(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】連続クロマトグラフィーにおける方法
(51)【国際特許分類】
B01D 15/18 20060101AFI20220114BHJP
C07K 1/16 20060101ALI20220114BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20220114BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B01D15/18
C07K1/16
C12M1/26
C12N15/10 112Z
(21)【出願番号】P 2019545748
(86)(22)【出願日】2018-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018053845
(87)【国際公開番号】W WO2018153776
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-12-09
(32)【優先日】2017-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】サイティバ・スウェーデン・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ジヒティング
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・ヨーアン・ヘルメル・エウゲン・ベリ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス・ブローム
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-530068(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0074775(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0247806(US,A1)
【文献】米国特許第03422003(US,A)
【文献】米国特許第05071547(US,A)
【文献】中国特許出願公開第104841163(CN,A)
【文献】特表2014-532718(JP,A)
【文献】特表2014-534055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 15/18
C07K 1/16
C12M 1/26
C12N 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロースルークロマトグラフィーシステムの中のターゲットプロダクトを精製するための方法であって、前記フロースルークロマトグラフィーシステムは、フィード供給源からのフィード材料によってロードされた少なくとも第1のカラムを含み、前
記第1のカラムは、不純物の結合の後にパージされ、パージされた材料を作り出し、
前記第1のカラムからの前記パージされた材料は、再精製されることとなる前記
第1のカラムの上流に渡される、方法。
【請求項2】
前記パージされた材料を前記上流に渡すステップは、前記フィード供給源へ渡すステップである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
- 少なくとも前記第1のカラムの下流に配置される出口部センサーを提供するステップと、
- 前記フィード供給源からのフィード材料
を前記第1のカラム
にロードするステップと、
- 前記第1のカラムの前記出口部センサーによって検出される信号に基づいて不純物ブレイクスルーを検出するステップと、
- 所定の不純物ブレイクスルーが検出されるときには、前記フィード供給源から前記第1のカラムを切り離すステップと、
- パージングバッファーを使用して、部分的に精製されたフィード材料を前記第1のカラムからパージするステップと、
- 前記パージされた部分的に精製されたフィード材料を前記フィード供給源に渡すステップと
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記出口部センサ
ーは、UVセンサーであり、前記所定の不純物ブレイクスルーは、前記
第1のカラ
ムの下流のターゲットプロダクトの中の不純物の所定のパーセンテージに対応している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ターゲットプロダクトの中の不純物の前記所定のパーセンテージは、約1%、10%、20%、50%、または70%である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
UVセンサーは、提供されるそれぞれのカラムの上流に設けられており、前記方法は、前記不純物ブレイクスルーを動的に制御するステップをさらに含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記フロースルークロマトグラフィーシステムは、第2のカラムをさらに含み、前記方法は、
- 前記フィード供給源から前記第1のカラムを切り離すときに、前記フィード材料を前記第2のカラムへ方向付けするステップと、
- 前記第2のカラムの前記出口部センサーによって検出される信号に基づいて、不純物ブレイクスルーを検出するステップと、
- 所定の不純物ブレイクスルーが前記第2のカラムの前記
出口部センサーによって検出されるときに、前記フィード供給源から前記第2のカラムを切り離すステップと、
- 前記パージングバッファーを使用して、部分的に精製されたフィード材料を前記第2のカラムからパージするステップと、
- 前記第2のカラムから前記パージされた部分的に精製されたフィード材料を前記フィード供給源へ渡すステップと
をさらに含む、請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、
-
部分的に精製されたフィード材料を前記第1のカラムからパージした後に、再生バッファーを使用して前記第1のカラムを再生するステップと、
- 前記フィード供給源から前記第2のカラムを切り離すときに、前記フィード材料を前記第1のカラムへ方向付けするステップと
をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記フロースルークロマトグラフィーシステムは、少なくとも3つのクロマトグラフィーカラムを含む連続クロマトグラフィーシステムであり、少なくとも部分的に精製されたフィード材料は、不純物の結合の後に、前
記第1のカラムをフロースルーし、前記第1のカラムからの前記部分的に精製されたフィード材料は、その後に、前記部分的に精製されたフィード材料の中の不純物の結合のために、第2のカラムの上へ渡される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記フロースルークロマトグラフィーシステムの中のそれぞれのカラムを連続的にロードするステップを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
