(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッドチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20220114BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B41J2/14 303
B41J2/14 611
B41J2/16 303
B41J2/16 511
B41J2/16 517
B41J2/14 607
(21)【出願番号】P 2017056390
(22)【出願日】2017-03-22
【審査請求日】2020-01-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096655
【氏名又は名称】川井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100091225
【氏名又は名称】仲野 均
(72)【発明者】
【氏名】中山 仁
(72)【発明者】
【氏名】杉山 剛
(72)【発明者】
【氏名】西川 大地
(72)【発明者】
【氏名】眞▲瀬▼ 江理子
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-216067(JP,A)
【文献】特開2014-177075(JP,A)
【文献】特開2015-171801(JP,A)
【文献】特開2015-085534(JP,A)
【文献】特開2014-148090(JP,A)
【文献】特開2015-107614(JP,A)
【文献】特開2014-233875(JP,A)
【文献】特開2013-121695(JP,A)
【文献】特開2002-172789(JP,A)
【文献】米国特許第05688391(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0047129(KR,A)
【文献】特開平11-268271(JP,A)
【文献】特開平10-157104(JP,A)
【文献】特開平07-132596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータプレートの第1主面に、マスクパターンを形成するマスクパターン形成工程と、
前記第1主面に形成した前記マスクパターン部分に、第1方向に沿った複数のチャネル溝を切削加工により、前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて並設して形成するチャネル溝形成工程と、
前記アクチュエータプレートに電極を形成する電極形成工程と、
前記電極形成工程後に、前記マスクパターンを剥離する剥離工程と、を含み、
前記電極形成工程では、前記アクチュエータプレートの表面側の前記電極の膜厚を、0.5μm以下に形成する、
ことを特徴とする液体噴射ヘッドチップの製造方法。
【請求項2】
前記チャネル溝形成工程は、前記チャネル溝を70μm未満の幅に形成し、
前記チャネル溝形成工程の後に、アクチュエータプレートの露出面を粗らす粗面化工程を有し、
前記電極形成工程は、前記粗面化工程の後に、めっき皮膜を形成することにより膜厚が0.5μm以下の電極を形成する、
ことを特徴とする請求項
1に記載の液体噴射ヘッドチップの製造方法。
【請求項3】
前記マスクパターン形成工程は、前記アクチュエータプレートの第1主面に、複数のアクチュエータプレート側共通パッドと複数のアクチュエータプレート側個別配線用のマスクパターンを形成し、
前記チャネル溝形成工程は、噴射チャネルと非噴射チャネルのチャネル溝を形成し、
前記アクチュエータプレート側共通パッドとアクチュエータプレート側個別配線との間に電極逃げ溝を形成する逃げ溝形成工程を有する、
ことを特徴とする請求項
2に記載の液体噴射ヘッドチップの製造方法。
【請求項4】
前記逃げ溝形成工程は、前記めっき工程の前に行う、
ことを特徴とする請求項
3に記載の液体噴射ヘッドチップの製造方法。
【請求項5】
前記逃げ溝形成工程は、前記めっき工程の後で前記剥離工程の前に行う、
ことを特徴とする請求項
3に記載の液体噴射ヘッドチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッドチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録紙等の被記録媒体に液滴状のインクを吐出(噴射)して、被記録媒体に画像や文字を記録する装置として、インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)を備えたインクジェットプリンタ(液体噴射装置)がある。このインクジェットプリンタで使用されるインクジェットヘッドは、チャネル溝を駆動するアクチュエータプレートと、チャネル溝の上部の一部に蓋をしてインク流路を形成するカバープレートの2種類のプレートを組み合わせることにより構成されている。
インクジェットヘッドでは、圧電体基材にチャネル溝加工を行い、チャネル溝内部及び表面に電極を形成させたアクチュエータプレートを使用し、駆動することでインクを吐出している。
【0003】
アクチュエータプレートに電極を形成する場合、従来から蒸着法やめっき法が広く使用されている。特許文献1では、めっき法により電極を形成する場合、その膜厚を1μmを越え5μm以下とする技術が提案されている。
しかし、本発明者の検討によると、形成した電極の膜厚が厚いと電極形成プロセス全体の歩留まりが低下するという課題が存在することがわかった。
【0004】
ところで、本発明者の検討によると、めっき法により電極を形成した場合には、電極の膜厚0.9μm以上で良好な製品ができるのはチャネル溝が広い場合であり、チャネル幅が狭い場合には成立しないことがわかった。
図29は、本発明者が検討した、電極の膜厚を0.9μmとした場合の、チャネルの溝幅と、電極形成プロセス全体の歩留まりとの関係を表したものである。
図29に示すように、チャネルの溝幅が70μmの場合の歩留まりが特に良好(◎)であるのに対し、溝幅が狭くなる程低下していることがわかる。
しかし、インクジェットプリンタではノズルの高密度化が要求されているため、チャネルの溝幅が70μm未満、例えば55μmや40μm、更に40μm以下のアクチュエータプレートが必要になっているが、チャネル溝幅が狭くなることで歩留まりが悪くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アクチュエータプレートの歩留まりをより高くすることを第1目的とする。
本発明は、チャネルの溝幅が70μm未満であるアクチュエータプレートの歩留まりをより高くすることを第2目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1に記載の発明では、アクチュエータプレートの第1主面に、マスクパターンを形成するマスクパターン形成工程と、前記第1主面に形成した前記マスクパターン部分に、第1方向に沿った複数のチャネル溝を切削加工により、前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて並設して形成するチャネル溝形成工程と、前記アクチュエータプレートに電極を形成する電極形成工程と、前記電極形成工程後に、前記マスクパターンを剥離する剥離工程と、を含み、前記電極形成工程では、前記アクチュエータプレートの表面側の前記電極の膜厚を、0.5μm以下に形成する、ことを特徴とする液体噴射ヘッドチップの製造方法を提供する。
(2)請求項2に記載の発明では、前記チャネル溝形成工程は、前記チャネル溝を70μm未満の幅に形成し、前記チャネル溝形成工程の後に、アクチュエータプレートの露出面を粗らす粗面化工程を有し、前記電極形成工程は、前記粗面化工程の後に、めっき皮膜を形成することにより膜厚が0.5μm以下の電極を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッドチップの製造方法を提供する。
(3)請求項3に記載の発明では、前記マスクパターン形成工程は、前記アクチュエータプレートの第1主面に、複数のアクチュエータプレート側共通パッドと複数のアクチュエータプレート側個別配線用のマスクパターンを形成し、前記チャネル溝形成工程は、噴射チャネルと非噴射チャネルのチャネル溝を形成し、前記アクチュエータプレート側共通パッドとアクチュエータプレート側個別配線との間に電極逃げ溝を形成する逃げ溝形成工程を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッドチップの製造方法を提供する。
(4)請求項4に記載の発明では、前記逃げ溝形成工程は、前記めっき工程の前に行う、ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッドチップの製造方法を提供する。
(5)請求項5に記載の発明では、前記逃げ溝形成工程は、前記めっき工程の後で前記剥離工程の前に行う、ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッドチップの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、チャネル内電極は、膜厚が0.5μm以下に形成されているので、アクチュエータプレートの歩留まりをより高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るアクチュエータプレートに形成した電極逃げ溝を表す斜視図である。
【
図2】実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
【
図3】実施形態に係るインクジェットヘッド及びインク循環手段の概略構成図である。
【
図4】実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図である。
【
図5】実施形態に係るインクジェットヘッドの断面図である。
【
図6】実施形態に係るインクジェットヘッドの断面図である。
【
図8】実施形態に係るヘッドチップの分解斜視図である。
【
図9】実施形態に係るカバープレートの斜視図である。
【
図10】実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図11】実施形態に係るウエハ準備工程を説明するための工程図である。
【
図12】実施形態に係るマスクパターン形成工程を説明するための工程図である。
【
図13】実施形態に係るチャネル形成工程を説明するための工程図である。
【
図14】実施形態に係るチャネル形成工程を説明するための他の工程図である。
【
図15】実施形態に係る触媒付与工程を説明するための工程図である。
【
図16】実施形態に係るめっき工程を説明するための工程図である。
【
図17】実施形態に係るマスク除去工程を説明するための工程図である。
【
図18】実施形態に係るめっき皮膜除去工程を説明するための工程図である。
【
図19】カバープレート作製工程を説明するための工程図(平面図)である。
【
図20】
図19のXVIII-XVIII断面を含む図である。
【
図21】実施形態に係る共通配線形成工程および個別配線形成工程を説明するための図である。
【
図23】実施形態に係る流路プレート作製工程を説明するための図である。
【
図24】
図5のXXII-XXII断面を含む図であって、各種プレート接合工程を説明するための工程図である。
【
図25】第1変形例に係るインクジェットヘッドの断面図である。
【
図26】第2変形例に係る電極逃げ溝形成工程を説明するための工程図である。
【
図27】第2変形例に係る電極分離工程を説明するための工程図である。
【
図28】第2変形例に係るアクチュエータプレートに形成した電極逃げ溝と電極分離部を表す斜視図である。
【
図29】チャネルの溝幅と、電極形成プロセス全体の歩留まりとの関係を表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の検討によれば、次の理由により、膜厚が厚い場合に歩留まりが低下すると考えられる。
すなわち、電極を形成する場合、チャネル溝内だけでなくマスクパターンを含めて一体形成される。そして、マスクパターンをリフトオフする際には、チャネル溝の側壁上部の電極と、マスクパターン端面の電極とを切り離すことになる。このため、電極の膜厚が厚くなると、一体形成された電極がリフトオフの際に切れにくくなり、チャネル溝の側壁上端部にバリが生じてしまう場合があることに起因する。
そこで、本実施形態では、電極の膜厚を0.5μm以下に形成する。
これにより、マスクパターンのリフトオフの際に電極が切れ易くなり、その結果バリの発生と歩留まりの低下を抑制することができる。
【0011】
更に、本発明者の検討によれば、リフトオフによるバリの発生以外にも、チャネルの溝幅が狭くなると歩留まりが低下することがわかった。
そして、歩留まり低下の原因が、めっき処理後におけるマスクパターンを剥がす際やダイシングによる切断を行う際に生じており、その原因がめっき処理工程において圧電体基材(アクチュエータプレート)の表面を粗す粗面化処理に関係することがわかった。
すなわち、めっき処理を行う場合、アンカー効果によるめっきの接着を良くするために、圧電体基材のチャネル溝内を含む露出面を粗す粗面化の処理が行われる。この圧電体基材の露出面の粗面化はエッチング処理によるが、チャネルの溝幅が広い場合には溝の底面まで均等に粗面化することができるが、チャネルの幅が狭くなるほど溝の底面側の粗面化に時間がかかる。このため、溝の底面側まで十分なアンカー効果を得るためにエッチング時間を長く行うことで、チャネルの溝壁面の上部(圧電体基材の表面側)が過剰にエッチングされ脆弱化していることがわかった。
【0012】
そして、めっき処理では、圧電体基材の露出面だけでなく、レジストにより圧電体基材に形成したマスクパターンの表面や側面も含めて電極が一体に形成される。そのため、膜厚が厚いために電極の破断強度が高いことに加え、チャネル溝上部が脆弱化しているため、マスクパターンを除去する際に、マスクパターン上の電極と共に、脆弱化しているチャネル溝上部の電極だけでなく圧電体基材も一緒に剥がれてしまう場合があり、これが原因で歩留まりが低下していた。
また、電極を形成した後に、切削加工等を行う際にも電極の破断強度が圧電体基材の破壊強度よりも大きいと、圧電体基材ごと剥がれが生じることもある。
【0013】
そこで、本実施形態では、チャネルの溝幅が70μm未満である場合に、めっき処理による電極の膜厚を0.5μm以下に形成している。
これにより、マスクパターンを剥がす際に、粗面化された圧電体基材に影響を与えることなく、マスクパターンに形成された電極を、チャネル溝上部の電極から単独で切り離すことが可能になり、歩留まりの低下を抑えることができる。
