(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】ネクタイ止め
(51)【国際特許分類】
A44B 6/00 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
A44B6/00 D
A44B6/00 L
A44B6/00 N
(21)【出願番号】P 2020132851
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2021-01-07
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 電気通信回線を通じて公開、http://www.urban-tie.com/、令和 2年 6月 1日
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520255964
【氏名又は名称】佐藤 沙紀
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 沙紀
【合議体】
【審判長】久保 克彦
【審判官】柳本 幸雄
【審判官】西村 泰英
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-44409(JP,U)
【文献】実開昭59-154111(JP,U)
【文献】特開2000-253908(JP,A)
【文献】実開昭62-79422(JP,U)
【文献】登録実用新案第3030262(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B6/00
A44B9/08
F16B2/20-F16B2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾部、及び、前記装飾部から起設された支持部を有する第1部品と、
前記装飾部に押し当てられる押さえ部を有し、前記支持部に軸支機構を介して回動可能に軸支される第2部品と、
コイル部並びに前記コイル部からそれぞれ延びる第1アーム部及び第2アーム部からなり、前記第1部品と前記第2部品との間に介在されて、前記第1部品及び前記第2部品を閉方向に付勢するねじりばねとを備え、
前記支持部は、
前記装飾部と前記ねじりばねとの間に配置されて、前記コイル部の外形の周方向及び前記第1アーム部の外形の軸方向に沿って前記ねじりばねを覆うとともに、前記ねじりばね側に、少なくとも前記第1アーム部が当接する第1支持壁面を有する第1支持壁と、
前記第1支持壁の両側縁部から前記ねじりばね側にそれぞれ立設されて、前記軸支機構を介して前記第2部品をそれぞれ軸支する一対の第1側壁とを有
し、
前記第1支持壁面は、
第1アーム部の外形の軸方向に沿うように直線状に形成された第1面と、
前記第1面に直交し、かつ前記軸支機構の回転軸線を含む平面よりも前記押さえ部側に配置されるとともに、前記コイル部の外形の周方向に沿うように湾曲状に形成された第2面とを有する、
ネクタイ止め。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネクタイ止めに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネクタイをワイシャツ等の衣服と挟むようにして使用されるネクタイ止めが知られている(例えば、特許文献1-3参照)。特許文献1-3にそれぞれ開示されたネクタイ止めは、第1部品と第2部品とを回動可能に連結するとともに、第1部品及び第2部品の連結部分に対して第1部品及び第2部品を閉方向に付勢するねじりばねを配置したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-28416号公報
【文献】実用新案登録第3043242号公報
【文献】実開昭62-79422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ネクタイ止めの装着時や脱着時において、第1部品及び第2部品が、使用者により開方向又は閉方向に操作された場合、ねじりばねは、その操作に応じて捻じれて変形したり、がたつきにより微小な位置変位が生じたりする。
【0005】
