の患者Pの頭部Paを隔離する箱状の医療器具(所謂エアロゾル・ボックス)である。
【0020】
本実施形態の医療用フード装置1は、新型コロナウイルス等のウイルスに起因した呼吸器感染症の患者Pに対して、医療従事者Dが気管挿管を行う際に使用される。但し、医療用フード装置1は、気管挿管以外の医療処置、例えば、体外式膜型人工肺(ECMO)の接続や、歯科医師による歯の治療に使用されても良い。
【0021】
医療用フード装置1は、遠位端(後端)が開放され近位端(前端)が閉止された横断面形状(図3を参照)を有する衝立板10と、衝立板10の上部開口10a(図2を参照)を閉じる屋根板20と、を備える。また、医療用フード装置1は、衝立板10に形成され、医療従事者Dの手が挿入可能な少なくとも2つの穴30を備える。
【0022】
詳細は後述するが、衝立板10は、使用前と使用後に折り畳み可能であると共に、使用時に展開可能である。また、屋根板20は、使用前と使用後に衝立板10から分離され、使用時に衝立板10に組み付けられる。
【0023】
図2に示すように、衝立板10は、左右方向に延びる前側板部11と、前側板部11の左端から後方に延びる左側板部12と、前側板部11の右端から後方に延びる右側板部13と、を含む。
【0024】
前側板部11の左右方向の幅W1は、左側板部12及び右側板部13の前後方向の幅W2と同じ長さに設定される(W1=W2)。これらの幅W1,W2は、患者P(例えば、成人)の頭部Paと両肩が十分に収まる長さ(例えば、550mm)に設定される。
【0025】
図3に示すように、本実施形態の衝立板10は、硬質のシート材S1(図4を参照)を折り曲げて自立可能に形成される。また、衝立板10は、硬質のシート材S1を1箇所以上(本実施形態では、2箇所)で同一方向に折り曲げて形成される。ここでいう「同一方向」とは、図3に点線矢印A1で示すように、シート材S1の長手方向(図4の左右方向)一端側の部分に対して、他端側の部分を横断面視の同一回転方向(図示例では、反時計回り方向)に折り曲げる方向、或いは、シート材S1を表側から見たときに山折りになる方向を意味する。また、ここでいう「硬質」とは、折り曲げて自立させたときに、崩落しない程度の剛性を有することをいう。
【0026】
本実施形態の衝立板10は、硬質のシート材S1を2箇所で同一方向に90°折り曲げて形成され、コ字状の横断面形状を有する。
【0027】
図4に示すように、シート材S1は、梱包材料として周知で安価なプラスチック段ボールであり、横長に形成される。なお、シート材S1は、衝立板10を通して患者Dを視認できるよう透明であるが、不透明であっても良い。
【0028】
シート材S1は、長手方向に間隔を空けて互いに平行に配置された2つの折り目X1,X2を有する。なお、本実施形態の「折り目」は、シート材を表側から見たときの山折りの折り目である。
【0029】
本実施形態では、これら2つの折り目X1,X2に沿って、シート材S1を同一方向に折り曲げることで、図3に示した前側及び左右両側の板部11~13が形成される。
【0030】
図2に戻って、屋根板20は、衝立板10とは別体に形成される。屋根板20は、前後左右方向に延びる本体部21と、本体部21の前端、左端及び右端から下方に延びる前側及び左右両側の接続片ないしタブ22~24と、を含む。
【0031】
平面視における本体部21の面積は、衝立板10の上部開口10aの開口面積と同じ大きさに設定される。前側タブ22は、前側板部11の上端部前面に接続され、左側タブ23は、左側板部12の上端部左側面に接続され、右側タブ24は、右側板部13の上端部右側面に接続される。これらの接続部分は、両面テープTで接着される。
【0032】
また、使用時の状態において、屋根板20の遠位側部分(本体部21の後側部分21a)は、水平に配置される。一方、屋根板20の近位側部分(本体部21の前側部分21b)は、近位側(前側)ほど下方に向かうよう、後側部分21aに対して傾斜されている。
【0033】
衝立板10では、屋根板20の形状に合わせて、前側板部11、左側板部12及び右側板部13の高さが設定される。すなわち、前側板部11の高は一定であり、前側板部11の高さは、左側板部12及び右側板部13の後側部分12a,13aの高さよりも低く、かつ一定に設定される。また、左側板部12及び右側板部13の前側部分12b,13bの高さは、後側部分12a,13aの高さから前側板部11の高さに移行すべく、前側に向かうにつれ低くなるように設定される。
【0034】
図5に示すように、本実施形態の屋根板20は、透明なシート材S2(図6を参照)を折り曲げて形成される。透明なシート材S2は、アクリル等の樹脂材料からなり、略正方形状に形成される。
【0035】