【0014】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。実施形態では、本発明の液体噴射ヘッドチップ(以下、単に「ヘッドチップ」という。)を備えた液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置の一例として、インク(液体)を利用して被記録媒体に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)を例に挙げて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0015】
(1)実施形態の要点
本実施形態のインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)の製造方法では、アクチュエータプレート51とカバープレート52(
図8参照)を備えている。
図1に示すように、アクチュエータプレート51の表面には、ダイシングブレード等の切削処理により、Z方向の吐出チャネル(噴射チャネル)54と非吐出チャネル(非噴射チャネル)55用のチャネル溝が、X方向に交互に並んで形成される。
この吐出チャネル54と非吐出チャネル55の溝幅Wは、ノズルの高密度化に対応するため、70μm未満に形成される。本実施形態では、例えば、55μm、50μm、40μm等の溝幅に形成される。
【0016】
本実施形態の吐出チャネル54と非吐出チャネル55は、同様な形状に形成されている。すなわち、吐出チャネル54と非吐出チャネル55は、共に延在部54a、55aと、この両延在部54a、55aの端部から連続する切り上がり部54b、55bを有している。
但し、吐出チャネル54と非吐出チャネル55の形状は異なる形状とすることも可能である。例えば、非吐出チャネル55の切り上がり部55bを、突っ切り形状とすることも可能である。
吐出チャネル54と非吐出チャネル55の形状については、後述するように、溝表面に付与した触媒を洗浄する際の水流がチャネル内を均等に流れ、めっきによるダマがチャネル溝に形成されにくくするためには、同様な形状とすることが好ましい。
【0017】
そして、吐出チャネル54と非吐出チャネル55が形成されたアクチュエータプレート(アクチュエータウエハ110)の露出面をエッチングにより粗面化し、その後アクチュエータウエハ110の対象面に電極をめっき処理により形成する。
この電極の膜厚は、0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下に形成される。本実施形態では、電極の膜厚を0.3μmに形成している。
ここで、電極(金属皮膜114、後述)の膜厚は、アクチュエータウエハ110の表面、及び吐出チャネル54と非吐出チャネル55の溝内の上部における電極の厚さをいい、吐出チャネル54と非吐出チャネル55の側壁に形成される共通電極61と個別電極63の上部の厚さ、及び、AP側共通パッド62、AP側個別配線64の厚さをいう。
なお、電極の膜厚としては0.15μm以上とすることが好ましい。これ以下にすると、両チャネル54、55の溝壁底面側が薄くなりすぎ、アンカー効果が得られなくなるためである。
【0018】
本実施形態では、このめっき処理により電極を形成した後、更に、AP側共通パッド62とAP側個別配線64の間に電極逃げ溝81を切削形成している。
この電極逃げ溝81は、
図8で後述するように、カバープレート52に形成された横断共通電極80とAP側個別配線64との短絡を防ぐための逃げ溝として機能する。
本実施形態によれば、電極の膜厚を0.5μm以下に形成しているので、切削加工で電極逃げ溝81を形成しても、AP側共通パッド62やAP側個別配線64が、圧電体基材(アクチュエータウエハ110)ごと剥がれることが抑制される。
従って、歩留まりの低下を抑えつつ、電極形成後に電極逃げ溝81を形成することができる。
【0019】
電極逃げ溝81の形成後、アクチュエータウエハ110の表面のマスクパターンの剥離(リフトオフ)を行う。
マスクパターン111は、めっき処理により、その上面や側面についても他の電極部分(個別電極63等)と一体の金属皮膜114として形成されている(
図16参照)。
しかし、上述の通り、金属皮膜114の膜厚が0.5μm以下に形成されているので、粗面化された圧電体基材に影響を与えることなく、マスクパターン111を剥がすことができる。
【0020】
図1(b)は、吐出チャネル54と非吐出チャネル55のチャネル溝幅WがW=40μmである場合の、電極の膜厚と歩留まりの評価との関係を表したものである。
歩留まりの評価については、不可の場合を×で表し、好ましくない場合を△で表し、良好の場合を○で表し、特に良好の場合を◎で表している。
また、「リフトオフ単独」の評価欄は、マスクパターン111を剥離する際の歩留まりを表している。「逃げ溝単独」の評価欄は、切削による電極逃げ溝81をめっき処理前に形成した場合と、めっき処理後に形成した場合の歩留まりを表している。「プロセス全体」の評価欄は、リフトオフと電極逃げ溝81の形成を合わせた電極形成プロセス全体の歩留まりを表している。
【0021】
図1(b)に示すように、電極の膜厚が0.9μmの場合には、リフトオフ単独、逃げ溝単独、プロセス全体のいずれにおいても△と×の評価であり、全体として歩留まりが低い。
一方、本実施形態に示すように、膜厚を0.5μm、0.3μmにした場合、リフトオフ単独、逃げ溝単独、プロセス全体のいずれにおいても良好以上の評価(○か◎)が得られている。
特に、0.9μmの膜厚で電極逃げ溝81をめっき処理の後に加工(後加工)した場合に歩留まりの評価が著しく低かった(×)のに対し、膜厚を0.5μm、0.3μmと薄くすることで、良好(○)と特に良好(◎)の高い評価が得られている。
このため、製造工程や製品の要求に応じて、電極逃げ溝81を形成するタイミング(めっき処理の前、後)を自由に選択することができる。
【0022】
本実施形態によれば、更に、マスクパターンを剥離する際に、マスクパターン側に形成された電極を容易に切断、除去することができるため、残った電極端面にバリが形成されることを抑制することができる。
また、電極の膜厚を0.5μm以下の薄さにしたことで、加工性が良くなる(薄く加工し易い)ため、電極形成後に、ダイサーやグラインダー等で機械加工をしても剥がれ等が生じることなく行うことが出来る。
【0023】
(2)実施形態の詳細
<プリンタ>
図2はプリンタ1の概略構成図である。
図2に示すように、本実施形態のプリンタ1は、一対の搬送手段2,3と、インクタンク4と、インクジェットヘッド5(液体噴射ヘッド)と、インク循環手段6と、走査手段7と、を備える。なお、以下の説明では、必要に応じてX,Y,Zの直交座標系を用いて説明する。X方向は、被記録媒体P(例えば、紙等)の搬送方向である。Y方向は、走査手段7の走査方向である。Z方向は、X方向及びY方向に直交する上下方向である。
【0024】
搬送手段2,3は、被記録媒体PをX方向に搬送する。具体的に、搬送手段2は、Y方向に延設されたグリットローラ11と、グリットローラ11に平行に延設されたピンチローラ12と、グリットローラ11を軸回転させるモータ等の駆動機構(不図示)と、を備える。搬送手段3は、Y方向に延設されたグリットローラ13と、グリットローラ13に平行に延設されたピンチローラ14と、グリットローラ13を軸回転させる駆動機構(不図示)と、を備える。
【0025】
インクタンク4は、一方向に並んで複数設けられている。実施形態において、複数のインクタンク4は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの四色のインクをそれぞれ収容するインクタンク4Y,4M,4C,4Kである。実施形態において、インクタンク4Y,4M,4C,4Kは、X方向に並んで配置されている。
【0026】
図3に示すように、インク循環手段6は、インクタンク4とインクジェットヘッド5との間でインクを循環させる。具体的に、インク循環手段6は、インク供給管21及びインク排出管22を有する循環流路23と、インク供給管21に接続された加圧ポンプ24と、インク排出管22に接続された吸引ポンプ25と、を備える。例えば、インク供給管21及びインク排出管22は、インクジェットヘッド5を支持する走査手段7の動作に追従可能な可撓性を有するフレキシブルホースにより構成されている。
【0027】
加圧ポンプ24は、インク供給管21内を加圧し、インク供給管21を通してインクジェットヘッド5にインクを送り出している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク供給管21側は正圧となっている。
吸引ポンプ25は、インク排出管22内を減圧し、インク排出管22内を通してインクジェットヘッド5からインクを吸引している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク排出管22側は負圧となっている。そして、インクは、加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25の駆動により、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間を、循環流路23を通して循環可能となっている。
【0028】
図2に示すように、走査手段7は、インクジェットヘッド5をY方向に往復走査させる。具体的に、走査手段7は、Y方向に延設された一対のガイドレール31,32と、一対のガイドレール31,32に移動可能に支持されたキャリッジ33と、キャリッジ33をY方向に移動させる駆動機構34と、を備える。なお、搬送手段2,3及び走査手段7は、インクジェットヘッド5と被記録媒体Pとを相対的に移動させる移動機構として機能する。
【0029】
駆動機構34は、X方向におけるガイドレール31,32の間に配設されている。駆動機構34は、Y方向に間隔をあけて配設された一対のプーリ35,36と、一対のプーリ35,36間に巻回された無端ベルト37と、一方のプーリ35を回転駆動させる駆動モータ38と、を備える。
【0030】
キャリッジ33は、無端ベルト37に連結されている。キャリッジ33には、複数のインクジェットヘッド5が搭載されている。実施形態において、複数のインクジェットヘッド5は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの四色のインクをそれぞれ吐出するインクジェットヘッド5Y,5M,5C,5Kである。実施形態において、インクジェットヘッド5Y,5M,5C,5Kは、Y方向に並んで配置されている。
【0031】
<インクジェットヘッド>
図4に示すように、インクジェットヘッド5は、一対のヘッドチップ40A,40Bと、流路プレート41と、入口マニホールド42と、出口マニホールド(不図示)と、帰還プレート43と、ノズルプレート44(噴射プレート)と、を備える。インクジェットヘッド5は、吐出チャネル54におけるチャネル延在方向の先端部からインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのうち、インクタンク4との間でインクを循環させる循環式(エッジシュート循環式)のものである。
【0032】
<ヘッドチップ>
一対のヘッドチップ40A,40Bは、第1ヘッドチップ40Aおよび第2ヘッドチップ40Bである。以下、第1ヘッドチップ40Aを中心に説明する。第2ヘッドチップ40Bにおいて、第1ヘッドチップ40Aと同一の構成には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
第1ヘッドチップ40Aは、アクチュエータプレート51と、カバープレート52と、を備える。
【0033】
<アクチュエータプレート>
アクチュエータプレート51の外形は、X方向に長手を有しかつZ方向に短手を有する矩形板状をなしている。実施形態において、アクチュエータプレート51は、分極方向が厚さ方向(Y方向)で異なる2枚の圧電基板を積層した、いわゆるシェブロンタイプの積層基板である(
図7参照)。例えば、圧電基板は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等からなるセラミックス基板が好適に用いられる。
【0034】
アクチュエータプレート51のY方向における第1主面(アクチュエータプレート側第1主面)には、複数のチャネル54,55が形成されている。実施形態において、アクチュエータプレート側第1主面は、アクチュエータプレート51のY方向内側面51f1(以下「AP側Y方向内側面51f1」という。)である。ここで、Y方向内側は、インクジェットへッド5のY方向中心側(Y方向において流路プレート41の側)を意味する。実施形態において、アクチュエータプレート側第2主面は、アクチュエータプレート51のY方向外側面(
図4中符号51f2で示す。)である。
【0035】
各チャネル54,55は、Z方向(第1方向)に延びる直線状に形成されている。各チャネル54,55は、X方向(第2方向)に間隔をあけて交互に形成されている。各チャネル54,55間は、アクチュエータプレート51からなる駆動壁56によってそれぞれ画成されている。一方のチャネル54は、インクが充填される吐出チャネル54(噴射チャネル)である。他方のチャネル55は、インクが充填されない非吐出チャネル55(非噴射チャネル)である。
吐出チャネル54の上端部は、アクチュエータプレート51内で終端している。吐出チャネル54の下端部は、アクチュエータプレート51の下端面で開口している。
【0036】
図5は、第1ヘッドチップ40Aにおける吐出チャネル54の断面を含む図である。
図5に示すように、吐出チャネル54は、下端部に位置する延在部54aと、延在部54aから上方に連なる切り上がり部54bと、を有している。
延在部54aは、Z方向の全体に亘って溝深さが一様とされている。切り上がり部54bは、上方に向かうに従い溝深さが漸次浅くなっている。
【0037】
図4に示すように、非吐出チャネル55の上端部は、アクチュエータプレート51の上端面で開口している。非吐出チャネル55の下端部は、アクチュエータプレート51の下端面で開口している。
【0038】
図6は、第1ヘッドチップ40Aにおける非吐出チャネル55の断面を含む図である。
図6に示すように、非吐出チャネル55は、下端部に位置する延在部55aと、延在部55aから上方に連なる切り上がり部55b(
図1参照)と、を有している。
延在部55aは、Z方向の全体に亘って溝深さが一様とされている。非吐出チャネル55における延在部55aのZ方向の長さは、吐出チャネル54における延在部54a(
図5参照)のZ方向の長さよりも長い。切り上がり部55bは、上方に向かうに従い溝深さが漸次浅くなっている。非吐出チャネル55における切り上がり部55bの勾配は、吐出チャネル54における切り上がり部54b(
図5参照)の勾配と実質的に同じである。すなわち、吐出チャネル54及び非吐出チャネル55において、延在部54a,55aのZ方向の長さの違いによる勾配開始位置は異なるが、勾配自体(斜度、曲率)は実質的に同じである。