フィード供給源からのフィード材料
をロードされるかまたはロード可能である少なくとも第1のカラムを含むフロースルークロマトグラフィーシステムであって、前記フロースルークロマトグラフィーシステムは、
-
前記第1のカラムへの不純物の結合の後に前
記第1のカラムをパージし、
- 前記第1のカラムの出口部からのパージされた材料を、再精製されることとなる前記第1のカラムの上流に渡すように構成されている、フロースルークロマトグラフィーシステム。
【請求項12】
前記フロースルークロマトグラフィーシステムは、パージされた材料を前記フィード供給源へ渡すように構成されている、請求項11に記載のフロースルークロマトグラフィーシステム。
【請求項13】
前記フロースルークロマトグラフィーシステムは、少なくとも3つのクロマトグラフィーカラムを含む連続クロマトグラフィーシステムであり、前記フロースルークロマトグラフィーシステムは、さらに、
-
前記第1のカラムへの不純物の結合の後に、少なくとも部分的に精製されたフィード材料を前
記第1のカラムを通して流すように構成されており、
- 前記部分的に精製されたフィード材料の中の不純物の結合のために、前記第1のカラムからの前記部分的に精製されたフィード材料を、その後に第2のカラムへ渡すように構成されている、請求項11または12に記載のフロースルークロマトグラフィーシステム。
【請求項14】
前記フロースルークロマトグラフィーシステムは、それぞれのカラムを連続的にロードするようにさらに構成されている、請求項11から13のいずれか一項に記載のフロースルークロマトグラフィーシステム。
【請求項15】
フロースルークロマトグラフィーの中のターゲットプロダクトを精製するためのコンピュータープログラムであって、前記コンピュータープログラムは、インストラクションを含み、前記インストラクションは、少なくとも1つのプロセッサーの上で実行されるときに、前記少なくとも1つのプロセッサーが請求項1から10のいずれか一項に記載の方法を実施することを引き起こす、コンピュータープログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のフロースルークロマトグラフィーの中のターゲットプロダクトを精製するためのコンピュータープログラムを
有する、コンピューター可読ストレージ媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に定義されているようなフロースルークロマトグラフィーシステムの中のターゲットプロダクトを精製するための方法に関する。また、本発明は、フロースルークロマトグラフィーシステム、コンピュータープログラム、およびコンピューター可読のストレージ媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
フロースループロセスクロマトグラフィーの中の重要な因子は、不純物のためのクロマトグラフィーカラムの結合容量である。結合容量は、クロマトグラフィーステップの生産性およびコストに直接的に影響を及ぼす。結合容量は、動的/ブレイクスルー容量の観点から定義されるか、または、最大結合容量として定義されるかのいずれかである。動的容量は、クロマトグラフィー媒体によってパッキングされたカラムを通って不純物が流れる条件に依存しており、また、カラム体積とフィード流量との間の比率、いわゆる、滞留時間として表され得る。最大結合容量は、滞留時間が無限に長いとした場合のカラムのブレイクスルー容量を表している。
【0003】
初期のブレイクスルー容量は、不純物が流出物の中に最初に検出されるときのポイントにおいてカラムによって取り込まれた結合不純物の量として定義される。また、ブレイクスルー容量は、ブレイクスルーの所与のパーセンテージにおける容量として定義され得、ここで、そのパーセンテージは、カラムからの流出物の中に存在する結合不純物の量を表しており、フィードの中に存在する不純物のパーセントで表現される。この定義によれば、最大結合容量は、ブレイクスルーの100%におけるブレイクスルー容量に等しくなることとなり、すなわち、不純物がカラムにそれ以上結合することができないポイントにおけるブレイクスルー容量に等しくなることとなる。したがって、最大容量を決定するために、ブレイクスルー容量は、ブレイクスルーの異なるレベルにおいて測定され、ここで、レベルは、サンプルローディングの間のカラムからの流出物の中に測定される不純物の濃度のレベルによって定義される。
【0004】
多くの場合、これらの濃度は、流出物ラインの中に設置されているブレイクスルー検出器を通るフローの中の信号を連続的にモニタリングすることによって決定される。時間(または、ロードされた体積もしくは質量)に対するこれらの濃度(信号)のプロットは、ブレイクスルー曲線と呼ばれる。クロマトグラムの上のブレイクスルーの場所およびその形状は、カラムがどの程度多くの不純物を結合することができるかということ、および、すべての吸着部位がどの程度迅速に不純物によって飽和されるかということに関係付けられる。また、任意の所与の時間において、どの程度多くの不純物がカラムに結合され得るかということを示している。
【0005】
不純物に関するブレイクスルー結合容量は、溶質の存在下において、精製プロトコルを開発するときに最適化するための最も重要なパラメーターのうちの1つである。溶質は不純物と同様の光吸着特性を有することが多いので、結合ブレイクスルー容量の決定は、退屈で骨の折れる仕事である。典型的な実験では、カラムからの流出物は、一連の微量で収集され、それは、その後に、問題のプロダクトに関して、高い分解能の分析技法(たとえば、HPLC、生物学的なアッセイ、ELISA、質量分析など)を使用して分析される。したがって、クロマトグラフィーカラムに関する結合容量の決定は、かなり複雑であり、クロマトグラフィーカラムの上へのフィード適用の間にフィード溶液濃度がランダムに変化するケースでは、真のブレイクスルー容量は、正確に測定することが不可能に近い。
【0006】
最適なプロセス条件においてカラムを動作させることを望む場合には、正確に測定することが重要である。たとえば、特定の条件下において、関心の不純物がカラム流出物の中のその濃度の特定の値(たとえば、その初期の濃度の10%)に到達するときには、フロースルークロマトグラフィーステップの最大生産性が取得されるということが示され得る。ブレイクスルー容量が、上記に説明されている方法にしたがって決定される場合には、流量および/またはクロマトグラフィー媒体特性を含む、フィード濃度またはプロセス条件のいずれかが、予測不可能な様式で時間とともに変化するのであれば、正確に10%ブレイクスルーにおいてカラムのローディングを停止することは不可能である。
【0007】
そのうえ、変化するプロセス条件の下でブレイクスルーの異なるレベルにおけるブレイクスルー容量の正確な決定は、また、連続クロマトグラフィーのケースにおいて重要である。連続クロマトグラフィーは、疑似移動床技術を使用して動作するシステムによって現実化され得、カラム同士の間の接続は、システムの中へのサンプルの連続的なフィードを促進させるために変化させられる。しかし、連続クロマトグラフィーは、移動床技術を使用して現実化され得、カラムは、サンプルの連続的なフィードを促進させるために移動させられる。
