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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】電動歯ブラシ用替えブラシ
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/34 20060101AFI20220114BHJP
   A46B 13/02 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
A61C17/34 F
A46B13/02
A61C17/34 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017250963
(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公開番号】P2019115470
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴史
(72)【発明者】
【氏名】西浦 正洋
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0172813(US,A1)
【文献】特開2001-276097(JP,A)
【文献】特開2001-061870(JP,A)
【文献】特開平05-146314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 13/02~13/06
A61C 17/16~17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメント(2)を植毛した植毛台(3)が、構造変形が可能な接合部材(4)を介して替えブラシ外殻体(8)と揺動可能に接合され、
前記植毛台が電動歯ブラシ本体の駆動部の運動に伴い揺動可能な状態になるように、前記植毛台(3)と前記電動歯ブラシ本体の駆動伝達部がシャフト(6)で連結され
前記接合部材は環状であって中空部に前記植毛台が配置され、前記接合部材は前記植毛台の側面に接合され、
前記変形する接合部材(4)の周方向に直交する面に沿った断面形状がU字様若しくはV字様である、
電動歯ブラシ本体(1)に脱着可能な電動歯ブラシ用替えブラシ。
【請求項2】
前記変形する接合部材(4)が、エラストマ、ゴムまたはシリコーンで構成されている、請求項1に記載の電動歯ブラシ用替えブラシ。
【請求項3】
前記植毛台(3)が、往復運動もしくは正反転運動するように、前記植毛台(3)と前記電動歯ブラシ本体の駆動伝達部がシャフト(6)で連結された、請求項1または2に記載の電動歯ブラシ用替えブラシ。
【請求項4】
前記植毛台(3)が替えブラシの長軸方向の往復運動するように前記植毛台(3)と前記電動歯ブラシ本体駆動伝達部がシャフト(6)で連結された、請求項に記載の電動歯ブラシ用替えブラシ。
【請求項5】
前記接合部材(4)において前記U字様若しくはV字様の形状の開口部の距離をa(mm)とし前記植毛台(3)の運動方向における前記接合部材(4)の最大変形した場合の前記植毛台(3)の運動時の振幅をb(mm)とした場合、下記の数式が成立する、請求項に記載の電動歯ブラシ用替えブラシ。
0.5*b+0.1≦a≦0.5*b+1.0
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動歯ブラシ用の替えブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
電動歯ブラシは、モータの運動エネルギーを利用して歯ブラシのブラシを含むヘッド部を運動させることで、口腔内に使用したときの清掃効果を得るものであり、電源やモータを含む本体部と清掃効果を発生させるヘッド部、前記本体部とヘッド部とを連結する細長い構造体である連結構造部から構成される。口腔内における清掃の対象は、主として歯牙表面である。特に奥歯に近い部位において、歯面や歯茎と内頬部との間隙が狭いため歯ブラシのヘッド部が自在に動かしにくく、十分な清掃効果が得られにくいことが知られている。特に、電動歯ブラシの場合、ヘッド部を本体部モータの駆動力を活用して運動させることから通常の歯ブラシに比較してヘッド部分が大きくなり、奥歯に近い部位における清掃不良が発生しやすいという課題があった。このため、電動歯ブラシのヘッド部の構造を簡素化させるため、ブラシ部と連結構造部の全体を往復運動させることでヘッド部分を小型化させる試みがあった。
【0003】