そして、本実施形態では、電極逃げ溝81を形成する前にめっき処理を行うことで、めっき処理工程において、触媒を洗浄する際に、吐出チャネル54と非吐出チャネル55の両チャネル内を流れる洗浄液をほぼ同じにすることができ、洗浄程度の偏りを原因とするダマの形成、ひいてはダマを原因とする短絡による製品不良の増加などを回避することができる。
【0039】
複数のチャネル54,55は、互いに異なる形状を有している。具体的に、非吐出チャネル55のZ方向の長さは、吐出チャネルのZ方向の長さよりも長い。ここで、各チャネル54,55の溝幅をWとし、溝深さをDとする。溝幅Wは、各チャネル54,55のX方向の長さを意味する。溝深さDは、各チャネル54,55のY方向の長さを意味する。例えば、各チャネル54,55の延在部54a,55aにおいて、溝幅Wと溝深さDとの比D/Wは、3以上とされている(D/W≧3)。
【0040】
図5に示すように、吐出チャネル54の内面には、共通電極61が形成されている。共通電極61は、吐出チャネル54の内面全体に形成されている。すなわち、共通電極61は、延在部54aの内面全体、及び切り上がり部54bの内面全体に形成されている。
【0041】
アクチュエータプレート51のうち、吐出チャネル54に対して上方に位置する部分51e(吐出チャネル54のZ方向側の端部から、アクチュエータプレート51のZ方向側の端部までの間、以下「AP側尾部51e」という。)のY方向内側面には、アクチュエータプレート側共通パッド62(以下「AP側共通パッド62」という。)が形成されている。AP側共通パッド62は、共通電極61の上端からAP側尾部51eのY方向内側面に延出して形成されている。すなわち、AP側共通パッド62の下端部は、突出チャネル54内の共通電極61に接続されている。AP側共通パッド62の上端部は、AP側尾部51eのY方向内側面上で終端している。AP側共通パッド62は、共通電極61に連続している。
図4に示すように、AP側共通パッド62は、AP側尾部51e(
図8参照)のY方向内側面上でX方向に間隔をあけて複数配置されている。
【0042】
図6に示すように、非吐出チャネル55の内面には、個別電極63が形成されている。
図7に示すように、個別電極63は、非吐出チャネル55の内面のうち、X方向で対向する内側面に各別に形成されている。したがって、各個別電極63のうち、同一の非吐出チャネル55内で対向する個別電極63同士は、非吐出チャネル55の底面において電気的に分離されている。個別電極63は、非吐出チャネル55の内側面全体(Y方向及びZ方向の全体)に亘って形成されている。
【0043】
図6に示すように、AP側尾部51eのY方向内側面には、アクチュエータプレート側個別配線64(以下「AP側個別配線64」という。)が形成されている。
図4に示すように、AP側個別配線64は、AP側尾部51e(
図8参照)のY方向内側面のうちAP側共通パッド62よりも上方に位置する部分をX方向に延在している。AP側個別配線64は、吐出チャネル54を間に挟んで対向する個別電極63同士を接続している。
【0044】
また、
図5、
図6、
図8に示すように、AP側尾部51eにおいて、AP側共通パッド62とAP側個別配線64の間に、カバープレート52に形成された横断共通電極80とAP側個別配線64との短絡を防ぐための電極逃げ溝81が形成されている。
詳細は後述するが、本実施形態のアクチュエータプレート51は、各チャネル用のチャネル溝(54、55)を形成したアクチュエータウエハ110に対し、先にめっき処理による各種電極を形成し、その後にダイシングブレードによる切削加工で電極逃げ溝81を形成する。
【0045】
本実施形態では、電極(共通電極61、AP側共通パッド62、個別電極63、AP側個別配線64)が形成されている、アクチュエータプレート51の面は、後述するエッチング処理により粗面化されている。
そして、吐出チャネル54と非吐出チャネル55の壁面に形成されている共通電極61分と個別電極63の上部、及び、AP側共通パッド62とAP側個別配線64の膜厚が、0.5μm以下されている。具体的に本実施形態では、膜厚が0.3μmに形成されている。
これにより、歩留まりの高いアクチュエータプレート51の構造が実現されている。
【0046】
<カバープレート>
図4に示すように、カバープレート52の外形は、X方向に長手を有しかつZ方向に短手を有する矩形板状をなしている。カバープレート52の長手方向の長さは、アクチュエータプレート51の長手方向の長さと実質的に同じである。一方、カバープレート52の短手方向の長さは、アクチュエータプレート51の短手方向の長さよりも長い。カバープレート52のうち、AP側Y方向内側面51f1と対向する第1主面(カバープレート側第1主面)は、AP側Y方向内側面51f1に接合されている。実施形態において、カバープレート側第1主面は、カバープレート52のY方向外側面52f1(以下「CP側Y方向外側面52f1」という。)である。ここで、Y方向外側は、インクジェットへッド5のY方向中心側とは反対側(Y方向において流路プレート41の側とは反対側)を意味する。実施形態において、カバープレート側第2主面は、カバープレート52のY方向内側面52f2(以下「CP側Y方向内側面52f2」という。)である。
【0047】
カバープレート52には、カバープレート52をY方向(第3方向)に貫通するとともに、吐出チャネル54に連通する液体供給路70が形成されている。液体供給路70は、カバープレート52をY方向内側に開口する共通インク室71と、共通インク室71に連通するとともにY方向外側に開口しかつX方向に間隔をあけて配置された複数のスリット72と、を含む。共通インク室71は、スリット72を通して各吐出チャネル54内に各別に連通している。一方、共通インク室71は、非吐出チャネル55には連通していない。
【0048】
図5に示すように、共通インク室71は、CP側Y方向内側面52f2に形成されている。共通インク室71は、Z方向において、吐出チャネル54の切り上がり部54bと実質的に同じ位置に配置されている。共通インク室71は、CP側Y方向外側面52f1側に向けて窪むとともにX方向に延在する溝状に形成されている。共通インク室71には、流路プレート41を通してインクが流入する。
【0049】
スリット72は、CP側Y方向外側面52f1に形成されている。スリット72は、Y方向において共通インク室71と対向する位置に配置されている。スリット72は、共通インク室71と吐出チャネル54とに連通している。スリット72のX方向幅は、吐出チャネル54のX方向幅と実質的に同じである。
【0050】
カバープレート52には、カバープレート52をY方向に貫通するとともに、インク(液体)の流路以外の箇所に配置された貫通孔87が形成されている。貫通孔87は、カバープレート52において液体供給路70を避けた位置に配置されている。貫通孔87は、カバープレート52のうち、液体供給路70よりも上方の部分に配置されている。
貫通孔87は、X方向に長手を有するスリット状(長円形状)に形成されている。例えば、貫通孔87の長手方向の長さは、隣り合う2つのスリット72の配列ピッチと実質的に同じ長さとなっている。
なお、貫通孔87の長さ及び配置数は、適宜変更可能である。
また、本実施形態の貫通孔87は、
図8に示すようにスリット状に形成されているが、円形の貫通孔とすることも可能であり、
図4では円形の貫通孔85を形成した場合について表している。
図8、
図4に示すように、貫通孔87(85)は、複数がX方向に間隔をあけて、実質的に等間隔の配列ピッチで配置されている。
各貫通孔87は、2つ毎のスリット72と対応して、X方向において実質的に同じ位置に配置されている。一方、各貫通孔85(
図4)は、各スリット72とX方向において実質的に同じ位置に配置されている。
すなわち、各貫通孔87(85)と各スリット72とは、Z方向に並んで配置されている。
【0051】
カバープレート52において、貫通孔87の内面には貫通孔内電極86が形成されている。例えば、貫通孔内電極86は、蒸着等によって貫通孔87の内周面にのみ形成されている。なお、貫通孔内電極86は、導電ペースト等によって貫通孔87内に充填されていてもよい。
貫通孔87をスリット状に形成することで、円形の貫通孔85を形成する場合に比べて、貫通孔内電極86の形成領域を大きくし易いため、貫通孔内電極86と横断共通電極80との電気的接続の信頼性を高めることができる。加えて、貫通孔87を横断共通電極80の延在方向(X方向)にのみ延在させれば足りるため、ヘッドチップ40A,40BのZ方向の長さを短縮することができる。
【0052】
図8に示すように、CP側Y方向外側面52f1における貫通孔87の周囲には、カバープレート側共通パッド66(以下「CP側共通パッド66」という。)が形成されている。
図5に示すように、CP側共通パッド66は、貫通孔内電極86からCP側Y方向外側面52f1の下方に向けて延出して形成されている。すなわち、CP側共通パッド66の上端部は、貫通孔87内の貫通孔内電極86に接続されている。CP側共通パッド66の下端部は、CP側Y方向外側面52f1上における貫通孔87とスリット72とのZ方向間で終端している。CP側共通パッド66は、貫通孔内電極86に連続している。一方、CP側共通パッド66は、スリット72の上端から上方に離間している。CP側共通パッド66は、CP側Y方向外側面52f1上でX方向に間隔をあけて複数配置されている(
図8参照)。
【0053】
CP側共通パッド66は、Y方向においてAP側共通パッド62と対向している。
図8に示すように、CP側共通パッド66は、アクチュエータプレート51とカバープレート52とを接合したときにおけるAP側共通パッド62に対応する位置に配置されている。すなわち、アクチュエータプレート51とカバープレート52との接合時において、CP側共通パッド66とAP側共通パッド62とは電気的に接続される。
【0054】
図8に示すように、CP側Y方向外側面52f1には、複数のCP側共通パッド66に接続される横断共通電極80が形成されている。横断共通電極80は、CP側Y方向外側面52f1のうちスリット72とCP側個別パッド69aとの間の部分をX方向に延在している。横断共通電極80は、CP側Y方向外側面52f1においてX方向に沿って帯状に形成されている。横断共通電極80は、CP側Y方向外側面52f1上で複数のCP側共通パッド66の上端部に接続されている。一方、横断共通電極80は、CP側Y方向外側面52f1上でCP側個別パッド69aに当接していない。
【0055】
AP側尾部51eのY方向内側面には、横断共通電極80の電極逃げ溝81(電極逃げ溝81)が形成されている。電極逃げ溝81は、AP側尾部51eのY方向内側面のうちAP側共通パッド62とAP側個別配線64との間の部分をX方向に延在している。電極逃げ溝81は、Y方向において横断共通電極80と対向している。電極逃げ溝81は、アクチュエータプレート51とカバープレート52とを接合したときにおける横断共通電極80に対応する位置に配置されている。すなわち、アクチュエータプレート51とカバープレート52との接合時において、横断共通電極80は電極逃げ溝81内に配置される。
【0056】
CP側Y方向外側面52f1上には、複数のCP側共通パッド66に接続されるとともに、X方向に延在する横断共通電極80が形成されている。この横断共通電極80によって複数のCP側共通パッド66を予備的に接続することができるため、複数のCP側共通パッド66が貫通孔内電極86にのみ接続された場合と比較して、複数のCP側共通パッド66の電気的接続の信頼性を高めることができる。
【0057】
また、AP側尾部51eのY方向内側面には、X方向に延在するとともに、Y方向において横断共通電極80と対向する電極逃げ溝81が形成されている。この電極逃げ溝81により、アクチュエータプレート51とカバープレート52との接合時において、横断共通電極80を収容することができるため、アクチュエータプレート51側の電極(例えば、AP側個別配線64)と横断共通電極80とが短絡することを回避することができる。
【0058】
また
図1(b)で説明したように、本実施形態では、電極の膜厚を0.5μm以下に形成しているので、電極逃げ溝81を形成した場合であっても高い歩留まりを確保することができる。
【0059】
図8、
図5に示すように、CP側Y方向内側面52f2における貫通孔87の周囲には、共通引出配線67(引出配線)が形成されている。
図4に示すように、カバープレート52の上端には、カバープレート52のZ方向内側に窪むとともに、X方向に間隔をあけて配置された複数の凹部73が形成されている。
図4においては、X方向に実質的に等間隔を開けて配置された4つの凹部73を示している。
【0060】
図5に示すように、共通引出配線67は、CP側Y方向内側面52f2における貫通孔87からCP側Y方向内側面52f2上を上方に延びた後、カバープレート52の上端の凹部73を経て、CP側Y方向外側面52f1の上端部まで引き出されている。言いかえると、共通引出配線67は、カバープレート52のうち、アクチュエータプレート51に対して上方に位置する部分52e(以下「CP側尾部52e」という。)のY方向外側面まで引き出されている。これにより、複数の吐出チャネル54の内面に形成された共通電極61は、AP側共通パッド62、CP側共通パッド66、貫通孔内電極86および共通引出配線67を経て、共通端子68においてフレキシブル基板45(外部配線)と電気的に接続される。実施形態において、共通引出配線67及び貫通孔内電極86は、共通電極61とフレキシブル基板45とを接続する接続配線60を構成している。接続配線60のうち、共通引出配線67は、カバープレート52においてX方向に少なくとも3以上の複数箇所に分割して形成されている。
【0061】
図9は、
図8に示したカバープレート52を、その反対側(CP側Y方向内側面52f2側)から表した斜視図である。
図9に示すように、CP側Y方向内側面52f2には、複数の共通引出配線67に接続される連結共通電極82が形成されている。
図4に示すように、連結共通電極82は、CP側Y方向内側面52f2のうち隣り合う2つの共通引出配線67の間の部分をX方向に延在している。連結共通電極82は、CP側Y方向内側面52f2において複数の貫通孔87の配列方向(X方向)に沿って帯状に形成されている。連結共通電極82は、CP側Y方向内側面52f2上で複数の共通引出配線67の下端部に接続されている。一方、連結共通電極82は、CP側Y方向内側面52f2上で共通インク室71の上端から上方に離間している。
【0062】
図8に示すように、共通引出配線67は、CP側尾部52eのY方向外側面においてX方向に少なくとも3以上の複数箇所に分割して形成された共通端子68を備える。実施形態において、共通端子68は、CP側尾部52eのY方向外側面においてX方向に間隔をあけて4つ配置されている。隣り合う2つの共通端子68の間隔は、実質的に等間隔となっている。
