(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】溶融強度が高いマルチモーダルポリオレフィン樹脂及びこれから製造される成形体
(51)【国際特許分類】
C08F 10/00 20060101AFI20220128BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
C08F10/00
C08F4/6592
(21)【出願番号】P 2017087465
(22)【出願日】2017-04-26
【審査請求日】2020-01-20
(31)【優先権主張番号】10-2016-0050638
(32)【優先日】2016-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521319568
【氏名又は名称】ディーエル ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユ スンテク
(72)【発明者】
【氏名】ソン ビョンギル
(72)【発明者】
【氏名】チョン ヨンジェ
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヨンシン
(72)【発明者】
【氏名】パク ドンシク
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-513651(JP,A)
【文献】特表2009-504901(JP,A)
【文献】特開平06-322014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 10/00-10/14
C08F 110/00-110/14
C08F 210/00-210/18
C08F 4/64-4/6592
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1~4
[化学式1]
(L
1)(L
2)(X
1)(X
2)M
1
[化学式2]
(L
3)(L
4)(X
3)(X
4)M
2
[化学式3]
(L
5-Q
1
n-L
6)(X
5)(X
6)M
3
[化学式4]
(L
7-Q
2
n-L
8)(X
7)(X
8)M
4
(前記化学式1、2、3及び4で、M
1、M
2、M
3及びM
4はそれぞれ独立的にチタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)又はハフニウム(Hf)であり、L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6、L
7及びL
8はそれぞれ独立的に、2以上の共役二重結合を持つ炭素数5~30の環状炭化水素基であり、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、及びX
8はそれぞれ独立的にハロゲン原子又は炭化水素基であり、Q
1、及びQ
2はそれぞれ独立的に置換基を含むシラン基又は炭化水素基であり、そしてnは1~5の整数である)
で表されるメタロセン化合物を触媒として使って
オレフィンモノマーを重合することによる、
下記(2)~(5)の要件を全て満足させるポリオレフィン樹脂の製造方法であって、
前記化学式1~4で表されるメタロセン化合物はお互いに異なっており、化学式1で表されるメタロセン化合物は重量平均分子量50、000以下の重合体を作ることができる触媒成分であり、化学式2で表されるメタロセン化合物は重量平均分子量50、000~200、000の重合体を作ることができる触媒成分であり、化学式3で表されるメタロセン化合物もまた重量平均分子量50、000~200、000の重合体を作ることができる触媒成分であり、化学式4で表されるメタロセン化合物は重量平均分子量200、000~1、000、000の重合体を作ることができる触媒成分であり、
(2)下記式1を利用して計算されたマトリックス指数が2以下であり、190℃で測定した溶融強度が4.0Force(cN)以上であり、
[式1]
マトリックス指数=(A+B-C)/C
上記式1において、Aはゲル透過クロマトグラフィーで測定した分子量分布グラフにおいて、最も小さい分子量を有する峰の高さであり、Bは最も大きい分子量を有する峰の高さであり、Cは二つの峰の間の谷間のうち最も低いものの高さであり、二峰の分子量の間を中間分子量が多く満たすほどマトリックス指数値は1に近くなり、
(3)溶融流れ指数(MIP、190℃、5.0kg荷重条件)は0.01~5.0g/10分であり、
(4)ゲル透過クロマトグラフィーで測定した、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn、MWD)は5~35であり、そして
(5)ゲル透過クロマトグラフィーで測定した分子量分布で二峰以上の峰(Peak)を示し、二つの峰の高さの比(低分子量峰の高さ/高分子量峰の高さ)は1~2である
、
ポリオレフィン樹脂の製造方法。
【請求項2】
下記(7)~(9)の要件をさらに満足させる、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂
の製造方法。
(7)密度(d)は0.930~0.965g/cm
3であり、
(8)測定された分子量分布のうち最も小さい分子量を示す峰(M
Lp)はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で10、000~100、000の分子量領域に現れ、そして(9)最も大きい分子量を示す峰(M
Hp)はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で300、000~3、000、000の分子量領域に現れる。
【請求項3】
前記ポリオレフィン樹脂の溶融流れ指数比は15~50であり、
前記溶融流れ指数比は高荷重溶融流れ指数(190℃、21.6kg/10分荷重条件)/溶融流れ指数(190℃、5.0kg荷重条件)から求められる、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂
の製造方法。
【請求項4】
前記ポリオレフィン樹脂は190℃で測定した粘度比が45~100であり、前記粘度比は下記式2から求められる、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂
の製造方法。
[式2]
粘度比=η
0.1/η
100
ここで、η
0.1は変形率0.1rad/sでの粘度であり、η
100は変形率100rad/sでの粘度である。
【請求項5】
前記ポリオレフィン樹脂の弾性比値は20~200であり、前記弾性比値は下記式3から求められる、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂
の製造方法。
[式3]
弾性比=G’
100/G’
0.1
ここで、G’
0.1は変形率0.1rad/sでの貯蔵弾性率であり、G’
100は変形率100rad/sでの貯蔵弾性率である。
【請求項6】
下記化学式1~4
[化学式1]
(L
1)(L
2)(X
1)(X
2)M
1
[化学式2]
(L
3)(L
4)(X
3)(X
4)M
2
[化学式3]
(L
5-Q
1
n-L
6)(X
5)(X
6)M
3
[化学式4]
(L
7-Q
2
n-L
8)(X
7)(X
8)M
4
(前記化学式1、2、3及び4で、M
1、M
2、M
3及びM
4はそれぞれ独立的にチタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)又はハフニウム(Hf)であり、L
1、L
2、L
3、L
4、L
5、L
6、L
7及びL
8はそれぞれ独立的に、2以上の共役二重結合を持つ炭素数5~30の環状炭化水素基であり、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、及びX
8はそれぞれ独立的にハロゲン原子又は炭化水素基であり、Q
1、及びQ
2はそれぞれ独立的に置換基を含むシラン基又は炭化水素基であり、そしてnは1~5の整数である)
で表されるメタロセン化合物を触媒として使用して
オレフィンモノマーを重合することによる、
下記(4)、(5)、及び(6)の要件を全て満足させるポリオレフィン樹脂の製造方法であって、
前記化学式1~4で表されるメタロセン化合物はお互いに異なっており、化学式1で表されるメタロセン化合物は重量平均分子量50、000以下の重合体を作ることができる触媒成分であり、化学式2で表されるメタロセン化合物は重量平均分子量50、000~200、000の重合体を作ることができる触媒成分であり、化学式3で表されるメタロセン化合物もまた重量平均分子量50、000~200、000の重合体を作ることができる触媒成分であり、化学式4で表されるメタロセン化合物は重量平均分子量200、000~1、000、000の重合体を作ることができる触媒成分であり、
(4)ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn、MWD)は5~35であり、
(5)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量分布で二峰(bimodal)以上の峰(Peak)が現して、二つの峰の高さ比(低分子量峰の高さ/高分子量峰の高さ)は1~2であり、
(6)溶融強度(Y)とマトリックス指数(X)の相関関係関数でY≧-0.74X+5.3であり、前記マトリックス指数は下記式1を利用して測定され、
[式1]
マトリックス指数=(A+B-C)/C
前記式1で、Aはゲル浸透クロマトグラフィーで測定した分子量分布グラフで、一番小さい分子量を持つ峰の高さであり、Bは一番大きい分子量を持つ峰の高さであり、Cは二つの峰間の谷間のうち一番低いものの高さであり、二峰の分子量の間を中間分子量がたくさん埋めるほどマトリックス指数値は1に近くなる
、
ポリオレフィン樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記ポリオレフィン樹脂は下記(3)及び(7)~(9)の要件をさらに満足させる、請求項6に記載のポリオレフィン樹脂
の製造方法。
(3)溶融流れ指数(MIP、190℃、5.0kg荷重条件)は0.01~5.0g/10分である。
(7)密度(d)は0.930~0.965g/cm
3である。
(8)測定された分子量分布中一番小さい分子量を現す峰(M
Lp)はゲル浸透クロマトグラフィーで10、000~100、000の分子量領域で現れ、(9)一番大きい分子量を現す峰(M
Hp)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で300、000~3、000、000の分子量領域で現れる。
【請求項8】
前記ポリオレフィン樹脂の溶融流れ指数比は15~50であり、
前記溶融流れ指数比は高荷重溶融流れ指数(190℃、21.6kg/10分荷重条件)/溶融流れ指数(190℃、5.0kg荷重条件)で計算される、請求項6に記載のポリオレフィン樹脂
の製造方法。
【請求項9】
