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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/20 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
B65D77/20 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017208047
(22)【出願日】2017-10-27
(65)【公開番号】P2019077494
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】苗村 正
(72)【発明者】
【氏名】竹内 雅規
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特許第2575770(JP,B2)
【文献】特開平02-166067(JP,A)
【文献】特開2016-188102(JP,A)
【文献】特開2006-248576(JP,A)
【文献】特許第6057801(JP,B2)
【文献】特開2012-197099(JP,A)
【文献】米国特許第04673601(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口周縁にフランジを有している容器と、内容物が充填された容器の開口を塞ぐようにフランジに剥離可能に熱融着されかつ外周部における周方向の一部に開封用タブを有している蓋とを備えており、蓋は、下面側から順次積層された熱融着性樹脂層、再封用粘着層および金属箔層を有しており、容器のフランジの上面が、蓋の熱融着性樹脂層と熱融着可能な熱融着性樹脂層によって構成されており、開封用タブを引き上げて蓋を剥離させることにより、蓋の下面の外周部に再封用粘着層が露出するようになされている包装体であって、
蓋の金属箔層のうち平面よりみて容器のフランジと蓋との熱融着部に重なる環状帯域に、蓋の剥離に伴って前記環状帯域の幅方向の一部をほぼ全厚にわたって剥離させるための剥離誘導用ノッチが、前記環状帯域の上下両面部分に少なくとも1つずついずれも前記環状帯域の周方向に沿ってのびるようにして、かつ前記熱融着部の幅方向の内側におさまるようにして形成されており、金属箔層の前記環状帯域に前記剥離によって生じた欠落部を蓋の上面側から視認しうるようになされている、包装体。
【請求項2】
金属箔層の前記環状帯域の下面部分に形成されている1つの剥離誘導用ノッチが、同上面部分に形成されている剥離誘導用ノッチよりも前記環状帯域の幅方向外側に位置している、請求項1記載の包装体。
【請求項3】
金属箔層の前記環状帯域の下面部分に、2つの剥離誘導用ノッチが前記環状帯域の幅方向に間隔をおいて形成され、同上面部分に、1つの剥離誘導用ノッチまたは前記環状帯域の幅方向に間隔をおいた複数の剥離誘導用ノッチが、平面より見て前記下面部分の2つの剥離誘導用ノッチの間に位置するように形成されている、請求項2記載の包装体。
【請求項4】
金属箔層の前記環状帯域の下面部分に1つの剥離誘導用ノッチが形成され、同上面部分に、1つの剥離誘導用ノッチが平面より見て前記下面部分の剥離誘導用ノッチよりも幅方向内側に位置するように形成され、これら2つの剥離誘導用ノッチどうしの前記環状帯域の幅方向の間隔が1mm以下となされている、請求項2記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食品、医薬品、化粧品、ウェットティッシュ、電子部品等の内容物が充填された容器のフランジに蓋をシールしてなる包装体に関し、より詳細には、未開封時には内容物を密封状態で包装することができるとともに、開封後に蓋を再シールすることができる、再封可能な包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、食品等を内容物とする再封可能な包装体として、下記の特許文献1に記載のものが知られている。
