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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】電池パック及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/209 20210101AFI20220114BHJP
   H01M 50/271 20210101ALI20220114BHJP
   H01M 50/296 20210101ALI20220114BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20220114BHJP
【FI】
H01M50/209
H01M50/271 B
H01M50/271 S
H01M50/296
H01M50/284
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017137712
(22)【出願日】2017-07-14
(65)【公開番号】P2019021454
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-509320(JP,A)
【文献】特開2016-119248(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0228937(US,A1)
【文献】特開2005-100689(JP,A)
【文献】特開2012-009277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一以上の二次電池セルを有する電池集合体と、
一端を開口端とし、前記電池集合体を収納する収納ケースと、
前記収納ケースに前記電池集合体を収納した状態で、前記収納ケースの開口端を閉塞するケース蓋部と、
前記収納ケースの内部において、前記ケース蓋部の裏面側と前記電池集合体とを接続する可撓性基板と、
を備える電池パックであって、
前記電池集合体及び前記ケース蓋部は、該電池集合体と該ケース蓋部との間に介在する前記可撓性基板による反力に抗して、該ケース蓋部を該電池集合体に接触させる姿勢に保持可能な仮止め機構を設けており、
前記仮止め機構は、前記ケース蓋部と前記収納ケースとの接合面が接合された状態で、仮止め状態を解除されるよう構成してなる電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記仮止め機構が、前記ケース蓋部と前記収納ケースとの接合面が部分的に溶着されて該ケース蓋部と該収納ケースとの間の隙間が狭くなることにより、係合状態が解除されるよう構成されてなる電池パック。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池パックであって、
前記ケース蓋部と前記収納ケースとの接合面が、いずれか一方の接合面に形成された凸条と、いずれか他方の接合面に形成された、前記凸条を挿入する凹条で構成されてなる電池パック。
【請求項4】
請求項3に記載の電池パックであって、
前記仮止め機構が、
前記電池集合体又は前記ケース蓋部のいずれか一方に形成され、前記電池集合体とケース蓋部との間に介在する前記可撓性基板による反力の方向と交差する方向に係止面を有する爪部と、
前記電池集合体又は前記ケース蓋部のいずれか他方に形成され、前記爪部の係止面と
係合される段差面を有する段差部で構成されてなる電池パック。
【請求項5】
請求項4に記載の電池パックであって、
前記爪部が一対、離間して対向する姿勢に設けられ、
前記対向する一対の爪部の間に、前記可撓性基板が配置されるように構成されてなる電池パック。
【請求項6】
請求項4に記載の電池パックであって、
前記爪部の係止面の方向が、前記凸条の突出方向と交差されてなる電池パック。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の電池パックであって、
前記ケース蓋部が、外部の電力供給対象機器と接続するための外部コネクタを備えており、
前記可撓性基板の一端が、前記外部コネクタに接続されてなる電池パック。
【請求項8】
請求項に記載の電池パックであって、
