(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】照明器具
(51)【国際特許分類】
F21S 8/02 20060101AFI20220114BHJP
F21V 17/10 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
F21S8/02 420
F21V17/10 200
(21)【出願番号】P 2018045973
(22)【出願日】2018-03-13
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】505455945
【氏名又は名称】コイズミ照明株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399018471
【氏名又は名称】国分電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】特許業務法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 尚之
(72)【発明者】
【氏名】神田 太郎
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-078004(JP,A)
【文献】登録実用新案第3160426(JP,U)
【文献】特開昭55-151704(JP,A)
【文献】実開昭58-106807(JP,U)
【文献】実開昭57-045010(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第2792935(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2463578(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/02
F21V 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯具と、前記灯具を取付孔に取り付けるための取付バネを備える照明器具であって、
前記取付バネは、巻回部を有するぜんまいバネから構成され、
前記巻回部の外周面の一部を前記灯具の取付孔への挿入方向に向け、前記巻回部を前記灯具の側方に突出させた状態で、前記取付バネが前記灯具の側部に配置される照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井等に形成された取付孔に取り付けられるダウンライト等の埋込型の照明器具が知られている。この種の埋込型の照明器具は、取付孔において照射方向に向けて配置される光源部と、該光源部を有する灯具本体と、該灯具本体から延設される電源部と、灯具本体を取付孔に固定する固定手段として取付バネを備えたものが知られている。例えば、特許文献1の如くである。
【0003】
特許文献1には、円柱形状の枠体の下端に鍔部材が取り付けられ、枠体の側面には複数個(特許文献1の
図1では、3個)の取付バネが放射状に外側へ張り出して設けられた埋込型照明器具が開示されている。この照明器具は、天井の下面に鍔部材を当接させ、側面視で略V字状に屈曲された取付バネが開いて天井の上面(天井裏)を下方へ押圧することにより、鍔部材と取付バネとで天井を挟んで取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の埋込型照明器具の取付バネが天井の上面を下方へ押圧する力は、天井に対する取付バネの接触角度が直角に近づくにつれて小さくなる。一方、天井に対する取付バネの角度は、屈曲部から天井の上面との接触位置までの長さによって定まる。つまり、取付バネによる灯具本体の保持力は、天井の板厚によって変動する。また、埋込型照明器具は、灯具本体と取付孔との隙間に屈曲部を有する側面視V字状の取付バネを配置する構造であるため、灯具本体と取付孔との隙間を塞ぐ鍔部材の幅が大きくなり灯具本体が大型化する点で不利であった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、天井等の取付部の板厚による保持力の変動を抑制するとともに、灯具本体の大型化を抑制することができる照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