この包装体は、開口周縁にフランジを有している容器と、内容物が充填された容器の開口を塞ぐようにフランジに剥離可能に熱融着されかつ外周部における周方向の一部にフランジよりも外方に突出した開封用タブを有している蓋とを備えているものであって、蓋が、内層(熱融着性樹脂層)、粘着剤層、および外層(アルミニウム箔層、外側樹脂層等)を有しており、蓋材の内層における熱融着部の外側部分および内側部分にそれぞれハーフカットラインが形成されたものである。
上記の包装体によれば、開封用タブを引き上げると、蓋が、外側のハーフカットの位置から内側のハーフカットの位置まで、内層と粘着剤層との間で剥離し、容器のフランジから分離されることにより、開封が行われる。この開封に伴い、蓋の内層における内側のハーフカットよりも外側部分が容器のフランジ側に残るとともに、同部分の粘着剤層が露出させられる。そして、露出した粘着剤層の部分を容器のフランジ上面に重ねることにより、容器の再封が行われる。
しかしながら、上記の包装体の場合、いったん開封した後でも、蓋を閉じて再封すれば開封に気が付かないこともあるため、衛生面や安全面で問題があった。
【0003】
下記の特許文献2には、開封検知機能を備えた再封可能な包装体が開示されている。この包装体は、蓋が表面樹脂層、粘着樹脂層、剥離樹脂層およびヒートシール樹脂層を有しており、ヒートシール部において粘着樹脂層と剥離樹脂層とを層間剥離させることにより蓋を開封した後、再封する際に再封箇所が白く見えるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2575770号公報
【文献】特許第6057801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2記載の包装体の場合、蓋の材料として不透明なアルミニウム箔等の金属箔を使用すると開封検知機能が損なわれてしまうので、使用することができなかった。従って、上記特許文献2記載の包装体では、蓋のバリア性を確保することが難しく、長期保存が必要な内容物の包装には適していなかった。
【0006】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、蓋の材料としてバリア性に優れた金属箔を使用しながら、開封検知機能を備えている、再封可能な包装体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0008】
1)開口周縁にフランジを有している容器と、内容物が充填された容器の開口を塞ぐようにフランジに剥離可能に熱融着されかつ外周部における周方向の一部に開封用タブを有している蓋とを備えており、蓋は、下面側から順次積層された熱融着性樹脂層、再封用粘着層および金属箔層を有しており、容器のフランジの上面が、蓋の熱融着性樹脂層と熱融着可能な熱融着性樹脂層によって構成されており、開封用タブを引き上げて蓋を剥離させることにより、蓋の下面の外周部に再封用粘着層が露出するようになされている包装体であって、
蓋の金属箔層のうち平面よりみて容器のフランジと蓋との熱融着部に重なる環状帯域に、蓋の剥離に伴って前記環状帯域の幅方向の一部をほぼ全厚にわたって剥離させるための剥離誘導用ノッチが、前記環状帯域の周方向に沿ってのびるように形成されており、金属箔層の前記環状帯域に前記剥離によって生じた欠落部を蓋の上面側から視認しうるようになされている、包装体。
【0009】
2)剥離誘導用ノッチが、金属箔層の前記環状帯域の上下両面部分に少なくとも1つずつ形成されている、上記1)の包装体。
【0010】
3)金属箔層の前記環状帯域の下面部分に形成されている1つの剥離誘導用ノッチが、同上面部分に形成されている剥離誘導用ノッチよりも前記環状帯域の幅方向外側に位置している、上記2)の包装体。
【0011】
4)金属箔層の前記環状帯域の下面部分に、2つの剥離誘導用ノッチが前記環状帯域の幅方向に間隔をおいて形成され、同上面部分に、1つの剥離誘導用ノッチまたは前記環状帯域の幅方向に間隔をおいた複数の剥離誘導用ノッチが、平面より見て前記下面部分の2つの剥離誘導用ノッチの間に位置するように形成されている、上記3)の包装体。
【0012】
5)金属箔層の前記環状帯域の下面部分に1つの剥離誘導用ノッチが形成され、同上面部分に、1つの剥離誘導用ノッチが平面より見て前記下面部分の剥離誘導用ノッチよりも幅方向内側に位置するように形成され、これら2つの剥離誘導用ノッチどうしの前記環状帯域の幅方向の間隔が1mm以下となされている、上記3)の包装体。