前記ケース蓋部が、スリットを開口しており、
前記外部コネクタは、前記スリットを通して前記ケース蓋部から表出されてなる電池パック。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の電池パックであって、
前記電池集合体が、前記ケース蓋部と対向する面に、回路基板を備えており、
前記可撓性基板の他端が、前記回路基板に接続されてなる電池パック。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の電池パックであって、
前記電池集合体が、一以上の二次電池セルを収納する電池ホルダを備える電池パック。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の電池パックであって、
前記電池集合体が、複数枚の二次電池セルを積層され、底面を正方形状とする直方体状に形成されると共に、
前記収納ケースが、前記電池集合体を収納可能な箱状に形成され、
かつ前記収納ケースが、前記電池集合体を収納する際の姿勢を、所定の向きとなるように規制する姿勢規制部を備えてなる電池パック。
【請求項12】
請求項11に記載の電池パックであって、
前記姿勢規制部が、前記収納ケースの内部において、対向する面にそれぞれ設けられた深さ方向に延長された一対のリブで構成されてなる電池パック。
【請求項13】
電池パックの製造方法であって、
一以上の二次電池セルを有する電池集合体を準備する工程と、
前記電池集合体を、一端を開口端とする収納ケースに収納した状態で、前記収納ケースの開口端を閉塞するケース蓋部の裏面側と、前記電池集合体とを可撓性基板で接続する工程と、
前記電池集合体と前記ケース蓋部との間に介在する前記可撓性基板による反力に抗して、前記ケース蓋部を前記電池集合体に接触させる姿勢に、仮止め機構で保持する工程と、
前記ケース蓋部と前記収納ケースとの接合面を接合すると共に、前記仮止め機構の仮止め状態を解除する工程と、
を含む電池パックの製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の電池パックの製造方法であって、
前記ケース蓋部と前記収納ケースとの接合面が超音波溶着されてなる電池パックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パック及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池パックは収納ケース内に、一以上の二次電池セルを積層した電池集合体を挿入して、ケース蓋部を閉塞するよう超音波溶着される。この際に、電池集合体の出力をケース外部から取り出せるよう、コネクタを設ける。このため、ケース蓋部と電池集合体とは、フレキシブルプリント基板等の可撓性基板で接続されることがある。
【0003】
しかしながら、この構成においてはケース蓋部が電池集合体と可撓性基板との間に介在されることで、可撓性基板の反力によってケース蓋部が浮き上がってしまうことがあった。この状態では超音波溶着を行うことができず、組み立て作業の支障となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-119248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的の一は、ケースの溶着の組み立て作業をスムーズに行い得る電池パック及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明の第1の形態に係る電池パックによれば、一以上の角型の二次電池セルを有する電池集合体と、一端を開口端とし、前記電池集合体を収納する収納ケースと、前記収納ケースに前記電池集合体を収納した状態で、前記収納ケースの開口端を閉塞するケース蓋部と、前記収納ケースの内部において、前記ケース蓋部の裏面側と前記電池集合体とを接続する可撓性基板と、を備える電池パックであって、前記電池集合体及びケース蓋部は、該電池集合体とケース蓋部との間に介在する前記可撓性基板による反力に抗して、該ケース蓋部を電池集合体に接触させる姿勢に保持可能な仮止め機構を設けており、前記仮止め機構は、前記ケース蓋部と収納ケースとの接合面が接合された状態で、仮止め状態を解除されるよう構成できる。上記構成により、ケース蓋部と収納ケースとを溶着する際、ケース蓋部を仮止め機構で仮止めすることが可能となり、仮止めされた状態で溶着作業を行えると共に、溶着されると仮止め機構を解除することで、仮止め機構に負荷が掛かって破損される等の事態を回避できる。
