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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】内蔵型生物学的インジケータ
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/28 20060101AFI20220203BHJP
   A61L 101/22 20060101ALN20220203BHJP
   A61L 101/38 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
A61L2/28
A61L101:22
A61L101:38
【請求項の数】 22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017252897
(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公開番号】P2018114269
(43)【公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】15/397,018
(32)【優先日】2017-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591286579
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ダグ・ボ・チュオン
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0149094(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102498218(CN,A)
【文献】特開昭57-068780(JP,A)
【文献】米国特許第04839291(US,A)
【文献】米国特許第04732850(US,A)
【文献】特開2017-153476(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0253845(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107137741(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/28
A61L 101/22
A61L 101/38
C12M 1/34
C12Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ハウジングと、
(b)液体増殖培地を含有し、前記ハウジング内に配置されるアンプルであって、第1のドーム、第2のドーム、及び側壁を有する、アンプルと、
(c)前記ハウジングに連結されるキャップであって、前記アンプルの長手方向中心軸及び前記ハウジングの長手方向中心軸が実質的に一直線になるように、摩擦嵌合によって前記アンプルに連結される突起部を有する、キャップと、
(d)前記ハウジング内に配置された挿入部材であって、
(i)前記第2のドームの少なくとも一部が内部に配置されるウェルと、
(ii)前記アンプルの前記長手方向中心軸に対して少なくとも5度の角度が付けられ、前記アンプルの前記第2のドームと接触する傾斜面と、
(iii)前記第2のドームより上に、前記アンプルの前記側壁と隣接して配置され、前記傾斜面の反対側に設けられた先端部を有する応力集中部分と、を有する、挿入部材と、
(e)前記ハウジングの底部に配置され、細菌または活性酵素を含浸させた担体と、を含む、生物学的滅菌インジケータ。
【請求項2】
前記挿入部材が、前記ウェルより上に延在するアームを更に含み、前記応力集中部分が前記アーム上に配置されている、請求項1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
【請求項3】
前記傾斜面及び前記応力集中部分が、前記アンプルの前記長手方向中心軸に沿って前記キャップから離れる方向への前記アンプルの動きを制限するように構成されている、請求項1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
【請求項4】
前記応力集中部分の前記先端部は、尖った先端部である、請求項1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
【請求項5】
前記応力集中部分の前記先端部は、丸みを帯びた先端部である、請求項1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
【請求項6】
前記応力集中部分が、前記第2のドームより少なくとも5mm上に配置されている、請求項1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
【請求項7】
