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▶ 我妻 朋美の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】矯正具及び矯正方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
A61F5/01 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017130710
(22)【出願日】2017-07-03
(65)【公開番号】P2019013285
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-06-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発明に係る商品の公開(平成29年 1月 8日)
(73)【特許権者】
【識別番号】517235122
【氏名又は名称】我妻 朋美
(74)【代理人】
【識別番号】100174805
【弁理士】
【氏名又は名称】亀山 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】我妻 朋美
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3181162(JP,U)
【文献】特開2007-050683(JP,A)
【文献】登録実用新案第3175081(JP,U)
【文献】実開平01-155421(JP,U)
【文献】特開2008-083585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掌側の遠位横アーチ部のうち第2中手骨頭部及び第3中手骨頭部のいずれかに対して直接的または間接的に押し当てられる横アーチ押当部材と、
掌側の第2指の基節骨部に対して直接的または間接的に押し当てられる第2指基部押当部材と、
前記横アーチ押当部材と前記第2指基部押当部材とを連結する連結部材と、を備え、
前記横アーチ押当部材は、前記第2中手骨頭部及び前記第3中手骨頭部のいずれかに当接する凸状の球面又は楕円球面を有し、
前記横アーチ押当部材の最大寸法は第1指の付け根から第2指の付け根までの長さよりも小さいことを特徴とする手指の巧緻動作用矯正具。
【請求項2】
前記横アーチ押当部材は、前記遠位横アーチ部のうち前記第2中手骨頭部及び前記第3中手骨頭部のいずれかに当接する球体又は楕円球体であることを特徴とする請求項1記載の手指の巧緻動作用矯正具。
【請求項3】
前記第2指を挿入可能な環状体をさらに備え、
前記環状体は、前記第2指基部押当部材に対し連結されていることを特徴とする請求項1または2記載の手指の巧緻動作用矯正具。
【請求項4】
第2指橈側面部と第5指尺側面部とを通るように掌及び手の甲に巻かれるバンドを備え、
前記バンドは、前記横アーチ押当部材と連結することを特徴とする請求項ないしのうちいずれか1項記載の手指の巧緻動作用矯正具。
【請求項5】
請求項1ないしのうちいずれか1項記載の手指の巧緻動作用矯正具を手に装着する装着ステップと、
前記手指の巧緻動作用矯正具が装着された手において、前記遠位横アーチ部のアーチ構造を再現するように前記横アーチ押当部材を前記第2中手骨頭部及び第3中手骨頭部のいずれかに対して押し当てるアーチ再現ステップと、
前記手指の巧緻動作用矯正具が装着された手において、手指を動かす手指動作ステップと、
を備えることを特徴とする手指の巧緻動作の矯正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矯正具及び矯正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
箸を上手に持てない場合、鉛筆を上手に持てない場合、あるいは、それらの持ち方が安定しない場合等、手指の巧緻動作に悪影響が生じる原因の1つとして、手の遠位横アーチの機能不全が挙げられる(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】日手会誌(J Jpn Soc Srug Hand). 第29巻 第2号 1-5,2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この遠位横アーチの機能不全の原因は、怪我や神経の疾患等に限られない。例えば、箸や鉛筆を初めて持った人の場合、箸や鉛筆を上手に持つことができない。これは、箸や鉛筆の持ち方、すなわち手指の動かし方について十分な学習がなされていないことが原因である。このように、遠位横アーチの機能不全は、障害者のみならず、健常者にも共通する課題である。