前記ポリオレフィン樹脂は190℃で測定した粘度比が45~100であり、前記粘度比は下記式2で計算される、請求項6に記載のポリオレフィン樹脂
の製造方法。
[式2]
粘度比=η
0.1/η
100
ここで、η
0.1は変形率0.1rad/sでの粘度であり、η
100は変形率100rad/sでの粘度である。
【請求項10】
前記ポリオレフィン樹脂の弾性比値は20~200であり、前記弾性比値は下記式3で計算される、請求項6に記載のポリオレフィン樹脂
の製造方法。
[式3]
弾性比=G’
100/G’
0.1
ここでG’
0.1は変形率0.1rad/sでの貯蔵弾性率であり、G’
100は変形率100rad/sでの貯蔵弾性率である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチモーダルポリオレフィン樹脂及びこれから製造される成形体に関し、より詳しくは、成形性、機械的強度、外観、溶融強度などの特性に優れたマルチモーダルポリオレフィン樹脂及びポリオレフィン樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂を特定用途に使用するためには、ポリオレフィン樹脂の靭性、強度、環境応力、耐亀裂性、溶融強度などに優れていなければならない。チーグラ-ナッタ及びメタロセン触媒を利用したポリオレフィン樹脂の物理的特性を向上させるための一般的な方法としてポリオレフィン樹脂(重合体)の分子量を増加させる方法を利用するが、これは樹脂の成形性が悪くなるという短所がある。このようなポリオレフィン樹脂の短所を補完するため、異なる物性を有するポリオレフィン樹脂を複合して使用しているが、成形体の外観不良が発生できる短所がある。より好ましくは、単一物性を有するポリオレフィン樹脂を単独で使用したものの、重合体の構造を適切に調整したり、適切な加工助剤を使用するのである。しかし、一般に、チーグラ-ナッタ及びメタロセン触媒で作られたポリオレフィン樹脂は分子量分布が狭くて、単独で用いる場合、様々な問題点が発生する。したがって、広い分子量分布またはマルチモーダル分子量分布の重合体を用いると、靭性、強度、環境応力、耐亀裂性、溶融強度などの特性を維持しながら、成形性を改善して、分子量分布が狭いポリオレフィン樹脂の短所を解消することができる。
【0003】
マルチモーダル分子量分布を有するポリオレフィンは、分子量が異なる2種類以上の成分を含むポリオレフィンとして、例えば、高分子量成分及び低分子量成分を比較的バランスよく含むものである。広い分子量分布またはマルチモーダル分子量分布を有するポリオレフィンを製造するための多くの研究が進行されてきた。そのうち一つの方法としては、2種類以上の異なる分子量を有するポリオレフィンを加工前または加工中に一緒にブレンディングするポスト-反応器法(post-reactor)または溶融ブレンディング法である。例えば、米国特許第4、461、873号においては、二頂性(bimodal)重合体ブレンドを製造するために、2種類の異なる物性の重合体を物理的にブレンディングする方法が開示されているが、このような物理的なブレンドを利用すれば、ゲル含有量の高い成形体が作られやすくなり、ゲル成分による製品の外観不良によってフィルムなどの用途としては使用できない。また、前記物理的ブレンディング方法は完全な均一化を必要とするので、製造費用が増加する短所がある。
【0004】
マルチモーダル分子量分布を有するポリオレフィン、例えば、バイモーダル分子量分布を有するポリオレフィンを製造する他の方法としては、多段階反応器を使用することである。前記方法は、2つまたはそれ以上の反応器を使うことで、第1反応器で前記バイモーダル重合体の2種類の異なる分子量分布のうち一つを有する第1重合体成分が一定の条件で製造され、前記第1重合体成分が第2反応器に伝えられて第2反応器で前記第1重合体成分と異なる分子量分布を有する第2重合体成分が第1反応器の反応条件とは異なる条件で製造される。前記方法は、前記ゲルに関連した問題点をある程度解決できるが、多重反応器を使うため、効率が落ちたり、製造費用が高くなる恐れがあり、高分子量成分が第1反応器で製造される場合、第2反応器で低分子量成分が作られなくて、最終生産されたポリオレフィン粒子が高分子量成分だけでなることができる。
【0005】
マルチモーダル分子量分布を有するポリオレフィンを製造するまた他の方法は、単一反応器で触媒混合物を使ってポリオレフィンを重合するのである。最近、当該技術分野では、単一反応器で、2種類以上の異なる触媒を使用して、マルチモーダル分子量分布を有するポリオレフィンを製造するための多様な試みが行われている。この方法を用いると、樹脂粒子が下位粒子(subparticle)水準で均一に混合されて、互いに異なる分子量分布を有する樹脂成分が同一上で存在する。例えば、米国特許第6、841、631号及び米国特許第6、894、128号においては、少なくとも2種の金属化合物を含むメタロセン触媒を利用して、二頂(bimodal)または多頂(multimodal)分子量分布を有するポリエチレンを製造し、これをフィルム、パイプ、中空成形品などの製造に使うのが開示されている。このように製造されたポリエチレンは、加工性は良好であるが、単位粒子内の分子量別ポリエチレン成分の分散状態が均一でないため、比較的良好な加工条件でも、外観が粗くなり物性が安定的ではない短所がある。
【0006】
米国特許第4、937、299号においては、重合される単量体に対して異なる反応比を有する2種以上のメタロセンを含む触媒システムを使ってポリオレフィンを製造するのが開示されている。また、米国特許第4、808、561号においては、担持体の存在下に、メタロセンをアルミノキサンと反応させて担持触媒を製造するのが開示されている。前記メタロセンは担持体に担持されて固体粉末触媒を形成する。前記担持体としては、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア及びこれらの混合物のような無機酸化物及びポリオレフィン(例えば、微分されたポリエチレン)のような樹脂性物質が使用され、前記メタロセン及びアルミノキサンは脱水された担持体物質上に沈着された。
【0007】
通常、チーグラ-ナッタ触媒単独またはメタロセン触媒システムで製造された重合体は狭い分子量分布を有するので、マルチモーダル分子量分布または広い分子量分布を有する満足するポリオレフィンを製造できない。したがって、当該技術分野では、チーグラ-ナッタ触媒及びメタロセン触媒成分を含む混合触媒システムを使ってバイモーダル樹脂を製造する方法が知られている。前記混合触媒システムまたは混成触媒システムは、通常、不均一チーグラ-ナッタ触媒と均一メタロセン触媒との組み合わせを含む。前記混合触媒システムは、広い分子量分布またはバイモーダル分子量分布を有するポリオレフィンの製造に使用されて、ポリオレフィンの分子量分布及び多分散性を調節する。
【0008】
米国特許第5、539、076号においては、特定二頂性高密度共重合体を製造するためのメタロセン/非メタロセン混合触媒システムが開示されており、前記触媒システムは無機担持体上に担持される。シリカ、アルミナ、マグネシウム-クロライドなどの担持体と混合されたチーグラ-ナッタ/メタロセン触媒は、米国特許第5、183、867号、ヨーロッパ特許第0676418A1号、ヨーロッパ特許第717755B1号、米国特許第5、747、405号、ヨーロッパ特許第0705848A2号、米国特許第4、659、685号、米国特許第5、395、810号、ヨーロッパ特許第0747402A1号、米国特許第5、266、544号、国際公開公報第9613532号などにも開示されている。前記担持されたチーグラ-ナッタ及びメタロセン触媒システムは担持された混成触媒が均一単独触媒より活性が低くて、用途に合った特性を有するポリオレフィンを製造しにくいという問題点がある。また、単一反応器でポリオレフィンを製造するため、前記ブレンディング方法で発生するゲルが生成される恐れがあり、高分子量部分に共単量体の挿入が難しく、生成される重合体の形態が不良となる恐れがあるだけでなく、2種類の重合体成分が均一に混合されず、品質調整が難しくなる恐れもある。
【0009】
Journal of Rheology、57(2)、393-406(2013)においては、マルチモーダル分子量分布を有するポリエチレン樹脂を押出成形するとき、各二頂分子量の異なる弾性エネルギー差によって高分子鎖と低分子鎖が互いに分離されて均一に混合されないという問題点があると開示されている。これは、物理的特性の減少及び外面粗さ(melt fracture)、ゲルなどの表面不良の問題をもたらすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、マルチモーダルポリオレフィン樹脂の押出成形時に発生する低分子と高分子鎖の間の弾性エネルギー差を最小化できる中間分子量を有する重合体の導入で優れた樹脂物性及び加工性を有し、フィルム成形性と加工安定性に必要な溶融流れ指数比(Shear Response、SR)、優れた粘度比(Shear Thining Index、STI)、溶融強度(Melt Strength)を有し、成形加工時に低い押出負荷と高い押出量で生産性に優れたマルチモーダルポリオレフィン樹脂を提供することにある。本発明の他の目的は、鎖の分布が均等に形成された適切な範囲の分子量及び分子量分布を有し、優れた外観特性及び機械的強度を有するマルチモーダルポリオレフィン樹脂成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は下記(1)~(5)の要件を全て満足させるポリオレフィン樹脂を提供する。
(1)異種(2種)以上の互いに異なるメタロセン化合物を触媒として使って重合され、(2)下記式1を利用して計算されたマトリックス指数(Matrix Index)が2以下であり、190℃で測定した溶融強度(Melt Strength)が4.0Force(cN)以上であり、
(3)溶融流れ指数(MIP、190℃、5.0kg荷重条件)は0.01~5.0g/10分であり、
(4)ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn、MWD、Molecular Weight Distribution)は5~35であり、
(5)二つの峰の高さの比(低分子量峰の高さ(含有量)/高分子量峰の高さ(含有量))は0.7~3である。
【0012】
[式1]
マトリックス指数=(A+B-C)/C
上記式1において、Aはゲル透過クロマトグラフィーで測定した分子量分布グラフにおいて、最も小さい分子量を有する峰の高さ(含有量)であり、Bは最も大きい分子量を有する峰の高さ(含有量)であり、Cは二つの峰の間の谷間のうち最も低い分子量を有するものの高さ(含有量)であり、二頂分子量の間を中間分子量が多く満たすほどマトリックス指数値は1に近くなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るマルチモーダルポリオレフィン樹脂の分子量分布は、二頂以上の分子量分布曲線を含み、二頂分子量分布曲線の間を満たす中間分子量を有する重合体が導入されたポリオレフィン樹脂であって優れたマトリックス指数(Matrix Index)値を通して高い溶融強度(Melt Strength)及び粘度比(Shear Thining Ratio、STR)を有する。