しかし、小型化したとしても、口腔内の空隙と比較するとハブラシヘッド部は大きいため、ヘッド部と連結構造部の全体を往復運動させると清掃部位以外の電動歯ブラシと接触する口腔内部位に往復振動が伝わってしまうことは避けられない。このため、口腔内部位に与えられる振動による不快感や、外科的措置や外傷、炎症などにより口腔組織が外力に弱くなっている人、要介護者や幼児など本人以外が電動歯ブラシを取り扱う必要のある人においては、前記往復運動による振動により口腔組織に負担を与えたり、損傷させたりする危険がある。
【0004】
この課題を解決するため、従来のようにブラシ部だけを駆動させる新たな機構の電動歯ブラシが幾つか提案されている。例えば、磁石と励磁コイルを組合せ、ブラシ部をヘッド部にダイヤフラムやヒンジ構造を介して取り付ける技術(特許文献1)や多極着磁が施された永久磁石と励磁コイルを有する振動板を組合せてブラシ部を構成する技術(特許文献2)が挙げられる。しかし、これらのヘッド部の構造は簡素化できないため、従来の課題点であるヘッド部の小型化に関して十分に改善させることできないだけでなく、複雑な構造を有する場合が多いため、製造コストが高くなりすぎるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-045202号公報
【文献】特開2009-106355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高い清掃力を維持した状態で、清掃目的以外の口腔部位に対して振動を伝えにくく、使用感に優れ、かつ安全性に優れた電動歯ブラシ用の替えブラシを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、替えブラシ本体の主たる外観を形成する「替えブラシ外殻体(8)」とフィラメントの束を植毛した「植毛台(3)」を固着させるのではなく、替えブラシ外殻体(8)に対して植毛台(3)を揺動可能な状態で接合し、電動歯ブラシ本体(1)の駆動力を利用して前記植毛台(3)を振動、揺動、回転若しくは正反転させる構造とすることにより、高い清掃力を維持した状態で、口腔組織に対して出来る限り振動を伝達させない電動歯ブラシ用の替えブラシを提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の1~6項に記載の電動歯ブラシ用の替えブラシを提供するものである。
項1.フィラメント(2)を植毛した植毛台(3)が、構造変形が可能な接合部材(4)を介して替えブラシ外殻体(8)と揺動可能に接合され、
前記植毛台が電動歯ブラシ本体の駆動部の運動に伴い揺動可能な状態になるように、前記植毛台(3)と前記電動歯ブラシ本体の駆動伝達部がシャフト(6)で連結された、
電動歯ブラシ本体(1)に脱着可能な電動歯ブラシ用替えブラシ。
項2.前記変形する接合部材(4)が、エラストマ、ゴムまたはシリコーンで構成されている、項1に記載の電動歯ブラシ用替えブラシ。
項3.前記変形する接合部材(4)の断面形状がU字様若しくはV字様である、項1または項2の何れか1項に記載の電動歯ブラシ用替えブラシ。
項4.前記植毛台(3)が、往復運動もしくは正反転運動するように、前記植毛台(3)と前記電動歯ブラシ本体駆動伝達部がシャフト(6)で連結された、項1乃至3の何れか1項に記載の電動歯ブラシ用替えブラシ。
項5.前記植毛台(3)が替えブラシの長軸方向の往復運動するように前記植毛台(3)と前記電動歯ブラシ本体駆動伝達部がシャフト(6)で連結された、項4に記載の電動歯ブラシ用替えブラシ。
項6.前記U字様若しくはV字様の形状を有する接合部材(4)において、植毛台(3)の運動方向における接合部材(4)の最大変形した場合の位相差をa(mm)、前記植毛台(3)の運動時の振幅をb(mm)とした場合、下記の数式が成立する、項5に記載の電動歯ブラシ用替えブラシ。
0.5*b+0.1≦a≦0.5*b+1.0
【発明の効果】
【0009】
替えブラシ外殻体(8)を振動させずに植毛台(3)を動かして口腔清掃できるため、不快な振動を感じることがなく、乳幼児や要介護者など第三者が口腔清掃する場合や、口蓋、頬や舌などに障害を有する人に対しても、安心して使用可能な電動歯ブラシを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電動歯ブラシの正面図。
図2】電動歯ブラシの側面図。
図3】替えブラシの正面図。
図4図3とは異なる態様の替えブラシの正面図。
図5】替えブラシの側面図。
図6図3のZ-Z線における替えブラシの断面図。
図7図6のZ-Z線断面図におけるハブラシヘッド部拡大図。
図8】植毛台(3)のフィラメント植毛面の反対側の面を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0012】
