(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】樹脂成形シート切断装置
(51)【国際特許分類】
B26D 3/00 20060101AFI20220114BHJP
B26D 1/18 20060101ALI20220114BHJP
B26D 7/02 20060101ALI20220114BHJP
B26D 7/20 20060101ALI20220114BHJP
B29C 51/26 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B26D3/00 601A
B26D1/18
B26D7/02 D
B26D7/20
B29C51/26
(21)【出願番号】P 2021110200
(22)【出願日】2021-07-01
【審査請求日】2021-07-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304050369
【氏名又は名称】株式会社浅野研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀井 智明
(72)【発明者】
【氏名】高井 俊広
(72)【発明者】
【氏名】横井 広良
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-003762(JP,A)
【文献】特開2018-94685(JP,A)
【文献】特開2001-293774(JP,A)
【文献】特開2004-276199(JP,A)
【文献】特開昭60-131195(JP,A)
【文献】特開2005-081457(JP,A)
【文献】実開昭57-043130(JP,U)
【文献】実開昭59-148295(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/00
B26D 7/20
B26D 7/02
B26D 1/18
B26D 1/08
B29C 51/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃先がクサビ状に形成されたカッターと、前記カッターと対向して配置され加熱成形された複数の樹脂成形品を有する樹脂成形シートと当接し前記刃先が挿入される切断溝がシート幅方向に形成された受け台とを備え、前記カッターが前記受け台に当接された前記樹脂成形シートを前記切断溝の位置で所定の長さに切断する樹脂成形シート切断装置であって、
前記受け台と対向する位置には、前記カッターの切断ラインを挟んで前記樹脂成形シートを前記受け台との間で挟持する保持台を備え、
前記受け台と前記保持台とが前記樹脂成形シートを水平状に挟持すること、
前記受け台の前記樹脂成形シートと当接する当接部には、前記樹脂成形シートに対する摩擦係数が前記保持台の前記樹脂成形シートと当接する当接部における前記樹脂成形シートに対する摩擦係数より大きく形成された摩擦手段を備えたことを特徴とする樹脂成形シート切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載された樹脂成形シート切断装置において、
前記摩擦手段には、先端部が前記樹脂成形シートに鋭角状に食い込む複数の突起部が切断ラインに沿って形成されていることを特徴とする樹脂成形シート切断装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された樹脂成形シート切断装置において、
前記受け台には、前記樹脂成形シートに当接する当接部を支持する支持部が少なくともシート幅の範囲で略同一断面に形成された支持フレーム部材を備え、
前記支持フレーム部材の両端部には、前記受け台が前記保持台に近接して前記樹脂成形シートを挟持する挟持位置と、前記受け台が前記保持台から離間して前記樹脂成形シートを通過させる開放位置との間で、前記受け台を上下動させる昇降装置が連結されていることを特徴とする樹脂成形シート切断装置。
【請求項4】
請求項3に記載された樹脂成形シート切断装置において、
前記支持フレーム部材の前記支持部には、少なくともシート幅の範囲で前記両端部より所定の幅で拡張された拡幅部を備えたことを特徴とする樹脂成形シート切断装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された樹脂成形シート切断装置において、
前記カッターは、薄板状に形成された円形刃であり、前記円形刃をシート幅方向外方における後退位置から反対側の前進位置まで切断ラインに沿って往復移動させる駆動機構を備えたことを特徴とする樹脂成形シート切断装置。
【請求項6】
請求項5に記載された樹脂成形シート切断装置において、
前記保持台は、前記駆動機構の固定部に連結され、前記カッターは、前記駆動機構の可動部に把持ブラケットを介して高さ調節可能に連結されていることを特徴とする樹脂成形シート切断装置。
【請求項7】
請求項6に記載された樹脂成形シート切断装置において、
前記保持台には、前記樹脂成形シートに当接する当接部から上方へ起立する立壁部が前記把持ブラケットの移動軌跡に沿って所定の幅で形成され、前記立壁部には、前記カッターの前進位置又は後退位置に対応して前記把持ブラケットの操作用切欠き部が形成されていることを特徴とする樹脂成形シート切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形シート切断装置に関し、詳しくは、加熱成形された複数の樹脂成形品を有する樹脂成形シートを所定の長さに切断する樹脂成形シート切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品用のトレイ等に使用する樹脂製の成形品は、コイル状に巻回された熱可塑性の樹脂シートを巻き戻し、巻き戻した状態の樹脂シートをヒータ等で加熱して軟化させた後、真空成形又は圧空成形等が可能な金型にて所定の形状に成形(以下、「加熱成形」とも言う)されている。この樹脂成形品の加熱成形では、シート加熱工程、成形工程等を必要とし、その生産時間(サイクルタイム)が一定程度必要となるので、生産性を高めるため、一度に複数の樹脂成形品を成形可能な金型が使用される場合が多い。
【0003】
この場合、加熱成形に引き続いて、個々の樹脂成形品の外周縁を連続的に切断することも可能であるが、切断装置が大掛かりとなり、設備コストも増加しやすい。そのため、樹脂成形シートをシート幅方向に切断する樹脂成形シート切断装置を用いて、加熱成形された複数の樹脂成形品を有する樹脂成形シートを所定の長さに切断して、切断した樹脂成形シートを一旦積層して保管した後、積層した状態又は一枚一枚剥がした状態で個別に切断するタンデムの切断装置にて、個々の樹脂成形品の外周縁を切断して、製品としての樹脂成形品を形成する方法を採用することがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、加熱成形された複数の樹脂成形品を有する樹脂成形シートを所定の長さに切断する樹脂成形シート切断装置が開示されている。具体的には、
