(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】通信中継装置、制御方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
H04J 3/06 20060101AFI20220114BHJP
H04L 27/26 20060101ALI20220114BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20220114BHJP
H04W 56/00 20090101ALI20220114BHJP
【FI】
H04J3/06 A
H04L27/26 420
H04W16/26
H04W56/00 110
(21)【出願番号】P 2018010595
(22)【出願日】2018-01-25
【審査請求日】2020-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹後 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】草間 克実
(72)【発明者】
【氏名】飯田 康隆
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-046776(JP,A)
【文献】特開2009-177586(JP,A)
【文献】特開2016-146585(JP,A)
【文献】特開2014-016291(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0190510(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 3/06
H04L 27/26
H04W 16/26
H04W 56/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
IEEE 802.11
15
16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TDD(Time Division Duplex)方式を採用する無線基地局と携帯通信端末装置との間の通信の中継を行う通信中継装置であって、
TDD方式において予め定められた、無線フレームにおけるダウンリンク、アップリンク、ガード区間の割り当ての情報を示すフレーム構成情報を記憶する記憶部と、
OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)シンボルとCP(Cyclic Prefix)の組を単位とし、複数の前記組を有する無線フレームを前記無線基地局から受信した場合に、元の前記無線フレームと時間シフトした前記無線フレームとの間の所定区間における相似性
を示す値を、相関係数を用いて算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記相似性を示す値を用いて、前記アップリンクと前記ダウンリンクの間の切替タイミングを検出し、
検出された前記切替タイミングと、前記記憶部に記憶された前記フレーム構成情報と、に基いて、次回以降のアップリンクとダウンリンクの間の切替タイミングを推定する制御部と、
を備える、通信中継装置。
【請求項2】
TDD方式を採用する無線基地局と携帯通信端末装置との間の通信の中継を行う通信中継装置であって、
TDD方式において予め定められた、無線フレームにおけるダウンリンク、アップリンク、ガード区間の割り当ての情報を示すフレーム構成情報を記憶する記憶部と、
OFDMシンボルとCPの組を単位とし、複数の前記組を有する無線フレームを前記無線基地局から受信した場合に、元の前記無線フレームと時間シフトした前記無線フレームとの間の所定区間における相似性
を示す値を、畳み込み積分を用いて算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記相似性を示す値を用いて、前記アップリンクと前記ダウンリンクの間の切替タイミングを検出し、
検出された前記切替タイミングと、前記記憶部に記憶された前記フレーム構成情報と、に基いて、次回以降のアップリンクとダウンリンクの間の切替タイミングを推定する制御部と、
を備える、通信中継装置。
【請求項3】
前記無線基地局からケーブルを介して供給されるダウンリンク信号を検波する検波部を、さらに備え、
前記制御部は、前記検波部による前記ダウンリンク信号の検波結果を併せて用いて、前記切替タイミングを推定する、請求項1
または請求項2に記載の通信中継装置。
【請求項4】
TDD方式を採用する無線基地局と携帯通信端末装置との間の通信の中継を行う通信中継装置で実行される制御方法であって、
前記通信中継装置は、TDD方式において予め定められた、無線フレームにおけるダウンリンク、アップリンク、ガード区間の割り当ての情報を示すフレーム構成情報を記憶する記憶部を備えており、
