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特許70053063相4線式電源回路、制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】3相4線式電源回路、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
H02M7/06 A
H02M7/06 M
H02M7/06 N
H02M7/06 S
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017221175
(22)【出願日】2017-11-16
(65)【公開番号】P2019092349
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】大野 賢三
(72)【発明者】
【氏名】角谷 敦之
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-165509(JP,A)
【文献】特開2006-034000(JP,A)
【文献】特開2016-116432(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147413(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01811642(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相のうちの1相に突入電流抑制回路が設けられた3相3線交流電源の線間電力を整流する第1整流回路を備え、前記線間電力を直流電力に変換する第1コンバータ回路と、
前記3相3線交流電源の相間電力を整流する第2整流回路を備え、前記相間電力を直流電力に変換する第2コンバータ回路と、
前記第1整流回路の入力側と、前記第2整流回路の入力側とを結び、抵抗を含む線間相間接続線と、
前記線間相間接続線への電流ループ経路を構成する第1スイッチと、
前記抵抗を短絡する第2スイッチと、
一端が前記3相3線交流電源の前記3相のうちの1相の出力側に接続され、他端が前記第2整流回路の入力側に接続される第3スイッチと、
を備え
前記第1スイッチが開状態から閉状態に切り替わり、前記第1コンバータ回路の出力電流により充電される第1キャパシタ、および前記第2コンバータ回路の出力電流により充電される第2キャパシタが満充電された後に、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチが開状態から閉状態に切り替わる、
3相4線式電源回路。
【請求項2】
3相のうちの1相に突入電流抑制回路が設けられた3相3線交流電源の線間電力を整流する第1整流回路を備え、前記線間電力を直流電力に変換する第1コンバータ回路と、前記3相3線交流電源の相間電力を整流する第2整流回路を備え、前記相間電力を直流電力に変換する第2コンバータ回路と、前記第1整流回路の入力側と、前記第2整流回路の入力側とを結び、抵抗を含む線間相間接続線と、前記線間相間接続線への電流ループ経路を構成する第1スイッチと、前記抵抗を短絡する第2スイッチと、一端が前記3相3線交流電源の前記3相のうちの1相の出力側に接続され、他端が前記第2整流回路の入力側に接続される第3スイッチと、を備える3相4線式電源回路による制御方法であって、
記第1スイッチを開状態から閉状態へと切り替えることと、
前記第1コンバータ回路の出力電流により充電される第1キャパシタ、および前記第2コンバータ回路の出力電流により充電される第2キャパシタが満充電された後に、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチを開状態から閉状態へと切り替えることと、
を含む制御方法。
【請求項3】
3相のうちの1相に突入電流抑制回路が設けられた3相3線交流電源の線間電力を整流する第1整流回路を備え、前記線間電力を直流電力に変換する第1コンバータ回路と、前記3相3線交流電源の相間電力を整流する第2整流回路を備え、前記相間電力を直流電力に変換する第2コンバータ回路と、前記第1整流回路の入力側と、前記第2整流回路の入力側とを結び、抵抗を含む線間相間接続線と、前記線間相間接続線への電流ループ経路を構成する第1スイッチと、前記抵抗を短絡する第2スイッチと、一端が前記3相3線交流電源の前記3相のうちの1相の出力側に接続され、他端が前記第2整流回路の入力側に接続される第3スイッチと、を備える3相4線式電源回路のコンピュータに、
記第1スイッチを開状態から閉状態へと切り替えることと、
前記第1コンバータ回路の出力電流により充電される第1キャパシタ、および前記第2コンバータ回路の出力電流により充電される第2キャパシタが満充電された後に、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチを開状態から閉状態へと切り替えることと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3相4線式電源回路、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電源回路の起動時には電荷が蓄積されていないコンデンサに過電流が流れることが知られている。この過電流は、一般的に、突入電流と呼ばれている。
特許文献1には、インバータを用いて所望の電力を生成する電源回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5611496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3相3線交流電源から直流電力を生成する3相4線式電源回路において、突入電力を低減することが要求されている。
そのため、3相3線交流電源から直流電力を生成する3相4線式電源回路において、突入電力を低減することのできる技術が求められていた。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決することのできる3相4線式電源回路、制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、3相4線式電源回路は、3相のうちの1相に突入電流抑制回路が設けられた3相3線交流電源の線間電力を整流する第1整流回路を備え、前記線間電力を直流電力に変換する第1コンバータ回路と、前記3相3線交流電源の相間電力を整流する第2整流回路を備え、前記相間電力を直流電力に変換する第2コンバータ回路と、前記第1整流回路の入力側と、前記第2整流回路の入力側とを結び、抵抗を含む線間相間接続線と、前記線間相間接続線への電流ループ経路を構成する第1スイッチと、前記抵抗を短絡する第2スイッチと、一端が前記3相3線交流電源の前記3相のうちの1相の出力側に接続され、他端が前記第2整流回路の入力側に接続される第3スイッチと、を備え、前記第1スイッチが開状態から閉状態に切り替わり、前記第1コンバータ回路の出力電流により充電される第1キャパシタ、および前記第2コンバータ回路の出力電流により充電される第2キャパシタが満充電された後に、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチが開状態から閉状態に切り替わる