すなわち、本願に開示する照明器具は、灯具と、前記灯具を取付孔に取り付けるための取付バネを備える照明器具であって、前記取付バネは、ぜんまいバネから構成され、前記ぜんまいバネの板面を前記灯具の取付孔への挿入方向に向け、前記灯具の側方に突出させた状態で、前記ぜんまいバネが前記灯具の側部に固定されるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ぜんまいバネの巻回部が天井等の取付部を照射方向へ常に押圧しているので取付部の板厚によって力の方向が変化しない。また、灯具本体と取付孔との隙間には、ぜんまいバネを形成している帯状の部材のみが配置される構成なので隙間の大きさが抑制される。これにより、天井等の取付部の板厚による保持力の変動を抑制するとともに、灯具本体の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る埋込型照明器具を示す平面図。
【
図2】
図1のA-A線における断面図であり、埋込型照明器具を取付穴に取り付けた状態を示す断面図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る埋込型照明器具の灯具部分の部分断面図。
【
図4】(a)本発明の一実施形態に係る埋込型照明器具の仮止め機構を示す部分拡大断面図、(b)同じく仮止め機構を示す部分拡大側面図。
【
図5】(a)本発明の一実施形態に係る埋込型照明器具において取付バネが仮止めされた状態を示す側面図、(b)同じく仮止めされた取付バネが取付孔に挿入されている状態を示す側面図。
【
図6】(a)本発明の一実施形態に係る埋込型照明器具において取付バネの仮止めが解除された状態を示す側面図、(b)同じく取付バネが天井に係止された状態を示す側面図。
【
図7】本発明の一実施形態に係る埋込型照明器具が取付バネによって天井から支持されている状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る照明器具の一例である埋込型照明器具1について、
図1から
図4を用いて説明する。埋込型照明器具1は、例えば、取付部となる天井Bに形成された円形の取付孔Hに埋め込まれて設置されるダウンライトである。なお、取付孔Hは円形に限らない。以下の説明では、埋込型照明器具1の上下方向は、埋込型照明器具1が天井Bに設置された状態における上下方向として説明する。上下方向に直交する方向を径方向として説明する。また、本実施形態の説明において、上方から埋込型照明器具1等を視た状態を平面視とする。上下方向に対して直交方向から埋込型照明器具1等を視た状態を側面視とする。埋込型照明器具1等の断面形状を視た状態を断面視とする。
【0012】
図1から
図3に示すように、埋込型照明器具1は、灯具2と、電源部11とを主に備える。
【0013】
灯具2は、器具本体3、光源部4(
図2参照)、第1反射部6(
図2参照)、パネル(
図2参照)7、第2反射部8(
図2参照)、及び取付バネ9を主に有している。
【0014】
図2と
図3とに示すように、器具本体3は、光源部4、第1反射部6、第2反射部8、パネル7等を支持するものである。器具本体3は、放熱効率を向上させるために熱伝導率の高いアルミニウム等の金属素材で形成されている。すなわち、器具本体3は、ヒートシンクとしての機能を有する。器具本体3は、基部3aと、放熱フィン3bと、光源配置部3cと、電源取付部3dと、を有している。
【0015】
基部3aは、器具本体3のベースとなる部分である。基部3aは、下方が開口している有底の略円筒状に形成されている。基部3aの上部外側には、平面視において互いが略平行をなすとともに、上方に立設する複数の放熱フィン3b・3b・・・が形成されている。また、基部3aの上部内側には、光源部4を配置するための光源配置部3cが形成されている。つまり、基部3aには、放熱フィン3bと光源配置部3cとが対向するように配置されている。
【0016】
放熱フィン3bは、基部3a上から複数突出して形成される板状の放熱部材ある。光源配置部3cに配置されている光源部4から発した熱は、基部3aを介して器具本体3の全体に伝わる。器具本体3に伝わった熱は、主に放熱フィン3bから空気中へ放散される。
【0017】
電源取付部3dは、放熱フィン3bの側方部に形成されている。電源取付部3dは、ネジ等の固定部材によって電源部11が取り付けられるものである。電源取付部3dの下側には、電線13を通すための外側面が開放された空間3eが設けられている。
【0018】