前記応力集中部分が、前記第2のドームより少なくとも10mm上に配置されている、請求項6に記載の生物学的滅菌インジケータ。
【請求項8】
前記応力集中部分が、少なくとも5度の弧形に広がっている、請求項1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
【請求項9】
前記応力集中部分が、少なくとも15度の弧形に広がっている、請求項1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
【請求項10】
前記応力集中部分が、少なくとも30度の弧形に広がっている、請求項9に記載の生物学的滅菌インジケータ。
【請求項11】
前記傾斜面が、少なくとも30度の弧形に広がっている、請求項1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
【請求項12】
前記傾斜面が、少なくとも50度の弧形に広がっている、請求項11に記載の生物学的滅菌インジケータ。
【請求項13】
前記アンプルが前記ハウジングと接触しない、請求項1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
【請求項14】
前記応力集中部分が前記アンプルの前記側壁に接触する、請求項1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
【請求項15】
生物学的インジケータを起動する方法であって、
前記生物学的インジケータは、
(a)ハウジングと、
(b)液体増殖培地を含有し、前記ハウジング内に配置されるアンプルであって、第1のドーム、第2のドーム、及び側壁を有する、アンプルと、
(c)前記ハウジングに連結されるキャップであって、前記アンプルの長手方向中心軸及び前記ハウジングの長手方向中心軸が実質的に一直線になるように、摩擦嵌合によって前記アンプルに連結される突起部を有する、キャップと、
(d)前記ハウジング内に配置された挿入部材であって、
(i)前記第2のドームの少なくとも一部が内部に配置されるウェルと、
(ii)前記アンプルの前記長手方向中心軸に対して少なくとも5度の角度が付けられ、前記アンプルの前記第2のドームと接触する傾斜面と、
(iii)前記第2のドームより上に、前記アンプルの前記側壁と隣接して配置され、前記傾斜面の反対側に設けられた先端部を有する応力集中部分と、を有する、挿入部材と、
(e)前記ハウジングの底部に配置され、細菌または活性酵素を含浸させた担体と、を含み、
(a)前記アンプルの前記第2のドームと前記挿入部材の前記傾斜面との間に第1の反力を生成することであって、前記第1の反力の要素が前記アンプルの前記長手方向中心軸に対して横に方向付けられる、ことと、
(b)前記第1の反力の要素に反応して、前記アンプルの前記側壁と前記応力集中部分の前記先端部との間に第2の反力を生成することと、
(c)前記アンプルを破壊することと、を含む、方法。
【請求項16】
前記アンプルを破壊する工程が、前記応力集中部分と前記アンプルの前記側壁との間の接触点のクラックを発生させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記応力集中部分が、前記アンプルの前記側壁と接触するように構成されている挿入部材の特徴部であり、前記挿入部材が、ただ1つの応力集中部分を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記傾斜面が、前記挿入部材の特徴部である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記挿入部材が、前記生物学的インジケータの前記ハウジング内に配置されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記アンプルは、前記第2の反力が生成される前に前記傾斜面上に静置する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アンプルが、前記生物学的インジケータの前記ハウジングと接触できない、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記キャップと前記ハウジングとの間に圧縮力を加えて、前記第1の反力を生成することを更に含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される内容は、内蔵型生物学的滅菌インジケータに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用装置は、対象に感染症を引き起こす恐れのある汚染した装置が対象に使用されるかもしれないという可能性を最小限度に抑えるために、通常使用前に滅菌される。種々の滅菌技術は、ガスプラズマ及び酸化エチレン(EtO)の使用又は不使用に関わらず、例えば蒸気、過酸化水素及び気相滅菌を用いてもよい。これらの方法のそれぞれは滅菌される医療用装置に応じて、ある程度滅菌流体、通常気体の拡散速度に依存する。
