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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】レーダ表示装置及びレーダ表示システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/12 20060101AFI20220203BHJP
   G01S 13/66 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G01S7/12
G01S13/66
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2016215989
(22)【出願日】2016-11-04
(65)【公開番号】P2018072282
(43)【公開日】2018-05-10
【審査請求日】2019-10-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】井関 修一
(72)【発明者】
【氏名】溝口 武
(72)【発明者】
【氏名】三輪 礼嗣
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-281504(JP,A)
【文献】国際公開第2016/042932(WO,A1)
【文献】特開2012-233743(JP,A)
【文献】特開2016-062120(JP,A)
【文献】特開2003-279641(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0054674(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信したレーダ信号に基づき、探知可能領域に存在する目標を捕捉し、捕捉された目標の追尾を行ってそれぞれの目標追尾情報を得る目標追尾部と、
前記レーダ信号に基づくレーダ映像を表示する表示部と、
前記表示部にグラフィック画像を重ね表示する表示制御部と、
前記表示部画面上のカーソルの位置を指示する操作部と、を有し、
前記表示制御部は、前記目標追尾部で追尾している目標に対応するレーダエコーの位置と前記カーソルとが重なった状態にあることをカーソル重なりとして検知するカーソル重なり検知部を備え、
前記レーダエコーは、前記カーソル重なり検知部が前記カーソル重なりを検知するまでは前記レーダ映像におけるレーダエコーのままであり、
前記カーソル重なり検知部が前記カーソル重なりを検知したとき、前記グラフィック画像上で、前記カーソル重なりを検知したレーダエコーの位置または該位置近傍に、目標追尾シンボル、前記目標追尾情報または前記目標追尾情報を含む付属情報、或いは、これら双方を画像形成する
ことを特徴とするレーダ表示装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記グラフィック画像における、前記目標追尾情報または前記目標追尾情報を含む付属情報を列挙して表示する付属情報表示領域の位置を、前記目標追尾情報に基づき設定する付属情報表示領域設定部を有することを特徴とする請求項1に記載のレーダ表示装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記グラフィック画像上の各構成要素について、該構成要素の種別、操作者による操作履歴に基づく表示優先度を算出し、一の構成要素の表示域が他の構成要素の表示域と重なる場合は、より低い表示優先度を持つ構成要素を非表示にする優先表示制御部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーダ表示装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、操作者による非表示設定のあった前記グラフィック画像上の構成要素を非表示にすることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のレーダ表示装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記グラフィック画像上で、前記レーダ映像と重ならない表示域に複数の情報表示固定領域を構成し、
操作者の指示に応じて、前記目標追尾情報または前記目標追尾情報を含む付属情報を非表示にすると共に、該目標追尾情報または該目標追尾情報を含む付属情報を一の情報表示固定領域に画像形成する表示切替部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のレーダ表示装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、操作者の指示に応じて、該指示に該当するレーダエコーについて、前記目標追尾情報を含む付属情報に基づき関連情報を生成し、前記グラフィック画像上に画像形成する関連情報表示生成部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のレーダ表示装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記カーソル重なり検知部が前記カーソル重なりを検知したとき、前記グラフィック画像上で、前記カーソル重なりを検知したレーダエコーの位置から所定方向に向かう目標ベクトルを画像形成し、
操作者の指示に応じて、前記目標ベクトルの表示モードを切り替える表示モード切替部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のレーダ表示装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のレーダ表示装置と、
通信手段を介して前記レーダ表示装置から前記レーダ信号及び前記目標追尾情報を含む付属情報を受信するインタフェース手段を備え、前記レーダ信号に基づき生成したレーダ映像、前記目標追尾情報を含む付属情報に基づき生成したグラフィック画像、並びに、電子海図をオーバーレイ表示する電子海図表示装置と、
を有するレーダ表示システムであって、
前記電子海図表示装置は、
前記レーダ映像を表示する第2表示部と、
前記第2表示部に、前記電子海図、並びに、前記目標追尾情報を含む付属情報に基づき生成したグラフィック画像を重ね表示する第2表示制御部と、
前記第2表示部画面上のカーソルの位置を指示する第2操作部と、を有し、
前記第2表示制御部は、
前記目標追尾情報から得られる目標に対応するレーダエコーの位置と前記カーソルとが重なった状態にあることをカーソル重なりとして検知する第2カーソル重なり検知部を備え、
前記第2カーソル重なり検知部が前記カーソル重なりを検知したとき、前記画像上で、前記カーソル重なりを検知したレーダエコーの位置または該位置近傍に、目標追尾シンボル、前記目標追尾情報または前記目標追尾情報を含む付属情報、或いは、これら双方を画像形成する