【0013】
6)剥離誘導用ノッチが、レーザー加工によって金属箔層の前記環状帯域に形成されている、上記1)~5)のいずれか1つの包装体。
【発明の効果】
【0014】
上記1)の包装体によれば、蓋がバリア性に優れた金属箔層を有しているので、内容物の劣化や変質を防止して長期保存することが可能である。
しかも、上記1)の包装体によれば、蓋の金属箔層のうち平面よりみて容器のフランジと蓋との熱融着部に重なる環状帯域に形成された剥離誘導用ノッチにより、蓋の剥離に伴って環状帯域の幅方向の一部がほぼ全厚にわたって剥離させられ、この剥離によって金属箔層の前記環状帯域に生じた欠落部を蓋の上面側から視認することができるので、例えば店舗において、いたずら行為等により、蓋がいったん開封された後で再封されたとしても、開封を確実に検知することができ、衛生面および安全面での問題を回避することができる。
【0015】
上記2)の包装体によれば、剥離誘導用ノッチが、金属箔層の前記環状帯域の上下両面部分に少なくとも1つずつ形成されているので、蓋の剥離に伴って金属箔層の前記環状帯域の部分剥離が確実に行われる。
【0016】
上記3)の包装体によれば、蓋の剥離に伴い、まず金属箔層の前記環状帯域の下面部分に形成された剥離誘導用ノッチから上方に向かって金属箔層が分断され、次いで同上面部分に形成された剥離誘導用ノッチから下方に向かって金属箔層が分断されるので、金属箔層の部分剥離が確実に行われる。
【0017】
上記4)の包装体によれば、蓋の剥離に伴い、まず金属箔層の前記環状帯域の下面部分に形成された外側の剥離誘導用ノッチから同上面部分に形成された剥離誘導用ノッチ(複数の場合は最も外側のノッチ)に向かって金属箔層が上向きに分断され、次いで、上面部分の剥離誘導用ノッチ(複数の場合は最も内側のノッチ)から下面部分の内側の剥離誘導用ノッチに向かって金属箔層が下向きに分断されるので、金属箔層の部分剥離が確実に行われる。
【0018】
上記5)の包装体によれば、蓋の剥離に伴い、まず金属箔層の前記環状帯域の下面部分に形成された剥離誘導用ノッチから上方に向かって金属箔層が分断され、次いで、同上面部分に形成された剥離誘導用ノッチから下方に向かって金属箔層が分断されるので、金属箔層の部分剥離が確実に行われる。
【0019】
上記6)の包装体によれば、金属箔層に他の層を積層した複合シートの状態でも剥離誘導用ノッチを容易に形成することができ、また、ノッチの位置精度も高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の実施形態に係る包装体を示す斜視図である。
図2】同包装体の未開封時の状態を示す部分拡大垂直断面図である。
図3】同包装体の開封後の状態を示す部分拡大垂直断面図である。
図4】同包装体の再封時の状態を示す平面図である。
図5】同包装体における蓋の金属箔層に形成する剥離誘導用ノッチの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態を、図1図5を参照して説明する。
図示の包装体(1)は、食品や医薬品等の内容物(5)を、容器(2)および蓋(3)を用いて密封包装してなるものである。
【0022】
容器(2)は、複合シート(20)を深絞り成形してなるカップ状のものである。より具体的には、容器(2)は、底壁(図示略)と、底壁の周縁から立ち上がった周壁(2a)とを備えている。また、容器(2)は、その上方開口周縁にフランジ(2b)を有している。フランジ(2b)は、周壁(2a)の上端縁から径方向外方に向かって水平に張り出したフラットな形状のものである。なお、容器は、図示の形状には限定されない。
【0023】
蓋(3)は、所定の寸法および形状にカットされた複合シート(30)からなり、内容物(5)が充填された容器(2)の上方開口を塞ぐように、その下面の外周部が容器(2)のフランジ(2b)の上面に剥離可能に熱融着されている。
蓋(3)には、外周部における周方向の一部にフランジ(2b)よりも外方に突出した開封用タブ(3a)が設けられている。図示のタブ(3a)は、蓋(3)の外周部の一部から径方向外方に向かって張り出すように形成された平面より見て略三角形状のものであって、蓋(3)の開封時に手指で摘めるようになっている。
