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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】非接触電力伝送装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/40 20160101AFI20220114BHJP
   H02J 50/50 20160101ALI20220114BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20220114BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/50
H02J50/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018001442
(22)【出願日】2018-01-09
(65)【公開番号】P2019122172
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】堀内 雅城
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-060829(JP,A)
【文献】特開2001-077733(JP,A)
【文献】特開2017-070035(JP,A)
【文献】特開2016-073014(JP,A)
【文献】特開2016-101079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータにより構成され、電力を送電する送電機と、
前記送電機により送電された電力を非接触伝送するSP方式の第1非接触伝送回路と、
第n非接触伝送回路により伝送された電力のうち、一部を受電する第n受電機と、
前記第n受電機により受電された電力を供給される第n負荷と、
前記第n非接触伝送回路により伝送された電力のうち、前記第n受電機により受電されなかった残りを整流せずそのまま非接触伝送するSP方式の第n+1非接触電力伝送回路と、
を備え
前記第n負荷は、1次側及び2次側のコイルにより構成される関節を屈曲及び/又は回転させる第nモータと、前記第nモータの制御信号を無線受信する第n無線機と、を含み、
前記第n非接触伝送回路において、前記第n負荷が最大負荷であるときに、第nの2次側並列コンデンサの容量が2次側の共振条件を満足する値より小さく、前記第n負荷が最小負荷であるときも、2次側の共振条件が満足されず、
前記送電機から見た入力インピーダンスは、前記第n負荷の変動範囲内で誘導性である
ことを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項2】
少なくとも前記第1非接触伝送回路において、1次側の共振条件が満足されず、
前記送電機から見た入力インピーダンスは、誘導性である
ことを特徴とする、請求項に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項3】
前記第n負荷の印加電圧は、nによらずほぼ同一である
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項4】
前記第n非接触伝送回路において、2次側コイルのインダクタンスは、1次側コイルのインダクタンスのk倍である(kは前記1次側コイルと前記2次側コイルとの結合係数)
ことを特徴とする、請求項に記載の非接触電力伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送電機により送電された電力を数段にわたり非接触伝送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット等の多関節を屈曲及び/又は回転させるモータに対して、内部配線により電力伝送及び通信制御を行なう技術が存在する(例えば、特許文献1等を参照。)。
【0003】
従来技術の電力伝送装置の構成を図1に示す。電力伝送装置1は、送電側から受電側へと、モータドライバ10、第0負荷R0、第1関節11、第1負荷R1、第2関節12、第2負荷R2、第3関節13及び第3負荷R3から構成される。
【0004】
第0負荷R0、第1負荷R1、第2負荷R2及び第3負荷R3は、第1関節11、第2関節12及び第3関節13を屈曲及び/又は回転させるモータであり、モータドライバ10からの内部配線により電力伝送及び通信制御を受ける。しかし、第1関節11、第2関節12及び第3関節13が屈曲及び/又は回転することにより、内部配線が疲労及び/又は断線するため、内部配線を定期的に交換及び/又は修理する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-192497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、ロボット等の多関節を屈曲及び/又は回転させるモータに対して、非接触伝送により電力伝送を行なうとともに、無線通信により通信制御を行なうことが考えられる。