ことを特徴とするレーダ表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、目標追尾機能を備えたレーダ表示装置及びレーダ表示システムに関し、特に、より簡便な操作で目標追尾情報や付属情報を表示することができ、視認性も確保できるレーダ表示装置及びレーダ表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ表示装置の主要な機能の1つに目標追尾(TT:Target Tracking)機能がある。この目標追尾機能は、海上を移動する船舶、或いは空間を移動する航空機などの目標レーダエコーの観測位置を基に、 デジタル処理により目標の速度・針路などを推定するものである。
【0003】
例えば船舶用レーダ装置では、連続的に得られるレーダ信号を利用して、探知可能領域に存在する他船等の目標を自動または手動により捕捉・追尾し、目標位置の変化する方向と変化量とから目標の針路や速度等を算出した結果を目標追尾情報として得ている。また、この目標追尾情報を基にレーダ映像上の目標を自動追尾すると共に、追尾対象の目標を視覚情報として示す目標シンボル、目標の針路や速度等の数値情報、或いは目標の航跡を示す航跡画像などをグラフィック画像として生成し、表示部の画面上でこれらレーダ映像及びグラフィック画像を重ね合わせて表示することにより、衝突予防に役立てている。なお、追尾対象の目標の指定には、レーダの操作者がレーダ映像上のレーダエコーにカーソルを合わせることにより指定する手動捕捉と、操作者が領域を指定しておき、その領域に入った目標を捕捉する自動捕捉とがあり、従来は、操作者が手動捕捉の操作を行った後、もしくは操作者が自動捕捉する領域を指定した後に、対象となる目標について目標追尾処理を開始していた。
【0004】
ところで、目標追尾情報の精度は目標位置に含まれる観測誤差による影響を受ける。観測誤差は、例えば目標追尾機能で利用するレーダ信号が、レーダ表示装置における分解能等の機器性能や信号の減衰等の影響を受けることにより生じる。一方、追尾情報の精度は、同一の追尾目標について過去の位置情報が多いほど、改善される可能性が高くなる。よって一般的に、捕捉が完了してから十分な時間が経過した追尾目標については、過去の位置情報が蓄積されることにより目標追尾情報の精度が高くなるという特徴がある。
【0005】
このような観点から、近年では、最初から探知可能領域すべてを自動捕捉領域とし、常に目標を自動捕捉・追尾しておき、操作者が手動捕捉の操作をしたときや、自動捕捉する領域を指定したときに、追尾対象である旨を示す目標シンボル表示を行うものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、目標追尾処理では、目標を捕捉しながら目標の針路や速度を計算するのに数十秒、さらに精度の良いデータとするには数分の時間が必要である。しかしながら、この提案方式では、常にすべての探知可能領域の目標を自動捕捉・追尾しておくことで、操作者が手動捕捉の操作(目標の選択操作)をした後、すぐに該目標が持つ針路や速度等の目標追尾情報を表示可能となる。
【0006】
なお、上記説明では、手動捕捉の操作(目標の選択操作)を、操作者がレーダ映像上のレーダエコーにカーソルを合わせることにより行うものとし、トラックボールやマウス等のポインティングデバイスを想定した説明を行った。近年の船舶用レーダ装置では、操作者の指示手段としてタッチパネル装置を用いた構成も提案されており、例えば特許文献2には、表示画面に対する2点以上のタッチ及びそれらのタッチ位置を検出し、検出した2点以上のタッチ位置に基づいて領域を作成し、作成した領域内に位置するシンボルを特定して目標の選択を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-042343号公報
【文献】国際公開WO2013/051050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、表示部の画面上で操作者が特定の目標が持つ針路や速度等の目標追尾情報を得ようとするときには、特定目標の選択操作を行う必要がある。より具体的に、この目標の選択操作は、レーダ映像上のレーダエコーにカーソルを合わせ、選択キーを押下する操作、或いはマウスをクリックする操作となり、例えば画面上で目標追尾情報を表示させたい目標が多数存在する場合には、操作が煩雑となるという事情があった。なお、タッチパネル装置を用いた構成でも、特許文献2に開示されているように、2点以上のタッチ位置に基づいて領域を作成し、作成した領域内で領域中心位置に最も近いシンボルを特定して目標の選択を行うことになり、操作及び処理が共に煩雑なものとなる。また、2点以上のタッチで領域設定を行うものであるため、操作者が誤選択してしまう可能性が高まるという問題もある。
【0009】
また、特定の目標について得たい情報には、針路や速度等の他に、自船に対する距離や方位などの情報もあり、複数の目標について一律にこれら情報を表示していくと、複雑な画面表示となって直感的な視認性が低下するという事情がある。さらに多数の目標に対して部分的にしか表示できなくなるという事態も想定される。
【0010】
そこでこの発明は、より簡便な操作で目標追尾情報や付属情報を表示することができ、視認性も確保できるレーダ表示装置及びレーダ表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、受信したレーダ信号に基づき、探知可能領域に存在する目標を捕捉し、捕捉された目標の追尾を行ってそれぞれの目標追尾情報を得る目標追尾部と、前記レーダ信号に基づくレーダ映像を表示する表示部と、前記表示部にグラフィック画像を重ね表示する表示制御部と、前記表示部画面上のカーソルの位置を指示する操作部と、を有し、前記表示制御部は、前記目標追尾部で追尾している目標に対応するレーダエコーの位置と前記カーソルとが重なった状態にあることをカーソル重なりとして検知するカーソル重なり検知部を備え、前記レーダエコーは、前記カーソル重なり検知部が前記カーソル重なりを検知するまでは前記レーダ映像におけるレーダエコーのままであり、前記カーソル重なり検知部が前記カーソル重なりを検知したとき、前記グラフィック画像上で、前記カーソル重なりを検知したレーダエコーの位置または該位置近傍に、目標追尾シンボル、前記目標追尾情報または前記目標追尾情報を含む付属情報、或いは、これら双方を画像形成することを特徴とする。
【0012】