【0008】
本発明の第3の態様によれば、制御方法は、3相のうちの1相に突入電流抑制回路が設けられた3相3線交流電源の線間電力を整流する第1整流回路を備え、前記線間電力を直流電力に変換する第1コンバータ回路と、前記3相3線交流電源の相間電力を整流する第2整流回路を備え、前記相間電力を直流電力に変換する第2コンバータ回路と、前記第1整流回路の入力側と、前記第2整流回路の入力側とを結び、抵抗を含む線間相間接続線と、前記線間相間接続線への電流ループ経路を構成する第1スイッチと、前記抵抗を短絡する第2スイッチと、一端が前記3相3線交流電源の前記3相のうちの1相の出力側に接続され、他端が前記第2整流回路の入力側に接続される第3スイッチと、を備える3相4線式電源回路による制御方法であって、前記第1スイッチを開状態から閉状態へと切り替えることと、前記第1コンバータ回路の出力電流により充電される第1キャパシタ、および前記第2コンバータ回路の出力電流により充電される第2キャパシタが満充電された後に、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチを開状態から閉状態へと切り替えることと、を含む
【0009】
本発明の第4の態様によれば、プログラムは、3相のうちの1相に突入電流抑制回路が設けられた3相3線交流電源の線間電力を整流する第1整流回路を備え、前記線間電力を直流電力に変換する第1コンバータ回路と、前記3相3線交流電源の相間電力を整流する第2整流回路を備え、前記相間電力を直流電力に変換する第2コンバータ回路と、前記第1整流回路の入力側と、前記第2整流回路の入力側とを結び、抵抗を含む線間相間接続線と、前記線間相間接続線への電流ループ経路を構成する第1スイッチと、前記抵抗を短絡する第2スイッチと、一端が前記3相3線交流電源の前記3相のうちの1相の出力側に接続され、他端が前記第2整流回路の入力側に接続される第3スイッチと、を備える3相4線式電源回路のコンピュータに、前記第1スイッチを開状態から閉状態へと切り替えることと、前記第1コンバータ回路の出力電流により充電される第1キャパシタ、および前記第2コンバータ回路の出力電流により充電される第2キャパシタが満充電された後に、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチを開状態から閉状態へと切り替えることと、を実行させる
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態による3相4線式電源回路によれば、起動時の突入電流を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態による電源回路の構成を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態による電源回路の処理フローを示す図である。
図3】比較対象の電源回路の構成を示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態による電源回路の構成を示す図である。
図5】本発明の第3の実施形態による電源回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態による電源回路の構成について説明する。
本発明の第1の実施形態による電源回路1は、3相4線式電源回路であって、起動時に電源回路1内部に流れる過電流の最大電流を低減し、定常時には3相3線交流電源から2つの直流電圧を生成する回路である。電源回路1は、図1に示すように、3相3線交流電源10、第1整流回路20、第2整流回路30、平滑回路40、スイッチSW1(SW11、SW12)(第1スイッチの一例)、スイッチSW2(SW21、SW22)(第2スイッチの一例)、スイッチSW3(第3スイッチの一例)、抵抗R1、R2(突入電流抑制回路の一例)、コンデンサC1、C2を備える。電源回路1の起動時には、コンデンサC1を充電する経路、コンデンサC2を充電する経路、または、コンデンサC1とC2を充電する経路に電流が流れる。
【0013】
3相3線交流電源10は、配線Nを基準電位として、位相が120度ずつ異なる3つの交流電圧を出力する。3相3線交流電源10は、配線N、Ln1、Ln2、Ln3を備える。なお、本発明の各実施形態では、3相3線交流電源10における3相のうち配線Ln1に対応する相をLn1相、配線Ln2に対応する相をLn2相、配線Ln3に対応する相をLn3相と呼ぶ。
【0014】
第1整流回路20は、Ln1相、Ln2相、Ln3相の3つの交流電圧を受け、受けた交流電圧を整流する。第1整流回路20は、例えば、図1に示すように、ダイオードD1、D2、D3、D4、D5、D6を備える。ダイオードD1、D2、D3、D4、D5、D6のそれぞれは、第1端子、第2端子を備える。
【0015】
第2整流回路30は、Ln1相の交流電圧を受け、受けた交流電圧を整流する。第2整流回路30は、例えば、図1に示すように、ダイオードD7、D8、D9、D10を備える。ダイオードD7、D8、D9、D10のそれぞれは、第1端子、第2端子を備える。
【0016】
平滑回路40は、第1整流回路20が出力する整流後の電圧を平滑化する。平滑回路40は、コンデンサC1、リアクトルL1を備える。コンデンサC1、リアクトルL1のそれぞれは、第1端子、第2端子を備える。
【0017】
コンデンサC2は、一般的に、「平滑コンデンサ」と呼ばれるコンデンサであり、第2整流回路30が出力する整流後の電圧を平滑化する。
【0018】
抵抗R1、R2のそれぞれは、電源回路1の起動時に電源回路1の内部を流れ、一般的に「突入電流」と呼ばれる過電流の最大電流を低減させる抵抗である。抵抗R1、R2のそれぞれは、第1端子、第2端子を備える。
【0019】
スイッチSW1は、スイッチSW11、SW12を備える。スイッチSW2は、スイッチSW21、SW22を備える。スイッチSW11、SW12、SW21、SW22、SW3のそれぞれは、電源回路1の起動時には突入電流の最大電流を低減させ、電源回路1の定常時には抵抗R1、R2に電力損失を生じさせないように、オフ状態(開状態)またはオン状態(閉状態)となる。スイッチSW11、SW12、SW21、SW22、SW3のそれぞれは、第1端子、第2端子を備える。
【0020】