【0024】
図2および図3に示すように、容器(2)を構成している複合シート(20)は、基材層(21)と、基材層(21)の内面に積層された熱融着性樹脂層(22)とを備えている。
基材層(21)は、片面が熱融着性樹脂層(22)に接着剤層(23)を介して積層された金属箔層(211)と、金属箔層(211)の他面に接着剤層(24)を介して積層された外側樹脂層(212)とよりなる。
金属箔層(211)は、内容物(5)の保存性を高めるバリア層として機能するものであって、例えば、アルミニウム(アルミニウム合金を含む。以下同じ。)箔、ステンレス鋼箔、銅箔、ニッケル箔、鉄箔によって構成される。
外側樹脂層(212)は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリブチレンナフタレート樹脂(PBN)、ポリプロピレン樹脂(PP)からなる単層または多層のフィルムによって構成される。
金属箔層(211)と熱融着性樹脂層(22)との間に介在される接着剤層(23)、および金属箔層(211)と外側樹脂層(212)との間に介在される接着剤層(24)は、それぞれ、二液硬化型のポリエステル-ポリウレタン樹脂系接着剤やポリエーテル-ポリウレタン樹脂系接着剤等によって構成される。
熱融着性樹脂層(22)は、容器(2)の最内層、すなわち、底壁の上面、周壁(2a)の内面、およびフランジ(2b)の上面を構成するものであって、フランジ(2b)に熱融着(ヒートシール)性を付与する役割を担っており、また、金属箔層(211)が内容物(5)との接触によって腐食するのを防止する機能も有している。この熱融着性樹脂層(22)は、例えば、ポリエチレン樹脂(PE)フィルム、ポリプロピレン樹脂(PP)フィルム等の汎用性フィルム、または、これらの複合フィルムによって構成される。
【0025】
蓋(3)を構成する複合シート(30)は、蓋(3)の上面となる側から順次積層された外側樹脂層(31)、金属箔層(32)、再封用粘着層(33)、熱融着性樹脂層(34)を備えている(図2,3参照)。
外側樹脂層(31)は、蓋(3)の上面を構成するものであって、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリブチレンナフタレート樹脂(PBN)、ポリプロピレン樹脂(PP)からなる単層または多層の透明なフィルムによって構成される。外側樹脂層(31)の厚さは、通常5~200μm程度(好適には10~30μm程度)となされる。また、外側樹脂層(31)は、上記フィルムに代えて、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性架橋性樹脂よりなるオーバーコート層によって構成することもできる。
金属箔層(32)は、内容物(5)の保存性を高めるバリア層として機能するものであって、例えば、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔、銅箔、ニッケル箔、鉄箔によって構成される。金属箔層(32)をアルミニウム箔によって構成する場合、その厚さは、好適には30μm以下(より好適には5~30μm)となされる。
外側樹脂層(31)と金属箔層(32)との積層は、例えば2液硬化型のポリエステル-ポリウレタン樹脂系接着剤やポリエーテル-ポリウレタン樹脂系接着剤等よりなる透明な接着剤層(35)を介して行われる。
再封用粘着層(33)は、開封後の蓋(3)を容器(2)のフランジ(2b)上面に再シールするためのものである。粘着層(33)を構成する粘着剤としては、再シール時に要求される粘着強度等に応じて、天然ゴム系、アクリル樹脂系、シリコン樹脂、ウレタン樹脂系などの粘着剤の中から適宜のものが用いられる。
熱融着性樹脂層(34)は、蓋(3)の最下層(最内層)を構成しており、蓋(3)に熱融着(ヒートシール)性を付与するものである。熱融着性樹脂層(34)は、例えば、ポリエチレン樹脂(PE)フィルム、ポリプロピレン樹脂(PP)フィルム等の汎用性フィルム、または、これらの複合フィルムであって、容器(2)の熱融着性樹脂層(22)との熱融着による強接着が可能なものによって構成されるが、好適には、容器(2)の熱融着性樹脂層(22)と同一の材料によって構成される。熱融着性樹脂層(34)の厚さは、通常15~100μm程度となされる。