請求項1の発明では、カーソル重なり検知部において、目標追尾部で追尾している目標の位置とカーソルとが重なった状態にあることをカーソル重なりとして検知し、カーソル重なりを検知したときは、表示制御部により、グラフィック画像上で、カーソル重なりを検知した目標(レーダエコー)の位置または該位置近傍に、目標追尾シンボル、目標追尾情報または目標追尾情報を含む付属情報、或いは、これら双方を画像形成する。ここで、目標追尾情報は、例えば目標(レーダエコー)の位置、(自船からの距離・方位)・速度・針路などが該当する。また、目標追尾情報を含む付属情報として、CPA・TCPA、BCR・BCTなどが加わることになる。ここに、CPA(Closest Point of Approach)は目標が自船と最も接近したときの2船間の距離であり、TCPA(Time to CPA)はCPAの地点に到着するまでの時間であり、BCR(Baw Cross Range)は目標が自船の船首方向を横切るときの2船間の距離であり、BCT(Baw Cross Time)は目標が自船の船首方向を横切るまでの時間である。また、付属情報に識別名称を含めることもでき、さらに操作者が判別し易い識別名称に再登録することも可能である。さらに、付属情報に目標の航跡情報を含めることもでき、操作者がカーソルを所望の目標(レーダエコー)に重ね合わせることにより、目標(レーダエコー)の航跡画像をグラフィック画像として生成して表示させることが可能となる。また、例えば、目標(レーダエコー)とカーソルとが所定時間以上重なった状態にあることをカーソル重なりとして検知するようにすれば、目標(レーダエコー)上での単なるカーソルの通過をカーソル重なり判断から除外して、誤選択となるのを極力少なくすることができると共に、カーソルの移動経路に制約を与えることも無くなる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載のレーダ表示装置において、前記表示制御部は、前記グラフィック画像における、前記目標追尾情報または前記目標追尾情報を含む付属情報を列挙して表示する付属情報表示領域の位置を、前記目標追尾情報に基づき設定する付属情報表示領域設定部を有することを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のレーダ表示装置において、前記表示制御部は、前記グラフィック画像上の各構成要素について、該構成要素の種別、操作者による操作履歴に基づく表示優先度を算出し、一の構成要素の表示域が他の構成要素の表示域と重なる場合は、より低い表示優先度を持つ構成要素を非表示にする優先表示制御部を有することを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のレーダ表示装置において前記表示制御部は、操作者による非表示設定のあった前記グラフィック画像上の構成要素を非表示にすることを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のレーダ表示装置において、前記表示制御部は、前記グラフィック画像上で、前記レーダ映像と重ならない表示域に複数の情報表示固定領域を構成し、操作者の指示に応じて、前記目標追尾情報または前記目標追尾情報を含む付属情報を非表示にすると共に、該目標追尾情報または該目標追尾情報を含む付属情報を一の情報表示固定領域に画像形成する表示切替部を有することを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のレーダ表示装置において、前記表示制御部は、操作者の指示に応じて、該指示に該当するレーダエコーについて、前記目標追尾情報を含む付属情報に基づき関連情報を生成し、前記グラフィック画像上に画像形成する関連情報表示生成部を有することを特徴とする。
【0018】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のレーダ表示装置において、前記表示制御部は、前記カーソル重なり検知部が前記カーソル重なりを検知したとき、前記グラフィック画像上で、前記カーソル重なりを検知したレーダエコーの位置から所定方向に向かう目標ベクトルを画像形成し、操作者の指示に応じて、前記目標ベクトルの表示モードを切り替える表示モード切替部を有することを特徴とする。
【0019】
請求項8の発明は、請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のレーダ表示装置と、通信手段を介して前記レーダ表示装置から前記レーダ信号及び前記目標追尾情報を含む付属情報を受信するインタフェース手段を備え、前記レーダ信号に基づき生成したレーダ映像、前記目標追尾情報を含む付属情報に基づき生成したグラフィック画像、並びに、電子海図をオーバーレイ表示する電子海図表示装置と、を有するレーダ表示システムであって、前記電子海図表示装置は、前記レーダ映像を表示する第2表示部と、前記第2表示部に、前記電子海図、並びに、前記目標追尾情報を含む付属情報に基づき生成したグラフィック画像を重ね表示する第2表示制御部と、前記第2表示部画面上のカーソルの位置を指示する第2操作部と、を有し、前記第2表示制御部は、前記目標追尾情報から得られる目標に対応するレーダエコーの位置と前記カーソルとが重なった状態にあることをカーソル重なりとして検知する第2カーソル重なり検知部を備え、前記第2カーソル重なり検知部が前記カーソル重なりを検知したとき、前記画像上で、前記カーソル重なりを検知したレーダエコーの位置または該位置近傍に、目標追尾シンボル、前記目標追尾情報または前記目標追尾情報を含む付属情報、或いは、これら双方を画像形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、カーソル重なり検知部において、カーソル重なりを検知したときに、表示制御部により、グラフィック画像上で、カーソル重なりを検知した目標(レーダエコー)の位置または該位置近傍に、目標追尾シンボル、目標追尾情報または目標追尾情報を含む付属情報、或いは、これら双方を画像形成するので、簡便な方法で目標追尾情報や付属情報を表示することが可能となる。
【0021】
請求項2の発明によれば、付属情報表示領域設定部により、グラフィック画像における、目標追尾情報または目標追尾情報を含む付属情報を列挙して表示する付属情報表示領域の位置を、目標追尾情報に基づき設定するので、視認性を維持しつつ目標追尾情報や付属情報を表示することが可能となる。
【0022】
請求項3の発明によれば、優先表示制御部において、グラフィック画像上の各構成要素について、該構成要素の種別、操作者による操作履歴に基づく表示優先度を算出し、一の構成要素の表示域が他の構成要素の表示域と重なる場合は、より低い表示優先度を持つ構成要素を非表示にするので、グラフィック画像上で構成要素間の重なりを排除することができ、視認性を維持しつつ目標追尾情報や付属情報を表示することが可能となる。
【0023】
請求項4の発明によれば、操作者による非表示設定のあったグラフィック画像上の構成要素を非表示にするので、表示状態をユーザカスタマイズして、視認性を維持しつつ目標追尾情報や付属情報を表示することが可能となる。
【0024】
請求項5の発明によれば、表示制御部により、グラフィック画像上でレーダ映像と重ならない表示域に複数の情報表示固定領域を構成し、表示切替部により、操作者の指示に応じて、目標追尾情報または目標追尾情報を含む付属情報を非表示にすると共に、該目標追尾情報または該目標追尾情報を含む付属情報を一の情報表示固定領域に画像形成するので、レーダ映像の表示域での視認性を維持しつつ目標追尾情報や付属情報を表示することが可能となる。
【0025】
請求項6の発明によれば、関連情報表示生成部により、操作者の指示に応じて、該指示に該当する目標(レーダエコー)について、目標追尾情報を含む付属情報に基づき関連情報を生成し、グラフィック画像上に画像形成するので、視認性を維持しつつ目標追尾情報や付属情報に基づく関連情報を表示することが可能となる。