光源部4は、埋込型照明器具1の照射面側に向けて光を出射するものである。光源部4は、発光素子としてLED素子を備えたモジュール基板から構成されている。光源部4は、器具本体3の光源配置部3cに設けられている。光源部4は、器具本体3の光源配置部3cに当接して配置され、光源部4の中央部が固定部材であるネジ5により固定されている。光源部4は、電線13によって電源部11と電気的に接続されている。光源部4は、点灯時に発熱したLED素子からの熱を光源配置部3cに伝達する。光源部4は、熱伝導性シート(図示せず)や放熱グリスを介して光源配置部3cに取り付けてもよく、これにより、より高い放熱性を得ることができる。
【0019】
なお、本実施形態では、光源部4の中央部をネジ5により固定しているが、特に限定するものではない。例えば、光源部4においてLED素子が配置された発光領域内の任意の部分を固定部材により固定する構成とすることもできる。
また、本実施形態では、光源としてLED素子(表面実装タイプのLED素子)を用いたが、光源の種類はLED素子に限定されず、例えばCOB型発光モジュールや有機EL素子(OLED)などであっても実現可能である。
【0020】
第1反射部6は、光源部4とパネル7とを所定間隔で離間しつつ、複数のLED素子からの光を反射する笠状部材である。第1反射部6は、樹脂素材等で形成される。第1反射部6は、器具本体3の光源配置部3cに固定されている。第1反射部6は、下方に行くに従って広がる斜面状に形成されている。第1反射部6の内周面は、LED素子から発光される光を反射する反射面となっている。第1反射部6は、LED素子の下方以外の方向に出た光を反射させて、LED素子から発光される光を下方に効率よく集光するように構成されている。なお、本実施形態の第1反射部6としては、下方に行くに従って広がる斜面状に形成したものを説明したが、これに限定されない。例えば、反射部の形状として、周壁部8aが下方に行くに従って広がる放物面状に形成されるものであっても良い。
【0021】
パネル7は、器具本体3の光源配置部3c内に配置されたLED素子からの光を透過及び拡散させて、照射面を形成する部材である。パネル7は、透光性を有する樹脂素材やガラス素材等で形成される。本実施形態においては、パネル7は、アクリル樹脂を用いて形成されている。パネル7は、平面視形状が円形で下方に突出するドーム状に形成されている。パネル7は、第2反射部8に位置決めされるとともに、第1反射部6の下端と第2反射部8の上端のパネル保持部8bとで挟持され、LED素子に対向する位置に保持される。
なお、パネル7の形状は、円形形状に限らず、四角形等の多角形でも良い。また、下方に突出するドーム状に限らず、上方に突出する形状や平面状等でも良い。
【0022】
第2反射部8は、パネル7を中心にして下方に向かって椀状に開いた形状の光源用リフレクターである。第2反射部8は、周壁部8a、パネル保持部8b、フランジ部8c、バネ取付部8d及び係止部8eを有している。第2反射部8は、図示しないネジ等の固定部材によって器具本体3の下側に固定されている。
【0023】
第2反射部8は、周壁部8aを有する円筒状に形成されている。周壁部8aは、下方に行くに従って広がる放物面状に形成される。周壁部8aの内周面は、LED素子から発光される光を反射する反射面となっている。第2反射部8は、樹脂素材や金属素材等を用いて形成されている。本実施形態においては、アルミ等の金属素材を用いて第2反射部8を形成した。第2反射部8は、その断面形状において上面側及び下面側が開口形成されている。
【0024】
パネル保持部8bは、パネル7を保持する断面視L字状の部分である。パネル保持部8bは、周壁部8aの上端に設けられている。パネル7は、パネル保持部8bに係止されることで第2反射部8の上端に位置決めされる。なお、第2反射部8の平面視形状は、円形形状に限らず、四角形等の多角形でもよく、種々の取付孔の開口形状に取り付け可能な形状であってもよい。
【0025】
フランジ部8cは、周壁部8aの下部の外周縁から径方向外側に突出して環状に形成される鍔部である。フランジ部8cは、埋込型照明器具1を天井Bの取付孔Hに設置した状態で取付孔Hの周縁部を覆う部分である。つまり、フランジ部8cは、取付孔Hと灯具2(周壁部8a)との隙間を覆うように構成されている。
【0026】