上記の特許文献1-3にそれぞれ開示されたネクタイ止めでは、ねじりばねは、第1部品及び第2部品の連結部分に露出されており、むき出し状態で配置されている。そのため、ネクタイや衣服の生地が、むき出し状態で配置されたねじりばねに引っ掛かったり挟まれたりすることが原因で生地の破損が発生する、という問題点があった。また、ネクタイ止めの使用時(装着されてから脱着されるまでの期間)においても、使用者の体の動きに応じてネクタイや衣服が揺れ動いたときに、生地が、上記と同様に、ねじりばねに引っ掛かったり挟まれたりすることが原因で生地の破損が発生する、という問題点があった。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであって、ネクタイや衣服の生地の破損を防止することができるネクタイ止めを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであって、本発明の一実施形態に係るネクタイ止めは、
装飾部、及び、前記装飾部から起設された支持部を有する第1部品と、
前記装飾部に押し当てられる押さえ部を有し、前記支持部に軸支機構を介して回動可能に軸支される第2部品と、
コイル部並びに前記コイル部からそれぞれ延びる第1アーム部及び第2アーム部からなり、前記第1部品と前記第2部品との間に介在されて、前記第1部品及び前記第2部品を閉方向に付勢するねじりばねとを備え、
前記支持部は、
前記装飾部と前記ねじりばねとの間に配置されて、前記コイル部の外形の周方向及び前記第1アーム部の外形の軸方向に沿って前記ねじりばねを覆うとともに、前記ねじりばね側に、少なくとも前記第1アーム部が当接する第1支持壁面を有する第1支持壁と、
前記第1支持壁の両側縁部から前記ねじりばね側にそれぞれ立設されて、前記軸支機構を介して前記第2部品をそれぞれ軸支する一対の第1側壁とを有し、
前記第1支持壁面は、
第1アーム部の外形の軸方向に沿うように直線状に形成された第1面と、
前記第1面に直交し、かつ前記軸支機構の回転軸線を含む平面よりも前記押さえ部側に配置されるとともに、前記コイル部の外形の周方向に沿うように湾曲状に形成された第2面とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態に係るネクタイ止めによれば、第1部品の支持部において、第1支持壁が、装飾部とねじりばねとの間に配置されて、コイル部の周方向及び第1アーム部の軸方向に沿ってねじりばねを覆うとともに、ねじりばね側に、少なくとも第1アーム部が当接する第1支持壁面を有する。また、一対の第1側壁が、第1支持壁の両側縁部からねじりばね側にそれぞれ立設されて、軸支機構を介して第2部品をそれぞれ軸支する。
【0009】
そのため、第1支持壁及び一対の第1側壁が、コイル部及び第1アーム部を内蔵するようなカバーとして機能する。これにより、ネクタイ止めの装着時、使用時及び脱着時において、ネクタイ及び衣服の生地が支持基部側まで差し込まれた状態でも、ねじりばねが生地に直接触れることがない。したがって、ねじりばねによる生地の破損を防止することができる。また、ねじりばねに対する異物(生地の繊維や塵等)の付着が低減されるので、第1部品及び第2部品の回動動作を円滑な状態に維持することができる。
【0010】
さらに、第1支持壁面が、第1アーム部に接触することでねじりばねの付勢力を受けるとともに、一対の第1側壁が、軸支機構を介して第2部品を軸支することで軸支機構からの負荷を受ける。このとき、一対の第1側壁が、第1支持壁の両側縁部からそれぞれ立設されることで補強構造が実現されるので、第1支持壁及び一対の第1側壁の強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係るネクタイ止め1の一例を示し、(a)右上方視点での斜視図、(b)左上方視点での斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係るネクタイ止め1の一例を示し、(a)右下方視点での斜視図、(b)左下方視点での斜視図である。
【
図3】第1の実施形態に係るネクタイ止め1の一例を示す六面図(背面図は省略)である。
【
図4】第1の実施形態に係る第1部品2の一例を示す六面図(背面図は省略)である。
【
図5】第1の実施形態に係る第1部品2の一例を示す六面図(背面図は省略)である。
【
図6】第1の実施形態に係るネクタイ止め1の一例を示すA-A線断面図である。
【
図7】第1の実施形態に係るネクタイ止め1の一例を示す分解斜視図である。