【0003】
滅菌前、医療用装置は半透性バリアを有する容器又はパウチ内に通常包装されており、それは滅菌流体-滅菌剤と呼ばれることもある-の透過を可能にするが、汚染微生物の進入を、特に滅菌後にパッケージが医療関係者によって開かれるまで防ぐ。滅菌サイクルを生き残った一部の微生物は、増殖し医療機器を再汚染する恐れがあるので、滅菌サイクルを効果的にするには、パッケージ内の汚染微生物を死滅させなければならない。
【0004】
包装は無菌の医療用装置の汚染を防ぐのに役立つが、その内部に収容する装置又は器具に滅菌剤が到達するのを包装が妨げるので、包装は成功した滅菌サイクルを成し遂げる難しさを増加させる可能性がある。これは特にその内部に拡散制限空間を有する装置及び器具にとって問題となり、それは滅菌サイクルが効果的であり得る可能性をこれらの拡散制限空間が減らすからである。例えば内視鏡は通常、成功した滅菌サイクルを達成するために滅菌剤が十分な時間に十分な濃度で拡散しなければならない細長い内腔を有する。
【0005】
滅菌サイクルが有効であったことを確認することは、医療関係者が対象に汚染した医療用装置を使用することを回避するのに役立つ。通常、滅菌した医療用装置それ自体は汚染微生物を点検せず、それはこのような働きが他の汚染微生物を医療用装置にもたらし、それによって装置を再汚染するからである。このように間接的な点検が滅菌インジケータの形態で開発されている。
【0006】
滅菌インジケータは、この滅菌インジケータが医療機器と同じ滅菌サイクルを受けるように、滅菌サイクルを受ける医療機器の横に、又はその付近に配置し得る装置のことである。例えば滅菌剤への周知の耐性を有する微生物の所定量を有する生物学的インジケータは、医療用装置と一緒に滅菌室内に入れられて、滅菌サイクルを受ける。サイクル完了後、サイクルを生き残った微生物が存在するか否かを判定するために、生物学的インジケータ内の微生物を培養可能である。
【0007】
特定の生物学的インジケータは「内蔵型」と称される。これらの生物学的インジケータは通常、微生物の量及び微生物の近くに配置されている壊れやすい容器の増殖培地源を含有するハウジングを含む。他の生物学的インジケータのように、「内蔵型」生物学的インジケータ(「SCBI」)は医療用装置とともに滅菌サイクルを受ける可能性がある。サイクルの後、壊れやすい容器は、増殖培地を放出して、生存している微生物をin situ培養するために破壊され得る。SCBIを高温で、通常約50℃~60℃で培養することができ、それは生存している微生物の成長を促す。市販の製品を使用する培養は通常、約24時間の間継続する。この間、滅菌の効果は未確認のままである一方で、医療関係者が医療用装置を使用しないことが望ましい。これは、例えば、病院のような保健医療提供者にとって在庫管理の非効率性を引き起こす可能性がある。例えば、医療機器の十分な供給を確保するためには、医療用装置を使用できない間も保管する必要があり、そのような必要がない場合に保健医療提供者が在庫させておくよりも多くの医療用装置を在庫しておくことを必要とするからである。あるいはヘルスケア提供者は、培養が終了しかつ滅菌の有効性が確認される前に医療用装置を使用できる。しかし滅菌の有効性が確認される前に医療用装置を使用することは、その医療処置を受ける患者を、医療用装置からの感染症に罹患させる危険性にさらすことになり得る。
【0008】
培養後、SCBIは微生物の存在を検出するために分析される。微生物が検出されれば、いくつかのSCBIは、微生物の存在下で色を変える増殖培地を含むように設計されている。色の変化が検出されれば、滅菌サイクルは効果がなかったと考えられる。微生物が検出されなければ、滅菌サイクルは有効だったと考えられる。この色の変化は、増殖培地を代謝させる、生きている微生物による酸生成によって生じるpHの変動によるものであり得て、それはpH指示染料も含有する。他のSCBIは、蛍光が媒体に含まれる生存可能な微生物の量に依存する蛍光物質を含む、増殖培地を含むように設計されている。これらのSCBIにおいて、色の変化又は蛍光量の変化は、培養中、生存している微生物を増殖させ得ることを示す。
【0009】
液体増殖培地を含むSCBIの壊れやすい容器は、多くの場合ガラスから製造される。輸送中、例えばSCBIの製造業者からヘルスケア提供者への輸送中破損を防止するために、ガラスは十分に頑丈でなければならない。しかしこのような頑丈さは、所望の時間で医療関係者がアンプルを壊すのに必要とするより大きな力に相当する。したがっていくつかのSCBI製造業者は作動装置を病院職員に提供して、それらがアンプルの破壊を補助する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
