(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】同軸避雷器
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/50 20060101AFI20220114BHJP
H01P 1/202 20060101ALI20220114BHJP
H02G 13/00 20060101ALI20220114BHJP
H02H 9/02 20060101ALI20220114BHJP
H02H 9/04 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
H01Q1/50
H01P1/202
H02G13/00
H02H9/02 G
H02H9/04 C
(21)【出願番号】P 2018072234
(22)【出願日】2018-04-04
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000227892
【氏名又は名称】日本アンテナ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【氏名又は名称】浅見 保男
(74)【代理人】
【識別番号】100197022
【氏名又は名称】谷水 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100199820
【氏名又は名称】西脇 博志
(72)【発明者】
【氏名】新井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】岡島 辰徳
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-191970(JP,A)
【文献】特開2012-065276(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0180382(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/20
H01Q 1/50
H02G 13/00
H02H 9/02
H02H 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子と第2端子との間を接続する同軸線路と、
該同軸線路の中途の接続点に接続されたLC分岐部と、
該LC分岐部に接続され、一端が短絡されているショートスタブとを備え、
前記LC分岐部は、容量を可変可能なキャパシタと、インダクタンスを調整可能なインダクタとの並列回路からなり、前記キャパシタおよび前記インダクタの一端が、前記接続点とされる前記同軸線路の中心導体に接続され、前記キャパシタの他端がアースに、前記インダクタの他端が前記ショートスタブの他端に接続されており、低域通過周波数FLと高域通過周波数FHとが通過域とされていることを特徴とする同軸避雷器。
【請求項2】
低域通過周波数FLと高域通過周波数FHとが、通過域となるように前記キャパシタの容量値および前記インダクタのインダクタンス値が設定され、低域通過周波数FLにおける自由空間の波長をλとした際に、前記ショートスタブの長さが0.16λ~0.24λとされていることを特徴とする請求項1に記載の同軸避雷器。
【請求項3】
前記インダクタと前記ショートスタブとの直列回路の直列共振周波数が、低域通過周波数FLと高域通過周波数FHとの中央付近に設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の同軸避雷器。
【請求項4】
前記同軸線路は、前記第1端子に一端が接続された第1同軸線路と、前記第2端子に一端が接続された第2同軸線路の2本からなり、前記LC分岐部は筒状の分岐部外部導体を備え、前記第1同軸線路および前記第2同軸線路の外部導体が該分岐部外部導体の対面する側面にそれぞれ接続され、該分岐部外部導体の内部において、前記第1同軸線路および前記第2同軸線路の他端における中心導体が接続されて前記接続点が構成され、
前記分岐部外部導体における上部の内部にアース板、ロータおよびステータが配置されて、該ロータは中心軸が前記アース板に回転可能に支持され、前記ロータに対面して配置された前記ステータが前記接続点に接続され、
前記分岐部外部導体の下部の内部に前記インダクタを構成する空芯コイルが配置され、該空芯コイルの他端に前記ショートスタブを構成する同軸線路の中心導体が接続されており、
前記キャパシタが前記ロータおよび前記ステータとにより構成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の同軸避雷器。
【請求項5】
前記分岐部外部導体の側面に、前記空芯コイルのインダクタンスを調整するための窓が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の同軸避雷器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナと無線機との間などに挿入される同軸避雷器に関する。
【背景技術】
【0002】
雷害対策のためにアンテナと無線機間に避雷器が挿入されるが、この避雷器として、雷サージ保護素子を用いた避雷器は、無線機の高い出力電力に耐えることが困難なことから、避雷器として採用するには問題が多い。これに対して、同軸線路を基本とした避雷器は、無線機の高い出力電力に耐えられると共に、大きな雷サージ電流にも適していることから、避雷器として用いることが多く、同軸線路を基本とした避雷器は、一般的に同軸避雷器と呼ばれている。
従来の基本的な同軸避雷器100の構成を
図16に示す。同軸避雷器100は、