【0008】
連続クロマトグラフィーでは、いくつかの同一のカラム、または、ほとんど同一のカラムが、方法の要件に応じて、カラムが直列におよび/または並列に動作させられることを可能にする配置で接続されている。したがって、すべてのカラムは、原理的には同時に走らせられ得るが、方法のステップは時間的にシフトされた状態になっている。手順が繰り返され得、それぞれのカラムが、プロセスの中に何回か、ロードされ、クリーニングされ、および再生されるようになっている。「従来の」クロマトグラフィーと比較すると、従来のクロマトグラフィーでは、カラムが別のバッチのために使用され得る前に、単一のクロマトグラフィーサイクルが、いくつかの連続したステップ(たとえば、サンプルローディング、ストリップ、定置洗浄(CIP)、および再平衡など)に基づいているが、複数の同一のカラムに基づく連続クロマトグラフィーでは、すべてのこれらのステップが、それぞれ異なるカラムの上で同時に起こる。
【0009】
連続クロマトグラフィー動作は、クロマトグラフィー樹脂のより良好な利用、プロセッシング時間の低減、および、バッファー要件の低減を結果として生じさせ、そのすべては、プロセス経済性に利益を与える。
【0010】
連続クロマトグラフィーは、周期的向流プロセスとして例示され得る。その理由は、システムを含む周期的にすべてのクロマトグラフィーカラムが、サンプルフローと反対側の方向に同時に移動させられるからである。カラムの明らかな移動が、カラムへの/カラムからの入口および出口ストリームの適当な再方向付けによって現実化される。
【0011】
歴史的に、信頼性の高い連続的なプロセスに関する本質的な要因は、
1) 使用されるカラムの品質、および、より具体的には、カラム同士の間の類似性、または、さらには同一性、
2) 一定のフィード組成、ならびに、
3) ハードウェア信頼性、たとえば、ポンプによって送達される一定の流量、バルブ機能性などである。
【0012】
カラムが同一でない場合には、連続クロマトグラフィープロセスを設計するために典型的に使用される理論的な計算は、正しくないこととなり、効率的なおよびロバストな連続クロマトグラフィープロセスを設計することは困難になることとなる。フィード濃度および流量が、予期されない様式で時間とともに変化する場合には、同じ議論が適用される。
【0013】
したがって、同一のカラムを有するスケールアップを考えるために、システムの中の信頼性の高いポンプが必須である。しかし、繰り返し可能な結果を取得するために、クロマトグラフィー媒体によってカラムをパッキングすることは、非常に複雑である。プレートの数または他のパッキング特性の小さな差であっても、最終結果に巨大な影響を有する可能性がある。そのうえ、クロマトグラフィー樹脂の容量は、典型的に樹脂寿命時間/使用法の間に変化するので、新鮮な樹脂に関して選ばれるプロセス条件は、何回か使用された樹脂には適用可能でない可能性がある。加えて、フィード溶液濃度、ひいては、不純物濃度が時間とともに変化する場合には、常にその最適で動作することとなる効率的な連続クロマトグラフィープロセスを設計することは、さらにいっそう複雑になることとなる。
【0014】
3つのまたは4つのカラムによって動作するように構成されている連続クロマトグラフィーの例は、GE Health Care製のAKTA(商標)pcc 75である(説明は、www.gelifesciences.com/AKTAから入手可能である)。
【0015】
所定の量の不純物が、たとえば、動的制御を使用して、フロースルークロマトグラフィーの間のカラムの流出物の中に検出されるケースでは、検出は、カラムの中へフィードをロードすることのストップをトリガーすることとなる。他のケースでは、センサーが流出物の中の不純物を検出するために利用可能でないときには、サンプルローディングは、所定の時間にわたって継続し、次いで、カラムは、フィード供給源から切り離される。その後に、カラムの中の部分的に精製されたフィードの残りの体積が、廃棄物として廃棄され、カラムが、将来のプロセッシングのためにフィードを受け入れるようにクリーニングおよび再調整される。結果として、オリジナルのフィード材料と比較して精製されたフィード材料の一部は廃棄される。
【0016】
したがって、フィード材料の浪費を回避するために、フロースルークロマトグラフィープロセスの効率を改善するためのプロセスを導入する必要性が存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本開示の目的は、上記に識別されている当技術分野での欠点および不利益のうちの1つまたは複数を、単独でまたは任意の組み合わせで、軽減するか、緩和するか、または排除することを求める方法およびコンピュータープログラムを実行するように構成されている方法およびデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本目的は、フロースルークロマトグラフィーシステムの中のターゲットプロダクトを精製するための方法によって実現され、フロースルークロマトグラフィーシステムは、フィード供給源からのフィード材料によってロードされる少なくとも第1のカラムを含む。少なくとも第1のカラムは、不純物の結合の後にパージされ、カラムからのパージされた材料の出口部は、その後に、フィード供給源へ渡される。
【0019】
利点は、不純物ブレイクスルーが到達されるときにカラムの中に存在している部分的に精製されたフィード材料が、廃棄されることなくフィード供給源へ再循環させられ得るということである。
【0020】
別の利点は、プロセスの効率およびフィード材料の利用が、先行技術の方法と比較して増加されるということである。
【0021】
さらなる目的および利点は、当業者によって詳細な説明から取得され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】連続クロマトグラフィーを使用してターゲットプロダクトを精製するように設計されているバイオプロセス精製システムの概観を図示する図である。
【
図2】疑似移動床技術に基づいて、任意の数のカラムを備えた連続フロースルークロマトグラフィーを図示する図である。
【
図3a】3カラムフロースルークロマトグラフィーの原理を図示する図である。
【
図3b】3カラムフロースルークロマトグラフィーの原理を図示する図である。
【
図3c】3カラムフロースルークロマトグラフィーの原理を図示する図である。
【
図4a】マルチカラムフロースルークロマトグラフィー動作と比較して、従来のバッチクロマトグラフィー動作に関する容量利用を図示する図である。
【
図4b】マルチカラムフロースルークロマトグラフィー動作と比較して、従来のバッチクロマトグラフィー動作に関する容量利用を図示する図である。
【
図4c】マルチカラムフロースルークロマトグラフィー動作と比較して、従来のバッチクロマトグラフィー動作に関する容量利用を図示する図である。
【
図4d】マルチカラムフロースルークロマトグラフィー動作と比較して、従来のバッチクロマトグラフィー動作に関する容量利用を図示する図である。
【
図5】連続クロマトグラフィーの中の2ステップブレイクスルーの概観を図示する図である。
【
図6】連続クロマトグラフィーの中の動的制御のために使用されるUV信号検出器を図示する図である。