SCBIは、いくつかの実施形態では、ハウジングと、ハウジング内に配置されたアンプルとを含み、アンプルは第1のドーム、第2のドーム、及び側壁を有する、ということが開示される。キャップは、ハウジングに連結されてもよい。キャップは、例えば摩擦嵌合によって、アンプルに連結され得る突起部を含んでもよい。突起部は、アンプルの長手方向中心軸、キャップの長手方向中心軸、及びハウジングの長手方向中心軸が実質的に一直線になるように、キャップ上で中心合わせされる。挿入部材は、ハウジング内に配置されてもよい。挿入部材は、アンプルの下部ドームの少なくとも一部が内部に配置され得るウェルを含んでもよい。挿入部材はまた、アンプルの長手方向中心軸に対して少なくとも5度の角度が付けられた傾斜面を含んでもよい。アンプルの第2のドームは、傾斜面と接触してもよい。挿入部材はまた、ウェルより上へ延在し、応力集中部分が配置されているアーム又は指部を含んでもよく、それにより、挿入部材はまた、アンプルの第2のドームより上に、かつアンプルの側壁に隣接して配置される。
【0011】
いくつかの実施形態では、傾斜面及び応力集中部分は、アンプルの長手方向中心軸に沿ってキャップから離れる方向へのアンプルの動きを制限するように構成される。いくつかの実施形態では、応力集中部分は、尖った先端部を有する。いくつかの実施形態では、応力集中部分は、丸みを帯びた先端部を有する。いくつかの実施形態では、応力集中部分は、第2のドームより少なくとも約5mm上に配置されてよい。いくつかの実施形態では、応力集中部分は、第2のドームより少なくとも約10mm上に配置されてよい。いくつかの実施形態では、応力集中部分は、少なくとも約5度の弧形に広がる。いくつかの実施形態では、応力集中部分は、少なくとも約15度の弧形に広がる。いくつかの実施形態では、傾斜面は、少なくとも約30度の弧形に広がる。いくつかの実施形態では、傾斜面は、少なくとも約50度の弧形に広がる。いくつかの実施形態では、挿入部材は、傾斜面が広がる弧の中点と、応力集中部分が広がる弧の中点が、挿入部材の直径と同一線上になるように、円形形状を有する。いくつかの実施形態では、アンプルは、ハウジングと接触しない。いくつかの実施形態では、応力集中部分は、アンプルの側壁と接触する。
【0012】
また、本明細書では、SCBIを起動するために実行され得る工程が開示されている。これらの工程は、a)アンプルのドームと斜面状の表面との間に第1の反力を生成することであって、第1の反力の要素がアンプルの長手方向中心軸に対して横に方向付けられる、ことと、b)第1の反力の要素に反応して、アンプルの側壁と応力集中部分との間に第2の反力を生成することと、c)アンプルを破壊することと、を含む。アンプルを破壊する工程は、応力集中部分とアンプルの側壁との間の接触点のクラックを発生させることを含み得る。更に、第1の反力は、SCBIのキャプとハウジングとの間の圧縮力を加えることによって生成され得る。
【0013】
前述の工程を実行するのに使用され得るSCBIは、挿入部材の特徴部であり、アンプルの側壁に接触するように構成されている、応力集中部分を含み得る。SCBIの挿入部材は、ただ1つの応力集中部分を含み得る。SCBIの斜面状の表面は、挿入部材の特徴部であり得る。挿入部材は、SCBIのハウジング内に配置され得る。アンプルは、反力が生成される前に、斜面状の表面上に静置し得る。キャップは、ハウジングに連結されてよく、また、摩擦嵌合によってアンプルに連結されてもよい。アンプルは、ハウジングに接触できない。
【0014】
本明細書で使用する場合、「表面」という用語は、対象物の境界を形成するための特徴部として理解されなければならない。
【0015】
本明細書で使用する場合、「壁」という用語は、対象物の側部、上部又は側部の少なくとも一部を形成する対象物の特徴部として理解されなければならない。壁は表面の一例である。
【0016】
本明細書で使用する場合、「挿入部材」という用語は、別の対象物によって画定される空間又は空洞内に配置される対象物として理解されなければならない。
【0017】
本明細書で使用する場合、「アーム」、「指部」、及び「突出部」という用語はそれぞれ、対象物の別の特徴部で始まり、かつそれから離れる方向に延在する対象物の細長い部材として理解されなければならない。
【0018】
本明細書で使用する場合、「担体」という用語は、微生物及び/又は酵素が配置されている対象物として理解されなければならない。
【0019】
本明細書で使用する場合、「反力」という用語は、対象物に対する別の力に反応して、対象物によって生成される力として理解されなければならず、少なくとも反力の要素は、別の力の方向の反対方向を示す。
【0020】
本明細書で使用する場合、「応力集中部分」という用語は、対象物に反力を及ぼすように構成されている表面積を含む特徴部として理解されなければならず、反力を及ぼすように構成される表面積は、別の力が及ぼされる対象物の表面積より狭い。
【0021】