本発明は、図1および図2に例示する電動歯ブラシにおける電動歯ブラシ本体(1)に脱着可能な替えブラシ本体(7)を提供するものであり、その代表的な形状を図3に例示する。
【0013】
電動歯ブラシ本体(1)は、少なくともモータなどの駆動部および直流や交流の電気を供給する電源部、電動歯ブラシ本体駆動伝達部、替えブラシ本体(7)を接合する固定部を有する、電動歯ブラシの把持部として機能する構造体を備えた構造体であり、通常は合成樹脂や金属などで構成された筒状部材の中に、モータなどの駆動部や電源部が組み込まれている。「電動歯ブラシ本体駆動伝達部(以降、単に「駆動伝達部」と記載する場合がある。)」とは、電動歯ブラシ本体(1)に内蔵されたモータの回転運動を替えブラシ本体(7)に伝播するために設けられた部位を意味する。電動歯ブラシを動かしたとき、駆動伝達部は電動歯ブラシ本体(1)の長軸方向を軸とする回転運動もしくは往復運動をする。
【0014】
本発明の替えブラシ本体(7)は、少なくとも一部に中空の構造体を有する替えブラシ外殻体(8)、少なくとも一部にフィラメント(2)が植毛された植毛台(3)、前記植毛台(3)と前記替えブラシ外殻体(8)とを揺動可能に接合するための力学的に変形可能な接合部材(4)、駆動伝達部の位相変化に連動して前記植毛台(3)が往復運動や回転運動などの運動を行なうようにするためのシャフト(6)、電動歯ブラシ本体(1)に接合するための固定部(5)を最低の構造要素として有する。
【0015】
フィラメント(2)を構成する素材としては、合成樹脂のほか、シリコーンやエラストマも使用できる。具体的には、ナイロン610、ナイロン612ナイロンやアラミドなどのポリアミド樹脂、あるいはポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレンテレフタレート(ポリトリメチレンテレフタレート、PPTあるいはPTT)又はポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などのポリオレフィン樹脂などの合成樹脂、ポリスチレン系(SBC)、ポリオレフィン系(TPO)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリウレタン系(PU)、ポリエステル系(TPEE)、ポリアミド系(TPAE)などのサーモプラスチックエラストマー(TPE)が挙げられる。前記の素材を単独で、若しくは2種以上の素材を均一に混合した混合物を使用してフィラメントに加工したものや、複数の素材で形成した部材を構造的に組み合わせて接合した複合構造を有するフィラメンとなどとして使用することができる。
【0016】
フィラメント(2)は、複数本数を束にして予め植毛台(3)に形成された植毛孔(9)に植毛される。植毛台(3)において植毛孔は1個もしくは複数個設置できる。植毛台(3)への植毛手段としては、「平線」と称される金属製の平板小片を用いてフィラメントの束を植毛台に固定する方法や、合成樹脂製のフィラメント束の一端を溶融や接着により一体化させたのちに植毛台に溶融、接着もしくは射出成形により樹脂で埋設して固定する方法を用いることが出来る。ただし、これらの方法に限定されず、常法であれば使用できる。
【0017】
前記替えブラシ外殻体(8)と前記植毛台(3)を構成する素材は合成樹脂であり、前記シャフト(6)を構成する素材は金属もしくは合成樹脂である。これらは同じ素材を使用してもよいし、異なる素材を用いてもよい。用いることのできる合成樹脂の種類としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチルテレフタレート(PTT)、ポリカーボネート(PC)、ポリオキシメチレン(ポリアセタール樹脂(POM))、スチレン・アクリロニトリル樹脂(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、セルロースプロピオネート(CP)、ポリアミド(PA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアリレート(PAR)、ポリ乳酸(PLA)等が挙げられるが、このなかでもポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオキシメチレン(ポリアセタール樹脂(POM))、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸(PLA)が好ましく、耐久性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオキシメチレン(ポリアセタール樹脂(POM))がより好ましい。前記替えブラシ外殻体(8)と前記植毛台(3)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)が最も好ましく、前記シャフト(6)はポリオキシメチレン(ポリアセタール樹脂(POM))が最も好ましい。