図9に示すように、熱可塑性の樹脂シート101を加熱するヒータ102と、ヒータ102で加熱して軟化された樹脂シート101を密着させて成形する金型103と、金型103で成形された樹脂成形シート101aを、所定の寸法に切断する定寸切断機(樹脂成形シート切断装置)104とを備える熱成形機100が開示されている。ここで、定寸切断機104は、樹脂成形シート101aを切断するクサビ状のカッター104aを有し、カッター104aが降下して、加熱成形された複数の樹脂成形品101bを有する樹脂成形シート101aを所定の長さに切断する。この定寸切断機104には、カッター104aと対向する位置に樹脂成形シート101aがシート幅方向に沿って当接される受け台104bを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された定寸切断機(樹脂成形シート切断装置)104は、クサビ状のカッター104aが降下して、受け台104bに当接された樹脂成形シート101aを切断する構成であるので、
図10に示すように、カッター104aの刃先104a1が樹脂成形シート101aの上端部(カッター側)101a1に食い込むとき、樹脂成形シート101aの下端部(反カッター側)101a2がカッター104aの切断ラインに対して直交する水平方向へ押し広げられて、破断し易くなる。
【0007】
すなわち、切断時における樹脂成形シート101aに対するクサビ状のカッター104aの押圧力P1は、刃先104a1が先行して食い込む樹脂成形シート101aの上端部101a1をクサビ状に押し潰しつつ切断して斜め外方へ押し広げる押圧力P2を経由して、刃先104a1が遅れて食い込む樹脂成形シート101aの下端部101a2を水平方向へ拡張させる引張力P3として作用する。
【0008】
この引張力P3によって、樹脂成形シート101aの下端部101a2が、切断ラインに対して直交する水平方向へ延伸され、その伸び限界に達したとき、樹脂成形シート101aの下端部101a2は破断する。そして、樹脂成形シート101aの下端部101a2が破断すると、破断面101a3から割れや微小な切粉が発生する。割れは、樹脂成形品101bに到達することがあり、切粉は、樹脂成形品101bに付着することがあり、割れの生じた樹脂成形品101bの廃棄や、切粉による樹脂成形品101bの傷付き、更には、切粉の清掃除去に伴う生産性の低下等の問題があった。
【0009】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、加熱成形された複数の樹脂成形品を有する樹脂成形シートを所定の長さに切断する際、簡単な構造で割れや切粉の発生を低減又は回避できる樹脂成形シート切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る樹脂成形シート切断装置は、以下の構成を備えている。
(1)刃先がクサビ状に形成されたカッターと、前記カッターと対向して配置され加熱成形された複数の樹脂成形品を有する樹脂成形シートと当接し前記刃先が挿入される切断溝がシート幅方向に形成された受け台とを備え、前記カッターが前記受け台に当接された前記樹脂成形シートを前記切断溝の位置で所定の長さに切断する樹脂成形シート切断装置であって、
前記受け台と対向する位置には、前記カッターの切断ラインを挟んで前記樹脂成形シートを前記受け台との間で挟持する保持台を備え、
前記受け台の前記樹脂成形シートと当接する当接部には、前記樹脂成形シートに対する摩擦係数が前記保持台の前記樹脂成形シートと当接する当接部における前記樹脂成形シートに対する摩擦係数より大きく形成された摩擦手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明においては、受け台と対向する位置には、カッターの切断ラインを挟んで樹脂成形シートを受け台との間で挟持する保持台を備え、受け台の樹脂成形シートと当接する当接部には、樹脂成形シートに対する摩擦係数が保持台の樹脂成形シートと当接する当接部における樹脂成形シートに対する摩擦係数より大きく形成された摩擦手段を備えたので、加熱成形された複数の樹脂成形品を有する樹脂成形シートを所定の長さに切断する際、保持台と当接しカッターの刃先が先行して食い込む樹脂成形シートのカッター側に対する保持台による拘束力(摩擦力)より、受け台と当接しカッターの刃先が遅れて食い込む樹脂成形シートの反カッター側に対する受け台による拘束力(摩擦力)を増大させることができる。この場合、受け台と保持台とが樹脂成形シートを挟持する挟持力を必要以上に増大させる必要がない。
【0012】
そのため、切断時にクサビ状に形成されたカッターの刃先が樹脂成形シートのカッター側に食い込むとき、刃先が樹脂成形シートのカッター側をクサビ状に押し潰しつつ切断することに伴って、カッターの刃先が遅れて食い込む樹脂成形シートの反カッター側を切断ラインに対して直交する水平方向へ拡張させる引張力を、受け台の増大した拘束力(摩擦力)によって、効果的に打ち消すことができる。
【0013】
したがって、受け台と保持台とが樹脂成形シートを挟持する挟持力を必要以上に増大させることなく、樹脂成形シートの反カッター側を水平方向へ拡張させる引張力を打ち消すことができ、樹脂成形シートの反カッター側の破断を遅らせ又は回避させることができる。その結果、加熱成形された複数の樹脂成形品を有する樹脂成形シートを所定の長さに切断する際、樹脂成形シートの反カッター側の破断に伴う割れや切粉の発生を簡単に低減又は回避できる。
【0014】
よって、本発明によれば、加熱成形された複数の樹脂成形品を有する樹脂成形シートを所定の長さに切断する際、簡単な構造で割れや切粉の発生を低減又は回避できる樹脂成形シート切断装置を提供することができる。
【0015】
(2)(1)に記載された樹脂成形シート切断装置において、
前記摩擦手段には、先端部が前記樹脂成形シートに鋭角状に食い込む複数の突起部が切断ラインに沿って形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、摩擦手段には、先端部が樹脂成形シートに鋭角状に食い込む複数の突起部が切断ラインに沿って形成されているので、カッターが樹脂成形シートを切断する際、突起部の先端部が樹脂成形シートに鋭角状に食い込むことによって、受け台と当接しカッターの刃先が遅れて食い込む樹脂成形シートの反カッター側に対する受け台による拘束力(摩擦力)をより一層増大させ、樹脂成形シートの反カッター側の破断を遅らせ又は回避させることができる。この場合でも、突起部の先端部が樹脂成形シートに鋭角状に食い込むことによって、食い込み力が減少し、受け台と保持台とが樹脂成形シートを挟持する挟持力を必要以上に増大させることがない。その結果、樹脂成形シートの反カッター側をより簡単且つ強く拘束させ、樹脂成形シートの切断時における割れや切粉の発生をより一層低減又は回避させることができる。
