(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】傾斜磁場コイル
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20220114BHJP
G01N 24/00 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
A61B5/055 340
A61B5/055 360
G01N24/00 620R
(21)【出願番号】P 2017111015
(22)【出願日】2017-06-05
【審査請求日】2020-04-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中林 和人
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-279256(JP,A)
【文献】国際公開第2015/115141(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/090129(WO,A1)
【文献】特開2011-056247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00 -24/14
G01R 33/20 -33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含侵により形成された傾斜磁場コイル本体と、
前記傾斜磁場コイル本体の外表面に配置され、前記傾斜磁場コイル本体の温度を測定する温度測定素子と
を備える傾斜磁場コイルにおいて、
前記温度測定素子の電流入出力端は、同軸ケーブル
の芯線とシールド線とに
それぞれ接続され、
前記同軸ケーブルの前記シールド線が、前記傾斜磁場コイル本体の中に埋め込まれたRF(Radio Frequency)シールドと接続され、
前記温度測定素子と、
前記RFシールドとは、
前記同軸ケーブルの前記シールド線を介して電気的に接地される、傾斜磁場コイル。
【請求項2】
前記温度測定素子はサーミスタである、請求項1に記載の傾斜磁場コイル。
【請求項3】
前記同軸ケーブルは、セミリジッドケーブルである、請求項1に記載の傾斜磁場コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、傾斜磁場コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置においては、パルスシーケンスの印加に伴い傾斜磁場コイルが発熱するため、傾斜磁場コイルの温度を測定するための温度測定素子が、配置される場合がある。この場合、温度測定素子は、RFコイルと傾斜磁場コイルのカップリングを防ぐために設けられるRF(Radio Frequency)シールドの外側の、傾斜磁場コイル導体と近接する位置に配置される場合が多い。
【0003】
しかし、温度測定素子をRFシールドの外側に配置する場合、温度測定素子自身が傾斜磁場コイルの中に埋め込まれている場合が多いことから、故障時のメンテナンスが容易でない場合も多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-125050号公報
【文献】特開2016-16077号公報
【文献】特開平6-343616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、温度測定素子の交換を容易にするとともに温度測定素子の破損を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る傾斜磁場コイルは、含侵により形成された傾斜磁場コイル本体と、前記傾斜磁場コイル本体の外表面に配置され、前記傾斜磁場コイル本体の温度を測定する温度測定素子とを備える。温度測定素子の電流入出力端は、同軸ケーブルに接続される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置を示した図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る傾斜磁場コイルの構成の例を示した図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る傾斜磁場コイルの構成の例を示した図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る傾斜磁場コイルに係る背景を説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る傾斜磁場コイルに係る背景を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る温度測定素子の配置の例について示した図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る温度測定素子の配置の別の例について示した図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係る温度測定素子の配置の例について示した図である。
【
図9】
図9は、第3の実施形態に係る温度測定素子の配置の例について示した図である。
【0008】
以下、添付図面を用いて、実施形態に係る傾斜磁場コイルを詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100を示すブロック図である。
図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場磁石101と、静磁場磁石101を駆動させるための静磁場電源(図示しない)と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源104と、寝台105と、寝台制御回路106と、送信コイル107と、送信回路108と、受信コイル109と、受信回路110と、シーケンス制御回路120と、画像処理装置130とを備える。なお、磁気共鳴イメージング装置100に、被検体P(例えば、人体)は含まれない。
【0010】
また、