本明細書で使用する場合、「摩擦嵌合」という用語は、摩擦によって達成される2つ以上の表面の間の連結関係として理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本明細書は、本明細書に記載の主題を特定しかつ明確に権利主張する特許請求の範囲をもって結論とするものであるが、主題は下記の特定の例の説明を添付図面と併せ読むことからより深い理解が得られるものと考えられる。図中、類似の参照番号は同じ要素を示す。
図1】SCBIの側面断面図を示す。
図2】SCBIの等角分解図を示す。
図3】SCBIの挿入部材の上面図を示す。
図4図1の断面図の一部の詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の説明は、特許請求されている主題の特定の例示的ないくつかの例を記載する。本技術の他の例、特徴、態様、実施形態及び利点は、以下の説明から当業者には明らかになるであろう。したがって図面及び説明は、実質的に例示的なものとしてみなされなければならない。
【0024】
図1及び図2を参照すると、内蔵型生物学的インジケータ(「SCBI」)100が示される。SCBI 100は、ハウジング102と、そこに連結されたキャップ104とを含む。キャップ104は、平面状、斜面状、弓状、環状、円錐状、又はいつくかのこれらの組み合わせを有する突起部106を含んでもよい。キャップ104は、例えば、過酸化水素などの化学滅菌剤に暴露されると色が変わる、化学インジケータ108を更に含んでもよい。キャップ104はまた、SCBI内へ又はその外への気体(例えば空気又は滅菌剤)の通過を手助けするために1つ以上の貫通孔109を含んでもよい。キャップ104は、第1の位置のハウジング102に対して連結されており、第1の位置から第2の位置まで移動可能である。第1の位置(図1及び図2に示される)において、キャップ104は、気体(例えば空気又は滅菌剤)が周囲環境からSCBI内に移動できるようにハウジング102に連結され、又は逆もまた同様である。この位置で、キャップ104の任意の貫通孔は、ハウジング102より上に配置され、その結果、ハウジング102の内部は周囲環境と流体連通しており、それによってSCBI 100内への及びそこからの滅菌剤の導入及び取り出しを可能にする。キャップ104は、ハウジング102に対して第2の位置へ移動するように押圧することができる。この第2の位置では、貫通孔109は、ハウジング102の上端部より下に配置され、それによって、ハウジング102とキャップ104との間にぴったりと嵌る関係をもたらし、周囲環境からSCBI 100の内部を効果的に封止する。
【0025】
SCBI 100はまた、細菌胞子、他の形態の細菌(例えば、栄養)及び/又は活性酵素を含浸させた担体110などの微生物又は活性酵素源を含む。バチルス、ゲオバチルス、及びクロストリジウム種からの胞子が、飽和蒸気、過酸化水素、乾熱、ガンマ線照射及び酸化エチレンを利用する滅菌プロセスをモニタするためにしばしば使用される。したがって、担体110には、バチルス、ゲオバチルス、及び/又はクロストリジウム種から胞子が含浸されてもよい。担体110は吸水性でもよく、濾紙から形成され得る。布、不織ポリプロピレン、レーヨン又はナイロン、及び微孔性ポリマー材料などのシート状の材料を使用してもよい。金属(例えばアルミニウム若しくはステンレス鋼)、ガラス(例えばガラスビーズ若しくはガラス繊維)、磁器又はプラスチックなどの非吸水性材料もまた使用に適切である。そのうえ、担体110は上述した材料の組み合わせから作成することができる。いくつかの実施形態では、担体110は約0.1~0.5ミリメートルの厚さを有することができる。
【0026】
SCBI 100はまた、第1の端部114、第2の端部116、及び側壁118を有するアンプル112を含む。側壁118は、実質的に円筒形状であり、楕円形又は輪状の断面を有することができる。第1の端部114及び第2の端部116のドームは、側壁118の反対側に配置され、半楕円形状又は半球の形状を有することができる。したがって、第1の端部114は第1のドーム114と呼ぶことができ、第2の端部116は第2のドーム116と呼ぶことができる。アンプル112は、液体増殖培地を含有する。増殖培地は、担体110上に配置された任意の生微生物の成長を促進することが可能でなければならない。成長は、高温、例えば、約50℃~60℃での培養によって加速され得る。アンプル112は、ガラス又はプラスチックなどの壊れやすい又は脆性の材料から製造され得る。
【0027】
SCBI 100はまた、挿入部材120を含むことができ、それは図1図4に示されている。挿入部材120は、上面124及び下面126を有するプラットフォーム122を含むことができる。挿入部材120はまた、側壁127を含む。プラットフォーム122の側壁127は、支持表面128上に静置することができ、ハウジング102の一部として一体的に形成され得る。プラットフォーム122の側壁127及び上面124は共に、ウェル130を画定し、ウェル130は、アンプル112の第2の端部116を受容するように構成される。プラットフォーム122は、そこを貫通する穴150を画定し、液体増殖培地は、アンプルの破壊時にその穴を通過することができる。