【0007】
また、第2の形態に係る電池パックによれば、上記構成に加えて、前記仮止め機構が、前記ケース蓋部と収納ケースとの接合面が部分的に溶着されて該ケース蓋部と収納ケースとの間の隙間が狭くなることにより、係合状態が解除されるよう構成できる。
【0008】
さらに、第3の形態に係る電池パックによれば、上記何れかの構成に加えて、前記ケース蓋部と収納ケースとの接合面が、いずれか一方の接合面に形成された凸条と、いずれか他方の接合面に形成された、前記凸条を挿入する凹条で構成できる。
【0009】
さらにまた、第4の形態に係る電池パックによれば、上記何れかの構成に加えて、前記仮止め機構が、前記電池集合体又はケース蓋部のいずれか一方に形成され、前記電池集合体とケース蓋部との間に介在する前記可撓性基板による反力の方向と交差する方向に係止面を有する爪部と、前記電池集合体又はケース蓋部のいずれか他方に形成され、前記爪部の係止面と係合される段差面を有する段差部で構成できる。
【0010】
さらにまた、第5の形態に係る電池パックによれば、上記何れかの構成に加えて、前記爪部が一対、離間して対向する姿勢に設けられ、前記対向する一対の爪部の間に、前記可撓性基板が配置されるように構成することができる。上記構成により、可撓性基板を挟んで両側から爪部で係止することにより、可撓性基板の反力によるケース蓋部の浮き上がりを効果的に防止することができる。
【0011】
さらにまた、第6の形態に係る電池パックによれば、上記何れかの構成に加えて、前記爪部の係止面の方向を、前記凸条の突出方向と交差させることができる。上記構成により、凸条が溶着によって短くなるにつれて、段差面が凸条の突出方向に沿って相対的に移動されて、爪部との係合状態を解除することができる。
【0012】
さらにまた前記ケース蓋部と収納ケースとの接合面を超音波溶着することができる。
【0013】
さらにまた、第の形態に係る電池パックによれば、上記何れかの構成に加えて、前記ケース蓋部が、外部の電力供給対象機器と接続するための外部コネクタを備えており、前記可撓性基板の一端を、前記外部コネクタに接続することができる。
【0014】
さらにまた、第の形態に係る電池パックによれば、上記何れかの構成に加えて、前記ケース蓋部が、スリットを開口しており、前記外部コネクタを、前記スリットを通して前記ケース蓋部から表出させることができる。
【0015】
さらにまた、第の形態に係る電池パックによれば、上記何れかの構成に加えて、前記電池集合体が、前記ケース蓋部と対向する面に、回路基板を備えており、前記可撓性基板の他端を、前記回路基板に接続することができる。
【0016】
さらにまた、第10の形態に係る電池パックによれば、上記何れかの構成に加えて、前記電池集合体が、一以上の二次電池セルを収納する電池ホルダを備えることができる。
【0017】
さらにまた、第11の形態に係る電池パックによれば、上記何れかの構成に加えて、前記電池集合体が、複数枚の二次電池セルを積層され、底面を正方形状とする直方体状に形成されると共に、前記収納ケースが、前記電池集合体を収納可能な箱状に形成され、かつ前記収納ケースが、前記電池集合体を収納する際の姿勢を、所定の向きとなるように規制する姿勢規制部を備えることができる。上記構成により、底面を正方形状とする直方体状の電池集合体は、収納ケースに収納する際の向きが4方向のいずれかとなる問題を、姿勢規制部によって一律の姿勢に規定することが可能となる。
【0018】
さらにまた、第12の形態に係る電池パックによれば、上記何れかの構成に加えて、前記姿勢規制部が、前記収納ケースの内部において、対向する面にそれぞれ設けられた深さ方向に延長された一対のリブで構成することができる。
【0019】