【
図7a】単一カラムのフロースルークロマトグラフィーシステムの実施形態を図示する図である。
【
図7b】単一カラムのフロースルークロマトグラフィーシステムの実施形態を図示する図である。
【
図7c】単一カラムのフロースルークロマトグラフィーシステムの実施形態を図示する図である。
【
図8】2カラムフロースルークロマトグラフィーシステムを図示する図である。
【
図9a】4カラムフロースルークロマトグラフィーの原理を図示する図である。
【
図9b】4カラムフロースルークロマトグラフィーの原理を図示する図である。
【
図9c】4カラムフロースルークロマトグラフィーの原理を図示する図である。
【
図9d】4カラムフロースルークロマトグラフィーの原理を図示する図である。
【
図9e】4カラムフロースルークロマトグラフィーの原理を図示する図である。
【
図9f】4カラムフロースルークロマトグラフィーの原理を図示する図である。
【
図9g】4カラムフロースルークロマトグラフィーの原理を図示する図である。
【
図9h】4カラムフロースルークロマトグラフィーの原理を図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
「フィード」という用語は、分離されることとなる2つ以上の化合物を含有する液体を表している。この文脈において、「化合物」または「プロダクト」という用語は、広い意味で、分子、化学化合物、細胞などのような任意のエンティティーに関して使用されている。
【0024】
「ターゲット化合物」または「ターゲットプロダクト」という用語は、本明細書では、1つまたは複数の追加的な化合物を含む液体から分離することが望まれる任意の化合物を意味している。したがって、「ターゲット化合物」は、たとえば、薬物、診断、もしくはワクチンとして望まれる化合物、または、代替的に、1つもしくは複数の所望の化合物から除去されるべき汚染化合物もしくは望ましくない化合物であることが可能である。
【0025】
「ブレイクスルー」という用語は、吸着された望ましくない化合物または不純物が流出の中に最初に現れるときの、パッキングされたクロマトグラフィーカラムなどのような吸着材へのフィード追加の間の時点を意味している。換言すれば、フロースループロセスにおいて、「ブレイクスルー」は、ターゲット化合物の汚染がカラムからの流出の中で始まるときの時点である。
【0026】
「飽和レベル」という用語は、望ましくない化合物または不純物を吸着するために、パッキングされたクロマトグラフィーカラムなどのような吸着材がそのオリジナルの容量の一部だけを保つときの時点を意味している。
【0027】
「完全な飽和」という用語は、パッキングされたクロマトグラフィーカラムなどのような吸着材が望ましくない化合物または不純物をそれ以上吸着することができないときの時点を意味している。
【0028】
「再生」という用語は、本明細書では、吸着材を再びクロマトグラフィーの中で有用なものにするために吸着材を処理するプロセスを意味している。したがって、「再生」は、結合された望ましくない化合物または不純物の解放、および、適当な吸着バッファーとの再平衡を含むこととなる。下記に議論されることとなるように、「再生」は、定置洗浄(CIP)を含むことが可能である。
【0029】
「パージ」という用語は、本明細書では、たとえば、フィードが所望の飽和レベルにおいて切り離された後に、クロマトグラフィーカラムの中に残る1つまたは複数のターゲット化合物を除去するために適切な液体によって、クロマトグラフィーカラムなどのような吸着材を処理するプロセスを意味している。
【0030】
「樹脂」という用語は、多くの場合、それに限定されないが、イオン交換またはマルチモーダルタイプの樹脂を含む、フロースルー用途の中のフィードストリームからの不純物の除去のために使用される樹脂を意味している。
【0031】
「捕獲」という用語は、クロマトグラフィー方法の文脈において、第1のクロマトグラフィーステップを意味しており、そこでは、大量のターゲット化合物が捕獲されるか、または、フロースループロセスに関して、大量の不純物が捕獲される。
【0032】
「フロースルー」という用語は、クロマトグラフィー方法の文脈において、第1のクロマトグラフィーステップということを意味しており、そこでは、大量の望ましくない化合物または不純物が捕獲され、ターゲット化合物がカラムを通って流れる。
【0033】
フロースルーモードにおける連続クロマトグラフィーは、背景の章において説明されているように、周期的向流クロマトグラフィーを使用する連続的な下流プロセスの中のターゲットプロダクト(たとえば、ウィルス、ウィルスベクター、ウィルス様粒子(VLP)、プラスミド、および、同様のワクチンタイプの分子などだけでなく、mabおよび組み換えタンパク質、細胞培養/発酵からの生体分子、天然抽出物も)の精製の間に、不純物の除去のために使用され得る。この技術は、連続的な精製ステップを生成させるために、3つのまたは4つのクロマトグラフィーカラムを用いる。カラムは、ローディングステップと非ローディングステップ(たとえば、洗浄など)との間で切り替えられる。連続クロマトグラフィーは、設置面積を低減させることによって、および、生産性を改善することによって、プロセス強化をサポートする。加えて、連続クロマトグラフィーは、不安定な分子の精製に特に適している。その理由は、短いプロセス時間がターゲットプロダクトの安定性を確保することを助けるからである。
【0034】
図1では、分離プロセスを使用してターゲットプロダクトを精製するように構成されているバイオプロセス精製システムの概観が示されている。バイオプロセス精製システムは、細胞培養11、保持12、精製13、ウィルス不活性化14、ポリッシュ15、および送達16に関連付けられる複数のステップを含む。
【0035】
完全に連続的なプロセスにおいて、細胞培養ステップ11は、灌流タイプの培養であることが可能であり、灌流タイプの培養は、灌流培養の中の細胞成長のための栄養素の連続的な追加、および、ドレインおよび濾過を通したプロダクトおよび廃棄物の連続的な除去を含む。たとえば、交互タンジェンシャル濾過(ATF)フィルターを使用する。ステップは、生存細胞密度(VCD)のためのプロセス制御を含むことが可能であり、プロセスの中の次のステップは、VCDが事前決定された値に到達するときに開始する。VCDは、給送される細胞培養媒体のコンポーネントを培養に適合させることによって、または、特定のコンポーネントを直接的に培養に追加することによって制御され得る。代替的に、細胞培養は、バッチタイプのものである。
【0036】
ターゲットプロダクトを含有するサンプルが、たとえば、濾過、遠心分離、または別の技法によって、無細胞抽出プロセスの中で活用される。
【0037】
保持ステップ12は、プロセスの必要に応じて、たとえば、フィルターが精製ステップ13の前にインラインになっている場合には、随意的なステップである。ステップは、重量に対するプロセス制御を含むことが可能であり、プロセスの中の次のステップは、事前決定された体積値が到達されるときに、または、代替的に、特定の時間期間の後に、または、事前決定された質量が到達されるときに開始する。保持ステップは、灌流細胞培養またはバッチ培養の両方から、所定の体積の濾過されたフィードを収集するために使用され得る。