OFDMシンボルとCPの組を単位とし、複数の前記組を有する無線フレームを前記無線基地局から受信した場合に、元の前記無線フレームと時間シフトした前記無線フレームとの間の所定区間における相似性
を示す値を、相関係数を用いて算出する算出ステップと、
前記算出ステップによって算出された前記相似性を示す値を用いて、前記アップリンクと前記ダウンリンクの間の切替タイミングを検出する
検出ステップと、
前記検出ステップによって検出された前記切替タイミングと、前記記憶部に記憶された前記フレーム構成情報と、に基いて、次回以降のアップリンクとダウンリンクの間の切替タイミングを推定する
推定ステップと、
を備える、制御方法。
【請求項5】
TDD方式を採用する無線基地局と携帯通信端末装置との間の通信の中継を行う通信中継装置で実行される制御方法であって、
前記通信中継装置は、TDD方式において予め定められた、無線フレームにおけるダウンリンク、アップリンク、ガード区間の割り当ての情報を示すフレーム構成情報を記憶する記憶部を備えており、
OFDMシンボルとCPの組を単位とし、複数の前記組を有する無線フレームを前記無線基地局から受信した場合に、元の前記無線フレームと時間シフトした前記無線フレームとの間の所定区間における相似性
を示す値を、畳み込み積分を用いて算出する算出ステップと、
前記算出ステップによって算出された前記相似性を示す値を用いて、前記アップリンクと前記ダウンリンクの間の切替タイミングを検出する
検出ステップと、
前記検出ステップによって検出された前記切替タイミングと、前記記憶部に記憶された前記フレーム構成情報と、に基いて、次回以降のアップリンクとダウンリンクの間の切替タイミングを推定する
推定ステップと、
を備える、制御方法。
【請求項6】
TDD方式を採用する無線基地局と携帯通信端末装置との間の通信の中継を行う通信中継装置で実行されるプログラムであって、
前記通信中継装置は、TDD方式において予め定められた、無線フレームにおけるダウンリンク、アップリンク、ガード区間の割り当ての情報を示すフレーム構成情報を記憶する記憶部を備えており、
コンピュータである前記通信中継装置に、
OFDMシンボルとCPの組を単位とし、複数の前記組を有する無線フレームを前記無線基地局から受信した場合に、元の前記無線フレームと時間シフトした前記無線フレームとの間の所定区間における相似性
を示す値を、相関係数を用いて算出する算出ステップと、
前記算出ステップによって算出された前記相似性を示す値を用いて、前記アップリンクと前記ダウンリンクの間の切替タイミングを検出する
検出ステップと、
前記検出ステップによって検出された前記切替タイミングと、前記記憶部に記憶された前記フレーム構成情報と、に基いて、次回以降のアップリンクとダウンリンクの間の切替タイミングを推定する
推定ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項7】
TDD方式を採用する無線基地局と携帯通信端末装置との間の通信の中継を行う通信中継装置で実行されるプログラムであって、
前記通信中継装置は、TDD方式において予め定められた、無線フレームにおけるダウンリンク、アップリンク、ガード区間の割り当ての情報を示すフレーム構成情報を記憶する記憶部を備えており、
コンピュータである前記通信中継装置に、
OFDMシンボルとCPの組を単位とし、複数の前記組を有する無線フレームを前記無線基地局から受信した場合に、元の前記無線フレームと時間シフトした前記無線フレームとの間の所定区間における相似性
を示す値を、畳み込み積分を用いて算出する算出ステップと、
前記算出ステップによって算出された前記相似性を示す値を用いて、前記アップリンクと前記ダウンリンクの間の切替タイミングを検出する
検出ステップと、
前記検出ステップによって検出された前記切替タイミングと、前記記憶部に記憶された前記フレーム構成情報と、に基いて、次回以降のアップリンクとダウンリンクの間の切替タイミングを推定する
推定ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、通信中継装置、制御方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スマートフォン、タブレット端末等の携帯通信端末装置をビル内、地下街内、地下鉄構内等で使用可能とするためのレピータ装置(通信中継装置)が知られている。例えば、レピータ装置は、TDD(Time Division Duplex)方式を採用する基地局(無線基地局)と携帯通信端末装置の間の通信の中継を行う。
【0003】
TDD方式では、レピータ装置が出力する無線信号は、周辺エリアで利用されている基地局から送信される無線信号と同期している必要がある。レピータ装置は、出力する無線信号を基地局から出力する無線信号と同期させるため、基地局から受信した無線信号からタイミングを抽出する。そして、レピータ装置は、抽出したタイミングに基づき、基地局から受信した無線信号を再送信するタイミングを制御する。
【0004】