【0005】
非特許文献1においては、遠位横アーチを再現するための専用の治具(スプリント)が開示されている。しかしながら、この治具は、装着者の手の大きさや形にあったものが必要となることから、装着者ごとの専用品となることが多い。このため、この治具は、高価なものとなってしまう。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑み、多くの人に対して、手指の巧緻動作をスムーズにするための矯正具及び矯正方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の手指の巧緻動作用矯正具は、掌側の遠位横アーチ部のうち第2中手骨頭部及び第3中手骨頭部のいずれかに対して直接的または間接的に押し当てられる横アーチ押当部材と、掌側の第2指の基節骨部に対して直接的または間接的に押し当てられる第2指基部押当部材と、前記横アーチ押当部材と前記第2指基部押当部材とを連結する連結部材と、を備え、前記横アーチ押当部材は、前記第2中手骨頭部及び前記第3中手骨頭部のいずれかに当接する凸状の球面又は楕円球面を有し、前記横アーチ押当部材の最大寸法は第1指の付け根から第2指の付け根までの長さよりも小さいことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の手指の巧緻動作の矯正方法は、上記の手指の巧緻動作用矯正具を手に装着する装着ステップと、前記手指の巧緻動作用矯正具が装着された手において、前記遠位横アーチ部のアーチ構造を再現するように前記横アーチ押当部材を前記第2中手骨頭部及び第3中手骨頭部のいずれかに対して押し当てるアーチ再現ステップと、前記手指の巧緻動作用矯正具が装着された手において、手指を動かす手指動作ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多くの人に対して、手指の巧緻動作をスムーズにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の矯正具の概要を示す外観図である。
図2】手に装着された第1の矯正具を表す説明図であり、(A)は、掌側からみたもの、(B)は、手の甲側からみたもの、(C)は、IIa―IIa’線断面図である。
図3】押当部材の概要を示す説明図であり、(A)は、球体の押当部材の側面図、(B)は、楕円体の押当部材の側面図、(C)は、正六面体の球体の押当部材の斜視図である。
図4】手の概要を表す説明図であり、(A)は、掌側からみたもの、(B)は、手の甲側(背側)からみたものである。
図5】矯正具を製造するプロセスを示す説明図である。
図6】遠位横アーチ部Tを通る切断面に関する端面図であり、(A)は、矯正具が装着される前の手の端面図であり、(B)は、矯正具が装着された状態の手及び矯正具の端面図である。
図7】第2の矯正具の概要を示す外観図である。
図8】第2の矯正具の押当部材が押し当てられる掌の位置を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~2に示すように、矯正具2は、掌に向けて押し当てられる押当部材(横アーチ押当部材)10と、手に巻かれるバンド20と、バンド20に対して押当部材10を連結する連結構造30と、を備える。
【0012】
押当部材10は、図3に示すように、球体(図3(A))でもよいし、楕円体(図3(B))や、正6面体(図3(C))等の多面体でもよい。押当部材10の最大寸法Mは、第1指の付け根から第2指の付け根までの長さW(図4(A)参照)より小さいことが好ましい。
【0013】
押当部材10の材料は、特に限定されないが、軽量であるものが好ましく、例えば、プラスチック(例えば、発泡スチロール等)や木などがある。
【0014】
バンド20は、第2指橈側面部K(図4(B)参照)と第5指尺側面部L(図4(B)参照)とを通るように、手の甲及び掌に巻かれるものである(図2(A)参照)。バンド20の長さ方向(図5(A)のX方向)における寸法(以降、バンド20の長さ)LBは、手一周分程度であることが好ましい。バンド20の幅方向(図5(A)のY方向)における寸法(以降、バンド20の幅)WBは、第1指の付け根から第2指の付け根までの長さW(図4(A)参照)より小さいことが好ましい。例えば、バンド20の幅WBの上限を、30mm以下としてもよいし、25mm以下としてもよい。また、バンド20の幅WBの下限を5mm以上としてもよい。
