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特許7005053ベンゼンアルキル化固体酸触媒の再生方法
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  • 特許-ベンゼンアルキル化固体酸触媒の再生方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】ベンゼンアルキル化固体酸触媒の再生方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/60 20060101AFI20220128BHJP
   B01J 38/56 20060101ALI20220128BHJP
   B01J 38/02 20060101ALI20220128BHJP
   B01J 38/04 20060101ALI20220128BHJP
   B01J 38/00 20060101ALI20220128BHJP
   C07C 15/02 20060101ALI20220128BHJP
   C07C 2/66 20060101ALN20220128BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
B01J29/60 Z
B01J38/56
B01J38/02
B01J38/04 Z
B01J38/00 Z
C07C15/02
C07C2/66
C07B61/00 300
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020558027
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 CN2019090713
(87)【国際公開番号】W WO2020103428
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2020-10-14
(31)【優先権主張番号】201811394576.5
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520400405
【氏名又は名称】内蒙古伊泰煤基新材料研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】INNER MONGOLIA YITAI COAL-BASED NEW MATERIALS RESEARCH INSTITUTE CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】錢 震
(72)【発明者】
【氏名】武 靖 為
(72)【発明者】
【氏名】李 俊 誠
(72)【発明者】
【氏名】張 曉 龍
(72)【発明者】
【氏名】曹 宏 成
(72)【発明者】
【氏名】高 源
(72)【発明者】
【氏名】▲ウー▼ 学 霆
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104107728(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1281839(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1541768(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1520928(CN,A)
【文献】国際公開第2008/038855(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07C 15/02
C07C 2/66
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスにより反応器中の固体酸触媒をパージすることと、
前記反応器のインレットにn-ヘキサンを継続的に注入し加熱して、前記固体酸触媒をすすぎ、前記反応器のアウトレットからベンゼンアルキル化反応の残留物を持ち込んでいるn-ヘキサンを排出することと、
n-ヘキサンの注入を止めて、ガスにより反応器中の液体をパージしきり、クールダウンすることと、
を含む、ことを特徴とするベンゼンアルキル化固体酸触媒の再生方法。
【請求項2】
前記ガスは、窒素ガスである、請求項1に記載の再生方法。
【請求項3】
前記ガスの圧力は、0.2~1.0MPaである、請求項1または2に記載の再生方法。
【請求項4】
前記ガスの圧力は、0.3~0.8MPaである、請求項3に記載の再生方法。
【請求項5】
前記ガスの圧力は、0.5~0.8MPaである、請求項4に記載の再生方法。
【請求項6】
前記パージの時間は、1~4時間である、請求項1~5のいずれか1項に記載の再生方法。
【請求項7】
前記パージの時間は、2~3時間である、請求項6に記載の再生方法。
【請求項8】
n-ヘキサンの加熱温度は、250~350℃である、請求項1~7のいずれか1項に記載の再生方法。
【請求項9】
n-ヘキサンの加熱温度は、260~320℃である、請求項8に記載の再生方法。