図1に示す構成は一例に過ぎない。例えば、シーケンス制御回路120及び画像処理装置130内の各部は、適宜統合若しくは分離して構成されてもよい。
【0011】
静磁場磁石101は、中空の略円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に静磁場を発生する。静磁場磁石101は、例えば、超伝導磁石等であり、静磁場電源から電流の供給を受けて励磁する。なお、静磁場磁石101は、永久磁石でもよく、この場合、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場電源を備えなくてもよい。また、静磁場電源は、磁気共鳴イメージング装置100とは別に備えられてもよい。
【0012】
傾斜磁場コイル103は、中空の略円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石101の内側に配置される。また、温度測定素子103dは、傾斜磁場コイル103の外表面に配置され、傾斜磁場コイル103の温度を測定する温度測定素子である。なお、温度測定素子103dは、傾斜磁場コイル103の一部として、傾斜磁場コイル本体の外表面に配置されていても良いし、傾斜磁場コイル103には含まれない部品として、傾斜磁場コイル本体の外表面に配置されていてもよい。温度測定素子103dは、シーケンス制御回路120と接続される。例えば温度測定素子103dが傾斜磁場コイル103の温度に異常を感知すると、傾斜磁場コイル103の温度情報が、シーケンス制御回路120に送信される。シーケンス制御回路120は、温度測定素子103dから取得した温度情報に基づいて、例えばパルスシーケンスの停止等の処理を必要に応じて行う。なお、傾斜磁場コイル103及び温度測定素子103dのより詳細な説明については、
図2及び
図3を用いて後述する。
【0013】
寝台105は、被検体Pが載置される天板105aを備え、寝台制御回路106による制御の下、天板105aを、被検体Pが載置された状態で、傾斜磁場コイル103の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台105は、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御回路106は、画像処理装置130による制御の下、寝台105を駆動して天板105aを長手方向及び上下方向へ移動する。
【0014】
送信コイル107は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、送信回路108からRF(Radio Frequency)パルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。送信回路108は、対象とする原子の種類及び磁場強度で定まるラーモア(Larmor)周波数に対応するRFパルスを送信コイル107に供給する。
【0015】
受信コイル109は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、高周波磁場の影響によって被検体Pから発せられる磁気共鳴信号を受信する。受信コイル109は、磁気共鳴信号を受信すると、受信した磁気共鳴信号を受信回路110へ出力する。
【0016】
なお、上述した送信コイル107及び受信コイル109は一例に過ぎない。送信機能のみを備えたコイル、受信機能のみを備えたコイル、若しくは送受信機能を備えたコイルのうち、1つ若しくは複数を組み合わせることによって構成されればよい。
【0017】
受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号を検出し、検出した磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴データを生成する。具体的には、受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号をデジタル変換することによって磁気共鳴データを生成する。また、受信回路110は、生成した磁気共鳴データをシーケンス制御回路120へ送信する。なお、受信回路110は、静磁場磁石101や傾斜磁場コイル103等を備える架台装置側に備えられてもよい。
【0018】
シーケンス制御回路120は、画像処理装置130から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動することによって、被検体Pの撮像を行う。すなわち、シーケンス制御回路120は、シーケンス情報に基づいて、傾斜磁場コイル103に電圧を印加してパルスシーケンスを実行する。ここで、シーケンス情報は、撮像を行うための手順を定義した情報である。シーケンス情報には、傾斜磁場電源104が傾斜磁場コイル103に供給する電流の強さや電流を供給するタイミング、送信回路108が送信コイル107に供給するRFパルスの強さやRFパルスを印加するタイミング、受信回路110が磁気共鳴信号を検出するタイミング等が定義される。例えば、シーケンス制御回路120は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路である。
【0019】
なお、シーケンス制御回路120は、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動して被検体Pを撮像した結果、受信回路110から磁気共鳴データを受信すると、受信した磁気共鳴データを画像処理装置130へ転送する。また、温度測定素子103dから出力された信号を元に異常時の処理として傾斜磁場電源の制御を止めたり、場合によっては傾斜磁場電源の電源を落とす役割も担う。なお、シーケンス制御回路120は、シーケンス制御部の一例である。
【0020】
画像処理装置130は、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御や、画像の生成等を行う。画像処理装置130は、記憶回路132、入力装置134、ディスプレイ135、処理回路150を備える。処理回路150は、インタフェース機能131、制御機能133、画像生成機能136を備える。
【0021】
