(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】建設機械の油圧回路
(51)【国際特許分類】
F15B 11/00 20060101AFI20220114BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20220114BHJP
F15B 11/08 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
F15B11/00 Q
E02F9/22 E
F15B11/08 A
(21)【出願番号】P 2018076183
(22)【出願日】2018-04-11
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000140719
【氏名又は名称】株式会社加藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】柿本 浩
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-72171(JP,A)
【文献】特開2010-78035(JP,A)
【文献】特開2016-156393(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0276151(US,A1)
【文献】特開2010-230039(JP,A)
【文献】特開2011-127727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00- 11/22
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、前記走行体に対して旋回可能な旋回体と、前記旋回体に取付けられるブームと、圧油が供給されることにより前記ブームを前記旋回体に対して作動させるブームシリンダと、を備える建設機械に設けられる油圧回路であって、
前記ブームシリンダに供給される前記圧油を吐出する第1ポンプと、
流入した前記圧油をタンクへ流出させるセンターバイパス管路と、
前記ブームを作動させる操作が入力されることにより中立位置から変位するブーム方向制御弁であって、前記中立位置に位置する状態において、前記センターバイパス管路に前記圧油を供給し、ブーム下げ操作が入力されたことに基づいて前記中立位置から変位することにより、前記ブームシリンダと前記センターバイパス管路の両方に前記圧油を供給する、ブーム方向制御弁と、
前記センターバイパス管路に設けられ、前記センターバイパス管路の状態を切替える調整弁と、
前記センターバイパス管路において前記調整弁よりも下流側に設けられ、前記圧油が流入することにより前記第1ポンプからの前記圧油の吐出量を小さくする、流量調整部材と、
前記調整弁の状態を切替える切替部であって、前記ブーム下げ操作が入力され、かつ、前記旋回体を前記走行体に対して旋回させる旋回操作が入力された場合に、前記流量調整部材に前記圧油を流入させ、前記ブーム下げ操作が入力され、かつ、前記旋回操作が入力されない場合に、前記流量調整部材に流入する前記圧油を遮断又は減少させる、切替部と、
を備える油圧回路。
【請求項2】
前記調整弁は、前記切替部からパイロット油が供給されることにより、前記流量調整部材に流入する前記圧油を遮断又は減少させ、
前記切替部は、前記パイロット油を前記調整弁に供給する油圧管路に設けられるとともに、前記油圧管路の状態を切替える切替弁であり、
前記切替弁は、前記ブーム下げ操作が入力され、かつ、前記旋回操作が入力されない場合に、前記調整弁に前記パイロット油を供給し、前記ブーム下げ操作が入力され、かつ、前記旋回操作が入力された場合に、前記調整弁への前記パイロット油の供給を遮断する、
請求項1の油圧回路。
【請求項3】
前記切替部は、前記調整弁に電気的に接続される制御装置であって、
前記制御装置は、前記ブーム下げ操作が入力されたことによる前記ブーム方向制御弁の前記中立位置からの変位量を取得し、前記旋回操作が入力されたか否かを判断し、前記変位量、及び、前記旋回操作についての判断結果に基づいて、前記調整弁の状態を制御する、
請求項1の油圧回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に設けられる油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建設機械の作動回路として、油圧ショベルの油圧回路が開示されている。この油圧回路では、油圧ポンプからブームシリンダ、アームシリンダ等のアクチュエータへの流路に、操作弁が配置されている。油圧回路では、操作弁を作動させる操作が入力されることにより、ブームシリンダやアームシリンダに油圧が供給される。操作弁を作動させる操作が入力されていない状態では、センターバイパス管路を介して、油圧ポンプからの圧油がタンクへ流出する。
【0003】