【0007】
比較例の非接触電力伝送装置の構成を図2に示す。非接触電力伝送装置2は、送電側から受電側へと、電源20、モータ制御部21、第0負荷R0、第1送電機22、第1非接触伝送回路23、第1受電機24、第1負荷R1、第2送電機25、第2非接触伝送回路26、第2受電機27、第2負荷R2、第3送電機28、第3非接触伝送回路29、第3受電機30及び第3負荷R3から構成される。第1非接触伝送回路23は、第1の1次側コイルLt1及び第1の2次側コイルLr1から構成され、第2非接触伝送回路26は、第2の1次側コイルLt2及び第2の2次側コイルLr2から構成され、第3非接触伝送回路29は、第3の1次側コイルLt3及び第3の2次側コイルLr3から構成される。
【0008】
第0負荷R0、第1負荷R1、第2負荷R2及び第3負荷R3は、1次側及び2次側のコイルにより構成される関節を屈曲及び/又は回転させるモータであり、第1非接触伝送回路23、第2非接触伝送回路26及び第3非接触伝送回路29により電力伝送を受け、モータ制御部21により無線制御を受ける。しかし、各関節の負荷毎に送電機及び受電機が必要であるため、省スペース化及び低コスト化を図ることができない。
【0009】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、送電機により送電された電力を数段にわたり非接触伝送するにあたり、省スペース化及び低コスト化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、各負荷毎に受電機を配置するのみであり、各負荷毎に送電機を配置するわけではなく、送電機を初段のみに配置することとした。そして、初段のみに配置された送電機により送電された電力を数段にわたり非接触伝送するために、各負荷毎に非接触伝送回路として適切な整合回路を挿入することとした。
【0011】
具体的には、本開示は、インバータにより構成され、電力を送電する送電機と、前記送電機により送電された電力を非接触伝送するSP方式の第1非接触伝送回路と、第n非接触伝送回路により伝送された電力のうち、一部を受電する第n受電機と、前記第n受電機により受電された電力を供給される第n負荷と、前記第n非接触伝送回路により伝送された電力のうち、前記第n受電機により受電されなかった残りを整流せずそのまま非接触伝送するSP方式の第n+1非接触電力伝送回路と、を備えることを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0012】
この構成によれば、初段のみに配置された送電機により送電された電力を数段にわたり非接触伝送するにあたり、省スペース化及び低コスト化を図ることができる。
【0013】
また、本開示は、前記第n負荷は、1次側及び2次側のコイルにより構成される関節を屈曲及び/又は回転させる第nモータと、前記第nモータの制御信号を無線受信する第n無線機と、を含むことを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0014】
この構成によれば、多関節のロボット等に本開示の発明を用いることができる。
【0015】
また、本開示は、前記送電機から見た入力インピーダンスは、誘導性であることを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0016】
この構成によれば、送電機が備えるブリッジ回路に流れる貫通電流を小さくすることができるため、送電機における損失を減らすことができる。
【0017】
また、本開示は、少なくとも前記第1非接触伝送回路において、1次側の共振条件が満足されないことを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0018】
この構成によれば、送電機から見た入力インピーダンスを誘導性とすることができる。
【0019】
また、本開示は、前記送電機から見た入力インピーダンスは、前記第n負荷の変動範囲内で誘導性であることを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0020】
この構成によれば、各負荷毎の変動範囲内で、送電機が備えるブリッジ回路に流れる貫通電流を小さくすることができるため、送電機における損失を減らすことができる。
【0021】
また、本開示は、前記第n非接触伝送回路において、2次側の共振条件が満足されないことを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0022】