さらにまた、第13の形態に係る電池パックの製造方法によれば、一以上の角型の二次電池セルを有する電池集合体を準備する工程と、前記電池集合体を、一端を開口端とする収納ケースに収納した状態で、前記収納ケースの開口端を閉塞するケース蓋部の裏面側と、前記電池集合体とを可撓性基板で接続する工程と、前記電池集合体とケース蓋部との間に介在する前記可撓性基板による反力に抗して、前記ケース蓋部を電池集合体に接触させる姿勢に、仮止め機構で保持する工程と、前記ケース蓋部と収納ケースとの接合面を接合すると共に、前記仮止め機構の仮止め状態を解除する工程とを含むことができる。これにより、ケース蓋部と収納ケースとを溶着する際、ケース蓋部を仮止め機構で仮止めすることが可能となり、仮止めされた状態で溶着作業を行えると共に、溶着されると仮止め機構を解除することで、仮止め機構に負荷が掛かって破損される等の事態を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態1に係る電池パックを示す外観斜視図である。
図2図1の電池パックの収納ケースとケース蓋部を分離した状態を示す分解斜視図である。
図3図1の電池パックのIII-III線における垂直断面図である。
図4図1の収納ケースのIV-IV線における水平断面図である。
図5図5Aはケース蓋部を斜め下方から見た斜視図であり、図5Bは要部拡大斜視図である。
図6図1に係る電池パックの分解斜視図である。
図7図2の電池集合体を背面側から見た斜視図である。
図8図7の電池集合体の分解斜視図である。
図9図2のケース蓋部から外部コネクタを分離した状態を示す斜視図である。
図10】ケース蓋部を裏面側から見た斜視図である。
図11図10のケース蓋部を電池集合体に接続する様子を示す分解斜視図である。
図12図11のケース蓋部を折り返して電池集合体に被せる状態を示す斜視図である。
図13】電池ホルダの要部拡大斜視図である。
図14図3の電池パックにおいて、超音波溶着前の状態を示す断面図である。
図15図14の電池パックの要部拡大断面図である。
図16図3の電池パックの要部拡大断面図である。
図17】実施形態2に係る電池パックを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一若しくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施形態1)
【0022】
実施形態1に係る電池パックを図1図5Bに示す。これらの図において、図1は実施形態1に係る電池パック100を示す外観斜視図、図2図1の電池パック100の収納ケース30とケース蓋部20を分離した状態を示す分解斜視図、図3図1の電池パック100のIII-III線における断面図、図4図1の収納ケース30のIV-IV線における水平断面図、図5Aはケース蓋部20を斜め下方から見た斜視図、図5Bは要部拡大斜視図を、それぞれ示している。これらの図に示す電池パック100は、外観を箱形とし、内部に一以上の二次電池セル1を収納している。箱形の収納ケース30は、図1図3に示すようにその一面(図において正面)に、外部の電力供給対象機器に接続して電力を供給するための外部コネクタ26を設けている。また電池パック100は、図2の分解斜視図に示すように、一端を開口する箱状の収納ケース30と、収納ケース30の開口端を閉塞するケース蓋部20と、収納ケース30に収納される電池集合体10とを備える。収納ケース30とケース蓋部20は、絶縁性や断熱性に優れた材質、例えば樹脂製とする。
(収納ケース30)
【0023】
収納ケース30は、図2に示すように外形を縦長の長方形状として、上方の端縁を開口している。またケース蓋部20は、収納ケース30の開口端を閉塞する大きさ及び形状の箱形としている。具体的には、下端側を開口した有底箱形で、その高さを底面の一辺よりも小さくした薄型としている。また収納ケース30及びケース蓋部20とも、底面の形状を等しくしている。この例では図4等に示すように底面形状を正方形状とし、隅部を適宜面取りしている。
(外部コネクタ26)
【0024】