【0018】
植毛台(3)におけるフィラメント(2)を「植毛する面」の形状は、略円形、略楕円形、略長方形、略正方形、略三角形、略五角形、略六角形、略星型などが挙げられるが、これに限定されず任意の形状を有することができる。また、前記の「植毛する面」は平面だけでなく、凸方向に湾曲する面、傾斜面、複数の平面が凸方向や凹方向に段差を設けて連結された複合面など、様々な3次元構造も採用することができる。フィラメント(2)の植毛台(3)における植毛穴(9)の配置についても特に制限は無く、植毛台の形状に左右されず自在に設定することができる。さらには、尖円錐形や細円柱形などのフィラメント以外の構造体とフィラメントを混在させて植毛台に配置しても良い。
【0019】
接合部材(4)は、替えブラシ外殻体(8)を動かさず、シャフト(6)を介して連結された植毛台(3)を駆動伝達部の位相変化に連動して運動できるようにするための構造体である。植毛台(3)だけを運動させるために、電動歯ブラシの駆動力だけを活用して植毛台(3)を揺動させることができる接合部材(4)を用いて植毛台(3)と替えブラシ外殻体(8)を接合する。揺動可能に接合することができる接合部材(4)を構成する素材としては、電動歯ブラシのモータ駆動力で変形し得る素材であれば特に限定されるものではないが、例えば、弾性体若しくは易構造変形体を構成し得る金属や合成樹脂、エラストマ、シリコーンが挙げられる。この中でも、エラストマやシリコーンが製造コスト面やエネルギー効率面などにおいて優れているため好ましく、消費電力の省力化と接合部材の変形回復のエネルギーを植毛台の運動エネルギーに活用しうる観点から、ショアA硬度が30~55、好ましくは40~55、更に好ましくは45~55のエラストマやシリコーンが最も好ましい。
【0020】
接合部材(4)の構造は、電動歯ブラシの駆動力によって接合部材(4)の構造が変形し得る形状であれば特に限定されるものではない。ただし、少なくとも十分な口腔清掃機能が得られる程度の植毛台(3)の運動を実現でき、かつ長時間使用しても接合部材(4)が破損しない安定な構造にする必要がある。また、使用時に口腔内に挿入されるブラシ部(11)は図7に例示するようにその内部が複雑な構造を有するため、水分や歯磨き剤などがブラシ部内部に侵入すると洗浄や乾燥を十分に行いにくいことから、衛生面で不都合を生じるだけでなく、替えブラシの耐久性や運動機能を低下させる恐れがある。従って、水などが接合部材(4)の接合部位からブラシ部(11)内部に浸入できない構造とすることが好ましい。接合部材(4)の構造としては、線系方向に伸縮可能な糸状構造;平面方向に伸縮可能もしくは上下方向に変形可能な薄膜・薄板状構造;コイル様構造;変形可能なU字、V字、W字、ジグザグ様やウェーブ様の断面を有する構造体や圧縮変形が可能なスポンジ様の内部構造を有する構造体などが挙げられる。この中でも連続した接合面を構成し得る、薄板状構造、変形可能なU字、V字、W字、ジグザグ様やウェーブ様の断面を有する構造体や圧縮変形が可能なスポンジ様の内部構造を有する構造体が好ましく、耐久性やエネルギー効率の観点から変形可能なU字、V字、W字、ジグザグ様やウェーブ様の断面を有する構造体がより好ましく、変形可能なU字、V字、ウェーブ様の断面を有する構造体がさらに好ましく、変形可能なU字若しくはV字の断面を有する構造体が最も好ましい。なお、植毛台(3)の運動の位相差(移動距離で単位はmm、例えば、往復運動の場合は振幅を意味する)をbとし、接合部材(4)の好ましい構造としては、植毛台(3)の運動方向における接合部材(4)の最大変形した場合の位相差をa(単位はmm)とした場合、aの好ましい範囲は、0.5*b+0.1mm~0.5*b+1.0mmである。
【0021】
本発明では、替えブラシ外殻体(8)を動かさず植毛台(3)だけを動かすことにより、高い口腔内の清掃力を維持した状態で、清掃目的以外の口腔部位に対して電動歯ブラシの振動を伝えにくい効果が得られる。接合部材(4)により替えブラシ外殻体(8)に接合された植毛台(3)を運動させるため、駆動伝達部と植毛台(3)を細長い形状を有するシャフト(6)と必要に応じて運動の変換機能を有する運動変換部材で連結している。これにより、替えブラシ外殻体(8)に影響を与えずに駆動伝達部の運動を植毛台(3)に伝播することができる。
【0022】