この構成によれば、各負荷毎の変動範囲内で、送電機から見た入力インピーダンスを誘導性とすることができる。
【0023】
また、本開示は、前記第n負荷の印加電圧は、nによらずほぼ同一であることを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0024】
この構成によれば、複数の負荷として同一の負荷を用いることができる。
【0025】
また、本開示は、前記第n非接触伝送回路において、2次側コイルのインダクタンスは、1次側コイルのインダクタンスのk倍である(kは前記1次側コイルと前記2次側コイルとの結合係数)ことを特徴とする非接触電力伝送装置である。
【0026】
この構成によれば、各負荷毎の印加電圧をほぼ同一とすることができる。
【発明の効果】
【0027】
このように、本開示は、送電機により送電された電力を数段にわたり非接触伝送するにあたり、省スペース化及び低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】従来技術の電力伝送装置の構成を示す図である。
図2】比較例の非接触電力伝送装置の構成を示す図である。
図3】本開示の非接触電力伝送装置の構成を示す図である。
図4】本開示の送電機の構成を示す図である。
図5】比較例の送電機の貫通電流及び損失を示す図である。
図6】本開示の送電機の貫通電流及び損失を示す図である。
図7】本開示の送電機出力の電圧/電流及び各負荷の電圧/電流を示す図である。
図8】本開示の送電機出力の電圧/電流及び各負荷の電圧/電流を示す図である。
図9】本開示の送電機出力の電圧/電流及び各負荷の電圧/電流を示す図である。
図10】本開示の送電機出力の電圧/電流及び各負荷の電圧/電流を示す図である。
図11】本開示の送電機出力の電圧/電流及び各負荷の電圧/電流を示す図である。
図12】本開示の送電機出力の電圧/電流及び各負荷の電圧/電流を示す図である。
図13】本開示の送電機出力の電圧/電流及び各負荷の電圧/電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0030】
本開示の非接触電力伝送装置の構成を図3に示す。非接触電力伝送装置3は、送電側から受電側へと、電源31、モータ制御部32、第0負荷R0、送電機33、第1非接触伝送回路34、第1受電機35、第2非接触伝送回路36、第2受電機37、第3非接触伝送回路38及び第3受電機39から構成される。第1受電機35、第2受電機37及び第3受電機39には、各々、第1負荷R1、第2負荷R2及び第3負荷R3が接続される。
【0031】
第1非接触伝送回路34は、第1の1次側コイルLt1、第1の1次側直列コンデンサCs1、第1の2次側コイルLr1及び第1の2次側並列コンデンサCp1から構成される。第2非接触伝送回路36は、第2の1次側コイルLt2、第2の1次側直列コンデンサCs2、第2の2次側コイルLr2及び第2の2次側並列コンデンサCp2から構成される。第3非接触伝送回路38は、第3の1次側コイルLt3、第3の1次側直列コンデンサCs3、第3の2次側コイルLr3及び第3の2次側並列コンデンサCp3から構成される。後述のように、第1の1次側直列コンデンサCs1のみがあってもよく、第2の1次側直列コンデンサCs2及び第3の1次側直列コンデンサCs3はなくてもよい。
【0032】
送電機33は、インバータにより構成され、電力を送電する。SP方式の第1非接触伝送回路34は、送電機33により送電された電力を非接触伝送する。第1受電機35は、第1非接触伝送回路34により伝送された電力のうち、一部を受電する。SP方式の第2非接触伝送回路36は、第1非接触伝送回路34により伝送された電力のうち、第1受電機35により受電されなかった残りを整流せずそのまま非接触伝送する。第2受電機37は、第2非接触伝送回路36により伝送された電力のうち、一部を受電する。SP方式の第3非接触伝送回路38は、第2非接触伝送回路36により伝送された電力のうち、第2受電機37により受電されなかった残りを整流せずそのまま非接触伝送する。第3受電機39は、第3非接触伝送回路38により伝送された電力を受電する。
【0033】
第0負荷R0、第1負荷R1、第2負荷R2及び第3負荷R3は、各々、1次側及び2次側のコイルにより構成される関節を屈曲及び/又は回転させる第0モータ、第1モータ、第2モータ及び第3モータと、これらのモータの制御信号をモータ制御部32から無線受信する第0無線機、第1無線機、第2無線機及び第3無線機と、を含む。
【0034】