【0026】
請求項7の発明によれば、カーソル重なりを検知した目標(レーダエコー)について、表示制御部で所定方向に向かう目標ベクトルを画像形成し、表示モード切替部により、操作者の指示に応じて目標ベクトルの表示モードを切り替えるので、視認性を維持しつつ目標追尾情報や付属情報に基づく関連情報を表示することが可能となる。
【0027】
請求項8の発明によれば、レーダ表示装置とのインタフェースを持つ電子海図表示装置において、レーダ映像、グラフィック画像及び海図をオーバーレイ表示させることができる。また、第2カーソル重なり検知部において、カーソル重なりを検知したときに、第2表示制御部が生成する画像上で、カーソル重なりを検知した目標(レーダエコー)の位置または該位置近傍に、目標追尾シンボル、目標追尾情報または目標追尾情報を含む付属情報、或いは、これら双方を画像形成するので、レーダ表示装置に従属的に通信接続される電子海図表示装置において、レーダ表示装置とは独立した簡便な操作で目標追尾情報や付属情報を表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】この発明の実施の形態1に係るレーダ表示装置の構成図である。
図2】目標(レーダエコー)の位置でカーソル重なりを検知したときの表示部の画面表示を例示する説明図である。
図3図3(a)及び(b)は簡易コマンドバーの詳細を例示する説明図であり、図3(c)はコマンドバーのプルダウンメニューを例示する説明図である。
図4図4(a)は目標選択後に付属情報表示領域を非表示とする画面表示を例示する説明図、図4(b)は目標選択後に付属情報表示領域の表示内容を退避して非表示とする画面表示を例示する説明図である。
図5図5(a)は目標選択後に付属情報表示領域を表示継続とする画面表示を例示する説明図、図5(b)は付属情報表示領域の配置変更で重なりを回避した画面表示を例示する説明図である。
図6】グラフィック画像上の構成要素表示域間の重なりを例示する説明図である。
図7】識別名称の再登録を説明する説明図である。
図8】操作者が選択した目標の航跡表示を例示する説明図である。
図9】関連情報表示生成部による関連情報の表示を例示する説明図である。
図10】表示モード切替部による目標ベクトルの表示モード切替を例示する説明図である。
図11】この発明の実施の形態2に係るレーダ表示システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0030】
〔実施の形態1〕
図1は、この発明の実施の形態1に係るレーダ表示装置1の構成図である。このレーダ表示装置1は、大まかな構成として、送受信部10、AD変換部11、信号処理部12、座標変換部13及びアンテナ21を備えてレーダ映像を得る観測系と、映像用メモリ14、グラフィック用メモリ20及び表示部15を備えて表示部15の画面上でレーダ映像及びグラフィック画像を重ね合わせて表示する表示系と、マウス41、トラックボール42、キー群43を備えた操作部16(操作部16の構成は任意である)と、目標追尾機能を実現する目標追尾部18と、操作者の操作部16を介した操作指示に応じてグラフィック画像を形成する表示制御部19と、を有する構成である。
【0031】
レーダ表示装置1の観測系では、水平方向に回転するアンテナ21からレーダ信号(探知信号)が無線送信され、他の船舶等の目標から反射して戻ってきたレーダエコーを送受信部10で受信する。ここで、アンテナ21が1回転することをスキャンといい、1スキャンの間に複数回の送受信が行われている。送受信部10からの受信信号は、AD変換部11によってデジタル信号に変換され、信号処理部12によってレーダエコーに含まれる海面反射等の不要なエコーの除去等の信号処理が行われる。
【0032】
座標変換部13は、信号処理部12で処理された極座標形式のデジタル信号を直交座標形式のデジタル信号に変換し、直交座標形式のデジタル信号を映像用メモリ14に描画すると共に、極座標形式のデジタル信号を目標追尾部18に出力する。座標変換部13と映像用メモリ14との間では、海面からの反射信号や降雨からの反射信号のような不要信号(クラッタ信号)を除去するために、現在のレーダエコーと過去のレーダエコーとに基づき、スキャン相関処理が行われる。また必要に応じて、座標変換部13で座標変換を行う際には、同一アドレスに描画されたデータの最大値を保持するピークホールド処理が映像用メモリ14で行われる。
【0033】
また、レーダ表示装置1の表示系において、表示部15はCRTやLCD等で具現され、表示部15の画面には、観測系で得られて映像用メモリ14上に描画されているレーダ映像が表示されると共に、表示制御部19で形成されてグラフィック用メモリ20上に構成されているグラフィック画像が重ね合わせて表示される。
【0034】
また、操作部16には、ポインティングデバイスとしてマウス41またはトラックボール42を備えており、マウス41の平面的な移動距離またはトラックボール42の回転移動距離が、表示制御部19によってグラフィック画像上のXY座標の移動距離に変換されて、カーソルと呼ばれるグラフィックスの位置が移動する構成である。なお、マウス41またはトラックボール42はポインティングデバイスの例示であって、他種のポインティングデバイスを用いる構成であっても良い。また、図1では、操作部16に、ポインティングデバイスとしてマウス41及びトラックボール42を備えた構成としているが、これら双方を備える必要はなく、何れか一方を備えた構成であって良い。つまり、ポインティングデバイスとして、マウス41またはトラックボール42の何れを用いても良い構成であるが、以下の説明では代表的にマウス41を用いた説明を行う。
【0035】
また、目標追尾部18及び表示制御部19はMPU(マイクロプロセッサ)やDSP(デジタルシグナルプロセッサ)等の処理プロセッサで具現される。また、図1に示される目標追尾部18及び表示制御部19並びに表示制御部19内の各構成要素は、機能マクロであり、処理プロセッサ上で実行されるプログラムの機能的まとまりである。なお、図1には明示しないが、目標追尾部18及び表示制御部19には、各機能マクロや各機能の処理に使用する各種データなどを保持する記憶域、並びに各機能の処理で使用する作業用記憶域を持つ記憶部を備えている。
【0036】
次に、この発明の特徴的構成である目標追尾部18及び表示制御部19について詳細に説明する。まず、目標追尾部18では、当該レーダ表示装置1の送信直後から探知可能領域に存在する目標を捕捉し、捕捉された目標の追尾を常に行ってそれぞれの目標追尾情報を得ている。
【0037】
また、表示制御部19は、カーソル重なり検知部31、付属情報表示領域設定部32、優先表示制御部33、表示切替部34、関連情報表示生成部35及び表示モード切替部36を備えた構成である。
【0038】
カーソル重なり検知部31は、目標追尾部18で追尾している目標の位置とカーソルとが重なった状態にあることをカーソル重なりとして検知する。また、カーソル重なり検知部31でカーソル重なりを検知したときは、表示制御部19により、グラフィック画像上で、カーソル重なりを検知した目標(レーダエコー)の位置または該位置近傍に、目標追尾シンボル、目標追尾情報または目標追尾情報を含む付属情報、或いは、これら双方を画像形成する。これにより、簡便な方法で目標追尾情報や付属情報を表示することが可能となる。