例えば、レピータ装置は、基地局から送信されたダウンリンク信号を検波し、検波レベルが所定の閾値以上になったタイミングを、アップリンクからダウンリンクへの切替タイミングとして検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の検波による手法では、異なる無線機では信号が立ち上がる時の信号レベル特性に差がある等の理由により、アップリンクからダウンリンクへの切替タイミングを高精度に推定するのは困難である。
【0007】
そこで、本発明の課題は、アップリンクとダウンリンクの間の切替タイミングを高精度に推定することのできる通信中継装置、制御方法、および、プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の通信中継装置は、TDD方式を採用する無線基地局と携帯通信端末装置との間の通信の中継を行う通信中継装置である。通信中継装置は、TDD方式において予め定められた、無線フレームにおけるダウンリンク、アップリンク、ガード区間の割り当ての情報を示すフレーム構成情報を記憶する記憶部と、OFDMシンボルとCPの組を単位とし、複数の前記組を有する無線フレームを前記無線基地局から受信した場合に、元の前記無線フレームと時間シフトした前記無線フレームとの間の所定区間における相似性を示す値を、相関係数を用いて算出する算出部と、前記算出部によって算出された前記相似性を示す値を用いて、前記アップリンクと前記ダウンリンクの間の切替タイミングを検出し、検出された前記切替タイミングと、前記記憶部に記憶された前記フレーム構成情報と、に基いて、次回以降のアップリンクとダウンリンクの間の切替タイミングを推定する制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態の無線通信システムの全体構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態のマスターユニットの構成図である。
【
図4】
図4は、実施形態の無線信号の相関値の説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態のフレーム構成情報を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態のスペシャルサブフレーム構成情報を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態のフレーム構成情報と相関値の関係を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態のマスターユニットによる第1の処理を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態のマスターユニットによる第2の処理を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施形態において、異なる無線機で信号が立ち上がる時の信号レベル特性に差があることを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の通信中継装置、制御方法、および、プログラムの実施形態について説明する。
【0011】
まず、
図1を参照して、実施形態の無線通信システム1000の全体構成について説明する。
図1は、実施形態の無線通信システム1000の全体構成図である。無線通信システム1000は、TDD(Time Division Duplex)方式を採用する基地局1(無線基地局)と、基地局1と同軸ケーブル4で接続されているマスターユニット2(通信中継装置)と、マスターユニット2と光ファイバ5によって接続されている複数のリモートユニット3と、を備えている。
【0012】
マスターユニット2とリモートユニット3は、基地局1と携帯通信端末装置6(スマートフォン、タブレット端末等)との間の通信の中継を行う通信中継装置である。つまり、マスターユニット2とリモートユニット3は、基地局1からの無線信号が直接届かない(または届きにくい)いわゆる不感地帯であるビル内、地下街内、地下鉄構内等で携帯通信端末装置6を使用可能とするためのレピータ装置である。リモートユニット3は、携帯通信端末装置6と無線通信するためのアンテナ31を備えている。
【0013】
基地局1は、TDD方式を利用して通信する。基地局1は、RF(Radio Frequency)帯のダウンリンク信号を生成し、生成したダウンリンク信号を2つに分配する。基地局1は、一方のダウンリンク信号を、同軸ケーブル4を介してマスターユニット2へ出力する。
【0014】
次に、
図2を参照して、実施形態のマスターユニット2の構成について説明する。