配線Nは、ダイオードD9のアノード端子、ダイオードD10のカソード端子に接続される。
配線Ln1は、スイッチSW11の第1端子、スイッチSW21の第1端子、スイッチSW3の第1端子に接続される。配線Ln2は、スイッチSW22の第1端子に接続される。配線Ln3は、スイッチSW12の第1端子に接続される。
【0021】
スイッチSW11の第2端子は、抵抗R1の第1端子に接続される。スイッチSW12の第2端子は、ダイオードD5のアノード端子、ダイオードD6のカソード端子に接続される。
スイッチSW21の第2端子は、抵抗R1の第2端子、抵抗R2の第1端子、ダイオードD1のアノード端子、ダイオードD2のカソード端子に接続される。スイッチSW22の第2端子は、ダイオードD3のアノード端子、ダイオードD4のカソード端子に接続される。
スイッチSW3の第2端子は、抵抗R2の第2端子、ダイオードD7のアノード端子、ダイオードD8のカソード端子に接続される。
【0022】
ダイオードD1のカソード端子は、ダイオードD3のカソード端子、ダイオードD5のカソード端子、リアクトルL1の第1端子に接続される。
ダイオードD2のアノード端子は、ダイオードD4のアノード端子、ダイオードD6のアノード端子、コンデンサC1の第1端子に接続される。
ダイオードD7のカソード端子は、ダイオードD9のカソード端子、コンデンサC2の第1端子に接続される。
ダイオードD8のアノード端子は、ダイオードD10のアノード端子、コンデンサC2の第2端子に接続される。
コンデンサC1の第2端子は、リアクトルL1の第2端子に接続される。
【0023】
なお、コンデンサC1の第2端子は、電源回路1の端子T1である。コンデンサC1の第1端子は、電源回路1の端子T2である。コンデンサC2の第1端子は、電源回路1の端子T3である。コンデンサC2の第2端子は、電源回路1の端子T4である。電源回路1は、定常時に、端子T2を基準電位とする直流電圧を端子T1から出力する。また、電源回路1は、定常時に、端子T4を基準電位とする直流電圧を端子T3から出力する。
【0024】
次に、本発明の第1の実施形態による電源回路1の処理について図2を用いて説明する。
なお、電源回路1の起動前のスイッチSW11、SW12、SW21、SW22、SW3のそれぞれは、オフ状態(開状態)である。また、電源回路1の起動前には、コンデンサC1、C2のそれぞれに電荷は蓄積されていないものとする。
【0025】
電源回路1の起動時に、スイッチSW11、SW12のそれぞれは、オフ状態からオン状態に切り替わる(ステップS1)。
スイッチSW11、SW12のそれぞれがオン状態になると、Ln1相とLn3相とから成る線間回路と、Ln1相とN相とから成る相間回路とが形成される。
電源回路1の起動時に流れる電流は、配線Ln1における電位が配線Ln3における電位よりも高い場合と、配線Ln3における電位が配線Ln1における電位よりも高い場合とで異なる。
以下、配線Ln1における電位が配線Ln3における電位よりも高い場合と、配線Ln3における電位が配線Ln1における電位よりも高い場合のそれぞれについて、電源回路1を流れる電流を説明する。
【0026】
(配線Ln1における電位が配線Ln3における電位よりも高い場合)
電源回路1の起動時には、第1充電経路、第2充電経路の2つが存在する。第1充電経路は、配線Ln1、スイッチSW11、抵抗R1、ダイオードD1、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD6、スイッチSW12、配線Ln3を介して3相3線交流電源10を通る経路である。
第2充電経路は、配線Ln1、スイッチSW11、抵抗R1、抵抗R2、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10、配線Nを介して3相3線交流電源10を通る経路である。
ここで、配線N、配線Ln1、スイッチSW11、ダイオードD1、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD6、スイッチSW12、配線Ln3、3相3線交流電源10、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10のそれぞれが理想素子であると仮定する。理想素子とは、インピーダンスが0オームで無限大の電流を流すことのできる素子のことである。ただし、ダイオードは、オフセット電圧として順方向電圧VFを有する。
第1充電経路では、配線Ln1、スイッチSW11、ダイオードD1、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD6、スイッチSW12、配線Ln3、3相3線交流電源10のそれぞれのインピーダンスは0オームである。そのため、第1充電経路のインピーダンスとしては、抵抗R1のインピーダンスが支配的になる。
第2充電経路では、配線Ln1、スイッチSW11、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10、配線N、3相3線交流電源10のそれぞれのインピーダンスは0オームである。そのため、第2充電経路のインピーダンスとしては、抵抗R1+抵抗R2のインピーダンスが支配的になる。
抵抗R1は、第1充電経路、第2充電経路に共通である。そのため、スイッチSW11、SW12のそれぞれがオン状態になると、配線Ln1、スイッチSW11、抵抗R1を流れるすべての電流は、その先の経路のインピーダンスが0オームである第1充電経路を流れる。なお、実際には、理想素子ではなく有限のインピーダンスが存在するため、第1充電経路のインピーダンスと第2充電経路のインピーダンスとの比に応じた電流が第2充電経路にも流れる。しかしながら、その場合であっても、配線Ln1、スイッチSW11、抵抗R1を流れる電流の大部分は第1充電経路を流れる。その結果、スイッチSW11、SW12のそれぞれがオン状態になると、第1充電経路に電流が流れ、コンデンサC1が充電される。
コンデンサC1が満充電されると、コンデンサC1を通る経路である第1充電経路には電流が流れない。そのため、コンデンサC1が満充電されると、配線N、配線Ln1、スイッチSW11、抵抗R1を流れるすべての電流は、第2充電経路を流れる。第2充電経路に電流が流れると、コンデンサC2が充電される。そして、コンデンサC2が満充電されると、電源回路1において、電流は流れなくなる。
【0027】
(配線Ln3における電位が配線Ln1における電位よりも高い場合)
電源回路1の起動時には、第3充電経路、第4充電経路の2つが存在する。
第3充電経路は、配線Ln3、スイッチSW12、ダイオードD5、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD2、抵抗R1、スイッチSW11、配線Ln1を介して3相3線交流電源10を通る経路である。