【
図8】第1の実施形態に係るネクタイ止め1の一例を示す分解斜視断面図である。
【
図9】第2の実施形態に係るネクタイ止め1の一例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るネクタイ止め1の一例を示し、(a)右上方視点での斜視図、(b)左上方視点での斜視図である。
図2は、第1の実施形態に係るネクタイ止め1の一例を示し、(a)右下方視点での斜視図、(b)左下方視点での斜視図である。
図3は、第1の実施形態に係るネクタイ止め1の一例を示す六面図(背面図は省略)である。
図4は、第1の実施形態に係る第1部品2の一例を示す六面図(背面図は省略)である。
図5は、第1の実施形態に係る第1部品2の一例を示す六面図(背面図は省略)である。
図6は、第1の実施形態に係るネクタイ止め1の一例を示すA-A線断面図である。
図7は、第1の実施形態に係るネクタイ止め1の一例を示す分解斜視図である。
図8は、第1の実施形態に係るネクタイ止め1の一例を示す分解斜視断面図である。なお、
図3乃至
図5において、背面図は正面図と対象に表れるため省略する。
【0014】
ネクタイ止め1は、第1部品2と、第1部品2に軸支機構5を介して回動可能に軸支される第2部品3と、第1部品2と第2部品3との間に介在されて、第1部品2及び第2部品3を閉方向に付勢するねじりばね4とを備える。
【0015】
ねじりばね4は、
図6乃至
図8に示すように、コイル部40並びにコイル部40の両端からそれぞれ延びる第1アーム部41及び第2アーム部42からなる。なお、第1アーム部41及び第2アーム部42の形状は、直線状(
図6乃至
図8参照)でもよいし、例えば、く字状に屈曲されたものでもよい。
【0016】
軸支機構5は、
図7及び
図8に示すように、シャフト状の軸体50と、軸体50の両端に固定されるリベット51とにより構成されている。軸体50は、同軸上にそれぞれ配置された第1部品2の第1貫通孔52、第2部品3の第2貫通孔53、及び、コイル部40に挿通されて、その両端が、リベット51でそれぞれ固定されることで、第1部品2と第2部品3とを回動可能に連結する。
【0017】
(第1部品の構成)
第1部品2は、装飾部20と、装飾部20から起設された支持部21とを有する。
【0018】
装飾部20は、先端20aと、先端20aとは反対側であって支持部21側に配置される基端20bとを有する。装飾部20は、ネクタイ止め1の使用時にネクタイ(不図示)の表側に配置される部分である。装飾部20には、例えば、模様、色彩、彫刻等の装飾が施されている。なお、装飾部20には、宝石、貴金属等が嵌め込まれていてもよいし、装飾用の部材が着脱自在に取り付けられてもよい。
【0019】
支持部21は、第1支持壁210と、一対の第1側壁211、212と、支持基部213とを有する。支持基部213は、装飾部20の基端20bから起設された部分である。第1支持壁210及び一対の第1側壁211、212は、支持基部213に対して装飾部20の基端20bとは反対側に配置される。
【0020】
第1支持壁210は、装飾部20とねじりばね4との間に配置されて、コイル部40の周方向及び第1アーム部41の軸方向に沿ってねじりばね4を覆うカバーとして機能する。第1支持壁210の先端部210cは、第2部品3との間に所定の隙間Gを空けた状態で配置される。第1支持壁210は、先端部210cから支持基部213側に向かってコイル部40の外形に沿うように湾曲状に形成されるとともに、第1アーム部41の外形に沿うように直線状に形成されている。
【0021】
第1支持壁210は、ねじりばね4側に、少なくとも第1アーム部41が当接する第1支持壁面210aを有する。本実施形態に係る第1支持壁面210aは、第1アーム部41だけでなくコイル部40についても当接するものであるが、第1アーム部41だけが当接するものでもよい。
【0022】
一対の第1側壁211、212は、第1支持壁210の両側縁部210bからねじりばね4側にそれぞれ立設されて、軸支機構5を介して第2部品3をそれぞれ軸支する。なお、本実施形態に係る第1側壁211、212は、第1支持壁210の両側縁部210bの全体に亘って立設されたものであるが、両側縁部210bの一部から立設されるようにしてもよい。
【0023】