【0038】
精製ステップ13は、好ましくは、精製ステップの前にインラインになっているフィルターを有することが可能である連続クロマトグラフィーを含む。連続クロマトグラフィーは、周期的向流クロマトグラフィーとして実行され得、細胞培養ステップ11からの(直接的にまたは保持ステップ12を介して)サンプルの連続的なフィードが、ターゲットプロダクトを含有した状態になっている。1つの実施形態では、ターゲットプロダクトは、フロースループロセスから取得される。別の実施形態では、ターゲットプロダクトは、捕獲されたターゲットプロダクトを溶出させることによって取得される。そのうえ、精製ステップは、複数のバッチ溶出または複数のバッチフロースループロセスを含むことが可能であり、インラインUVセンサーを使用するプロセス制御は、フィード濃度および樹脂容量の変動をハンドリングする。次のステップは、事前決定された量の値(たとえば、体積、質量、または時間)が到達されるときに開始する。
【0039】
随意的なウィルス不活性化ステップ14では、ウィルス不活性化のための異なるオプションが、プロセスの必要に応じて利用可能である。1つのオプションは、ホールドアップタンクの中で30~60分にわたって低いpHを伴うバッチモードを使用することである。ステップは、体積、時間、温度、およびpHに対するプロセス制御を含むことが可能である。次のステップは、事前決定された時間が到達されるときに開始する。たとえば、活性ウィルスが所望のターゲットプロダクトであるときには、ウィルス不活性化ステップ14は省略される。
【0040】
ポリッシュステップ15は、接続されているバッチステップを伴うストレートスループロセッシング(STP)、すなわち、フロースループロセス、または、連続的なロードステップを伴う連続クロマトグラフィー、または、それらの組み合わせであることが可能である。ステップは、UV、フロー、および体積に関するプロセス制御を含むことが可能であり、次のステップは、事前決定された体積および量が到達されるときに開始し、代替的に、タイムアウトに到達されるときに開始する。
【0041】
送達ステップ16は、限外濾過ステップの前に、ウィルス除去ステップ、たとえば、ウィルスフィルターを含むことが可能である。送達ステップは、ポリッシュステップからのサンプルのバッチ追加のための濃縮ステップとして使用され得る。送達ステップは、プロダクトの連続的な送達またはバッチ送達を含むことが可能であり、また、廃棄物の連続的な除去またはバッチ除去を含むことが可能である。ステップは、pH、伝導度、吸光度、体積、および圧力に関するプロセス制御を含むことが可能であり、送達は、所定の環境の中の事前決定されたプロダクト濃度が到達されるときに実現される。
【0042】
オートメーションレイヤー(automation layer)17が、プロセスの中の次のステップのための決定ポイントをハンドリングするために使用される。異なるタイプのセンサー(図示せず)(インラインセンサーおよびオフラインセンサーの両方)が、プロセスフローの中へ一体化され、決定ポイントをハンドリングするために使用され得るデータをオートメーションレイヤー17に提供するために使用され得る異なるパラメーターをモニタリングする。センサーは、それに限定されないが、フロー、VCD、重量、圧力、UV、体積、pH、伝導度、吸光度などだけを測定することを含む。
【0043】
UVは、精製されているサンプルの組成を検出するためにモニタリングされ得るパラメーターの例であるということが留意されるべきである。しかし、他の周波数範囲、たとえば、IR、蛍光、X線などにおいて動作する他のパラメーターが使用され得る。
【0044】
以前に述べられているように、精製ステップ13および/またはポリッシュステップ15は、
図2に図示されているように、連続クロマトグラフィー20を含むことが可能である。ターゲットプロダクトを含有するフィード材料18が、入口部21を介して連続クロマトグラフィー20の中へ給送され、ターゲットプロダクトが、出口部22において利用可能である。連続クロマトグラフィー20は、複数のカラムA、B、…、Nを含み、それぞれのカラムは、カラム入口部23およびカラム出口部24を設けられている。それぞれのカラムのカラム入口部23およびカラム出口部24は、バルブシステム25に接続されており、バルブシステム25は、ターゲットプロダクトの連続的な精製を実現するために、入口部21および出口部22に循環的にカラムを接続するように構成されている。3つのカラムを有するシステム構成の例が、
図3a~
図3cに関連して説明されている。
【0045】
連続クロマトグラフィー20は、必要とされる動作を実施することができるように、バッファー入口部21'および廃棄物出口部27をさらに設けられている。インラインセンサー28が、それぞれのカラムのカラム出口部24の後に設けられ得、または、プロセスフローに割り当てられ、バルブシステム25の中へ一体化され得る。UVなどのような重要なパラメーターが、下記に説明されているように、プロセスを制御するために測定される。別のインラインセンサー28'が、それぞれのカラムの性能を直接的に評価することができるように、それぞれのカラムのカラム入口部23の前に設けられ得る。また、インライン入口部センサー26が、連続クロマトグラフィー20の中へ給送されるフィード材料の組成をモニタリングするために設けられ得る。
【0046】
また、連続クロマトグラフィーは、オフラインセンサー29を含むことが可能であり、オフラインセンサー29は、プロセスから材料を抽出するように設計されており、また、材料が廃棄物として廃棄される前に、選択されたパラメーターを評価するように設計されている。
【0047】
加えて、バルブシステム25は、パージ出口部19を設けられており、パージ出口部19は、部分的に精製されたフィード材料をフィード18へ戻すように構成されている。部分的に精製されたフィード材料は、
図3a~
図3cに例示されているように、不純物に関するブレイクスルーポイントに到達したカラムからそれを再循環させることによって提供される。本開示では、パージ出口部19は、フィード18に接続されていることが概略的に示されているが、1つのカラムからのパージフローは、他の実施形態では、他の方式でフィードフロー21と組み合わせられ得、または、後続のサイクルの中でフィードを受け入れるカラムの上へ直接的にロードされ得る。
【0048】
連続フロースルークロマトグラフィーの後ろにある原理は、ローディングゾーンの中に少なくとも2つのカラムを維持することであり、ローディングゾーンは、プロダクトの中の不純物のリスクなしに第1のカラムのオーバーローディングを可能にする。その理由は、
図4a~
図4dに関連して説明されているように、不純物のブレイクスルーが、下流カラムによって捕捉されることとなるからである。
【0049】
連続フロースルークロマトグラフィーは、少なくとも3つのカラムを含み、3カラム(3C)セットアップの中の動作の原理が、
図3a~
図3cに関連して説明されている。3Cセットアップは、2つの並列フローを特徴とする。1つは、ローディングゾーンの中の2つのカラムのローディングのためのものであり、1つは、非ローディングステップ、たとえば、第3のカラムのパージングおよび再生のためのものである。