【0014】
また、本発明に係るマルチモーダルポリオレフィン樹脂は、相対的に中間分子量を有する重合体を導入して、弾性エネルギー差を最小化することで、高分子鎖と低分子鎖を均一に混合し、これによって、フィルム加工時に機械的強度、成形性、外観及び流変(Rheology)特性などに優れたポリオレフィン樹脂成形体を提供し、加工時に低い押出負荷と高い押出量で生産性に優れたマルチモーダルポリオレフィン樹脂成形体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の
参考例1、実施例
2~3及び比較例1
~3で製造されたそれぞれのポリエチレンに対するゲル透過クロマトグラフィー分子量分布を示した図である。
【
図2】本発明の実施例2及び比較例1
~3で製造されたそれぞれのポリエチレンに対する溶融強度(Melt Strength)分析を示した図である。
【
図3】本発明の実施例2で製造されたポリエチレンのマトリックス指数(Matrix Index)の計算を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付した図面を参照して本発明をもっと詳しく説明する。以下の説明で、必要に応じて、ポリオレフィン樹脂を単にポリマーまたはポリオレフィン、エチレン系ポリマー、重合体または高分子、オレフィン重合体などと称する。
【0017】
本発明に係るマルチモーダルポリオレフィン樹脂は、適切な分子量分布、例えば、二頂または多頂の分子量分布を有するポリオレフィン樹脂であって、成形性に優れて、ブロー成形法、押出成形法及びフィルム成形法に特に適し、樹脂の流変(Rheology)特性に非常に優れており、フィルム加工時に高い安定性を有する。本発明に係るポリオレフィン樹脂は、下記(1)~(5)の要件を全て満足したり、下記(1)及び(4)~(6)の要件を全て満足するように製造することによって、優れた特性を有する。
(1)2種以上の互いに異なるメタロセン化合物を触媒として使って重合される。
(2)下記式1を利用して計算されたマトリックス指数(Matrix Index、MTI)が2以下、好ましくは1~1.8、さらに好ましくは1~1.7であり、190℃で測定した溶融強度(Melt Strength)が4.0Force(cN)以上、好ましくは4~5Force(cN)、さらに好ましくは4~4.7Force(cN)であり、ここで、前記マトリックス指数(MTI)は高分子量(High Molecular Weight)と低分子量(Low Molecular Weight)の間に満たされる中間分子量(Medium Molecular Weigth)の程度を示し、前記溶融強度はgottfert Rheometer(RHEOTESTER-2000)とRHEOTENS71.97を使って測定した。長さが10mmであり、直径1.0mmの毛細管を利用して、ペレット15~20gを230℃でピストン速度0.087〔mm/s〕、ホイールスピード15.0〔mm/s〕、ホイール加速度〔5mm/s〕で測定し、5回以上測定した値の平均を使う。
[式1]
マトリックス指数=(A+B-C)/C
上記式1において、Aはゲル透過クロマトグラフィーで測定した分子量分布グラフにおいて、最も小さい分子量を有する峰の高さ(dw/dlogM)であり、Bは最も大きい分子量を有する峰の高さ(dw/dlogM)であり、Cは二つの峰の間の谷間のうち最も低いものの高さ(dw/dlogM)であり、二頂分子量の間を中間分子量が多く満たすほどマトリックス指数値は1に近くなる。ここで、wは重量(weight)を示し、Mは分子量(molecular weight)を示し、dw/dlogMは当該分子量(logM)を有する高分子の重量分率(weight fraction)を示す。(3)溶融流れ指数(MIP、190℃、5.0kg荷重条件)は0.01~5.0g/10分、好ましくは0.05~3.0g/10分であり、190℃でASTM D1238の基準により測定する。
(4)ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn、MWD、Molecular Weight Distribution)は5~35、好ましくは10~30であり、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC、Polymer Laboratory Inc.第220製品)を使って、以下のように測定した。分離カラムはOlexis2つ、ガード(Guard)1つを使用し、カラム温度は160℃に維持した。キャリブレーション(Calibration)は、Polymer Laboratory社の標準ポリスチレンセットを使用し、溶離液は酸化防止剤として0.0125重量%のジブチルヒドロキシトルエン(dibutyl hydroxyl toluene、BHT)が含まれているトリクロロベンゼンを使った。試料は0.1~1mg/mlの比率で用意し、注入量は0.2mlであり、注入時間は30分、ポンプ流速は1.0ml/minを維持して30~60分間測定した。ポリスチレン標準物質であるEasical AとEasical B(Agilent社)を使用し、ユニバーサル矯正を実施した後にポリエチレンに換算して、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及びz平均分子量(Mz)を測定した。検出器としては屈折率(Refractive Index、RI)検出器を使った。分子量分布(Mw/Mn)は重量平均分子量と数平均分子量の比率を示す。
(5)ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量分布においては二頂(bimodal)以上の峰(Peak)が示し、二つの峰の高さの比(組成比、低分子量峰の高さ(含有量)/高分子量峰の高さ(含有量))は0.7~3、好ましくは1~2である。
(6)溶融強度(Melt Strength、Y)とマトリックス指数(Matrix
Index、X)の相関関数においてY≧-0.74X+5.3であり、前記マトリックス指数及び溶融強度は前記(2)と同様な方法で測定し、前記相関関数は、上記式1で分析されたマトリックス指数(X)の計算値と、実際求められた溶融強度(Y)のデータ(後述する表4及び比較例1~13)をプログラム(Origin Pro8.6)を利用して図式化した関数である。
【0018】
本発明に係るポリオレフィン樹脂の分子量をゲル透過クロマトグラフィー法で分析する場合、二つ以上の峰が現れ、好ましくは、最も小さい分子量を示す峰(MLp)は10、000~100、000g/mol以下、さらに好ましくは10、000~60、000g/molに現れ、最も大きい分子量を示す峰(MHp)は300、000~3、000、000g/mol、さらに好ましくは400、000~2、500、000g/molに現れる。前記分子量が最も大きい峰(MHp)を形成するポリオレフィンは高分子樹脂の機械的物性を向上させる役割(機能)をし、分子量が最も小さい峰(MLp)を形成するポリオレフィンは高分子樹脂の成形性を向上させる役割(機能)をする。また、中間領域(MMp)を形成するポリオレフィン高分子樹脂は押出加工時に高分子鎖と低分子鎖との間の弾性エネルギー差による鎖間分離を最小化させて鎖の分布がより均一に形成できるようにする役割を果たす。これは、樹脂の優れた外観特性、機械的強度及び流変(Rheology)的観点で特に優れていて成形体の表面不良を抑制し、フィルム成形加工時に寸法安定性を増加させる。したがって、前記ポリオレフィン樹脂の分子量が前記範囲を外れると、ポリオレフィン樹脂の成形性が低下したり、成形された成形品の物性が低下する恐れがある。
【0019】
本発明によるポリオレフィン樹脂を形成するオレフィン単量体としては、炭素数2~12、好ましくは2~10の線形脂肪族オレフィン、炭素数3~24、好ましくは3~18の環状オレフィン、ジエン(diene)類、トリエン(triene)類、スチレン(styrene)類等を使用できる。前記線形脂肪族オレフィンとしてはエチレン、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、3-メチルブテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1、3-メチルペンテン-1、ヘプテン-1、オクテン-1、デセン-1(decene-1)、4、4-ジメチル-1-ペンテン、4、4-ジエチル-1-ヘキセン、3、4-ジメチル-1-ヘキセン等を例示できる。前記環状オレフィンとしては、シクロペンテン(cyclopentene)、シクロブテン、シクロヘキセン、3-メチルシクロヘキセン、シクロオクテン、テトラシクロデセン、オクタシクロデセン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-イソブチル-2-ノルボルネン、5、6-ジメチル-2-ノルボルネン、5、5、6-トリメチル-2-ノルボルネン及びエチレンノルボルネン等を例示できる。前記ジエン類及びトリエン類としては、2個又は3個の二重結合を持つ炭素数4~26のポリエンが望ましく、具体的に1、3-ブタジエン、1、4-ペンタジエン、1、4-ヘキサエン、1、5-ヘキサジエン、1、9-デカジエン、2-メチル-1、3-ブタジエン等を例示できる。前記スチレン類としてはスチレン又は炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、ハロゲン基、アミン基、シリル基、ハロゲン化アルキル基等に置換されたスチレン等が望ましい。前記オレフィン単量体は単独重合されたり交代(alternating)、ランダム(random)、又はブロック(block)共重合されることができる。
【0020】
例えば、本発明によるポリオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-アイトセン(1-itocene)、ノルボルネン(norbornene)、ノルボルナジエン(norbornadiene)、エチリデンノルボルネン(ethylidenenorbornene)、フェニルノルボルネン(phenylnorbornene)、ビニルノルボルネン(vinylnorbornene)、ジシクロペンタジエン、1、4-ブタジエン、1、5-ブタジエン、1、5-ペンタジエン、1、6-ヘキサジエン、スチレン、アルファ-メチルスチレン、ジビニルベンゼン及び3-クロロメチルスチレンで成った群から選択されるオレフィン単量体の単独重合体又は共重合体である。又、本発明によるポリオレフィン樹脂は、主成分がエチレン、プロピレン及びこれらの混合物で成った群から選択されて、残り補助成分として、炭素数4~10、例えば炭素数6~8のα-オレフィンから誘導される構成単位を0.01~3.0重量%含有するのが望ましい。ここで、前記共単量体(α-オレフィン)の含量は13C-NMRで測定できる。