【0017】
(3)(1)又は(2)に記載された樹脂成形シート切断装置において、
前記受け台には、前記樹脂成形シートに当接する当接部を支持する支持部が少なくともシート幅の範囲で略同一断面に形成された支持フレーム部材を備え、
前記支持フレーム部材の両端部には、前記受け台が前記保持台に近接して前記樹脂成形シートを挟持する挟持位置と、前記受け台が前記保持台から離間して前記樹脂成形シートを通過させる開放位置との間で、前記受け台を上下動させる昇降装置が連結されていることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、受け台には、樹脂成形シートに当接する当接部を支持する支持部が少なくともシート幅の範囲で略同一断面に形成された支持フレーム部材を備え、支持フレーム部材の両端部には、受け台が保持台に近接して樹脂成形シートを挟持する挟持位置と、受け台が保持台から離間して樹脂成形シートを通過させる開放位置との間で、受け台を上下動させる昇降装置が連結されているので、樹脂成形シートを切断するため、昇降装置が作動し、受け台が保持台に近接して樹脂成形シートを挟持する際、受け台における樹脂成形シートに当接する当接部の撓み量を、少なくともシート幅の範囲で略同一断面に形成された支持部の剛性によって、略均一に低減させることができる。そのため、受け台と保持台とが、樹脂成形シートを切断ラインに沿って略均一に拘束し、切断時の割れや切粉の発生をより一層安定して低減又は回避させることができる。
【0019】
(4)(3)に記載された樹脂成形シート切断装置において、
前記支持フレーム部材の前記支持部には、少なくともシート幅の範囲で前記両端部より所定の幅で拡張された拡幅部を備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明においては、支持フレーム部材の支持部には、少なくともシート幅の範囲で両端部より所定の幅で拡張された拡幅部を備えたので、受け台における樹脂成形シートに当接する当接部の撓み量を、拡幅部の剛性によってより一層均一に低減させることができる。そのため、受け台と保持台とが、樹脂成形シートを切断ラインSLに沿ってより一層均一に拘束し、切断時の割れや切粉の発生をより一層安定して低減又は回避させることができる。
【0021】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された樹脂成形シート切断装置において、
前記カッターは、薄板状に形成された円形刃であり、前記円形刃をシート幅方向外方における後退位置から反対側の前進位置まで切断ラインに沿って往復移動させる駆動機構を備えたことを特徴とする。
【0022】
本発明においては、カッターは、薄板状に形成された円形刃であるので、カッターの刃先が樹脂成形シートのカッター側に食い込むとき、カッターの刃先が先行して食い込む樹脂成形シートのカッター側をクサビ状に押し潰す潰し量が減少して、カッターの刃先が遅れて食い込む樹脂成形シートの反カッター側を水平方向へ拡張させる引張力を低減させることができる。そのため、受け台と保持台とが切断ラインに沿って樹脂成形シートをより一層強く拘束することができ、樹脂成形シートの反カッター側の破断をより一層遅らせ又はより確実に回避させることができる。
【0023】
また、カッターは、薄板状に形成された円形刃であり、円形刃をシート幅方向外方における後退位置から反対側の前進位置まで切断ラインに沿って往復移動させる駆動機構を備えたので、円形刃が後退位置から前進位置へ移動するときに樹脂成形シートを切断する刃先の位置と、次の切断のため、円形刃が前進位置から後退位置へ移動するときに樹脂成形シートを切断する刃先の位置とを、異なる位置に別けることができ、刃先の耐久性を向上させることもできる。その結果、加熱成形された複数の樹脂成形品を有する樹脂成形シートを所定の長さに切断する際、割れや切粉の発生をより一層長期間低減又は回避できる。
【0024】
(6)(5)に記載された樹脂成形シート切断装置において、
前記保持台は、前記駆動機構の固定部に連結され、前記カッターは、前記駆動機構の可動部に把持ブラケットを介して高さ調節可能に連結されていることを特徴とする。
【0025】
本発明においては、保持台は、駆動機構の固定部に連結され、カッターは、駆動機構の可動部に把持ブラケットを介して高さ調節可能に連結されているので、可動部に対する把持ブラケットの高さを調節することによって、保持台における樹脂成形シートに対する当接部からカッターの刃先が突出する刃先の突出量を、簡単に調節することができる。そのため、樹脂成形シートの板厚等に応じて、樹脂成形シートに対する最適な切断が可能なカッターの刃先の食い込み量を、適宜調節することができる。その結果、板厚等が異なる複数種類の樹脂成形シートに対して、切断時の割れや切粉の発生を簡単に低減又は回避させることができる。
【0026】
(7)(6)に記載された樹脂成形シート切断装置において、
前記保持台には、前記樹脂成形シートに当接する当接部から上方へ起立する立壁部が前記把持ブラケットの移動軌跡に沿って所定の幅で形成され、前記立壁部には、前記カッターの前進位置又は後退位置に対応して前記把持ブラケットの操作用切欠き部が形成されていることを特徴とする。
【0027】
本発明においては、保持台には、樹脂成形シートに当接する当接部から上方へ起立する立壁部が把持ブラケットの移動軌跡に沿って所定の幅で形成され、立壁部には、カッターの前進位置又は後退位置に対応して把持ブラケットの操作用切欠き部が形成されているので、操作用切欠き部が形成されたカッターの前進位置又は後退位置にて、把持ブラケットを操作して、簡単にカッターを着脱又は刃先の切断位置を変更させることができる。この場合、保持台を駆動機構の固定部から取り外す必要がない。そのため、樹脂成形シートの切断状況を観察しながら、必要な時期にカッターの交換や切断する刃先の位置を迅速に変更することができる。その結果、刃先の摩耗や欠損に伴う割れや切粉の発生又は増加を、未然に回避することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、加熱成形された複数の樹脂成形品を有する樹脂成形シートを所定の長さに切断する際、簡単な構造で割れや切粉の発生を低減又は回避できる樹脂成形シート切断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本実施形態の一態様に係る樹脂成形シート切断装置を含む熱成形機の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す熱成形機に用い、本実施形態の一態様に係る樹脂成形シート切断装置の概要図である。