駆動伝達部と植毛台(3)とのシャフト(6)による連結手段は、駆動伝達部や植毛台(3)がどのような運動を行なうかにより適宜選択される。具体的には、駆動伝達部の運動パターンは、電動歯ブラシ本体(1)の長軸方向への往復振動運動か、電動歯ブラシ本体(1)の長軸方向を回転軸とした回転運動の何れかであり、植毛台(3)の運動パターンは、替えブラシ本体(7)の長軸方向への往復運動、替えブラシ本体(7)の長軸方向を回転軸とする搖動運動、植毛台(3)の水平面への垂線を回転軸とする回転運動か反転運動、もしくは前記運動を組み合わせた複合運動の何れかである。これらの組合せを可能にする連結手段であればとくに限定されるものではない。ただし、替えブラシの構造をより簡素化したり、替えブラシのヘッド部の大きさをより小さくできることから、駆動伝達部の運動を変換せずに植毛台(3)に伝播することが好ましく、中でも、駆動伝達部が電動歯ブラシ本体の長軸方向の往復運動し、それに連動して植毛台(3)が、替えブラシの長軸方向に往復運動する組合せが最も好ましい。
【0023】
植毛台(3)はシャフト(6)と連動した運動を行なう場合は、植毛台(3)とシャフト(6)は、接合部材を介さずに直接接合することもできるが、運動の種類や振動数などの運動の状態が植毛台(3)とシャフト(6)で相違する場合は、その際を変換する変換機構を介して接合される。変換機構は、例えば特願2016-101829の図7-9に示したような運動の種類を変換するための構造を意味する。植毛台(3)は、シャフト(6)若しくは変換機構と接合し高速で運動し、かつ場合によっては高頻度で運動方向を変化する。一方、口腔清掃する場合、フィラメント(2)を歯牙表面などの清掃部位に押し当てて使用することから、植毛台(3)は前記の運動を行なうときに、様々な方向から応力を受けることになるが、植毛台(3)は歯ブラシのブラシ部を主に構成する平板様の構造体のため、シャフト等以外からの応力を受けると、円滑な運動が阻害され易い。この状況において円滑な運動を確保するために、植毛台(3)とシャフト等との接合方法は、適宜選択できる。例えば、植毛台と固着させる方法だけでなく、特願2016-101829の図7-9に示したように固着させない方法も採用でき、植毛台との接合点は、1箇所に限定されず、本願明細書の図8に示すような2箇所以上で接合させても良い。また、接合部位の接合構造に関しては、ピン構造と孔構造やピン先構造を包み込むような構造(たとえば、溝様構造、釜状構造など)の組合せや、凹凸構造の組合せなどが挙げられる。更に、凹凸構造の組合せの場合は、その断面形状が、略円形や略楕円形だけでなく、三角形や四角形などの多角形、涙形のような形状を適宜選択できる。また、植毛台(3)とシャフト等は、両者を固着させることも選択できる。固着させる場合は、接着剤や溶融による接着を用いることができる。
【0024】
図1図2に本発明の電動歯ブラシの1態様の全体図を示した。電動歯ブラシは電動歯ブラシ本体(1)と替えブラシ本体(7)から構成され、図に示すとおり両者は互いに長軸方向で接合される。替えブラシ本体(7)のブラシ部(11)はフィラメント(2)を植毛した合成樹脂製の植毛台(3)と替えブラシ外殻体(8)が接合部材(4)を介して結合している構造を有する接合部材(4)は植毛台(3)および替えブラシ外殻体(8)との間はすべての境界において、水などブラシ部(11)の内部に侵入できない程度に密着している。替えブラシ本体(7)の側面から見た場合、図2に示した態様では、植毛台(3)は接合部材(4)に隠れて視認できないが、接合部材(4)の配置や構造を変化させることにより視認できるように配置することもできる。植毛台(3)の形状は電動歯ブラシ先端方向の辺のみが半円形の略長方形であるが、その形状は自由に設計可能である。
【0025】
図1に示した電動歯ブラシから替えブラシ本体(7)を取り外し、正面から見た状態を図3に示す。図3に示した態様における植毛台(3)の運動は、替えブラシ本体(7)の長軸方向に往復運動する場合かZ-Z軸を回転軸とする揺動運動(Z-Z軸を中心とする植毛台の僅かな正反転の回転運動)する場合の何れかを選択することができる。
【0026】
図4図3に示した替えブラシ本体(7)の別態様を示す。図3との相違点は、替えブラシ外殻体(8)の一部に開口部(12)を設けている。図4に示した替えブラシ本体(7)では、植毛台(3)と駆動伝達部とを連結する細長いシャフト(6)を視認することができる。前記開口部の大きさや替えブラシ本体における配置は自由に設計可能であるが、開口部(12)を設ける場合は、ブラシ部(11)内部に水などが浸入しないための工夫を別途施すことが好ましい。
【0027】
図1に示した電動歯ブラシから替えブラシ本体(7)を取り外し、側面から見た状態を図5に示す。図5の5に示す固定部は電動歯ブラシ本体(1)との結合部分であり、この態様の場合は電動歯ブラシ本体に差し入れた後に、替えブラシ本体(7)の長軸方向を回転軸として替えブラシ本体(7)を回転させることで固定できる固定方法を用いている。替えブラシ外殻体(8)は図に示すように2つの部材から構成されている。
