(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】車両の空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
B60H1/34 671A
B60H1/34 651A
B60H1/34 651B
B60H1/34 671B
B60H1/34 611Z
(21)【出願番号】P 2017172638
(22)【出願日】2017-09-08
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 敦司
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 洋直
(72)【発明者】
【氏名】水野 多香子
(72)【発明者】
【氏名】小川 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】田村 芳規
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-186152(JP,A)
【文献】特開2002-130755(JP,A)
【文献】特開昭58-022709(JP,A)
【文献】特開2010-013063(JP,A)
【文献】実開昭59-032507(JP,U)
【文献】特開2016-044963(JP,A)
【文献】特開2017-144864(JP,A)
【文献】特開昭62-286824(JP,A)
【文献】特開2015-098318(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0140915(US,A1)
【文献】実開昭53-092851(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室に乗った乗員が着座するシートの周囲に設けられ、両端の開口部が前記車室内に位置する連通路と、
前記連通路の内部で空気を流す強制送風装置と、
を有し、
前記連通路は、前記車室内に前後に配列された複数の前記シートの内の前側のシートの背面部において上下方向に沿って設けられ、一方の前記開口部が少なくとも前記シートの座面より高い位置において後側のシートへ向くように開口し、他方の前記開口部が車室内の床面近くに開口し、
前記強制送風装置は、暖房動作中又は冷房動作中に、前記連通路内での空気の流動方
向を繰り返し変化させ
、
前記車室内の暖房が開始された場合、下側の前記開口部から吸い込んだ空気を上側の前記開口部から吐き出す時間または量を、上側の前記開口部から吸い込んだ空気を下側の前記開口部から吐き出す時間または量より大きくし、
前記車室内の暖房が進んだ場合、双方の時間または量の差を小さくする、
車両の空調装置。
【請求項2】
車両の車室に乗った乗員が着座するシートの周囲に設けられ、両端の開口部が前記車室内に位置する連通路と、
前記連通路の内部で空気を流す強制送風装置と、
を有し、
前記連通路は、前記車室内のダッシュボードにおいて上下方向に沿って、一方の前記開口部が少なくとも前記シートの座面より高い位置において前記車室内の最前列のシートへ向くように開口し、他方の前記開口部が車室内の床面近くに開口し、
前記強制送風装置は、暖房動作中又は冷房動作中に、前記連通路内での空気の流動方
向を繰り返し変化させ
、
前記車室内の暖房が開始された場合、下側の前記開口部から吸い込んだ空気を上側の前記開口部から吐き出す時間または量を、上側の前記開口部から吸い込んだ空気を下側の前記開口部から吐き出す時間または量より大きくし、
前記車室内の暖房が進んだ場合、双方の時間または量の差を小さくする、
車両の空調装置。
【請求項3】
車両の車室に乗った乗員が着座するシートの周囲に設けられ、両端の開口部が前記車室内に位置する連通路と、
前記連通路の内部で空気を流す強制送風装置と、
を有し、
前記連通路は、前記車室内に前後に配列された複数の前記シートの内の前側のシートの背面部において上下方向に沿って設けられ、一方の前記開口部が少なくとも前記シートの座面より高い位置において後側のシートへ向くように開口し、他方の前記開口部が車室内の床面近くに開口し、
前記強制送風装置は、暖房動作中又は冷房動作中に、前記連通路内での空気の流動方
向を繰り返し変化させ
、
前記車室内の冷房が開始された場合、上側の前記開口部から吸い込んだ空気を下側の前記開口部から吐き出す時間または量を、下側の前記開口部から吸い込んだ空気を上側の前記開口部から吐き出す時間または量より大きくし、
前記車室内の冷房が進んだ場合、双方の時間または量の差を小さくする、