ブームを下げ方向に作動させる場合は、ブームを上げ方向に作動させる場合に比べて、ブームを作動させる作動力は小さくてよい。このため、ブームを下げ方向に作動させる際には、ブームシリンダへ圧油を供給するとともに、センターバイパス管路に圧油を流し、センターバイパス管路を介して圧油の一部をタンクへ流出させる。これにより、ブームシリンダを下げ方向に作動させる場合は、ブームシリンダを上げ方向に作動させる場合に比べて、ブームシリンダへ供給する油量が少なくなり、エネルギーが効率的に消費される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の建設機械のメンテナンス時等には、ブームを作動させることにより、車体をジャッキアップすることがある。この場合、バケットを接地させた状態で、ブームを下げ方向に操作することにより、車体を上昇させる。また、バケットから排土した土砂や、軟弱地盤を押し固めるために、転圧作業を行うことがある。転圧作業では、ブームを下げ方向に操作することにより、バケットの背の部分を軟弱地盤や排出された土砂に強く押しつけることにより、軟弱地盤や排出された土砂を押し固める。ジャッキアップや転圧作業においてブームを下げ方向に操作した際に、油圧ポンプからの圧油の一部がタンクへ流出すると、ブームシリンダに供給される圧油が少なくなる。このため、ブームを下げ方向へ作動させる作動力が不足し、ジャッキアップ及び転圧作業の作業性に影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ブーム操作時の作業性が確保された油圧回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明のある態様は、走行体と、前記走行体に対して旋回可能な旋回体と、前記旋回体に取付けられるブームと、圧油が供給されることにより前記ブームを前記旋回体に対して作動させるブームシリンダと、を備える建設機械に設けられる油圧回路であって、前記ブームシリンダに供給される前記圧油を吐出する第1ポンプと、流入した前記圧油をタンクへ流出させるセンターバイパス管路と、前記ブームを作動させる操作が入力されることにより中立位置から変位するブーム方向制御弁であって、前記中立位置に位置する状態において、前記センターバイパス管路に前記圧油を供給し、ブーム下げ操作が入力されたことに基づいて前記中立位置から変位することにより、前記ブームシリンダと前記センターバイパス管路の両方に前記圧油を供給する、ブーム方向制御弁と、前記センターバイパス管路に設けられ、前記センターバイパス管路の状態を切替える調整弁と、前記センターバイパス管路において前記調整弁よりも下流側に設けられ、前記圧油が流入することにより前記第1ポンプからの前記圧油の吐出量を小さくする、流量調整部材と、前記調整弁の状態を切替える切替部であって、前記ブーム下げ操作が入力され、かつ、前記旋回体を前記走行体に対して旋回させる旋回操作が入力された場合に、前記流量調整部材に前記圧油を流入させ、前記ブーム下げ操作が入力され、かつ、前記旋回操作が入力されない場合に、前記流量調整部材に流入する前記圧油を遮断又は減少させる、切替部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ブーム操作時の作業性が確保された油圧回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る油圧回路の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る油圧回路が設けられた油圧ショベルを概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るブームの操作における旋回操作の操作状態と、ブームシリンダに供給される圧油の流量との関係を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る油圧回路が設けられた油圧ショベルをジャッキアップした状態を概略的に示す図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る油圧回路の構成を示す概略図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態に係るブームの操作における旋回操作の操作状態と、ブームシリンダに供給される圧油の流量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について
図1乃至
図4を参照して説明する。
図1は、本実施形態の油圧回路1を示す図である。油圧回路1は、例えば油圧ショベル等の建設機械に用いられる。
【0011】
図2は、本実施形態の油圧回路1が設けられる建設機械の一例として、油圧ショベル60を示す図である。
図2に示すように、油圧ショベル60は、車体61と、車体に取付けられる作業装置64と、を備える。車体61は、下部走行体(走行体)62と、上部旋回体(旋回体)63とを備える。下部走行体62は、無限軌道(クローラ)65を備える。上部旋回体63は、キャビン66を備える。上部旋回体63は、下部走行体62上に設けられ、下部走行体62に対して旋回(回転)可能である。作業装置64は、上部旋回体63に連結されている。
【0012】
作業装置64は、ブーム67と、アーム68と、バケット69とを備える。ブーム67は、上部旋回体63に取付けられている。上部旋回体63には、ブーム67の操作用のブームシリンダ5が取付けられている。ブームシリンダ5は、油圧シリンダである。ブーム67は、ブームシリンダ5が駆動されることにより、上部旋回体63に対して回動(起伏)する。