【0021】
本発明によるポリオレフィン樹脂は、ブロー(モールディング)成形体、インフレーション成形体、キャスト成形体、圧出ラミネート成形体、パイプや異形等の圧出成形体、発砲成形体、射出成形体、シート(sheet)、フィルム(film)等各種成形体の製造に使用されるだけではなく、繊維、モノフィラメント、不織布等の製造にも使用されることができる。特に、本発明のポリオレフィン樹脂はブロー成形体、パイプや異形等の圧出成形体、又はフィルム成形体の製造に有用である。本発明によるポリオレフィン樹脂は成形過程で架橋されることができ、前記成形体は本発明によるポリオレフィン樹脂で成る部分と他の樹脂で成る部分を含む複合成形体(積層体等)を含む。前記成形体は物性の向上のために通常の添加剤(additives)、向上剤(modifiers)等をさらに含むことができる。
【0022】
本発明に係るポリオレフィン樹脂は、下記(7)~(9)の要件をさらに満足させるのが望ましい。
(7)密度(d)は0.930~0.965g/cm3、好ましくは0.935~0.960g/cm3であり、ASTM 1505及びASTM D1928によって測定した。
(8)測定された分子量分布のうち最も小さい分子量を示す峰(MLp)はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で10、000~100、000、好ましくは10、000~60、000の分子量領域に現れる。
(9)最も大きい分子量を示す峰(MHp)はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で
300、000~3、000、000、好ましくは400、000~2、500、000の分子量領域に現れる。
【0023】
また、本発明に係るポリオレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw、ゲル透過クロマトグラフィー法で測定)は100、000~400、000、好ましくは150、000~300、000であり、高荷重溶融流れ指数(MIF、190℃、21.6kg/10分荷重条件)は0.15~250、好ましくは1~120であり、溶融流れ指数比(SR、F/P、高荷重溶融流れ指数(MIF)/溶融流れ指数(MIP))は15~50、好ましくは20~40であり、粘度比(Shear Thinning Index、STI)は45~100、好ましくは50~70であり、弾性比(Modulus Ratio Index、MRI)は20~200、好ましくは30~100である。
【0024】
前記高荷重溶融流れ指数(MIF)は190℃でASTM D1238によって測定し、前記粘度比(Shear Thinning Index、STI)は下記式2を利用してRhometrics Mechanical Spectrometer(RMS-800)装備を利用し、方式は平板(Parallel Plate)であり、直径が25mmであり、温度が190℃の条件で測定し、前記弾性比(Modulus Ratio Index、MRI)は下記式3を利用して測定した。
[式2]
STI=η0.1/η100
ここで、η0.1は変形率0.1rad/sでの粘度であり、η100は変形率100rad/sでの粘度である。
[式3]
MRI=G’100/G’0.1
ここでG’0.1は変形率0.1rad/sでの貯蔵弾性率(Storage Modulus)であり、G’100は変形率100rad/sでの貯蔵弾性率である。
【0025】
本発明によるポリオレフィン樹脂は、相対的に低分子量の高分子を発現する触媒系である下記化学式1で表示される一つ以上の第1有機転移金属化合物、相対的に中間分子量の高分子を発現する触媒系である下記化学式2で表示される一つ以上の第2有機転移金属化合物、相対的に中間分子量の高分子を発現する触媒系である下記化学式3で表示される一つ以上の第3有機転移金属化合物、相対的に高分子量の高分子を発現する触媒系である下記化学式4で表示される一つ以上の第4有機転移金属化合物及びアルミノキサンを含む触媒組成物の各成分たちを適切に組合うことによって製造されることができる。
[化学式1]
(L1)(L2)(X1)(X2)M1
[化学式2]
(L3)(L4)(X3)(X4)M2
[化学式3]
(L5-Q1
n-L6)(X5)(X6)M3
[化学式4]
(L7-Q2
n-L8)(X7)(X8)M4
前記化学式1、2、3及び4で、M1、M2、M3及びM4はそれぞれ独立的にチタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)又はハフニウム(Hf)であり、L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7及びL8はそれぞれ独立的に、2以上の共役(conjugation)二重結合を持つ炭素数5~30の環状炭化水素基(cyclic hydrocarbyl group)であり、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、及びX8はそれぞれ独立的にハロゲン原子又は炭化水素基である。又、Q1、及びQ2はそれぞれ独立的に置換基を含めるシラン基及び炭化水素基であり、nは1~5の整数である。
【0026】
先に、前記化学式1及び2で表示される有機金属化合物に関して具体的に説明する。前記化学式1及び2のM1及びM2はチタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)又はハフニウム(Hf)であり、前記L1、L2、L3及びL4はそれぞれ独立的に2以上の共役二重結合を持つ炭素数5~30の置換されたり置換されていない環状炭化水素基であり、前記共役二重結合は好ましくは2~6個、さらに好ましくは2~5個であり、前記環状炭化水素基の炭素数は5~15であることが望ましく、5~13であることがさらに望ましい。前記L1、L2、L3及びL4ではシクロペンタジエニル基、置換されたシクロペンタジエニル基、インデニル基、置換されたインデニル基、フルオレニル基、置換されたフルオレニル基、ペンタレン基、置換されたペンタレン基等を例示できる。又、前記L1、L2、L3及びL4は1~6個の置換体に部分置換されることができ、前記置換体は水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数4~20のアリール基、炭素数6~20のアルキルアリール基、炭素数5~20の置換又は非置換されたシクロペンタジエニル基、炭素数1~20のハロアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のハロアリール基及びこれらの混合物等であることができる。前記X1、X2、X3及びX4はそれぞれ独立的にハロゲン原子又は炭化水素基であり、前記ハロゲン原子としては塩素(Cl)、フルオロ(F)、ブロム(Br)及びヨード(I)等を例示でき、前記炭化水素基は炭素数1~24、好ましくは1~12のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル等のアルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基、ペニル基等のアリール基である。
【0027】
前記化学式1及び2で表示される有機転移金属化合物の非限定的例としては、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジフルオリド(difluroride)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジフルオリド、ビス(ノーマル-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジフルオリド、ビス(ノーマル-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジフルオリド、ビス(シクロペンチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジフルオリド、ビス(シクロヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジフルオリド、ビス(1、3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジフルオリド、ビス(イソブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジフルオリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジフルオリド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジフルオリド、ビス(4、5、6、7-テトラハイドロ-1-インデニル)ジルコニウムジフルオリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリド、ビス(ノーマル-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリド、ビス(ノーマル-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリド、ビス(シクロペンチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリド、ビス(シクロヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリド、ビス(1、3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリド、ビス(イソブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムクロリド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムクロリド、ビス(4、5、6、7-テトラハイドロ-1-インデニル)ジルコニウムクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロマイド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロマイド、ビス(ノーマル-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロマイド、ビス(ノーマル-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロマイド、ビス(シクロペンチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロマイド、ビス(シクロヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロマイド、ビス(1、3