【0039】
ここで、目標追尾シンボルは、目標(レーダエコー)が追尾対象である旨を視覚情報として示すものである。後述する表示例では、目標追尾情報として、(自船との)距離、(自船から見た)方位、速度及び針路が表示され、付属情報として、CPA、TCPA、BCR及びBCTが表示されている。
【0040】
また、カーソル重なり検知部31において、カーソル重なりか否かを判断するとき、例えば、通常のカーソル移動時にカーソルが目標(レーダエコー)を横切るのに要する時間の数倍~十倍程度の時間を所定時間とし、所定時間以上目標(レーダエコー)とカーソルとが重なることを条件としても良い。これにより、目標(レーダエコー)上での単なるカーソルの通過をカーソル重なり判断から除外して、誤選択の発生確率を極力抑えることができると共に、カーソルの移動経路に制約を与えることも無くなる。なお、カーソルの移動速度自体をユーザ設定できる環境下では、移動速度の設定に応じて所定時間も変えていくのが望ましい。
【0041】
また、カーソル重なり検知部31でカーソル重なりを検知したときに、表示制御部19により、グラフィック画像上で、カーソル重なりを検知した目標(レーダエコー)の位置から所定方向に向かう目標ベクトルを画像形成するようにしても良い。ここで、目標ベクトルには、目標の絶対的な速度の絶対値及び方向を示す真ベクトルと、自船に対する目標の相対速度の絶対値及び方向を示す相対ベクトルとがあり、目標ベクトルの表示モードのデフォルトとして真ベクトルまたは相対ベクトルの何れが設定されているかによって、目標ベクトルの所定方向が定まることになる。
【0042】
また、付属情報表示領域設定部32は、グラフィック画像における、目標追尾情報または目標追尾情報を含む付属情報を列挙して表示する付属情報表示領域の位置を、目標追尾情報に基づき設定する。これにより、視認性を維持しつつ目標追尾情報や付属情報を表示することが可能となる。ここで、付属情報表示領域は、カーソル重なり検知時に目標(レーダエコー)の位置または該位置近傍にポップアップ表示される表示窓である。
【0043】
付属情報表示領域の位置設定手法には、例えば、(1)目標(レーダエコー)の位置がレーダ映像全体から見て何れの位置にあるかによって付属情報表示領域の位置を設定する手法、(2)目標(レーダエコー)の針路に応じて、該針路とは逆に付属情報表示領域の位置を設定する手法、(3)目標(レーダエコー)の位置及び針路に応じて、付属情報表示領域の位置を設定する手法などがある。
【0044】
また、優先表示制御部33は、グラフィック画像上の各構成要素について、該構成要素の種別、操作者による操作履歴に基づく表示優先度を算出し、一の構成要素の表示域が他の構成要素の表示域と重なる場合は、より低い表示優先度を持つ構成要素を非表示にする。これにより、グラフィック画像上で構成要素間の重なりを排除することができ、視認性を維持しつつ目標追尾情報や付属情報を表示することが可能となる。
【0045】
表示優先度の算出設定手法としては、例えば、(1)目標(レーダエコー)に付随するグラフィック画像上の構成要素について優先的に表示し、他のユーザマップなどのグラフィック画像上の構成要素は非表示にする。(2)また、操作者が非表示にしたいグラフィックを事前に設定しておき、一の構成要素の表示域が他の構成要素の表示域と重なる場合に、或いは重ならない場合でも一律に、非表示とする。(3)さらに、操作者による操作履歴から、グラフィック画像上の各構成要素について表示時間を積算し、表示時間の長いものほど操作者の注目度が相対的に高いと考えられるので、より高い表示優先度が設定されるようにする、といったものが考えられる。
【0046】
なお、一構成要素表示域の他構成要素表示域との重なりを排除する手法として、例えば、付属情報表示領域設定部32において、付属情報表示領域の位置を、目標追尾情報並びにグラフィック画像上の他の構成要素の種別及び位置情報に基づき設定することとして、付属情報表示領域をグラフィック画像上の他の構成要素と重ならないように配置するようにしても良い。グラフィック画像上の構成要素数が相対的に少ないときには、付属情報表示領域の配置を少しずらすだけで、視認性を維持しつつ対処可能である。また、付属情報表示領域設定部32と優先表示制御部33とを連携させ、付属情報表示領域の配置変更だけでは対処できないときに、優先表示制御部33による優先表示制御を行うようにしても良い。
【0047】
また、表示切替部34は、操作者の指示に応じて、目標追尾情報または目標追尾情報を含む付属情報を非表示にすると共に、該目標追尾情報または該目標追尾情報を含む付属情報を一の情報表示固定領域に画像形成する。なお、グラフィック画像上でレーダ映像と重ならない表示域には、表示制御部19により複数の情報表示固定領域が設定されている。これにより、レーダ映像の表示域での視認性を維持しつつ目標追尾情報や付属情報を表示することが可能となる。
【0048】
また、関連情報表示生成部35は、操作者の指示に応じて、該指示に該当する目標(レーダエコー)について、目標追尾情報を含む付属情報に基づき関連情報を生成し、グラフィック画像上に画像形成する。これにより、視認性を維持しつつ目標追尾情報や付属情報に基づく関連情報を表示することが可能となる。ここで、関連情報には、目標の航跡情報などが含まれる。つまり、操作者による航跡表示の指示があった際には、関連情報表示生成部35により航跡画像が形成されることになる。
【0049】
また、付属情報としてCPA(目標が自船と最も接近したときの2船間の距離)が表示されている場合には、付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)内の項目「CPA」にカーソルを当てて、マウス41を左クリックすることにより、2船間で最接近となる位置に識別シンボルを表示させるようにしても良い。この場合、グラフィック画像上の識別シンボルは関連情報表示生成部35によって画像形成される。
【0050】
さらに、付属情報としてBCR(目標が自船の船首方位を横切るときの2船間の距離)が表示されている場合には、付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)内の項目「BCR」にカーソルを当てて、マウス41を左クリックすることにより、目標が自船の船首方位を横切る位置に識別シンボルを表示させるようにしても良い。この場合も、グラフィック画像上の識別シンボルは関連情報表示生成部35によって画像形成される。
【0051】
さらに、表示モード切替部36は、操作者の指示に応じて目標ベクトルの表示モードを切り替える。カーソル重なり検知部31でカーソル重なりを検知したときに、表示制御部19によって目標ベクトルが画像形成されている場合には、表示モード切替部36の切替によって目標ベクトルの表示モードを切り替えることができる。
【0052】