【
図5】
図3に示すC部における切断状況の詳細断面図である。
【
図7】本樹脂成形シート切断装置の変形例において、
図3に示すC部における切断状況の詳細断面図である。
【
図9】特許文献1に開示された熱成形機の概略断面図である。
【
図10】
図9に示す定寸切断機における切断状況を表す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本実施形態の一態様に係る樹脂成形シート切断装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。具体的には、本樹脂成形シート切断装置をその一部に含む熱成形機における構成を簡単に説明した上で、本樹脂成形シート切断装置の構成及び動作方法について詳細に説明する。
【0031】
<本樹脂成形シート切断装置を含む熱成形機の構成>
まず、本樹脂成形シート切断装置を含む熱成形機の構成について、
図1を用いて簡単に説明する。
図1に、本実施形態の一態様に係る樹脂成形シート切断装置を含む熱成形機の概略構成図を示す。
【0032】
図1に示すように、本樹脂成形シート切断装置を含む熱成形機200は、シート送り方向における上流側から下流側に向けて配置された、シート巻き戻しステージ(S1)と、シート加熱ステージ(S2)と、成形ステージ(S3)と、シート切断ステージ(S4)と、積載ステージ(S5)とを備えている。ここで、シート巻き戻しステージ(S1)は、ロール状に巻回された熱可塑性の樹脂シートJCを間欠的に巻き戻すステージである。熱可塑性の樹脂シートJCには、例えば、非晶性のポリスチレン(PS)や、結晶性のポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等、用途に応じて様々な樹脂シートJCを用いることができる。巻き戻された樹脂シートJCは、次のシート加熱ステージ(S2)の前で、巻き癖を解消させる等の理由からループ状に垂れ下げた状態で一旦待機させられる。
【0033】
次のシート加熱ステージ(S2)は、巻き戻された樹脂シートJCを、水平状に保持して成形に適した温度に加熱するステージである。加熱温度は、次の成形ステージ(S3)にて樹脂シートJCのシワ、割れ等を回避しつつ適正な加熱成形が可能なように、樹脂シートJCの種類、板厚、成形形状等に応じて、適宜設定する。また、次の成形ステージ(S3)は、所定の温度に加熱された樹脂シートJCを真空成形又は圧空成形等が可能な金型(図示しない)にて、所定の形状に加熱成形するステージである。成形ステージ(S3)では、例えば、食品用のトレイの他、各種形状の樹脂成形品JSを形成することができる。通常、上記金型は、一度の加熱成形で、同一の樹脂成形品JSを複数個成形可能なように、同一形状の成形面が複数個形成されている。ここでは、シート幅方向に3列の樹脂成形品JSを配置し、シート送り方向に2行の樹脂成形品JSを配置して成形可能に、金型が形成されている。成形ステージ(S3)では、加熱成形した樹脂成形品JSを、取り出し可能な所定の温度まで冷却した後、金型を開放して次のシート切断ステージ(S4)に送り出す。
【0034】
また、次のシート切断ステージ(S4)は、成形ステージ(S3)にて加熱成形された複数の樹脂成形品JSを有する樹脂成形シートJを所定の長さに切断するステージである。シート切断ステージ(S4)では、後述する本実施形態に係る樹脂成形シート切断装置10、10Bを用いて、例えば、成形ステージ(S3)で一度に成形する複数の樹脂成形品JSの境界部にて、シート幅方向に切断する。なお、成形ステージ(S3)とシート切断ステージ(S4)との間には、樹脂成形シートJを樹脂成形シート切断装置10、10Bへ投入する投入装置を設置するため等の理由から、アイドルステージが設けられている。
【0035】
また、積載ステージ(S5)は、シート切断ステージ(S4)にて切断された樹脂成形シートJを上下方向に複数枚積層して一時保管するステージである。複数枚積層された樹脂成形シートJは、別途備える切断装置に搬送されて、樹脂成形品JSの外周縁が切断され、製品としての樹脂成形品JSが形成される。
【0036】
<本樹脂成形シート切断装置の構成及び動作方法>
次に、本樹脂成形シート切断装置の構成及び動作方法を、
図2~
図8を用いて説明する。
図2に、
図1に示す熱成形機に用い、本実施形態の一態様に係る樹脂成形シート切断装置の概要図を示す。
図3に、
図2に示すA矢視側面図を示す。
図4Aに、
図3に示すB-B断面図を示す。
図4Bに、
図4Aに示すX部の拡大断面図を示す。
図5に、
図3に示すC部における切断状況の詳細断面図を示す。
図6に、
図5に示すD-D断面図を示す。
図7に、本樹脂成形シート切断装置の変形例において、
図3に示すC部における切断状況の詳細断面図を示す。
図8に、
図7に示すE-E断面図を示す。
【0037】
図2~
図6に示すように、本樹脂成形シート切断装置10は、刃先11がクサビ状に形成されたカッター1と、カッター1と対向して配置され加熱成形された複数の樹脂成形品JSを有する樹脂成形シートJと当接し刃先11が挿入される切断溝22がシート幅方向に形成された受け台2とを備え、カッター1が受け台2に当接された樹脂成形シートJを切断溝22の位置で所定の長さL(
図1を参照)に切断する樹脂成形シート切断装置10である。ここで、カッター1は、刃先11がクサビ状に形成された物であれば、直線刃(所謂、トムソン刃等)でも後述する円形刃でも良い。ただし、直線刃の場合、刃先11にシャー角等を設けて樹脂成形シートJの切断荷重を軽減させることが好ましい。
【0038】
また、受け台2と対向する位置には、カッター1の切断ラインSLを挟んで樹脂成形シートJを受け台2との間で挟持する保持台4を備え、受け台2の樹脂成形シートJと当接する当接部21には、樹脂成形シートJに対する摩擦係数μ1が保持台4の樹脂成形シートJと当接する当接部41における樹脂成形シートJに対する摩擦係数μ2より大きく形成された摩擦手段21Mを備えている。ここで、摩擦手段21Mは、凹凸状に形成され機械的に摩擦係数μ1が増大するように形成されたものであれば良く、例えば、受け台2の当接部21に対してローレット加工等を行うことによって、直接形成しても良いし、受け台2の当接部21に凹凸状の別部材を接合しても良い。また、
図2、