一対の第1側壁211、212は、コイル部40の軸方向に対して所定の間隔を空けた状態で略平行に配置される。一対の第1側壁211、212の各々は、コイル部40の中心軸と同軸となる位置に、厚さ方向に貫通するように形成された第1貫通孔52を有する。
【0024】
支持基部213は、装飾部20と、第1支持壁210及び一対の第1側壁211、212との間に湾曲状又は屈曲状に形成されている。本実施形態に係る支持基部213は、
図6に示すように、装飾部20の基端20bから略直角に起設されるとともに、装飾部20の先端20a側に曲線的に向かう湾曲状に形成されている。なお、支持基部213は、装飾部20から鋭角又は鈍角をなして起設されたものでもよいし、所定の曲率に従って湾曲状に起設されたものでもよい。
【0025】
支持基部213は、第2部品3及びねじりばね4側に配置される面として、第1端面213aと、第1接触面213bと、外形面213cとを有する。
【0026】
第1端面213aは、第1支持壁210及び一対の第1側壁211、212と一体となって第1凹部22を構成する。第1端面213aは、第1アーム部41の軸方向の延長線上に配置されて、第1支持壁210(第1支持壁面210a)及び一対の第1側壁211、212の内側壁面とそれぞれ略直角に交差する。これにより、ねじりばね4が、第1凹部22に嵌め込まれるように収容されるので、ねじりばね4による生地の破損を防止することができる。
【0027】
第1接触面213bは、第1端面213aに隣接されて、第1部品2及び第2部品3が開方向に操作されたとき、第2部品3(具体的には、第2接触面313b)に接触可能な面として配置される。これにより、第1接触面213bが、使用者により開方向に操作されたときのストッパとして機能するので、ネクタイ止め1の操作性を向上させるとともに、ネクタイ止め1の破損を防止することができる。
【0028】
外形面213cは、第1接触面213bと装飾部20の基端20bとの間に対して、
図4の正面図に例示するように、凸曲面状に形成された面である。
【0029】
支持基部213の厚さは、第1端面213aにより段差が設けられることで、第1支持壁210の厚さよりも大きく設定される。これにより、使用者により開方向に操作されたときに負荷がかかる支持基部213の強度を向上させることができる。
【0030】
(第2部品の構成)
第2部品3は、ねじりばね4により閉方向に付勢されて装飾部20に押し当てられる押さえ部30と、押さえ部30から延設されて、支持部21に軸支機構5を介して回動可能に軸支される被支持部31とを有する。第2部品3は、全体的な形状として、
図5の正面図に例示するように、第1部品2側に反るように形成されており、第1部品2とは反対側に配置される外形面(具体的には、押さえ部30と被支持部31(第2支持壁310及び操作部313)の外形面)は、凹曲面状に形成されている。
【0031】
押さえ部30は、装飾部20に押し当てられる押圧面30aを有する。本実施形態に係る押圧面30aは、
図5の正面図に例示するように、凸曲面状に形成された面であるが、例えば、滑り防止のために、ネクタイやワイシャツの生地を傷めない程度の突起形状や凸凹形状が形成されたものでもよいし、押圧用の部材が取り付けられていてもよい。
【0032】
被支持部31は、第2支持壁310と、一対の第2側壁311、312と、操作部313とを有する。第2支持壁310及び一対の第2側壁311、312は、押さえ部30から延設された部分である。操作部313は、第2支持壁310及び一対の第2側壁311、312に対して押さえ部30とは反対側に配置される。
【0033】
第2支持壁310は、ねじりばね4に対して第1支持壁210とは反対側に配置されて、ねじりばね4側に、少なくとも第2アーム部42が当接する第2支持壁面310aを有する。本実施形態に係る第2支持壁面310aは、第2アーム部42が当接するものであるが、コイル部40がさらに当接するものでもよい。
【0034】
一対の第2側壁311、312は、第2支持壁310の両側縁部310bからねじりばね4側にそれぞれ立設されるとともに、一対の第1側壁211、211の各々と対面して配置されて、軸支機構5を介して一対の第1側壁211、211の各々に軸支される。なお、本実施形態に係る第2側壁311、312は、第2支持壁310の両側縁部310bの全体に亘って立設されたものであるが、両側縁部310bの一部から立設されるようにしてもよい。
【0035】