図16に示すようにアンテナからの同軸線路が接続される第1端子110と、無線機への同軸線路が接続される第2端子111とを接続する同軸の線路112の中途の接続点に、使用周波数における1/4波長の電気長を持つショートスタブ115が接続されて構成されている。ショートスタブ115は同軸線路からなり、この同軸線路の先端において、外部導体が接続される地中のアースに中心導体が短絡されている。そして、ショートスタブ115の電気長が1/4波長であることから、線路112の接続点から見たショートスタブ115のインピーダンスは使用周波数において高いインピーダンスとなることから、線路112への影響がなく電気特性は良好となる。一方、誘導雷等の周波数成分は直流若しくは直流に近い低域周波数に集中しているので、直流的にショートされているショートスタブ115を介して誘導雷等のエネルギーの大半は地中のアースに誘導されて、雷電流の無線機側への流入が大幅に軽減される。
【0003】
同軸避雷器100の使用周波数を160MHzとし、ショートスタブの特性インピーダンスを50Ω、160MHzにおける1/4波長相当の電気長とした同軸避雷器100の挿入損失および反射減衰量の周波数特性を
図17に示す。
図17において、実線が挿入損失で点線が反射減衰量であり、160MHzにおいて挿入損失がほぼ0dBで、反射減衰量が約60dBの良好な特性となっている。使用可能周波数帯域をVSWR1.1相当の反射減衰量26.4dB以上とすると、160MHz帯の帯域幅は約19MHzとなり、使用可能周波数帯域が狭くなっている。
図16に示す従来の同軸避雷器100は、ガス入り放電管や半導体などからなる雪サージ保護素子を用いていないことから、高出力の送信通過電力と大きな雷サージ電流に耐えられる利点がある一方で、使用可能な通過周波数帯域幅が狭いという問題点があった。
【0004】
ここで、同軸避雷器100の通過周波数特性について詳しく分析してみると、次のような特徴を持つことが分かる。
ショートスタブ115は、1/4波長相当の周波数以外に奇数倍の周波数において同様の電気特性を繰り返す。
図17を参照すると、基本通過周波数が160MHzであるが、3倍の480MHzでも使用可能な電気特性になっている。この原理により、条件が揃えば複数の周波数帯域でも同軸避雷器は使用できる場合がある。但し、使用可能周波数は該当周波数の関係が前述の160HHzと480HHzが3倍であるように奇数倍の関係になっている場合であって、
図17に示すように、基本通過周波数の2倍の320MHzを含む大凡180MHz~460MHzの周波数帯域では、反射特性や挿入損失損失が劣化して実用上使用できないことが分かる。
【0005】
近年の通信システムにおいては多周波運用が頻繁に行われており、160MHz帯と350MHz帯の2波を共用アンテナと共用フィルタを用いて同時運用するなどの例がある。この場合は350HHzは160MHzに対して約2.2倍の偶数倍に近い関係なので、2波共用アンテナの給電系統に
図16に示す従来の同軸避雷器100を挿入することができない。従って、奇数倍以外の周波数関係にある複数の周波数帯域で使用するには、新たな構成の同軸避雷器が必要となる。
【0006】
次に、160MHz帯と350MHz帯の2波において使用可能な特許文献1に示す従来の同軸避雷器200が提案されており、この同軸避雷器200の回路構成を
図18に示す。
この従来の同軸避雷器200は、160MHzと350HHzの周波数で使用可能な同軸避雷器であり、
図18に示すように、アンテナからの線路が接続される第1端子210を有し、第1端子210と第1線路212aとの間に第1スタブ213aが接続されている。また、無線機への線路が接続される第2端子211を有し、第2端子211と第2線路212bとの間に第2スタブ213bが接続されている。第1スタブ213a、第1線路212a、第2線路212b、第2スタブ213bは同軸線路から構成されている。そして、第1線路212aと第2線路212bとの中心導体同士の接続点に、同軸線路からなるショートスタブ215の中心導体が接続されている。ショートスタブ215の外部導体はアースされており、先端において、中心導体がアースに短絡されている。また、第1スタブ213a、第1線路212a、第2線路212b、第2スタブ213bの外部導体はアースに接続されている。
【0007】
図18に示す従来の同軸避雷器200における個々の電気定数は、第1端子210および第2端子211の入出力インピーダンスが50Ωとされ、第1スタブ213aおよび第2スタブ213bの特性インピーダンスが18.62Ωで160MHzに対して8.3°の位相に相当する長さとされ、第1線路212aと第2線路212bとされる同軸線路の特性インダーダンスが50Ωで、第1線路212aと第2線路212bの長さは、160MHzに対して19.6°の位相に相当する長さとされている。ショートスタブ215とされる同軸線路の特性インピーダンスは50Ωで160MHzに対して62.1°の位相に相当する長さとされており、先端は内部導体が外部導体に短絡する構造となっている。
【0008】
このような電気定数とされた従来の同軸避雷器200の挿入損失および反射減衰量の周波数特性を
図19に示す。
図19を参照すると、160MHzにおいて挿入損失がほぼ0dBで、反射減衰量が約60dBとなり、350MHzにおいて挿入損失がほぼ0dBで、反射減衰量が約41dBの良好な特性が得られている。このように、従来の同軸避雷器200は160MHzと350HHzの周波数で使用可能となる。
【0009】
次に、
図18に示す回路構成の従来の同軸避雷器200を具現化した構成を
図20(a)(b)に示す。
図20(a)は従来の同軸避雷器200の構成を示す正面図、
図20(b)は従来の同軸避雷器200の構成を示す平面図である。