次に、図2図10に示される表示例を参照して、表示制御部19のより具体的な機能について説明する。図2(a)及び(b)は、カーソル重なり検知部31により、レーダエコー51Bの位置でカーソル重なりを検知したときの表示部15の画面表示を例示する説明図である。図2(a)及び(b)において、61はレーダ映像表示域であり、グラフィック画像の表示域は表示部15の画面全体となっている。また、62,63,64は表示制御部19により予め設定される情報表示固定領域である。
【0053】
図2(a)では、レーダエコー51Bに対し、付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)56Bが付随して表示されている。また、図2(b)では、レーダエコー51Bに対し、目標追尾シンボル53B、目標ベクトル54B及び付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)57Bが付随して表示されている。このような表示の変更は、操作者が表示設定を変更することにより可能である。なお、付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)56B,57Bの位置は、付属情報表示領域設定部32により設定されるが、図2の例示では、一律に目標(レーダエコー)の略中心位置から右下方向の位置に、付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)56B,57Bが配置されている。
【0054】
この表示設定の変更は、例えば、付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)56B,57Bの底辺に付属する簡易コマンドバー56Bc,57Bcや、表示画面の右上隅に配置されているコマンドバー65を介して行うことができる。図3(a)及び(b)にはそれぞれ簡易コマンドバー56Bc及び57Bcの詳細を例示し、図3(c)にはコマンドバー65のPU表示90(ここで、PU:Pop-Up)についてのプルダウンメニューを例示している。
【0055】
まず、図3(a)及び(b)に示す簡易コマンドバー56Bc,57Bcについて説明する。簡易コマンドバー56Bc,57Bcには、各種コマンドアイコンが並べて配置されており、所望のコマンドアイコンにカーソルを当てて左クリックすることにより該当するコマンドが実行される。81,82は付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)の項目数を増減するコマンドアイコンであり、例えば図3(a)の付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)56Bを図3(b)の付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)57Bに変更したいときには、例えば、コマンドアイコン81を1回クリックすることで「BCR」及び「BCT」が追加表示され、さらに1回クリックすることで「距離」及び「方位」が追加表示されるようになる。また、83は優先指定を行うコマンドアイコンであり、例えばクリックの回数分だけ優先表示制御部33における付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)56Bまたは付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)57Bの表示優先度を上げることができる。また、85は付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)を強制的に非表示にするコマンドアイコンである。また、84は付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)を非表示にすると共に、表示内容を情報表示固定領域62,63または64の何れかに退避させるコマンドアイコンである。さらに、86は操作者が識別名称を登録する際に用いるコマンドアイコンである。
【0056】
また、図3(c)に示すコマンドバー65のPU表示90のプルダウンメニューは、操作者が直近に選択した目標、或いは操作者が次に選択する目標について、表示設定を変更可能な項目がメニュー表示91~96されている。特定のメニュー項目を指定すると更なるメニュー表示やパラメータ設定窓がポップアップ表示されるなどして、より詳細な設定を可能にする構成である。
【0057】
次に、操作者が目標を選択して表示させた画面表示のその後の表示手法について説明する。特に付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)については、相対的に大きな表示域を占有してしまうことから、操作者の注目度が高い場面でのみ表示させるのが望ましく、注目度が相対的に高くない場面では、カーソルを該当する目標(レーダエコー)から外した後に(一部またはすべてのグラフィック画像表示を)非表示にするのが望ましい。図4(a)には、図2(b)の表示状態の後に、カーソル52をレーダエコー51Bから外して、付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)57Bを非表示とし、目標追尾シンボル53B及び目標ベクトル54Bの表示を残した表示例を示す。
【0058】
また、複数の目標について付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)が表示されると、複雑な画面表示となって直感的な視認性が低下してくる。このような場面では、例えば、簡易コマンドバーのコマンドアイコン84をクリックして、表示切替部34により、付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)を非表示にすると共に、表示内容を情報表示固定領域に退避させることにより、レーダ映像の表示域での視認性を維持しつつ目標追尾情報や付属情報を表示することができる。図4(b)には、図2(b)の表示状態の後に、簡易コマンドバー57Bcのコマンドアイコン84をクリックして、付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)57Bの表示内容を情報表示固定領域63に退避させると共に、目標追尾シンボル53B及び目標ベクトル54Bの表示を残した表示例を示す。なお、図4(b)では、付属情報が情報表示固定領域に表示されている旨を示す識別シンボル58Bがレーダエコー51Bに付加されている。
【0059】
また、操作者の注目度が高い場面では、カーソルを該当する目標(レーダエコー)から外しても、付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)を表示状態のままとするのが望ましい。図2(b)の表示状態の後に、付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)57Bを表示状態のままとした場合、図5(a)に示すように、レーダエコー51Bの進行と共に付随するグラフィック画像上の各構成要素も移動していくことになる。なお、操作者による目標選択後に付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)を継続表示とする場合には、操作者による操作指示により行われる。