【0026】
容器(2)のフランジ(2b)と蓋(3)との熱融着は、例えば、熱板方式、すなわち、容器(2)のフランジ(2b)の上面に蓋(3)の下面の外周部が重ねられた状態で、同重ね合わせ部分に、所定温度に加熱された熱板を所定時間、所定圧力で押し当てることによって行われる。
【0027】
図2に示すように、蓋(3)の金属箔層(32)には、平面よりみて容器(2)のフランジ(2b)と蓋(3)との熱融着部(4)に重なる環状帯域(32X)に、蓋(3)の剥離に伴って環状帯域(32X)の幅方向の一部をほぼ全厚にわたって剥離させるための剥離誘導用ノッチ(321)(322)が、環状帯域(32X)の周方向に沿ってのびるように形成されている。ノッチ(321)(322)は、環状帯域(32X)の全周にわたって円環状に形成される他、周方向の一部、特に開封用タブ(3a)がある側の部分に円弧状に形成されていてもよい。
ノッチ(321)(322)は、金属箔層(32)の環状帯域(32X)の上下両面部分に少なくとも1つずつ形成されているのが好ましい。図2の場合、環状帯域(32X)の下面部分に、2つのノッチ(321)が、環状帯域(32X)の幅方向に間隔をおいて形成されているとともに、環状帯域(32X)の上面部分に、2つのノッチ(322)が、環状帯域(32X)の幅方向に間隔をおいて形成されている。環状帯域(32X)の上面部分の2つのノッチ(322)は、平面より見て下面部分の2つのノッチ(321)の間に位置するように形成されている。従って、下面部分の外側(図2の左側)のノッチ(321)は、上面部分の2つのノッチ(322)よりも環状帯域(32X)の幅方向外側に位置している。
各ノッチ(321)(322)は、レーザー加工によって金属箔層(32)の環状帯域(32X)に形成されているのが好ましい。レーザー加工は、例えば、グリーンレーザー、UVレーザー等のYAGレーザーや、YVOレーザーを使用したレーザー加工機によって行われる。レーザー加工によれば、蓋(3)を構成する複合シート(30)の状態で、金属箔層(32)の上下両面の所要箇所に剥離誘導用ノッチ(321)(322)を形成することができ、その位置精度も高くなる。なお、金属箔層(32)の下面側のノッチ(321)については、粘着層(33)および熱融着性樹脂層(34)との積層前の段階で、カッター等を用いた物理的手段によって形成してもよい。
【0028】
上記の包装体(1)にあっては、未開封状態では、金属箔層(211)(32)を有する容器(2)および蓋(3)によって内容物(5)が密封包装されているので(図1,2参照)、内容物(5)を劣化、変質させることなく長期保存することができる。
【0029】
そして、内容物(5)を必要な数量ずつ取り出して使用する場合、蓋(3)の開封用タブ(3a)を手指で摘んで引き上げると、熱融着部(4)の外端縁付近において、蓋(3)の熱融着性樹脂層(34)が破断して、熱融着性樹脂層(34)と粘着層(33)との間で界面剥離が起こり、次いで、熱融着部(4)の内端縁付近で、蓋(3)の熱融着性樹脂層(34)が再び破断することにより、蓋(3)がフランジ(2b)上面から分離して開封される(図3参照)。そして、蓋(3)の剥離により、図3に示すように、蓋(3)下面の外周部に、粘着層(33)が、熱融着部(4)とほぼ等しい幅で露出させられる。
また、蓋(3)の剥離に伴い、蓋(3)の金属箔層(32)のうち平面よりみて熱融着部(4)に重なる環状帯域(32X)の幅方向の一部が、ほぼ全厚にわたって剥離させられ、剥離した部分(323)がフランジ(2b)上面に付着したまま残る。ここで、金属箔層(32)の上記部分剥離の過程を詳しく説明すると、まず、蓋(3)における熱融着性樹脂層(34)と粘着層(33)との間の剥離が環状帯域(32X)の下面部分にある外側のノッチ(321)の位置まで達すると、同ノッチ(321)から環状帯域(32X)の上面部分にある外側のノッチ(322)に向かって金属箔層(32)が上向きに分断され、次いで、環状帯域(32X)の上面部分にある2つのノッチ(322)どうしの間の部分で金属箔層(32)の上面が接着剤層(35)から剥離された後、環状帯域(32X)の上面部分にある内側のノッチ(322)から同下面部分にある内側のノッチ(321)に向かって金属箔層(32)が下向きに分断される。これにより、金属箔層(32)の環状帯域(32X)のうち4つのノッチ(321)(322)で囲まれた横断面略台形の部分(323)が剥離される。