【0050】
図3aは、ステップ1aおよび1bを図示しており、
図3aでは、カラムAおよびBは、ローディングゾーンの中にある。フィード材料は、フィードから提供され、カラムAは、カラムBがカラムAからの不純物ブレイクスルーを捕捉するので、プロダクトを汚染することなくオーバーロードされ得る。このように、樹脂結合容量の利用が最大化される。プロダクトは、カラムAおよびBを通って流れ、カラムBの出口部から利用可能である。カラムCは、不純物によるブレイクスルーのポイントまでオーバーロードされており、また、所定の体積の部分的に精製されたフィード材料を含有しており、部分的に精製されたフィード材料は、ステップ1aに図示されているように、フィードに渡される。ステップ1bは、部分的に精製されたフィード材料がカラムからパージされ、フィードへ戻され、その後に、カラムCが再調整されているときの状況を図示している。
【0051】
図3bは、ステップ2aおよび2bを図示しており、
図3bでは、オーバーロードされたカラムAは切り替えられ、カラムBが、第1のカラムになっており、カラムCが、ローディングゾーンの中の第2のカラムになっている。プロダクトは、カラムBおよびCを通って流れ、カラムCの出口部から利用可能である。オーバーロードされカラムAは、ここで、非ローディングステップ、たとえば、部分的に精製されたフィード材料をパージングすること(ステップ2a)および再生すること(ステップ2b)を受けることとなる。
【0052】
図3cは、ステップ3aおよび3bを図示しており、
図3cでは、ローディングゾーンの中のオーバーロードされたカラムBが切り替えられる。ここで、カラムCが、第1のカラムになっており、カラムAが、ローディングゾーンの中の第2のカラムになっており、一方、カラムBは、パージング(ステップ3a)および再生(ステップ3b)を受ける。これらのステップは、必要とされるターゲットプロダクト体積、質量、または量が到達されるまで(または、樹脂寿命時間が到達され、カラムが再パッキングされるかまたは交換されることを必要とするまで)、循環的な様式で繰り返される。
【0053】
図2に図示されている連続フロースルークロマトグラフィーは、4つ以上のカラムを利用することが可能であり、4カラム(4C)セットアップでは、同じ原理が適用される。しかし、非ローディングステップは、3Cセットアップの中の限定になる可能性があり、非ローディングステップは、2つのカラムにスプリットされ得、4Cセットアップの中の第3の流路を利用して並列に実行され得る。4Cセットアップは、ローディングステップおよび非ローディングステップのバランスをとることを可能にする。より多くのカラムが、よりフレキシブルなシステムにつながることとなるが、バルブシステム25の複雑性は、ますます悪化することになる。しかし、いくつかの連続クロマトグラフィーは、17個以上のカラムを有している。
【0054】
図4a~
図4bは、マルチカラムフロースルークロマトグラフィー動作と比較した従来のバッチクロマトグラフィー動作に関する容量利用を図示している。
図4aは、クロマトグラフィー樹脂の合計の利用可能な不純物容量40を図示しており、不純物ブレイクスルー曲線は、30によって示されている。グラフから明らかであるように、小さい体積がロードされるときには、不純物は、樹脂の中に捕獲されることとなるが、大きい体積において、不純物のかなりの部分は、ブレイクスルーすることとなり、バッチ動作の中のプロダクトを汚染する。
【0055】
図4bは、10%不純物ブレイクスルーにおけるサンプルロード41を図示している。ブレイクスルー曲線30の下方のプロダクトは、別のカラムの中で再使用されない場合には、廃棄されることとなる。典型的にバッチ動作の中で使用される不純物容量42が、
図4cに図示されており、連続クロマトグラフィーの中で使用される不純物容量43が、
図4dに図示されている。不純物ブレイクスルー44は、ローディングゾーンの中の下流のカラムによって捕獲されたということに留意されたい。
【0056】
フィード組成のバリエーションを可能にする動的制御機能性が、連続クロマトグラフィーの中で実装され得る。動的制御の原理は、ブレイクスルーにおけるそれぞれのカラムの前および後のUV信号の相対的な差に基づいている。飽和したカラムに関するベースラインUVと100%ブレイクスルーにおけるUV信号との間の差は、ΔUVmaxとして定義され、ΔUVは、式(1)を使用して計算され、
【0057】
【0058】
ここで、ΔUV=不純物と抗体との間のUV280nm信号の差(%)、UVBT=不純物ブレイクスルーの間のポイントにおいて決定されるUV280nm値(mAu)、Baseline=不純物ブレイクスルーの前の抗体および媒体のUV280nm値(mAu)、ならびに、UVsample=不純物、媒体、媒体コンポーネント、および抗体のUV280nm値(mAu)である。
【0059】
ローディングゾーンの中の第1のカラムの前のUV吸光度(すなわち、UVsample)は、抗体、宿主細胞由来タンパク質(HCP)、DNA、および媒体コンポーネントを含む、ロードされた材料の中の合計のUV吸光度を反映することとなる。第1のカラムの後のUV吸光度(すなわち、UVBT)は、ブレイクスルーが起こらなかった限りにおいて、初期には、プロダクト(すなわち、この例では抗体)だけを反映することとなる。背景からのUV吸光度は、ベースラインレベルとして定義される。ブレイクスルーのレベルは、ベースラインと、カラムが飽和し、すべての不純物(すなわち、宿主細胞由来タンパク質(HCP)、DNA、および媒体コンポーネント)がカラムを通過するレベルとの間で、パーセンテージでの相対的な差(%ΔUV)として測定される。
【0060】
図5は、2ステップブレイクスルーを図示しており、動的制御に関して使用される中央UV信号を表示している。曲線50は、UV
BT(すなわち、カラム後の不純物ブレイクスルー曲線)を示しており、曲線51は、UV
sample(すなわち、カラム前のフィードライン)を示しており、参照番号55は、ベースラインを示している。参照番号52は、カラムの中へ給送されているサンプルの中のターゲットプロダクトおよび不純物からの合計の信号を示しており、参照番号53は、ターゲットプロダクト(背景)からの信号を示しており、参照番号54は、ΔUV
max(不純物からの信号)を示している。
【0061】
完全にロードされたカラムに関するベースラインUV55と100%不純物ブレイクスルーにおけるUV信号との間の差は、ΔUV
maxとして定義され、ここで、所望のレベルは、プロセス依存性である。連続フロースルークロマトグラフィーは、別個のカラムではなくプロセスストリームに割り当てられたUV検出器を使用することが可能である。したがって、それぞれのブレイクスルー曲線は、
図6に図示されているように、2つのUV検出器からの信号に基づいて発生させられ得る。
【0062】
ブレイクスルー曲線(破線の曲線50)およびベースライン55は、
図5に示されているものと同じである。曲線60は、カラムの中へ給送されるサンプルのUVであり、曲線61は、カラムの後の不純物ブレイクスルーのUVであり、曲線62は、ターゲットプロダクトのUVである。
【0063】
ΔUVは、第1のカラムの後に1~70%に設定され得る。その理由は、不純物が、第2のカラムの中で捕獲されることとなり、システムの効率が増加するからである。