【請求項10】
n-ヘキサンの加熱温度は、280~320℃である、請求項9に記載の再生方法。
【請求項11】
n-ヘキサンにより前記固体酸触媒をすすぎ時間は、9~12時間であり、好ましくは10~11時間である、請求項1~10のいずれか1項に記載の再生方法。
【請求項12】
前記再生方法は、アウトレットでサンプリングし観察して、サンプルがオレンジ色からクリアで透明に変化すると、再生完了と判断することをさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学工業技術分野に属し、ベンゼンアルキル化固体酸触媒の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキルベンゼンは、多くの分野で幅広い用途があります。例えば、直鎖アルキルベンゼン(LAB)は、洗浄剤を生産するための重要な中間体であり、アルキルベンゼンを調製するとき、一般的に固体酸触媒の使用は必要である。現在、工業化の固体酸技術は、UOP社のDetal技術であり、アルキルベンゼンの生産プロセスにおいて、用いられる原料がアルカンとオレフィンの混合物およびベンゼンである。当該プロセスにおいて、固体酸触媒の表面および細孔にアルカンやオレフィンの異性化およびクラッキング生成物は徐々に累積されて、触媒の細孔を塞いで触媒を失活させる。当該触媒は、24時間ごと1回再生が必要である。
【0003】
清華大学化学工業科は、変性βゼオライト固体酸触媒を採用するアルキルベンゼンの新技術を開発している。しかしながら、変性βゼオライト固体酸触媒も失活しやすく、シングルパス寿命(one way life)が短く、再生の繰り返しが必要である。
【0004】
従来の固体酸触媒の再生方法は、熱ベンゼン洗浄再生法およびコークス燃焼再生法を含む。従来の熱ベンゼン洗浄再生法において、反応器に投入しようとするオレフィンのフィードを止めて、ベンゼンのみをフィードし、反応器中の触媒をすすぐ。コークス燃焼再生法において、反応器中に熱い酸素欠乏ガスを導入し、650℃で細孔中の残留物を燃焼させ除去させる。
【0005】
しかしながら、従来の熱ベンゼン洗浄再生法は、固体酸触媒表面および細孔にすべての物質を除去することができない。それらの物質は、熱ベンゼンに溶解され除去され難いことによって、触媒のシングルパス寿命が徐々に短くなっている。
【0006】
コークス燃焼再生法は、設備に対する要求が高く、エネルギー消費が大きく、それと同時に、触媒が複数の高温コークス燃焼を経てから、その細孔構造が永久破壊されるによって、触媒活性が永久低下し、触媒長期寿命が短くなる。
【発明の概要】
【0007】
これらによって、本発明は、再生効果を高め、触媒の寿命を延ばすための、ベンゼンアルキル化固体酸触媒の再生方法を提出している。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術案を採用する。
ガスにより反応器中の固体酸触媒をパージすることと、
前記反応器のインレットにn-ヘキサンを継続的に注入し加熱して、前記固体酸触媒をすすぎ、前記反応器のアウトレットからベンゼンアルキル化反応の残留物を持ち込んでいるn-ヘキサンを排出することと、
n-ヘキサンの注入を止めて、ガスにより反応器中の液体をパージしきり、クールダウンすることと、
を含む、ベンゼンアルキル化固体酸触媒の再生方法。
【0009】
本実施形態では、前記ガスは、窒素ガスである。
本実施形態では、前記ガスの圧力は、0.2~1.0MPaである。
【0010】
本実施形態では、前記ガスの圧力は、0.3~0.8MPaである。
本実施形態では、前記ガスの圧力は、0.5~0.8MPaである。
【0011】
本実施形態では、前記パージの時間は、1~4時間である。
本実施形態では、前記パージの時間は、2~3時間である。
【0012】
本実施形態では、n-ヘキサンの加熱温度は、250~350℃である。
本実施形態では、n-ヘキサンの加熱温度は、260~320℃である。
【0013】
本実施形態では、n-ヘキサンの加熱温度は、280~320℃である。
本実施形態では、n-ヘキサンにより前記固体酸触媒をすすぎ時間は、9~12時間であり、好ましくは10~11時間である。
【0014】
本実施形態では、前記再生方法は、アウトレットでサンプリングし観察して、サンプルがオレンジ色からクリアで透明に変化すると、再生完了と判断することをさらに含む。
【0015】
従来の熱ベンゼン洗浄再生法と比べると、本発明の再生方法に用いられる再生液は、n-ヘキサンであり、細孔中のベンゼンアルキル化反応残留物の溶解度を向上し、再生効果を高めるとともに、コークス燃焼再生による触媒細孔構造の永久破壊を避け、触媒の寿命を延ばす。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例に用いられる装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の目的、技術案および優れた効果をより明確にするために、以下に、具体的な実施例および図面により本発明をさらに詳しく説明する。
【0018】