【0060】
また、付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)を表示状態のままとする場合には、レーダエコー51Bの進行と共に付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)の表示域がグラフィック画像上の他の構成要素と重なる事態も想定される。このような場面では、付属情報表示領域設定部32により自動的に付属情報表示領域の配置変更が行われ、他の構成要素との重なりが回避される。図5(b)には、付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)57Bの配置変更によって、ユーザマップ72との重なりを回避した表示例が示されている。なお、付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)57Bの配置変更に伴って、レーダエコー51Bからの引き出し線57Bdが付加されている。
【0061】
また、このようなグラフィック画像上の構成要素表示域間の重なりは、表示域の大きい付属情報表示領域だけでなく他の構成要素においても起こり得る。図6(a)には、操作者が選択しようとするレーダエコー53Cの近傍にAIS(Automatic Identification System)シンボル71とユーザマップ72が位置しており、操作者の選択によって表示される目標ベクトル54CがAISシンボル71及びユーザマップ72と重なることが想定される場面が例示されている。このような場面では、優先表示制御部33により、目標ベクトル54Cよりも低い表示優先度を持つAISシンボル71及びユーザマップ72が非表示となり、図6(b)に示されるような表示となる。
【0062】
上述したように、付属情報には目標(レーダエコー)の識別名称を含めることもでき、さらに、この識別名称を操作者が判別し易い識別名称に再登録することも可能である。図7は識別名称の再登録を説明する説明図である。レーダ映像表示域61の下方に例示しているように、レーダエコー51Aの上方近傍に識別名称55Aが表示される。通常は、表示制御部18でシリアル番号が割り振られていくが、特に注目度の高い目標などについては、操作者が判別し易い識別名称に再登録したいという要望もある。図7では、直近の操作者の目標選択で、レーダエコー51Bが選択されており、レーダエコー51Bの識別名称55Bが「NAME」に再登録されている。このような再登録は、例えば付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)57Bを利用して行うことができる。すなわち、図3(b)に示す簡易コマンドバー57Bcで、コマンドアイコン86にカーソルを当ててクリックすることによって、レーダエコー51Bの上方近傍に入力窓73が設定され、該入力窓73内にキー群43を介して名称を入力していくことにより行われる。
【0063】
次に、関連情報表示生成部35による関連情報の表示について説明する。図8は、操作者が選択した目標の航跡表示を例示する説明図である。同図では、レーダエコー51Bの選択時に操作者による航跡表示の指示があり、関連情報表示生成部35によって航跡画像74Bの表示が継続して行われている様子を示している。
【0064】
また、図9(a)に示すように、目標選択されたレーダエコー53Bの付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)57BにCPA(目標が自船と最も接近したときの2船間の距離)が表示されている場合には、該項目「CPA」にカーソル52を当てて、マウス41を左クリックすることにより、2船間で最接近となる位置に識別シンボル75Bを表示させることができる。この場合、グラフィック画像上の識別シンボル75Bは関連情報表示生成部35によって画像形成される。
【0065】
また、図9(b)に示すように、目標選択されたレーダエコー53Bの付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)57BにBCR(目標が自船の船首方位を横切るときの2船間の距離)が表示されている場合には、該項目「BCR」にカーソル52を当てて、マウス41を左クリックすることにより、目標が自船の船首方位を横切る位置に識別シンボル76Bを表示させることができる。この場合も、グラフィック画像上の識別シンボル76Bは関連情報表示生成部35によって画像形成される。
【0066】
さらに、表示モード切替部36により、操作者の指示に応じて目標ベクトルの表示モードを切り替えることが可能である。図10(a)は、目標選択されたレーダエコー51Bについて真ベクトルが表示されている(図2(b)の)表示状態が相対ベクトルの表示に切り替わった様子を例示している。また、図10(b)は、目標選択されたレーダエコー51Bについて目標ベクトルの時間表示が(図2(b)の時間表示よりも)より長い時間表示に切り替わった様子を例示している。
【0067】
〔実施の形態2〕
上記実施の形態1ではレーダ映像及びグラフィック画像をレーダ表示装置1内の表示部15に重ね表示したが、レーダ表示装置1と独立して構成される他の装置の表示部に表示するようにしても良い。
例えば、ECDIS(電子海図表示システム;Electronic Chart Display and Information System)やプロッタ等の電子海図表示装置を、上記実施の形態1のレーダ表示装置1に接続し、該電子海図表示装置にインタフェース手段を備えてレーダ表示システムを構成すれば、該電子海図表示装置において、レーダ表示装置1からレーダ信号及び追尾情報を含む付属情報を受信可能な構成とすることができる。
このような電子海図表示装置では、受信したレーダ信号及び追尾情報を含む付属情報からレーダ映像及びグラフィック映像をそれぞれ生成し、これらを海図にオーバーレイ表示させることが可能となる。
【0068】
図11には、レーダ表示装置1Aと、電子海図表示装置2とを通信手段を介して接続して構成したレーダ表示システム3の構成図を示す。ここで、通信手段は有線または無線の何れであっても良い。
また、レーダ表示装置1Aは、実施の形態1のレーダ表示装置1にインタフェース部22を追加して構成したものであり、図示しないがレーダ表示装置1(実施の形態1:図1参照)と同等の構成を備えている。インタフェース部22は、受信したレーダ信号101及び目標追尾情報を含む付属情報102を電子海図表示装置2に送信する。ここで、レーダ信号101はアンテナ21から受信する信号と同じ信号であり、目標追尾情報を含む付属情報102は目標追尾部18の出力である。
【0069】