さらにケース蓋部20の上面には、図2図5A等に示すようにスリット22を設け、このスリット22から外部コネクタ26を突出させている。外部コネクタ26は、収納ケース30に収納される電池集合体10の上面に設けられる。外部コネクタ26は、ケース蓋部20のスリット22を通じて収納ケース30内部側から外部に向かって突出している。また外部コネクタ26は、ケース蓋部20の裏面側からスリット22を通過できる大きさに形成される。この外部コネクタ26の下端は、外形をスリット22よりも大きくして、スリット22から外部コネクタ26が抜け落ちないようにしている。なお外部コネクタ26は、ケース蓋部20に固定する構成に限らず、スリットの内面と摺動自在とする構成としてもよい。
【0025】
また収納ケース30とケース蓋部20は、超音波溶着によって溶着される。このため収納ケース30とケース蓋部20の接合面には、接合のための構造、例えばいずれか一方の接合面に凸条21を、他方の接合面に凹条31を、それぞれ形成して、凸条21を凹条31に挿入して超音波溶着する。図3等の例では、ケース蓋部20の接合面に、凸条21を形成している。凸条21の先端面は、超音波溶着され易いよう、断面形状を先細りとしている。また収納ケース30側には、この凸条21に応じた凹条31が形成されている。なお、凸条21と凹条31は、図3や後述する図15等の例では凸条21を壁状とし、凹条31を溝状としているが、この構成に限らず、例えば係合面を階段状としたり、凸条を断面視三角形状とするなど、超音波溶着可能な任意の形状とすることもできる。また、凸条を収納ケース側に、凹条をケース蓋部側に設けてもよい。
【0026】
図6図9に、電池パック100の内部構造を示す。これらに図において、図6図1に係る電池パック100の分解斜視図、図7図2の電池集合体10を背面側から見た斜視図、図8図7の電池集合体10の分解斜視図、図9図2のケース蓋部20から外部コネクタ26を分離した状態の斜視図を、それぞれ示している。
(電池集合体10)
【0027】
電池集合体10は、一以上の二次電池セル1を有する。二次電池セル1は、外装缶を角型としている。角型の外装缶は、幅よりも厚さを薄くした板状に構成され、複数枚の積層に適した外形としている。この二次電池セル1は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等が利用できる。また外装缶は角型の金属ケースとする他、円筒型の金属ケース、ラミネート樹脂等としてもよい。
(電池ホルダ12)
【0028】
二次電池セル1は、電池ホルダ12に収納される。図6図9等に示す電池集合体10は、6個の二次電池セル1を電池ホルダ12に収納している。電池ホルダ12は、箱形に形成されて一面を開口しており、この開口面から二次電池セル1を差し込んで保持できるように内部を区画されている。なお図6の例では、電池ホルダ12の底面側も開口されている。一方天面側は、回路基板を配置するために閉塞されている。
【0029】
また二次電池セル1同士の間に、スペーサ2を配置する空間を設けている。スペーサ2は、隣接する二次電池セル1同士の間に介在されて、これらを絶縁する部材である。このようなスペーサ2には樹脂製シート等が用いられる。また、スペーサ2は、電池ホルダに12と一体化されていても良い。
【0030】
さらに二次電池セル1同士は、リード板3を介して直列又は並列に電気的に接続される。さらに必要に応じてブレーカやPTC等の保護素子4が接続される。
【0031】
電池ホルダ12の上面、すなわち電池集合体10がケース蓋部20と対向する面には、回路基板50が配置される。回路基板50は、二次電池セル1と電気的に接続されて、充放電を行う充放電回路や保護回路等を実装している。
(姿勢規制部)
【0032】
この電池ホルダ12は、収納ケース30の形状に応じて、収納ケース30内に収納できる大きさ及び形状に設計される。上述の通り、収納ケース30の底面を正方形状としたことで、これに応じて電池ホルダ12も、底面を正方形状とする直方体状に形成している。この場合、電池パック100の組み立て時に、電池集合体10を収納ケース30に収納する際、意図しない姿勢に回転する可能性がある。そこで、電池集合体10を収納ケース30に収納する際の姿勢を、所定の向きとなるように規制する姿勢規制部を設ける。姿勢規制部は、図6の分解斜視図及び図4の水平断面図に示すように、収納ケース30の内面にリブ32を突出させて、電池ホルダ12の、二次電池セル1を挿入する側の端面と当接するように構成している。リブ32は、収納ケース30の内部において、対向する面にそれぞれ設けられた深さ方向に延長された一対のリブ32で構成することが好ましい。これにより、収納ケース30に収納可能な電池ホルダ12の向きを一義的に規定でき、他の姿勢では挿入不可能として、組立時に収納ケース30の内部で電池集合体10が異なる向きに挿入される事態を回避できる。