車両の空調装置。
【請求項4】
車両の車室に乗った乗員が着座するシートの周囲に設けられ、両端の開口部が前記車室内に位置する連通路と、
前記連通路の内部で空気を流す強制送風装置と、
を有し、
前記連通路は、前記車室内のダッシュボードにおいて上下方向に沿って、一方の前記開口部が少なくとも前記シートの座面より高い位置において前記車室内の最前列のシートへ向くように開口し、他方の前記開口部が車室内の床面近くに開口し、
前記強制送風装置は、暖房動作中又は冷房動作中に、前記連通路内での空気の流動方
向を繰り返し変化させ
、
前記車室内の冷房が開始された場合、上側の前記開口部から吸い込んだ空気を下側の前記開口部から吐き出す時間または量を、下側の前記開口部から吸い込んだ空気を上側の前記開口部から吐き出す時間または量より大きくし、
前記車室内の冷房が進んだ場合、双方の時間または量の差を小さくする、
車両の空調装置。
【請求項5】
前記強制送風装置は、暖房動作中又は冷房動作中に、前記連通路内での空気の流動方
向を繰り返し逆転させる、
請求項1または請求項2記載の車両の空調装置。
【請求項6】
上側の前記開口部の上側において前記車室を上下に仕切る仕切り部材を、有する、
請求項1から5のいずれか一項記載の車両の空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば自動車といった車両の車室において、シートに着座した乗員の近くで空調を行う空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車といった車両では、運転手を含む乗員が乗車する車室内を暖房または冷却するために車室空調装置が用いられている。
また、直射日光にさらされる自動車においては、車室内を暖房または冷却するために、その空間と比べて性能が高い車室空調装置が使用されることが一般的である。
その結果、車室空調装置のコンプレッサなどを動作させるために大量の電力などを使用する必要がある。
このことは、電気を動力として用いる自動車においては燃費性能に直接的に影響することになる。(特許文献1、2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭57-205212号公報
【文献】特開昭58-022709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように高性能な車室空調装置を用いたとしても、空調空気の車室内への吹出口は、ダッシュボードの裏側や上部に限られる。特許文献1、2においてもステアリングコラムの上側に車室空調装置の吹出口を追加しているだけである。
このため、シートに着座した乗員のたとえば腿部などは、車室空調装置から吹き出す空気流を直接当てて冷却し難い。
特に、後側のシートにあっては、前側のシートの下に設けられた床面の吹出口やセンターコンソールの後面の吹出口といった低い位置にのみ吹出口が設けられることが一般的であり、前側のシートより冷却がし難い。車室の温度が全体的に適温にならないと、シートに着座した乗員のたとえば腿部などを好適に冷却できるようになり得ない。
【0005】
しかも、車室空調装置は、車室の空間の温度を全体的に適温にするようにコントロールするものであるため、シートに着座した乗員の周囲では、空調が進んだ状態であっても好適な温度に調温され難い箇所が生じ得る。
たとえば座面との接触する腿部などは、その周囲の温度が調温され難い。
また、後側のシートにおいては着座した乗員の周囲の温度が全体的に好適な温度に均一化されることが難しい。
【0006】
このように、車両では、シートに着座した乗員の周囲の温度を均一化させて乗員の快適性を改善することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両の空調装置は、車両の車室に乗った乗員が着座するシートの周囲に設けられ、両端の開口部が前記車室内に位置する連通路と、前記連通路の内部で空気を流す強制送風装置と、を有し、前記強制送風装置は、連続した動作中に、前記連通路内での空気の流動方向を繰り返し変化させる。
【0008】
好適には、前記強制送風装置は、連続した動作中に、前記連通路内での空気の流動方向を繰り返し逆転させる、とよい。
【0009】
好適には、前記連通路は、前記車室内において上下方向に沿って設けられ、一方の前記開口部が他方の前記開口部より高い位置にずれて設けられる、とよい。
【0010】
好適には、一方の前記開口部は、車室内の床面近くに設けられ、他方の前記開口部は、少なくとも前記シートの座面より高い位置に設けられる、とよい。