第1の実施形態では、インタフェース機能131、制御機能133、画像生成機能136にて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路132へ記憶されている。処理回路150はプログラムを記憶回路132から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、
図1の処理回路150内に示された各機能を有することになる。なお、
図1においては単一の処理回路150にて、インタフェース機能131、制御機能133、画像生成機能136にて行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路150を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0022】
換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路が各プログラムを実行する場合であってもよいし、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。
【0023】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路132に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0024】
なお、記憶回路132にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、寝台制御回路106、送信回路108、受信回路110等も同様に、上記のプロセッサ等の電子回路により構成される。
【0025】
処理回路150は、インタフェース機能131により、シーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信し、シーケンス制御回路120から磁気共鳴データを受信する。また、インタフェース機能131を有する処理回路150は、磁気共鳴データを受信すると、受信した磁気共鳴データを記憶回路132に格納する。記憶回路132に格納された磁気共鳴データは、制御機能133によってk空間に配置される。この結果、記憶回路132は、k空間データを記憶する。
【0026】
記憶回路132は、インタフェース機能131を有する処理回路150によって受信された磁気共鳴データや、制御機能133を有する処理回路150によってk空間に配置されたk空間データ、画像生成機能136を有する処理回路150によって生成された画像データ等を記憶する。例えば、記憶回路132は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等である。
【0027】
入力装置134は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。入力装置134は、例えば、マウスやトラックボール等のポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスである。ディスプレイ135は、制御機能133を有する処理回路150による制御の下、撮像条件の入力を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、画像生成機能136を有する処理回路150によって生成された画像等を表示する。ディスプレイ135は、例えば、液晶表示器等の表示デバイスである。
【0028】
処理回路150は、制御機能133により、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御を行い、撮像や画像の生成、画像の表示等を制御する。例えば、制御機能133を有する処理回路150は、撮像条件(撮像パラメータ等)の入力をGUI上で受け付け、受け付けた撮像条件に従ってシーケンス情報を生成する。また、制御機能133を有する処理回路150は、生成したシーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信する。
【0029】
処理回路150は、画像生成機能136により、k空間データを記憶回路132から読み出し、読み出したk空間データにフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、画像を生成する。
【0030】
続いて、
図2及び
図3を用いて、実施形態に係る傾斜磁場コイル103についてより詳細に説明する。
図2及び
図3は、実施形態に係る傾斜磁場コイル103の構成の例を示した図である。
図2は、
図1における静磁場磁石101、傾斜磁場コイル103、送信コイル107、受信コイル109を拡大表示した断面図である。
【0031】
図2において、静磁場磁石101、送信コイル107、受信コイル109は、それぞれ
図1の静磁場磁石101、送信コイル107、受信コイル109に対応する。また、
図1の傾斜磁場コイル103は、例えば
図2により示されているように、傾斜磁場コイル本体103bと、傾斜磁場コイル本体103bの外表面に配置され、傾斜磁場コイル本体103bの本体の温度を測定する温度測定素子103dとを備える。傾斜磁場コイル本体103bは、例えば樹脂などにより含侵により、傾斜磁場コイル本体103bのコイル部分であるコイル部分103aと、RF(Radio Frequency)シールド103cとを内部に含んで形成され、略円筒型の形状を有する。
【0032】
図3は、
図2のA-A’断面における傾斜磁場コイル103等を表示した断面図である。
図3に示されているように、傾斜磁場コイル103の断面は、略円形の形状を有し、傾斜磁場コイル本体103bと、傾斜磁場コイル本体103bの内周部分の外表面に配置された温度測定素子103dとで構成され、その内側に、送信コイル107及び受信コイル109が、被検体Pを囲むように配置される。また、傾斜磁場コイル103は、コイル部分103aとRFシールド103cとを有し、含侵により形成された構造を有する。
【0033】