図6に示すように、シート材S2は、前側及び左右両側の端部に形成された折り目X3と、前後方向の中央部に形成された折り目X4と、を有する。本実施形態では、端部の折り目X3に沿ってシート材S2を下方に折り曲げることで、タブ22~24が形成される。また、中央部の折り目X4に沿ってシート材S2を折り曲げることで、後側部分21aに対して傾斜した前側部分21bが形成される。
【0036】
また、左側タブ23及び右側タブ24には、折り目X4と同じ前後方向の位置に、切れ目ないしスリットY1,Y2が形成される。これにより、本体部21を折り曲げたときに、左側タブ23及び右側タブ24が湾曲するのを防止できる。
【0037】
図2に示したように、穴30は、前側板部11、左側板部12及び右側板部13の各面で医療従事者の両手を挿入できるように、これら各面に横並びで2つずつ形成される。なお、本実施形態の穴30は、丸穴であるが、四角穴等であっても良い。
【0038】
また、図4に示すように、本実施形態の穴30は、使用前の状態において、シート材S1で形成された蓋31で塞がれている。蓋31は、使用しない穴30から微粒子が漏れるのを抑制するため、使用する穴30のみから取り外される。蓋31と穴30との境界位置には、穴30の輪郭に沿った間欠状の切れ目32が形成されており、蓋31は、穴30の周囲部分に対して、一ないし複数箇所(図示例では、2箇所)のブリッジ33で接続されている。
【0039】
他方、左側板部12及び右側板部13の下端部には、気管挿管用のチューブ等が挿通可能な切欠き穴31が形成される。また、前側及び左右両側の板部11~13の下端部には、気管挿管用の電子機器(電子スコープ等)のコード等が挿通可能な小穴32が形成される。
【0040】
図1に示したように、本実施形態の医療用フード装置1は、患者Pの頭部Paに上方から被せられると共に、寝台B上に自立して載置される。この状態で、医療従事者Dは、両手を前側板部11の2つの穴30にそれぞれ挿入し、患者Pに対して気管挿管を行う。また、必要に応じて、看護師等の他の医療従事者は、左側板部12または右側板部13の穴30に手を挿入して、気管挿管の補助を行う。
【0041】
このとき、患者Pの口からウイルスを含んだ唾液等の微粒子が飛散される場合があるが、患者Pの頭部Paは医療用フード装置1で隔離されているため、医療従事者がウイルスに感染するのを抑制できる。
【0042】
ところで、一般的な医療用フード装置は、繰り返しの使用を前提としているため、1人の患者の医療処置が完了する毎に、洗浄及び消毒する必要がある。
【0043】
しかしながら、洗浄及び消毒には時間と手間が掛かるため、短時間で多数の患者に対して医療処置を行わなければならない場合には、医療従事者の負担が増大する可能性がある。また、医療用フード装置は、外見だけでは洗浄及び消毒されたか否かの判別が難しいため、医療従事者に不要な精神的負担を与える虞がある。
【0044】
そこで、本実施形態の医療用フード装置1は、使い捨てできるように構成される。
【0045】
具体的には、先ず、医療用フード装置1の使用前の状態において、屋根板20は、衝立板10から分離されている。
【0046】
また、医療用フード装置1の使用前の状態において、衝立板10は折り畳まれる。すなわち、先ず、図7(a)に示すように、衝立板10は、フード装置1内側の面を上向きにして、水平に配置される。
【0047】
この状態から、右側板部13は、図7(b)に点線矢印A2で示すように、折り目X2に沿って前側板部11に重なるように折り畳まれる。その後、左側板部12は、図7(c)に点線矢印A3で示すように、折り目X1に沿って前側板部11及び右側板部13に重なるように折り畳まれる。
【0048】
また、本実施形態では、屋根板20も折り畳まれる。すなわち、図8(a)に示すように、屋根板20は、フード装置1内側の面(下面)を上向きにして、水平に配置される。
【0049】
この状態から、本体部21の前側部分21bは、図8(b)に点線矢印A4で示すように、折り目X4に沿って後側部分21aに重なるように折り畳まれる。
【0050】
そして、折り畳まれた衝立板10及び屋根板20は、互いに重ねられて小さな荷姿とされるので、簡単に持ち運ぶことができる。
【0051】
次に、医療用フード装置1の使用時に、衝立板10は、図3に示すように展開される。すなわち、左側板部12は、図7(c)に示した状態から、折り目X1に沿って、点線矢印A3で示した方向と逆方向に折り戻される。その後、右側板部13は、図7(b)に示した状態から、折り目X2に沿って、点線矢印A2で示した方向と逆方向に折り戻される。これにより、衝立板10は、横断面視コ字状に形成されて自立可能になる。
【0052】