第4充電経路は、配線Ln3、スイッチSW12、ダイオードD5、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD2、抵抗R2、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10、配線Nを介して3相3線交流電源10を通る経路である。
ここで、配線N、配線Ln3、スイッチSW12、ダイオードD5、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD2、スイッチSW11、配線Ln1、3相3線交流電源10、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10のそれぞれが理想素子であると仮定する。
第3充電経路では、配線Ln3、スイッチSW12、ダイオードD5、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD2、スイッチSW11、配線Ln1、3相3線交流電源10のそれぞれのインピーダンスは0オームである。そのため、第3充電経路のインピーダンスとしては、抵抗R1のインピーダンスが支配的になる。
第4充電経路では、配線Ln3、スイッチSW12、ダイオードD5、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD2、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10、配線N、3相3線交流電源10のそれぞれのインピーダンスは0オームである。そのため、第4充電経路のインピーダンスとしては、抵抗R2のインピーダンスが支配的になる。
そのため、スイッチSW11、SW12のそれぞれがオン状態になると、第3充電経路と第4充電経路に流れる電流は、第3充電経路のインピーダンスである抵抗R1と第4充電経路のインピーダンスである抵抗R2の比に応じた電流となる。
抵抗R1と抵抗R2の比に応じて第3充電経路と第4充電経路に流れる電流によって、コンデンサC1、C2は充電される。
コンデンサC2がコンデンサC1よりも早く満充電になった場合、コンデンサC1は、第3充電経路に流れる電流によって充電され満充電になる。
また、コンデンサC1がコンデンサC2よりも早く満充電になった場合、以下に示すように、配線Ln1における電位と、配線Nにおける電位との電位関係に応じて流れる電流によって、コンデンサC2は充電され、満充電になる。具体的には、配線Ln1における電位が配線Nにおける電位よりも高い場合、配線Ln1、スイッチSW11、抵抗R1、抵抗R2、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10、配線Nを介して3相3線交流電源10を通る第5充電経路が形成される。そして、コンデンサC2は、第5充電経路に流れる電流によって充電される。また、配線Nにおける電位が配線Ln1における電位よりも高い場合、配線N、ダイオードD9、コンデンサC2、ダイオードD8、抵抗R2、抵抗R1、スイッチSW11、配線Ln1を介して3相3線交流電源10を通る第6充電経路が形成される。そして、コンデンサC2は、第6充電経路に流れる電流によって充電される。
そして、コンデンサC1、C2が共に満充電されると、電源回路1において、電流は流れなくなる。
【0028】
コンデンサC1及びC2が満充電された後に、スイッチSW2(SW21、SW22)、SW3のそれぞれは、オフ状態からオン状態に切り替わる(ステップS2)。このスイッチSW2(SW21、SW22)、SW3のそれぞれは、実験などにより予め決定したタイミング(例えば、スイッチSW1がオン状態になってから10秒後など)に、オフ状態からオン状態に切り替わるものであってよい。また、実験などにより予めコンデンサC1の両端の電位差及びコンデンサC2の両端の電位差のうちの少なくとも一方の電位差についてのしきい値を決定し、コンデンサC1の両端の電位差及びコンデンサC2の両端の電位差のうちの少なくとも一方の電位差がしきい値以上になった場合に、スイッチSW2(SW21、SW22)、SW3のそれぞれが、オフ状態からオン状態に切り替わるものであってもよい。スイッチSW21、SW22、SW3のそれぞれがオフ状態からオン状態に切り替わると、抵抗R1の第1端子と第2端子は、短絡される。また、スイッチSW21、SW22、SW3のそれぞれがオフ状態からオン状態に切り替わると、抵抗R2の第1端子と第2端子は、短絡される。
その結果、電源回路1は、直流電圧を生成するために電圧を伝送させる経路において抵抗R1及びR2が存在しない定常時の回路構成を実現することができる。
ここで、比較対象として、図3に示す電源回路1の起動時の突入電流を考える。図3において抵抗RAは、電源回路1の起動時にコンデンサC1に流れる突入電流を低減する抵抗である。また、抵抗RBは、電源回路1の起動時にコンデンサC2に流れる突入電流を低減する抵抗である。図3に示す電源回路1において、スイッチSW11及びスイッチSW12を閉状態にしてコンデンサC1及びC2が充電された後に、スイッチSW21、SW22、及び、SW3を閉状態にすることで、抵抗RAの両端は短絡する。その結果、抵抗RAによる損失は発生しない。しかしながら、図3に示す電源回路1において、抵抗RBの抵抗値は、コンデンサC1及びC2が充電された後にもそのまま変化しないため、抵抗RBにおいて損失が発生する。
本発明の第1の実施形態による電源回路1は、突入電流を低減するとともに、コンデンサC1及びC2が充電された後に、図3に示す電源回路1における抵抗RBによって生じるような損失を発生させない電源回路である。
【0029】
以上、本発明の第1の実施形態による電源回路1について説明した。
電源回路1の起動時に、突入電流が流れる電流経路に抵抗を挿入し、出力におけるコンデンサC1及びC2が充電された後に、電流経路に挿入した抵抗の両端をスイッチによって短絡させることによって、挿入した抵抗による損失が発生しないようにしている。
このようにすれば、電源回路1の起動時の突入電流を低減することができ、電源回路1が起動した後の定常状態において、電流経路に挿入した抵抗による損失の発生を抑えることができる。電源回路1の起動時の突入電流を低減することができれば、スイッチSW1、SW2、SW3のサイズを小さくすることができ、回路基板の面積や電源回路1のコストを削減することができる。
【0030】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態による電源回路の構成について説明する。