図3に示すように、バネ取付部8dは、取付バネ9を第2反射部8に取り付ける部分である。バネ取付部8dは、第2反射部8の下端部から径方向外側に突出して形成されている。なお、バネ取付部8dが第2反射部8から突出していることは必須ではない。バネ取付部8dは、第2反射部8の周壁部8aの周縁に略均等配置されるように複数個(本実施形態においては2個が対向して)設けられている。なお、バネ取付部8dは、周壁部8aの周縁に均等配置されていることは必須ではない。バネ取付部8dは、径方向外側面を取付面として、取付バネ9を固定するためのネジ孔が形成されている。
【0027】
係止部8eは、取付バネ9を仮止めするものである。係止部8eは、取付バネ9の被係止部9dとともに仮止め機構を構成している。係止部8eは、取付バネ9を第2反射部8側に寄せて仮固定するように構成されている。係止部8eは、バネ取付部8dの上方であって、周壁部8aから径方向外側に突出して形成されている。係止部8eは、バネ取付部8dの取付面よりも径方向内側に配置されている。つまり、係止部8eは、取付バネ9をバネ取付部8dの取付面よりも径方向内側に引き寄せた状態で仮止めするように構成されている。
【0028】
図4(a)と
図4(b)とに示すように、取付バネ9は、埋込型照明器具1を天井Bの取付孔Hに埋め込んで取り付けるための固定手段である。取付バネ9は、第2反射部8の周壁部8aに対向配置されたバネ取付部8dにそれぞれ固定されている。取付バネ9は、ぜんまいバネから構成されている。また、取付バネ9は、巻回した部分から引き出した長さ(延伸量)に関わらず、ほぼ一定のばね荷重が生じるように形成された定荷重ぜんまいバネである。取付バネ9は、渦巻状に巻回されている巻回部9aと、巻回部9aの外側の端部である固定部9bと、巻回部9aの内側の端部である抜止め部9cと、仮止め機構を構成する被係止部9dを有する。
【0029】
巻回部9aは、バネ荷重を生じさせる部分である。巻回部9aは、ステンレス素材等からなる帯状の金属部材をその中心線が平面上で渦巻状になるように巻回して形成されている。つまり、巻回部9aは、帯状の金属部材が板面を径方向外側に向けて巻回されることで、円筒状の外周面が形成されている。
【0030】
固定部9bは、灯具2に取り付けられる部分である。固定部9bは、巻回部9aの最も外側の帯状の金属部材が所定長さだけ平面状に延出された部分である。固定部9bには、図示しないネジ孔が形成されている。つまり、固定部9bは、平坦な板面を第2反射部8のバネ取付部8dに接触させて第2反射部8に取り付けられるように構成されている。
【0031】
抜止め部9cは、灯具2の天井Bからの落下を防止するものである。抜止め部9cは、灯具2が取付孔Hから抜け落ちて取付バネ9が伸びきった場合に、天井Bに引っ掛かることで天井Bから灯具2が落下しないようにするものである。抜止め部9cは、巻回部9aの内側の端部が鉤状に折り曲げられて形成されている。抜止め部9cは、巻回部9aが全て引き出された場合に抜止め部9cが天井Bに係止されて、天井Bと取付バネ9との接触状態を維持するように構成されている。なお、取付バネ9の取付位置、本数等については、本実施形態のものに限定されない。
【0032】
被係止部9dは、第2反射部8の係止部8eに係止される部分である。被係止部9dは、取付バネ9の係止部8eとともに仮止め機構を構成している。被係止部9dは、取付バネ9に形成されている矩形の貫通孔から構成されている。取付バネ9は、巻回部9aを周壁部8aに寄せた状態で、被係止部9dの上側周縁が係止部8eに係止されるように構成されている。なお、被係止部9dは、係止部8eに係止されれば、形状が矩形であること、および貫通孔で構成されていることは必須ではない。
【0033】
図3に示すように、二個の取付バネ9は、巻回部9aの外周面の一部を灯具2の取付孔Hへの挿入方向に向け、巻回部9aを器具本体3の側方に突出させた状態で、固定部9bが第2反射部8のバネ取付部8dにネジ10により固定されている。この際、巻回部9aは、第2反射部8の径方向の直線と巻回部9aの径方向の直線とが一致するように配置されている。つまり、取付バネ9は、巻回部9aが第2反射部8から最も突出する向きで、巻回部9aの巻き込み方向が灯具2の取付孔Hへの挿入方向である上下方向になるようにして、灯具2の側方に配置されている。これにより、取付バネ9は、巻回部9aが上下方向に伸縮可能な状態で第2反射部8の側方に固定されている。また、対向配置されている取付バネ9の巻回部9aの中心間の長さLcは、取付孔Hの直径Dよりも大きくなるように構成されている。つまり、取付バネ9は、巻回部9aと天井Bとの接触点Pの鉛直線上に巻回部9aの中心Cが配置されている。
【0034】