これらの図に示す同軸避雷器200は、第1端子210である第1接栓220aを有する第1同軸線路220と、第2端子211である第2接栓221aを有する第2同軸線路221と、同軸線路からなるショートスタブ215とから構成されている。ショートスタブ215は、第1同軸線路220と第2同軸線路221との接続部から、第1同軸線路220と第2同軸線路221とに直交して配置されており、同軸避雷器200はT字状とされている。ショートスタブ215の先端に設けられたアース部215aにおいて、中心導体が外部導体であるアースに短絡されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の同軸避雷器200は
図18に示すように、第1端子210と第2端子211との間に第1スタブ213a、第1線路212a、第2線路212b、第2スタブ213bとを接続する複雑な構成になるという問題点があった。また、
図20(a)(b)に示すように、第1接栓220aから第2接栓221aまでの長さL100は550mmとされ、第1同軸線路220と第2同軸線路221との中心線からショートスタブ215の先端までの長さL101は330mmの大きな形状になってしまうという問題点があった。さらに、従来の同軸避雷器200は、製造時に電気特性のバラ付きがあっても組み立て後の調整作業が行える構造とされおらず、組み立て後に電気特性の改善を行うことができないという問題点もあった。
【0012】
そこで、本発明は、小型にできると共に組み立て後に調整作業を行うことが可能な簡易な構成とすることができる同軸避雷器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の同軸避雷器は、第1端子と第2端子との間を接続する同軸線路と、該同軸線路の中途の接続点に接続されたLC分岐部と、該LC分岐部に接続され、一端が短絡されているショートスタブとを備え、前記LC分岐部は、容量を可変可能なキャパシタと、インダクタンスを調整可能なインダクタとの並列回路からなり、前記キャパシタおよび前記インダクタの一端が、前記接続点とされる前記同軸線路の中心導体に接続され、前記キャパシタの他端がアースに、前記インダクタの他端が前記ショートスタブの他端に接続されており、低域通過周波数FLと高域通過周波数FHとが通過域とされていることを最も主要な特徴としている。
【0014】
また、上記本発明の同軸避雷器において、低域通過周波数FLと高域通過周波数FHとが、通過域となるように前記キャパシタの容量値および前記インダクタのインダクタンス値が設定され、低域通過周波数FLにおける自由空間の波長をλとした際に、前記ショートスタブの長さが0.16λ~0.24λとされていてもよい。
さらに、上記本発明の同軸避雷器において、前記インダクタと前記ショートスタブとの直列回路の直列共振周波数が、低域通過周波数FLと高域通過周波数FHとの中央付近に設定されていてもよい。
さらにまた、上記本発明の同軸避雷器において、前記同軸線路は、前記第1端子に一端が接続された第1同軸線路と、前記第2端子に一端が接続された第2同軸線路の2本からなり、前記LC分岐部は筒状の分岐部外部導体を備え、前記第1同軸線路および前記第2同軸線路の外部導体が該分岐部外部導体の対面する側面にそれぞれ接続され、該分岐部外部導体の内部において、前記第1同軸線路および前記第2同軸線路の他端における中心導体が接続されて前記接続点が構成され、前記分岐部外部導体における上部の内部にアース板、ロータおよびステータが配置されて、該ロータは中心軸が前記アース板に回転可能に支持され、前記ロータに対面して配置された前記ステータが前記接続点に接続され、前記分岐部外部導体の下部の内部に前記インダクタを構成する空芯コイルが配置され、該空芯コイルの他端に前記ショートスタブを構成する同軸線路の中心導体が接続されており、前記キャパシタが前記ロータおよび前記ステータとにより構成されていてもよい。
さらにまた、本発明の同軸避雷器において、前記分岐部外部導体の側面に、前記空芯コイルのインダクタンスを調整するための窓が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の同軸避雷器は、低域通過周波数FLと高域通過周波数FHとが通過域とされ、同軸線路の中途の接続点に接続されたLC分岐部が、容量を可変可能なキャパシタと、インダクタンスを調整可能なインダクタとの並列回路からなることから、組み立て後に調整作業を行うことが可能になると共に、小型で簡易な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例である同軸避雷器の回路構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施例である同軸避雷器の構成を示す正面図および平面図である。
【
図3】本発明の実施例である同軸避雷器の寸法の一例を示す平面図である。
【
図4】本発明の実施例である同軸避雷器の中央部の構成を拡大した断面図で示す図である。
【
図5】本発明の実施例である同軸避雷器の電気特性を説明する回路図である。
【
図6】本発明の実施例である同軸避雷器の計算した電気特性を示す図である。
【
図7】本発明の実施例である同軸避雷器の実測した電気特性を示す図である。
【
図8】本発明の実施例である同軸避雷器において、電気定数を変えた際の解析結果を示す図表である。
【
図9】本発明の実施例である同軸避雷器の電気定数を変えた際の電気特性を示す図である。
【
図10】本発明の実施例である同軸避雷器の電気定数を変えた際の他の電気特性を示す図である。
【
図11】本発明の実施例である同軸避雷器の電気定数を変えた際のさらに他の電気特性を示す図である。
【
図12】本発明の実施例である同軸避雷器の電気定数を変えた際のさらに他の電気特性を示す図である。
【
図13】本発明の実施例である同軸避雷器の電気定数を変えた際のさらに他の電気特性を示す図である。
【