図2に戻り、傾斜磁場コイル本体103bのコイル部分103aは、傾斜磁場コイル103の各軸に対応するコイル(X軸に対応するコイル、Y軸に対応するコイル、Z軸に対応するコイル等)が積層されたメインコイルを含んで構成される。コイル部分103aは、例えば樹脂などにより、含侵されて形成される。コイル部分103aの具体例としては、傾斜磁場を発生するメインコイルと、漏洩磁場を打ち消すシールド用の磁場を発生するシールドコイルとを含んで構成されるASGC(Actively Shielded Gradient Coil)である。かかる場合、傾斜磁場コイルは、例えば、円筒内部の空間からの距離が近い順に、冷却管、メインコイル、冷却管、シムトレイ、冷却管、シールドコイルが配置されて構成される。
【0034】
メインコイルは、互いに直交するX、Y、及びZの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、傾斜磁場電源104から個別に電流の供給を受けて、X、Y、及びZの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。コイル部分103aによって発生するX、Y、及びZの各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge、及びリードアウト用傾斜磁場Grである。また、シールドコイルも同様に、互いに直交するX、Y、及びZの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、傾斜磁場電源104から個別に電流の供給を受けて、X、Y、及びZの各軸に沿ってシールド用の磁場を発生する。また、冷却管は、冷媒を循環させてコイルの冷却を行う。シムトレイは、所定のポケットに所定の枚数の鉄シムが収納されることで、シミングを実現する。
【0035】
なお、コイル部分103aの例としては、ASGCに限られず、例えばシールドコイルを有しない通常のコイルであってもよい。かかる場合、コイル部分103aは、互いに直交するX、Y、及びZの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成され、これら3つのコイルは、傾斜磁場電源104から個別に電流の供給を受けて、X、Y、及びZの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。傾斜磁場電源104は、コイル部分103aに電流を供給する。
【0036】
RFシールド103cは、傾斜磁場コイル本体103b、特にコイル部分103aと、送信コイル107及び受信コイル109等のRFコイルとの電磁気的カップリングを防ぐための高周波電波シールド(RFシールド)である。RFシールド103cは、例えば銅板で構成される。なお、RFシールド103cの素材は銅板に限られず、例えばその他の材質で構成された金属であってもよい。RFシールド103cは、樹脂などで含侵されて、傾斜磁場コイル本体103bに埋め込まれて形成される。
【0037】
温度測定素子103dは、傾斜磁場コイル本体103bの温度を測定するための温度測定素子である。温度測定素子103dの例としては、例えばサーミスタ等の半導体素子である。また、温度測定素子103dの別の例として、リニア抵抗や、白金測温抵抗体など測温抵抗体を用いた素子でもよく、また熱電対を利用した素子やIC温度センサであってもよい。
【0038】
実施形態に係る温度測定素子103dは、傾斜磁場コイル本体103bの内周部分の外表面に配置される。従って、実施形態に係る温度測定素子103dは、傾斜磁場コイル本体103bの内周に設置されるRFコイル(送信コイル107及び受信コイル109)と、RFシールド103cとの間に配置される。
【0039】
ここで、実施形態において、温度測定素子103dを、傾斜磁場コイル本体103bの外表面に配置する背景について説明する。
図4及び
図5は、実施形態に係る傾斜磁場コイルに係る背景を説明するための図である。
図4及び
図5には、温度測定素子103dが、RFシールド103cの外側に配置されている場合について示されている。
【0040】
図4及び
図5の場合では、温度測定素子103dがRFシールド103cの外側に配置されているので、RFコイルと傾斜磁場コイル本体103bとのカップリングは抑制される。しかしながら、このような温度測定素子103dの配置では、温度測定素子103dが傾斜磁場コイル本体103bの中に埋め込まれているために、故障時や破損時のメンテナンスや交換が容易でない。従って、故障時のメンテナンスの容易さという観点では、温度測定素子103dは、傾斜磁場コイル本体103bの外周面に配置されるのが望ましい。また、ホットスポットが傾斜磁場コイルの最内層にある場合や、温度測定素子103dの配置場所に制約がありRFシールド103cの外側にある場合でも、温度測定素子103dは、傾斜磁場コイル本体103bの外表面に配置されるのが望ましい。
【0041】
かかる背景に鑑みて、実施形態においては、温度測定素子103dは、傾斜磁場コイル本体103bの外表面に配置される。これに伴い、温度測定素子103dが、RFシールド103cの内側に配置されることになるので、そのままでは、温度測定素子103dの電流供給線や温度測定素子103dのセンサ自体が、送信コイル107及び受信コイル109の影響を受けることが考えられる。従って、実施形態においては、温度測定素子103dの配置や配線等に工夫を行うことにより、温度測定素子103dが送信コイル107及び受信コイル109から受ける影響を低下させる。これにより、温度測定素子103dの交換を容易にするとともに温度測定素子103dの破損を防止することができる。
【0042】
より具体的には、第1の実施形態においては、上述の点を解決するため、温度測定素子103dは、同軸ケーブルに接続される。なお、温度測定素子103dとして、例えばサーミスタ等を選択した場合、電流入出力端に流れる電流は直流である。実施形態において、直流の電流の伝送に対して通常使われず、主に高周波数信号の伝送に用いる同軸ケーブルを使用する理由として、以下に述べるように、RFコイルに起因する高周波数電磁場のシールド目的が挙げられる。
【0043】
図6及び
図7は、第1の実施形態に係る温度測定素子の配置の例について示した図である。
図6及び
図7は、
図2において、温度測定素子103d及びRFシールド103c付近を拡大して表示したものである。なお、