図2は、実施形態のマスターユニット2の構成図である。マスターユニット2は、切替部21(スイッチ)、カプラ22、検波器23(検波部)、AD(Analog-to-Digital)変換器24、DA(Digital-to-Analog)変換器25、および、信号処理部26を備える。信号処理部26は、相関器261、制御部262、記憶部263、および、光電変換部264を備える。信号処理部26は、例えば、ソフトウエアやFPGA(Field-Programmable Gate Array)により実現される。
【0015】
切替部21は、一端が基地局1に接続され、また、他端を、カプラ22の方向にあるダウンリンク通信路と、DA変換器25の方向にあるアップリンク通信路と、のいずれかに接続するように切り替える。具体的には、切替部21は、基地局1から同軸ケーブル4を介して供給されるダウンリンク信号と、光電変換部264からDA変換器25を介して供給されるアップリンク信号とを受け取る。また、切替部21は、信号処理部26の制御部262で生成される切替制御信号を受け取り、その切替制御信号に応じた切替動作を行う。つまり、切替部21は、切替制御信号に従い、ダウンリンク信号をAD変換器24経由で光電変換部264へ出力する経路と、アップリンク信号を同軸ケーブル4経由で基地局1へ出力する経路とを切り替える。カプラ22は、ダウンリンク通信路の伝送信号を2系統に分岐する。
【0016】
検波器23は、カプラ22から受けたダウンリンク信号を検波(例えばエンベロープ検波)する。検波器23は、検波したエンベロープ信号を、ローパスフィルタ(不図示)等を介して制御部262へ出力する。
【0017】
AD変換器24は、カプラ22から受けたダウンリンク信号をデジタル信号に変換し、相関器261(詳細は後述)と光電変換部264へ出力する。
【0018】
光電変換部264は、AD変換器24から供給されるダウンリンク信号を電/光変換し、光信号を光ファイバ5経由でリモートユニット3へ出力する。また、光電変換部264は、リモートユニット3から供給されるアップリンク信号を光/電変換し、アップリンク信号をDA変換器25へ出力する。
【0019】
記憶部263は、TDD方式において予め定められた、無線フレームにおけるダウンリンク、アップリンク、ガード区間の割り当ての情報を示すフレーム構成情報(詳細は後述)を記憶する。制御部262は、各種制御を行う(詳細は後述)。
【0020】
次に、
図3を参照して、実施形態のCP(Cyclic Prefix)について説明する。
図3は、実施形態のCPの説明図である。OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式では、主にマルチパス対策として、1つのOFDMシンボル(長さ66.66μs。符号A)の後方の一部(符号A2)をコピーしてCP(符号A1)としてOFDMシンボルの前に付加してある。つまり、OFDM方式の無線フレームでは、OFDMシンボルとCPの組を単位とする。このような無線フレームが、例えば、基地局1からマスターユニット2に送信される。なお、上述のコピーという動作は必須ではなく、例えば、OFDMシンボルの一部とCPが共通したものになっていればよい。
【0021】
ここで、
図4は、実施形態の無線信号の相関値(自己相関値。相関係数)の説明図である。マスターユニット2の相関器261がAD変換器24を介して受信したダウンリンク信号を用いて相関値を算出する。元の(つまり、時間シフトしていない)無線フレーム101は、A2部分を含むOFDMシンボルAとそのCPであるA1の組、B2部分を含むOFDMシンボルBとそのCPであるB1の組、C2部分を含むOFDMシンボルCとそのCPであるC1の組、を有している。
【0022】
また、この無線フレーム101を時間シフトしたものが、無線フレーム102である。これらの無線フレーム101と無線フレーム102との間の所定区間(例えばCPと同じ長さの区間)における相似性の一例である相関値(自己相関値)について考える。なお、
図4の下方に示す相関値は、その時点からその時点よりも所定区間分の時間だけ後の時点までの相関値を表している。
【0023】
無線フレーム102を、無線フレーム101に対して少しずらした時点では、所定区間内のデータの相関性はほとんどないので、相関値がほぼゼロである。そして、無線フレーム102を、無線フレーム101に対してOFDMシンボル1つ分の長さだけずらした時点では、無線フレーム102のA1のデータと、無線フレーム101のA2のデータが一致するので、相関値が1(ノイズを考慮すると1より少し小さい値)となる。マスターユニット2の制御部262は、この性質を利用して、相関器261から受信した相関値に基いて、アップリンクとダウンリンクの間の切替タイミングを検出することができる(詳細は後述)。
【0024】
次に、
図5を参照して、記憶部263に記憶されたフレーム構成情報について説明する。
図5は、実施形態のフレーム構成情報を示す図である。TDD方式を用いたLTE(Long Term Evolution)の無線通信技術であるTD-LTE方式では、無線フレームにおけるダウンリンク、アップリンク、ガード区間の割り当てが、3GPP(Third Generation Partnership Project)等によって規定されている。この割り当ての情報を示すのが、フレーム構成情報である。