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロマイド、ビス(イソブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロマイド、ビス(インデニル)ジルコニウムジブロマイド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジブロマイド、ビス(4、5、6、7-テトラハイドロ-1-インデニル)ジルコニウムジブロマイド、シクロペンタジエニルジルコニウムトリフルオリド、シクロペンタジエニルジルコニウムトリクロリド、シクロペンタジエニルジルコニウムトリブロマイド、シクロペンタジエニルジルコニウムトリアイオダイド(cyclopentadienylzirconiumtriiodide)、メチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリフルオリド、メチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリクロリド、メチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリブロマイド、メチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリアイオダイド、ブチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリフルオリド、ブチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリクロリド、ブチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリブロマイド、ブチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリアイオダイド、ペンタメチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリフルオリド、ペンタメチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリブロマイド、ペンタメチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリアイオダイド、インデニルジルコニウムトリフルオリド、インデニルジルコニウムトリクロリド、インデニルジルコニウムトリブロマイド、インデニルジルコニウムトリアイオダイド、4、5、6、7-テトラハイドロインデニルジルコニウムトリフルオリド、4、5、6、7-テトラハイドロインデニルジルコニウムトリクロリド、4、5、6、7-テトラハイドロインデニルジルコニウムトリブロマイド、4、5、6、7-テトラハイドロインデニルジルコニウムトリアイオダイド、メチルインデニルジルコニウムトリフルオリド、メチルインデニルジルコニウムトリクロリド、メチルインデニルジルコニウムトリブロマイド、メチルインデニルジルコニウムトリアイオダイド、フェニルインデニルジルコニウムトリフルオリド、フェニルインデニルジルコニウムトリクロリド、フェニルインデニルジルコニウムトリブロマイド、フェニルインデニルジルコニウムトリアイオダイド、フルオレニルジルコニウムトリフルオリド、フルオレニルジルコニウムトリクロリド、フルオレニルジルコニウムトリブロマイド、フルオレニルジルコニウムトリアイオダイド等を例示できる。
【0028】
次に、前記化学式3及び4で表示される第3及び第4有機転移金属化合物に対して説明する。前記化学式3及び4のM3及びM4はそれぞれ独立的に前記化学式1のM1 M2の定義と同一であり、前記L5、L6、L7及びL8はそれぞれ独立的にL1、L2、L3及びL4の定義と同一であり、X5、X6、X7及びX8はそれぞれ独立的にX1、X2、X3及びX4の定義と同一である。前記Q1、及びQ2はそれぞれL5とL6及びL7とL8を連結し、それぞれ独立的にシラン基及び炭化水素基として、好ましくは炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルキルシラン基、炭素数6~20のアリルシリル基、炭素数6~20のアリルアルケニル基、炭素数1~20のアルカン及びこれらの混合物等であり、具体的にはメチリデン、エチレン、イソ-プロピリデン等のアルケニル基、ジメチルシラン等のアルキルシラン基、ジフェニルシラン等のアリルシラン基、ジフェニルメチリデン等のアリルアルケニル基、ジフェニルシリル等のアリルシリル基、エタン等のアルカン等である。
【0029】
前記化学式1で表示される第1有機転移金属化合物は相対的に一番低い分子量(例えば、重量平均分子量50、000以下)の重合体を作ることができる触媒成分であり、前記化学式2で表示される第2有機転移金属化合物は相対的に中間分子量(例えば、重量平均分子量50、000~200、000)の重合体を作ることができる触媒成分であり、前記化学式3で表示される第3有機転移金属化合物もまた相対的に中間分子量(例えば、重量平均分子量50、000~200、000)の重合体を作ることができる触媒成分であり、前記化学式4で表示される第4有機転移金属化合物は相対的に高分子量(例えば、重量平均分子量200、000~1、000、000)の重合体を作ることができる触媒成分である。前記化学式1~4で表す化合物全て高温(約80℃以上)でも安定に比較的重合を発現させることができ、共単量体(comonomer)挿入能力は低分子量ポリマーを発現する触媒成分(第1有機転移金属化合物)が一番低い。前記第3有機転移金属化合物及び第4有機転移金属化合物は、しっかり架橋された(rigidly-bridged)リガンドのシクロシクロペンタジエニル-型部分中の架橋されたリガンドの架橋原子に結合された一つ又は二つのアリール基、好ましくは一つ又は二つのフェニル基を含むしっかり-架橋されたアンサーメタロセン(ansa-metallocene)を含めるがこれで限定されるのではない。
【0030】
前記化学式3で表示される第3有機転移金属化合物及び化学式4で表示される第4有機転移金属化合物の非限定的な例としては、rac-エチレンビス(1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac-エチレンビス(1-テトラハイドロ-インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac-ジメチルシランジイルビス(2-メチル-テトラハイドロベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac-ジメチルシランジイルビス(2-メチル-4、5-ベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac-ジフェニルシランジイルビス(2-メチル-5、6-シクロペンタジエニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac-ジフェニルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、イソ-プロピリデン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリル(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチリデン(シクロペンタジエニル)(2、7-ジ-ターシャリ-ブチルフルオレン-9-イル)ジルコニウムジクロリド(diphenylmethylidene(cyclopentadienyl)(2、7-di-tert-butylflurene-9-yl)zirconiumchloride)、ジフェニルメチリデン(3-ターシャリ-ブチルシクロペンタジエニル)(2、7-ジ-ターシャリ-ブチルフルオレン-9-イル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチリデン(3-ターシャリ-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(2、7-ジ-ターシャリ-ブチルフルオレン-9-イル)ジルコニウムジクロリド、1、2-エチレンビス(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、rac-[1、2-ビス(9-フルオレニル)-1-フェニル-エタン]ジルコニウムジクロリド、イソ-プロピリデン(2-フェニル-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチリデン(2-フェニル-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(2-フェニル-シクロペンタジエニル)(2、7-ジ-ターシャリ-ブチルフルオレン-9-イル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチリデン(2-フェニル-シクロペンタジエニル)(2、7-ジ-ターシャリ-ブチルフルオレン-9-イル)ジルコニウムジクロリド、[4-(フルオレニル)-4、6、6-トリメチル-2-(p-トリル)-テトラハイドロペンタレン]ジルコニウムジクロリド、[イソプロピリデン-(2-(p-トリル)-シクロペンタジエニル)-(9-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[イソプロピリデン(2-(m-トリル)-シクロペンタジエニル)-(9-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチリデン(2-(m-トリル)-シクロペンタジエニル)-(9-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[イソプロピリデン(2-(m-トリル)-シクロペンタジエニル)(2、7-ジ-ターシャリ-ブチルフルオレン-9-イル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチリデン(2-(m-トリル)-シクロペンタジエニル)(2、7-ジ-ターシャリ-ブチルフルオレン-9-イル)]ジルコニウムジクロリド、[イソプロピリデン(2-(o-トリル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[4-(フルオレニル)-4、6、6-トリメチル-2-(2、4-ジメチルフェニル)-テトラハイドロペンタレン]ジルコニウムジクロリド、[イソプロピリデン(2-(2、3-ジメチルフェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[イソプロピリデン(2-(2、4-ジメチルフェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチリデン(2-(2、3-ジメチルフェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチリデン(2-(2、4-ジメチルフェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、[イソプロピリデン(2-(2、3-ジメチルフェニル)-シクロペンタジエニル)(2、7-ジ-ターシャリ-ブチルフルオレン-9-イル)]ジルコニウムジクロリド、[イソプロピリデン(2-(2、4-ジメチルフェニル)-シクロペンタジエニル)(2、7-ジ-ターシャリ-ブチルフルオレン-9-イル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチリデン(2-(2、3-ジメチルフェニル)-シクロペンタジエニル)(2、7-ジ-ターシャリ-ブチルフルオレン-9-イル)]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルメチリデン(2-(2、4-ジメチルフェニル)-シクロペンタジエニル)(2、7-ジ-ターシャリ-ブチルフルオレン-9-イル)]ジルコニウムジクロリド、[4-(フルオレニル)-4、6、6-トリメチル-2-(ジフルオロフェニル)-テトラハイドロペンタレン]ハフニウムジクロリド、イソプロピリデン(2-テトラメチルフェニル-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(2-(2、6-ジメチルフェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(2-(3、5-ジメチルフェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(2-(2、3-ジメトキシフェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(2-(クロロフェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(2-(ペンタフルオロフェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(2-(ターシャリ-ブチルフェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(2-(ビフェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(2-(3、5-ジフェニル-フェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(2-ナフチル-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチリデン(2-テトラメチルフェニル-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチリデン(2-(2、6-ジメチルフェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジジクロリド、ジフェニルメチリデン(2-(2、4-ジメトキシフェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチリデン(2-(クロロフェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチリデン(2-(フルオロフェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチリデン(2-(ペンタフルオロフェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチリデン(2-(ターシャリ-ブチルフェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチリデン(2-(3、5-ジ-ターシャリ-ブチルフェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチリデン(2-(ビフェニル)-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチリデン(2-ナフチル-シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド等を例示でき、第3有機転移金属化合物及び第4有機転移金属化合物はそれぞれ独立的に前記化合物たちを単独又は2種以上混合して使用できる。
【0031】
前記アルミノキサンは活性体機能及び不純物除去のためのもので、例えば、下記化学式5で表示されるアルミノキサンを使用できる。前記アルミノキサンは線状、環状又は網(Network)構造を持つことができ、例えば、前記線状アルミノキサンは下記化学式6で表示されることができ、前記環状アルミノキサンは下記化学式7で表示されることができる。
[化学式5]
[化学式6]
[化学式7]
前記化学式5
~7で、R’は炭化水素基(hydrocarbonyl group)として、炭素数1
~10の線状又は分枝状のアルキル基であることが望ましく、前記R’の大部分がメチル基であればさらに望ましいし、xは1
~70の整数、好ましくは1
~50の整数、さらに好ましくは10
~40の整数であり、yは3
~50の整数、好ましくは10
~40の整数である。
【0032】
本発明では通常的に市販されるアルキルアルミノキサンを使用することができ、前記アルキルアルミノキサンの非限定的な例として、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ヘキシルアルミノキサン、オクチルアルミノキサン、デシルアルミノキサン等を例示できる。又、前記アルミノキサンは様々な形態の炭化水素溶液状態で市販されているが、その中で芳香族炭化水素溶液アルミノキサンを使用することが望ましいし、トルエンに溶解されたアルミノキサン溶液を使用することがさらに望ましい。本発明で使用されるアルミノキサンは単独又は2種以上混合して使用できる。前記アルキルアルミノキサンはトリアルキルアルミニウムに適量の水を添加したり、水を含める炭化水素化合物又は無機水化物塩とトリアルキルアルミニウムを反応させる等の通常の多様な方法で製造できて、一般的に線状と環状のアルミノキサンが混合された形態で得られる。
【0033】
本発明に使用されるオレフィン重合用触媒にあって、前記化学式1で表示される第1有機転移金属化合物1モルに対して、前記化学式2で表示される第2有機転移金属化合物の使用量は0.01~100モル、好ましくは0.1~20モル、さらに好ましくは0.5~10モルであり、前記化学式3で表示される第3有機転移金属化合物の使用量は0.01~100モル、好ましくは0.1~20モル、さらに好ましくは0.5~10モルであり、前記化学式4で表示される第4有機転移金属化合物の使用量は0.01~100モル、好ましくは0.1~20モル、さらに好ましくは0.5~10モルである。ここで、前記化学式1で表示される第1有機転移金属化合物の使用量が少な過ぎると、主に高分子量のポリマーが作られる恐れがあって、多すぎると主に低分子量のポリマーが作られる恐れがある。
【0034】
前記アルミノキサンの使用量は、前記化学式1で表示される第1有機転移金属化合物、化学式2で表示される第2有機転移金属化合物、化学式3で表示される第3有機転移金属化合物及び化学式4で表示される第4有機転移金属化合物の合計1モルに対して、アルミノキサンのアルミニウムが1~100、000モル、好ましくは1~5、000モル、さらに好ましくは1~2、500モル混合されるように使用されることができる。例えば、前記全体有機転移金属化合物1モルに対して、アルミニウムが1~100、000モル、好ましくは1~5、000モル使用されるように、前記第1~第4有機転移金属化合物とアルミノキサンを混合して本発明によるオレフィン重合用触媒を製造できる。
【0035】
前記触媒成分の混合は特別な制限なく任意で遂行されることができる。例えば、前記有機金属化合物(第1~第4有機転移金属化合物)及びアルミノキサンを同時に5分~24時間、好ましくは15分~16時間の間混合させたり、前記第1有機転移金属化合物とアルミノキサンの混合物に添加して、5分~24時間、好ましくは15分~16時間の間混合させた溶液に、前記第2有機金属化合物とアルミノキサンを5分~10時間、好ましくは15分~4時間の間混合させた溶液を添加して、5分~24時間、好ましくは15分~16時間の間混合させた溶液に、前記第3有機金属化合物とアルミノキサンを5分~10時間、好ましくは15分~4時間の間混合させた溶液を添加して、5分~24時間、好ましくは15分~16時間の間混合させた溶液に、前記第4有機金属化合物とアルミノキサンを5分~10時間、好ましくは15分~4時間の間混合させた溶液を添加して、5分~24時間、好ましくは15分~16時間の間混合する方式であることもできる。前記混合は窒素又はアルゴンの不活性雰囲気下で、溶媒を使用しなかったり、ヘプタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン(xylene)等の不活性炭化水素溶媒又はその混合物の存在下で、遂行されることができ、前記混合過程の温度は0~150℃、好ましくは10~100℃である。前記炭化水素溶媒等に均一に溶解された溶液状態の触媒はそのまま使用されたり、溶媒を除去させた固体粉末状態で使用されることができ、前記固体粉末状態の触媒は溶液状態の触媒を沈殿化反応させた後、沈殿物を固体化させる方法で製造することもできる。
【0036】
本発明で使用される触媒は、前記有機金属化合物、第1~第4有機転移金属化合物及びアルミノキサンの混合物を有機又は無機担体(carrier)に担持させたものであることがある。したがって、本発明に使用される触媒は、固体粉末又は均一溶液状態の触媒だけではなく、有機又は無機多孔性担体(シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ混合物等)に担持された形態又は担体の不溶性粒子形態で存在する触媒をふくむ。前記溶液状態の触媒を前記多孔性担体に接触(担持)させる方法は次の通りだが、下記方法に限定されるのではない。例えば、前記担持方法は、前記有機金属化合物(第1~第4有機転移金属化合物)及びアルミノキサンを混合させて製造された溶液状態の触媒を、前記多孔性担体(例:50~500Åの細孔大きさ及び0.1~5.0cm3/gの気孔嵩を持つシリカ担体)と接触させてスラリー状態に作る段階;前記スラリー状態の混合物に1~10、000kHz、好ましくは20~500kHzの周波数範囲の音響波又は振動波を0~120℃、好ましくは0~80℃で0.1~6時間、好ましくは0.5~3時間の間作用させて、前記触媒成分たちを前記多孔性担体の微細細孔深く均一に浸透させる段階;及び前記多孔性担体の微細細孔に浸透された触媒成分たちを真空処理又は窒素流れで乾燥させる段階を含めて、前記段階を経て固体粉末形態の触媒を製造できる。前記音響波又は振動波は超音波(ultrasonic waves)であることが望ましい。前記触媒と担体の接触方法(担持方法)は前記音響波又は振動波を加えた後、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソパラフィン、トルエン、キシレン及びそれらの混合物で成った群から選択された炭化水素を使用して前記担持触媒を洗浄する工程をさらに含むことができる。