【0013】
ブーム67の先端部には、アーム68と、アーム68の操作用のアームシリンダ71が取付けられている。アームシリンダ71は、油圧シリンダである。アーム68は、アームシリンダ71が駆動されることにより、ブーム67に対して回動する。
【0014】
アーム68の先端部には、作業アタッチメントであるバケット69と、バケット69の操作用のバケットシリンダ72が取付けられている。バケットシリンダ72は、油圧シリンダである。バケット69は、バケットシリンダ72が駆動されることによりアーム68に対して回動する。
【0015】
ブーム67、アーム68、バケット69、及び、各油圧シリンダ(5、71、72)は、上部旋回体63と一緒に下部走行体62に対して旋回する。油圧ショベル60は、バケット69を用いて土砂などの掘削を行う油圧式作業車である。
【0016】
図1に示すように、油圧回路1は、ブーム作動用油圧回路Aと、旋回用油圧回路Bとを備える。ブーム作動用油圧回路Aは、ブーム67を作動させるための圧油をブームシリンダ5に供給する油圧回路である。旋回用油圧回路Bは、上部旋回体63を下部走行体62に対して旋回させるための圧油を旋回モータ35に供給する油圧回路である。また、油圧回路1は、ブーム作動用油圧回路A及び旋回用油圧回路Bで用いられる圧油(作動油)が溜められるタンク(油タンク)10を備える。
【0017】
ブーム作動用油圧回路Aは、第1ポンプ2を備える。第1ポンプ2は、油圧ポンプである。第1ポンプ2は、容量(吐出量)が変化可能な容量可変ポンプである。第1ポンプ2が作動されることにより、タンク10から第1ポンプ2に作動油が供給され、第1ポンプ2から圧油が吐出される。
【0018】
ブーム作動用油圧回路Aは、ブーム方向制御弁3を備える。ブーム方向制御弁3は、第1吐出流路11を介して、第1ポンプ2に接続されている。第1ポンプ2から吐出された圧油は、第1吐出流路11を通って、ブーム方向制御弁3に供給される。ブーム作動用油圧回路Aでは、ブーム方向制御弁3からセンターバイパス管路19が延設されている。センターバイパス管路19は、タンク10まで延設されている。
【0019】
ブーム作動用油圧回路Aは、アクチュエータとして、ブームシリンダ5を備える。ブームシリンダ5は、ブームシリンダ縮小側管路16及びブームシリンダ伸長側管路17を介して、ブーム方向制御弁3に接続されている。ブームシリンダ5は、ブームシリンダ縮小側管路16を介してブーム方向制御弁3から圧油が供給されることにより、縮小する。また、ブームシリンダ5は、ブームシリンダ伸長側管路17を介してブーム方向制御弁3から圧油が供給されることにより、伸長する。本実施形態では、ブームシリンダ5が伸長することにより、ブーム67が上げ方向に作動される。また、ブームシリンダ5が縮小することにより、ブーム67が下げ方向に作動される。
【0020】
ブーム方向制御弁3は中立位置を有し、中立位置から第1の変位方向(
図1の矢印Y1の方向)及び第2の変位方向(
図1の矢印Y2の方向)に変位可能である。ブーム方向制御弁3が中立位置に位置する状態では、ブーム方向制御弁3において、第1吐出流路11とセンターバイパス管路19との間が連通する。このため、ブーム方向制御弁3からセンターバイパス管路19に圧油が流入する。また、ブーム方向制御弁3が中立位置に位置する状態では、第1吐出流路11とブームシリンダ伸長側管路17との連通、及び、第1吐出流路11とブームシリンダ縮小側管路16との連通のそれぞれが、遮断される。したがって、ブーム方向制御弁3が中立位置に位置する状態では、ブームシリンダ5に圧油が供給されず、ブームシリンダ5は作動されない。
【0021】
ブーム方向制御弁3が中立位置から第1の変位方向へ変位すると、第1吐出流路11がブームシリンダ伸長側管路17と連通し、ブームシリンダ縮小側管路16がタンク10と連通する。このため、ブーム方向制御弁3からブームシリンダ伸長側管路17を通してブームシリンダ5に圧油が供給されるとともに、ブームシリンダ5からブームシリンダ縮小側管路16を通してタンク10に圧油が回収される。この際、ブームシリンダ伸長側管路17を通してブームシリンダ5に圧油が供給されることにより、ブームシリンダ5が伸長する。そして、ブームシリンダ5が伸長することにより、ブーム67がブーム上げ方向に作動される。
【0022】
また、ブーム方向制御弁3の中立位置から第1の変位方向への変位量が大きくなるにつれて、ブーム方向制御弁3でのセンターバイパス管路19に対する開口面積が小さくなり、ブーム方向制御弁3でのブームシリンダ縮小側管路16及びブームシリンダ伸長側管路17に対する開口面積が大きくなる。このため、ブーム方向制御弁3の中立位置からの変位量が大きくなるにつれて、ブーム方向制御弁3からセンターバイパス管路19に流入する圧油の流量が小さくなり、ブーム方向制御弁3からブームシリンダ5に供給される圧油の流量が大きくなる。
【0023】
そして、ブーム方向制御弁3の第1の変位方向への変位量が最大になる状態において、ブーム方向制御弁3において、第1吐出流路11とセンターバイパス管路19との連通が遮断される。これにより、ブーム方向制御弁3からセンターバイパス管路19に圧油が流入しなくなる。したがって、ブーム方向制御弁3の第1の変位方向への変位量が最大になる状態では、圧油は、センターバイパス管路19を通ってタンク10に流出しない。