【0011】
好適には、前記連通路は、前記車室内に前後に配列された複数の前記シートの内の前側のシートにおいて、上側の前記開口部が後側のシートへ向くように設けられる、とよい。
【0012】
好適には、前記連通路は、前記車室内のダッシュボードにおいて、上側の前記開口部が前記車室内の最前列のシートへ向くように設けられる、とよい。
【0013】
好適には、前記強制送風装置は、前記車室内の暖房が開始された場合、下側の前記開口部から吸い込んだ空気を上側の前記開口部から吐き出す時間または量を、上側の前記開口部から吸い込んだ空気を下側の前記開口部から吐き出す時間または量より大きくし、前記車室内の暖房が進んだ場合、双方の時間または量の差を小さくする、とよい。
【0014】
好適には、前記強制送風装置は、前記車室内の冷房が開始された場合、上側の前記開口部から吸い込んだ空気を下側の前記開口部から吐き出す時間または量を、下側の前記開口部から吸い込んだ空気を上側の前記開口部から吐き出す時間または量より大きくし、前記車室内の冷房が進んだ場合、双方の時間または量の差を小さくする、とよい。
【0015】
好適には、上側の前記開口部の上側において前記車室を上下に仕切る仕切り部材を、有する、とよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、車両の車室に乗った乗員が着座するシートの周囲に連通路が設けられ、その連通路の両端の開口部は車室内に位置する。そして、連通路の内部で空気を流す強制送風装置は、連続した動作中に、連通路内での空気の流動方向を繰り返し変化させる。たとえば流動方向を繰り返し逆転させる。
よって、連通路からの空気流が供給されるシートの周囲の箇所では、流動方向が繰り返し変化する空気流が供給される。これにより、連通路からの空気流が供給されるシートの周囲の箇所は、好適に調温され得る。乗員の快適性が改善され得る。
これに対して、常に一定の方向の空気流を供給した場合、開口部に対応する当該箇所では一定の空気流が生じ続けるので、経時的に過度に加温または冷却され得る。この場合、空気流により最初の快適性を改善できるものの、長期的には局所的な加温または冷却が生じて乗員の快適性が損なわれてしまう。
また、連通路は、その両端が車室内に位置するので、車室内の空気を循環するだけである。よって、車室空調装置による車室内全体の空調機能を損なうことなく、シートに着座した乗員の周囲の温度を好適な温度に平準化または均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動車の模式的な説明図である。
【
図2】
図2は、
図1の車室空調装置の要部構成の説明図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る車両の空調装置の要部構成の説明図である。
【
図4】
図4は、暖房時の流動方向の逆転運転の一例を示す制御フローチャートである。
【
図5】
図5は、冷房時の流動方向の逆転運転の一例を示す制御フローチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る車両の空調装置の要部構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動車1の模式的な説明図である。
【0020】
図1の自動車1の車体は、乗員が乗車する車室2と、その前後に配置される前室3および後室4と、を有する。車室2には、乗車した乗員が着座するシート5が前後二列で設けられる。また、前右のシート5の前には、ダッシュボード6が設けられる。
【0021】
図2は、
図1の車室空調装置10の要部構成の説明図である。
【0022】
図2の車室空調装置10は、温度センサ11、日射センサ12、湿度センサ13、車室空調制御部14、ブロアファン15、コンプレッサ16、エバボレータ17、ヒータ18、空調ダクト19、を有する。
温度センサ11は、車室2の温度を検出する。
日射センサ12は、ウィンドウガラスを通じて車室2へ照射される日射量を検出する。
湿度センサ13は、車室2の温度を検出する。
コンプレッサ16は、エバボレータ17および図示外のコンデンサと連結され、これらの間で冷媒を循環させる。
ブロアファン15、エバボレータ17、ヒータ18は、車室2に通じる空調ダクト19に配置される。空調ダクト19は、たとえば車室2外から吸気し、
図1に示すようにダッシュボード6の上部の吹出口20およびダッシュボード6の下側の吹出口20から車内へ空気を排気する。
ブロアファン15は、空調ダクト19内に空気流を生成する。