【0063】
カバープレート52には、カバープレート側個別配線69(以下「CP側個別配線69」という。)が形成されている。CP側個別配線69は、CP側Y方向外側面52f1の上端部においてX方向に分割して形成されている。CP側個別配線69は、アクチュエータプレート51とカバープレート52とを接合したときにおけるAP側個別配線64に対応する位置に配置されたカバープレート側個別パッド69a(以下「CP側個別パッド69a」という。)と、CP側個別パッド69aから上側ほどX方向外方に位置するように傾斜した後に上方に直線状に延びて形成された個別端子69bと、を備える。
【0064】
すなわち、アクチュエータプレート51とカバープレート52との接合時において、CP側個別パッド69aとAP側個別配線64とは電気的に接続される。CP側個別パッド69aは、X方向に間隔をあけて複数配置されている。隣り合う2つのCP側個別パッド69aの間隔(配列ピッチ)は、実質的に等間隔となっている。複数のCP側個別パッド69aと複数のCP側共通パッド66とは、Z方向においてそれぞれ一対一で対向している。言い換えると、各CP側個別パッド69aと各CP側共通パッド66とは、Z方向において一直線上に整列するよう配置されている。
【0065】
個別端子69bは、CP側尾部52eのY方向外側面の上端まで延出している。これにより、複数の非吐出チャネル55の内面に形成された個別電極63は、AP側個別配線64およびCP側個別パッド69aを経て、個別端子69bにおいてフレキシブル基板45(
図6参照)と電気的に接続される。
【0066】
個別端子69bは、X方向に間隔をあけて複数配置されている。隣り合う2つの個別端子69bの間隔(配列ピッチ)は、実質的に等間隔となっている。複数の個別端子69bは、X方向に並ぶ複数の共通端子68(共通端子群)の間に配置されている。個別端子69bの配列ピッチと共通端子68の配列ピッチとは、実質的に等間隔となっている。
【0067】
なお、カバープレート52は、絶縁性を有し、かつアクチュエータプレート51以上の熱伝導率を有する材料により形成されている。例えば、アクチュエータプレート51をPZTにより形成した場合、カバープレート52は、PZTまたはシリコンにより形成することが好ましい。これにより、アクチュエータプレート51での温度ばらつきを緩和し、インク温度の均一化を図ることができる。これにより、インクの吐出速度の均一化を図り、印字安定性を向上させることができる。
【0068】
<一対のヘッドチップの配置関係>
図4に示すように、各ヘッドチップ40A,40Bは、各CP側Y方向内側面52f2同士をY方向で対向させた状態で、Y方向に間隔をあけて配置されている。
【0069】
第2ヘッドチップ40Bの吐出チャネル54及び非吐出チャネル55は、第1ヘッドチップ40Aの吐出チャネル54及び非吐出チャネル55の配列ピッチに対してX方向に半ピッチずれて配列されている。すなわち、各ヘッドチップ40A,40Bの吐出チャネル54同士及び非吐出チャネル55同士は、千鳥状に配列されている。
【0070】
すなわち、
図5に示すように、第1ヘッドチップ40Aの吐出チャネル54と、第2ヘッドチップ40Bの非吐出チャネル55とは、Y方向で対向している。
図4に示すように、第1ヘッドチップ40Aの非吐出チャネル55と、第2ヘッドチップ40Bの吐出チャネル54とは、Y方向で対向している。なお、各ヘッドチップ40A,40Bのチャネル54,55のピッチは、適宜変更可能である。
【0071】
<流路プレート>
流路プレート41は、第1ヘッドチップ40Aと第2ヘッドチップ40BとのY方向間に挟持されている。流路プレート41は、同一の部材により一体に形成されている。
図4に示すように、流路プレート41の外形は、X方向に長手を有しかつZ方向に短手を有する矩形板状をなしている。Y方向から見て、流路プレート41の外形は、カバープレート52の外形と実質的に同じである。
【0072】
流路プレート41のY方向における第1主面41f1(第1ヘッドチップ40A側を向く面)には、第1ヘッドチップ40AにおけるCP側Y方向内側面52f2が接合されている。流路プレート41のY方向における第2主面41f2(第2ヘッドチップ40B側を向く面)には、第2ヘッドチップ40BにおけるCP側Y方向内側面52f2が接合されている。
【0073】
流路プレート41は、絶縁性を有し、かつカバープレート52以上の熱伝導率を有する材料により形成されている。例えば、カバープレート52をシリコンにより形成した場合、流路プレート41は、シリコンまたはカーボンにより形成することが好ましい。これにより、各ヘッドチップ40A,40B間において、カバープレート52での温度ばらつきを緩和することができる。このため、各ヘッドチップ40A,40B間において、アクチュエータプレート51での温度ばらつきを緩和し、インク温度の均一化を図ることができる。これにより、インクの吐出速度の均一化を図り、印字安定性を向上させることができる。
【0074】
流路プレート41の各主面41f1,41f2には、共通インク室71に各別に連通する入口流路74と、帰還プレート43の循環路76に各別に連通する出口流路75と、が形成されている。
【0075】
各入口流路74は、流路プレート41の各主面41f1,41f2からY方向の内側に向けて窪んでいる。各入口流路74のX方向の一端部は、流路プレート41のX方向の一端面で開口している。各入口流路74は、流路プレート41のX方向の一端面からX方向の他端側ほど下方に位置するように傾斜した後、X方向の他端側に向けて屈曲して直線状に延びている。
図5に示すように、入口流路74のZ方向幅は、共通インク室71のZ方向幅よりも大きい。なお、入口流路74のZ方向幅は、共通インク室71のZ方向幅以下であってもよい。
【0076】
各入口流路74は、第1ヘッドチップ40Aと第2ヘッドチップ40BとのY方向間において、Y方向に間隔をあけて配置されている。すなわち、流路プレート41において、各入口流路74のY方向間の部分は壁部材によって仕切られている。これにより、インク吐出時等に発生するチャネル内の圧力変動が壁部材で遮られるため、各ヘッドチップ40A,40B間において、前記圧力変動が流路を介して他のチャネル等に圧力波となって伝播される、いわゆるクロストークを抑制することができる。したがって、優れた吐出性能(印字安定性)を得ることができる。
【0077】
図4に示すように、出口流路75は、流路プレート41の各主面41f1,41f2からY方向の内側に向けて窪むとともに、流路プレート41の下端面から上方に向けて窪んでいる。各出口流路75の一端部は、流路プレート41のX方向の他端面で開口している。各出口流路75は、流路プレート41のX方向の他端面から下方にクランク状に屈曲した後、X方向の一端側に向けて直線状に延びている。
図5に示すように、出口流路75のZ方向幅は、入口流路74のZ方向幅よりも小さい。出口流路75のY方向深さは、入口流路74のY方向深さと実質的に同じである。
出口流路75は、流路プレート41のX方向の他端面において図示しない出口マニホールドに接続されている。出口マニホールドは、インク排出管22(
図2参照)に接続されている。
【0078】
各出口流路75は、第1ヘッドチップ40Aと第2ヘッドチップ40BとのY方向間において、Y方向に間隔をあけて配置されている。すなわち、流路プレート41において、各出口流路75のY方向間の部分は壁部材によって仕切られている。これにより、インク吐出時等に発生するチャネル内の圧力変動が壁部材で遮られるため、各ヘッドチップ40A,40B間において、前記圧力変動が流路を介して他のチャネル等に圧力波となって伝播される、いわゆるクロストークを抑制することができる。したがって、優れた吐出性能(印字安定性)を得ることができる。
【0079】
図5の断面視で、流路プレート41のうち、CP側尾部52eとY方向で重なる部分には、入口流路74及び出口流路75が形成されていない。すなわち、流路プレート41のうち、CP側尾部52eとY方向で重なる部分は、中実部材とされている。これにより、流路プレート41のうち、CP側尾部52eとY方向で重なる部分を中空部材とした場合と比較して、流路プレート41とカバープレート52との接続時において、接続時の部材逃げによる圧着不良を回避することができる。
【0080】
<入口マニホールド>
図4に示すように、入口マニホールド42は、各ヘッドチップ40A,40B及び流路プレート41のX方向の一端面にまとめて接合されている。入口マニホールド42には、各入口流路74に連通する供給路77が形成されている。供給路77は、入口マニホールド42のX方向内端面からX方向外側に向けて窪んでいる。供給路77は、各入口流路74にまとめて連通している。入口マニホールド42は、インク供給管21(
図2参照)に接続されている。
【0081】
<帰還プレート>
帰還プレート43の外形は、X方向に長手を有しかつY方向に短手を有する矩形板状をなしている。帰還プレート43は、各ヘッドチップ40A,40B及び流路プレート41の下端面にまとめて接合されている。言い換えると、帰還プレート43は、第1ヘッドチップ40Aと第2ヘッドチップ40Bとにおける吐出チャネル54の開口端側に配設されている。帰還プレート43は、第1ヘッドチップ40Aと第2ヘッドチップ40Bとにおける吐出チャネル54の開口端と、ノズルプレート44の上端との間に介在するスペーサプレートである。帰還プレート43には、各ヘッドチップ40A,40Bの吐出チャネル54と出口流路75との間を接続する複数の循環路76が形成されている。複数の循環路76は、第1循環路76a及び第2循環路76bを含む。複数の循環路76は、帰還プレート43をZ方向に貫通している。
【0082】
図5に示すように、第1循環路76aは、第1ヘッドチップ40Aの吐出チャネル54とX方向において実質的に同じ位置に形成されている。第1循環路76aは、第1ヘッドチップ40Aの吐出チャネル54の配列ピッチに対応してX方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0083】
第1循環路76aは、Y方向に延在している。第1循環路76aにおけるY方向の内側端部は、第1ヘッドチップ40AにおけるCP側Y方向内側面52f2よりもY方向の内側に位置している。第1循環路76aにおけるY方向の内側端部は、出口流路75内に連通している。第1循環路76aにおけるY方向の外側端部は、第1ヘッドチップ40Aの吐出チャネル54内に各別に連通している。
【0084】
以下、第1ヘッドチップ40Aの吐出チャネル54のうち帰還プレート43に対向する部分を、インクの流れ方向と直交する面で切断したときの断面積を「チャネル側流路断面積」という。ここで、第1ヘッドチップ40Aの吐出チャネル54のうち帰還プレート43に対向する部分は、吐出チャネル54と第1循環路76aとが接する部分(境界部分)を意味する。すなわち、チャネル側流路断面積は、インクの流れ方向において、第1ヘッドチップ40Aの吐出チャネル54の下流端の開口面積を意味する。
以下、第1循環路76aをインクの流れ方向と直交する面で切断したときの断面積を「循環路側流路断面積」という。すなわち、循環路側流路断面積は、第1循環路76を自身の延在方向と直交する面で切断したときの断面積を意味する。
実施形態において、循環路側流路断面積は、チャネル側流路断面積よりも小さい。これにより、循環路側流路断面積がチャネル側流路断面積よりも大きい場合と比較して、インク吐出時等に発生するチャネル内の圧力変動が流路を介して他のチャネル等に圧力波となって伝播される、いわゆるクロストークを抑制することができる。したがって、優れた吐出性能(印字安定性)を得ることができる。
【0085】
図6に示すように、第2循環路76bは、第2ヘッドチップ40Bの吐出チャネル54とX方向において実質的に同じ位置に形成されている。第2循環路76bは、第2ヘッドチップ40Bの吐出チャネル54の配列ピッチに対応してX方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0086】
第2循環路76bは、Y方向に延在している。第2循環路76bにおけるY方向の内側端部は、第2ヘッドチップ40BにおけるCP側Y方向内側面52f2よりもY方向の内側に位置している。第2循環路76bにおけるY方向の内側端部は、出口流路75内に連通している。第2循環路76bにおけるY方向の外側端部は、第2ヘッドチップ40Bの吐出チャネル54内に各別に連通している。
【0087】
<ノズルプレート>
図4に示すように、ノズルプレート44の外形は、X方向に長手を有しかつY方向に短手を有する矩形板状をなしている。ノズルプレート44の外形は、帰還プレート43の外形と実質的に同じである。ノズルプレート44は、帰還プレート43の下端面に接合されている。ノズルプレート44には、ノズルプレート44をZ方向に貫通する複数のノズル孔78(噴射孔)が配列されている。複数のノズル孔78は、第1ノズル孔78a及び第2ノズル孔78bを含む。複数のノズル孔78は、ノズルプレート44をZ方向に貫通している。
【0088】
図5に示すように、第1ノズル孔78aは、ノズルプレート44のうち、帰還プレート43の各第1循環路76aとZ方向で対向する部分にそれぞれ形成されている。すなわち、第1ノズル孔78aは、第1循環路76aと同ピッチで、X方向に間隔をあけて一直線上に配列されている。第1ノズル孔78aは、第1循環路76aにおけるY方向の外端部で第1循環路76a内に連通している。これにより、各第1ノズル孔78aは、第1循環路76aを介して第1ヘッドチップ40Aの対応する吐出チャネル54にそれぞれ連通している。
【0089】
図6に示すように、第2ノズル孔78bは、ノズルプレート44のうち、帰還プレート43の各第2循環路76bとZ方向で対向する部分にそれぞれ形成されている。すなわち、第2ノズル孔78bは、第2循環路76bと同ピッチで、X方向に間隔をあけて一直線上に配列されている。第2ノズル孔78bは、第2循環路76bにおけるY方向の外端部で第2循環路76b内に連通している。これにより、各第2ノズル孔78bは、第2循環路76bを介して第2ヘッドチップ40Bの対応する吐出チャネル54にそれぞれ連通している。
一方、各非吐出チャネル55は、ノズル孔78a,78bには連通しておらず、帰還プレート43により下方から覆われている。
【0090】
<プリンタの動作方法>
次に、プリンタ1を利用して、被記録媒体Pに文字や図形等を記録する場合のプリンタ1の動作方法について説明する。
なお、初期状態として、
図2に示す4つのインクタンク4にはそれぞれ異なる色のインクが十分に封入されているものとする。また、インクタンク4内のインクがインク循環手段6を介してインクジェットヘッド5内に充填された状態となっている。
【0091】