【0024】
ブーム方向制御弁3が中立位置から第2の変位方向へ変位すると、ブーム方向制御弁3において、第1吐出流路11がブームシリンダ縮小側管路16と連通し、ブームシリンダ伸長側管路17がタンク10と連通する。これにより、ブーム方向制御弁3からブームシリンダ縮小側管路16を通してブームシリンダ5に圧油が供給されるとともに、ブームシリンダ5からブームシリンダ伸長側管路17を通してタンク10に圧油が回収される。この際、ブームシリンダ縮小側管路16を通してブームシリンダ5に圧油が供給されることにより、ブームシリンダ5が縮小する。そして、ブームシリンダ5が縮小することにより、ブーム67が下げ方向に作動される。
【0025】
また、ブーム方向制御弁3の中立位置から第2の変位方向への変位量が大きくなるにつれて、ブーム方向制御弁3でのセンターバイパス管路19に対する開口面積が小さくなるとともに、ブーム方向制御弁3でのブームシリンダ縮小側管路16及びブームシリンダ伸長側管路17に対する開口面積が大きくなる。このため、ブーム方向制御弁3の中立位置からの変位量が大きくなるにつれて、ブーム方向制御弁3からブームシリンダ5に供給される圧油の流量が大きくなる。
【0026】
そして、ブーム方向制御弁3の第2の変位方向への変位量が最大になる状態において、ブーム方向制御弁3において、第1吐出流路11とセンターバイパス管路19は絞り25を介し連通する。従って、第1ポンプ2からブーム方向制御弁3に流入する圧油は、ブームシリンダ縮小側管路16を通してブームシリンダ5に供給可能であり、ブーム方向制御弁3に流入する圧油は、センターバイパス管路19に流入可能である。
【0027】
ブーム作動用油圧回路Aは、リモコン弁(操作弁)7と、操作入力部である操作レバー(第1操作部)8を備える。リモコン弁7は、操作レバー8に接続されている。操作レバー8では、ブーム67をブーム上げ方向又はブーム下げ方向に作動させる操作が入力される。リモコン弁7は、操作レバー8での操作入力が行われていない状態では、中立状態である。リモコン弁7は、操作レバー8での操作入力に基づいて、中立状態から変位する。
【0028】
ブーム作動用油圧回路Aは、ブーム上げパイロット経路13及びブーム下げパイロット経路14を備える。ブーム上げパイロット経路13及びブーム下げパイロット経路14のそれぞれは、リモコン弁7からブーム方向制御弁3まで延設されている。リモコン弁7は、パイロット油を吐出するサブポンプ(図示しない)と接続されている。操作レバー8での操作入力が行われることにより、リモコン弁7において、ブーム上げパイロット経路13及びブーム下げパイロット経路14のそれぞれとサブポンプとの連通状態が切替わる。
【0029】
操作レバー8において操作が入力されない状態では、リモコン弁7が中立状態となり、リモコン弁7において、サブポンプとブーム上げパイロット経路13との連通、及び、サブポンプとブーム下げパイロット経路14との連通が、遮断される。このため、ブーム方向制御弁3には、パイロット油が供給されず、ブーム方向制御弁3は中立位置で維持される。
【0030】
操作レバー8においてブーム67をブーム上げ方向に作動させる操作が入力されると、リモコン弁7が中立位置から変位し、リモコン弁7において、サブポンプとブーム上げパイロット経路13とが、連通する。これにより、サブポンプからのパイロット油が、ブーム上げパイロット経路13を通して、ブーム方向制御弁3に供給される。そして、ブーム方向制御弁3が中立位置から第1の変位方向へ変位することにより、ブームシリンダ伸長側管路17と第1吐出流路11とが連通される。これにより、ブーム方向制御弁3からブームシリンダ5に圧油が供給され、ブームシリンダ5が伸長する。この際、操作レバー8の変位量が大きくなるにつれて、ブーム方向制御弁3に供給されるパイロット油の油圧が大きくなり、ブーム方向制御弁3の第1の変位方向への変位量が大きくなる。
【0031】
ブーム方向制御弁3が第1の変位方向について最大変位位置に移動すると、第1吐出流路11とセンターバイパス管路19との連通が遮断される。このため、ブーム方向制御弁3において圧油がセンターバイパス管路19に流入せず、センターバイパス管路19からタンク10へは圧油は流出しない。このため、第1ポンプ2からブーム方向制御弁3に供給される圧油のうちの全量が、ブームシリンダ5に供給される。
【0032】
操作レバー8においてブーム67をブーム下げ方向に作動させる操作が入力されると、リモコン弁7が中立位置から変位し、リモコン弁7において、サブポンプとブーム下げパイロット経路14とが、連通する。これにより、サブポンプからのパイロット油が、ブーム下げパイロット経路14を通して、ブーム方向制御弁3に供給される。そして、ブーム方向制御弁3が中立位置から第2の変位方向へ変位することにより、ブームシリンダ縮小側管路16と第1吐出流路11とが連通される。これにより、ブーム方向制御弁3からブームシリンダ5に圧油が供給され、ブームシリンダ5が収縮する。この際、操作レバー8の変位量が大きくなるにつれて、ブーム方向制御弁3に供給されるパイロット油の油圧が大きくなり、ブーム方向制御弁3の第2の変位方向への変位量が大きくなる。