図3では、受け台2は、カッター1及び保持台4に対して上下動可能に形成されているが、カッター1及び保持台4を受け台2に対して上下動可能に形成しても良い。なお、保持台4には、切断ラインSLに沿ってカッター1の刃先11が挿通される挿通溝44が形成されている。保持台4の挿通溝44の溝幅は、受け台2の切断溝22の溝幅と略同一の大きさに形成されている。
【0039】
そして、加熱成形された複数の樹脂成形品JSを有する樹脂成形シートJを所定の長さに切断する際、保持台4と当接しカッター1の刃先11が先行して食い込む樹脂成形シートJのカッター側J1に対する保持台4による拘束力R4=μ2×R1(摩擦力)より、受け台2と当接しカッター1の刃先11が遅れて食い込む樹脂成形シートJの反カッター側J2に対する受け台2による拘束力R2=μ1×R1(摩擦力)を増大させることができる。この場合、受け台2と保持台4とが樹脂成形シートJを挟持する挟持力R1を必要以上に増大させる必要がない。
【0040】
ところで、切断時における樹脂成形シートJに対するカッター1の押圧力Q1は、刃先11が先行して食い込む樹脂成形シートJのカッター側(上端部)J1をクサビ状に押し潰しつつ切断して斜め外方へ押し広げる押圧力Q2を経由して、刃先11が遅れて食い込む樹脂成形シートJの反カッター側(下端部)J2を水平方向へ拡張させる引張力Q3として作用する。
【0041】
そのため、クサビ状に形成されたカッター1の刃先11が樹脂成形シートJのカッター側J1に食い込むとき、刃先11が樹脂成形シートJのカッター側J1をクサビ状に押し潰しつつ切断することに伴って、カッター1の刃先11が遅れて食い込む樹脂成形シートJの反カッター側J2を切断ラインSLに対して直交する水平方向へ拡張させる引張力Q3を、受け台2の増大した拘束力R2(摩擦力)によって、効果的に打ち消すことができる。
【0042】
したがって、受け台2と保持台4とが樹脂成形シートJを挟持する挟持力R1を必要以上に増大させることなく、樹脂成形シートJの反カッター側J2を水平方向へ拡張させる引張力Q3を打ち消すことができ、樹脂成形シートJの反カッター側J2の破断を遅らせ又は回避させることができる。その結果、加熱成形された複数の樹脂成形品JSを有する樹脂成形シートJを所定の長さLに切断する際、樹脂成形シートJの反カッター側J2の破断に伴う割れや切粉の発生を簡単に低減又は回避できる。
【0043】
以上のことから、樹脂成形シートJの反カッター側J2を切断ラインSLに沿ってカッター側J1より強く拘束し、カッター1の刃先11が樹脂成形シートJのカッター側J1に食い込むとき、樹脂成形シートJの反カッター側J2を水平方向へ拡張させる引張力Q3を打ち消すことによって、樹脂成形シートJの反カッター側J2の破断を遅らせ又は回避させることができる。その結果、加熱成形された複数の樹脂成形品JSを有する樹脂成形シートJを所定の長さに切断する際、樹脂成形シートJの反カッター側J2の破断に伴う割れや切粉の発生を低減又は回避できる。よって、本実施形態によれば、加熱成形された複数の樹脂成形品JSを有する樹脂成形シートJを所定の長さに切断する際、簡単な構造で割れや切粉の発生を低減又は回避できる樹脂成形シート切断装置10を提供することができる。
【0044】
次に、本樹脂成形シート切断装置10において、受け台2には、樹脂成形シートJに当接する当接部21を支持する支持部231が少なくともシート幅の範囲で略同一断面に形成された支持フレーム部材23を備え、支持フレーム部材23の両端部232には、受け台2が保持台4に近接して樹脂成形シートJを挟持する挟持位置K3と、受け台2が保持台4から離間して樹脂成形シートJを通過させる開放位置K4との間で、受け台2を上下動させる昇降装置7が連結されていることが好ましい。ここでは、
図2、
図3に示すように、昇降装置7には、シリンダロッド71がシリンダケース72から上方へ伸長する流体圧シリンダ装置7Sを用いているが、必ずしも、流体圧シリンダ装置7Sに限定する必要はない。
【0045】
また、
図3、
図4A、
図4Bに示すように、支持フレーム部材23は、略矩形状断面に形成され、シート幅外方まで水平状に延設されている。支持フレーム部材23の上端部には、切断溝22の溝幅以上の厚さの薄肉部234が形成され、切断溝22を隔てて上流側と下流側の2つに分割された受け台2が、薄肉部234を挟んで締結されている。受け台2には、上下方向の荷重を薄肉部234の上端面に伝達する段差部24が形成されている。支持部材23と受け台2の下端面25との間には、微小な隙間が形成されている。ここでは、支持フレーム部材23の下端部は、両端部232まで直線状に形成されている。
【0046】
また、
図2、
図3に示すように、本樹脂成形シート切断装置10には、所定の板厚でシート幅方向に延設されたベース部61と、ベース部61の両端61Tで上方へ起立する一対の側壁部62と、側壁部62の上端同士を連結する上フレーム部622と、を有する装置本体6を備えている。シリンダロッド71の先端部には、支持フレーム部材23の両端部232が連結ブラケット233を介して連結され、シリンダケース72は、ベース部61の両端61Tに締結されている。
【0047】
また、ベース部61には、流体圧シリンダ装置7Sの案内部材として、シリンダケース72を挟んで一対のガイドブッシュ73が固定されている。このガイドブッシュ73には、連結ブラケット233に連結された一対のガイド棒74がそれぞれ挿通され、受け台2の挟持位置K3における位置精度を高めている。
【0048】
以上の構成から、樹脂成形シートJを切断するため、昇降装置7が作動し、受け台2が保持台4に近接して樹脂成形シートJを挟持する際、受け台2における樹脂成形シートJに当接する当接部21の撓み量を、少なくともシート幅の範囲で略同一断面に形成された支持部231の剛性によって略均一に低減させることができる。そのため、受け台2と保持台4とが、樹脂成形シートJを切断ラインSLに沿って略均一に拘束し、切断時の割れや切粉の発生をより一層安定して低減又は回避させることができる。
【0049】
また、樹脂成形シートJの切断後には、昇降装置7が作動し、受け台2を保持台4から離間した開放位置K4へ移動させる。これによって、切断後の樹脂成形シートJを受け台2と保持台4との間から送り方向へ通過させ、樹脂成形シートJを次の切断位置へ搬送させることができる。なお、受け台2の下流側には、所定の長さLに切断された樹脂成形シートを載置する載置テーブル64を備えている。切断された複数の樹脂成形品JSを有する樹脂成形シートJは、載置テーブル64上で上下方向に複数枚積層されて、一時保管される。また、受け台2の上流側には、搬送する樹脂成形シートJを受け台2と干渉させずに通過させる案内ベルト65を備えている。樹脂成形シートJは、案内ベルト65の上面を滑って移動することができる。
【0050】
次に、
図3、
図4A、