一対の第2側壁311、312は、コイル部40の軸方向に対して所定の間隔を空けた状態で、押さえ部30側から操作部313側に向かって徐々に間隔が拡がるように配置されて、ねじりばね4が配置される部分から略平行に配置される。その際、一対の第2側壁311、312の各々は、コイル部40の軸方向において一対の第1側壁211、212の各々よりも外側に、かつ、一対の第1側壁211、212の各々と対面して配置される。すなわち、コイル部40の軸方向において、一対の第2側壁311、312が最も外側に配置されて、その一対の第2側壁311、312の間に一対の第1側壁211、212が配置されて、その一対の第1側壁211、212の間にねじりばね4が配置される。
【0036】
一対の第2側壁311、312の各々は、コイル部40の中心軸及び第1貫通孔52と同軸となる位置に、厚さ方向に貫通するように形成された第2貫通孔53を有する。また、一対の第2側壁311、312の各々は、凸状部311a、312aと、長辺縁部311b、312bと、短辺縁部311c、312cとを有する。
【0037】
凸状部311a、312aは、第2側壁311、312が第1側壁211、212と対面する側壁面に、軸支機構5(特に第2貫通孔53)の周囲を含む所定の領域(例えば、
図7及び
図8に示すような円形領域)に対して他の領域よりも凸状に形成されている。これにより、第2部品3が第1部品2に対して回動する際、第1部品2と第2部品3との間の摺動面が凸状部311a、312aに限定されるため、凸状部311a、312a以外の部分に傷が付くことを防止することができる。
【0038】
長辺縁部311b、312bは、押圧面30aと同一面状に形成されるとともに、第2支持壁310の側縁部310bとは反対側に配置される。長辺縁部311b、312bは、押圧面30a側から操作部313側に向かうほど第2支持壁面310aから離れるように形成されている。短辺縁部311c、312cは、操作部313(第2接触面313b)から立設し、長辺縁部311b、312bと凸曲面状をなすように接続されている。
【0039】
したがって、一対の第2側壁311、312の各々は、第2アーム部42の軸方向において第2アーム部42の先端よりも操作部313側に延設される。そして、一対の第2側壁311、312の各々は、長辺縁部311b、312bと短辺縁部311c、312cとの凸曲面状の接続部分を除いて、押さえ部30側から操作部313側の短辺縁部311c、312cに向かうほど、第2支持壁面310aから長辺縁部311b、312bまでの高さが高くなるように形成されている。これにより、
図3の正面図に例示するように、長辺縁部311b、312bが第1支持壁210に沿うように配置されるとともに、短辺縁部311c、312cが支持基部213の外形面213cに沿うように配置される。したがって、第1部品2及び第2部品3の連結部分が、凹凸が少なく滑らかな外形になるため、生地が連結部分に引っ掛かることを抑制し、生地の破損を防止することができる。
【0040】
操作部313は、第1部品2及びねじりばね4側に配置される面として、第2端面313aと、第2接触面313bとを有する。操作部313は、第2接触面313bとは反対側の面として、操作面313cを有する。
【0041】
第2端面313aは、第2支持壁310及び一対の第2側壁311、312と一体となって第2凹部32を構成する。第2端面313aは、第1アーム部41の軸方向の延長線上に配置されて、第2支持壁310(第2支持壁面310a)に略直角に交差するとともに、一対の第2側壁311、312の内側壁面に連続して凹曲面状に形成されている。これにより、ねじりばね4が、第2凹部32に嵌め込まれるように収容されるので、ねじりばね4による生地の破損を防止することができる。
【0042】
第2接触面313bは、第2端面313aに隣接されて、第1部品2及び第2部品3が開方向に操作されたとき、第1部品2(具体的には、第1接触面213b)に接触可能な面として配置される。これにより、第2接触面313bが、使用者により開方向に操作されたときのストッパとして機能するので、ネクタイ止め1の操作性を向上させるとともに、ネクタイ止め1の破損を防止することができる。
【0043】
操作部313の厚さは、第2端面313aにより段差が設けられることで、第2支持壁310の厚さよりも大きく設定される。これにより、使用者により開方向に操作されたときに負荷がかかる操作部313の強度を向上させることができる。