つまり、各負荷R1、R2、R3毎に受電機35、37、39を配置するのみであり、各負荷R1、R2、R3毎に送電機33を配置するわけではなく、送電機33を初段のみに配置する。そして、初段のみに配置された送電機33により送電された電力を数段にわたり非接触伝送するために、各負荷R1、R2、R3毎に非接触伝送回路34、36、38として適切な整合回路を挿入する。よって、初段のみに配置された送電機33により送電された電力を数段にわたり非接触伝送するにあたり、省スペース化及び低コスト化を図ることができる。そして、多関節のロボット等に本開示の発明を用いることができる。
【0035】
ここで、非接触電力伝送効率を最適化するためには、送電機33から見た入力インピーダンスZINは、純抵抗であることが望ましい。しかし、図4から図6までで後述するように、送電機33における損失を減らすためには、送電機33から見た入力インピーダンスZINは、純抵抗より若干分だけ誘導性であることが望ましい。
【0036】
本開示の送電機の構成を図4に示す。送電機33は、フルブリッジ回路であり、ハイサイドトランジスタ33AH、ローサイドトランジスタ33AL、ハイサイドトランジスタ33BH及びローサイドトランジスタ33BLから構成される。
【0037】
ハイサイドトランジスタ33AHに印加される電圧及びこれに流れる電流を、各々、VAH及びIAHとする。ローサイドトランジスタ33ALに印加される電圧及びこれに流れる電流を、各々、VAL及びIALとする。ハイサイドトランジスタ33BHに印加される電圧及びこれに流れる電流を、各々、VBH及びIBHとする。ローサイドトランジスタ33BLに印加される電圧及びこれに流れる電流を、各々、VBL及びIBLとする。送電機33から出力される電圧及びこれから流れる電流を、各々、V及びIとする。
【0038】
比較例の送電機の貫通電流及び損失を図5に示す。比較例の送電機33では、送電機33から見た入力インピーダンスZINは、純抵抗より若干分だけ容量性である。つまり、電流Iの位相は、電圧Vの位相より、若干分だけ進んでいる。
【0039】
ここで、ハイサイドトランジスタ33AH(33BH)がオンからオフへと切り替わり、ローサイドトランジスタ33AL(33BL)がオフからオンへと切り替わる時について考える。この時、ハイサイドトランジスタ33AH(33BH)のボディダイオードには、順方向に電流IAH(IBH)<0が流れる。そこに、ハイサイドトランジスタ33AH(33BH)に、電圧VAH(VBH)>0が印加される。すると、ハイサイドトランジスタ33AH(33BH)のボディダイオードには、逆方向にリカバリ電流が流れる。よって、ハイサイドトランジスタ33AH(33BH)からローサイドトランジスタ33AL(33BL)へと、黒丸で示した大きさの貫通電流が流れる。そして、送電機33において、黒丸で示した大きさの損失が生じる。なお、ハイサイドトランジスタ33AH(33BH)がオフからオンへと切り替わり、ローサイドトランジスタ33AL(33BL)がオンからオフへと切り替わる時についても、以上の説明と同様となる。
【0040】
本開示の送電機の貫通電流及び損失を図6に示す。本開示の送電機33では、送電機33から見た入力インピーダンスZINは、純抵抗より若干分だけ誘導性である。つまり、電流Iの位相は、電圧Vの位相より、若干分だけ遅れている。
【0041】
ここで、ハイサイドトランジスタ33AH(33BH)がオンからオフへと切り替わり、ローサイドトランジスタ33AL(33BL)がオフからオンへと切り替わる時について考える。この時、ハイサイドトランジスタ33AH(33BH)のボディダイオードには、順方向に電流IAH(IBH)<0が流れるわけではない。よって、ハイサイドトランジスタ33AH(33BH)からローサイドトランジスタ33AL(33BL)へと、図5の黒丸で示した大きさの貫通電流が流れるわけではない。そして、送電機33において、図5の黒丸で示した大きさの損失が生じるわけではない。なお、ハイサイドトランジスタ33AH(33BH)がオフからオンへと切り替わり、ローサイドトランジスタ33AL(33BL)がオンからオフへと切り替わる時についても、以上の説明と同様となる。
【0042】
そこで、送電機33から見た入力インピーダンスZINは、純抵抗より若干分だけ誘導性であることが望ましい。ここで、「純抵抗より若干分だけ誘導性である」とは、非接触電力伝送効率の最適化と、送電機33における損失の低減と、を両立させる程度に、電流Iの位相を電圧Vの位相より遅らせる(位相差の最大限は、π/4rad。)ことをいう。
【0043】
例えば、第1非接触伝送回路34、第2非接触伝送回路36及び第3非接触伝送回路38が、各々、1次側の共振条件を満足しないようにすればよい。具体的には、第1の1次側直列コンデンサCs1、第2の1次側直列コンデンサCs2及び第3の1次側直列コンデンサCs3が、各々、1次側の共振条件を満足しないようにすればよい。
【0044】
或いは、第1の1次側直列コンデンサCs1のみがあってもよく、第2の1次側直列コンデンサCs2及び第3の1次側直列コンデンサCs3はなくてもよい。そして、第1非接触伝送回路34が、1次側の共振条件を満足しないようにすればよい。具体的には、第1の1次側直列コンデンサCs1が、1次側の共振条件を満足しないようにすればよい。