図14】本発明の実施例である同軸避雷器の電気定数を変えた際のさらに他の電気特性を示す図である。
【
図15】本発明の実施例である同軸避雷器の電気定数を変えた際のさらに他の電気特性を示す図である。
【
図16】従来の基本的な同軸避雷器の回路構成を示す図である。
【
図17】従来の基本的な同軸避雷器の電気特性を示す図である。
【
図18】従来の他の同軸避雷器の回路構成を示す図である。
【
図19】従来の他の同軸避雷器の電気特性を示す図である。
【
図20】従来の他の同軸避雷器の構成を示す正面図および平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
組み立て後に調整作業を行うことが可能になると共に、小型で簡易な構成とするという目的を、同軸線路の中途の接続点に接続されたLC分岐部が、容量を可変可能なキャパシタと、インダクタンスを調整可能なインダクタとから構成することで実現した。
【実施例】
【0018】
本発明の実施例の同軸避雷器1の回路構成を
図1に示す。
図1に示す本発明の実施例の同軸避雷器1は、例えば160MHzと350HHzの2波の周波数で使用可能な同軸避雷器であり、アンテナからの線路が接続される第1端子10と無線機への線路が接続される第2端子11とを有している。第1端子10と第2端子11との間は同軸線路16により接続されており、この同軸線路16の中途の接続点16aにLC分岐部12が接続されている。LC分岐部12は、一端が同軸線路16の中途の接続点16aに接続され他端がアースされた容量を可変可能なキャパシタ13と、一端が同軸線路16の中途の接続点16aに接続され他端がショートスタブ15の一端に接続されているインダクタンスを調整可能なインダクタ14とから構成されている。ショートスタブ15は、所定長の同軸線路から構成され、この同軸線路の外部導体はアースされており、同軸線路の内部導体の一端にインダクタ14が接続され、該内部導体の他端は外部導体に短絡されてアースされている。
本発明の実施例の同軸避雷器1は、2つの指定通過周波数、例えば160MHzと350HHzにおいては、LC分岐部12およびショートスタブ15の影響を受けることなく良好な通過特性が得られる。一方、誘導雷等の周波数成分は直流若しくは直流に近い低域周波数に集中しているので、直流的にショートされているインダクタ14とショートスタブ15の直列回路を介して誘導雷等のエネルギーの大半はアースとされる地中に誘導されて、雷電流の無線機側への流入が大幅に軽減される。
【0019】
[具現化した実施例]
次に、
図1に示す回路構成の本発明の実施例の同軸避雷器1を具現化した構成を
図2(a)(b)、
図3および
図4に示す。
図2(a)は本発明の実施例の同軸避雷器1の構成を示す正面図、
図2(b)は本発明の実施例の同軸避雷器1の構成を示す平面図であり、
図3は本発明の実施例である同軸避雷器1の寸法例を示す平面図であり、
図4は本発明の実施例である同軸避雷器の中央部の構成を拡大した断面図で示す図である。
これらの図に示す本発明の実施例の同軸避雷器1では、同軸線路16が第1同軸線路20と第2同軸線路21とで構成される。第1同軸線路20は、第1端子10である第1接栓20aを端部に備え断面が円形とされ、第2同軸線路21は、第2端子11である第2接栓21aを端部に備え断面が円形とされる。第1同軸線路20と第2同軸線路21との間にLC分岐部12が設けられており、LC分岐部12の端部に、断面が円形のリジッドな同軸線路からなるショートスタブ15が設けられている。第1同軸線路20は、円筒状の金属製とされたリジッドな第1給電線外部導体20bと、第1給電線外部導体20bのほぼ中心軸状に配置された内部が空洞とされたパイプ状の第1給電線内部導体20cとから構成されている。この場合、中央に第1給電線内部導体20cが挿通される挿通孔が形成された絶縁性とされた円板状の第3支持体20eが、第1給電線外部導体20b内に所定間隔で配置され、第3支持体20eにより第1給電線内部導体20cが第1給電線外部導体20bのほぼ中心軸状に配置されている。また、第2同軸線路21は、円筒状の金属製とされたリジッドな第2給電線外部導体21bと、第2給電線外部導体21bのほぼ中心軸状に配置された内部が空洞とされたパイプ状の第2給電線内部導体21cとから構成されている。この場合、中央に第2給電線内部導体21cが挿通される挿通孔が形成された絶縁性とされた円板状の第4支持体21eが、第2給電線外部導体21b内に所定間隔で配置され、第4支持体21eにより第2給電線内部導体21cが第2給電線外部導体21bのほぼ中心軸状に配置されている。
【0020】
LC分岐部12は、金属製とされた第1外部導体32aと第2外部導体32bとを備え、上部に形成された第1外部導体32aは円筒状に形成されており、第1外部導体32aの下方に一体に形成された第2外部導体32bは、内部に断面円形の貫通孔が十字状に形成された直方体状とされている。第1外部導体32aの断面円形の内部には中央にネジ穴が形成された金属製とされた円板状のアース板35が配置されている。この場合、第1外部導体32aの上部の内面に段差が形成されて、この段差までネジ部が内面に形成されており、このネジ部にアース板35の外周面に形成されたネジが螺合されて固着され、段差にアース板35の下面が当接している。アース板35のネジ穴には、金属製とされた円板状の対向円板ロータ36の上面の中央から上方へ延伸するよう形成された回転用ネジ34が螺合している。回転用ネジ34を回転させることにより、対向円板ロータ36の位置を上下に調整することができる。対向円板ロータ36の位置を調整した後は、回転用ネジ34にロックナット34aを螺着してロックできる。アース板35の上面および回転用ネジ34とロックナット34aを覆うように、防水キャップ31が第1外部導体32aの上端から嵌着されて、その内面に圧接されている。防水キャップ31の第1外部導体32aの内面に圧接される側周面に柔軟な材質からなるOリング31aがはめ込まれており、Oリング31aの機能により確実に防水されるようになる。