【0033】
センターバイパス管路19では、センターカット弁(調整弁)9が、設けられている。センターカット弁9は、ブーム方向制御弁3より下流側に設けられている。センターカット弁9は、基準位置と変位位置との間で変位可能である。センターカット弁9は、基準位置と変位位置との間で変位することにより、センターバイパス管路19の開閉状態を切替える。
【0034】
センターカット弁9が基準位置に位置する状態では、センターカット弁9において、センターバイパス管路19は開状態(開いた状態)となる。センターバイパス管路19が開状態である場合、センターバイパス管路19を介してブーム方向制御弁3とタンク10とが連通される。センターカット弁9が変位位置に位置する状態では、センターカット弁9においてセンターバイパス管路19が閉状態(閉じた状態)となる。センターバイパス管路19が閉状態である場合、ブーム方向制御弁3とタンク10との連通が遮断される。
【0035】
ブーム作動用油圧回路Aには、ブーム下げパイロット経路14からパイロット油が流入可能な分岐管路24が設けられている。また、センターカット弁9は、パイロット信号受信部20を備える。分岐管路24は、ブーム下げパイロット経路14から分岐し、センターカット弁9のパイロット信号受信部20に接続されている。分岐管路24は、ブーム下げパイロット経路14から流入したパイロット油を、センターカット弁9のパイロット信号受信部20に導く油圧管路である。
【0036】
分岐管路24からセンターカット弁9のパイロット信号受信部20にパイロット油が供給されない場合、センターカット弁9は、基準位置に位置する。このため、センターカット弁9において、センターバイパス管路19が開状態となり、センターバイパス管路19を介してブーム方向制御弁3とタンク10とが連通される。一方、分岐管路24からセンターカット弁9のパイロット信号受信部20にパイロット油が供給された場合、センターカット弁9は、変位位置に変位する。このため、センターカット弁9において、センターバイパス管路19が閉状態となり、ブーム方向制御弁3とタンク10との連通が遮断される。
【0037】
センターバイパス管路19では、センターカット弁9より下流側に、ネガコン絞り(流量調整部材)21が設けられている。ネガコン絞り21は、センターバイパス管路19において、センターカット弁9とタンク10の間に設けられている。
【0038】
ブーム作動用油圧回路Aでは、第1ポンプ2からの圧油の吐出量を調整する吐出容量制御部(吐出調整部)23が設けられている。吐出容量制御部23は、第1ポンプ2の容量を変化させることにより、第1ポンプ2からの圧油の吐出量を変化させる。本実施形態では、吐出容量制御部23は、いわゆるネガティブ制御を行う。ネガティブ制御では、吐出容量制御部23は、吐出容量制御部23に供給される制御圧力が高くなると、第1ポンプ2からの吐出量を少なくする。
【0039】
ブーム作動用油圧回路Aでは、ネガコン圧経路(制御流路)22がセンターバイパス管路19から分岐している。ネガコン圧経路22は、センターカット弁9より下流側で、かつ、ネガコン絞り21より上流側において、センターバイパス管路19から分岐し、吐出容量制御部23まで延設されている。センターバイパス管路19においてセンターカット弁9を通過した圧油がネガコン絞り21を通過することにより、ネガコン絞り21において油圧が発生する。ネガコン絞り21において発生した油圧は、ネガコン絞り21での圧油の通過流量に応じて、変化する。ネガコン絞り21で発生した油圧は、ネガコン圧経路22を介して吐出容量制御部23に導かれ、吐出容量制御部23に作用する。ネガコン絞り21で発生した油圧(制御圧力)が吐出容量制御部23に伝わることにより、吐出容量制御部23は、第1ポンプ2からの圧油の吐出量を減少させる。
【0040】
旋回用油圧回路Bは、第2ポンプ(油圧ポンプ)32を備える。第2ポンプ32は、容量(吐出量)が変化可能な容量可変ポンプである。第2ポンプ32が作動されることにより、タンク10から第2ポンプ32に作動油が供給され、第2ポンプ32から圧油が吐出される。
【0041】
旋回用油圧回路Bは、旋回方向制御弁33を備える。旋回方向制御弁33は、第2吐出流路41を介して、第2ポンプ32に接続されている。第2ポンプ32から吐出された圧油は、第2吐出流路41を通って、旋回方向制御弁33に供給される。旋回方向制御弁33は中立位置を有し、中立位置から第1の変位方向(
図1の矢印Z1の方向)及び第2の変位方向(
図1の矢印Z2の方向)に変位可能である。
【0042】
旋回用油圧回路Bでは、旋回方向制御弁33からセンターバイパス管路49が延設されている。センターバイパス管路49は、タンク10まで延設されている。
【0043】
旋回用油圧回路Bは、アクチュエータとして、旋回モータ35を備える。旋回モータ35は、右旋回用管路46及び左旋回用管路47を介して、旋回方向制御弁33と接続されている。旋回モータ35は、右旋回用管路46を介して旋回方向制御弁33から圧油が供給されることにより、上部旋回体63を右旋回方向に旋回させる。また、旋回モータ35は、左旋回用管路47を介して旋回方向制御弁33から圧油が供給されることにより、上部旋回体63を左旋回方向に旋回させる。
【0044】