【0045】
このように、送電機33が備えるブリッジ回路に流れる貫通電流を小さくすることができるため、送電機33における損失を減らすことができる。
【0046】
そして、送電機33から見た入力インピーダンスZINは、第1負荷R1、第2負荷R2及び第3負荷R3の変動範囲内で、純抵抗より若干分だけ誘導性であることが望ましい。ここで、「純抵抗より若干分だけ誘導性である」とは、非接触電力伝送効率の最適化と、送電機33における損失の低減と、を両立させる程度に、電流Iの位相を電圧Vの位相より遅らせる(位相差の最大限は、π/4rad。)ことをいう。
【0047】
例えば、第1非接触伝送回路34、第2非接触伝送回路36及び第3非接触伝送回路38が、各々、2次側の共振条件を満足しないようにすればよい。具体的には、第1負荷R1、第2負荷R2及び第3負荷R3が、最大負荷(例えば、50Ω。)であるときに、第1の2次側並列コンデンサCp1、第2の2次側並列コンデンサCp2及び第3の2次側並列コンデンサCp3が、各々、2次側の共振条件を満足する値より若干分だけ小さくなればよい。すると、第1負荷R1、第2負荷R2及び第3負荷R3が、最小負荷(例えば、0Ω。)であるときも、第1非接触伝送回路34、第2非接触伝送回路36及び第3非接触伝送回路38が、各々、2次側の共振条件を満足しないようにすることができる。
【0048】
或いは、第1非接触伝送回路34、第2非接触伝送回路36及び第3非接触伝送回路38が、各々、2次側の共振条件を満足するようにすればよい。そして、送電機33の出力端に、第1の1次側コイルLt1と並列に、インダクタ(不図示)を配置すればよい。
【0049】
このように、各負荷毎の変動範囲内で、送電機33が備えるブリッジ回路に流れる貫通電流を小さくすることができるため、送電機33における損失を減らすことができる。
【0050】
さらに、第1負荷R1、第2負荷R2及び第3負荷R3の印加電圧は、ほぼ同一であることが望ましい。例えば、第1非接触伝送回路34、第2非接触伝送回路36及び第3非接触伝送回路38において、第1の2次側コイルLr1、第2の2次側コイルLr2及び第3の2次側コイルLr3のインダクタンスは、各々、第1の1次側コイルLt1、第2の1次側コイルLt2及び第3の1次側コイルLt3のインダクタンスのk倍であればよい。ここで、kは、1次側コイルと2次側コイルとの結合係数である。
【0051】
第1非接触伝送回路34、第2非接触伝送回路36及び第3非接触伝送回路38において、入力電圧及び出力電圧を各々VIN及びVOUTとすると、VOUT=(1/k)VIN√(Lrn/Ltn)(n=1~3)となり、Lrn=kLtnであるとき、VOUT=VINとなり、第1負荷R1、第2負荷R2及び第3負荷R3の印加電圧は、ほぼ同一となる。
【0052】
1次側コイルと2次側コイルとの間の傾きを変化させることなく、関節を屈曲又は回転させることができれば、1次側コイルと2次側コイルとの結合係数kは一定であり、一定のkに基づいて、1次側コイル及び2次側コイルのインダクタンスを設計すればよい。
【0053】
関節を屈曲又は回転させる際に、1次側コイルと2次側コイルとの間の傾きを変化させる場合においても、kが大きく変化しない範囲で、1次側コイル及び2次側コイルのインダクタンスを設計すればよい。
【0054】
このように、各負荷R1、R2、R3毎の印加電圧をほぼ同一とすることができるため、複数の負荷R1、R2、R3として同一の負荷を用いることができる。
【0055】
受電部分を4段とし、各負荷が最大負荷であるときに、各2次側並列コンデンサの値が、各2次側の共振条件を満足する場合と、各2次側の共振条件からずれる場合と、において、各負荷の状態変化によって、送電機出力の電圧/電流及び各負荷の電圧/電流が変化する様子をシミュレーションした。結果を図7及び図8並びに図9から図13に示す。
【0056】
図7及び図8では、R1=R2=R3=R4=50Ω(最大負荷)であるときに、各2次側の共振条件が満足されている。具体的には、R1=R2=R3=R4=50Ω(最大負荷)であるときに、Cp1、Cp2、Cp3及びCp4が、各2次側のLr1、Lr2,Lr3及びLr4との共振条件を満足する値となっている。そして、送電機33から見たインピーダンスがほぼ純抵抗に見えるように、Cs1が調整されている。さらに、Lrn=kLtn(n=1~4、kは結合係数)が成立している。
【0057】
図7では、R1=R2=R3=R4=50Ω(最大負荷)である。すると、電流Iの位相が電圧Vの位相とほぼ揃っており、送電機33における損失が小さくなる。そして、VR1、VR2、VR3及びVR4は、ほぼ同一の値となっている。
【0058】