図2に示すように、電源部11は、光源部4が有するLED素子に給電を行って、LED素子を点灯させるための電源装置である。電源部11は、器具本体3の電源取付部3dにネジ等の締結部材により取り付けられている。電源部11は、電源ケース内に直方形状に加工されたプリント配線基板上に複数の電子部品が実装された電源回路が収容されたものである。複数の電子部品は、動作時に発熱する部品が含まれている。電源部11は、外部商用電源から供給される交流電流を所定の直流電流に変換し、変換後の電流を光源部4に実装された複数のLED素子に供給する。電源部11は、配線(図示せず)を介して端子台12に電気的に接続されている。端子台12は、電源部11の一側面に配置されている。埋込型照明器具1を天井Bに取り付ける際、配線(図示せず)により端子台12と天井Bの上側の外部商用電源(図示せず)とを接続することで、電源部11は外部商用電源と電気的に接続される。電源部11と光源部4は電線13によって電気的に接続されている。なお、電源部11の具体構成および器具本体3への取付構造は、本実施形態の構成に限定されない。
【0035】
次に、
図5から
図7を用いて、埋込型照明器具1の取り付け方法と、埋込型照明器具1を取り付ける際の取付バネ9の仮止め機構について説明する。天井Bに対して図示上側が天井裏の空間とし、天井Bに対して図示下側が居室空間とする。
埋込型照明器具1は、居室空間である天井Bの下側から取付孔Hに電源部11を挿入後に灯具2が取付孔Hに挿入され、取り付けられるものである。なお、以下の説明において、埋込型照明器具1は、既に電源部11が取付孔Hに挿入されているものとし、便宜上、電源部11の取り付け説明および図示を省略するものとする。
【0036】
図5(a)に示すように、埋込型照明器具1は、第2反射部8の係止部8eに取付バネ9の被係止部9dが仮止めされている。取付バネ9は、巻回部9aが第2反射部8側に向かって寄せられ、被係止部9dが係止部8eに係止されている。つまり、取付バネ9は、巻回部9aと固定部9bとの間で第2反射部8の径方向内側に向かって弾性変形されている。これにより、取付バネ9には、変形前の形状に戻ろうとする径方向外側に向かう復元力が生じている(黒塗矢印参照)。取付バネ9は、巻回部9aが第2反射部8の周壁部8aに接触した状態で仮止めされている。この際、対向配置されている二個の取付バネ9の巻回部9a間の最大長さLmaxは、取付孔Hの直径Dよりも大きい。一方、巻回部9aの中心間の長さLcは、取付孔Hの直径Dよりも小さい。このように構成することで、埋込型照明器具1は、取付バネ9の巻回部9aの外周面うち径方向外側の曲面が取付孔Hの下側の周縁部に対向した状態で取付孔Hに挿入される。灯具2は、器具本体3の放熱フィン3b側から取付孔Hに挿入される。取付バネ9の巻回部9aは、灯具2の取付孔Hへの挿入によって取付孔Hの下側の周縁部に接触する。
【0037】
図5(b)に示すように、埋込型照明器具1は、取付バネ9の巻回部9aが取付孔Hの周縁部に接触すると、巻回部9aの外周面の作用により巻回部9aが径方向内側に弾性変形される。つまり、取付バネ9は、巻回部9aの外周面がガイドとして作用する。巻回部9aは、取付孔Hの周縁よりも径方向外側に突出している部分が取付孔Hに向かって押しこまれる(黒塗矢印参照)。埋込型照明器具1は、取付バネ9の巻回部9aが取付孔Hの内周面と第2反射部8の周壁部8aに挟まれた状態で取付孔Hに挿入される。このように、埋込型照明器具1は、取付バネ9を第2反射部8に仮止めすることで、作業者の手で取付孔Hに挿入可能な状態に押さえることなく取付バネ9が取付孔Hに案内される。
【0038】
図6(a)に示すように、取付バネ9の巻回部9aは、その中心が取付孔Hの上側の周縁部よりも上側に到達すると弾性変形する前の形状に戻り始める。この際、取付バネ9は、巻回部9aの外周面の作用により、復元力の分力として取付孔Hに対して下方向の力を加える。つまり、巻回部9aは、その反力によって上方向に持ち上げられる(黒塗矢印参照)。これにより、取付バネ9は、被係止部9dが第2反射部8の係止部8eから離間して仮止めが解除される。さらに、取付バネ9には、仮止めによって弾性変形されていた巻回部9aと固定部9bとの間に生じる復元力によって巻回部9aを径方向外側に移動させる力が生じる(薄墨矢印参照)。
【0039】
図6(b)に示すように、取付バネ9は、巻回部9aと固定部9bとの間に生じる復元力によって巻回部9aが取付孔Hの周縁上から天井Bの上側面に移動する。取付バネ9は、天井Bの上側面に巻回部9aが配置された状態で、巻回部9aから引き出された端部に灯具2が固定されている。この際、灯具2には、定荷重ぜんまいバネである取付バネ9によって、常に一定の上方向の荷重F(黒塗矢印参照)が加わっている。