エバボレータ17は、冷媒により冷却され、空調ダクト19を通過する空気を冷却する。
ヒータ18は、空調ダクト19を通過する空気を加熱する。
車室空調制御部14には、温度センサ11、日射センサ12、湿度センサ13、ブロアファン15、コンプレッサ16、ヒータ18、が接続される。
車室空調制御部14は、温度センサ11、日射センサ12および湿度センサ13により検出された値と制御目標値との関係に応じて、ブロアファン15、コンプレッサ16およびヒータ18の動作を制御する。
これにより、車室空調装置10は、空調ダクト19の吹出口20から車室2へ、加熱または冷却された空気流を吹き出すことができる。そして、たとえば車室2の検出温度が目標温度になるように、車室2の全体の温度を制御する。
【0023】
ところで、このような車室空調装置10が設けられることにより、車室2の温度は適切に調整され得る。
特に、直射日光にさらされる自動車1においては、車室2を暖房または冷却するために、その空間と比べて性能が高い車室空調装置10が使用されることが一般的である。
その結果、車室空調装置10のコンプレッサ16などを動作させるために大量の電力などを使用する必要がある。このことは、たとえば電気を動力として用いる自動車1においては燃費性能に直接的に影響することになる。
しかしながら、このように高性能な車室空調装置10を用いたとしても、空調した空気の車室2への吹出口20は、ダッシュボード6の裏側や上部に限られる。
このため、シート5に着座した乗員のたとえば腿部などは、車室空調装置10から吹き出す空気流を直接当てて冷却し難い。
車室2の温度が全体的に適温にならないと、シート5に着座した乗員のたとえば腿部などを好適に冷却できるようになり得ない。
特に、後側のシート5にあっては、前側のシート5の下に設けられた床面の吹出口20やセンターコンソール7の後面の吹出口20といった低い位置の吹出口20のみが設けられることが一般的であり、前側のシート5より冷却がし難い。
【0024】
しかも、車室空調装置10は、車室2の空間の温度を全体的に適温にするようにコントロールするものであるため、シート5に着座した乗員の周囲では、空調が進んだ状態であっても好適な温度に調温され難い箇所が生じ得る。
たとえば座面との接触する腿部などは、その周囲の温度が調温され難い。
また、後側のシート5においては着座した乗員の周囲の温度が全体的に好適な温度に均一化されることが難しい。
【0025】
このように、自動車1では、シート5に着座した乗員の周囲の温度を均一化させて乗員の快適性を改善することが求められている。
【0026】
図3は、第1実施形態に係る個別空調装置30の要部構成の説明図である。
【0027】
図3の個別空調装置30は、両端に開口部が形成された連通路34、強制送風装置35、制御部38、を有する。また、
図3には、車室空調装置10の温度センサ11、日射センサ12、湿度センサ13、および車室空調制御部14と、タイマ39と、が図示されている。なお、個別空調装置30は、独自の温度センサ11、日射センサ12、湿度センサ13を有してもよい。
また、前列のシート5の横には、センターコンソール7が図示されている。センターコンソール7の後面には、吹出口20が形成されている。
【0028】
連通路34は、その両端の開口部が車室2内に位置するように、車室2に乗った乗員が着座するシート5の周囲に設けられる。
本実施形態では、連通路34は、前側のシート5の背面部において上下方向に沿って設けられる。これにより、上側の開口部32は、下側の開口部33より高い位置にずれて設けられる。
【0029】
下側の開口部33は、前側のシート5の座部の下面に開口する。これにより、下側の開口部33は、車室2の床面近くに開口する。
上側の開口部32は、前側のシート5の背部の後面に開口する。これにより、上側の開口部32は、後側のシート5の座面より高い位置において、後側のシート5へ向くように設けられる。
これにより、連通路34は、前側のシート5の座部の下側と前側のシート5の背部の後側との間に連通し、これらの間で車室2内の空気を流動させることになる。
【0030】
強制送風装置35は、連通路34の中央部分に設けられる。強制送風装置35のたとえばファンを回転させることにより、連通路34の内部で空気流が生成される。車内の空気は、強制送風装置35のファンの正逆の回転方向に応じて、下側の開口部33および上側の開口部32の一方から連通路34に吸気され、他方から排気される。
【0031】
制御部38には、温度センサ11、日射センサ12、湿度センサ13、車室空調制御部14、タイマ39、強制送風装置35、が接続される。