【0028】
挿入部材120は、傾斜面132を更に含む。傾斜面132は、側壁127の上に、側壁127の不可欠な特徴部として配置される。傾斜面132は、斜面状の表面又は傾斜面134を含む。プラットフォーム122の傾斜面134及び上面124は、角度関係で配置される。図4に示すように、傾斜面134は、プラットフォーム上面124に対してθ度に配置される。θは、約85度、80度、75度、70度、又はそれ以下と同等であり得る。
【0029】
挿入部材120はまた、挿入部材120のウェル130より上に延在する指部(アーム)136を含む。指部136は、傾斜面132の反対側に配置される。傾斜面132に対向する指部136には、応力集中部分138が配置される。応力集中部分138は、先端部140を含んでよい。先端部140は、尖っていてよい。先端部140は、三角形の形状を有してもよい。あるいは、先端部140は、丸みを帯びた形状を有してもよい。先端部140は、側壁127より距離D分上に離間配置される。Dは、約1mm~25mm、約1mm~15mm、約1mm~5mmと同等であってよく、又は、約1~3mmであってもよい。
【0030】
傾斜面132は、ウェル130内で側壁127に沿って配置される一方、指部136は側壁127より上方へ延在する。したがって、傾斜面132及び指部136の両方は、側壁127の曲率と類似した曲率を有する弓型を有することができる。いくつかの実施形態では、傾斜面132の弧の中点と、指部136の弧の中点とは、挿入部材120の直径と同一線上にある。いくつかの実施形態では、傾斜面132の弧は、少なくとも約30度に広がる。いくつかの実施形態では、傾斜面132の弧は、少なくとも約50度に広がる。いくつかの実施形態では、傾斜面136の弧は、少なくとも約15度に広がる。いくつかの実施形態では、指部136の弧は、少なくとも約30度に広がる。
【0031】
挿入部材120は、プラットフォーム122の底面126から始まりかつそこから離れる方向に延在する、脚部(又は複数の脚部)142を含むこともできる。脚部142は、ハウジング102の支持表面128と底壁144との間の距離に等しい、最大長さを有する。図4に示すように、脚部142は、支持表面128と底壁144との間の距離よりいくらか短い長さを有する。脚部142は、支持表面128と底壁144との間の距離より約0.1~1ミリメートル短い長さを有し得る。挿入部材120は、脚部142の複数のインスタンスを含むことができる。例えば、挿入部材120は、脚部142の3つのインスタンスを含むことができる。脚部(又は複数の脚部)142は、担体110が輸送時に破損又は脱落しないように防止するのを助けるため、底壁144に対して担体110を維持するように機能する。
【0032】
SCBI 100は、以下の工程に従って組み立てることができる。最初に、ハウジング102を準備する。2番目に、担体110をハウジング102の中に定置して、担体110がハウジング102の底壁144上に静置するようにする。3番目に、挿入部材120をハウジング102の中に定置して、プラットフォーム122の側壁127が支持表面128上に静置するようにする。あるいは、図示されていないが、支持表面128を欠くいくつかの構成では、挿入部材120は、底壁142上に直接静置してよく、担体110と少なくとも部分的に接触することができる。4番麺に、アンプル112をハウジング102の中へ挿入して、第2の端部116が傾斜面132と接触するようにする。最後に、キャップ104をハウジング102及びアンプル112に連結する。突起部106は、アンプル112とほぼ同じ直径を有し、その結果、摩擦嵌合がアンプル112と突起部106との間に形成される。そのように組み立てられた、アンプル112、ハウジング102、キャップ104、及び挿入部材120の長手方向中心軸は、同軸又は実質的に同軸である。他の組み立て手順が、同じ構成のSCBI 100を得るために実行されてもよい。
【0033】
SCBI 100の構成、特にその各種要素間の関係は、アンプル112を静止状態に維持し、例えば、製造施設から保険医療施設までの輸送時に、アンプル112の早期破壊を防止するのに役立つ。例えば、キャップ104、傾斜面132、及び応力集中部分138は、アンプル112がキャップ104から離れて移動すること又はハウジング102内で横方向に移動することを防止する。いくつかの構成では、アンプル112は、先端部140に接触できる。他の構成では、アンプル112と先端部140との間が空いてもよい。
【0034】
アンプル112及び挿入部材120の長手方向中心軸は同軸であるため、傾斜面132は、アンプル112に対して角度φに配置され、φは、90度からθを引いた値に等しい。したがって、φは、約5度、10度、15度、20度、又はそれ以上と同等であり得る。
【0035】