図6及び
図7においては、
図2と比較して、上下を反転させて説明している。
図6に示されているように、温度測定素子103dは、同軸ケーブル12に接続される。具体的には、温度測定素子103dの電流供給線(導線11a)は、同軸ケーブル12の芯線と接続され、温度測定素子103dの他方の導線11bは、同軸ケーブル12のシールド線と接続される。ここで、同軸ケーブル12のシールド線の電位と、RFシールド103cの電位が異なると、浮遊容量が発生するなど好ましくない影響が生じるので、温度測定素子103dは、RFシールド103cと電気的に接地される。
【0044】
図6は、同軸ケーブル12が、外側が導体で構成されているケーブルであるセミリジッドケーブルである場合の、温度測定素子103dとRFシールド103cとの接地について示している。同軸ケーブル12がセミリジッドケーブルであり外側が導体で構成されているので、接触点20を通じて、傾斜磁場コイル本体103bの中に埋め込まれたRFシールド103cと、温度測定素子103dとが、電気的に接地される。これにより、同軸ケーブル12のシールド線の内側に、静電遮蔽により、外部の電磁的・静電気的なノイズが入り込まない。また、同軸ケーブル12においては、外部との鎖交磁束が存在しない。従って、温度測定素子103dが、傾斜磁場コイル本体103bの外表面に配置されているにも関わらず、RFコイルに起因する高周波電磁場をシールドすることができる。
【0045】
図7は、第1の実施形態に係る温度測定素子103dの配置の別の例について示している。
図7の例では、同軸ケーブル12は、傾斜磁場コイル本体103bの外側に配置されている。かかる場合、傾斜磁場コイル本体103bの中に埋め込まれた導体21を通じて、温度測定素子103dとRFシールド103cとが電気的に接地される。これにより、温度測定素子103dが、傾斜磁場コイル本体103bの外表面に配置されているにも関わらず、RFコイルに起因する高周波電磁場をシールドすることができる。
【0046】
以上のように、第1の実施形態では、温度測定素子103dが、傾斜磁場コイル本体103bの外表面に配置されるとともに、温度測定素子103dの電流入力端が、同軸ケーブル12に接続される。これにより、温度測定素子103dの交換を容易にするとともにRF信号からのシールドを行うことができ、温度測定素子103dの破損を防止することができる。
【0047】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、温度測定素子103dの電流入出力端に、クロスダイオードとコンデンサとを直列に接続した回路を接続することにより、温度測定素子103dの破損を防止する場合について説明する。
図8は、第2の実施形態に係る温度測定素子103dの配置の例について示した図である。
図8に示されているように、温度測定素子103dの電流入出力端である導線11a及び導線11bに、クロスダイオード30とコンデンサ31とを直列に接続した回路が接続される。
【0048】
ここで、クロスダイオード30は、極性が異なるダイオード30a及びダイオード30bを並列接続することにより構成された回路である。次に、クロスダイオード30の動作について説明する。ダイオード30a及びダイオード30bは、それぞれ、両端に印加された電圧が順方向でありかつ所定の閾値を超えるときに電流が流れ(導体として機能し)、それ以外の場合に電流が流れない(絶縁体として機能する)素子として振る舞う。すなわち、クロスダイオード30は、導線11aと導線11bの電圧差が所定の閾値を超える場合、クロスダイオード30を通じて電流が流れることによりバイパス回路として機能し、導線11aと導線11bの電圧差が所定の閾値を超えない場合、特に動作をしない素子として振る舞う。
【0049】
また、コンデンサ31は、電流の交流成分を通過させ、直流成分の通過を阻止する役割を担う。
【0050】
従って、前述のクロスダイオード30とコンデンサ31とを直列に接続した回路は、直流成分の通過を阻止するとともに、導線11aと導線11bとの間に所定の閾値以上の高周波電圧が印加された時に、回路を通じて電流を逃がす回路として機能する。従って、RFコイルの影響により予期せぬ高周波の電圧が温度測定素子103dの導線11a及び導線11bの間に印加された時、当該回路は、回路に電流を流すことを通じて、温度測定素子103dの破損を防止する。
【0051】
なお、導線11a及び導線11bの一端は、さらにRFコイルからの影響等を抑えるために、ツイストケーブル50に接続されてもよい。
【0052】
このようにして、第2の実施形態では、温度測定素子103dに対して高周波かつ高電圧の成分をバイパスする回路が付加されるので、温度測定素子103dの破損を防止することができる。
【0053】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、温度測定素子103dが、シールド材により電磁気的にシールドされる場合について説明する。
図9は、第3の実施形態に係る温度測定素子103dの配置の例について示した図である。
図9に示されるように、温度測定素子103dは、シールド材40により電磁気的にシールドされる。シールド材40の材質としては、例えば銅などの金属が用いられる。また、同様に、シールド材40は、RFシールド103cと電気的に接地されるのが望ましい。シールド材40とRFシールド103cの接地は、
図7の場合と同様に、傾斜磁場コイル本体103bの中に埋め込まれた導体21を通じて行われる。このようにして、第3の実施形態では、温度測定素子103dはシールド材40によりシールドされるので、温度測定素子103dの破損を防止することができる。
【0054】
このように、以上一つの実施形態に係る傾斜磁場コイル103及び磁気共鳴イメージング装置100によれば、温度測定素子103dの交換を容易にするとともに温度測定素子103dの破損を防止することができる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0056】
103 傾斜磁場コイル
103b 傾斜磁場コイル本体
103c RFシールド
103d 温度測定素子