【0025】
図5に示すように、フレーム構成情報では、設定0~6ごとに、スイッチポイント周期とサブフレーム番号とが対応付けられている。サブフレーム番号において、「D」がダウンリンクサブフレーム(Downlink Sub Frame)を表し、「U」がアップリンクサブフレーム(Uplink Sub Frame)を表し、「S」がスペシャルサブフレーム(Special Sub frame)を表す。
【0026】
また、スペシャルサブフレームにもパターンがあり、それを示したのが
図6である。
図6は、実施形態のスペシャルサブフレーム構成情報を示す図である。
図6において、「DwPTS」がダウンリンク・パイロット・タイムスロット(Downlink Pilot Time Slot)を表し、「GP」がガード区間(Guard Period)を表し、「UpPTS」がアップリンク・パイロット・タイムスロット(Uplink Pilot Time Slot)を表す。スペシャルサブフレーム構成情報では、設定0~8ごとに、「DwPTS」、「GP」、「UpPTS」が
図6に示すように割り当てられている。
【0027】
そして、通信に用いる無線フレームに対応するフレーム構成情報(
図5)における設定(0~6)やスペシャルサブフレーム構成情報(
図6)における設定(0~8)は、マスターユニット2等の各装置に記憶させる。マスターユニット2は、相関値に基いてアップリンクとダウンリンクの間の切替タイミング(以下、単に「切替タイミング」ともいう。)を一箇所検出すれば、その検出された切替タイミングと、記憶したフレーム構成情報(スペシャルサブフレーム構成情報を含む)に基いて、次回以降のアップリンクとダウンリンクの間の切替タイミングを高精度に推定することができる。
【0028】
ここで、
図7は、実施形態のフレーム構成情報と相関値の関係を示す図である。なお、通信に用いる無線フレームに対応するフレーム構成情報(
図5)における設定は「2」で、スペシャルサブフレーム構成情報(
図6)における設定は「6」であるものとする。また、
図7のフレーム構成情報における「#0」~「#9」は、サブフレーム番号を表す。
【0029】
図7に示すように、ダウンリンク(Dw)である時刻t11~t12、時刻t14~t15、および、t17以降は、相関値が「0」と「1」の間で頻繁に増減を繰り返す。それ以外の、アップリンク(Up)とガード区間(GP)の時間帯は、信号をモニタしていないため、相関値はゼロのままである。
【0030】
したがって、マスターユニット2の制御部262は、相関器261から相関値を取得し続けることで、時刻t12でダウンリンクが終わったことや、時刻t14でダウンリンクが始まったこと(アップリンクからダウンリンクに切り替わったこと)等を認識することができる。
【0031】
つまり、マスターユニット2の制御部262は、無線フレームを基地局1から受信した場合に、元の無線フレームと時間シフトした無線フレームとの間の所定区間における相似性(相関器261が算出する相関値等)に基いて、アップリンクとダウンリンクの間の切替タイミングを検出し、検出された切替タイミングと、記憶部263に記憶されたフレーム構成情報(スペシャルサブフレーム構成情報を含む)と、に基いて、次回以降のアップリンクとダウンリンクの間の切替タイミングを高精度に推定することができる。そして、制御部262は、その推定した切替タイミングに基いて、切替部21(
図2)に対する切替制御信号を用いた切替制御や、光電変換部264を介してリモートユニット3でのアップリンクとダウンリンクの間の切替制御等を行うことができる。
【0032】
なお、前記相似性を示す値として、相関器261が算出する相関値の代わりに、信号処理部26内の算出部(不図示)が畳み込み積分を用いて算出した所定の値を用いてもよい。
【0033】
次に、
図8を参照して、実施形態のマスターユニット2による第1の処理について説明する。
図8は、実施形態のマスターユニット2による第1の処理を示すフローチャートである。
【0034】
ステップS1において、マスターユニット2の制御部262は、相関器261から相関値を取得する。次に、ステップS2において、制御部262は、アップリンク/ダウンリンクの切替タイミング(アップリンクとダウンリンクの間の切替タイミング)を検出したか否かを判定し、Yesの場合はステップS3に進み、Noの場合はステップS1に戻る。
【0035】
ステップS3において、制御部262は、ステップS2で検出された切替タイミングと、記憶部263に記憶されたフレーム構成情報と、に基いて、次回以降のアップリンクとダウンリンクの間の切替タイミングを推定する。
【0036】
次に、ステップS4において、制御部262は、ステップS3で推定した切替タイミングに基いて、切替部21(
図2)に対する切替制御信号を用いた切替制御や、光電変換部264を介したリモートユニット3でのアップリンクとダウンリンクの間の切替制御等の各種制御を行う。ステップS4の後、ステップS1に戻る。