【0037】
前記多孔性担体としては微細な細孔(pore)及び広い表面積を持った多孔性無機物、無機塩又は有機化合物を制限なく使用できる。前記多孔性担体中無機(無機塩又は無機物)担体の形態は前記担持触媒製造のための工程で所定の形態を得られるものであれば、制限なく使用できて、粉末、粒子、フレーク、ホイル、繊維等の形態を例示できる。前記無機担体の形態と関係なく、無機担体の最大長さは5~200μm、好ましくは10~100μmであり、前記無機担体の表面積は50~1、000m2/gであり、空隙体積は0.05~5cm3/gであることが望ましい。一般的に前記無機担体は使用前に水又はヒドロキシ基除去過程を経らなければならないが、前記過程は空気や窒素、アルゴン等の不活性気体雰囲気で担体を200~900℃の温度で焼成させることで遂行されることができる。前記無機塩又は無機物の非限定的な例としてはシリカ、アルミナ、ボーキサイト(Bauxite)、ゼオライト、塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化カルシウム(CaCl2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化硼素(B2O3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化バリウム(BaO)、酸化トリウム(ThO2)又はこれらの混合物としてシリカ-酸化マグネシウム(SiO2-MgO)、シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)、シリカ-酸化チタン(SiO2-TiO2)、シリカ-五酸化バナジウム(SiO2-V2O5)、シリカ-酸化クロム(SiO2-CrO3)、シリカ-酸化チタン-酸化マグネシウム(SiO2-TiO2-MgO)又はこれら化合物に少量のカーボネート(carbonate)、サルフェート(sulfate)又はナイトレート(nitrate)が含まれた化合物等を例示でき、前記有機化合物の非限定的な例としては澱粉、シクロデキストリン、合成ポリマー等を例示できる。前記溶液状態の触媒を前記多孔性担体と接触させる時使用される溶媒はペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒を使用できる。本発明に使用されるオレフィン重合用触媒は担体に担持される場合、前記触媒の各成分組成は溶液又は固体状態の触媒組成と同一であり、前記オレフィン重合用触媒のアルミニウム成分の担持量は、前記担体100重量部に対して、5~30重量部、好ましくは7~20重量部であり、前記触媒の転移金属成分の担持量は0.01~2重量部、好ましくは0.05~1.5重量部である。
【0038】
次に、本発明によるポリオレフィンの重合方法を説明する。前記触媒組成物は、均一溶液状態だけではなく、有機又は無機多孔性担体に担持された形態又は担体の不溶性粒子形態で存在するので、本発明によるポリオレフィンは液状、スラリー状、塊状(Bulk Phase)又は気状反応で重合されることができる。又それぞれの重合反応条件は使用される触媒の状態(均一状又は不均一状(担持型))、重合方法(溶液重合、スラリー重合、気状重合)、目的する重合結果又は重合体の形態によって適切に変形されることができる。前記重合が液状又はスラリー状で実施される場合、溶媒又はオレフィン自体を媒質で使用できる。前記溶媒としてはプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン(xylene)、ジクロロメタン、クロロエタン、1、2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等を例示でき、これら溶媒を一定な比率で混ぜて使用することもできる。本発明のオレフィンを重合又は共重合するのにあって、前記第1~第4有機転移金属化合物の量は特別に限定されないが、重合に使用される反応系内で前記第1~第4有機転移金属化合物の中心金属濃度が10-8
~10mol/Lであることが望ましいし、10-7
~10-2mol/Lであればさらに望ましい。
【0039】
本発明によるオレフィンの重合又は共重合にあって、重合温度は反応物質、反応条件等によって変わることができるためで特別に限定されるのではないが、通常70~110℃である。例えば、前記重合温度は溶液重合を遂行する場合、0~250℃、好ましくは10~200℃であり、スラリー又は気状重合を遂行する場合、0~120℃、好ましくは20~110℃である。又、重合圧力は大気圧~500kgf/cm2、好ましくは大気圧~60kgf/cm2、さらに好ましくは10~60kgf/cm2であり、前記重合はバッチ式、半連続式又は連続式で遂行されることができる。前記重合は相異なる反応条件を持つ二つ以上の段階でも遂行されることができ、本発明による触媒を利用して製造される最終重合体の分子量と分子量分布は重合温度を変化させたり反応器内に水素を注入する方法で調節できる。本発明によるポリオレフィン樹脂の重合は、通常の単一ルプ反応器、気状反応器、内部循環流動層(ICFB、internally circulating fluidized-bed)反応器(韓国特許第981、612号、第999、543号、第999、551号等参照)を利用して遂行されることができる。
【0040】
本発明によるポリオレフィンは、予備重合及び本重合工程を通じて重合されることができる。前記予備重合工程で、オレフィン重合体又は共重合体は前記オレフィン触媒1g当たり0.05~500g、好ましくは0.1~300g、さらに好ましくは0.2~100gで製造されるのが望ましい。前記予備重合工程に使用可能なオレフィン類としてはエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン等の炭素数2~20のα-オレフィン類等を例示でき、重合時に使用されたものと同一なオレフィンを使用するのが望ましい。
【0041】
以下、具体的な実施例を通して本発明をより詳しく説明する。下記の実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。下記の実施例で、触媒は空気と水分が完全に遮断されたシュレンク(Schlenk)技法で製造され、不活性気体として精製乾燥された窒素を使った。また、溶媒は不活性窒素雰囲気下のナトリウム金属で乾燥した。本明細書及び実施例において、各物性の測定方法は次の通りである。
(a)低分子量含有量(LMW%):プログラム(Origin Pro8.6)を利用して、前記GPC分子量及び分子量分布に分析されたGPCのデータ及びガウシアン(Gaussian)法則を利用して、低分子量含有量だけ抽出して総量を求めた。
【0042】
[製造例1]触媒の製造
窒素雰囲気において、150L反応器に第1有機遷移金属化合物としてビス(イソブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド((iBuCp)2ZrCl2)を、第2有機遷移金属化合物としてビス(2-ノルマルブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド((2-n-BuInd)2ZrCl2)を、第3有機遷移金属化合物としてジメチルシリル(4、7-ジ-メチルインデン-1-イル)(2、3、4、5-テトラメチルシクロペンタジエ-1-イル)ジルコニウムジクロリド(Me2Si(4、7-diMeInd)(2、3、4、5-tetraMeCp))ZrCl2)を、第4有機遷移金属化合物としてジフェニルメチリデン(ノルマルブチルシクロペンタジエニル)(2、7-ジ-tert-ブチルフルオレン-9-イル)ジルコニウムジクロリド(Ph2C(2、7-t-BuFlu)(nBu-Cp))ZrCl2)を、アルミノキサンでメチルアルミノキサン(MAO、Albemarle社製品、10%トルエン溶液)を混合し、60℃で60分間攪拌して溶液を製造した。前記溶液に250℃で焼成されたシリカ(SiO2)を入れて、1時間超音波を加えた後、上層液を除去した。次に、残存する固体粒子をヘキサンで2回洗浄した後、真空で乾燥して自由に流れる固体粉末の担持触媒を製造した。
【0043】
[製造例2]フィルムの加工
MACHINERY社のMUMACブローンフィルム加工機を利用して製造した。5kgのペレットを用い、200℃の加工温度でスクリューrpm:90、BUR(4:1):31.4cm、FLH:46cm、フィルム厚さ:25μmの条件で製造した。
【0044】
[参考例1、及び実施例2~3]エチレン/1-ヘキセン共重合及び共重合体の加工性及び物性評価
共重合方法は同業者によく知られた連続単一ループ工法の重合方法に準じて実施し、前記製造例1から得られた混成担持メタロセン触媒を単一ループスラリー重合工程に1.5g/hの速度で連続的に投入し、共単量体としては1-ヘキセンを使ってポリエチレンを製造した。ポリエチレンの重合条件を具体的に説明すれば、まず、53Lの単一ループ反応器にイソブタンを満たしてエチレン、ヘキセン-1及び前記触媒を連続的に注入して、下記表1の条件となるように調節してポリエチレンを連続的に収得した。
【0045】
得られたポリエチレン共重合体に酸化防止剤など添加剤を添加し、二軸押出機(W&P Twin Screw Extruder、75パイ、L/D=36)を使って170~220℃の押出温度で造粒した。ポリエチレン重合体の原料物性及び製品諸般物性(Mw/1000(重量平均分子量/1000)、溶融指数(Melt Index:MIP、MIF)、溶融流れ指数比(SR(MIF/MIP))及び密度)を上述した特性評価方法により評価し、結果を表1に示した。
【表1】
【0046】
[比較例1~3]市販されているポリエチレン
商業的に市販されているポリエチレンの製品3種(比較例1~3)の物性及び加工性を実施例2のポリエチレンと同じ条件で比較し、比較例1は大林産業(株)で生産されるXP4100高密度ポリエチレン製品であり、比較例2はロッテケミカル(株)で生産される7000F高密度ポリエチレン製品であり、比較例3は大林産業(株)で生産されるLH8300高密度ポリエチレン製品である。
【0047】
[実験例1]ポリエチレンの物性評価
前記実施例2で製造された重合体及び前記比較例1
~3の基本物性を下記表2に、樹脂物性を下記表3に、溶融強度(Melt Strength)とマトリックス指数(Matrix Index)との相関関係を下記表4に示した。ここで、dw/dlogM(L)、dw/dlogM(H)及びdw/dlogM(M)は重量平均分子量分布で、それぞれdw/dlogM(L)はゲル透過クロマトグラフィーで測定した分子量分布グラフで、最も小さい分子量を有する峰の高さであり、dw/dlogM(H)は最も大きい分子量を有する峰の高さであり、dw/dlogM(M)は二つの峰の間の最も低い谷間の高さである。
【表2】
【表3】
【表4】