(可撓性基板40)
【0033】
また収納ケース30の内部において、ケース蓋部20の裏面側と電池集合体10とが、可撓性基板40で接続されている。可撓性基板40は、柔軟性を有する材質で構成される。好適には、絶縁性を有する薄くて柔軟なフィルム素材(例えばポリイミド等)と銅箔等の導電性金属を貼り合わせた基材に電気回路を形成した基板、例えばFPC等が利用できる。可撓性基板40は、一方向延長された帯状に形成される。図6図8の例では、U字状に折曲させた帯状の端部を折曲している。このように可撓性基板40を長く形成することで、組立時の作業性を向上させている。ただ、可撓性基板の長さはこのような長尺に限らず、短くしても良い。
【0034】
これら図6図8に示すように、可撓性基板40の一端は、外部コネクタ26に接続され、他端は回路基板50に接続されている。外部コネクタ26は、図10に示すように、ケース蓋部20の裏面側で、ケース蓋部20と固定される。ここでは、可撓性基板40の一端と接続した外部コネクタ26を、ケース蓋部20の裏面側からスリット22に通した状態で、可撓性基板40の一端を、裏面側から端子ホルダ28で押圧するよう、ネジ27を用いて固定する。端子ホルダ28は、可撓性基板40の一端を押圧できるよう平板状に形成され、両端にねじ穴を開口している。また端子ホルダ28を金属板などの導電性部材で構成する場合は、端子ホルダ28と可撓性基板40との間に、絶縁性のスペーサ材29を介在させる。
【0035】
一方、可撓性基板40の他端は、回路基板50に接続されている。回路基板50は、図11図12等に示すように、可撓性基板40の他端を挿入するための内部コネクタ52を実装している。また、加工上、回路基板に実装された内部コネクタを用いて接合しているが、回路基板に直接半田付けにより可撓性基板を接合させても良い。
【0036】
この可撓性基板40は、可撓性を有することから、折曲可能であるものの、折曲状態から元の状態に復元しようとする応力が働く。ここで、外部コネクタ26と接続された可撓性基板40は、復元力によって外部コネクタ26を押し上げようとする。この結果、ケース蓋部20のスリット22を通じて収納ケース30内部側から外部に表出された外部コネクタ26の下端が、ケース蓋部20を押し上げる格好となる。この状態では、ケース蓋部20を収納ケース30と溶着する際、ケース蓋部20の位置決め阻害される。すなわち、ケース蓋部20を収納ケース30の開口面に載せた状態では、可撓性基板40の反力によってケース蓋部20が浮いた状態となってしまい、ケース蓋部20と収納ケース30との接合面が離れた状態となって、溶着ができなくなる。溶着に超音波溶着を用いる場合は、溶着時に接合面を重ね合わせた状態に維持する必要がある。また治具を用いて固定する方法もあるが、治具を別途用意したり、治具のセットなどの手間がかかる。
(仮止め機構)
【0037】
そこで本実施形態においては、ケース蓋部20を電池集合体10に接触させる姿勢に保持可能な仮止め機構を設けている。仮止め機構によって、電池集合体10とケース蓋部20の接合面を、電池集合体10とケース蓋部20の間に介在する可撓性基板40による反力に抗して、接触させた姿勢に維持することが可能となる。一方で仮止め機構は、ケース蓋部20と収納ケース30との接合面が接合された状態では、仮止め状態を解除されるよう構成している。このようにすることで、ケース蓋部20と収納ケース30とを溶着する際には、ケース蓋部20を仮止め機構で仮止めすることが可能となり、仮止めされた状態で溶着作業を行える一方で、溶着されると仮止め機構を解除することで、電池パック100の使用時に仮止め機構に負荷が掛かって破損される等の事態を回避できる。
【0038】