図4Bに示すように、支持フレーム部材23の支持部231には、少なくともシート幅の範囲で両端部232より所定の幅で拡張された拡幅部235を備えたことが好ましい。ここでは、拡幅部235の拡幅方向は、上下方向であるが、必ずしも上下方向に限らず、水平方向又は上下方向と上下方向の両方向でも良い。この場合、受け台2における樹脂成形シートJに当接する当接部21の撓み量を、拡幅部235の剛性によってより一層均一に低減させることができる。そのため、受け台2と保持台4とが、樹脂成形シートJを切断ラインSLに沿ってより一層均一に拘束し、切断時の割れや切粉の発生をより一層安定して低減又は回避させることができる。
【0051】
次に、カッター1は、薄板状に形成された円形刃1Mであることが好ましい。なお、円形刃1Mの刃先角θは、3~10°程度がより好ましい。この場合、カッター1(1M)の刃先11が樹脂成形シートJのカッター側J1に食い込むとき、カッター1(1M)の刃先11が先行して食い込む樹脂成形シートJのカッター側J1をクサビ状に押し潰す潰し量が減少することになる。そして、カッター1(1M)の刃先11が遅れて食い込む樹脂成形シートJの反カッター側J2を水平方向へ拡張させる引張力Q3を低減させることができる。そのため、受け台2と保持台4とが切断ラインSLに沿って樹脂成形シートJをより一層強く拘束することができる。これによって、樹脂成形シートJの反カッター側J2の破断をより一層遅らせ又はより確実に回避させることができる。
【0052】
また、カッター1は、薄板状に形成された円形刃1Mであり、円形刃1Mをシート幅方向外方における後退位置K1から反対側の前進位置K2まで切断ラインSLに沿って往復移動させる駆動機構5を備えたことが好ましい。この場合、円形刃1Mが後退位置K1から前進位置K2へ移動するときに樹脂成形シートJを切断する刃先11の位置と、次の切断のため、円形刃1Mが前進位置K2から後退位置K1へ移動するときに樹脂成形シートJを切断する刃先11の位置とを、異なる位置に別けることができ、刃先11の耐久性が向上する。その結果、加熱成形された複数の樹脂成形品JSを有する樹脂成形シートJを所定の長さに切断する際、割れや切粉の発生をより一層長期間低減又は回避できる。
【0053】
次に、保持台4は、駆動機構5の固定部53に連結され、カッター1は、駆動機構5の可動部51に把持ブラケット52を介して高さ調節可能に連結されていることが好ましい。ここでは、
図2~
図4Aに示すように、駆動機構5には、シート幅方向に延設され外形が略矩形状断面に形成された固定部53と、固定部53に沿ってシート幅方向へ往復移動可能に形成された可動部51とを備えたロッドレスシリンダ5Sを用いているが、必ずしもロッドレスシリンダ5Sに限定する必要はない。
【0054】
なお、把持ブラケット52は、可動部51にネジ締結される第1ブラケット521と、第1ブラケット521にネジ締結され第1ブラケット521との間に円形刃1Mを挟持する第2ブラケット522と、を備えている。第1ブラケット521と第2ブラケット522とをネジ締結するネジ部材は、円形刃1Mの中心部に挿通して締結する第1ネジ12と、円形刃1Mの外周縁の外方で締結する複数の第2ネジ13とを備えている。また、可動部51には、可動部51に固定されたガイド部材511に沿って第1ブラケット521を上下動させる押しネジ523が回動可能に係合されている。そのため、第1ブラケット521と第2ブラケット522との間に円形刃1Mを挟持した状態で、押しネジ523を回動させることによって、可動部51に対する円形刃1Mの上下位置を調節することができる。
【0055】
以上の構成から、可動部51に対する把持ブラケット52の高さを調節することによって、保持台4における樹脂成形シートJと当接する当接部41からカッター1の刃先11が突出する刃先の突出量αを、簡単に調節することができる。そのため、樹脂成形シートJの板厚等に応じて、樹脂成形シートJに対する最適な切断が可能なカッター1の刃先11の食い込み量を、適宜調節することができる。その結果、板厚等が異なる複数種類の樹脂成形シートJに対して、切断時の割れや切粉の発生を簡単に低減又は回避させることができる。
【0056】
次に、保持台4には、樹脂成形シートJに当接する当接部41から上方へ起立する立壁部43が把持ブラケット52の移動軌跡に沿って所定の幅で形成され、立壁部43には、カッター1の前進位置K2又は後退位置K1に対応して把持ブラケット52の操作用切欠き部431が形成されていることが好ましい。
【0057】
ここでは、
図3、
図4Aに示すように、立壁部43は、把持ブラケット52の下流側に隣接された下流側立壁部43aと、把持ブラケット52の上流側に隣接された上流側立壁部43bとからなり、操作用切欠き部433は、上流側立壁部43bと下流側立壁部43aの両方にカッター1の後退位置K1に対応して、第1ネジ12及び第2ネジ13等を操作可能に形成されている。下流側立壁部43aには、把持ブラケット52との干渉を回避するために形成された階段状の屈曲部を補強する補強板431、432が接合されている。操作用切欠き部433は、補強板431、432にも形成されている。
【0058】
以上の構成から、操作用切欠き部431が形成されたカッター1の前進位置K2又は後退位置K1にて、保持台4を駆動機構5の固定部53から取り外すことなく把持ブラケット52の締結ネジを操作して、簡単にカッター1を着脱又は刃先11の切断位置を変更させることができる。そのため、樹脂成形シートJの切断状況を観察しながら、必要な時期にカッター1の交換や切断する刃先11の位置を迅速に変更することができる。その結果、刃先11の摩耗や欠損に伴う割れや切粉の発生又は増加を、未然に回避することができる。また、立壁部43が把持ブラケット52の移動軌跡に沿って所定の幅で形成されたことによって、保持台4の剛性をシート幅方向にて均一化させることができる。
【0059】
なお、
図2、
図3に示すように、駆動機構5(5S)の固定部53は、シート幅方向の両端部531にて、ボールねじ624とナット部625から成るネジ機構を介して、装置本体6の側壁部62に上下動可能に連結されている。両方のボールねじ624の上端部には、互いにチェーンで連結されたプーリ626が形成され、一方のボールねじ624には、ハンドル623が連結されている。例えば、樹脂成形シートJに対する樹脂成形品JSの突出方向や突出量等に応じて、ハンドル623を回動させることによって、装置本体6に対する保持台4及び駆動機構5の高さを変更することができる。
【0060】
また、
図2、