本発明の第2の実施形態による電源回路1は、本発明の第1の実施形態による電源回路1と同様に、起動時に電源回路1内部に流れる過電流の最大電流を低減し、定常時には3相3線交流電源から2つの直流電圧を生成する回路である。電源回路1は、図4に示すように、3相3線交流電源10、第1整流回路20、第2整流回路30、平滑回路40、スイッチSW1、スイッチSW2、スイッチSW3、抵抗R1、R3(突入電流抑制回路の一例)、コンデンサC1,C2を備える。電源回路1の起動時には、コンデンサC1を充電する経路、コンデンサC2を充電する経路、または、コンデンサC1とC2を充電する経路に電流が流れる。
【0031】
抵抗R1、R3のそれぞれは、電源回路1の起動時に電源回路1の内部を流れる突入電流を低減させる抵抗である。抵抗R1、R3のそれぞれは、第1端子、第2端子を備える。
【0032】
スイッチSW1は、スイッチSW11、SW12を備える。スイッチSW2は、スイッチSW21、SW22を備える。スイッチSW11、SW12、SW21、SW22、SW3のそれぞれは、電源回路1の起動時には突入電流の最大電流を低減させ、電源回路1の定常時には抵抗R1、R3に電力損失を生じさせないように、オフ状態(開状態)またはオン状態(閉状態)となる。
【0033】
配線Nは、ダイオードD9のアノード端子、ダイオードD10のカソード端子に接続される。
配線Ln1は、スイッチSW11の第1端子、スイッチSW21の第1端子、スイッチSW3の第1端子に接続される。配線Ln2は、スイッチSW22の第1端子に接続される。配線Ln3は、スイッチSW12の第1端子に接続される。
【0034】
スイッチSW11の第2端子は、抵抗R1の第1端子に接続される。スイッチSW12の第2端子は、ダイオードD5のアノード端子、ダイオードD6のカソード端子に接続される。
スイッチSW21の第2端子は、抵抗R3の第1端子、ダイオードD1のアノード端子、ダイオードD2のカソード端子に接続される。スイッチSW22の第2端子は、ダイオードD3のアノード端子、ダイオードD4のカソード端子に接続される。
スイッチSW3の第2端子は、抵抗R1の第2端子、抵抗R3の第2端子、ダイオードD7のアノード端子、ダイオードD8のカソード端子に接続される。
【0035】
ダイオードD1のカソード端子は、ダイオードD3のカソード端子、ダイオードD5のカソード端子、リアクトルL1の第1端子に接続される。
ダイオードD2のアノード端子は、ダイオードD4のアノード端子、ダイオードD6のアノード端子、コンデンサC1の第1端子に接続される。
ダイオードD7のカソード端子は、ダイオードD9のカソード端子、コンデンサC2の第1端子に接続される。
ダイオードD8のアノード端子は、ダイオードD10のアノード端子、コンデンサC2の第2端子に接続される。
コンデンサC1の第2端子は、リアクトルL1の第2端子に接続される。
【0036】
なお、コンデンサC1の第2端子は、電源回路1の端子T1である。コンデンサC1の第1端子は、電源回路1の端子T2である。コンデンサC2の第1端子は、電源回路1の端子T3である。コンデンサC2の第2端子は、電源回路1の端子T4である。電源回路1は、定常時に、端子T2を基準電位とする直流電圧を端子T1から出力する。また、電源回路1は、定常時に、端子T4を基準電位とする直流電圧を端子T3から出力する。
【0037】
次に、本発明の第2の実施形態による電源回路1の処理について説明する。
なお、本発明の第2の実施形態による電源回路1の処理フローは、図2に示した本発明の第1の実施形態による電源回路1の処理フローと同様である。また、電源回路1の起動前のスイッチSW11、SW12、SW21、SW22、SW3のそれぞれは、オフ状態(開状態)である。また、電源回路1の起動前には、コンデンサC1、C2のそれぞれに電荷は蓄積されていないものとする。
【0038】
電源回路1の起動時に、スイッチSW11、SW12のそれぞれは、オフ状態からオン状態に切り替わる(ステップS1)。
スイッチSW11、SW12のそれぞれがオン状態になると、Ln1相とLn3相とから成る線間回路と、Ln1相とN相とから成る相間回路とが形成される。
電源回路1の起動時に流れる電流は、配線Ln1における電位が配線Ln3における電位よりも高い場合と、配線Ln3における電位が配線Ln1における電位よりも高い場合とで異なる。
以下、配線Ln1における電位が配線Ln3における電位よりも高い場合と、配線Ln3における電位が配線Ln1における電位よりも高い場合のそれぞれについて、電源回路1を流れる電流を説明する。
【0039】
(配線Ln1における電位が配線Ln3における電位よりも高い場合)
電源回路1の起動時には、第7充電経路、第8充電経路の2つが存在する。
第7充電経路は、配線Ln1、スイッチSW11、抵抗R1、抵抗R3、ダイオードD1、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD6、スイッチSW12、配線Ln3を介して3相3線交流電源10を通る経路である。
第8充電経路は、配線Ln1、スイッチSW11、抵抗R1、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10、配線Nを介して3相3線交流電源10を通る経路である。
ここで、配線N、配線Ln1、スイッチSW11、ダイオードD1、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD6、スイッチSW12、配線Ln3、3相3線交流電源10、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10のそれぞれが理想素子であると仮定する。
第7充電経路では、配線Ln1、スイッチSW11、ダイオードD1、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD6、スイッチSW12、配線Ln3、3相3線交流電源10、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10のそれぞれのインピーダンスは0オームである。そのため、第7充電経路のインピーダンスとしては、抵抗R1+抵抗R3のインピーダンスが支配的になる。
第8充電経路では、配線Ln1、スイッチSW11、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10、配線N、3相3線交流電源10のそれぞれのインピーダンスは0オームである。そのため、第8充電経路のインピーダンスとしては、抵抗R1のインピーダンスが支配的になる。
抵抗R1は、第7充電経路、第8充電経路に共通である。そのため、スイッチSW11、SW12のそれぞれがオン状態になると、配線Ln1、スイッチSW11、抵抗R1を流れるすべての電流は、その先の経路のインピーダンスが0オームである第8充電経路を流れる。なお、実際には、理想素子ではなく有限のインピーダンスが存在するため、第7充電経路のインピーダンスと第8充電経路のインピーダンスとの比に応じた電流が第7充電経路にも流れる。しかしながら、その場合であっても、配線Ln1、スイッチSW11、抵抗R1を流れる電流の大部分は第8充電経路を流れる。その結果、スイッチSW11、SW12のそれぞれがオン状態になると、第8充電経路に電流が流れ、コンデンサC2が充電される。