発明者は、アルキルベンゼンの工業生産中、熱ベンゼンにより固体酸触媒を洗浄再生する場合、固体酸触媒表面および細孔に累積するアルカンやオレフィンの異性化およびクラッキング生成物などは、熱ベンゼンに完全に溶解するわけではなく、これにより、これらの物質を完全に除去することはできないので、固体酸触媒の触媒効率および寿命は、低下していくことを発見した。n-ヘキサンは、固体酸が触媒するアルキルベンゼン反応のプロセスに生成する、触媒の細孔を塞ぐ残留物に対して、強い溶解力を持つので、それに対する除去能力がベンゼンより強いことを複数の試験によって発見した。これは、ベンゼン分子が、環状構造および非局在化π結合を有し、占める空間が大きいに対して、n-ヘキサンが、直鎖炭化水素であり、その分子の体積が小さいので、ベンゼンよりも、ゼオライトの細孔に入って不純物を洗い流しやすいためである。
【0019】
その上で、発明者は、ガスにより反応器中の固体酸触媒をパージすることと、前記反応器のインレットにn-ヘキサンを継続的に注入し加熱して、前記反応器のアウトレットからベンゼンアルキル化反応の残留物を持ち込んでいるn-ヘキサンを排出することと、n-ヘキサンの注入を止めて、ガスにより反応器中の液体をパージしきり、クールダウンすることと、を含む、改良したベンゼンアルキル化固体酸触媒の再生方法を提出した。
【0020】
その中で、前記固体酸触媒は、ゼオライト固体酸触媒であり、前記ガスは、窒素ガスであってもよく、ガスの圧力は、0.2~1.0MPaであってもよく、例えば、0.3MPa、0.5MPa、0.8MPaであってもよい。ガスによりパージの時間は、1~4時間でってもよく、例えば、2~3時間であってもよい。
【0021】
n-ヘキサンにより洗浄する時間は、9~12時間でってもよく、例えば、10時間であってもよい。加熱温度は、250~350℃でってもよく、例えば、260℃、280℃、320℃であってもよい。n-ヘキサンによる洗浄および加熱は、同時に行われても良い。
【0022】
また、当該再生方法は、アウトレットでサンプリングし観察して、サンプルがオレンジ色からクリアで透明に変化すると、再生完了と判断することをさらに含んでも良い。
【0023】
当該再生方法は、アルキルベンゼンを調製する反応器に行われても良く、操作が簡単であり、再生時間を節約でき、アルキルベンゼンの生産効率を向上するとともに、従来の再生方法に対して、再生後の触媒は、触媒活性が99%以上に回復でき、且つ繰り返し再生が可能であり、触媒の使用寿命が8000時間以上と長い。
【0024】
実施例1
図1は、本発明の実施例にアルキルベンゼンを調製する装置を示す図である。その中で、反応器1が含まれ、反応器1に固体酸触媒2が設けられ、反応器1の上方に、アルカンとオレフィンの混合物およびベンゼンなどの原料を注入するための供給管3および給気管4が接続され、反応器1の下方に、生成するアルキルベンゼンおよび反応していない原料を排出するための吐出管5が接続され、吐出管5にオンラインサンプラー6がさらに設けられている。
【0025】
オレフィンとベンゼンは、固体酸触媒2でベンゼンアルキル化反応が行われる。ベンゼンアルキル化反応の効率が低下すると、固体酸触媒2に対して再生処理を行うことが必要である。
【0026】
再生するとき、まず、フィードを止めて、給気管4によって0.5MPaの窒素ガスを反応器1に導入し、反応器1中の固体酸触媒2を2時間パージする。
【0027】
次、供給管3によってn-ヘキサンを反応器1に注入し、280℃に昇温し、固体酸触媒2をすすぐ。ベンゼンアルキル化反応の残留物を持ち込んでいるn-ヘキサンは、吐出管5によって反応器1から流れ出し、すすぎ時間は、10時間である。
【0028】
その期間で、オンラインサンプラー6によってサンプリングし観察して、サンプルがオレンジ色からクリアで透明までに変化すると、再生完了と考えられる。
【0029】
再生完了後、n-ヘキサンの注入を止めて、窒素ガスにより反応器1中全ての液体をパージしきり、150℃にクールダウンして、固体酸触媒2の再生を完了する。この時、反応原料を投入してアルキルベンゼンの生産を続けることができる。
【0030】
従来技術において、熱ベンゼンによって固体酸触媒を再生した後、原料の初期転化率は、約97%であるに対して、本発明は、n-ヘキサンによって再生した後、原料の初期転化率が99%以上に安定させ、且つ固体酸触媒の寿命が相応的に向上するので、アルキルベンゼンの大規模生産において明らかな経済利益を生み出すことが可能である。
【0031】
なお、以上に具体的な実施例により本発明の目的、技術案および優れた効果をさらに説明しているが、理解であるように、以上に本発明の具体的な実施例だけであり、本発明の保護範囲を限定するものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で本発明に対して行う様々な補正、等価交換、改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に入っているはずである。
【符号の説明】
【0032】
1-反応器;2-固体酸触媒;3-供給管;4-給気管;5-吐出管;6-オンラインサンプラー。
図1