上記部分剥離によって金属箔層(32)の環状帯域(32X)に欠落部(324)が生じるが、この欠落部(324)は、透明な外側樹脂層(31)および接着剤層(35)を通して、蓋(3)の上面側から視認することができる。実際には、欠落部(324)は、蓋(3)の他の部分と比べて白っぽく見えることが多い。
【0030】
内容物(5)の取り出しが終わったら、開封した蓋(3)を未開封時の位置に戻すようにフランジ(2b)上面に重ねていくと、蓋(3)が、その下面の外周部に形成された再封用粘着層(33)の露出部(331)によって、フランジ(2b)上面に貼り付けられ、それによって蓋(3)の再封が行われ、残った内容物(5)を再び密封状態で保存することが可能となる。
この再封状態において、図4に示すように、蓋(3)の上面側から金属箔層(32)の欠落部(324)を視認することができるので、例えば店舗でいたずら行為により蓋(3)が開封された後に再封された場合でも、開封されたことを簡単に検知することができる。
【0031】
図5は、剥離誘導用ノッチの配置構成の変形例を示すものである。
図5(a)では、金属箔層(32)の環状帯域(32X)の下面部分に、2つの剥離誘導用ノッチ(331)が、環状帯域(32X)の幅方向に間隔をおいて形成されているとともに、環状帯域(32X)の上面部分に、1つの剥離誘導用ノッチ(322)が、平面より見て下面部分の2つの剥離誘導用ノッチ(321)の中間に位置するように形成されている。
この配置構成の場合、蓋の剥離が環状帯域(32X)の下面部分にある外側のノッチ(321)の位置まで達すると、同ノッチ(321)から環状帯域(32X)の上面部分にあるノッチ(322)に向かって金属箔層(32)が上向きに分断され、次いで、上面部分のノッチ(322)から下面部分にある内側のノッチ(321)に向かって金属箔層(32)が下向きに分断される。これにより、金属箔層(32)の環状帯域(32X)のうち3つのノッチ(321)(322)で囲まれた横断面略三角形の部分(323)が全厚にわたって剥離される。
図5(b)では、金属箔層(32)の環状帯域(32X)の下面部分に1つの剥離誘導用ノッチ(331)が形成されているとともに、環状帯域(32X)の上面部分に、1つの剥離誘導用ノッチ(322)が、平面より見て下面部分の剥離誘導用ノッチ(321)よりも内側(図5(b)の右側)に位置するように形成されている。また、これら2つの剥離誘導用ノッチ(321)(322)どうしの環状帯域(32X)の幅方向の間隔(S1)が1mm以下となされている。
この配置構成では、蓋の剥離に伴い、まず、環状帯域(32X)の下面部分のノッチ(321)から上方に向かって金属箔層(32)が分断され、次いで、平面より見て上下両面部分のノッチ(321)(322)間の部分で金属箔層(32)の上面が接着剤層から剥離された後、上面部分のノッチ(322)から下方に向かって金属箔層(32)が分断される。これにより金属箔層(32)の環状帯域(32X)のうち2つのノッチ(321)(322)間にある横断面略四角形の部分(323)が全厚にわたって剥離される。
図5(c)の場合、金属箔層(32)の環状帯域(32X)の下面部分に、2つの剥離誘導用ノッチ(331)が、環状帯域(32X)の幅方向に比較的大きな間隔をおいて形成されているとともに、環状帯域(32X)の上面部分に、環状帯域(32X)の幅方向に間隔をおいた4つの剥離誘導用ノッチ(322)が、平面より見て下面部分の2つの剥離誘導用ノッチ(321)の間に位置するように形成されている。
この配置構成の場合、図2に示したものとほぼ同様にして金属箔層の剥離が行われる。その際、環状帯域(32X)の上面部分の中間にある2つのノッチ(322)は、金属箔層(32)の上面が接着剤層から剥離するのを補助するように機能する。
【実施例