コンデンサC2が満充電されると、コンデンサC2を通る経路である第6充電経路には電流が流れない。そのため、コンデンサC2が満充電されると、配線N、配線Ln1、スイッチSW11、抵抗R1を流れるすべての電流は、第7充電経路を流れる。第7充電経路に電流が流れると、コンデンサC1が充電される。そして、コンデンサC1が満充電されると、電源回路1において、電流は流れなくなる。
【0040】
(配線Ln3における電位が配線Ln1における電位よりも高い場合)
電源回路1の起動時には、第9充電経路、第10充電経路の2つが存在する。
第9充電経路は、配線Ln3、スイッチSW12、ダイオードD5、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD2、抵抗R3、抵抗R1、スイッチSW11、配線Ln1、配線Nを介して3相3線交流電源10を通る経路である。
第10充電経路は、配線Ln3、スイッチSW12、ダイオードD5、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD2、抵抗R3、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10、配線Nを介して3相3線交流電源10を通る経路である。
ここで、配線N、配線Ln3、スイッチSW12、ダイオードD5、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD2、スイッチSW11、配線Ln1、3相3線交流電源10、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10のそれぞれが理想素子であると仮定する。
第9充電経路では、配線Ln3、スイッチSW12、ダイオードD5、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD2、スイッチSW11、配線Ln1、3相3線交流電源10のそれぞれのインピーダンスは0オームである。そのため、第9充電経路のインピーダンスとしては、抵抗R1+抵抗R3のインピーダンスが支配的になる。
第10充電経路では、配線Ln3、スイッチSW12、ダイオードD5、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD2、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10、3相3線交流電源10のそれぞれのインピーダンスは0オームである。そのため、第10充電経路のインピーダンスとしては、抵抗R3のインピーダンスが支配的になる。
そのため、スイッチSW11、SW12のそれぞれがオン状態になると、配線Ln3、スイッチSW12、ダイオードD5、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD2、抵抗R3を流れるすべての電流は、その先の経路のインピーダンスが0オームである第10充電経路を流れる。なお、実際には、理想素子ではなく有限のインピーダンスが存在するため、第9充電経路のインピーダンスと第10充電経路のインピーダンスとの比に応じた電流が第9充電経路にも流れる。しかしながら、その場合であっても、配線Ln1、スイッチSW11、抵抗R1を流れる電流の大部分は第10充電経路を流れる。その結果、スイッチSW11、SW12のそれぞれがオン状態になると、第10充電経路に電流が流れ、コンデンサC1、コンデンサC2が充電される。
コンデンサC2がコンデンサC1よりも早く満充電になった場合、コンデンサC1は、第9充電経路に流れる電流によって充電され満充電になる。
また、コンデンサC1がコンデンサC2よりも早く満充電になった場合、以下に示すように、配線Ln1における電位と、配線Nにおける電位との電位関係に応じて流れる電流によって、コンデンサC2は充電され、満充電になる。具体的には、配線Ln1における電位が配線Nにおける電位よりも高い場合、配線Ln1、スイッチSW11、抵抗R1、抵抗R2、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10、配線Nを介して3相3線交流電源10を通る第11充電経路が形成される。そして、コンデンサC2は、第11充電経路に流れる電流によって充電される。また、配線Nにおける電位が配線Ln1における電位よりも高い場合、配線N、ダイオードD9、コンデンサC2、ダイオードD8、抵抗R1、スイッチSW11、配線Ln1を介して3相3線交流電源10を通る第12充電経路が形成される。そして、コンデンサC2は、第12充電経路に流れる電流によって充電される。
そして、コンデンサC1、C2が共に満充電されると、電源回路1において、電流は流れなくなる。
【0041】
コンデンサC1及びC2が満充電された後に、スイッチSW2(SW21、SW22)、SW3のそれぞれは、オフ状態からオン状態に切り替わる(ステップS2)。スイッチSW21、SW22、SW3のそれぞれがオフ状態からオン状態に切り替わると、抵抗R1の第1端子と第2端子、抵抗R3の第1端子と第2端子のそれぞれは、短絡される。
【0042】
その結果、電源回路1は、直流電圧を生成するために電圧を伝送させる経路において抵抗R1及びR3が存在しない定常時の回路構成を実現することができる。
【0043】
以上、本発明の第2の実施形態による電源回路1について説明した。
電源回路1の起動時に、突入電流が流れる電流経路に抵抗を挿入し、出力におけるコンデンサC1及びC2が充電された後に、電流経路に挿入した抵抗の両端をスイッチによって短絡させることによって、挿入した抵抗による損失が発生しないようにしている。
このようにすれば、電源回路1の起動時の突入電流を低減することができ、電源回路1が起動した後の定常状態において、電流経路に挿入した抵抗による損失の発生を抑えることができる。電源回路1の起動時の突入電流を低減することができれば、スイッチSW1、SW2、SW3のサイズを小さくすることができ、回路基板の面積や電源回路1のコストを削減することができる。
【0044】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態による電源回路の構成について説明する。