上記表4のマトリックス指数(Matrix Index)は下記式1から求められる。
[式1]
マトリックス指数=(A+B-C)/C
上記式1において、Aはdw/dlogM(L)を、Bはdw/dlogM(H)を、Cはdw/dlog(M)を示す。
【0048】
図1は、本発明の
参考例1、実施例
2~3及び比較例1
~3で製造されたそれぞれのポリエチレンに対するゲル透過クロマトグラフィー分子量分布を示した図であり、
図2は、本発明の実施例2及び比較例1
~3で製造されたそれぞれのポリエチレンに対する溶融強度(Melt Strenght)分析図を示した図であり、
図3は本発明の実施例2で製造されたポリエチレンのマトリックス指数(Matrix Index)の計算を示した図である。
図1乃至
~3に示されているように、メタロセン触媒で作られたポリエチレン樹脂は分子量分布が狭くて単独で用いる場合、良い物性を有することはできるが、加工性が悪くて、これを改善するために多頂以上のマルチモーダル分子量分布を有するポリエチレン樹脂を導入している。しかし、
図1の比較例1のように異種のメタロセン触媒で作られたポリオレフィン樹脂は狭い分子量分布の高分子鎖を生成するメタロセン触媒の特性によって互いに異なる弾性エネルギーを有する高分子鎖を生成する。異なる弾性エネルギーを有する高分子鎖は互いに混合せずに分離しようとする性質を有し、これは押出機内で高分子鎖が均一に分布されないポリエチレン成形体を作り出す。均一に分布されない高分子鎖はポリエチレン樹脂の物理的性質、加工性、流変的特性を減少させることになる。本発明のマルチモーダルポリエチレン樹脂である
図1の実施例2においては、このようなマルチモーダルポリエチレン樹脂の短所を補完するために、異なる弾性エネルギー差を減らすことができる中間分子量を二頂の高分子鎖に導入し、
図1に示されているように高分子鎖が非常に均一に分布されたマルチモーダルポリオレフィン樹脂が生成されたことを確認することができる。低分子鎖と高分子鎖が均一に分布されたメタロセンポリエチレン樹脂は、本来の優れた物理的特性を維持しながら高い加工性、高い溶融強度及び優れた流変特性を有する。ここで、
図1及び3のlogMWは分子量(molecular weight)を、dw/dlogMは当該分子量(logM)を有する高分子鎖の重量分率(weight fraction)を示す。
【0049】
本発明の実施例
2~3及び比較例1
~3から得られたポリエチレンの分子量分布はいずれもバイモーダル形態に現れ、
図1に示した。特に、単一工程で製造された実施例
2~3のポリエチレンの分子量分布は、
図1に示されているように、二頂の分子量分布の間に中間分子量が導入された形態のバイモーダル分子量分布を示す。比較例1はメタロセン触媒を利用して単一工程で製造し、異なる弾性エネルギーを有する高分子鎖が存在する分子量分布の形態を示す。Z/N触媒を連続重合工程を利用して商業生産された比較例2
~3のポリエチレンの分子量分布も中間分子量の部分が満たされたバイモーダル分子量分布の形態を示す。
【0050】
一般に、ポリエチレン樹脂の物性を高めるためにはポリエチレン樹脂の分子量を高める方法を選択し、分子量が低いポリエチレン対比優れた物性を有するが、加工性を悪くするという短所がある。また、メタロセン触媒で重合されたポリエチレン樹脂の分子量分布図(MWD、Molecular Weight Distribution)は非常に狭く形成される。上記表2で実施例2の重量平均分子量(Mw)は商業販売される比較例1及び3と比べると、大きいか同じである。しかし、実施例2の溶融流れ指数比(SR)、分子量分布図(MWD)を比較例1及び3と比較してみれば、相対的に広い溶融流れ指数比と既存のメタロセン触媒で生成されたマルチモーダルポリエチレン樹脂に比べて広い分子量分布図(MWD)を有することを確認することができる。これは、押出成形加工時に同じ加工条件でさらに低い弾性率(G’)を有していることを意味し、上記表3に示されているように、最も低い溶融流れ指数(MIP)と少なくない重量平均分子量を有しているにもかかわらず、最も低い溶融圧力(Melt pressure)とモータロード(Motor Load)値を示すことによって、より優れた生産性を有することが分かる。
【0051】
また、ブローンフィルム成形加工時にバブル安定性(Bubble Stability)を高めることは加工性の側面において非常に重要な要素であり、このような安全性を高めるために、一般に溶融張力及び溶融強度を増加させる方法を使用する。上記表3の樹脂物性比較から本発明の実施例2が比較例1~3に比べて、最も優れた溶融強度(Melt Strength)を有することが分かる。ポリエチレン樹脂は、フィルム成形時に押出機内で高い温度条件と圧力によって粘度を有する高分子に溶融されフィルム形態に吐き出す。吐出時に溶融強度が低ければストレスによる揺動現象が激しくなり、これはフィルム厚さの偏差、外形及び寸法安定性に悪い結果をもたらす。高い溶融強度を有するフィルム成形体は成形時に重量による傾き現象、ストレスによるねじりなどに優秀な抵抗性を有する。
【0052】
付加的に、溶融強度(Melt Strength)を増加させるためには超高分子量含有量を増加させる方法が効果的であると知られている。一般に、超高分子量を有するポリエチレンは相対的に低い分子量を有するポリエチレンに比べて溶融強度(Melt Strength)が高い反面、加工性が悪いと知られていた。また、フィルム成形時に分子量が高すぎる重合体が均一に混合されなかったり、溶けない場合にはフィッシュアイズ(Fish Eyes)及びゲル(Gel)の形態に現れる。
【0053】
本発明では溶融強度を増加させるために加工性を阻害する超高分子含有量を増加させる既存方法とは全く違う方法を使って溶融強度を増加させている。本発明では中間分子量のポリエチレンを導入することによって高い溶融強度を有するが、加工性も良くなるポリエチレン樹脂を開発した。上記表3で実施例2及び比較例2を比較してみれば、比較例2から得られた重合体はより高い重量平均分子量を有し、より多い超高分子を有するが、実施例2から得られた重合体がより高い溶融強度(Melt Strength)を示すことを確認できた。また、同じ重量平均分子量及び超高分子を有した比較例3との比較においては、非常に優れた溶融強度(Melt Strength)を示すことを確認できた。
【0054】
上記表4は中間分子量の導入を通して溶融強度(Melt Strength)が増加した比較例を示した。上記表4のマトリックス指数(Matrix Index、MTI)は高分子量(High Molecular Weight)と低分子量(Low Molecular Weight)の間に満たされる中間分子量(Medium Molecular Weigth)の程度を示す指標であり、1に近いほど中間分子量の含有量を多く含む。上記表4に示した全ての比較例はメタロセン触媒を利用して生成されたポリエチレン樹脂である。特に、実施例2、4及び5においては、いずれも同じメタロセン触媒を利用して重合され、中間分子量が満たされた形態のポリエチレン樹脂である。上記表4の実施例2、比較例5及び6を比較してみれば、いずれも同様な大きさの重量平均分子量を有しているが、マトリックス指数(Matrix Index)値が最も優れた実施例2が最も高い溶融強度(Melt Strength)を有したことを確認できた。また、より高い重量平均分子量と超高分子量を有する比較例4と比較しても優れた溶融強度を有することを確認でき、実施例4及び5と同様な重量平均分子量及び超高分子量を有する他の比較例の重合体と比較してみるとき、マトリックス指数(Matrix Index)が相対的に優れた実施例4及び5の重合体がよりもっと優れた溶融強度を有することを確認できる。
【0055】
また、上記表3の樹脂物性比較において、本発明の実施例2が比較例1及び3に比べて最も優れた粘度比(Shear Thinning Index、STI)値を有することが分かる。粘度比(STI)値は、RMSで測定されたせん断速度(Shear Rate)対比粘度(Viscosity)を示す値であり、粘度比(STI)を高める主な方法としては、超高分子領域を高める方法と長鎖分枝(Long chain branch、LCB)を導入する方法を主に使用する。前記発明では前述した二つの方法ではなく、中間分子量を導入することによって粘度比(STI)を増加させる方法を開発した。粘度比(STI)値が大きいということは、高い加工領域では相対的により高い粘度を有し、低い加工領域では相対的にもっと低い粘度を有するという意味である。つまり、実施例2は比較例1及び3と比較してみたとき、同じ加工条件の押出機内でより低い粘度を有し高い流れ性を示し、押出機外部に吐き出されたときに高い粘度を有しより少ない変形を示す。
【0056】
また、フィルム成形時に表面に生成されるゲル(Gel)を防止することは非常に重要な要素である。特に、マルチモーダルポリエチレン樹脂の場合前述したように互いに異なる弾性エネルギー差によって押出機内部で低分子と高分子の鎖が互いに分離されるように移動する現象が発生する。このような鎖移動は、ポリエチレン樹脂が押出機内で完全に混合することを妨害し混合されず、残っている高分子樹脂は成形時にゲル(gel)として存在するようになる。前記発明ではこのような弾性エネルギー差を減らすために低分子量と高分子量の中間程度分子量を有するポリエチレン樹脂を導入し、その結果、高分子鎖が均一に混合できるようにした。これによるゲル生成抑制能力が増加することを上記表3で確認でき、上記表3の樹脂物性比較で本発明の実施例2が比較例1~3に比べて、最も優れたゲル抑制能力を示すことを確認できた。
【0057】
総合的に本発明のポリエチレン樹脂は、既存メタロセン触媒を利用した重合工程で得られるマルチモーダルポリエチレン樹脂に比べて高分子鎖が均一に分布されており、非常に優れたマトリックス指数(Matrix Index)値を有する。本発明のマルチモーダルポリオレフィン樹脂は、押出成形時に発生する弾性エネルギー差が小さくて低分子量重合体と高分子量重合体がより完全に混合されたポリオレフィン樹脂を提供する。本発明のポリエチレン樹脂は高い溶融強度(Melt Strength)を有することで、既存のポリエチレン製品に比べてフィルム成形時に高い加工安定性(バブル安定性、Bubble Stability)を有する。また、優れたSTI(Shear Thining Index)を有し同じ条件の高い加工領域で既存対比さらに低い弾性率(G’)を示し、外部に吐き出された後にはより高い弾性率を示す。また、加工時に低い溶融圧力を有することで優れた生産性を示す。これは、既存ポリオレフィン樹脂以上の製品物性を実現しながらも成形性及び加工安定性に優れたものであり、同一のエネルギー消費で相対的に成形品の生産性を増加させることができる長所がある。
【0058】
より簡単に、本発明は、長鎖分枝(Long Chain Branch)及び超高分子量なしにマトリックス指数(Matrix Index)を増加させて、高い溶融強度でも成形性に優れており、成形性に優れているにもかかわらず機械的物性も優れたポリエチレン樹脂を製造することである。