【0040】
埋込型照明器具1は、フランジ部8cが天井Bの下側面に接触することで、取付バネ9の荷重Fと等しい反力(黒塗矢印参照)によって天井Bの上側面を下方に押圧し、取付バネ9とフランジ部8cとで天井Bを挟み込む。この際、フランジ部8cは、灯具2と取付孔Hとの隙間を覆う。このように埋込型照明器具1は、灯具2と取付孔Hとの隙間に取付バネ9の帯状の金属部材が挿通され、取付バネ9によって天井Bの上側面にから保持されている。
【0041】
図7に示すように、埋込型照明器具1は、下方向の外力によって取付孔Hから灯具2が外れた場合、取付バネ9の巻回部9aから帯状の金属部材が引き出されて天井Bから釣り下がった状態になる。取付バネ9は、定荷重ぜんまいバネから構成されているため、灯具2を取付孔Hの挿入方向(上方向)に引き上げる一定の荷重Fが常に発生している(黒塗矢印参照)。従って、埋込型照明器具1は、下方向の外力よりも取付バネ9の荷重Fが大きくなると、取付バネ9によって取付孔Hの挿入方向に引き上げられる。
【0042】
以上、説明した本実施形態に係る埋込型照明器具1は、取付バネ9であるぜんまいバネの巻回部9aから引き出された端部に灯具2が固定され、天井Bの厚さに応じて巻回部9aからの引き出し量が変更されるので、天井Bの板厚に関わらず、常に灯具2を引き上げる力が生じている。これにより、埋込型照明器具1は、天井Bの板厚に応じた取付バネ9の力の変動を抑制することができる。また、埋込型照明器具1は、灯具2と取付孔Hとの隙間に取付バネ9の帯状の部材が挿通され、その先端部に灯具2が固定されている。従って、灯具2と取付孔Hとの隙間は、取付バネ9を構成している1枚の帯状の部材が挿通可能な幅であればよい。これにより、埋込型照明器具1は、灯具2と取付孔Hとの隙間を覆うために必要なフランジ部8cによる灯具2の径寸法の大型化を抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る埋込型照明器具1は、灯具2の第2反射部8に設けられる係止部8eと、取付バネ9の固定部9b側に設けられる被係止部9dと、からなる仮止め機構を有し、被係止部9dが係止部8eに係止されると、取付孔Hの軸方向視で、取付バネ9であるぜんまいバネの中心が取付孔Hの内側にされ、ぜんまいバネの外周面が取付孔Hの外側に配置されることを特徴としている。これにより、埋込型照明器具1は、灯具2を取付孔Hに挿入すると、取付バネ9の巻回部9aのガイド作用によって取付バネ9が取付孔Hに誘い込まれ、巻回部9aが取付孔Hと第2反射部8とに挟まれて弾性変形される。また、巻回部9aが取付孔Hを通過すると、その復元力によって仮止めが解除されつつ、巻回部9aが天井Bに係止されるので、作業者が取付バネ9を手で押さえながら取付孔Hに挿入する必要がなく容易に天井Bに取り付けることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る埋込型照明器具1は、取付バネ9が定荷重ぜんまいバネから構成されていることを特徴としている。埋込型照明器具1は、取付時に天井Bの厚さに応じて巻回部9aからの引き出し量が変更されても、灯具2を引き上げる力として常に一定の上方向の荷重F(白塗矢印参照)が加わっている。これにより、埋込型照明器具1は、取付部である天井Bの状態や天井Bに対する灯具2の位置に関わらず、灯具2の保持力を維持することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る埋込型照明器具1は、取付バネ9の巻回部9aの内側の端部に抜止め部9cが形成されていることを特徴とする。埋込型照明器具1は、外力によって灯具2が取付孔Hから外れると、取付バネ9の巻回部9aから帯状の金属部材が引き出される。埋込型照明器具1は、抜止め部9cが天井Bに引っかかることで天井Bと灯具2との接続が維持され、外力が荷重Fよりも小さくなると灯具2が上方向に引き上げられる。これにより、埋込型照明器具1は、外力が加わっても天井Bから脱落することなく、元の状態に復帰することができる。
【0046】
上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0047】
1 埋込型照明器具
2 灯具
4 光源部
6 第1反射部
8 第2反射部
8d バネ取付部
9 取付バネ
B 天井
H 取付孔