図8では、R1=R2=R3=R4=0Ω(最小負荷)である。すると、電流Iの位相が電圧Vの位相より進んでおり、送電機33における損失が大きくなる。ただし、VR1、VR2、VR3及びVR4は、ほぼ同一の値となっている。
【0059】
図9から図13では、R1=R2=R3=R4=50Ω(最大負荷)であるときに、各2次側の共振条件が満足されていない。具体的には、R1=R2=R3=R4=50Ω(最大負荷)であるときに、Cp1、Cp2、Cp3及びCp4が、各2次側の共振条件を満足する値の9割となっている。そして、送電機33から見たインピーダンスがほぼ純抵抗に見えるように、Cs1が調整されている。さらに、Lrn=kLtn(n=1~4、kは結合係数)が成立している。
【0060】
図9では、R1=R2=R3=R4=50Ω(最大負荷)である。すると、電流Iの位相が電圧Vの位相とほぼ揃っており、送電機33における損失が小さくなる。そして、VR1、VR2、VR3及びVR4は、ほぼ同一の値となっている。
【0061】
図10では、R1=R2=R3=R4=0Ω(最小負荷)である。すると、電流Iの位相が電圧Vの位相より遅れており、送電機33における損失が小さくなる。そして、VR1、VR2、VR3及びVR4は、ほぼ同一の値となっている。
【0062】
図11では、R2=0Ω(最小負荷)、R1=R3=R4=50Ω(最大負荷)である。すると、電流Iの位相が電圧Vの位相より遅れており、送電機33における損失が小さくなる。そして、VR1、VR3及びVR4は、R2=50Ω(最大負荷)の場合(図9を参照。)とほぼ同一であり、R2の変動によらない値となっている。
【0063】
図12では、R1=0Ω(最小負荷)、R2=R3=R4=50Ω(最大負荷)である。すると、電流Iの位相が電圧Vの位相より遅れており、送電機33における損失が小さくなる。そして、VR2、VR3及びVR4は、R1=50Ω(最大負荷)の場合(図9を参照。)とほぼ同一であり、R1の変動によらない値となっている。
【0064】
図13では、R1=R3=0Ω(最小負荷)、R2=R4=50Ω(最大負荷)である。すると、電流Iの位相が電圧Vの位相より遅れており、送電機33における損失が小さくなる。そして、VR2及びVR4は、R1=R3=50Ω(最大負荷)の場合(図9を参照。)とほぼ同一であり、R1及びR3の変動によらない値となっている。
【0065】
このように、本開示のより効果的な各2次側並列コンデンサの値の決定方法として、各2次側の共振条件からずれる値とすることにより、各負荷の状態変化に対して送電効率の変化を小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本開示の非接触電力伝送装置は、多関節のロボットや接続式のホース等に用いることができる。つまり、多関節のロボットでは、各関節毎に非接触伝送回路を配置し、各関節毎の屈曲/回転用モータに非接触給電すればよい。そして、接続式のホースでは、各接続部毎に非接触伝送回路を配置し、各接続部毎の何らかのセンサに非接触給電すればよい。
【符号の説明】
【0067】
図1→1:電力伝送装置、10:モータドライバ、11:第1関節、12:第2関節、13:第3関節、R0:第0負荷、R1:第1負荷、R2:第2負荷、R3:第3負荷
図2→2:非接触電力伝送装置、20:電源、21:モータ制御部、22:第1送電機、23:第1非接触伝送回路、24:第1受電機、25:第2送電機、26:第2非接触伝送回路、27:第2受電機、28:第3送電機、29:第3非接触伝送回路、30:第3受電機、R0:第0負荷、R1:第1負荷、R2:第2負荷、R3:第3負荷、Lt1:第1の1次側コイル、Lr1:第1の2次側コイル、Lt2:第2の1次側コイル、Lr2:第2の2次側コイル、Lt3:第3の1次側コイル、Lr3:第3の2次側コイル
図3、14、15、16→3:非接触電力伝送装置、31:電源、32:モータ制御部、33:送電機、34:第1非接触伝送回路、35:第1受電機、36:第2非接触伝送回路、37:第2受電機、38:第3非接触伝送回路、39:第3受電機、R0:第0負荷、R1:第1負荷、R2:第2負荷、R3:第3負荷、Lt1:第1の1次側コイル、Lr1:第1の2次側コイル、Lt2:第2の1次側コイル、Lr2:第2の2次側コイル、Lt3:第3の1次側コイル、Lr3:第3の2次側コイル
図3→Cs1:第1の1次側直列コンデンサ、Cp1:第1の2次側並列コンデンサ、Cs2:第2の1次側直列コンデンサ、Cp2:第2の2次側並列コンデンサ、Cs3:第3の1次側直列コンデンサ、Cp3:第3の2次側並列コンデンサ
図4→33AH:ハイサイドトランジスタ、33AL:ローサイドトランジスタ、33BH:ハイサイドトランジスタ、33BL:ローサイドトランジスタ
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