【0015】
バンド20の裏面20Bの一端側には、係合部材21が設けられる。係合部材21は、バンド20の表面20Aに対して着脱自在となっている。係合部材21としては、例えば、面ファスナーがある。係合部材21をバンド20の表面20Aに対して係合させると、バンド20は環状となる(図1参照)。そして、係合部材21をバンド20の表面20Aから外すと、バンド20は線状となる。このように、バンド20は環状と非環状との間で切替自在となる。また、バンド20の表面20Aにおいて、係合部材21が係合可能な範囲は、X方向において一定の長さだけ延びていることが好ましい。これにより、環状部分の長さが変更可能となるため、大きさが異なる手に対しても装着が可能となる。
【0016】
バンド20の材料としては、軽量な材料であればよい。また、バンド20は、伸縮性を有することが好ましく、特に、X方向への伸縮性を有することが好ましい。これにより、大きさが異なる手に対しても装着が可能となるとともに、遠位横アーチの機能を発揮することができる。
【0017】
図1及び図5に示すように、連結構造30は、バンド20の他端側の端部に形成される。連結構造30の構造は特に限定されないが、押当部材10が着脱自在なものであることが好ましい。このため、連結構造30の構造は環状となっており、連結構造30の材料は、長手方向に伸縮性を有することが好ましい。これにより、異なるサイズの押当部材10を連結構造30へ装着させることができる。さらに、図5に示すように、連結構造30は、バンド20と一体となっていることが好ましい。なお、連結構造30は、バンド20の中途部に形成されていてもよい。
【0018】
次に、連結構造30とバンド20とが一体となっている場合の矯正具2の製造方法について説明する。図5(A)に示すように、長尺体Gを用意する。長尺体Gは、バンド20となるバンド部と、連結構造30となる連結構造部とを備える。長尺体Gにおいて、バンド部は一端側に位置し、連結構造部は他端側に位置する。長尺体Gの一端側の裏面20Bには、係合部材21が設けられる。図5(B)に示すように、長尺体Gの他端側に環ができるように、長尺体Gの他端を返し、長尺体Gの中途部に固定する。これにより、長尺体Gの他端側には、異なるサイズの押当部材10が着脱自在な連結構造30が形成される。長尺体Gの残りの部分は、バンド20として機能する。図5(C)に示すように、押当部材10を連結構造30へ装着する。これにより、矯正具2を製造することができる。
【0019】
次に、矯正具2の使用方法について説明する。係合部材21をバンド20の表面20Aに対して装着し、バンド20を環状にする。このとき環状部分の長さは、装着者の手の大きさに応じたものとなっている。次に、連結構造30に押当部材10を装着する。次に、押当部材10が掌側に位置するように、矯正具2を手に装着する(図2参照)。押当部材10は、遠位横アーチ部T(図4(A)参照)に当接するようにする。遠位横アーチ部Tとは、第2中手骨頭部~第5中手骨頭部で構成される部分である。なお、遠位横アーチ部Tのうち、第2中手骨頭部~第4中手骨頭部の部分(図4(A)のT1)に押当部材10が当接することがより好ましい。手の甲側におけるバンド20の装着位置は、握り拳をつくったときできる突出部(第2中手骨頭部~第5中手骨頭部)よりも手首側に位置させるか、突出部に係合させることが好ましい。これにより、バンド20の位置ずれを防ぐことができる。
【0020】
遠位横アーチが機能しない、または、遠位横アーチが機能しくい状態の手は、図6(A)に示すように、扁平状態となることが多い。押当部材10が遠位横アーチ部T(図4(A)参照)の所定の位置に当接すると、押当部材10及び伸縮性のあるバンド20により、手は、押当部材10を支点にして、掌が内向きになるように曲がる。かかる状態が、遠位横アーチを再現できる状態である(図6(B)参照)。
【0021】
図6(B)に示す状態で、手指の巧緻動作(例えば、箸を持って動かす動作や、鉛筆を持って筆記する動作)を行う。これにより、矯正具2が装着されていない場合に比べ、遠位横アーチが機能する。さらに、バンド20や押当部材10は所定の大きさである。このため、矯正具2は、手指の動きの邪魔をせずに、遠位横アーチを機能させることができる。結果、手指の巧緻動作がスムーズなものとなる。また、バンド20は伸縮性であり、環状長さも調節が可能である。同様に、連結構造30も伸縮性であるため、異なる大きさの押当部材10を装着することができる。このような矯正具2は、装着する手の大きさに合わせて、押当部材10の大きさや環状長さを調節することができる。