図2に示すように、初期状態のもと、プリンタ1を作動させると、搬送手段2,3のグリットローラ11,13が回転することで、これらグリットローラ11,13及びピンチローラ12,14間に被記録媒体Pを搬送方向(X方向)に向けて搬送する。また、被記録媒体Pの搬送と同時に、駆動モータ38がプーリ35,36を回転させて無端ベルト37を動かす。これにより、キャリッジ33がガイドレール31,32にガイドされながらY方向に往復移動する。
そして、キャリッジ33の往復移動の間に、各インクジェットヘッド5より4色のインクを被記録媒体Pに適宜吐出させることで、被記録媒体Pに文字や画像等の記録を行うことができる。
【0092】
ここで、各インクジェットヘッド5の動きについて説明する。
本実施形態のようなエッジシュートタイプのうち、縦循環式のインクジェットヘッド5では、まず
図3に示す加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25を作動させることで、循環流路23内にインクを流通させる。この場合、インク供給管21を流通するインクは、
図4に示す入口マニホールド42の供給路77を通り、流路プレート41の各入口流路74内に流入する。各入口流路74内に流入したインクは、各共通インク室71を通過した後、スリット72を通って各吐出チャネル54内に供給される。各吐出チャネル54内に流入したインクは、帰還プレート43の循環路76を通して出口流路75内で集合し、その後図示しない出口マニホールドを通して
図3に示すインク排出管22に排出される。インク排出管22に排出されたインクは、インクタンク4に戻された後、再びインク供給管21に供給される。これにより、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間でインクを循環させる。
【0093】
そして、キャリッジ33(
図2参照)によって往復移動が開始されると、フレキシブル基板45を介して各電極61,63に駆動電圧を印加する。この際、個別電極63を駆動電位Vddとし、共通電極61を基準電位GNDとして各電極61,63間に駆動電圧を印加する。すると、吐出チャネル54を画成する2つ駆動壁56に厚み滑り変形が生じ、これら2つの駆動壁56が非吐出チャネル55側へ突出するように変形する。すなわち、本実施形態のアクチュエータプレート51は、厚さ方向(Y方向)に分極処理された2枚の圧電基板が積層されているため、駆動電圧を印加することで、駆動壁56におけるY方向の中間位置を中心にしてV字状に屈曲変形する。これにより、吐出チャネル54があたかも膨らむように変形する。
【0094】
2つの駆動壁56の変形によって、吐出チャネル54の容積が増大すると、共通インク室71内のインクがスリット72を通って吐出チャネル54内に誘導される。そして、吐出チャネル54の内部に誘導されたインクは、圧力波となって吐出チャネル54の内部に伝搬し、この圧力波がノズル孔78に到達したタイミングで、各電極61,63間に印加した駆動電圧をゼロにする。
これにより、駆動壁56が復元し、一旦増大した吐出チャネル54の容積が元の容積に戻る。この動作によって、吐出チャネル54の内部の圧力が増加し、インクが加圧される。その結果、インクをノズル孔78から吐出させることができる。この際、インクはノズル孔78を通過する際に、液滴状のインク滴となって吐出される。これにより、上述したように被記録媒体Pに文字や画像等を記録することができる。
【0095】
なお、インクジェットヘッド5の動作方法は上述した内容に限られない。例えば、通常状態の駆動壁56が吐出チャネル54の内側に変形し、吐出チャネル54があたかも内側に凹むように構成しても構わない。この場合は、各電極61,63間に印可する電圧を上述した電圧とは正負逆の電圧にするか、電圧の正負は変えずにアクチュエータプレート51の分極方向を逆にすることで実現可能である。また、吐出チャネル54が外側に膨らむように変形させた後で、吐出チャネル54が内側に凹むように変形させ、吐出時のインクの加圧力を高めても構わない。
【0096】
<インクジェットヘッドの製造方法>
次に、インクジェットヘッド5の製造方法について説明する。本実施形態のインクジェットヘッド5の製造方法は、
図10(a)のフローチャートに示したように、ヘッドチップ作製工程(ステップ5)と、流路プレート作製工程(ステップ10)と、各種プレート接合工程(ステップ15)と、帰還プレート等接合工程(ステップ20)と、を含む。
なお、ヘッドチップ作製工程は、各ヘッドチップ40A,40Bともに同様の方法により行うことが可能である。したがって、以下の説明では第1ヘッドチップ40Aにおけるヘッドチップ作製工程について説明する。
【0097】
<ヘッドチップ作製工程(ステップ5)>
実施形態のヘッドチップ作製工程は、アクチュエータプレート側の工程として、
図10(b)に示したように、ウエハ準備工程(ステップ105)、マスクパターン形成工程(ステップ110)、チャネル形成工程(ステップ115)、逃げ溝形成工程(ステップ117)、電極形成工程(ステップ120)、及び切断工程(ステップ122)を含む。
【0098】
図11に示すように、ウエハ準備工程(ステップ105)では、まず厚さ方向(Y方向)に分極処理された2枚の圧電ウエハ110a,110bを、分極方向を逆向きにして積層する。これにより、シェブロンタイプのアクチュエータウエハ110が形成される。
その後、アクチュエータウエハ110の表面(一方の圧電ウエハ110a)を研削する。なお、本実施形態では、厚さの等しい圧電ウエハ110a,110bを貼り合わせた場合について説明したが、予め厚さの異なる圧電ウエハ110a,110bを貼り合わせても構わない。
【0099】
図12に示すように、マスクパターン形成工程(ステップ110)では、電極形成工程(ステップ120)で用いるマスクパターン111を形成する。具体的には、アクチュエータウエハ110の裏面にマウンティングテープ112を貼付けた後、アクチュエータウエハ110の表面に感光性ドライフィルム等のマスク材料を貼り付ける。その後、フォトリソグラフィ技術を用いてマスク材料をパターニングすることで、マスク材料のうち上述したAP側共通パッド62及びAP側個別配線64(
図8参照)の形成領域に位置する部分マスク材料を除去する。これにより、アクチュエータウエハ110の表面上において、少なくともAP側共通パッド62及びAP側個別配線64の形成領域が開口するマスクパターン111が形成される。この場合、マスクパターン111は、アクチュエータウエハ110のうち、AP側共通パッド62及びAP側個別配線64の形成領域以外の部分を被覆している。なお、マスク材料は、アクチュエータウエハ110の表面に塗布等により形成しても構わない。
【0100】
図13に示すように、チャネル形成工程(ステップ115)では、図示しないダイシングブレード等により、アクチュエータウエハ110の表面に対して切削加工を行う。具体的には、
図14に示すように、アクチュエータウエハ110の表面上に、複数のチャネル54,55がX方向に間隔をあけて平行に並ぶように形成する。この場合、アクチュエータウエハ110の表面のうち、各チャネル54,55の形成領域を上述したマスクパターン111ごと切削する。
【0101】
具体的に、チャネル形成工程(ステップ115)では、Z方向に沿って延在する延在部54a,55a(
図5参照)と、延在部54a,55aからZ方向の一方に連なり、かつ、Z方向の一方に向かうに従い溝深さが漸次浅い切り上がり部54b,55b(
図5参照)と、を有する複数のチャネル54,55を、X方向に間隔をあけて並設するようアクチュエータウエハ110に形成する。
【0102】
なお、上述したマスクパターン形成工程(ステップ110)及びチャネル形成工程(ステップ115)は、マスクパターン111を所望の形状に形成することができれば工程の順番が逆になっても構わない。また、上述したマスクパターン形成工程において、吐出チャネル54及び非吐出チャネル55の形成領域に位置する部分のマスク材料を予め除去しても構わない。
【0103】
電極形成工程(ステップ120)は、
図10(c)に示したように、脱脂工程(ステップ205)と、エッチング工程(ステップ210)と、脱鉛工程(ステップ215)と、触媒付与工程(ステップ220)と、洗浄工程(ステップ222)と、めっき工程(ステップ225)と、逃げ溝形成工程(ステップ230)と、マスク除去工程(ステップ235)と、めっき皮膜除去工程(ステップ240)と、を含む。
【0104】
脱脂工程(ステップ205)では、アクチュエータウエハ110に付着している油脂等の汚れを除去する。
エッチング工程(ステップ210)では、フッ化アンモニウム溶液等でアクチュエータウエハ110をエッチングすることで、電極が形成されるめっき対象面に対する粗しを行う(粗面化工程)。これにより、めっき工程にて形成するめっき皮膜と、アクチュエータウエハ110とのアンカー効果による密着力を向上させることができる。
脱鉛工程(ステップ215)では、アクチュエータウエハ110をPZTにより形成した場合、アクチュエータウエハ110の表面の鉛を除去する。これにより、アクチュエータウエハ110の表面における鉛の触媒抑制効果を抑える。
【0105】
例えば、触媒付与工程(ステップ220)は、センシタイザー・アクチベーター法により行う。
図15に示すように、センシタイザー・アクチベーター法では、まず塩化第1錫水溶液に浸漬させ、アクチュエータウエハ110に塩化第1錫を吸着させるセンシタイジング処理を行う。続いて、アクチュエータウエハ110を水洗等により軽く洗浄する。その後、アクチュエータウエハ110を塩化パラジウム水溶液に浸漬させ、アクチュエータウエハ110に塩化パラジウムを吸着させる。すると、アクチュエータウエハ110に吸着した塩化パラジウムと、上述したセンシタイジング処理で吸着した塩化第1錫と、の間で酸化還元反応が生じることで、触媒113として金属パラジウムが析出される(アクチベーティング処理)。なお、触媒付与工程は、複数回行っても構わない。
なお、触媒付与工程は、上述したセンシタイザー・アクチベーター法以外の方法で行ってもよい。例えば、触媒付与工程は、キャタリスト・アクセレーター法により行ってもよい。キャタリスト・アクセレーター法では、アクチュエータウエハ110を、錫とパラジウムとのコロイド溶液に浸漬する。続いて、アクチュエータウエハ110を酸性溶液(例えば塩酸溶液)に浸漬して活性化し、アクチュエータウエハ110の表面に金属パラジウムを析出させる。
この触媒付与工程により、
図15に示すように、マスクパターン111を含めた露出面全体に触媒113(金属パラジウム)が析出する。
【0106】
続いて、洗浄工程(ステップ222)を行う。
すなわち、表面に触媒113が析出したアクチュエータウエハ110から、不要触媒を除去するための水洗を行う。
本実施形態では、複数のチャネル54、55のそれぞれが、Z方向に沿って延在する延在部54a、55aと、延在部54a、55aからZ方向の一方に連なり、かつ、Z方向の一方に向かうに従い溝深さが漸次浅い切り上がり部54b、55bと、を有することで、複数のチャネル54、55の形状がそれぞれ共通部分を有する同様な形状に形成されている。
このため、アクチュエータウエハ110の洗浄工程において、洗浄液が複数のチャネル54、55のチャネル溝内を同様に流れるため、両チャネル溝内の不要触媒の除去を同程度にすることができる。従って、チャネル溝の間で不要触媒の除去程度が異なることが原因となって、めっき皮膜の不析出箇所が生じたり、めっきダマが生じたりすることを抑制することができる。
【0107】
図16に示すように、めっき工程(ステップ225)では、アクチュエータウエハ110を、マスクパターン111ごとめっき液に浸漬する。すると、アクチュエータウエハ110のうち、触媒113が付与された部分に金属皮膜114が析出される。なお、めっき工程で使用する電極金属としては、例えば、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Cu(銅)、Au(金)等が好ましく、特にNiを用いることが好ましい。
【0108】
図16(b)は、めっき工程により金属皮膜114が析出した状態について表したものである。但し、
図16(b)では、領域を明確にするために、金属電極として機能する部分に網掛け表示をし、後述のマスク除去工程で除去されるマスクパターン111部分は網掛けをしていない。
なお、AP側共通パッド62となる領域とAP側個別配線64となる領域の間にもマスクパターン111aが残されているが、この部分は後述の電極逃げ溝81を形成する範囲と一致している。しかし、マスクパターン111a部分の幅を、
図16(b)よりも狭く、すなわち、AP側共通パッド62とAP側個別配線64となる領域を両者の中心側にむけて広げるようにしてもよい。この場合、次の逃げ溝形成工程において、マスクパターン111aの幅よりも広い幅で電極逃げ溝81を形成することで、AP側共通パッド62とAP側個別配線64の領域を残すようにする。
【0109】
図1、
図8に示すように、逃げ溝形成工程(ステップ230)では、AP側尾部51eの範囲で、AP側共通パッド62となる領域とAP側個別配線64となる領域の間に、非吐出チャネル55における切り上がり部55bの底面よりもY方向上方に電極逃げ溝81を形成する。
電極逃げ溝81は、ダイシングブレード等により、アクチュエータウエハ110の表面に対して切削加工により形成する。具体的には、
図1に示すように、アクチュエータウエハ110の表面上に、X方向に形成する。この場合、アクチュエータウエハ110の表面のうち、AP側共通パッド62とAP側個別配線64の形成領域を残して、マスクパターン111ごと切削する。
【0110】
図17に示すように、マスク除去工程(ステップ235)では、アクチュエータウエハ110の表面に形成されたマスクパターン111をリフトオフ等により除去する。
なお、マスクパターン111上に析出した金属皮膜114は、マスクパターン111とともに除去される。
これにより、アクチュエータウエハ110には、マスクパターン111から露出していた部分、すなわち、吐出チャネル54の共通電極61とこれに連続するAP側共通パッド62が残ると共に、非吐出チャネル55の個別電極63とこれに連続するAP側個別配線64が残る。
また
図1(b)で説明したように、本実施形態では、電極の膜厚を0.5μm以下に形成しているので、マスクパターン111をリフトオフした際に、十分な粗面化によって電極溝上部が脆弱化していた場合であっても、当該脆弱化した部分の剥がれ等の影響を与えることなく、マスクパターン111に形成された電極を、共通電極61や個別電極63から単独で切り離すことができる。
更に、膜厚が薄いので、リフトアップで切り離された後の共通電極61や個別電極63の上端面のバリを少なくすることができる。
【0111】
図18に示すように、めっき皮膜除去工程(ステップ240)では、金属皮膜114のうち、非吐出チャネル55の底面に位置する部分を除去する。
すなわち、非吐出チャネル55では、