旋回用油圧回路Bは、リモコン弁37と、操作入力部である操作レバー(第2操作部)38を備える。リモコン弁37は、操作レバー38に接続されている。操作レバー38では、上部旋回体63を右旋回方向又は左旋回方向に旋回させる操作が入力される。リモコン弁37は、操作レバー38での操作入力に基づいて変位する。
【0045】
旋回用油圧回路Bは、右旋回パイロット経路44及び左旋回パイロット経路43を備える。右旋回パイロット経路44及び左旋回パイロット経路43のそれぞれは、リモコン弁37から旋回方向制御弁33まで延設されている。右旋回パイロット経路44及び左旋回パイロット経路43のそれぞれは、リモコン弁37を介して、サブポンプ(図示しない)と接続されている。操作レバー38での操作入力が行われることにより、リモコン弁37において、右旋回パイロット経路44及び左旋回パイロット経路43のそれぞれとサブポンプとの連通状態が切替わる。
【0046】
操作レバー38において操作が入力されない状態では、旋回方向制御弁33には、パイロット油が供給されず、旋回方向制御弁33は中立位置で維持される。旋回方向制御弁33が中立位置に位置する状態では、第2吐出流路41とセンターバイパス管路49との間が連通し、第2吐出流路41と左旋回用管路47との連通、及び、第2吐出流路41と右旋回用管路46との連通のそれぞれが、遮断される。したがって、操作レバー38において操作が入力されない状態では、旋回方向制御弁33に供給された圧油は、センターバイパス管路49に流入し、旋回モータ35には供給されない。
【0047】
操作レバー38において上部旋回体63を旋回させる操作が入力されると、リモコン弁37において、右旋回パイロット経路44及び左旋回パイロット経路43の一方が、サブポンプと連通する。これにより、右旋回パイロット経路44及び左旋回パイロット経路43の一方を通って、旋回方向制御弁33にパイロット油が供給される。旋回方向制御弁33は、パイロット油が供給されることにより、中立位置から第1の変位方向(
図1の矢印Z1の方向)又は第2の変位方向(
図1の矢印Z2の方向)へ、変位する。旋回方向制御弁33が第1の変位方向又は第2の変位方向へ変位することにより、右旋回用管路46及び左旋回用管路47の一方が第2吐出流路41と連通し、右旋回用管路46及び左旋回用管路47の他方がタンク10と連通する。そして、旋回方向制御弁33から右旋回用管路46及び左旋回用管路47の一方を通して旋回モータ35に圧油が供給されるとともに、旋回モータ35から右旋回用管路46及び左旋回用管路47の他方を通してタンク10に圧油が回収される。これにより、旋回モータ35が作動され、上部旋回体63が下部走行体62に対して旋回する。
【0048】
センターバイパス管路49では、旋回方向制御弁33より下流側に、ネガコン絞り50が設けられている。センターバイパス管路49からは、ネガコン絞り50を通してタンク10に圧油が流入する。また、旋回用油圧回路Bでは、第2ポンプ32からの圧油の吐出量を調整する吐出容量制御部(吐出調整部)52が設けられている。吐出容量制御部52は、第2ポンプ32の容量を変化させることにより、第2ポンプ32からの圧油の吐出量を変化させる。
【0049】
旋回用油圧回路Bでは、旋回方向制御弁33より下流側で、かつ、ネガコン絞り50より上流側において、ネガコン圧経路(制御流路)51がセンターバイパス管路49から分岐している。ネガコン圧経路51は、吐出容量制御部52まで延設されている。ネガコン絞り50で発生した油圧(制御圧力)がネガコン圧経路51を介して吐出容量制御部52に伝わることにより、第2ポンプ32からの圧油の吐出量が減少する。
【0050】
分岐管路24には、切替弁53が、設けられている。切替弁53は、基準位置と変位位置との間で変位可能である。切替弁53は、基準位置と変位位置との間で変位することにより、分岐管路24の開閉状態を切替える。切替弁53は、本実施形態における切替部である。
【0051】
切替弁53が基準位置に位置する状態では、切替弁53において、分岐管路24が開状態(開いた状態)となる。分岐管路24が開状態である場合、分岐管路24を介して、ブーム下げパイロット経路14とセンターカット弁9とが連通される。
【0052】
一方、切替弁53が変位位置に位置する状態では、切替弁53において、分岐管路24が閉状態(閉じた状態)となる。分岐管路24が閉状態である場合、ブーム下げパイロット経路14とセンターカット弁9との連通が、遮断される。
【0053】
切替弁53とリモコン弁37との間には、分岐管路(パイロット流路)58が延設されている。また、切替弁53は、パイロット信号受信部54を備える。分岐管路58は、パイロット信号受信部54に接続されている。切替弁53には、分岐管路58を介して、右旋回パイロット経路44又は左旋回パイロット経路43からのパイロット油の油圧信号が、伝達される。
【0054】
右旋回パイロット経路44及び左旋回パイロット経路43のそれぞれは、シャトル弁59を介して分岐管路58へ接続される。シャトル弁59では、右旋回パイロット経路44及び左旋回パイロット経路43のそれぞれから分岐管路58に圧油が流入可能である。また、シャトル弁59では、右旋回パイロット経路44から左旋回パイロット経路43への圧油の流入、及び、左旋回パイロット経路43から右旋回パイロット経路44への圧油の流入が、防止される。シャトル弁59によって、右旋回パイロット経路44又は左旋回パイロット経路43からのパイロット油の油圧信号が、分岐管路58を介して、切替弁53に伝達される。