滅菌手順に従って、SCBIは、滅菌サイクルが有効であったかどうかを判定するために起動され、モニタされ得る。SCBI 100を起動するため、圧縮力146が、ハウジング102とキャップ104との間に加えられる。アンプル112は、挿入部材120の傾斜面132と接触し、挿入部材120は、例えば、ハウジング102の支持体128と接触するため、この圧縮力は、アンプル112によって抵抗される。キャップ104に加えられる圧縮力が、アンプル112が耐えられる破壊力より大きい場合、アンプル112は破壊される。アンプル112が破壊されると、キャップ104はその第2の位置に移動し、担体110を浸漬するように増殖培地が放出される。
【0036】
SCBI 100によって提供されるアンプル112の特定の破壊機構は、アンプル112を破壊するためにキャップ104に加えられなければならない圧縮力の大きさを低下させる。具体的には、キャップ104に加えられる下向き圧縮力が、アンプル112の第2の端部116と挿入部材120の傾斜面132との間の接触点に第1の反力をもたらす。この反力は、傾斜面134に対して垂直である。したがって、この反力は、アンプル112の長手方向中心軸に対して実質的に平行である要素と、アンプル112の長手方向中心軸に対して実質的に垂直又は横の要素と、を含む。横の要素は、アンプル112の側壁118を、応力集中部分138又はより具体的には、応力集中部分138の先端部140に押し付け、それによって、アンプル112の長手方向中心軸に対して横である側壁118に対する第2の反力を生じさせる。この反力の大きさは、キャップに加えられる力にtan(φ)を掛けた大きさとして近似され得る。キャップ104に加えられる圧縮力の大きさが増加すると、第2の反力が、アンプルが耐えられるよりも大きくなって、アンプルの破壊をもたらすまで、第1の反力及び第2の反力の大きさも増加する。第2の反力は、側壁118に対して横方向に加えられるため、破壊は、応力集中部分138と側壁118との間の接触点で発生する。初期クラックは、アンプルが破壊される前にこの接触点で、又はその近くで形成され得る。アンプル112がガラスから製造されている場合、初期クラッス又は複数の初期クラックが形成されると、その後ただちにガラスは多数の破片へと粉砕する。これらの破片は、挿入部材120上に集まって、増殖培地が挿入部材120を介し、それと並行して流れ、担体110を浸漬することを可能にする。
【0037】
SCBI 100の起動前に、アンプル112の第1の端部114は、キャップ104の突出部106内に維持され、アンプル112の第2の端部116は、傾斜面132と応力集中部分138との間のウェル130内に維持される。この構成は、2つの有益な目的を有する。1つ目に、この構成は、アンプルを破壊するためにキャップに加えなければならない圧縮力の大きさを最小化する。これは、圧縮力によってアンプル112が傾斜面132に押し付けられ、アンプル112の長手方向軸と挿入部材120の長手方向軸との間の同軸関係が除去されるためである。したがって、応力集中部分138は、非対称のやり方で側壁118を圧迫し、アンプル112内の応力を増加させるが、これは1つに、互いに打ち消し合う内部応力の生成を回避することによるものであり、それによってアンプル112の破壊を促進する。2つ目に、この構成は、SCBI内のアンプルの動きを制限し、SCBI 100内のアンプル112が音を立てて押し合うことを最小化し、例えば輸送時に、アンプルの早期破壊を回避するのに役立つ。
【0038】
本明細書に記載の例及び/又は実施形態のいずれも、上述のものに加えて又はそれに代えて様々な他の特徴部を有し得ると理解されるべきである。本明細書に記載の教示、表現、実施形態、実施例などは、互いに対して独立して考慮されるべきではない。本明細書の教示に照らして、本明細書の教示を組み合わせることができる様々な適当な方法が、当業者には明らかとなろう。
【0039】
本発明に含有される主題の例示の実施形態について図示し説明したが、本明細書で記載した方法及びシステムの更なる適用例は、特許請求の範囲を逸脱することなく適切な変更により達成され得る。このようないくつかの変更態様は、当業者には明らかのはずである。例えば上述した例、実施形態、幾何学的なもの、材料、寸法、比率、工程などは例示である。したがって特許請求の範囲は、明細書及び図面に記載される構造及び動作の詳細に限定されるべきではない。
【0040】
〔実施の態様〕
(1) (a)ハウジングと、
(b)前記ハウジング内に配置されるアンプルであって、第1のドーム、第2のドーム、及び側壁を有する、アンプルと、
(c)前記ハウジングに連結されるキャップであって、前記アンプルの長手方向中心軸及び前記ハウジングの長手方向中心軸が実質的に一直線になるように、摩擦嵌合によって前記アンプルに連結される突起部を有する、キャップと、
(d)前記ハウジング内に配置された挿入部材であって、
(i)前記第2のドームの少なくとも一部が内部に配置されるウェルと、
(ii)前記アンプルの前記長手方向中心軸に対して少なくとも5度の角度が付けられ、前記アンプルの前記第2のドームと接触する傾斜面と、