【0028】
図3のZ-Z線における替えブラシ本体(7)の断面図を図6に示す。図6に示した態様では、植毛台(3)は替えブラシ本体(7)の長軸方向に往復運動する。植毛台(3)はU字様の断面を有する環状の接合部材(4)で接合されている。シャフト(6)は植毛台(3)の植毛面の反対側と連結し、シャフト(6)の端部に設けた凹部(10)に電動歯ブラシ本体駆動伝達部を挿入することで駆動伝達部の運動を植毛台(3)に伝達する。図3に示す態様では、駆動伝達部は電動歯ブラシ本体(1)の長手方向に往復運動する棒状の部材で構成されている。
【0029】
図7は、図6のヘッド部(11)を拡大した図である。U字様の断面を有する環状の接合部材(4)は植毛台(3)の側面上部で接合しているが、接合強度が得られにくい場合は、植毛台側面の全面で接合させても良い。更に、接合する植毛台や替えブラシ外殻体の部位を図7に示すように切り込みを入れた構造にした場合、接合部材(4)との接触面が増加し接合強度が高まるため、より好ましい。なお、U字様の内部は空洞である。
【0030】
植毛台(3)のフィラメントが植毛されている反対側の面には、図8に示した3箇所の凸部構造がシャフト(6)との接合部(12)として設けられている。この接合部(12)は凹部構造でも良いが、ハブラシヘッド部の大きさを小さくするためには凸部構造が好ましい。図8では凸部の形状は略円柱状であるが、丸状の断面を有さない凸部も問題なく使用できる。植毛台(3)を円滑に動かすためには図8に示したように植毛台(3)の中央部付近と左右側面付近の3箇所に接合部を設けることが好ましく、ハブラシヘッド部の大きさを小さくするためには、植毛台(3)の電動ハブラシ長手方向において、ハブラシ先端部側に植毛台(3)の中央部付近に一つの凸部構造を、ハブラシ把持部側に植毛台の左右側面付近の1対の凸部構造を設けることが好ましい。なお、図8では3箇所の凸部断面積の大きさがほぼ同じであるが、異なっていても良い。加えて、植毛台(3)とシャフト(6)の接合状態の耐久性を高める目的で、接合部(12)と接するシャフト(6)の植毛台の反対側付近に替えブラシ外殻体(8)と接触面を有する構造体(15)を設けることが好ましい。植毛台(3)の電動歯ブラシ長手方向において、中央部付近の接合部(12)と左右側面付近の1対の接合部(12)との間が離れている場合、複数の構造体(15)を各々の接合部(12)に対応する部位付近に設けるか、それらを結合した一様な構造体(15)にすることになるが、その場合は運動時の摩擦による応力が大きくなり、エネルギー効率の観点から好ましくない。図7に示すように、ハブラシ把持部側に位置する植毛台の左右側面付近の1対の凸部を植毛台の電動歯ブラシ長手方向の中央部付近若しくはそれより電動ハブラシ先端部に位置する領域に設けることにより、前記構造体(15)の数を減したり、大きさを小さくすることができるため、替えブラシ外殻体(8)との接触面積を減らすことができる。加えて、構造体(15)と接する替えブラシ外殻体(8)側の部位において、平面構造ではなく、複数の小突起構造に変えることにより、更にエネルギー損失を減らすことができる。
【0031】
図7の態様では、替えブラシ外殻体(8)に突起部(13)とシャフト(6)に凸部構造体(14)を設けている。図6に示したシャフト(6)と駆動伝達部の接合方法を採用した場合、替えブラシ本体(7)を電動ブラシ本体(1)から外す際に、シャフト(6)に対して、電動歯ブラシ長手方向に大きな応力が発生しすることから、替えブラシの内部構造を破損する恐れがある。このため、この1対の構造体を設けることによりシャフト(6)の移動を規制することにより前記の破損を防止することができる。規制する手段は図7に示す構造に限定されないが、図7や8に示したように、植毛台の左右1対の凸部は植毛台のハブラシ長手方向の略中央付近の左右側面に配置した場合でも、植毛台(3)の電動歯ブラシ把持部方向の端部をシャフト(6)に設けた凸状構造体(14)の面で支え、その面上で動かすことにより円滑な植毛台(3)の運動を得ることができる
【符号の説明】
【0032】
1 電動歯ブラシ本体
2 フィラメント
3 植毛台
4 接合部材
5 固定部
6 シャフト
7 替えブラシ本体
8 替えブラシ外殻体
9 植毛孔
10 電動歯ブラシ本体駆動伝達部と接合する凹部
11 ブラシ部
12 植毛台(3)のシャフト(6)との接合部
13 替えブラシ外殻体(8)の突起部
14 シャフト(6)の凸状構造体
15 シャフト(6)の替えブラシ外殻体(8)と接する構造体

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8