【0021】
第1外部導体32aの内部には、対向円板ロータ36に対面して金属製とされた円板状の対向円板ステータ37が配置されており、対向円板ステータ37の下面の中央から下方へ延伸して細い円柱状のLC分岐部内部導体12bが形成されている。LC分岐部内部導体12bの下端は断面円形の接続内部導体38の側周面に接続されている。第2外部導体32bの内部には断面円形の貫通孔が十字状に形成されており、第1外部導体32aの内部に連通する一方の第1貫通孔の上部にLC分岐部内部導体12bが挿通される挿通孔が形成された円板状の第1支持体33が配置され、LC分岐部内部導体12bは、第1支持体33により第2外部導体32bの該貫通孔内のほぼ中心軸状に配置されている。上述した対向円板ロータ36と対向円板ステータ37とにより容量を可変可能なキャパシタ13が構成される。
【0022】
LC分岐部内部導体12bの下端が固着された接続内部導体38の反対側の側周面にはインダクタ14を構成する空芯コイル12dの一端が固着されて接続されている。空芯コイル12dは、上記第1貫通孔の下部に収納されており、空芯コイル12dの他端は、ショートスタブ15を構成している同軸線路のショートスタブ内部導体15aの一端に接続されている。また、ショートスタブ15を構成している同軸線路のショートスタブ外部導体15bの上端が、第2外部導体32bの下端において断面円形の上記第1貫通孔内に嵌入されて固着され、両者がハンダ付けあるいはロウ付けにより固着されて接続されている。ショートスタブ外部導体15bの内部に、中央にショートスタブ内部導体15aが挿通される挿通孔が形成された円板状の第2支持体15cが所定間隔で配置され、ショートスタブ内部導体15aは、第2支持体15cによりショートスタブ外部導体15bのほぼ中心軸状に配置されている。ショートスタブ内部導体15aは、先端に設けられたアース部25aおいてショートスタブ外部導体15bに接続されて短絡されている。また、空芯コイル12dが配置された位置に相当する第2外部導体32bの側周面には円形の調整窓12eが形成されており、この調整窓12eを通して工具を挿入して空芯コイル12dのピッチ等を変えて、空芯コイル12dのインダクタンスを調整することができる。調整窓12eには開閉可能な金属製の蓋がはめられている。なお、ショートスタブ15の下部に設けられている端子台25bは、地中に埋設されたアース線が接続される端子台とされている。
【0023】
第1給電線外部導体20bの第2外部導体32b側には鍔部が形成されており、この鍔部が複数の第1取付ネジ23aにより第2外部導体32bの平面状とされた4側面の内の一つである第1側面に固着されている。第2外部導体32bの内部において、第1側面から対面する第2側面まで、前記した十字状の貫通孔の他方の第2貫通孔が形成されており、第2貫通孔は、第1給電線外部導体20bの内周面の形状とほぼ同形状とされて、第1給電線外部導体20bの内周面は第2貫通孔に連通される。また、第2給電線外部導体21bの第2外部導体32b側にも鍔部が形成されており、この鍔部が複数の第2取付ネジ23bにより第2外部導体32bの第2側面に固着されている。そして、第2給電線外部導体21bの内周面は第2貫通孔に連通される。第1給電線外部導体20bに形成された鍔部内にはOリング20fが嵌着され、第2給電線外部導体21bに形成された鍔部内にはOリング21fが嵌着されて、第1給電線外部導体20bおよび第2給電線外部導体21bは、水密に第2外部導体32bの両側面にそれぞれ固着される。
さらに、パイプ状とされた第1給電線内部導体20c内に配置された固定ネジ20dにより、第1給電線内部導体20cは接続内部導体38の一端面に固着されて接続され、パイプ状とされた第2給電線内部導体21c内に配置された固定ネジ21dにより、第2給電線内部導体21cは接続内部導体38の他端面に固着されて接続されている。接続内部導体38と第1給電線内部導体20cおよび第2給電線内部導体21cとの境界部分はハンダ付けされる。ハンダ付けするための窓が、第2外部導体32bの第1側面および第2側面を除く1つの側面に形成されている。この窓にも開閉可能な金属製の蓋がはめられている。
【0024】
このように構成された本発明の実施例にかかる同軸避雷器1は、
図2(a)(b)および
図3に示すようにT型形状とされ、通過周波数を160MHzと350MHzの2波としたときの同軸避雷器1の寸法の一例を示す。
図3においては、ショートスタブ15の長さがL1、第1端子10とされる第1接栓20aから第2端子11とされる第2接栓21aまでの長さがL2、LC分岐部12の上端からショートスタブ15の上端までの長さがL3、ショートスタブ15の下端からアース部25aの下端までの長さがL4と表されている。ここで、低域通過周波数における自由空間の波長をλとすると、長さL1が約0.2λの長さとされ、長さL3が約110mmとされ、長さL4が約20mmとされ、長さL2が約140mmとされて、同軸避雷器1は小型とされている。なお、ショートスタブ15の長さL1は、低域通過周波数を160MHzとすると、約375mmとなる。また、長さL2は、所望に応じて140mmより長くしてもよいし短くしてもよい。なお、第1接栓20aおよび第2接栓21aはフランジ付同軸管型としているが、同軸型のコネクタ形状であっても良い。
【0025】
[同軸避雷器の解析]
図5に本発明の実施例である同軸避雷器1の解析を行うための等価回路図を示す。
図5において、キャパシタ13の容量値をC、インダクタ14のインダクタンス値をL、ショートスタブ15の長さを角度θで特性インピーダンスをZd、第1端子10および第2端子11のインピーダンスをZoと表す。なお、角度θは160MHzにおける角度とされている。