(iii)前記第2のドームより上に、前記アンプルの前記側壁と隣接して配置される応力集中部分と、を有する、挿入部材と、を含む、生物学的滅菌インジケータ。
(2) 前記挿入部材が、前記ウェルより上に延在するアームを更に含み、前記応力集中部分が前記アーム上に配置されている、実施態様1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
(3) 前記傾斜面及び前記応力集中部分が、前記アンプルの前記長手方向中心軸に沿って前記キャップから離れる方向への前記アンプルの動きを制限するように構成されている、実施態様1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
(4) 前記応力集中部分が尖った先端部を有する、実施態様1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
(5) 前記応力集中部分が丸みを帯びた先端部を有する、実施態様1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
【0041】
(6) 前記応力集中部分が、前記第2のドームより少なくとも約5mm上に配置されている、実施態様1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
(7) 前記応力集中部分が、前記第2のドームより少なくとも約10mm上に配置されている、実施態様6に記載の生物学的滅菌インジケータ。
(8) 前記応力集中部分が、少なくとも約5度の弧形に広がっている、実施態様1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
(9) 前記応力集中部分が、少なくとも約15度の弧形に広がっている、実施態様1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
(10) 前記応力集中部分が、少なくとも約30度の弧形に広がっている、実施態様9に記載の生物学的滅菌インジケータ。
【0042】
(11) 前記傾斜面が、少なくとも約30度の弧形に広がっている、実施態様1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
(12) 前記傾斜面が、少なくとも約50度の弧形に広がっている、実施態様11に記載の生物学的滅菌インジケータ。
(13) 前記挿入部材が円形状を有し、前記傾斜面が広がる弧の中点と、前記応力集中部分が広がる弧の中点が、前記挿入部材の直径と同一線上にある、実施態様1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
(14) 前記アンプルが前記ハウジングと接触しない、実施態様1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
(15) 前記応力集中部分が前記アンプルの前記側壁に接触する、実施態様1に記載の生物学的滅菌インジケータ。
【0043】
(16) 生物学的インジケータを起動する方法であって、
(a)アンプルのドームと斜面状の表面との間に第1の反力を生成することであって、前記第1の反力の要素が前記アンプルの長手方向中心軸に対して横に方向付けられる、ことと、
(b)前記第1の反力の要素に反応して、前記アンプルの側壁と応力集中部分の先端部との間に第2の反力を生成することと、
(c)前記アンプルを破壊することと、を含む、方法。
(17) 前記アンプルを破壊する工程が、前記応力集中部分と前記アンプルの前記側壁との間の接触点のクラックを発生させることを含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記応力集中部分が、前記アンプルの前記側壁と接触するように構成されている挿入部材の特徴部であり、前記挿入部材が、ただ1つの応力集中部分を含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記斜面状の表面が、前記挿入部材の特徴部である、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記挿入部材が、前記生物学的インジケータのハウジング内に配置されている、実施態様19に記載の方法。
【0044】
(21) 前記アンプルは、前記反力が生成される前に前記斜面状の表面上に静置する、実施態様20に記載の方法。
(22) 前記生物学的インジケータが、ハウジングに連結され、摩擦嵌合によって前記アンプルに更に連結されるキャップを含む、実施態様21に記載の方法。
(23) 前記アンプルが、前記生物学的インジケータのハウジングと接触できない、実施態様22に記載の方法。
(24) 前記キャップと前記ハウジングとの間に圧縮力を加えて、前記第1の反力を生成することを更に含む、実施態様23に記載の方法。
図1
図2
図3
図4