そして、制御部38は、車室2の温度、湿度、日射量、動作時間、および車室空調装置10の動作状態に応じて、強制送風装置35の動作を制御する。
具体的にはたとえば、制御部38は、連続した動作中に、連通路34内での空気の流動方向を繰り返し逆転させるように強制送風装置35の動作を制御する。
【0032】
図4は、暖房時の流動方向の逆転運転の一例を示す制御フローチャートである。
制御部38は、たとえば車室空調装置10が暖房運転を開始した場合、
図4の処理を開始する。
制御部38は、たとえば車室空調制御部14からの空調状態情報などに基づいて、暖房運転の開始を判断すればよい(ステップST1)。
そして、制御部38は、車室空調装置10が暖房運転を開始したと判断すると、強制送風装置35に流動方向の逆転運転を開始させる(ステップST2)。
強制送風装置35は、下側の開口部33から吸い込んだ空気を上側の開口部32から吐き出す上排気動作と、上側の開口部32から吸い込んだ空気を下側の開口部33から吐き出す下排気動作とを、切り替えて連続的に実行する。
【0033】
また、制御部38は、車室空調装置10が暖房運転を開始した直後においては、上排気動作の時間が下排気動作の時間より長くなるように、強制送風装置35に連続的な切り替え動作を実行させる(ステップST3)。
これにより、強制送風装置35は、車室空調装置10が前側のシート5の下側の吹出口20から吹き出した暖房空調された空気の一部を、後側のシート5に着座した乗員の膝、腿、上体の前へ優先的に吹き付けることができる。
しかも、上排気動作の時間を下排気動作の時間より長くしているので、上排気動作により吹き出された空気は、乗員の膝、腿、上体の周囲に残留でき、これらの周囲に滞留し易くなる。
なお、上排気動作と下排気動作との間に時間差をつけるのではなく、送風量の差をつけるようにしてもよい。
【0034】
このように強制送風装置35が上排気動作と下排気動作とを連続的に切り替えている間にも、車室空調装置10は車室2の暖房を継続している。
そして、車室2の暖房がたとえば目標温度に近づいて安定してくると、車室空調装置10は空調を弱める。たとえば吹き出す空気量を減らす。
制御部38は、たとえば空調が弱められたことに基づいて車室2の暖房が進んだことを検出すると(ステップST4)、強制送風装置35による上排気動作の時間と下排気動作の時間とを揃えるように、強制送風装置35の切り替え動作を変更する(ステップST5)。
制御部38は、たとえば車室空調制御部14からの空調状態情報などに基づいて、車室2の暖房が進んだことを判断すればよい。また、制御部38は、たとえば温度センサ11の検出温度に基づいて独自に車室2の暖房が進んだことを判断してもよい。
これにより、後側のシート5に着座した乗員の膝および腿の周りの空気と、シート5下の乗員の足先の周りの空気との間で、空気が強制的に循環できる。
その結果、乗員の下肢の周囲は、全体的に所望の快適な暖房温度に均一化され得る。部分的に暖められ難くなる。
【0035】
図5は、冷房時の流動方向の逆転運転の一例を示す制御フローチャートである。
制御部38は、たとえば車室空調装置10が冷房運転を開始した場合、
図4の処理を開始する。
制御部38は、たとえば車室空調制御部14からの空調状態情報などに基づいて、冷房運転の開始を判断すればよい(ステップST11)。
そして、制御部38は、車室空調装置10が冷房運転を開始したと判断すると、強制送風装置35に流動方向の逆転運転を開始させる(ステップST12)。
強制送風装置35は、下側の開口部33から吸い込んだ空気を上側の開口部32から吐き出す上排気動作と、上側の開口部32から吸い込んだ空気を下側の開口部33から吐き出す下排気動作とを、切り替えて連続的に実行する。
【0036】
また、制御部38は、車室空調装置10が冷房運転を開始した直後においては、下排気動作の時間が上排気動作の時間より長くなるように、強制送風装置35に連続的な切り替え動作を実行させる(ステップST13)。
これにより、強制送風装置35は、車室空調装置10がダッシュボード6の上部などの高い位置の吹出口20から吹き出した冷房空調された空気の一部を、後側のシート5に着座した乗員の足下へ優先的に吹き付けることができる。
しかも、下排気動作の時間を上排気動作の時間より長くしているので、下排気動作により吹き出された空気は、乗員の足下の周囲に残留でき、これらの周囲に滞留し易くなる。
なお、上排気動作と下排気動作との間に時間差をつけるのではなく、送風量の差をつけるようにしてもよい。
【0037】