このような仮止め機構の一例を、図5B図13図16に示す。これらの図において、図13は電池ホルダ12の要部拡大斜視図、図14図3の電池パック100において、超音波溶着前の状態を示す断面図、図15図14の電池パック100の要部拡大断面図、図16図3の電池パック100の要部拡大断面図を、それぞれ示している。これらの図に示す仮止め機構は、電池ホルダ12の上面に形成された爪部14と、ケース蓋部20の内面に形成された段差部24で構成される。爪部14は、電池集合体10とケース蓋部20との間に介在する可撓性基板40による反力の方向と交差する方向に係止面15を有している。また段差部24は、この爪部14の係止面15と係合される段差面25を有している。
(段差部24)
【0039】
段差部24は、図5Bに示すように、蓋部の内面、具体的には蓋部の底面から延長された垂直壁の内面に、コ字状に開口されている。コ字状に開口された開口面の底面が、段差面25となる。段差部24は、少なくとも2つ以上設けられる。好ましくは、対向する2辺にそれぞれ設ける。これにより、電池ホルダ12の両側でケース蓋部20を仮止めできる。
(爪部14)
【0040】
爪部14は、図13に示すように、電池ホルダ12の上面において、周囲側に配置されて、上面側に突出するように設けられる。爪部14は、好ましくは電池ホルダ12と一体に形成される。例えば樹脂成形される爪部14は弾性変形することで、段差部24との係合や解除が可能となる。爪部14も、電池ホルダ12の上面で、段差部24と対応する部位に設けられる。爪部14も少なくとも2箇所に設けられ、好ましくは対向する2辺にそれぞれ設ける。この場合、爪部14が設けられた対向する2辺の間に可撓性基板40が配置される。すなわち、対向する2辺は、可撓性基板40の反力の方向と交差するような位置となる構造である。このような構造とすることで、可撓性基板40の反力によるケース蓋部20の浮き上がりを効果的に防止することができる。また爪部14は、裏面側に形成される係止面15が水平方向に伸びるよう、電池ホルダ12から上方に突出させた先端から、外側すなわち電池ホルダ12の周囲方向に向かって斜めに傾斜させている。これにより、図14に示すようにケース蓋部20を収納ケース30の上面から押し当てて、蓋部の内面、具体的には蓋部の底面から延長された垂直壁の内面に開口された段差部24に、爪部14の突起を係止させ易くできる。
【0041】
爪部14と段差部24の係合による仮止めは、図15に示すように、ケース蓋部20と収納ケース30との溶着が行われる前の状態で可能となる。いいかえると、ケース蓋部20と収納ケース30との溶着が行われた後では、係合が解かれて仮止めが解除されるように予め設計される。このような仮止め機構の、溶着後の自動解除機能を実現するため、ケース蓋部20と収納ケース30との接合面が部分的に溶着されて、これらケース蓋部20と収納ケース30との間の隙間が狭くなると、係合状態が解除されるように構成している。すなわち、ケース蓋部20と収納ケース30との接合面に形成された凸条21が凹条31に挿入されて当接された状態で、爪部14と段差部24の係合が成立する。いいかえると、ケース蓋部20と収納ケース30との接合面における隙間D1が確保されている状態で、係合が成立するように、爪部14や段差部24の大きさや形状が予め設計される。そして、超音波溶着により凸条21が溶融されて徐々に隙間が小さくなると、これに連れて爪部14と段差部24とが徐々に離間される。図16に示すように、ケース蓋部20と収納ケース30とが接合された状態での隙間D2に至った状態では、爪部14と段差部24とが距離D1-D2だけ離間されて、仮止め状態が解除される。この結果、電池ケースが完成して使用される段階では、爪部14と段差部24が接触していないことから、この部分に負荷が掛からず、経年劣化や衝撃等でこれらが破損する事態が回避される。言い換えると、ケース蓋部20と収納ケース30の溶着時にのみ仮止めできる強度であれば足りるので、簡単な係合で仮止め機構を構成でき、電池パック100が組み上がった後は仮止めを解除させることで、電池パックの信頼性には影響を与えないようにできる。
【0042】
図15の例では、段差部24の段差面25と、凸条21の突出方向とを略直交させている。これにより、凸条21が溶着によって短くなるにつれて、段差面25が凸条21の突出方向に沿って移動するため、爪部14との相対的な距離を効率良く変化させることができる。
【0043】