本発明の第3の実施形態による電源回路1は、本発明の第1の実施形態による電源回路1と同様に、起動時に電源回路1内部に流れる過電流の最大電流を低減し、定常時には3相3線交流電源から2つの直流電圧を生成する回路である。電源回路1は、図5に示すように、3相3線交流電源10、第1整流回路20、第2整流回路30、平滑回路40、スイッチSW1、スイッチSW2、スイッチSW3、抵抗R1、R4(突入電流抑制回路の一例)、コンデンサC1,C2を備える。電源回路1の起動時には、コンデンサC1を充電する経路、コンデンサC3を充電する経路、または、コンデンサC1とC2を充電する経路を電流が流れる。向に流れ、または、配線Ln3から配線Nの方向に流れる。
【0045】
抵抗R1、R4のそれぞれは、電源回路1の起動時に電源回路1の内部を流れる突入電流を低減させる抵抗である。抵抗R1、R4のそれぞれは、第1端子、第2端子を備える。
【0046】
スイッチSW1は、スイッチSW11、SW12を備える。スイッチSW2は、スイッチSW21、SW22を備える。スイッチSW11、SW12、SW21、SW22、SW3のそれぞれは、電源回路1の起動時には突入電流の最大電流を低減させ、電源回路1の定常時には抵抗R1、R4に電力損失を生じさせないように、オフ状態(開状態)またはオン状態(閉状態)となる。
【0047】
配線Nは、ダイオードD9のアノード端子、ダイオードD10のカソード端子に接続される。
配線Ln1は、スイッチSW11の第1端子、スイッチSW21の第1端子、スイッチSW3の第1端子に接続される。配線Ln2は、スイッチSW22の第1端子に接続される。配線Ln3は、スイッチSW12の第1端子に接続される。
【0048】
スイッチSW11の第2端子は、抵抗R1の第1端子、抵抗R4の第1端子に接続される。スイッチSW12の第2端子は、ダイオードD5のアノード端子、ダイオードD6のカソード端子に接続される。
スイッチSW21の第2端子は、抵抗R1の第2端子、ダイオードD1のアノード端子、ダイオードD2のカソード端子に接続される。スイッチSW22の第2端子は、ダイオードD3のアノード端子、ダイオードD4のカソード端子に接続される。
スイッチSW3の第2端子は、抵抗R4の第2端子、ダイオードD7のアノード端子、ダイオードD8のカソード端子に接続される。
【0049】
ダイオードD1のカソード端子は、ダイオードD3のカソード端子、ダイオードD5のカソード端子、リアクトルL1の第1端子に接続される。
ダイオードD2のアノード端子は、ダイオードD4のアノード端子、ダイオードD6のアノード端子、コンデンサC1の第1端子に接続される。
ダイオードD7のカソード端子は、ダイオードD9のカソード端子、コンデンサC2の第1端子に接続される。
ダイオードD8のアノード端子は、ダイオードD10のアノード端子、コンデンサC2の第2端子に接続される。
コンデンサC1の第2端子は、リアクトルL1の第2端子に接続される。
【0050】
なお、コンデンサC1の第2端子は、電源回路1の端子T1である。コンデンサC1の第1端子は、電源回路1の端子T2である。コンデンサC2の第1端子は、電源回路1の端子T3である。コンデンサC2の第2端子は、電源回路1の端子T4である。電源回路1は、定常時に、端子T2を基準電位とする直流電圧を端子T1から出力する。また、電源回路1は、定常時に、端子T4を基準電位とする直流電圧を端子T3から出力する。
【0051】
次に、本発明の第3の実施形態による電源回路1の処理について説明する。
なお、本発明の第3の実施形態による電源回路1の処理フローは、図2に示した本発明の第1の実施形態による電源回路1の処理フローと同様である。また、電源回路1の起動前のスイッチSW11、SW12、SW21、SW22、SW3のそれぞれは、オフ状態(開状態)である。また、電源回路1の起動前には、コンデンサC1、C2のそれぞれに電荷は蓄積されていないものとする。
【0052】
電源回路1の起動時に、スイッチSW11、SW12のそれぞれは、オフ状態からオン状態に切り替わる(ステップS1)。
スイッチSW11、SW12のそれぞれがオン状態になると、Ln1相とLn3相とから成る線間回路と、Ln1相とN相とから成る相間回路とが形成される。
電源回路1の起動時に流れる電流は、配線Ln1における電位が配線Ln3における電位よりも高い場合と、配線Ln3における電位が配線Ln1における電位よりも高い場合とで異なる。
以下、配線Ln1における電位が配線Ln3における電位よりも高い場合と、配線Ln3における電位が配線Ln1における電位よりも高い場合のそれぞれについて、電源回路1を流れる電流を説明する。
【0053】
(配線Ln1における電位が配線Ln3における電位よりも高い場合)
配線Nから配線Ln1を通って配線Nに戻る経路としては、第13充電経路、第14充電経路の2つが存在する。
第13充電経路は、配線Ln1、スイッチSW11、抵抗R1、ダイオードD1、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD6、スイッチSW12、配線Ln3を介して3相3線交流電源10を通る経路である。
第14充電経路は、配線Ln1、スイッチSW11、抵抗R4、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10、配線Nを介して3相3線交流電源10を通る経路である。
ここで、配線N、配線Ln1、スイッチSW11、ダイオードD1、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD6、スイッチSW12、配線Ln3、3相3線交流電源10、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10のそれぞれが理想素子であると仮定する。
第13充電経路では、配線Ln1、スイッチSW11、ダイオードD1、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD6、スイッチSW12、配線Ln3、3相3線交流電源10のそれぞれのインピーダンスは0オームである。そのため、第13充電経路のインピーダンスとしては、抵抗R1のインピーダンスが支配的になる。
第14充電経路では、配線Ln1、スイッチSW11、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10、配線N、3相3線交流電源10のそれぞれのインピーダンスは0オームである。そのため、第14充電経路のインピーダンスとしては、抵抗R4のインピーダンスが支配的になる。
そのため、スイッチSW11、SW12のそれぞれがオン状態になると、第13充電経路と第14充電経路に流れる電流は、第13充電経路のインピーダンスである抵抗R1と第14充電経路のインピーダンスである抵抗R4の比に応じた電流となる。
抵抗R1と抵抗R4の比に応じて第13充電経路と第14充電経路に流れる電流によって、コンデンサC1、C2は充電される。そして、コンデンサC1、C2が満充電されると、電源回路1において、電流は流れなくなる。
【0054】