また、電子海図表示装置2は、インタフェース部122と、レーダ信号111に基づきレーダ映像を生成するレーダ映像生成部123と、第2映像用メモリ114、第2グラフィック用メモリ120及び第2表示部115を備えて第2表示部115の画面上で海図、レーダ映像及びグラフィック画像を重ね合わせて表示する表示系と、マウス141、トラックボール142、キー群143を備えた第2操作部116(第2操作部116の構成は任意である)と、第2表示制御部119と、を有する構成である。なお、表示系及び第2操作部116の具体的構成については実施の形態1と同等であり、説明を省略する。また、レーダ映像生成部123は、実施の形態1におけるAD変換部11、信号処理部12及び座標変換部13と同等の構成を備えたものであり、説明を省略する。
インタフェース部122は、レーダ信号101及び目標追尾情報を含む付属情報102を、インタフェース部22を介してレーダ信号111及び目標追尾情報を含む付属情報112として受信し、レーダ映像生成部123及び第2表示制御部119に、それぞれ供給する。
【0070】
第2表示制御部119は、海図データ113に基づき第2グラフィック用メモリ120の一のレイヤに電子海図を形成する。ここで、海図データ113は、電子海図表示装置2内の記憶部(不図示)から、或いは、電子海図表示装置2外部からインタフェース手段を介して、第2表示制御部119に供給されるものとする。
また、第2表示制御部119は、実施の形態1の表示制御部19と同様に、第2カーソル重なり検知部131、第2付属情報表示領域設定部132、第2優先表示制御部133、第2表示切替部134、第2関連情報表示生成部135及び第2表示モード切替部136を備えており、操作者の第2操作部116を介した操作指示に応じて、第2グラフィック用メモリ120の他のレイヤにグラフィック画像を形成する。
【0071】
例えば、第2カーソル重なり検知部131は、追尾している目標(レーダエコー)の位置とカーソルとが重なった状態にあることをカーソル重なりとして検知する。また、第2カーソル重なり検知部131でカーソル重なりを検知したときは、第2表示制御部119により、グラフィック画像上で、カーソル重なりを検知した目標(レーダエコー)の位置または該位置近傍に、目標追尾シンボル、目標追尾情報または目標追尾情報を含む付属情報、或いは、これら双方を画像形成する。これにより、簡便な方法で目標追尾情報や付属情報を表示することが可能となる。
また、その他の各構成要素(即ち、第2付属情報表示領域設定部132、第2優先表示制御部133、第2表示切替部134、第2関連情報表示生成部135及び第2表示モード切替部136)についても、実施の形態1の表示制御部19において対応する各構成要素と同等の機能を備えているが、ここでは詳細な説明を省略する。
【0072】
以上のように、実施の形態2のレーダ表示システム3によれば、第2カーソル重なり検知部131において、カーソル重なりを検知したときに、第2表示制御部119が生成する画像上で、カーソル重なりを検知した目標(レーダエコー)の位置または該位置近傍に、目標追尾シンボル、目標追尾情報または目標追尾情報を含む付属情報、或いは、これら双方を画像形成するので、レーダ表示装置1Aに従属的に通信接続される電子海図表示装置2において、レーダ表示装置1Aとは独立した簡便な操作で目標追尾情報や付属情報を表示することが可能となる。
【0073】
また、実施の形態1と同様に、第2付属情報表示領域設定部132により、グラフィック画像における、目標追尾情報または目標追尾情報を含む付属情報を列挙して表示する付属情報表示領域の位置を、目標追尾情報に基づき設定するので、視認性を維持しつつ目標追尾情報や付属情報を表示することが可能となる。
また、実施の形態1と同様に、第2優先表示制御部133において、グラフィック画像上の各構成要素について、該構成要素の種別、操作者による操作履歴に基づく表示優先度を算出し、一の構成要素の表示域が他の構成要素の表示域と重なる場合は、より低い表示優先度を持つ構成要素を非表示にするので、グラフィック画像上で構成要素間の重なりを排除することができ、視認性を維持しつつ目標追尾情報や付属情報を表示することが可能となる。
また、実施の形態1と同様に、操作者による非表示設定のあったグラフィック画像上の構成要素を非表示にするので、表示状態をユーザカスタマイズして、視認性を維持しつつ目標追尾情報や付属情報を表示することが可能となる。
【0074】
また、実施の形態1と同様に、第2表示制御部119により、グラフィック画像上でレーダ映像と重ならない表示域に複数の情報表示固定領域を構成し、第2表示切替部134により、操作者の指示に応じて、目標追尾情報または目標追尾情報を含む付属情報を非表示にすると共に、該目標追尾情報または該目標追尾情報を含む付属情報を一の情報表示固定領域に画像形成するので、レーダ映像の表示域での視認性を維持しつつ目標追尾情報や付属情報を表示することが可能となる。
また、実施の形態1と同様に、第2関連情報表示生成部135により、操作者の指示に応じて、該指示に該当する目標(レーダエコー)について、目標追尾情報を含む付属情報に基づき関連情報を生成し、グラフィック画像上に画像形成するので、視認性を維持しつつ目標追尾情報や付属情報に基づく関連情報を表示することが可能となる。
さらに、実施の形態1と同様に、カーソル重なりを検知した目標(レーダエコー)について、第2表示制御部119で所定方向に向かう目標ベクトルを画像形成し、第2表示モード切替部136により、操作者の指示に応じて目標ベクトルの表示モードを切り替えるので、視認性を維持しつつ目標追尾情報や付属情報に基づく関連情報を表示することが可能となる。
【0075】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、AIS情報を受信している目標に関しては、目標追尾部18で求めた目標追尾情報の代わりにAIS情報を用いることも可能である。さらに、AIS情報から得られる船舶名等の追加情報を付属情報表示領域に表示しても良い。
【符号の説明】
【0076】
1.1A レーダ表示装置
2 電子海図表示装置
3 レーダ表示システム
10 送受信部
11 AD変換部
12 信号処理部
13 座標変換部
14 映像用メモリ
15 表示部
16 操作部
18 目標追尾部
19 表示制御部
20 グラフィック用メモリ
21 アンテナ
22.122 インタフェース部
31 カーソル重なり検知部
32 付属情報表示領域設定部
33 優先表示制御部
34 表示切替部
35 関連情報表示生成部
36 表示モード切替部
41,141 マウス
42,142 トラックボール
43,143 キー群
51B レーダエコー
53B 目標追尾シンボル
54B 目標ベクトル
56B,57B 付属情報表示領域(ポップアップ表示窓)
56Bc,57Bc 簡易コマンドバー
65 コマンドバー
81~85 コマンドアイコン
101,111 レーダ信号
102,112 目標追尾情報を含む付属情報
113 海図データ
114 第2映像用メモリ
115 第2表示部
116 第2操作部
119 第2表示制御部
120 第2グラフィック用メモリ
123 レーダ映像生成部
131 第2カーソル重なり検知部
132 第2付属情報表示領域設定部
133 第2優先表示制御部
134 第2表示切替部
135 第2関連情報表示生成部
136 第2表示モード切替部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11