なお、以上の例では、爪部14を電池ホルダ12側に、段差部24をケース蓋部20側に、それぞれ形成して仮止め機構を構成しているが、本発明はこの構成に限らず、爪部をケース蓋部側に、段差部を電池ホルダ側に、それぞれ形成してもよい。同様にケース蓋部と収納ケースとの接合面についても、以上の例ではケース蓋部側に凸条21を、収納ケース側に凹条31を、それぞれ形成しているが、この構成に限らずケース蓋部側に凹条を、収納ケース側に凸条を、それぞれ形成してもよい。
(電池パック100の製造方法)
【0044】
以上の電池パック100の製造方法を説明する。まず、一以上の角型の二次電池セル1を有する電池集合体10を準備する。次に電池集合体10を、一端を開口端とする収納ケース30に収納した状態で、収納ケース30の開口端を閉塞するケース蓋部20の裏面側と、電池集合体10とを可撓性基板40で接続する。さらに、電池集合体10とケース蓋部20との間に介在する可撓性基板40による反力に抗して、ケース蓋部20を電池集合体10に接触させる姿勢に、仮止め機構で保持する。収納ケース30とケース蓋部20とが仮止め機構で仮止めされた状態では、非溶着状態にある該収納ケース30とケース蓋部20との間に隙間が形成される。
【0045】
そして、ケース蓋部20と収納ケース30との接合面を接合すると共に、仮止め機構の仮止め状態を解除する。ここでは、ケース蓋部20と収納ケース30との接合面には、凸条21と凹条31とが設けられている。仮止め機構で仮止めされた収納ケース30とケース蓋部20とを、凸条21と凹条31とを超音波溶着により溶着する。このように、収納ケース30とケース蓋部20とが溶着された状態では、該収納ケース30とケース蓋部20との間が、隙間よりも幅狭にされると共に、仮止め機構は非係合状態とされる。これにより、ケース蓋部20と収納ケース30とを溶着する際、仮止め機構で仮止めが可能となり、仮止めされた状態で溶着作業を行えると共に、溶着されると仮止め機構を解除することで、仮止め機構に負荷が掛かって破損される等の事態を回避できる。
【0046】
以上のように仮止め機構を設けたことで、ケース蓋部20と収納ケース30とを溶着する際には、仮止め機構でこれらの仮止めが可能となる。特にケース蓋部側が電池集合体と可撓性基板で接続されている場合は、可撓性基板が復元しようとする反力によってケース蓋部の位置決めが阻害され、ケース蓋部と収納ケースとの溶着に際して支障となる問題があった。これに対して、仮止め機構でケース蓋部を仮止め可能としたことで、溶着をスムーズに行え、作業性が向上する利点が得られる。また、仮止めされた状態で溶着作業を行いつつ、溶着されると仮止め機構を解除するようにしたことで、電池パック100の使用時に仮止め機構に負荷が掛かって破損される等の事態を回避できる。
(実施形態2)
【0047】
以上の例では、電池集合体として6枚の角型の二次電池セルを積層した構成について説明したが、本発明は二次電池セルの数をこれに限定せず、7枚以上、あるいは5枚以下としてもよい。例えば図17の断面図に示す実施形態2に係る電池パック200のように、二次電池セル1を1枚とすることもできる。この図において、上述した実施形態1と同様の部材については同じ符号を付して、詳細説明を省略する。このように、二次電池セルの数に応じて、電池ホルダや外装ケースなどの大きさや形状を変更することで、異なる容量の電池パックを構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る電池パック及びその製造方法は、アシスト自転車や電動バイク、電動カート等の動力用、あるいは携帯型の電子機器、例えばスマートフォンやタブレット、音楽プレーヤやカメラ等の電源として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0049】
100、200…電池パック
1…二次電池セル
2…スペーサ
3…リード板
4…保護素子
10…電池集合体
12…電池ホルダ
14…爪部
15…係止面
20…ケース蓋部
21…凸条
22…スリット
24…段差部
25…段差面
26…外部コネクタ
27…ネジ
28…端子ホルダ
29…スペーサ材
30…収納ケース
31…凹条
32…リブ
40…可撓性基板
50…回路基板
52…内部コネクタ
図1
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