図5において、分岐点Pから見たショートスタブ15側のインピーダンスZ
1はリアクタンス成分だけとなり、なので、jX
1とすると
Z
1=jX
1=j(ωL/Zo)+j{(Zd/Zo)・tan(θ)}
=j(1/Zo){ωL+Zd・tan(θ)} (1)
となる。また、分岐点Pから見たキャパシタ13側のインピーダンスZ
2もリアクタンス成分だけとなる。
Z
2=jX
2=1/(jωC・Zo)=-j{(1/(ωC・Zo)}
=-j{(1/Zo)・(1/ωC)} (2)
となる。分岐点PではZ
1とZ
2とが並列接続されていることから、そのサセプタンスjBを(1)(2)式を用いて求めると、
jB=jZo{ωC(ωL+Zd・tanθ)-1}/(ωL+Zd・tanθ)
(3)
となる。
よって、
図5に示す同軸避雷器1の四端子定数( A , B , C , D )は、次の様になる。
【0026】
【0027】
四端子定数から伝送量SBを求める公式は、
SB=20log
10(1/2)|A+B+C+D| (5)
である。
図5に示す同軸避雷器1は、無損失回路として定義されることから、通過域ではSB=0dBとなるので、A=D=1かつB=C=0が成立すれば、(5)式から、伝送量SBは、
SB=20log
10(1/2)|1+1|=20log
10(1)=0dB
となる
。
してみれば、(4)式においてC項が0、すなわちC項の分子が0になればSB=0dBとなることから、
ωC(ωL+Zd・tanθ)-1=0 (6)
が成立すれば良い。ここで、高域通過周波数をFH、低域通過周波数をFLとして表し、高域通過周波数FHと低域通過周波数FLの比率Nは、FH/FLとなり、
FH=N・FL (7)
が成立する。そして、高域通過周波数FHでは、位相量はNθ,角周波数はNωとなるから、高域通過周波数FHにおけるC項の分子が0になる条件は(6)式から
NωC{NωL+Zd・tan(Nθ)}-1=0 (8)
となる。(6)式と(8)式からキャパシタ13の容量値Cとインダクタ14のインダクタンス値Lを求めると、
C=
(N
2
-1)/[NωZd{N・tanθ-tan(Nθ)}] (9)
L=
Zd{tanθ-N・tan(Nθ)}/ω(N
2
-1) (10)
となる。ただし、Zd>0でありC≧0,L≧0である。
【0028】
本発明の実施例にかかる同軸避雷器1において、低域通過周波数FLを160MHz、高域通過周波数FHを350MHzの2波とした際に、第1端子10および第2端子11の入出力インピーダンスおよび第1同軸線路20と第2同軸線路21の特性インピーダンスを50Ωとし、ショートスタブ15を構成する同軸線路の特性インピーダンスを70Ωとし、低域通過周波数FLの波長をλとした際に、長さL1が約0.2λの長さとされた時のキャパシタ13の容量値Cとインダクタ14のインダクタンス値Lを(9)(10)式から求める。なお、θは0.2×360=72°となり、比率Nは350/160となる。
C=(N
2
-1)/[NωZd{N・tanθ-tan(Nθ)}]
=3.440610976×10-12≒3.4406[pF]
L=Zd{tanθ-N・tan(Nθ)}/ω(N
2
-1)
=73.284015×10-9≒73.284[nH]
が得られる。
【0029】
[電気特性]
本発明の実施例にかかる同軸避雷器1において、上記した電気定数とした際の計算した挿入損失の周波数特性および反射減衰量の周波数特性を
図6に、実測した挿入損失の周波数特性および反射減衰量の周波数特性を
図7に示す。
図6および
図7において実線が挿入損失で点線が反射減衰量であり、
図6を参照すると、160MHz(FL)において挿入損失がほぼ0dBで、反射減衰量が約60dBとなり、350MHz(FH)において挿入損失がほぼ0dBで、反射減衰量が約60dBの良好な特性が得られている。使用可能周波数帯域をVSWR1.1相当の反射減衰量26.4dB以上とすると、低域通過周波数FLの通過帯域が、(FL-19.8)~(FL+19.3)の39.1MHzとなり、高域通過周波数FHの通過帯域が、(FH-19.0)~(FH+26.6)の45.6MHzの広帯域な周波数特性が得られている。また、インダクタ14とショートスタブ15からなる直列共振回路の直列共振周波数(インピーダンスZ
1が0になる周波数)は、低域通過周波数FLと高域通過周波数FHとの中央付近の約266.090MHzとなっている。
また、
図7を参照すると、160MHz(FL)において挿入損失がほぼ0dBで、反射減衰量が約37dBとなり、350MHz(FH)において挿入損失がほぼ0dBで、反射減衰量が約40dBの良好な特性が得られている。使用可能周波数帯域をVSWR1.1相当の反射減衰量26.4dB以上とすると、低域通過周波数FLの通過帯域が約35MHz、高域通過周波数FHの通過帯域が約48MHzの広帯域な周波数特性が得られている。
このように、本発明の実施例にかかる同軸避雷器1は、低域通過周波数FLと高域通過周波数FHで広帯域とすることができると共に、低損失で反射減衰量も良好とすることができる。
【0030】
上記説明した本発明の実施例にかかる同軸避雷器1においては、インダクタ14を構成する空芯コイル12dのインダクタンスを、空芯コイル12dのピッチ等を変更することで調整することができる。また、対向円板ロータ36と対向円板ステータ37とから構成されるキャパシタ13のキャパシタンスを、回転用ネジ34を回転させて対向円板ロータ36の対向円板ステータ37に対する間隔を変更することにより調整することができる。インダクタ14のインダクタンス値とキャパシタ13のキャパシタンス値を調整することにより、本発明の実施例にかかる同軸避雷器1においては、組み立て後に電気特性のバラ付きがあっても、調整作業を施すことで電気特性の改善を図れるようになる。