【0064】
検出される不純物レベル(すなわち、ΔUV)が所定の不純物ブレイクスルーよりも高いときにはいつでも、カラムは、フィード供給源から切り離され、所定の体積の部分的に精製されたフィード材料が、依然として、切り離されたカラムを占有している。フィード材料の不必要な洗浄を防止するために、カラムの内側の部分的に精製されたフィード材料が、パージングバッファーを使用してパージされ、カラムが再調整される前に、フィード供給源へ渡される。
【0065】
図7a~
図7cは、ローディング(
図7a)、パージング(
図7b)、および再生(
図7c)の間の単一カラムのフロースルークロマトグラフィーシステム80を図示している。システム80は、カラム81を含み、カラム81は、カラム81の下流に配置されている出口部センサー83と、フィード供給源84とカラムの入口部との間のカラムの上流の随意的な入口部センサー82とを有している。また、システムは、入口バルブ86および出口バルブ87を含み、入口バルブ86および出口バルブ87は、
図7a~
図7cに図示されているように異なる動作モード同士の間でカラムを切り替えるように構成されている。
【0066】
図7aでは、ローディングが図示されており、フィード供給源84は、随意的なセンサー82および入口バルブ86を介して、カラム81の入口部に接続されている。フィード材料は、カラムの中の不純物から精製され(フロースループロセッシング)、プロダクトは、カラムの出口部から利用可能であり、センサー83および出口バルブ87を介して輸送され、送達されることとなる。所定の不純物ブレイクスルーが、出口部センサー、たとえば、UVセンサー、pHセンサー、または伝導度センサーによって検出されるときには、フィード供給源が、カラムの入口部から切り離され、出口バルブ87の位置が変化させられ、プロダクト出力の汚染を防止する。
【0067】
随意的な入口部センサー、たとえば、UVセンサーは、上記に説明されている動的制御を実施するために使用され、フィード供給源84からカラム81を切り離すべきときをより正確に決定することが可能である。
【0068】
図7bでは、フィード供給源84が切り離された後のパージングが図示されており、カラムをパージするために適切なバッファーが、入口バルブ86の位置を変化させることによって接続されている。出口バルブ87の変化させられた位置は、フィード供給源84から切り離された後にカラムを占有している、パージされた部分的に精製されたフィード材料の再循環を促進させる。部分的に精製されたフィード材料が、カラム81からパージされ、フィード供給源84に渡されたときに、出口バルブ87の位置が変化させられ、カラム81の出口部を廃棄物に接続する。
【0069】
図7cでは、出口バルブがカラム81の出口部を廃棄物に接続した後の再生が図示されている。カラム81をクリーニングおよび再生するのに適切なバッファーが、入口バルブ86を介してカラム81の中へ導入され、出口バルブ87を介して廃棄物へ至る。このタイプの単一カラムのフロースルークロマトグラフィーシステムは、
図1に関連して説明されているプロセスの中のポリッシングステップとして使用され得る。
【0070】
図8は、2カラムフロースルークロマトグラフィーシステム90を図示している。システムは、
図7a~
図7cに関連して説明されている単一カラムのシステムと同様のコンポーネントを含む。同一の特徴は、同じ参照番号および機能性を有している。第2のクロマトグラフィーカラム91が、システムの中に導入されている。
【0071】
カラム81およびカラム91は、入口バルブ92に接続されており、入口バルブ92は、
図7a~
図7cの中の入口バルブ86を交換している。また、カラム81およびカラム91は、出口バルブ94に接続されており、出口バルブ94は、
図7a~
図7cの中の出口バルブ87を交換している。入口バルブ92および出口バルブ94は、下記に説明されているように、所望の機能性をシステムに提供する。
【0072】
第1のカラム81が、フィード供給源84からのフィード材料によってロードされているときには、ターゲットプロダクトは、所定の不純物ブレイクスルーがセンサー83を使用して検出されるまで、システム出口部95において利用可能である。第1のカラムのローディングの間に、第2のカラム91は、(カラムが新しく、以前にロードされたことがない場合には)ロードされることを待っているか、または、第2のカラムの内側の部分的に精製されたフィード材料は、パージングバッファーを使用してパージされ、フィード供給源84へ渡される。第2のカラムは、その後に、再生バッファーを使用して再生され、再生バッファーは、廃棄物96へ方向付けされる。
【0073】
所定の不純物ブレイクスルーが、センサー83を使用して検出されるときには、第1のカラムは、フィード供給源から切り離され、フィード材料は、第2のカラム91へ方向付けされる。第1のカラムの内側に含有されている部分的に精製されたフィード材料は、パージングバッファーを使用してパージされ、フィード供給源84へ渡される。センサー93を使用して所定の不純物ブレイクスルーが検出されるまで、第2のカラムはロードされ、ターゲットプロダクトは、システム出口部95において利用可能である。第2のカラムのローディングの間に、第1のカラムは、また、再生バッファーを使用して再生され、再生バッファーは、部分的に精製されたフィード材料がフィード供給源84へ渡された後に、廃棄物96へ方向付けされる。
【0074】
センサー93を使用して所定の不純物ブレイクスルーが検出されるときには、第2のカラム91が、フィード供給源84から切り離され、フィード材料が、第1のカラム81へ方向付けされ、第1のカラム81のローディングが開始する。
【0075】
このプロセスは、入口バルブ92および出口バルブ94を制御することによって繰り返され、ターゲットプロダクトの事実上連続的な出力が、システム出口部95において取得され得る。その理由は、カラムをパージおよび再生することは、カラムをロードすることよりも時間がかからないからである。
【0076】
代替的に、2カラムフロースルークロマトグラフィーシステム90は、出口バルブ94と入口バルブ92との間に相互接続流路を含み、前記バルブ92および94は、2つのカラム81および91のうちのいずれか一方からの出口部が他方のカラムの入口部へ方向付けされることを可能にするように配置されている。この実施形態では、2つのカラムは、
図3のシステムによく似て動作させられ得るが、2カラムPCCモードでは、パージングステップおよび再生ステップが一方のカラムの上で実施され、一方、好ましくは、他方のカラムがブレイクスルーのその初期のポイントに到達する前に、フィードが、他方のカラムへ方向付けされる。
【0077】
図9a~
図9hは、4つのカラムA~Dを備えたフロースルー連続クロマトグラフィーシステムの中のステップを図示している。システムの中のセンサーは、UVセンサーとして例示されており、使用されているセンサーだけが示されており、それぞれの機能性が、それぞれの図の中に示されている。
UV FM-フィード材料のためのUVセンサー
UV BT-ブレイクスルーのためのUVセンサー
UV Elu-溶出されるターゲットプロダクトのためのUVセンサー