【0032】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、この発明は、この実施例に限定されるものではない。
【0033】
まず、JIS H4160で分類されたA8079H-Oよりなる厚さ100μmのアルミニウム箔(金属箔層)の片面に、厚さ200μmのポリプロピレン樹脂(PP)フィルム(熱融着性樹脂層)を、同他面に、厚さ30μmの無延伸ポリプロピレン樹脂(CPP)フィルム(外側樹脂層)を、それぞれ2液硬化型接着剤を用いて貼り合せ、40℃の環境下で5日間養生することにより、容器用複合シートを作製した。
そして、上記の容器用複合シートを所定形状にカットしてなるブランクの両面に微量のシロキサンを塗布しておいてから、雄型および雌型からなる金型を用いて深絞り加工することにより、フランジを有する丸型カップ状の容器(底径56mmφ、開口径65mmφ、高さ25mm、フランジ幅8mm)を作製した。
【0034】
一方、JIS H4160で分類されたA1N30H-Oよりなる厚さ20μmのアルミニウム箔(金属層)の第1の面に、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルム(外側樹脂層)を、2液硬化型のポリエステル-ポリウレタン樹脂系接着剤(接着剤層)を介してドライラミネート法により貼り合わせた。また、アルミニウム箔の第2の面のうち容器のフランジに対応する箇所に、カッターを用いて、同心状の円形をした2つのノッチを3mm間隔で形成した。次いで、ノッチを形成したアルミニウム箔の第2の面に、ゴム系粘着剤(再封用粘着層)を膜厚10μmとなるようにグラビアコーティングして、その上に厚さ20μmの無延伸ポリプロピレン樹脂(CPP)フィルム(熱融着性樹脂層)を貼り合わせることにより、複合シートを得た。さらに、この複合シートのアルミニウム箔の第1の面に、グリーンレーザーを使用したレーザー加工機によって、同心状の円形をした2つのノッチを、2mm間隔でかつ平面より見て第1の面の2つのノッチの間に位置するように形成した。第1の面および第2の面の内側のノッチどうしの間隔、および同外側のノッチどうしの間隔は、それぞれ0.5mmとした。そして、この複合シートをフランジに合わせて所要の形状およびサイズにカットすることにより、開封用タブ付きの蓋を作製した。
【0035】
上記容器に30mlの水を入れてから、容器のフランジ上面に、上記蓋を無延伸ポリプロピレン樹脂(CPP)フィルム面が接するように重ね、これらの重合面に、180℃に加熱したドーナツ状の熱板(外径100mmφ、内径73mmφ)を、120kgfの加圧力で5秒間押し当てることにより、ヒートシール(熱融着)を行った。
こうして、実施例の包装体を得た。
【0036】
上記実施例の包装体について、蓋のタブを手指で摘んで引き上げることにより、蓋をフランジから剥離して開封したところ、蓋の下面の外周部にゴム系粘着剤が露出していた。また、容器のフランジの上面に、蓋のアルミニウム箔の一部が剥離してフランジの周方向に沿って円環状に付着していた。
次に、剥離した蓋の下面の外周部を容器のフランジの上面に重ねると、ゴム系粘着剤の露出部によって蓋がフランジに貼り付けられ、再封状態となった。この状態で、蓋の上面を観察したところ、アルミニウム箔の部分剥離によって生じた欠落部が、外周部に白っぽい円環状の模様として表れていることを目視で確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明は、長期保存が必要であってかつ一度に使い切らない食品、医薬品等の内容物を、容器および蓋を用いて再封可能に密封包装する包装体として、好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0038】
(1):包装体
(2):容器
(2b):フランジ
(22):熱融着性樹脂層
(3):蓋
(3a):開封用タブ
(32):金属箔層
(32X):熱融着部に重なる環状帯域
(321):環状帯域の下面部分の剥離誘導用ノッチ
(322):環状帯域の上面部分の剥離誘導用ノッチ
(324):欠落部
(33):再封用粘着層
(34):熱融着性樹脂層
(4):熱融着部
(5):内容物
図1
図2
図3
図4
図5