なお、以上の電気定数は一例であって、2つの指定通過周波数や入出力インピーダンスあるいは低域周波数と高域周波数の使用可能通過帯域幅の比率等の条件が異なれば、設定される電気定数が異なることは言うまでもない。
【0031】
次に、本発明の実施例にかかる同軸避雷器1において、低域通過周波数FLの波長をλとした際のショートスタブ15の長さL1を0.16λ~0.24λとした際、および、他の電気定数を変えた際の解析結果を
図8の図表に示す。
図8の図表において、No.1の解析結果は、Zo=50[Ω]、FL=160[MHz]、FH=350[MHz]、Zd=70[Ω]、ショートスタブの電気長L1=0.2λとした時であり、上述した通りの解析結果とされ、その挿入損失の周波数特性および反射減衰量の周波数特性が
図6に示されている。
N0.2の解析結果は、Zo=50[Ω]、FL=160[MHz]、FH=350[MHz]、Zd=70[Ω]とし、ショートスタブの電気長L1=0.24λに変えた時であり、キャパシタ13の容量値Cとインダクタ14のインダクタンス値Lを(9)(10)式から求めている。容量値Cは、約0.7104[pF]、インダクタンス値Lは約286.017[nH]となり、この時の本発明の実施例にかかる同軸避雷器1の挿入損失の周波数特性および反射減衰量の周波数特性が
図9に示されている。
図9に示すように、低域通過周波数FLの通過帯域が、(FL-33.3)~(FL+12.9)の46.2MHzとなり、高域通過周波数FHの通過帯域が、(FH-112.7)~(FH+146.8)の259.5MHzの広帯域な周波数特性が得られている。上記直列共振回路の直列共振周波数は、低域通過周波数FL側に近く高域通過周波数FH側から離れた188.309MHzとなっている。
【0032】
N0.3の解析結果は、Zo=50[Ω]、FL=160[MHz]、FH=350[MHz]、Zd=70[Ω]とし、ショートスタブの電気長L1=0.16λに変えた時であり、キャパシタ13の容量値Cとインダクタ14のインダクタンス値Lを(9)(10)式から求めている。容量値Cは、約5.0979[pF]、インダクタンス値Lは約84.373[nH]となり、この時の本発明の実施例にかかる同軸避雷器1の挿入損失の周波数特性および反射減衰量の周波数特性が
図10に示されている。
図10に示すように、低域通過周波数FLの通過帯域が、(FL-21.0)~(FL+22.9)の43.9MHzとなり、高域通過周波数FHの通過帯域が、(FH-6.3)~(FH+8.8)の15.1MHzの広帯域な周波数特性が得られている。上記直列共振回路の直列共振周波数は、低域通過周波数FL側から離れ高域通過周波数FH側に近い313.454MHzとなっている。
【0033】
N0.4の解析結果は、Zo=50[Ω]、FL=160[MHz]、FH=350[MHz]、ショートスタブの電気長L1=0.2λとし、Zd=50[Ω]に変えた時であり、キャパシタ13の容量値Cとインダクタ14のインダクタンス値Lを(9)(10)式から求めている。容量値Cは、約4.8169[pF]、インダクタンス値Lは約52.346[nH]となり、この時の本発明の実施例にかかる同軸避雷器1の挿入損失の周波数特性および反射減衰量の周波数特性が
図11に示されている。
図11に示すように、低域通過周波数FLの通過帯域が、(FL-14.3)~(FL+14.0)の28.3MHzとなり、高域通過周波数FHの通過帯域が、(FH-14.3)~(FH+18.2)の32.5MHzの広帯域な周波数特性が得られている。上記直列共振回路の直列共振周波数は、低域通過周波数FLと高域通過周波数FHとの中央付近の266.090MHzとなっている。
【0034】
N0.5の解析結果は、Zo=50[Ω]、FL=160[MHz]、FH=350[MHz]、ショートスタブの電気長L1=0.2λとし、Zd=100[Ω]に変えた時であり、キャパシタ13の容量値Cとインダクタ14のインダクタンス値Lを(9)(10)式から求めている。容量値Cは、約2.4084[pF]、インダクタンス値Lは約104.692[nH]となり、この時の本発明の実施例にかかる同軸避雷器1の挿入損失の周波数特性および反射減衰量の周波数特性が
図12に示されている。
図12に示すように、低域通過周波数FLの通過帯域が、(FL-28.0)~(FL+26.9)の54.9MHzとなり、高域通過周波数FHの通過帯域が、(FH-25.3)~(FH+40.7)の66.0MHzの広帯域な周波数特性が得られている。上記直列共振回路の直列共振周波数は、低域通過周波数FLと高域通過周波数FHとの中央付近の266.090MHzとなっている。
【0035】
N0.6の解析結果は、Zo=50[Ω]、FL=160[MHz]、Zd=70[Ω]、ショートスタブの電気長L1=0.2λとし、FH=300[MHz]に変えた時であり、キャパシタ13の容量値Cとインダクタ14のインダクタンス値Lを(9)(10)式から求めている。容量値Cは、約2.8159[pF]、インダクタンス値Lは約137.086[nH]となり、この時の本発明の実施例にかかる同軸避雷器1の挿入損失の周波数特性および反射減衰量の周波数特性が
図13に示されている。
図13に示すように、低域通過周波数FLの通過帯域が、(FL-27.1)~(FL+24.7)の51.8MHzとなり、高域通過周波数FHの通過帯域が、(FH-19.7)~(FH+34.8)の54.5MHzの広帯域な周波数特性が得られている。上記直列共振回路の直列共振周波数は、低域通過周波数FLと高域通過周波数FHとの中央付近の241.354MHzとなっている。
【0036】