(配線Ln3における電位が配線Ln1における電位よりも高い場合)
電源回路1の起動時には、第15充電経路、第16充電経路の2つが存在する。
第15充電経路は、配線Ln3、スイッチSW12、ダイオードD5、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD2、抵抗R1、スイッチSW11、配線Ln1を介して3相3線交流電源10を通る経路である。
第16充電経路は、配線Ln3、スイッチSW12、ダイオードD5、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD2、抵抗R1、抵抗R4、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10、配線Nを介して3相3線交流電源10を通る経路である。
ここで、配線N、配線Ln3、スイッチSW12、ダイオードD5、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD2、スイッチSW11、配線Ln1、3相3線交流電源10、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10のそれぞれが理想素子であると仮定する。
第15充電経路では、配線Ln3、スイッチSW12、ダイオードD5、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD2、スイッチSW11、配線Ln1、3相3線交流電源10のそれぞれのインピーダンスは0オームである。そのため、第15充電経路のインピーダンスとしては、抵抗R1のインピーダンスが支配的になる。
第16充電経路では、配線Ln3、スイッチSW12、ダイオードD5、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD2、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10、配線N、3相3線交流電源10のそれぞれのインピーダンスは0オームである。そのため、第16充電経路は、抵抗R1+抵抗R4のインピーダンスが支配的になる。
抵抗R1は、第15充電経路、第16充電経路に共通である。そのため、スイッチSW11、SW12のそれぞれがオン状態になると、配線Ln3、スイッチSW12、ダイオードD5、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD2、抵抗R1を流れるすべての電流は、その先の経路のインピーダンスが0オームである第15充電経路を流れる。なお、実際には、理想素子ではなく有限のインピーダンスが存在するため、第15充電経路のインピーダンスと第16充電経路のインピーダンスとの比に応じた電流が第16充電経路にも流れる。しかしながら、その場合であっても、配線Ln3、スイッチSW12、ダイオードD5、リアクトルL1、コンデンサC1、ダイオードD2、抵抗R1を流れる電流の大部分は第15充電経路を流れる。
コンデンサC2がコンデンサC1よりも早く満充電になった場合、コンデンサC1は、第15充電経路に流れる電流によって充電され満充電になる。
また、コンデンサC1がコンデンサC2よりも早く満充電になった場合、以下に示すように、配線Ln1における電位と、配線Nにおける電位との電位関係に応じて流れる電流によって、コンデンサC2は充電され、満充電になる。具体的には、配線Ln1における電位が配線Nにおける電位よりも高い場合、配線Ln1、スイッチSW11、抵抗R4、ダイオードD7、コンデンサC2、ダイオードD10、配線Nを介して3相3線交流電源10を通る第17充電経路が形成される。そして、コンデンサC2は、第17充電経路に流れる電流によって充電される。また、配線Nにおける電位が配線Ln1における電位よりも高い場合、配線N、ダイオードD9、コンデンサC2、ダイオードD8、抵抗R4、スイッチSW11、配線Ln1を介して3相3線交流電源10を通る第18充電経路が形成される。そして、コンデンサC2は、第18充電経路に流れる電流によって充電される。
そして、コンデンサC1、C2が共に満充電されると、電源回路1において、電流は流れなくなる。
【0055】
コンデンサC1及びC2が充電された後に、スイッチSW2(SW21、SW22)、SW3のそれぞれは、オフ状態からオン状態に切り替わる(ステップS2)。スイッチSW21、SW22、SW3のそれぞれがオフ状態からオン状態に切り替わると、抵抗R1の第1端子と第2端子は、短絡される。また、スイッチSW21、SW22、SW3のそれぞれがオフ状態からオン状態に切り替わると、抵抗R4の第1端子と第2端子は、短絡される。
その結果、電源回路1は、直流電圧を生成するために電圧を伝送させる経路において抵抗R1及びR4が存在しない定常時の回路構成を実現することができる。
【0056】
なお、本発明の実施形態における各スイッチは、電源回路1が備える制御装置(図示せず)によってオン状態とオフ状態とを切り替えるものであってもよい。
【0057】
なお、本発明の実施形態における処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0058】
記憶部のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲においてどこに備えられていてもよい。また、記憶部のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲において複数存在しデータを分散して記憶していてもよい。
【0059】
本発明の実施形態について説明したが、上述の電源回路1のそれぞれは内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータがそのプログラムを実行するようにしてもよい。
【0060】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例であり、発明の範囲を限定しない。これらの実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、省略、置き換え、変更を行ってよい。
【符号の説明】
【0062】
1・・・電源回路
10・・・3相3線交流電源
20・・・第1整流回路
30・・・第2整流回路
40・・・平滑回路
R1、R2、R3、R4・・・抵抗
C1、C2・・・コンデンサ
L1・・・リアクトル
D1、D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8、D9、D10・・・ダイオード
SW1、SW2、SW3、SW11、SW12、SW21、SW22・・・スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5