UV FT-フロースルーのためのUVセンサー
【0078】
図9aは、プロセスの中の第1のメインステップを図示しており、そこでは、フィード材料が、第1のカラムAの中へロードされ、少なくとも部分的に精製されたフィード材料が、不純物の結合の後に第1のカラムをフロースルーし、第1のカラムAからの部分的に精製されたフィード材料は、その後に、部分的に精製されたフィード材料の中の不純物の結合のために、第2のカラムBの上へ渡される。精製された材料は、第2のカラムBから収集される。第3のカラムCは、再生されており、第4のカラムDは、洗浄されている。
【0079】
図9bは、ロード後再循環(PLR)ステップを図示しており、PLRステップは、所定の不純物ブレイクスルーが検出された後に(たとえば、10%BT)、第1のカラムが切り離されているときに開始する。パージングバッファー「Sys A」が、カラムAから部分的に精製されたフィード材料をパージするために使用され、それをフィード供給源へ戻す。ここで、第2のカラムBは、フィード材料によってロードされ、第2のカラムBからの部分的に精製されたフィード材料が、その後に、部分的に精製されたフィード材料の中の不純物の結合のために第3のカラムCの上へ渡される。精製された材料は、第3のカラムCから収集される。第4のカラムDは、再生されている。
【0080】
図9cは、プロセスの中の第2のメインステップを図示している。
図9bに関連して説明されているPLRステップとの間の差は、カラムAの出口部からフィード供給源へ循環がないということである。
【0081】
図9dは、PLRステップを図示しており、PLRステップは、所定の不純物ブレイクスルーが検出された後に(たとえば、10%BT)、第2のカラムが切り離されているときに開始する。パージングバッファー「Sys A」が、カラムBから部分的に精製されたフィード材料をパージするために使用され、それをフィード供給源へ戻す。ここで、第3のカラムCは、フィード材料によってロードされ、第3のカラムCからの部分的に精製されたフィード材料が、その後に、部分的に精製されたフィード材料の中の不純物の結合のために第4のカラムDの上へ渡される。精製された材料は、第4のカラムDから収集される。第1のカラムAは、再生されている。
【0082】
図9eは、プロセスの中の第3のメインステップを図示している。
図9dに関連して説明されているPLRステップとの間の差は、カラムBの出口部からフィード供給源へ循環がないということである。
【0083】
図9fは、PLRステップを図示しており、PLRステップは、所定の不純物ブレイクスルーが検出された後に(たとえば、10%BT)、第3のカラムが切り離されているときに開始する。パージングバッファー「Sys A」が、カラムCから部分的に精製されたフィード材料をパージするために使用され、それをフィード供給源へ戻す。ここで、第4のカラムDは、フィード材料によってロードされ、第4のカラムDからの部分的に精製されたフィード材料が、その後に、部分的に精製されたフィード材料の中の不純物の結合のために第1のカラムAの上へ渡される。精製された材料は、第1のカラムAから収集される。第2のカラムBは、再生されている。
【0084】
図9gは、プロセスの中の第4のメインステップを図示している。
図9fに関連して説明されているPLRステップとの間の差は、カラムCの出口部からフィード供給源へ循環がないということである。
【0085】
図9hは、PLRステップを図示しており、PLRステップは、所定の不純物ブレイクスルーが検出された後に(たとえば、10%BT)、第4のカラムが切り離されているときに開始する。パージングバッファー「Sys A」が、カラムDから部分的に精製されたフィード材料をパージするために使用され、それをフィード供給源へ戻す。ここで、第1のカラムAは、フィード材料によってロードされ、第1のカラムAからの部分的に精製されたフィード材料が、その後に、部分的に精製されたフィード材料の中の不純物の結合のために第2のカラムBの上へ渡される。精製された材料は、第2のカラムBから収集される。第3のカラムCは、再生されている。
【0086】
プロセスは、その後に、
図9aに図示されているように繰り返される。
【0087】
PCCなどのような連続クロマトグラフィーフロースルーモードとともに使用するための適用例は、ターゲット分子、たとえば、ウィルス(たとえば、アデノウィルス、レンチウィルス、およびインフルエンザウィルス)、ならびに、ウィルスベクター、ウィルス様粒子、およびプラスミドなどを備えたフィードからの不純物の効率的な除去に適切である。
【0088】
これらの用途のための使用され得る樹脂のタイプは、それに限定されないが、Capto Coreのようなリドタイプ(lid type)樹脂など、イオン交換樹脂、およびマルチモーダルタイプの樹脂を含む。
【0089】
例として、Capto Core 700は、十分に大きいターゲット分子エンティティーがビーズの細孔に進入することを除外しながら、不純物の効率的な捕獲を提供する。
【0090】
同様に、イオン交換(たとえば、Capto Q)およびマルチモーダルタイプの樹脂(たとえば、Capto MMCおよびCapto S Adhere)が、不純物の除去のために使用され得る。
【0091】
フロースルーモードでの連続クロマトグラフィーは、同様に、たとえば、モノクロナール抗体、組み換えタンパク質、プラズマタンパク質、および他のタンパク質からの不純物の効率的な除去に適切である。
【0092】
適切な用途は、Capto S Adhereなどのようなマルチモーダルタイプ樹脂を使用する、たとえば、モノクロナール抗体のためのポリッシングステップを含む。
【0093】
また、考えられる樹脂は、他のCapto Coreタイプ樹脂を含み、それは、不純物を捕獲しながら、ターゲット分子がビーズの細孔に進入することを除外する。
【符号の説明】
【0094】
11 細胞培養
12 保持
13 精製
14 ウィルス不活性化
15 ポリッシュ
16 送達
17 オートメーションレイヤー
18 フィード
19 パージ出口部
20 連続クロマトグラフィー
21 入口部
21' バッファー入口部
22 出口部
23 カラム入口部
24 カラム出口部
25 バルブシステム
26 インライン入口部センサー
27 廃棄物出口部
28 インラインセンサー
28' 別のインラインセンサー
29 オフラインセンサー
30 ブレイクスルー曲線
40 不純物容量
41 不純物容量
42 不純物容量
43 不純物容量
50 不純物ブレイクスルー曲線
51 UVsample(カラム前のフィードライン)
52 カターゲットプロダクトおよび不純物からの合計の信号
53 ターゲットプロダクト(背景)からの信号
54 ΔUVmax(不純物からの信号)
55 ベースライン
60 カラムの中へ給送されるサンプルのUV
61 カラムの後の不純物ブレイクスルーのUV
62 ターゲットプロダクトのUV
80 システム
81 カラム
82 随意的な入口部センサー
83 出口部センサー
84 フィード供給源
85 バッファー
86 入口バルブ
87 出口バルブ
90 2カラムフロースルークロマトグラフィーシステム
91 カラム
92 入口バルブ
93 センサー
94 出口バルブ
95 システム出口部
96 廃棄物