このように強制送風装置35が上排気動作と下排気動作とを連続的に切り替えている間にも、車室空調装置10は車室2の暖房を継続している。
そして、車室2の暖房がたとえば目標温度に近づいて安定してくると、車室空調装置10は空調を弱める。たとえば吹き出す空気量を減らす。
制御部38は、たとえば空調が弱められたことに基づいて車室2の冷房が進んだことを検出すると(ステップST14)、強制送風装置35による上排気動作の時間と下排気動作の時間とを揃えるように、強制送風装置35の切り替え動作を変更する(ステップST15)。
制御部38は、たとえば車室空調制御部14からの空調状態情報などに基づいて、車室2の冷房が進んだことを判断すればよい。また、制御部38は、たとえば温度センサ11の検出温度に基づいて独自に車室2の冷房が進んだことを判断してもよい。
これにより、後側のシート5に着座した乗員の膝および腿の周りの空気と、シート5下の乗員の足先の周りの空気との間で、空気が強制的に循環できる。
その結果、乗員の下肢の周囲は、全体的に所望の快適な冷却温度に均一化され得る。部分的に冷え難くなる。
【0038】
以上のように、本実施形態では、車両の車室2に乗った乗員が着座するシート5の周囲に連通路34が設けられ、その連通路34の両端の開口部は車室2内に位置する。そして、連通路34の内部で空気を流す強制送風装置35は、連続した動作中に、連通路34内での空気の流動方向を繰り返し変化させ続ける。たとえば流動方向を繰り返し逆転させ続ける。
よって、連通路34からの空気流が供給されるシート5の周囲の箇所では、流動方向が繰り返し変化し続ける空気流が供給される。これにより、連通路34からの空気流が供給されるシート5の周囲の箇所は、好適に調温され得る。乗員の快適性が改善され得る。
特に、流速および方向を連続的に変化させることにより、強い空気流が突発的に生じ難く、気流の変化による不快感を生じ難くできる。
これに対して、常に一定の方向の空気流を供給した場合、開口部に対応する当該箇所では一定の空気流が生じ続けるので、経時的に過度に加温または冷却され得る。この場合、空気流により最初の快適性を改善できるものの、長期的には局所的な加温または冷却が生じて乗員の快適性が損なわれてしまう。
また、連通路34は、その両端が車室2内に位置するので、車室2内の空気を循環するだけである。よって、車室空調装置10による車室2内全体の空調機能を損なうことなく、シート5に着座した乗員の周囲の温度を好適な温度に平準化または均一化することができる。
【0039】
本実施形態では、連通路34は、車室2内において上下方向に沿って設けられ、一方の開口部が他方の開口部より高い位置にずれて設けられる。車室2内に両端が開口する連通路34の両端の開口部は、上下にずれて設けられる。よって、車室空調装置10による車室2内の空調では、空調が進んだ状態でも、その吹出口20の配置の偏りから社内の上下方向において温度差が残り易いが、その上下方向での温度差を抑制して平準化または均一化を改善できる。
【0040】
本実施形態では、一方の開口部は、車室2内の床面近くに設けられ、他方の開口部は、少なくともシート5の座面より高くなるように膝および腿の上面より高い位置に設けられる。よって、車室空調装置10の床面近くの吹出口20から吹き出された空気流の一部を、シート5の座面に着座した乗員の膝および腿へ上から供給することが可能になる。
そして、連通路34内での空気の流動方向を繰り返し変化させ続けることにより、シート5の座面に着座した乗員の腿から足先までの周囲の温度を平準化または均一化することができる。
【0041】
本実施形態では、暖房のための加温された空気を、上側の開口部32から乗員の膝や腿の近くへ供給することを優先できる。車室2内の暖房が進んでいない状態でも、乗員の周囲の気温を早期に且つ広範囲で高めることができる。しかも、車室2内の暖房が進んだ場合には、車室空調装置10による暖房が弱まったとしても、乗員の周囲の気温の平準化または均一化を改善できる。
【0042】
本実施形態では、車室2内の上部から車室2内へ吹き出される冷房のための冷却された空気を、下側の開口部33から乗員の足先や脛の近くへ供給することを優先できる。車室2内の冷房が進んでいない状態でも、乗員の周囲の気温を早期に且つ広範囲で低くすることができる。しかも、車室2内の冷房が進んだ場合には、車室空調装置10による冷房が弱まったとしても、乗員の周囲の気温の平準化または均一化を改善できる。
【0043】
上記実施形態では、連通路34内での空気の流動方向を正転と逆転との間で切り替えるように変化させている。
この他にもたとえば、連通路34内での空気の流動方向は、送風を一時的に停止する期間を設けてもよい。