【0055】
切替弁53に分岐管路58からパイロット油の油圧信号が伝達されない場合、切替弁53は基準位置に位置する。この場合、切替弁53において、分岐管路24が開状態となる。一方、切替弁53に分岐管路58からパイロット油の油圧信号が伝達された場合、切替弁53は変位位置に位置する。この場合、切替弁53において、分岐管路24が閉状態となる。
【0056】
操作レバー38において旋回操作が入力されていない状態では、リモコン弁37は中立位置に位置する。この際、切替弁53にパイロット油が供給されないため、切替弁53は基準位置に位置する。このため、切替弁53において、分岐管路24は開状態となる。
【0057】
操作レバー38で旋回操作が入力されると、リモコン弁37が中立位置から変位し、右旋回パイロット経路44又は左旋回パイロット経路43を通って、旋回方向制御弁33にパイロット油が供給される。旋回方向制御弁33は、右旋回パイロット経路44又は左旋回パイロット経路43からパイロット油が供給されることにより、中立位置から変位する。そして、第2吐出流路41と旋回モータ35とが連通され、第2ポンプ32から旋回方向制御弁33に供給される圧油が旋回モータ35に供給される。これにより、旋回モータ35が作動し、上部旋回体63が下部走行体62に対して旋回する。
【0058】
この際、右旋回パイロット経路44又は左旋回パイロット経路43にパイロット油が流れることにより、シャトル弁59及び分岐管路58を介して、切替弁53にパイロット油が供給される。切替弁53は、パイロット油が供給されることにより変位位置に変位する。これにより、切替弁53において、分岐管路24が閉状態となる。
【0059】
次に、本実施形態の油圧回路1の作用及び効果について説明する。
【0060】
本実施形態の油圧回路1は、油圧ショベルなどの建設機械に設けられる。操作レバー8においてブーム67の操作が行われない状態では、リモコン弁7及びブーム方向制御弁3は、中立位置に位置する。ブーム方向制御弁3が中立位置に位置する状態では、第1吐出流路11とセンターバイパス管路19が連通し、第1吐出流路11とブームシリンダ5との連通が遮断される。このため、第1ポンプ2からブーム方向制御弁3に供給される圧油は、ブームシリンダ5へは供給されず、センターバイパス管路19に流入する。また、センターカット弁9及び切替弁53のそれぞれは、基準位置に位置する。このため、センターバイパス管路19及び分岐管路24のそれぞれは、開状態となる。このため、圧油は、ブーム方向制御弁3からセンターバイパス管路19を通してタンク10に流出する。
【0061】
(ブーム上げ操作)
図3は、ブーム67の作動操作と、ブームシリンダ5に供給される圧油の流量との関係を示す図である。ブーム67の上げ操作が単独で行われた場合、切替弁53において、分岐管路24は開状態である。ブーム67の上げ操作とともに、操作レバー38で旋回操作が入力される場合、切替弁53において、分岐管路24は閉状態となる。
【0062】
また、操作レバー8においてブーム67の上げ操作が入力されることにより、ブーム方向制御弁3が第1の変位方向へ移動する。ブーム方向制御弁3が第1の変位方向について最大変位位置に移動すると、第1吐出流路11とセンターバイパス管路19との連通が遮断され、第1ポンプ2からブーム方向制御弁3に供給される圧油のうちの全量が、ブームシリンダ5に供給される。
【0063】
このように、ブーム67の上げ操作では、第1吐出流路11とセンターバイパス管路19との連通が遮断されるため、旋回操作の有無及び切替弁53の状態等に関わらず、ネガコン絞り21には圧油が流入しない。このため、吐出容量制御部23には、ネガコン絞り21で発生した油圧が伝達されず、第1ポンプ2からの圧油の吐出量は減少されない。このため、ブームシリンダ5に供給される圧油の流量が大きい状態が維持される。
【0064】
(ブーム下げ操作と旋回操作の同時操作)
操作レバー8でブーム67の下げ操作が入力されると、リモコン弁7が中立状態から変位し、ブーム下げパイロット経路14を通ってブーム方向制御弁3にパイロット油が供給される。ブーム方向制御弁3は、ブーム下げパイロット経路14からパイロット油が供給されることにより、中立位置から第2の変位方向に変位する。ブーム方向制御弁3が中立位置から第2の変位方向に移動すると、第1吐出流路11とセンターバイパス管路19との間が絞られるとともに、ブームシリンダ縮小側管路16と第1吐出流路11とが連通される。これにより、ブーム方向制御弁3からブームシリンダ5に圧油が供給され、ブームシリンダ5が収縮する。そして、ブームシリンダ5が収縮することにより、ブーム67がブーム下げ方向に作動される。そして、ブーム方向制御弁3の第2の変位方向への変位量が最大になる状態においても、第1吐出流路11とセンターバイパス管路19は遮断されることなく、絞り25により連通状態になる。この際、第1ポンプ2からブーム方向制御弁3に供給される圧油は、一部がセンターバイパス管路19に流入し、センターバイパス管路19に流入しない残りがブームシリンダ5に供給される。