N0.7の解析結果は、Zo=50[Ω]、FH=350[MHz]、Zd=70[Ω]、ショートスタブの電気長L1=0.2λとし、FL=140[MHz]に変えた時であり、キャパシタ13の容量値Cとインダクタ14のインダクタンス値Lを(9)(10)式から求めている。容量値Cは、約4.4325[pF]、インダクタンス値Lは約46.650[nH]となり、この時の本発明の実施例にかかる同軸避雷器1の挿入損失の周波数特性および反射減衰量の周波数特性が
図14に示されている。
図14に示すように、低域通過周波数FLの通過帯域が、(FL-14.3)~(FL+14.4)の28.7MHzとなり、高域通過周波数FHの通過帯域が、(FH-14.8)~(FH+18.5)の33.3MHzの広帯域な周波数特性が得られている。上記直列共振回路の直列共振周波数は、低域通過周波数FLと高域通過周波数FHとの中央付近の258.165MHzとなっている。
【0037】
N0.8の解析結果は、Zo=50[Ω]、FH=350[MHz]、Zd=70[Ω]、ショートスタブの電気長L1=0.2λとし、FL=190[MHz]に変えた時であり、キャパシタ13の容量値Cとインダクタ14のインダクタンス値Lを(9)(10)式から求めている。容量値Cは、約2.3014[pF]、インダクタンス値Lは約124.427[nH]となり、この時の本発明の実施例にかかる同軸避雷器1の挿入損失の周波数特性および反射減衰量の周波数特性が
図15に示されている。
図15に示すように、低域通過周波数FLの通過帯域が、(FL-33.7)~(FL+30.3)の64.0MHzとなり、高域通過周波数FHの通過帯域が、(FH-23.4)~(FH+43.0)の66.4MHzの広帯域な周波数特性が得られている。上記直列共振回路の直列共振周波数は、低域通過周波数FLと高域通過周波数FHとの中央付近の283.720MHzとなっている。
【0038】
ショートスタブの電気長は理論的に(9)式および(10)式が成立する範囲で設定可能である。しかし、
図6、
図9ないし
図15を参照すると、低域通過周波数FLの通過帯域と高域通過周波数FHの通過帯域が程良い比率を保つためには、ショートスタブ15とインダクタ14からなる直列共振回路の直列共振周波数が、概ね低域通過周波数FLと高域通過周波数FHの中央付近の周波数となる場合とされる。そして、直列共振周波数に近い側の通過周波数の通過帯域は狭くなり、直列共振周波数から離れた側の通過周波数の通過帯域は広くなってアンバランスの傾向が強まるようになる。このため、低域通過周波数FLと高域通過周波数FHの中央付近に直列共振周波数を設定することが好適となる。但し、一方の通過周波数の通過帯域を極端に広くしたい場合などは、目的に合わせて直列共振周波数を意図的にずらせば、所望の幅の通過帯域に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上説明した本発明にかかる実施例の同軸避雷器は、アンテナと無線機との間に設けられ、直流的にはほぼアースに短絡されているが、2つの指定通過周波数においては、良好な通過特性が得られる。本発明にかかる同軸避雷器は、アンテナと無線機との間に設けられることに限らず、大電力が通過する同軸線路に設けることができる。
以上説明した本発明にかかる同軸避雷器の通過周波数は160MHz及び350MHzに設定したが、2つの指定通過周波数はこれに限ることはない。そして、2つの指定通過周波数や入出力インピーダンスあるいは低域通過周波数と高域通過周波数の通過帯域幅の比率等の条件が異なる場合は、それに合わせるよう異なる電気定数が設定される。また、インダクタのインダクタンス値とキャパシタのキャパシタンス値を調整することにより、本発明の実施例にかかる同軸避雷器1においては、組み立て後に電気特性のバラ付きがあっても、調整作業を施すことで電気特性の改善を図れるようになる。
また、本発明にかかる同軸避雷器においては、高域通過周波数FHと低域通過周波数FLの比率Nは、3.0未満であっても実現可能となる。ただし、比率Nが1.5以下位になると高域通過周波数FHと低域通過周波数FLとが近接して挿入損失の増加やVSWRの劣化が顕著になることから、比率Nは約1.5~約2.5とするのが好適である。さらに、ショートスタブの特性インピーダンスZdは高いほど通過帯域の幅が広帯域化されるが、製作上の都合や機械的な安定性等を総合的に勘案すると、特性インピーダンスZdは70[Ω]とするのが好適である。
【符号の説明】
【0040】
1 同軸避雷器、10 第1端子、11 第2端子、12 LC分岐部、12b LC分岐部内部導体、12d 空芯コイル、12e 調整窓、13 キャパシタ、14 インダクタ、15 ショートスタブ、15a ショートスタブ内部導体、15b ショートスタブ外部導体、15c 第2支持体、16 同軸線路、16a 接続点、20 第1同軸線路、20a 第1接栓、20b 第1給電線外部導体、20c 第1給電線内部導体、20d 固定ネジ、20e 第3支持体、20f Oリング、21 第2同軸線路、21a 第2接栓、21b 第2給電線外部導体、21c 第2給電線内部導体、21d 固定ネジ、21e 第4支持体、21f Oリング、23a 第1取付ネジ、23b 第2取付ネジ、25a アース部、25b 端子台、31 防水キャップ、31a Oリング、32a 第1外部導体、32b 第2外部導体、33 第1支持体、34 回転用ネジ、34a ロックナット、35 アース板、36 対向円板ロータ、37 対向円板ステータ、38 接続内部導体、100 同軸避雷器、110 第1端子、111 第2端子、112 線路、115 ショートスタブ、200 同軸避雷器、210 第1端子、211 第2端子、212a 第1線路、212b 第2線路、213a 第1スタブ、213b 第2スタブ、215 ショートスタブ、215a アース部、220 第1同軸線路、220a 第1接栓、221 第2同軸線路、221a 第2接栓