また、流動方向を逆転させるのではなく、停止と一方向への送風との間で切り替えてもよい。
【0044】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明では、主に、第2実施形態との相違点について説明する。
【0045】
図6は、第2実施形態に係る車両の個別空調装置の要部構成の説明図である。
図6では、車室2において前側のシート5の前側に位置するダッシュボード6に、連通路34が設けられている。
【0046】
連通路34は、ダッシュボード6において上下方向に沿って設けられる。これにより、上側の開口部32は、下側の開口部33より高い位置にずれて設けられる。
【0047】
下側の開口部33は、ダッシュボード6の下面に開口する。これにより、下側の開口部33は、車室2の床面近くに開口する。下側の開口部33の近くには、空調ダクト19の吹出口20が位置する。
上側の開口部32は、ダッシュボード6の後面に開口する。これにより、上側の開口部32は、前側のシート5の座面より高い位置において、前側のシート5へ向くように設けられる。最前列のシート5へ向くように設けられる。シート5に着座した乗員の膝または腿の直上に位置する。
これにより、連通路34は、ダッシュボード6の下側と後側との間に連通し、これらの間で車室2内の空気を流動させることになる。
【0048】
また、
図6において、上側の開口部32の上側には、仕切り板31が設けられる。
仕切り板31は、たとえばシート5に対応する幅で左右へ広がって、前後方向に沿って延在する。仕切り板31は、上側の開口部32より後方へ延在し、シート5に着座した乗員の腿部の上方に至る。
これにより、仕切り板31は、車室2を上下に仕切ることができる。
【0049】
そして、制御部38は、車室2の温度、湿度、日射量、動作時間、および車室空調装置10の動作状態に応じて、強制送風装置35の動作を制御する。そして、連続した動作中に、連通路34内での空気の流動方向を繰り返し逆転させるように強制送風装置35の動作を制御する。
【0050】
以上のように、本実施形態において連通路34からの空気流が供給されるシート5の周囲の箇所では、流動方向が繰り返し変化し続ける空気流が供給される。これにより、連通路34からの空気流が供給されるシート5の周囲の箇所は、好適に調温され得る。乗員の快適性が改善され得る。
特に、流速および方向を連続的に変化させることにより、強い空気流が突発的に生じ難く、気流の変化による不快感を生じ難くできる。
これに対して、常に一定の方向の空気流を供給した場合、開口部に対応する当該箇所では一定の空気流が生じ続けるので、経時的に過度に加温または冷却され得る。この場合、空気流により最初の快適性を改善できるものの、長期的には局所的な加温または冷却が生じて乗員の快適性が損なわれてしまう。
また、連通路34は、その両端が車室2内に位置するので、車室2内の空気を循環するだけである。よって、車室空調装置10による車室2内全体の空調機能を損なうことなく、シート5に着座した乗員の周囲の温度を好適な温度に平準化または均一化することができる。
【0051】
本実施形態では、連通路34の上側に、車室2を上下に仕切る仕切り板31が設けられる。
よって、連通路34は、仕切り板31の下側において空気を切り替えて流動させる。
仕切り板31の下側において空気が好適に循環するようになり、仕切り板31の下側において乗員の周囲の気温の平準化または均一化の効果を高めることができる。
【0052】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0053】
たとえば上記実施形態では、個別空調装置30は、シート5に着座した乗員の快適性を向上させるために車室空調装置10とともに用いられている。
この他にもたとえば、個別空調装置30は、それ単独で、シート5に着座した乗員の快適性を向上させるために用いられてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…自動車(車両)、2…車室、3…前室、4…後室、5…シート、6…ダッシュボード、7…センターコンソール、10…車室空調装置、11…温度センサ、12…日射センサ、13…湿度センサ、14…車室空調制御部、15…ブロアファン、16…コンプレッサ、17…エバボレータ、18…ヒータ、19…空調ダクト、20…吹出口、30…個別空調装置(空調装置)、31…仕切り板(仕切り部材)、32…上側の開口部、33…下側の開口部、34…連通路、35…強制送風装置、38…制御部、39…タイマ