また、医療用フード装置1の使用時に、屋根板20は、図5に示すように展開される。すなわち、本体部21の前側部分21bは、図8(b)に示した状態から、折り目X4に沿って、点線矢印A4で示した方向と逆方向に折り戻される。その後、屋根板20は、図2に示したように、衝立板10の上部開口10a全体を覆うように配置され、衝立板10に両面テープTで接着される。
【0053】
具体的には、衝立板10の前側板部11の前面、左側板部12の左側面、及び右側板部13の右側面のそれぞれ上端部には、剥離紙を有した両面テープTが予め貼り付けられている。本実施形態では、この剥離紙を剥がし、屋根板20のタブ22~24を両面テープTに貼り付けることで、屋根板20が衝立板10に接着されて固定される。
【0054】
このように、医療用フード装置1を使用する際には、衝立板10及び屋根板20を展開して互いに接着するだけで、容易に組み立てることができる。
【0055】
他方、図4に示したように、本実施形態の穴30は、医療用フード装置1の使用前の状態において、蓋31で塞がれている。使用時には、ブリッジ33を手で切断することで、必要な穴30の蓋31を取り外して、穴30を使用する。これにより、容易な作業で穴30を使用可能にできる。また、不必要な穴30を塞いで、微粒子の外部への飛散を防止できる。
【0056】
次に、医療用フード装置1の使用後の状態において、屋根板20は、両面テープTから剥がされることで、衝立板10から分離される。そして、図7(c)及び図8(b)に示した使用前の状態と同様に、衝立板10及び屋根板20が折り畳まれる。これにより、衝立板10及び屋根板20を重ねて簡単に廃棄できる。
【0057】
以上述べた通り、本実施形態の医療用フード装置1は、折り畳んで使い捨てることが可能である。その結果、1人の患者の医療処置が完了する毎に、洗浄及び消毒する必要がなくなるので、洗浄及び消毒に掛かる時間と手間を省略できる。
【0058】
よって、本実施形態であれば、短時間で多数の患者に対して医療処置を行わなければならない場合でも、医療従事者の負担を軽減できる。また、医療用フード装置1が洗浄及び消毒されたか否かを判別する必要がなくなるので、医療従事者に与える精神的負担を軽減できる。
【0059】
また、本実施形態では、使用後に、図7(c)及び図8(b)に示したように、折り目X1,X2に沿って衝立板10を折り、また、折り目X4に沿って屋根板20を折ることで、微粒子が付着したフード装置1内側の面を外側に向けることなく、折り畳んだ状態にすることができる。これにより、医療従事者が微粒子に接触し難くなり、安全に廃棄することができる。
【0060】
また、本実施形態の衝立板10は、シート材S1を単に折り曲げるだけで自立可能に形成される。そのため、衝立板10を安価で作成できるので、使い捨てに有利である。特に、本実施形態では、シート材S1がプラスチック段ボールであるため、使い捨てに更に有利である。
【0061】
また、屋根板20は、衝立板10に両面テープTで接着される。そのため、例えば、ホック等の固定具を用いて固定する場合と比較して、屋根板20を衝立板10に簡単かつ確実に組み付けることができる。
【0062】
また、医療用フード装置1の使用時の状態において、屋根板20の本体部21の前側部分21bは、前側ほど下方に向かうよう傾斜される。これにより、医療用フード装置1の前方に立つ医療従事者Dは、患者Pの頭部Paを容易に視認できるようになる。
【0063】
他方、上述した実施形態は、以下のような変形例またはその組み合わせとすることができる。なお、下記の説明においては、上記の実施形態と同一の構成要素に同じ符号を用い、それらの詳細な説明は省略する。
【0064】
(第1変形例)
図9に示すように、第1変形例のシート材S1は、第1実施形態で述べた2つの折り目(ここでは、主折り目とする)X1,X2に加えて、主折り目X1と平行に設けられた3つの副折り目X5~X7を有する。
【0065】
第1変形例では、前側板部11の左右方向の中間位置に第1副折り目X5が形成され、左側板部12の前後方向の中間位置に第2副折り目X6が形成され、右側板部13の前後方向の中間位置に第3副折り目X7が形成される。なお、第1副折り目X5は、シート材S1を表側から見たときの谷折りであり、第2及び第3副折り目X6,X7は、シート材S1を表側から見たときの山折りである。但し、これらの副折り目X5~X7は、任意の折り目であって良く、例えば、第1副折り目X5が山折りであって良い。
【0066】
図10に示すように、第1変形例であれば、2つの主折り目X1,X2だけでなく、3つの副折り目X5~X7をも基点にして、衝立板10を折り畳むことができる。
【0067】
これにより、第1変形例では、図7(a)に示した上記の実施形態と比較して、衝立板10が折り畳まれたときの最大幅W3を、半分の長さ(例えば、W3=275mm)にすることができる。