【0044】
操作面313cは、ユーザがネクタイ止め1を開方向に操作するときに押圧される面である。
【0045】
(ネクタイ止め1の製造方法)
次に、上記構成を有するネクタイ止め1の製造方法について説明する。
【0046】
まず、部品製作工程において、第1部品2及び第2部品3をそれぞれ製作する。第1部品2及び第2部品3は、例えば、金、銀、プラチナ、真鍮、銅、鋼、錫、鉄等の各種の金属材料(各種の合金を含む)を用いて製作される。第1部品2及び第2部品3は、例えば、鋳造、鋳金、鍛造、鍛金、プレス、折り曲げ、切削、彫刻、彫金、研磨、メッキ等の各種の金属加工方法を適宜組み合わせて製作される。
【0047】
その際、第1部品2及び第2部品3の各々は、例えば、鋳造により一体的な部品としてそれぞれ製作されてもよい。また、第1部品2及び第2部品3の各々は、複数の部品を別々に製作し、それらの複数の部品を溶接、接着剤等の固定手段で固定することで製作されてもよい。複数の部品として、第1部品2については、装飾部20を構成する部品と、支持部21を構成する部品とから製作されて、第2部品3については、押さえ部30を構成する部品と、被支持部31を構成する部品とから製作されてもよい。なお、複数の部品の構成は上記の例に限られない。
【0048】
また、第1部品2及び第2部品3は、同一の材料で製作されてもよいし、異なる材料で製作されてもよい。第1部品2及び第2部品3は、同一の製造方法で製作されてもよいし、異なる製造方法で製作されてもよい。
【0049】
次に、組立工程において、第1部品2の第1支持壁210と第2部品3の第2支持壁310との間にねじりばね4を配置する。そして、第1貫通孔52、第2貫通孔53、及び、コイル部40を同軸上に配置した状態で軸体50を挿通し、その両端をリベット51で固定することで、第1部品2と第2部品3とを回動可能に連結する。このようにして、ネクタイ止め1が製造される。
【0050】
(ネクタイ止め1の使用方法)
次に、上記構成を有するネクタイ止め1の使用方法について説明する。
【0051】
ネクタイ止め1を装着する場合には、使用者は、第1部品2の基端20b側と第2部品3の操作面313cとを指で摘まむようにしてネクタイ止め1を開方向に操作する。これにより、第1部品2及び第2部品3は、ねじりばね4の付勢力に抗して第1接触面213bと第2接触面313bとが近接又は接触するように回動する。このとき、第1部品2及び第2部品3は、軸支機構5の軸体50を回転軸として開方向に回動することで、装飾部20と押圧面30aとの間に隙間が生じるため、使用者はその隙間にネクタイ及び衣服の生地を差し込む。
【0052】
そして、ネクタイ及び衣服の生地が、支持基部213側まで差し込まれた状態で、使用者が指の力を弱めながら指を離すようにしてネクタイ止め1を閉方向に操作する。これにより、第1部品2及び第2部品3は、ねじりばね4の付勢力により第1接触面213bと第2接触面313bとが離間するように回動する。このとき、第1部品2及び第2部品3は、軸支機構5の軸体50を回転軸として閉方向に回動することで、装飾部20に押圧面30aが押し当てられるによりネクタイ及び衣服の生地を挟持する。このようにして、ネクタイ止め1が装着される。なお、ネクタイ止め1を脱着する場合には、使用者は、上記と反対に操作すればよいため、説明を省略する。
【0053】
以上のように、本実施形態に係るネクタイ止め1によれば、第1部品2の支持部21において、第1支持壁210が、装飾部20とねじりばね4との間に配置されて、コイル部40の周方向及び第1アーム部41の軸方向に沿ってねじりばね4を覆うとともに、ねじりばね4側に、少なくとも第1アーム部41が当接する第1支持壁面210aを有する。また、一対の第1側壁211、212が、第1支持壁210の両側縁部210bからねじりばね4側にそれぞれ立設されて、軸支機構5を介して第2部品3をそれぞれ軸支する。
【0054】
そのため、第1支持壁210及び一対の第1側壁211、212が、コイル部40及び第1アーム部41を内蔵するようなカバーとして機能する。これにより、ネクタイ止め1の装着時、使用時及び脱着時において、ネクタイ及び衣服の生地が支持基部213側まで差し込まれた状態でも、ねじりばね4が生地に直接触れることがない。したがって、ねじりばね4による生地の破損を防止することができる。また、ねじりばね4に対する異物(生地の繊維や塵等)の付着が低減されるので、第1部品2及び第2部品3の回動動作を円滑な状態に維持することができる。