図18に示すように、2つの駆動壁56の対向する両壁面の金属被膜114が底面で一体に接続されて、個別電極63同士が短絡した状態になっている。このため非吐出チャネル55の底面の金属被膜を、Z方向の全長にわたって除去することで、両壁面の個別電極63を分離絶縁する。
具体的に、非吐出チャネル55の底面に向けてレーザ光Lを照射した状態で、レーザ光LをZ方向に走査する。すると、金属皮膜114(
図16参照)のうち、レーザ光Lが照射された部分が選択的に除去される。これにより、金属皮膜114(
図16参照)が非吐出チャネル55の底面で分離される。これにより、アクチュエータウエハ110のうち、チャネル54,55の内面に共通電極61及び個別電極63がそれぞれ形成される。また、アクチュエータウエハ110の表面には、対応する共通電極61及び個別電極63に接続されるAP側共通パッド62及びAP側個別配線64(
図8参照)が形成される。
なお、レーザ光Lに代えてダイサーを用いてもよい。また、めっき皮膜除去工程において、金属皮膜114のうち非吐出チャネル55の底面に位置する部分を除去することに限らない。例えば、触媒除去工程において、触媒113のうち、非吐出チャネル55の底面に位置する部分を除去しても構わない。具体的に、触媒除去工程において、非吐出チャネル55の底面に向けてレーザ光Lを照射した状態で、レーザ光LをZ方向に走査し、触媒113のうち、レーザ光Lが照射された部分を選択的に除去してもよい。
【0112】
その後、切断工程(ステップ122)では、マウンティングテープ112を剥がし、ダイサー等を用いてアクチュエータウエハ110を個片化することで、上述したアクチュエータプレート51(
図8参照)が完成する。
【0113】
図10(a)のフローチャートに示したヘッドチップ作製工程(ステップ5)は、以上説明したアクチュエータプレート51側の工程の他に、カバープレート側の工程として、共通インク室形成工程、スリット形成工程、貫通孔形成工程、凹部形成工程および電極・配線形成工程を含む。
【0114】
図19に示すように、共通インク室形成工程では、カバーウエハ120に対して表面側から図示しないマスクを通してサンドブラスト等を行い、共通インク室71を形成する。
続いて、
図20に示すように、スリット形成工程では、カバーウエハ120に対して裏面側から図示しないマスクを通してサンドブラスト等を行い、共通インク室71内に各別に連通するスリット72を形成する。
【0115】
貫通孔形成工程では、
図19に示すように、カバーウエハ120に対して表面側から図示しないマスクを通してサンドブラスト等を行い、表面側貫通凹部85aを形成する。なお、表面側貫通凹部85aの形成工程は、共通インク室形成工程と同じ工程で行ってもよい。
続いて、
図20に示すように、貫通孔形成工程では、カバーウエハ120に対して裏面側から図示しないマスクを通してサンドブラスト等を行い、表面側貫通凹部85a内に各別に連通する裏面側貫通凹部85bを形成する。このように、表面側貫通凹部85aと裏面側貫通凹部85bとを連通させることで、カバーウエハ120に対してスリット形状の貫通孔87を形成する。なお、裏面側貫通凹部85bの形成工程は、スリット形成工程と同じ工程で行ってもよい。
【0116】
凹部形成工程では、
図19に示すように、カバーウエハ120に対して表面側または裏面側から図示しないマスクを通してサンドブラスト等を行い、凹部73(
図8参照)を形成するためのスリット121を形成する。その後、ダイサー等を用いてスリット121の軸線に沿ってカバーウエハ120を個片化することで、カバーウエハ120に対して凹部73を形成する。これにより、凹部73が形成されたカバープレート52(
図4参照)が完成する。
なお、共通インク室形成工程、スリット形成工程、貫通孔形成工程、および凹部形成工程の各工程は、サンドブラストに限らず、ダイシング、切削等により行っても構わない。
【0117】
次に、
図21に示すように、電極・配線形成工程では、カバープレート52に、貫通孔内電極86、CP側共通パッド66、共通引出配線67、連結共通電極82(
図22参照)及びCP側個別配線69などの各種電極・配線を形成する。
具体的に、電極・配線形成工程では、
図22に示すように、まずカバープレート52の全面(表面、裏面および上端面、並びに凹部73の形成面および貫通孔87の形成面を含む。)に、各種電極および各種配線(貫通孔内電極86、CP側共通パッド66、共通引出配線67、連結共通電極82及びCP側個別配線69)の形成領域が開口する図示しないマスクを配置する。その後、カバープレート52の全面に対して無電解めっき等により電極材料を成膜する。これにより、マスクの開口を通してカバープレート52の全面に各種電極および各種配線となる電極材料が成膜される。なお、マスクとしては、例えば感光性ドライフィルム等を用いることができる。また、電極・配線形成工程は、めっきに限らず、蒸着等により行っても構わない。また、貫通孔内電極86の形成工程では、導電ペースト等を貫通孔87内に充填することにより貫通孔内電極86を形成してもよい。
電極・配線形成工程程の終了後には、カバープレート52の全面からマスクを除去する。
【0118】
そして、各アクチュエータプレート51と各カバープレート52同士を接合し、各ヘッドチップ40A,40Bを作製する。具体的に、各AP側Y方向内側面51f1を、各CP側Y方向外側面52f1に貼り付ける。
【0119】
<流路プレート作製工程>
実施形態の流路プレート作製工程は、流路形成工程および個片化工程を含む。
図23に示すように、流路形成工程(表面側流路形成工程)では、まず流路ウエハ130に対して表面側から図示しないマスクを通してサンドブラスト等を行い、入口流路74及び出口流路75を形成する。
【0120】
加えて、流路形成工程(裏面側流路形成工程)では、流路ウエハ130に対して裏面側から図示しないマスクを通してサンドブラスト等を行い、入口流路74及び出口流路75を形成する。なお、流路形成工程の各工程は、サンドブラストに限らず、ダイシング、切削等により行っても構わない。
【0121】
その後、個片化工程では、ダイサー等を用いて出口流路75におけるX方向直線部の軸線(仮想線D)に沿って流路ウエハ130を個片化する。これにより、流路プレート41(
図4参照)が完成する。
【0122】
<各種プレート接合工程>
次に、
図26に示すように、各種プレート接合工程では、各ヘッドチップ40A,40Bにおけるカバープレート52と流路プレート41とを接合する。具体的に、流路プレート41のY方向外側面(各主面41f1,41f2)を、各ヘッドチップ40A,40BにおけるCP側Y方向内側面52f2に貼り付ける。
これにより、プレート接合体5Aを作製する。
なお、すべてのプレートをウエハ状態で貼り合わせてからのチップ分割(個片化)を行ってもよい。
【0123】
<帰還プレート等接合工程>
次いで、プレート接合体5Aに対して帰還プレート43およびノズルプレート44を接合する。その後、CP側尾部52eに対してフレキシブル基板45(
図5参照)を実装する。
以上により、本実施形態のインクジェットヘッド5が完成する。
【0124】
本実施形態のインクジェットヘッドの製造方法によれば、吐出チャネル54と非吐出チャネル55共に、延在部54a、55aに連続する切り上がり部54b、55bを有する同様な形状に形成される。
そして、先に電極逃げ溝81を形成するのではなく、電極逃げ溝81の形成よりも先にめっき処理工程を行う。このため、同様な形状である吐出チャネル54と非吐出チャネル55用のチャネル溝に対し、洗浄する際の水流がチャネル内を均等に流れ、めっきによるダマがチャネル用溝に形成されることを回避することができる。
そのため、ダマの形成による歩留まり低下を回避することができ、コスト低減を図ることができる。
【0125】
更に、本変形例の製造方法では、蒸着では電極が形成出来る深さに制約があり、また、PZT粒界等で影になる部分には電極が形成されないが、めっきにて電極形成するのでより確実に電極を接続することができる。
【0126】
以上に説明した実施の形態により次の構成とすることができる。
(構成1)第1方向に沿って延在する延在部と、前記延在部から前記第1方向の一方に連なり、かつ、前記第1方向の一方に向かうに従い溝深さが漸次浅い切り上がり部と、を有する複数のチャネルが、前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて並設されたアクチュエータプレートと、前記チャネルの内面にめっき皮膜により形成されたチャネル内電極と、を備えることを特徴とする液体噴射ヘッドチップ。
すなわち、本実施形態に係るヘッドチップ40A,40Bは、Z方向に沿って延在する延在部54a,55aと、延在部54a,55aからZ方向の一方に連なり、かつ、Z方向の一方に向かうに従い溝深さが漸次浅い切り上がり部54b,55bと、を有する複数のチャネル54,55が、X方向に間隔をあけて並設されたアクチュエータプレート51と、チャネル54,55の内面にめっき皮膜により形成されたチャネル内電極61,63と、を備える。
【0127】
本発明者の検討によれば、電極が形成されるチャネル(溝)の形状によっては、めっき皮膜の不析出箇所が生じたり、めっきダマが生じたりする場合があった。特に、複数のチャネルが、第1方向に沿って延在する延在部のみを有する突っ切り形状のチャネルと、切り上がり部を有するチャネルとで構成されている場合、めっき皮膜の不析出箇所が生じたり、めっきダマが生じたりしやすいことが明らかになっている。これは、触媒付与後の不要触媒の除去のための水洗は、めっき対象物の形状により触媒の除去度合いが大きく異なるため、一方の形状に触媒付与の条件を合わせると、他方は水洗過剰により必要な触媒が不足してめっき皮膜の不析出箇所が生じるか、水洗不足によりめっきダマが生じるためである。そのため、めっきで電極形成を行う場合には、複数の異なる形状にめっきをする条件は難しいと考えられる。この状態は、ノズル密度を上げるため、溝幅を狭く(例えば、100μm以下に)していくとより顕著になる。
本発明者は、鋭意研究の結果、めっき皮膜の不析出箇所が生じたり、めっきダマが生じたりする頻度と、チャネルの形状との間には高い相関があり、複数のチャネルの形状を、それぞれ共通部分を有する形状とすれば、めっき皮膜の不析出箇所が生じたり、めっきダマが生じたりすることを抑制することができることを見出し、本発明に至った。
本実施形態によれば、複数のチャネル54,55のそれぞれが、Z方向に沿って延在する延在部54a,55aと、延在部54a,55aからZ方向の一方に連なり、かつ、Z方向の一方に向かうに従い溝深さが漸次浅い切り上がり部54b,55bと、を有することで、複数のチャネル54,55の形状がそれぞれ共通部分を有する形状とされている。そして、チャネル内電極61,63が、それぞれ共通部分を有する形状とされた複数のチャネル54,55の内面にめっき皮膜により形成されている。したがって、めっき電極において、めっき皮膜の不析出箇所が生じたり、めっきダマが生じたりすることを抑制することができる。
ところで、めっき皮膜の不析出箇所およびめっきダマの発生を抑制する観点からは、複数のチャネルのそれぞれを突っ切り形状のチャネルとすることが考えられる。しかし、複数のチャネルのそれぞれを突っ切り形状のチャネルとした場合、めっき電極を形成する工程において、アクチュエータプレートに割れ又は欠けが生じる可能性がある。
これに対し、本実施形態によれば、複数のチャネル54,55のそれぞれが切り上がり部54b,55bを有するため、複数のチャネルのそれぞれを突っ切り形状のチャネルとした場合と比較して、構造的に強固となる。したがって、めっき電極を形成する工程において、アクチュエータウエハ110に割れ又は欠けが生じることを抑制することができる。
【0128】
(構成2)前記複数のチャネルは、互いに異なる形状を有することを特徴とする構成1の液体噴射ヘッドチップ。
すなわち、本実施形態では、複数のチャネル54,55は、互いに異なる形状を有している。
【0129】
ところで、複数のチャネルからの液体の噴射方式によっては、複数のチャネルの形状を互いに異ならせる場合がある。例えば、複数のチャネルを、突っ切り形状のチャネルと、切り上がり部を有するチャネルとで構成する場合がある。しかしこの場合、めっき皮膜の不析出箇所が生じたり、めっきダマが生じたりしやすいことが明らかとなっている。
これに対し、本実施形態によれば、複数のチャネル54,55の形状を互いに異ならせた場合でも、複数のチャネル54,55のそれぞれが切り上がり部54b,55bを有するため、めっき電極において、めっき皮膜の不析出箇所が生じたり、めっきダマが生じたりすることを抑制することができる。加えて、アクチュエータプレート51に割れ又は欠けが生じることを抑制することができる。
【0130】
(構成3)前記複数のチャネルは、前記第2方向に間隔をあけて交互に並設された噴射チャネル及び非噴射チャネルであり、前記チャネル内電極は、前記噴射チャネルの内面に形成された共通電極、及び前記非噴射チャネルの内面に形成された個別電極であり、前記非噴射チャネルの前記第1方向の長さは、前記噴射チャネルの前記第1方向の長さよりも長いことを特徴とする構成2の液体噴射ヘッドチップ。
すなわち、本実施形態では、複数のチャネル54,55は、X方向に間隔をあけて交互に並設された吐出チャネル54及び非吐出チャネル55であり、チャネル内電極61,63は、吐出チャネル54の内面に形成された共通電極61、及び非吐出チャネル55の内面に形成された個別電極63であり、非吐出チャネル55のZ方向の長さは、吐出チャネル54のZ方向の長さよりも長い。
【0131】
本実施形態によれば、複数のチャネル54,55のうち吐出チャネル54からのみインクを吐出させる方式において、めっき電極に、めっき皮膜の不析出箇所が生じたり、めっきダマが生じたりすることを抑制することができる。加えて、アクチュエータプレート51に割れ又は欠けが生じることを抑制することができる。
【0132】
(構成4)前記アクチュエータプレートのうち、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向におけるアクチュエータプレート側第1主面に積層されて前記噴射チャネル及び前記非噴射チャネルを閉塞するとともに、前記噴射チャネルに連通する液体供給路と、自身を前記第3方向に貫通し前記液体供給路以外の箇所に配置された貫通孔と、が形成されたカバープレートと、前記カバープレートにおいて前記貫通孔を介して前記共通電極と外部配線とを接続する接続配線と、を更に備えることを特徴とする構成3の液体噴射ヘッドチップ。
すなわち、本実施形態では、AP側Y方向内側面51f1に積層されて吐出チャネル54及び非吐出チャネル55を閉塞するとともに、吐出チャネル54に連通する液体供給路70と、自身をY方向に貫通し液体供給路70以外の箇所に配置された貫通孔87と、が形成されたカバープレート52と、カバープレート52において貫通孔87を介して共通電極61とフレキシブル基板45とを接続する接続配線60と、を更に備えている。
【0133】