図3に示すように、装置本体6は、床面FLに設置する基台63上にシート送り方向へ往復移動可能に搭載されている。具体的には、装置本体6におけるベース部61の両端61Tには、移動用のローラ体612が装着されたローラ支持部611が連結されている。ローラ支持部611には、基台63にシート送り方向へ延設されたボールねじ632と係合するナット部613が形成されている。また、基台63には、ローラ体612をシート送り方向に案内するレール部631が延設され、ボールねじ632を回動させる駆動モータ635が設置されている。ボールねじ632の先端部には、プーリ633が形成され、プーリ633は、駆動ベルト634を介して駆動モータ635と連結されている。
【0061】
これよって、駆動モータ635を作動させて、ボールねじ632を回動させ、ボールねじ632に係合するナット部613を介して装置本体63をシート送り方向へ移動させることができる。例えば、ロットの切断開始時に、製品毎に設定した送り方向前進位置へ装置本体6を移動させて、樹脂成形シートJの端末を切断した後、
図2に示す切断位置へ戻して、以後の切断を行う。以後の切断において、加熱成形された複数の樹脂成形品JSを有する樹脂成形シートJを所定の長さLに切断することができる。
【0062】
(変形例)
以上、本実施形態に係る樹脂成形シート切断装置10を詳細に説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、変形例に係る本樹脂成形シート切断装置10Bでは、
図7、
図8に示すように、受け台2Bの当接部21Bに備えた摩擦手段21Mには、先端部211が樹脂成形シートJに鋭角状に食い込む突起部21Tが切断ラインSLに沿って形成されていても良い。なお、本樹脂成形シート切断装置10Bは、上記以外の構成では、前述した樹脂成形シート切断装置10と共通する。
【0063】
この場合には、カッター1が樹脂成形シートJを切断する際、突起部21Tの先端部211が樹脂成形シートJに鋭角状に食い込むことによって、受け台2と当接しカッター1の刃先11が遅れて食い込む樹脂成形シートJの反カッター側J2に対する受け台2Bによる拘束力R2=μ1×R1(摩擦力)をより一層増大させ、樹脂成形シートJの反カッター側J2の破断を遅らせ又は回避させることができる。この場合でも、突起部21Tの先端部211が樹脂成形シートJに鋭角状に食い込むことによって、食い込み力が減少し、受け台2Bと保持台4とが樹脂成形シートJを挟持する挟持力R1を必要以上に増大させることがない。その結果、樹脂成形シートJの反カッター側J2をより簡単な構造でより強く拘束させ、樹脂成形シートJの切断時における割れや切粉の発生をより一層低減又は回避させることができる。
【0064】
なお、突起部21Tは、先端部211が鋭角状に形成された角錐状又は円錐状の微小突起の形状で切断ラインSLに沿って複数配置しても良いし、先端部211が鋭角状に形成された三角ビードの形状で切断ラインSLに沿って延設しても良い。三角ビードの突起部21Tは、シート幅の範囲で一列で連続状に形成しても、シート幅の範囲で複数列で連続状に形成しても良い。例えば、四角錐又は三角ビードの突起部21Tでは、切断溝22に隣接した突起部21Tの先端部211が樹脂成形シートJに鋭角状に食い込むとき、樹脂成形シートJの反カッター側J2を切断ラインSL側へ押し込む押込み力R3が作用する。この押込み力R3によって、樹脂成形シートJの反カッター側J2の破断をより一層遅らせ又は回避させることができる。
【0065】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る樹脂成形シート切断装置10、10Bによれば、受け台2と対向する位置には、カッター1の切断ラインSLを挟んで樹脂成形シートJを受け台2との間で挟持する保持台4を備え、受け台2の樹脂成形シートJと当接する当接部21には、樹脂成形シートJに対する摩擦係数μ1が保持台4の樹脂成形シートJと当接する当接部41における樹脂成形シートJに対する摩擦係数μ2より大きく形成された摩擦手段21Mを備えたので、加熱成形された複数の樹脂成形品JSを有する樹脂成形シートJを所定の長さに切断する際、保持台4と当接しカッター1の刃先11が先行して食い込む樹脂成形シートJのカッター側J1に対する保持台4による拘束力R4=μ2×R1(摩擦力)より、受け台2と当接しカッター1の刃先11が遅れて食い込む樹脂成形シートJの反カッター側J2に対する受け台2による拘束力R2=μ1×R1(摩擦力)を増大させることができる。この場合、受け台2と保持台4とが樹脂成形シートJを挟持する挟持力R1を必要以上に増大させる必要がない。
【0066】
そのため、クサビ状に形成されたカッター1の刃先11が樹脂成形シートJのカッター側J1に食い込むとき、刃先11が樹脂成形シートJのカッター側J1をクサビ状に押し潰しつつ切断することに伴って、カッター1の刃先11が遅れて食い込む樹脂成形シートJの反カッター側J2を切断ラインSLに対して直交する水平方向へ拡張させる引張力Q3を、受け台2の増大した拘束力R2(摩擦力)によって、効果的に打ち消すことができる。
【0067】
したがって、受け台2と保持台4とが樹脂成形シートJを挟持する挟持力R1を必要以上に増大させることなく、樹脂成形シートJの反カッター側J2を水平方向へ拡張させる引張力Q3を打ち消すことができ、樹脂成形シートJの反カッター側J2の破断を遅らせ又は回避させることができる。その結果、加熱成形された複数の樹脂成形品JSを有する樹脂成形シートJを所定の長さに切断する際、樹脂成形シートJの反カッター側J2の破断に伴う割れや切粉の発生を、簡単な構造で低減又は回避できる。
【0068】
よって、本実施形態によれば、加熱成形された複数の樹脂成形品JSを有する樹脂成形シートJを所定の長さに切断する際、簡単な構造で割れや切粉の発生を低減又は回避できる樹脂成形シート切断装置10、10Bを提供することができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、摩擦手段21Mには、先端部211が樹脂成形シートに鋭角状に食い込む突起部21Tが切断ラインSLに沿って形成されているので、カッター1が樹脂成形シートJを切断する際、突起部21Tの先端部211が樹脂成形シートJに鋭角状に食い込むことによって、受け台2と当接しカッター1の刃先11が遅れて食い込む樹脂成形シートJの反カッター側J2に対する受け台2による拘束力R2=μ1×R1(摩擦力)をより一層増大させ、樹脂成形シートJの反カッター側J2の破断を遅らせ又は回避させることができる。この場合でも、突起部21Tの先端部211が樹脂成形シートJに鋭角状に食い込むことによって、食い込み力が減少し、受け台2Bと保持台4とが樹脂成形シートJを挟持する挟持力R1を必要以上に増大させることがない。