【0055】
さらに、第1支持壁面210aが、第1アーム部41に接触することでねじりばね4の付勢力を受けるとともに、一対の第1側壁211、212が、軸支機構5を介して第2部品3を軸支することで軸支機構5からの負荷を受ける。このとき、一対の第1側壁211、212が、第1支持壁210の両側縁部210bからそれぞれ立設されることで補強構造が実現されるので、第1支持壁210及び一対の第1側壁211、212の強度を向上することができる。
【0056】
また、第2部品3の被支持部31において、第2支持壁310が、ねじりばね4に対して第1支持壁210とは反対側に配置されて、ねじりばね4側に、少なくとも第2アーム部42が当接する第2支持壁面310aを有する。また、一対の第2側壁311、312が、第2支持壁310の両側縁部310bからねじりばね4側にそれぞれ立設されるとともに、一対の第1側壁211、211の各々と対面して配置されて、軸支機構5を介して一対の第1側壁211、211の各々に軸支される。
【0057】
そのため、第2支持壁310及び一対の第2側壁311、312が、第1支持壁210及び一対の第1側壁211、212とともに、コイル部40及び第1アーム部41を内蔵するようなカバーとして機能する。これにより、ネクタイ止め1の装着時、使用時及び脱着時において、ねじりばね4が生地に直接触れることがないので、ねじりばね4による生地の破損を防止することができる。また、ねじりばね4に対する異物の付着が低減されるので、第1部品2及び第2部品3の回動動作を円滑な状態に維持することができる。
【0058】
さらに、第2支持壁面310aが、第2アーム部42に接触することでねじりばね4の付勢力を受けるとともに、一対の第2側壁311、312が、軸支機構5を介して一対の第1側壁211、211に軸支されることで軸支機構5からの負荷を受ける。このとき、一対の第2側壁311、312が、第2支持壁310の両側縁部310bからそれぞれ立設されることで補強構造が実現されるので、第2支持壁310及び一対の第2側壁311、312の強度を向上することができる。
【0059】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態に係るネクタイ止め1の一例を示す分解斜視図である。
【0060】
本実施形態に係るネクタイ止め1は、第1の実施形態と比較して、軸支機構5の構成を変更したものである。その他の構成は、第1の実施形態と同様のため、以下では、本実施形態に係る軸支機構5を中心に説明する。
【0061】
軸支機構5は、一対の第1側壁211、212の各々に形成された挿入孔55と、一対の第2側壁311、312の各々に形成されて、挿入孔55に挿入される突起状の軸体54とから構成されている。軸体54は、同軸上に配置された挿入孔55に挿入されることで、第1部品2と第2部品3とを回動可能に連結する。
【0062】
上記構成を有するネクタイ止め1の製造方法における組立工程では、例えば、治具を用いて、一対の第2側壁311、312の間隔が大きくなるように一対の第2側壁311、312を押し拡げた状態でその内側に第1部品2を配置する。そして、第2側壁311、312に形成された突起状の軸体54を、対面する第1側壁211、212に形成された挿入孔55に挿入するように位置決めし、治具を取り外すことで、第1部品2と第2部品3とを回動可能に連結する。
【0063】
なお、挿入孔55は、一対の第1側壁211、212及び一対の第2側壁311、312の一方に形成されて、突起状の軸体54は、一対の第1側壁211、212及び一対の第2側壁311、312の他方に形成されていればよい。したがって、
図6に例示した場合に代えて、挿入孔55が、一対の第2側壁311、312に形成されて、突起状の軸体54が、一対の第1側壁211、212に形成されるようにしてもよい。
【0064】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0065】
例えば、第1部品2及び第2部品3について、形状、寸法(長さ、幅、厚さ)等は適宜変更してもよく、例えば、角張った形状としてもよいし、丸みを帯びた形状としてもよい。さらに、ねじりばね4及び軸支機構5についても同様に、形状、寸法等を適宜変更してもよく、例えば、コイル部40の巻数や軸体50の直径を適宜変更してもよい。