【0022】
押当部材10は、凸状の掌側曲面10Aを有することが好ましい(図2(C)参照)。これにより、矯正具2を装着したままの状態で、押当部材10の位置調節を行うことができる。さらに、押当部材10は、凸状のバンド側曲面10Bを掌側曲面10Aの反対側に有することが好ましい。
【0023】
また、バンド20は、Y方向の伸縮性よりもX方向の伸縮性が大きい方が好ましい。さらに、X方向の伸縮性において、Y方向両端部の伸縮性よりもY方向中央部の伸縮性が大きい方が好ましい。これにより、バンド20や連結構造30が掌側曲面10Aに沿って変形する結果(図2(C)参照)、押当部材10の脱落や、位置ずれを抑えることができる。
【0024】
遠位横アーチ部Tに当接部材10が当接することにより、手指の巧緻動作が向上する理由として、以下のことが推測される。
(推測1) 遠位横アーチ部Tのうち第4指~第5指(図4(A)中のT2)に当接部材10が当接することにより、第1指~第3指の巧緻動作が向上する。
(推測2) 遠位横アーチ部Tのうち第2指~第3指(図4(A)中のT3)に当接部材10が当接することにより、第4指~第5指の巧緻動作が向上する。
【0025】
なお、バンド20は、箸や筆記具などの長尺物が挿入可能な袋部を有することが好ましい。箸の出入り口は、例えば、バンド20の長さ方向の一旦側に設定すると良い。
【0026】
上記実施形態では、連結構造30を介して、押当部材10を手に押し当てたが、本発明はこれに限られず、押当部材10を直接手に押し当ててもよい。また、上記実施形態では、矯正具2は、押当部材10と、バンド20と、連結構造30と、を備えたが、本発明はこれに限られず、連結構造30を省略してもよい。
【0027】
上記実施形態では、掌に対して押し当てられる押当部材として、押当部材10を用いたが本発明はこれに限られない。図7に示す矯正具82は、押当部材10と、押当部材10と連結された押当部材(第2指基部押当部材)84と、押当部材10及び押当部材84を連結する連結部材85と、を備える。
【0028】
押当部材84の形状は、図7に示す球体の他、楕円体や、正6面体等の多面体でもよい。押当部材84の材料は、特に限定されないが、軽量であるものが好ましい。例えば、プラスチック(例えば、発泡スチロール等)や木などがある。押当部材84は、掌側の第2指の基節骨部に押し当てられることが好ましい(図8)。これにより、いわゆる縦アーチが安定する結果、箸を持つ際の第2~3指の巧緻動作が向上する。
【0029】
連結部材85は、繊維、ゴムやプラスチックなどの材料から形成され、軽量なものであることが好ましい。連結部材85は、押当部材10に形成された連結部材貫通穴10Aと、押当部材84に形成された連結部材貫通穴84Aと、を通過する。
【0030】
さらに、矯正具82は、係止部材88を備えることが好ましい。係止部材88は、環状体であって、押当部材84に形成された係止部材貫通穴84Bを通過するものである。係止部材88は、帯状に形成されたことが好ましい。環状の係止部材88を第2指に通すことにより、掌からの押当部材84の脱落を防ぐことができる。係止部材貫通穴84Bの形成方向は、連結部材貫通穴84Aの形成方向に対して、交差することが好ましく、直交することがより好ましい。
【0031】
なお、矯正具82において、係止部材88を省略してもよい。係る場合、矯正具82をそのまま握って利用してもよい。係止部材88を省略する場合、押当部材10を手に装着する機構として、バンド20及び連結構造30(図1)を用いてもよい。
【0032】
連結部材85は、押当部材10及び押当部材84を接近した状態で固定してもよいし、押当部材10及び押当部材84が離れた状態で固定してもよい。なお、連結部材85によって、押当部材10及び押当部材84が接近した状態で固定されている場合には、矯正具82は箸置きとして利用可能である。係る場合、押当部材10及び押当部材84の間に箸をおくことができる。
【0033】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
2 矯正具
10 押当部材
10A 掌側曲面
10B バンド側曲面
20 バンド
20A 表面
20B 裏面
21 係合部材
30 連結構造
G 長尺体
K 第2指橈側面部
L 第5指尺側面部
M 最大寸法
T 遠位横アーチ部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8