その結果、樹脂成形シートJの反カッター側J2をより簡単且つ強く拘束させ、樹脂成形シートJの切断時における割れや切粉の発生をより一層低減又は回避させることができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、受け台2には、樹脂成形シートJに当接する当接部21を支持する支持部231が少なくともシート幅の範囲で略同一断面に形成された支持フレーム部材23を備え、支持フレーム部材23の両端部232には、受け台2が保持台4に近接して樹脂成形シートJを挟持する挟持位置K3と、受け台2が保持台4から離間して樹脂成形シートJを通過させる開放位置K4との間で、受け台2を上下動させる昇降装置7が連結されているので、樹脂成形シートJを切断するため、昇降装置7が作動し、受け台2が保持台4に近接して樹脂成形シートJを挟持する際、受け台2における樹脂成形シートJに当接する当接部21の撓み量を、少なくともシート幅の範囲で略同一断面に形成された支持部231の剛性によって低減させることができる。そのため、受け台2と保持台4とが、樹脂成形シートJを切断ラインSLに沿って略均一に拘束し、切断時の割れや切粉の発生をより一層安定して低減又は回避させることができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、支持フレーム部材23の支持部231には、少なくともシート幅の範囲で両端部232より所定の幅で拡張された拡幅部235を備えたので、受け台2における樹脂成形シートJに当接する当接部21の撓み量を、拡幅部235の剛性によってより一層均一に低減させることができる。そのため、受け台2と保持台4とが、樹脂成形シートJを切断ラインSLに沿ってより一層均一に拘束し、切断時の割れや切粉の発生をより一層安定して低減又は回避させることができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、カッター1は、薄板状に形成された円形刃1Mであるので、カッター1(1M)の刃先11が樹脂成形シートJのカッター側J1に食い込むとき、カッター1(1M)の刃先11が先行して食い込む樹脂成形シートJのカッター側J1をクサビ状に押し潰す潰し量が減少して、カッター1(1M)の刃先11が遅れて食い込む樹脂成形シートJの反カッター側J2を水平方向へ拡張させる引張力Q3を低減させることができる。そのため、受け台2と保持台4とが切断ラインSLに沿って樹脂成形シートJをより一層強く拘束することができ、樹脂成形シートJの反カッター側J2の破断をより一層遅らせ又はより確実に回避させることができる。
【0073】
また、カッター1は、薄板状に形成された円形刃1Mであり、円形刃1Mをシート幅方向外方における後退位置K1から反対側の前進位置K2まで切断ラインSLに沿って往復移動させる駆動機構5を備えたので、円形刃1Mが後退位置K1から前進位置K2へ移動するときに樹脂成形シートJを切断する刃先11の位置と、次の切断のため、円形刃1Mが前進位置K2から後退位置K1へ移動するときに樹脂成形シートJを切断する刃先11の位置とを、異なる位置に別けることができ、刃先11の耐久性を向上させることもできる。その結果、加熱成形された複数の樹脂成形品JSを有する樹脂成形シートJを所定の長さに切断する際、割れや切粉の発生をより一層長期間低減又は回避できる。
【0074】
また、本実施形態によれば、保持台4は、駆動機構5の固定部53に連結され、カッター1は、駆動機構5の可動部51に把持ブラケット52を介して高さ調節可能に連結されているので、可動部51に対する把持ブラケット52の高さを調節することによって、保持台4における樹脂成形シートJに対する当接部41からカッター1の刃先11が突出する刃先の突出量αを、簡単に調節することができる。そのため、樹脂成形シートJの板厚等に応じて、樹脂成形シートJに対する最適な切断が可能なカッター1の刃先11の食い込み量を、適宜調節することができる。その結果、板厚等が異なる複数種類の樹脂成形シートJに対して、切断時の割れや切粉の発生を簡単に低減又は回避させることができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、保持台4には、樹脂成形シートJに当接する当接部41から上方へ起立する立壁部43が把持ブラケット52の移動軌跡に沿って所定の幅で形成され、立壁部43には、カッター1の前進位置K2又は後退位置K1に対応して把持ブラケット52の操作用切欠き部433が形成されているので、操作用切欠き部433が形成されたカッター1の前進位置K2又は後退位置K1にて、把持ブラケット52を操作して、簡単にカッター1を着脱又は刃先11の切断位置を変更させることができる。この場合、保持台4を駆動機構5の固定部53から取り外す必要がない。そのため、樹脂成形シートJの切断状況を観察しながら、必要な時期にカッター1の交換や切断する刃先11の位置を迅速に変更することができる。その結果、刃先11の摩耗や欠損に伴う割れや切粉の発生又は増加を、未然に回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、加熱成形された複数の樹脂成形品を有する樹脂成形シートを所定の長さに切断する樹脂成形シート切断装置として利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 カッター
1M 円形刃
2、2B 受け台
3 加熱装置
3H ヒータ装置
4 保持台
5 駆動機構
7 昇降装置
10、10B 樹脂成形シート切断装置
11 刃先
21、21B 当接部
21M 摩擦手段
22 切断溝
23 支持フレーム部材
41 当接部
42 連結部
43 立壁部
51 可動部
52 把持ブラケット
53 固定部
211 先端部
231 拡幅部
231S 側壁面
232 両端部
433 操作用切欠き部
μ1、μ2 摩擦係数
K1 後退位置
K2 前進位置
K3 挟持位置
K4 開放位置
JS 樹脂成形品
J 樹脂成形シート
SL 切断ライン
【要約】
【課題】加熱成形された複数の樹脂成形品を有する樹脂成形シートを所定の長さに切断する際、簡単な構造で割れや切粉の発生を低減又は回避できる樹脂成形シート切断装置を提供する。
【解決手段】刃先11がクサビ状に形成されたカッター1と、カッターと対向して配置され加熱成形された複数の樹脂成形品JSを有する樹脂成形シートJと当接し刃先が挿入される切断溝22がシート幅方向に形成された受け台2とを備え、カッターが樹脂成形シートを切断溝の位置で所定の長さに切断する樹脂成形シート切断装置10である。受け台と対向する位置には、カッターの切断ラインSLを挟んで樹脂成形シートを受け台との間で挟持する保持台4を備え、受け台の樹脂成形シートと当接する当接部21には、樹脂成形シートに対する摩擦係数μ1が保持台の当接部41における樹脂成形シートに対する摩擦係数μ2より大きく形成された摩擦手段21Mを備えた。
【選択図】
図6