【0066】
また、第1部品2において、例えば、第1端面213aを傾斜面としてもよいし、第1端面213aを省略して第1支持壁面210aと第1接触面213bとの間の段差をなくしてもよい。さらに、第1部品2において、支持基部213と第1支持壁210及び一対の第1側壁211、212との境界位置を変更してもよく、例えば、ねじりばね4側に近づけてもよい。
【0067】
また、第2部品3において、例えば、第2端面313aを傾斜面としてもよいし、第2端面313aを省略して第2支持壁面310aと第2接触面313bとの間の段差をなくしてもよいし、凸状部311a、312aを省略してもよい。第2部品3において、押さえ部30と第2支持壁310及び一対の第2側壁311、312との境界位置を変更してもよく、例えば、ねじりばね4側に近づけてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、一対の第2側壁311、312の各々が、コイル部40の軸方向において一対の第1側壁211、212の各々よりも外側に配置されるものとして説明した。これに対し、一対の第2側壁311、312の各々は、コイル部40の軸方向において一対の第1側壁211、212の各々よりも内側に配置されるようにしてもよい。その際、第2側壁311、312は、第1支持壁210及び一対の第1側壁211、212と干渉しないような形状に変更すればよい。
【0069】
また、上記実施形態では、一対の第2側壁311、312の各々が、一対の第1側壁211、212の各々と対面する側壁面に、凸状部311a、312aを有するものとして説明した。これに対し、一対の第1側壁211、212の各々が、一対の第2側壁311、312の各々と対面する側壁面に、凸状部を有するものとしてもよい。その際、一対の第1側壁211、212及び一対の第2側壁311、312の少なくとも一方が、上記の凸状部を有するようにすればよい。
【0070】
また、上記実施形態では、第1部品2及び第2部品3を軸支機構5により連結し、第1部品2及び第2部品3をねじりばね4により閉方向に付勢するようにして構成された挟持機構が、ネクタイを挟持するためのネクタイ止め1に適用されたものとして説明した。これに対し、当該挟持機構は、ネクタイ止め1以外の各種の止め具に適用されてもよく、例えば、スカーフ等の服飾品の止め具、ブローチ等の装飾品の止め具、髪止め等のヘアーアクセサリの止め具等に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…ネクタイ止め、2…第1部品、3…第2部品、4…ねじりばね、5…軸支機構、
20…装飾部、20a…先端、20b…基端、21…支持部、22…第1凹部、
30…押さえ部、30a…押圧面、31…被支持部、32…第2凹部、
40…コイル部、41…第1アーム部、42…第2アーム部、
50…軸体、51…リベット、52…第1貫通孔、53…第2貫通孔、
54…軸体、55…挿入孔、
210…第1支持壁、210a…第1支持壁面、210b…側縁部、210c…先端部、
211、212…第1側壁、
213…支持基部、213a…第1端面、213b…第1接触面、213c…外形面、
310…第2支持壁、310a…第2支持壁面、310b…側縁部、
311、312…第2側壁、311a、312a…凸状部、
311b、312b…長辺縁部、311c、312c…短辺縁部、
313…操作部、313a…第2端面、313b…第2接触面、313c…操作面
【要約】
【課題】ネクタイや衣服の生地の破損を防止することができるネクタイ止めを提供する。
【解決手段】ネクタイ止め1は、装飾部20、及び、装飾部20から起設された支持部21を有する第1部品2と、支持部21に軸支機構5を介して回動可能に軸支される第2部品3と、コイル部40並びにコイル部40からそれぞれ延びる第1アーム部41及び第2アーム部42からなり、第1部品2及び第2部品3を閉方向に付勢するねじりばね4とを備える。支持部21は、装飾部20とねじりばね4との間に配置されて、コイル部40の周方向及び第1アーム部41の軸方向に沿ってねじりばね4を覆うとともに、第1アーム部41が当接する第1支持壁面210aを有する第1支持壁210と、第1支持壁210の両側縁部からねじりばね4側にそれぞれ立設されて、軸支機構5を介して第2部品3をそれぞれ軸支する一対の第1側壁211、212とを有する。
【選択図】
図6