【0037】
このようにして、実施形態のマスターユニット2による第1の処理によれば、相関値に基いてアップリンクとダウンリンクの間の切替タイミングを検出し、検出された切替タイミングとフレーム構成情報(スペシャルサブフレーム構成情報を含む)に基いて次回以降のアップリンクとダウンリンクの間の切替タイミングを高精度に推定することができる。
【0038】
一方、例えば、従来の手法として、以下のようなものがある。レピータ装置が基地局から送信される無線信号を受信する場合、無線信号は、伝搬される空間において、干渉波、フェージング、マルチパス等による複数の影響を受け得る。レピータ装置は、受信した無線信号からアップリンクとダウンリンクの間の切替タイミングを正確に抽出するため、無線信号を復調する必要がある。その場合、レピータ装置は、高価な復調IC(Integrated Circuit)を実装しなければならない。しかしながら、本実施形態の手法によれば、そのような復調ICが不要な分、低コスト化を実現できる。
【0039】
また、上述の従来の検波によってアップリンクからダウンリンクへの切替タイミングを検出する手法に比べて、本実施形態の手法では、異なる無線機では信号が立ち上がる時の信号レベル特性に差がある等の理由に関係なく、アップリンクとダウンリンクの間の切替タイミングを高精度に推定することができる。
【0040】
ここで、
図10は、実施形態において、異なる無線機で信号が立ち上がる時の信号レベル特性に差があることを示すグラフである。
図10に示すように、無線機Xと無線機Yでは、信号が立ち上がる時の信号レベル特性に差がある。例えば、時刻t23以降での無線機X、Yの信号レベルを揃えるように両信号を時間軸方向に調整した場合、無線機Xでは信号レベルが検波閾値を超えたタイミングが時刻t21であるのに対し、無線機Yでは信号レベルが検波閾値を超えたタイミングが時刻t22である。
【0041】
したがって、この手法では、アップリンクからダウンリンクへの切替タイミングを、異なる複数の無線機に関して同一の処理で決定することができないという短所がある。本実施形態の手法によれば、そのような短所は無い。
【0042】
次に、
図9を参照して、実施形態のマスターユニット2による第2の処理について説明する。
図9は、実施形態のマスターユニット2による第2の処理を示すフローチャートである。
【0043】
ステップS11において、マスターユニット2の制御部262は、相関器261から相関値を取得する。次に、ステップS12において、制御部262は、アップリンクからダウンリンクへの切替タイミングを検出したか否かを判定し、Yesの場合はステップS13に進み、Noの場合はステップS11に戻る。
【0044】
ステップS13において、制御部262は、ステップS12で検出された切替タイミングと、記憶部263に記憶されたフレーム構成情報と、に基いて、次回以降のアップリンクとダウンリンクの間の切替タイミングを推定する。
【0045】
次に、ステップS14において、制御部262は、検波器23によるダウンリンク信号の検波結果に基いて、ステップS13で推定した切替タイミングを補正する。
【0046】
次に、ステップS15において、制御部262は、ステップS14で補正した推定切替タイミングに基いて、切替部21(
図2)に対する切替制御信号を用いた切替制御や、光電変換部264を介したリモートユニット3でのアップリンクとダウンリンクの間の切替制御等の各種制御を行う。ステップS15の後、ステップS11に戻る。
【0047】
このようにして、実施形態のマスターユニット2による第2の処理によれば、第1の処理の場合と比較して、検波器23による検波結果を併用する分、アップリンクとダウンリンクの間の切替タイミングの推定の精度をさらに高めることができる。
【0048】
なお、上述の第2の処理では、推定した切替タイミングを検波器23による検波結果を用いて補正することとしたが、順番を逆にして、検波器23による検波結果を用いて大まかな切替タイミングを推定し、その後で、相関値を用いてその推定切替タイミングを補正してもよい。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0050】
また、本実施形態のマスターユニット2で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供することができる。また、本実施形態のマスターユニット2で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…基地局、2…マスターユニット、3…リモートユニット、4…同軸ケーブル、5…光ファイバ、6…携帯通信端末装置、21…切替部、22…カプラ、23…検波器、24…AD変換器、25…DA変換器、26…信号処理部、31…アンテナ、261…相関器、262…制御部、263…記憶部、264…光電変換部、1000…無線通信システム