【0068】
その結果、医療現場に設置される標準的な大きさの医療用ゴミ箱(例えば、高さ800mm、左右方向の幅375mm、前後方向の幅465mm)における最小の左右方向の幅よりも、衝立板10の幅を小さくできるので、折り畳んだ衝立板10をゴミ箱に容易に挿入して廃棄できる。
【0069】
また、第1変形例では、折り目X1,X2,X5~X7に沿って衝立板10を折ることで、第1実施形態と同様に、微粒子が付着した面を外側に向けることなく、折り畳んだ状態にすることができる。
【0070】
(第2変形例)
図11に示すように、衝立板10は、シート材S1を1箇所、または3箇所以上で折り曲げて形成されても良い。なお、図11中、符号Xは、第2変形例のシート材S1に形成された折り目を示す。
【0071】
第2変形例のうち、図11(a)の例では、シート材S1が1箇所で折り曲げられ、衝立板10がV字状の横断面形状を有する。また、図11(b)の例では、シート材S1が3箇所で折り曲げられ、図11(c)の例では、シート材S1が4箇所で折り曲げられ、図11(d)の例では、シート材S1が5箇所で折り曲げられる。なお、これらは、代表的な例であり、その他にも様々な折り方が考えられる。
【0072】
(第3変形例)
図12に示すように、屋根板20は、衝立板10と同じ材質で形成されても良く、また、衝立板10と一体に形成されても良い。例えば、第3変形例では、屋根板20が衝立板10の前側板部11と一体に形成され、衝立板10に対して折り曲げられた後、左側板部12及び右側板部13に接着される。
【0073】
(第4変形例)
図13に示すように、衝立板10の後端は、一部のみ開放されていても良い。例えば、第4変形例の衝立板10には、後端開口10bの上端部及び左右両側の端部を閉止する後側板部14が設けられる。後側板部14は、左側板部12及び右側板部13と一体に形成される。但し、後側板部14は、これら板部12,13と別体であっても良い。例えば、軟質のシート(ビニールシート等)が、左側板部12、右側板部13及び屋根板20の少なくとも1つの前端に取り付けられても良い。
【0074】
第4変形例であれば、後側板部14またはシートによって、衝立板10の後端位置(特に上部)における、フード装置1と患者Pとの隙間を小さくできるので、衝立板10の後側から外部に微粒子が飛散されるのを抑制できる。
【0075】
(第5変形例)
図14に示すように、使用時の状態において、屋根板20の本体部21の前側部分21bは、傾斜されていなくても良い。
【0076】
第5変形例では、屋根板20の本体部21全体が水平に配置される。また、第5変形例の衝立板10の高さは、屋根板20の形状に合わせて、後端から前端の位置にかけて一定の高さに設定される。
【0077】
第5変形例によれば、図2に示した上記の実施形態と比較して、衝立板10及び屋根板20の形状を簡素化できる。
【0078】
(第6変形例)
図示しないが、第5変形例では、使用時の状態において、屋根板20の本体部21全体が、前側ほど下方に向かうよう傾斜される。また、第6変形例の衝立板10の高さは、屋根板20の形状に合わせて、後端から前端の位置にかけて、前側に向かうにつれ低くなるように設定される。
【0079】
第6変形例によれば、第5変形例と同様に、衝立板10及び屋根板20の形状を簡素化できる。
【0080】
(第7変形例)
衝立板10を形成するシート材S1は、プラスチック段ボール以外の種類であっても良い。例えば、第7変形例では、シート材として、より安価な紙製の段ボールが用いられる。
【0081】
(第8変形例)
屋根板20は、衝立板10に対して、両面テープ以外の手段で固定されても良い。例えば、第8変形例では、マジックテープ(登録商標)、ガムテープ、セロハンテープ等の接着テープ、またはホッチキス等を用いて、屋根板20が衝立板10に固定される。
【0082】
(第9変形例)
衝立板10及び屋根板20は、任意の大きさであって良い。例えば、第9変形例では、図2に示した前側板部11の左右方向の幅W1が、左側板部12及び右側板部13の前後方向の幅W2よりも大きい長さに設定される(W1>W2)。
【0083】
以上、本発明の実施形態を詳細に述べたが、本発明の実施形態は上述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って、本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 医療用フード装置
10 衝立板
10a 上部開口
20 屋根板
21b 前側部分(近位側部分)
30 穴
S1 硬質のシート材
S2 透明なシート材
図1
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