本実施形態によれば、カバープレート52には、自身をY方向に貫通し液体供給流路70以外の箇所に配置された貫通孔87が形成され、接続配線60は、貫通孔87を介して共通電極61とフレキシブル基板45とを接続していることで、共通電極61をインクの流路に形成した構成と比較して、腐食する可能性のある場所の電極を減らすことができる。したがって、インク等の液体による電極の腐食を抑制し、信頼性を高めることができる。加えて、共通電極61をインクの流路に形成した構成と比較して、電極金属の選択肢を増やすことができる。例えば、インク等の液体によって腐食する金属(例えば、銅、銀等)を接続配線60(電極)に用いることができる。加えて、吐出チャネル54及び非吐出チャネル55等の溝の影響を受けることなく、接続配線60を形成可能な領域の面積を確保することができる。特に、アクチュエータプレート51に吐出チャネル54及び非吐出チャネル55が形成された構成においては、噴射チャネルのみが形成された構成と比較してチャネルの形成領域が複雑化し易いため、各種配線の接続部分の強度を確保しつつ各種配線のレイアウトの自由度を向上するうえで好適である。加えて、接続配線60がカバープレート52において共通電極61とフレキシブル基板45とを接続していることで、接続配線60がアクチュエータプレート51側に配置された構成と比較して、接続配線60をアクチュエータプレート51側の電極から離間させ、静電容量の増加を抑制することができる。
【0134】
(構成5)前記接続配線は、前記アクチュエータプレートと前記カバープレートとの積層状態において、前記カバープレートのうち、前記アクチュエータプレートの前記第1方向の一端面よりも外方に延出する尾部に形成されていることを特徴とする構成4の液体噴射ヘッドチップ。
すなわち、接続配線60は、アクチュエータプレート51とカバープレート52との積層状態において、CP側尾部52eに形成されている。
【0135】
本実施形態によれば、CP側尾部52eにおいて接続配線60を形成可能な領域の面積を広く確保することができる。したがって、各種配線の接続部分の強度を確保しつつ各種配線のレイアウトの自由度を向上することが容易となる。
【0136】
(構成6)前記接続配線は、前記貫通孔の内面に形成された貫通孔内電極と、前記カバープレートの前記尾部において前記貫通孔内電極と前記外部配線とを接続する引出配線と、を備えることを特徴とする構成5の液体噴射ヘッドチップ。
すなわち、本実施形態では、接続配線60は、貫通孔87の内面に形成された貫通孔内電極86と、CP側尾部52eにおいて貫通孔内電極86とフレキシブル基板45とを接続する共通引出配線67と、を備える。
【0137】
本実施形態によれば、液体供給路70を避けた位置において、貫通孔内電極86と共通引出配線67とを介して、共通電極61とフレキシブル基板45とを電気的に接続することができる。そのため、液体供給路70内を流れるインク等の液体に接続配線60が接触することを回避することができる。
【0138】
(構成7)前記引出配線は、前記カバープレートの前記尾部のうち、前記アクチュエータプレート側第1主面と対向するカバープレート側第1主面において前記第2方向に少なくとも3以上の複数箇所に分割して形成されるとともに、前記外部配線に接続される共通端子を備えることを特徴とする構成6の液体噴射ヘッドチップ。
すなわち、本実施形態では、共通引出配線67は、CP側尾部52eのY方向外側面においてX方向に少なくとも3以上の複数箇所に分割して形成されるとともに、フレキシブル基板45に接続される共通端子68を備える。
【0139】
本実施形態によれば、共通端子68がCP側尾部52eのY方向外側面に形成されることで、共通端子68がCP側Y方向内側面52f2に形成された場合と比較して、フレキシブル基板45と共通端子68との圧着作業を容易に行うことができる。加えて、共通端子68がX方向に少なくとも3以上の複数箇所に分割して形成されることで、共通端子68が局所的に(例えば、X方向の両端に)形成される場合と比較して、X方向におけるノズル位置の違いにより駆動パルスの鈍りが発生することを抑制することができる。
【0140】
(構成8)前記アクチュエータプレート側第1主面のうち、前記噴射チャネルに対して前記第1方向の一方側に位置する部分には、前記共通電極から延出するとともに、前記第2方向に間隔をあけて配置された複数のアクチュエータプレート側共通パッドが形成され、前記カバープレートのうち、前記アクチュエータプレート側第1主面と対向するカバープレート側第1主面における前記貫通孔の周囲には、前記貫通孔内電極から延出するとともに、前記第2方向に間隔をあけて複数配置され、かつそれぞれが前記第3方向において前記アクチュエータプレート側共通パッドと対向するカバープレート側共通パッドが形成されていることを特徴とする構成6から構成7の何れか一項の液体噴射ヘッドチップ。
すなわち、本実施形態では、AP側尾部51eのY方向内側面には、共通電極61から延出するとともに、X方向に間隔をあけて配置された複数のAP側共通パッド62が形成され、CP側Y方向外側面52f1における貫通孔87の周囲には、貫通孔内電極86から延出するとともに、X方向に間隔をあけて複数配置され、かつそれぞれがY方向においてAP側共通パッド62と対向するCP側共通パッド66が形成されている。
【0141】
本実施形態によれば、アクチュエータプレート51とカバープレート52との接合時において、AP側共通パッド62とCP側共通パッド66とを接続することができるため、各パッド62,66等を介して共通電極61とフレキシブル基板45との接続を容易に行うことができる。加えて、複数の吐出チャネル54の内面に形成された共通電極61が、AP側共通パッド62からCP側共通パッド66を経て貫通孔内電極86に導通され、貫通孔内電極86に接続される引出配線67がCP側尾部52eまで延出されるため、共通電極61と個別電極63との電極配置を容易にできる。
【0142】
(構成9)前記カバープレート側第1主面には、前記複数のカバープレート側共通パッドに接続されるとともに、前記第2方向に延在する横断共通電極が形成されていることを特徴とする構成8の液体噴射ヘッドチップ。
すなわち、本実施形態では、AP側尾部51eのY方向内側面には、X方向に延在するとともに、吐出チャネル54を間に挟んで対向する個別電極63同士を接続するAP側個別配線64が形成され、CP側Y方向外側面52f1には、Z方向の一端部においてX方向に分割されたCP側個別配線69が形成され、CP側個別配線69は、Y方向においてAP側個別配線64と対向するCP側個別パッド69aと、CP側個別パッド69aから上端に向けて延びる個別端子69bと、を備える。
【0143】
本実施形態によれば、アクチュエータプレート51とカバープレート52との接合時において、AP側個別配線64とCP側個別パッド69aとを接続することができるため、各個別配線64,69および個別パッド69a等を介して個別電極63とフレキシブル基板45との接続を容易に行うことができる。実施形態においては、個別端子69b及び共通端子68の双方がCP側Y方向外側面52f1に形成されているため、個別端子69bと共通端子68とをカバープレート52における異なる面に形成した場合と比較して、個別端子69b及び共通端子68とフレキシブル基板45との圧着作業を容易に行うことができる。
【0144】
(構成10)前記アクチュエータプレート側第1主面には、前記第1方向の一端部において前記第2方向に延在するとともに、前記噴射チャネルを間に挟んで対向する前記個別電極同士を接続するアクチュエータプレート側個別配線が形成され、前記カバープレートのうち、前記アクチュエータプレート側第1主面と対向するカバープレート側第1主面には、前記第1方向の一端部において前記第2方向に分割されたカバープレート側個別配線が形成され、前記カバープレート側個別配線は、前記第3方向において前記アクチュエータプレート側個別配線と対向するカバープレート側個別パッドと、前記カバープレート側個別パッドから前記第1方向の一端に向けて延びる個別端子と、を備えることを特徴とする構成4から構成9の何れか一項の液体噴射ヘッドチップ。
すなわち、本実施形態では、CP側尾部52eの上端には、カバープレート52の内側に窪むとともに、X方向に間隔をあけて配置された複数の凹部73が形成され、共通引出配線67は、凹部73を介して貫通孔内電極86とフレキシブル基板45とを接続している。
【0145】
本実施形態によれば、貫通孔90(
図25参照)を介して共通引出配線67を貫通孔内電極86とフレキシブル基板45とに接続した場合と比較して、カバープレート52に貫通孔形成領域(
図25に示す貫通孔90の形成領域)よりも小さい凹部形成領域(例えば、
図19に示すスリット121の形成領域)があれば足りるため、ヘッドチップ40A,40BのZ方向の長さを短縮することができる。このため、ヘッドチップ40A,40Bを小型化することができ、所定の大きさのウエハからの取り個数を増大できる。
【0146】
(構成11)構成1から構成10の何れか一項の液体噴射ヘッドチップを備えることを特徴とする液体噴射ヘッド。
すなわち、本実施形態に係るインクジェットヘッド5は、上記のヘッドチップ40A,40Bを備える。
【0147】
本実施形態によれば、上記のヘッドチップ40A,40Bを備えたインクジェットヘッド5において、めっき電極に、めっき皮膜の不析出箇所が生じたり、めっきダマが生じたりすることを抑制することができる。加えて、アクチュエータプレート51に割れ又は欠けが生じることを抑制することができる。
【0148】
(構成12)前記複数のチャネルは、前記第2方向に間隔をあけて交互に並設された噴射チャネル及び非噴射チャネルであり、前記液体噴射ヘッドチップは、前記アクチュエータプレートのうち、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向におけるアクチュエータプレート側第1主面に積層されて前記噴射チャネル及び前記非噴射チャネルを閉塞するとともに、前記噴射チャネルに連通する液体供給路が形成されたカバープレートを備え、前記カバープレートのうち、前記アクチュエータプレート側第1主面と対向するカバープレート側第1主面と反対側のカバープレート側第2主面を、互いに前記第3方向に対向させて配置された一対の前記液体噴射ヘッドチップを備え、一対の前記液体噴射ヘッドチップの間には、流路プレートが配設され、前記流路プレートには、一対の前記カバープレートの前記液体供給路に連通する入口流路が形成されていることを特徴とする構成11の液体噴射ヘッド。
すなわち、本実施形態では、CP側Y方向内側面52f2を互いにY方向に対向させて配置された一対のヘッドチップ40A,40Bを備え、一対のヘッドチップ40A,40Bの間には、流路プレート41が配設され、流路プレート41には、一対のカバープレート52の液体供給路70に連通する入口流路74が形成されている。
【0149】
本実施形態によれば、各ヘッドチップ40A,40BにおけるCP側Y方向外側面52f1がY方向の外側に露出しているため、二列タイプのインクジェットヘッド5においてフレキシブル基板45と接続配線60との接続を容易に行うことができる。
【0150】
(構成13)前記複数の噴射チャネルは、一対の前記液体噴射ヘッドチップにおける前記アクチュエータプレートの前記第1方向の他端面でそれぞれ開口し、一対の前記アクチュエータプレートにおける前記第1方向の他端側には、前記噴射チャネルに各別に連通する噴射孔を有する噴射プレートが配設され、前記第1方向における前記一対のアクチュエータプレートと前記噴射プレートとの間には、前記噴射チャネルと前記噴射孔とを各別に連通する循環路を有する帰還プレートが配設され、前記流路プレートには、前記循環路に連通する出口流路が形成されていることを特徴とする構成12の液体噴射ヘッド。
すなわち、本実施形態では、複数の吐出チャネル54は、一対のヘッドチップ40A,40Bにおけるアクチュエータプレート51の下端面でそれぞれ開口し、一対のアクチュエータプレート51における下端側には、吐出チャネル54に各別に連通するノズル孔78を有するノズルプレート44が配設され、Z方向における一対のアクチュエータプレート51とノズルプレート44との間には、吐出チャネル54とノズル孔78とを各別に連通する循環路76を有する帰還プレート43が配設され、流路プレート41には、循環路76に連通する出口流路75が形成されている。
【0151】
本実施形態によれば、各吐出チャネル54とインクタンク4との間で液体を循環させることができるため、吐出チャネル54内におけるノズル孔78付近での気泡の滞留を抑制することができる。
【0152】
(構成14)構成11から構成13の何れか一の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させる移動機構と、を備えることを特徴とする液体噴射装置。
すなわち、本実施形態に係るプリンタ1は、上記のインクジェットヘッド5と、インクジェットヘッド5と被記録媒体Pとを相対的に移動させる移動機構2,3,7と、を備える。
【0153】
本実施形態によれば、上記のインクジェットヘッド5を備えたプリンタ1において、めっき電極に、めっき皮膜の不析出箇所が生じたり、めっきダマが生じたりすることを抑制することができる。加えて、アクチュエータプレート51に割れ又は欠けが生じることを抑制することができる。
【0154】
(構成15)第1方向に沿って延在する延在部と、前記延在部から前記第1方向の一方に連なり、かつ、前記第1方向の一方に向かうに従い溝深さが漸次浅い切り上がり部と、を有する複数のチャネルを、前記第1方向に直交する第2方向に間隔をあけて並設するようアクチュエータウエハに形成するチャネル形成工程と、前記チャネル形成工程の後、前記チャネルの内面にチャネル内電極としてめっき皮膜を形成する電極形成工程と、を含むことを特徴とする液体噴射ヘッドチップの製造方法。
すなわち、本実施形態に係るヘッドチップ40A,40Bの製造方法は、Z方向に沿って延在する延在部54a,55aと、延在部54a,55aからZ方向の一方に連なり、かつ、Z方向の一方に向かうに従い溝深さが漸次浅い切り上がり部54b,55bと、を有する複数のチャネル54,55を、X方向に間隔をあけて並設するようアクチュエータウエハ110に形成するチャネル形成工程と、チャネル形成工程の後、チャネル54,55の内面にチャネル内電極61,63としてめっき皮膜を形成する電極形成工程と、を含む。
【0155】
この方法によれば、チャネル形成工程において、Z方向に沿って延在する延在部54a,55aと、延在部54a,55aからZ方向の一方に連なり、かつ、Z方向の一方に向かうに従い溝深さが漸次浅い切り上がり部54b,55bと、を有する複数のチャネル54,55を形成することで、複数のチャネル54,55の形状がそれぞれ共通部分を有する形状とされる。そして、電極形成工程において、それぞれ共通部分を有する形状とされた複数のチャネル54,55の内面にチャネル内電極61,63としてめっき皮膜を形成する。したがって、めっき電極において、めっき皮膜の不析出箇所が生じたり、めっきダマが生じたりすることを抑制することができる。加えて、複数のチャネル54,55のそれぞれが切り上がり部54b,55bを有するため、複数のチャネルのそれぞれを突っ切り形状のチャネルとした場合と比較して、構造的に強固となる。したがって、電極形成工程において、アクチュエータウエハ110に割れ又は欠けが生じることを抑制することができる。
【0156】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0157】
例えば、上述した実施形態では、液体噴射装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であっても構わない。
【0158】
上述した実施形態では、ノズル孔78が二列並んだ二列タイプのインクジェットヘッド5について説明したが、これに限られない。例えば、ノズル孔が三列以上のインクジェットヘッド5としてもよく、ノズル孔が一列のインクジェットヘッド5としてもよい。
【0159】
上述した実施形態では、エッジシュートタイプのうち、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間でインクが循環する循環式について説明したが、これに限られない。例えば、吐出チャネルにおけるチャネル延在方向の中央部からインクを吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのインクジェットヘッドに本発明を適用しても構わない。
【0160】
上述した実施形態では、吐出チャネル54と非吐出チャネル55とが交互に配列された構成について説明したが、この構成のみに限られない。例えば、全チャネルから順次インクを吐出する、いわゆる3サイクル方式のインクジェットヘッドに本発明を適用しても構わない。
【0161】
上述した実施形態では、アクチュエータプレートとしてシェブロンタイプを用いた構成について説明したが、これに限られない。すなわち、モノポールタイプ(分極方向が厚さ方向で一方向)のアクチュエータプレートを用いても構わない。
【0162】
上述した実施形態では、複数のチャネル54,55が互いに異なる形状を有している構成について説明したが、これに限らない。すなわち、複数のチャネル54,55が互いに同じ形状を有していても構わない。
【0163】
上述した実施形態では、非吐出チャネル55のZ方向の長さが吐出チャネル54のZ方向の長さよりも長い構成について説明したが、これに限らない。例えば、非吐出チャネル55のZ方向の長さが吐出チャネル54のZ方向の長さ以下であっても構わない。
【0164】
上述した実施形態では、CP側Y方向内側面52f2には、複数の共通引出配線67に接続される連結共通電極82が形成された構成について説明したが、これに限らない。例えば、CP側Y方向内側面52f2には、連結共通電極82が形成されていなくてもよい。すなわち、CP側Y方向内側面52f2において、隣り合う2つの共通引出配線67の間の部分は電気的に接続されていなくてもよい。
【0165】
上述した実施形態では、流路プレート41が同一の部材により一体に形成された構成について説明したが、この構成のみに限られない。例えば、流路プレート41が複数の部材の組合せで形成されていてもよい。
【0166】
以下の変形例において、上記実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0167】
<第1変形例>
例えば、
図25に示すように、実施形態の凹部73(
図5参照)に代えて、カバープレート52の上端部には、Y方向に貫通するとともに、X方向に間隔をあけて配置された複数の貫通孔90が形成されていてもよい。
【0168】
共通引出配線67は、CP側Y方向内側面52f2における貫通孔87からCP側Y方向内側面52f2上を上方に延びた後、カバープレート52の上端部の貫通孔90を経て、CP側Y方向外側面52f1の上端部まで引き出されている。言いかえると、共通引出配線67は、貫通孔90内の貫通電極91を介してCP側尾部52eのY方向外側面まで引き出されている。これにより、複数の吐出チャネル54の内面に形成された共通電極61は、AP側共通パッド62、CP側共通パッド66、貫通孔内電極86および共通引出配線67を経て、共通端子68においてフレキシブル基板45と電気的に接続される。
【0169】
例えば、貫通電極91は、蒸着等によって貫通孔90の内周面にのみ形成されている。なお、貫通電極91は、導電ペースト等によって貫通孔90内に充填されていてもよい。
【0170】
本変形例では、CP側尾部52eの上端部には、カバープレート52をY方向に貫通するとともに、X方向に間隔をあけて配置された複数の貫通孔90が形成され、共通引出配線67は、貫通孔90を介して貫通孔内電極86とフレキシブル基板45とを接続している。
【0171】
本変形例によれば、凹部73(
図5参照)を介して共通引出配線67を貫通孔内電極86とフレキシブル基板45とに接続した場合と比較して、共通引出配線67を貫通孔形成部(壁部)で保護することができるため、貫通孔90内において共通引出配線67が損傷することを回避することができる。
【0172】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせても構わない。
【0173】
<第2変形例>
図10に示すように、説明した実施形態では、めっき工程225(ステップ225)の後に逃げ溝形成工程(ステップ230)を行う場合について説明した。これに対し、第2変形例では、めっき工程の前に逃げ溝生工程を行うものである。
すなわち、第2変形例では、
図10(b)で示したチャネル形成工程(ステップ115)と電極形成工程(ステップ120)との間に逃げ溝形成工程(ステップ117、図示しない)を行うと共に、
図10(c)で示した実施形態の逃げ溝形成工程(ステップ230)に変えて電極分離工程(ステップ230)を行う。
この第2変形例においても、実施形態と同様に、吐出チャネル54と非吐出チャネル55のチャネル溝幅は70μm未満であり、電極の膜厚は0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下に形成される。
【0174】
以下、第2変形例にかかる、逃げ溝形成工程(ステップ117)と電極分離工程(ステップ230)の動作について、
図26から
図28を参照して説明する。
<インクジェットヘッドの構造>
なお、他の処理、工程については実施形態と同様であるため適宜説明を省略することとする。
第2変形例のインクジェットヘッドでは、
図28に示すように、アクチュエータプレート51の表面には、ダイシングブレード等の切削処理により、Z方向に沿った吐出チャネル54と非吐出チャネル55用のチャネル溝が、X方向に交互に並んで形成される。吐出チャネル54は、延在部54aと切り上がり部54bを有しており、非吐出チャネル55も延在部55aと切り上がり部55bを有している。
第2変形例では、先にダイシングブレード等による切削加工で電極逃げ溝81を形成し、その後にめっき処理による電極形成を行う。
後にめっき処理を行うことで、電極逃げ溝81には逃げ溝電極93がAP側共通パッド62と一体に形成されること短絡している。そこで、
図1に示すように、逃げ溝電極93とAP側共通パッド62との短絡部を切削やレーザ照射により切断することで、電極分離部96が形成されている。
このように第2変形例では、めっき工程におけるエッチング処理でアクチュエータウエハ110の表面が脆弱化する前に電極逃げ溝81を形成するので、逃げ溝形成によって電極溝壁面が剥離することを防止できる。このため、剥離による歩留まり低下を回避することができ、コスト低減を図ることができる。
また、本変形例の製造方法では、逃げ溝電極93、個別電極65、及びAP側個別配線64を一体形成して接合をより強固にすることができる。
【0175】
<インクジェットヘッドの製造方法>
図26は、実施形態に係る電極逃げ溝形成工程を説明ためのものである。
図26、
図8に示すように、逃げ溝形成工程(ステップ117)では、AP側尾部51eの範囲で、AP側共通パッド62となる領域とAP側個別配線64となる領域の間に、非吐出チャネル55における切り上がり部55bの底面よりもY方向上方に電極逃げ溝81を形成する。
電極逃げ溝81は、ダイシングブレード等により、アクチュエータウエハ110の表面に対して切削加工により形成する。具体的には、
図26に示すように、アクチュエータウエハ110の表面上に、X方向に形成する。この場合、アクチュエータウエハ110の表面のうち、AP側共通パッド62とAP側個別配線64の形成領域を残して、マスクパターン111ごと切削する。
【0176】
第2変形例では、逃げ溝形成工程(ステップ117)で電極逃げ溝81を形成した後に、めっき工程(ステップ225)による電極形成を行うことで、電極逃げ溝81に逃げ溝電極93が形成される。この逃げ溝電極93によって、個別電極65とAP側個別配線64の接合部分が増加するため、仮に電極が一部欠けたとしても個別電極65とAP側個別配線64の導通を維持することができる。
【0177】
第2変形例では、電極逃げ溝81を形成した後に、めっき処理により電極形成を行うため、電極逃げ溝81にも逃げ溝電極93が形成される。この逃げ溝電極93は、めっき処理後においてAP側共通パッド62やAP側個別配線64等の電極と一体になっている。すなわち、
図27に示すように、AP側共通パッド62と電極逃げ溝81の側面でできる稜線部分に、逃げ溝電極93とAP側共通パッド62との接続部95が形成され、両者が短絡している。
そこで、
図28に示すように、逃げ溝電極93とAP側共通パッド62との接続部95を切断することで、電極分離部96が形成されている。接続部95の切断はダイシングブレード等による切削や、レーザ照射による。
【0178】
図27は、めっき工程により金属被膜114が析出した状態について表したものである。但し、
図27では、領域を明確にするため、金属電極として機能する部分に網掛け表示をし、マスク除去工程(ステップ235)で除去されるマスクパターン111部分は網掛けをしていない。
めっき工程では、アクチュエータウエハ110全体をめっき液に浸漬するので、
図27に示すように、電極逃げ溝81の逃げ溝電極93とAP側共通パッド62との接続部95も一体に形成され短絡状態(導通する状態)となっている。
【0179】
そこで、次の電極分離工程(ステップ230)では、
図28に示すように、逃げ溝電極93とAP側共通パッド62とを絶縁するために、両者の接続部95をダイシングブレード等によりX方向にわたって切削により取り除く。
図28に示すように、切削加工で電極分離部96を形成することにより、AP側共通パッド62側だけでなく、逃げ溝電極93側の電極も除去されると共に、段差部が形成されている。このため、アクチュエータプレート51とカバープレート52との接合時において、CP側共通パッド66が逃げ溝電極93と短絡することが回避される。
なお、切削は接続部95の電極膜(金属被膜114)を含めて切削するので、電極膜の膜厚さをTPとした場合、電極分離部96の切削深さは1.5TP程度の範囲で十分である。
このように電極分離部96の切削はごく表面の近辺であるため、加工に伴う衝撃が小さく、電極剥がれが生じることはほとんどない。
【0180】
第2変形例の電極分離工程では、ダイシングブレードによる切削で電極分離部96を形成したが、接続部95の電極はレーザ加工によって削除することで電極分離部96を形成することも可能である。
電極分離部96をレーザ加工で形成する場合、CP側共通パッド66と逃げ溝電極93との短絡を回避するため、少なくとも逃げ溝電極93の側壁で接続部95となっている上側(Y方向)の所定範囲に斜めからレーザを照射することで削除する。この場合の所定範囲は上記と同じように、上記1.5TP程度の範囲が好ましい。
CP側共通パッド66の接続部95となっている端部を含めて削除することも可能であり、この場合にはより確実に絶縁状態とすることができる。
【0181】
第2変形例では、逃げ溝形成工程(ステップ117)で電極逃げ溝81を形成した後に、めっき工程(ステップ225)による電極形成を行うことで、電極逃げ溝81に逃げ溝電極93が形成される。この逃げ溝電極93によって、個別電極65とAP側個別配線64の接合部分が増加するため、仮に電極が一部欠けたとしても個別電極65とAP側個別配線64の導通を維持することができる。
また、第2変形例でも実施形態と同様に、実施形態と同様に、吐出チャネル54と非吐出チャネル55のチャネル溝幅は70μm未満であり、電極の膜厚は0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下に形成されるので、電極分離工程において、切削により電極分離部96を形成しても、アクチュエータウエハ110の脆弱部が剥れることはない。
【符号の説明】
【0182】
1…インクジェットプリンタ(液体噴射装置)
2…搬送手段(移動機構)
3…搬送手段(移動機構)
5,5K,5C,5M,5Y…インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
7…走査手段(移動機構)
41…流路プレート
43…帰還プレート
44…ノズルプレート(噴射プレート)
45…フレキシブル基板(外部配線)
51…アクチュエータプレート
51f1…AP側Y方向内側面(アクチュエータプレート側第1主面)
51e…AP側尾部(アクチュエータプレートのうち、噴射チャネルに対して第1方向の一方側に位置する部分)
52…カバープレート
52f1…CP側Y方向外側面(カバープレート側第1主面)
52f2…CP側Y方向内側面(カバープレート側第2主面)
52e…CP側尾部(カバープレートのうち、アクチュエータプレートの第1方向の一端面よりも外方に延出する尾部)
54…吐出チャネル(噴射チャネル)
54a…延在部
54b…切り上がり部
55…非吐出チャネル(非噴射チャネル)
55a…延在部
55b…切り上がり部
56…駆動壁
60…接続配線
61…共通電極(チャネル内電極)
62…AP側共通パッド(アクチュエータプレート側共通パッド)
63…個別電極(チャネル内電極)
64…AP側個別配線(アクチュエータプレート側個別配線)
65…個別電極
66…CP側共通パッド(カバープレート側共通パッド)
67…共通引出電極(引出電極)
68…共通端子
69…CP側個別配線(カバープレート側個別配線)
69a…CP側個別パッド(カバープレート側個別パッド)
69b…個別端子
70…液体供給路
74…入口流路
75…出口流路
76…循環路
78…ノズル孔(噴射孔)
80…横断共通電極
81…電極逃げ溝
85…貫通孔
86…貫通孔内電極
87…貫通孔
93…逃げ溝電極
95…接続部
96…電極分離部
110…アクチュエータウエハ
111…マスクパターン
112…マウンティングテープ
113…触媒
114…金属皮膜
P…被記録媒体