【0065】
ブーム67の下げ操作と旋回操作が同時に行われた場合、操作レバー38で旋回操作が入力されることにより、リモコン弁37が中立位置から変位し、上部旋回体63が下部走行体62に対して旋回する。この際、右旋回パイロット経路44又は左旋回パイロット経路43にパイロット油が流れることにより、シャトル弁59及び分岐管路58を通って、切替弁53にパイロット油が供給される。切替弁53は、パイロット油が供給されることにより変位位置に変位し、これにより、切替弁53において、分岐管路24が閉状態になる。
【0066】
このように、ブーム67の下げ操作と旋回操作の同時操作では、ブーム下げパイロット経路14にパイロット油が流れる。一方、分岐管路24が閉状態であるため、センターカット弁9には、パイロット油は供給されない。パイロット油が供給されないため、センターカット弁9は、基準位置から変位しない。このため、センターカット弁9において、センターバイパス管路19が開状態で維持される。したがって、ブーム方向制御弁3からセンターバイパス管路19に流入した圧油は、センターカット弁9及びネガコン絞り21を通って、タンク10に流出する。
【0067】
この際、ネガコン絞り21に圧油が流入することにより、ネガコン絞り21において油圧が発生する。ネガコン絞り21で発生した油圧は、ネガコン圧経路22を介して吐出容量制御部23に伝達される。このため、吐出容量制御部23は、第1ポンプ2からの圧油の吐出量を減少させる。第1ポンプ2からの圧油の吐出量が減少することにより、ブーム方向制御弁3を介してブームシリンダ5に供給される圧油の流量が減少する。
【0068】
(単独のブーム下げ操作)
ブーム67の下げ操作が単独で行われた場合、操作レバー38での旋回操作は行われない。この場合、リモコン弁37及び旋回方向制御弁33は、中立位置に維持される。右旋回パイロット経路44及び左旋回パイロット経路43にはパイロット油が流れないため、切替弁53は、基準位置から変位しない。このため、切替弁53において、分岐管路24が開状態に維持される。
【0069】
前述のように、単独のブーム67の下げ操作では、ブーム下げパイロット経路14にパイロット油が流れる。そして、分岐管路24が開状態であるため、ブーム下げパイロット経路14に流れるパイロット油は、分岐管路24を介して、センターカット弁9に供給される。センターカット弁9は、パイロット油が供給されることにより、変位位置に変位する。これにより、センターカット弁9において、センターバイパス管路19が閉状態になる。したがって、ブーム方向制御弁3からセンターバイパス管路19に流入した圧油は、センターカット弁9において遮断される。このため、ブーム方向制御弁3からセンターバイパス管路19に流入した圧油は、ネガコン絞り21に流入せず、また、タンク10へ流出しない。このため、ブームシリンダ5には、ブーム方向制御弁3に流入した圧油のうち全量が、供給される。また、ネガコン絞り21に圧油が流入しないため、吐出容量制御部23には、ネガコン絞り21で発生した油圧が伝達されず、第1ポンプ2からの圧油の吐出量は減少されない。このため、ブームシリンダ5に供給される圧油の流量が大きい状態が維持される。
【0070】
(作用効果)
前述のように、本実施形態では、ブーム67を作動させる操作において、ブーム下げ操作と旋回操作が同時に行われた場合に、ブーム方向制御弁3に供給される圧油のうちの一部がセンターバイパス管路19及びネガコン絞り21を通ってタンク10に流出し、第1ポンプ2からの圧油の吐出量が減少する。このため、ブーム下げ操作と旋回操作が同時に行われた場合において、他の場合と比べて、ブームシリンダ5に供給される圧油の流量が小さくなる。
【0071】
ここで、ブーム67の作動時には、通常、ブーム67を動作させる操作と同時に、上部旋回体63を旋回させる操作を行う。すなわち、ブーム67の操作時には、通常、ブーム67の操作と上部旋回体63の旋回操作が同時に行われる。
【0072】
また、ブーム67の下げ操作では、ブーム67の上げ操作に比べて、ブーム67を作動させるのに必要な作動力が小さい。本実施形態では、ブーム67の下げ操作と旋回操作が同時に行われた場合には、ブームシリンダ5に供給される圧油の流量が小さくなる。このため、適切な量の圧油をブームシリンダ5に供給でき、無用なエネルギーロスを最小にすることにより、エネルギーの消費を少なくすることができる。これにより、省エネルギー化が実現され、燃費が低減する。
【0073】
また、ブーム67の下げ操作と旋回操作が同時に行われた場合には、ブーム方向制御弁3に供給された圧油の一部が、センターバイパス管路19を通ってタンク10に流出する。このため、ブーム67を下げ方向に作動させる操作が急に行われた場合でも、圧力の急激な立ち上がりが緩和され、ブーム67の急作動が防止される。これにより、ブーム67の急作動による油圧ショベル60の振動が抑制され、操作性が向上する。
【0074】
一方、
図4に示すように、油圧ショベル60のメンテナンスや修理を行う際には、ブーム67を使用して、車体61のジャッキアップを行うことがある。この場合、バケット69を接地した状態で、操作レバー8においてブーム67の下げ操作が行われる。この作業時には、操作レバー38において上部旋回体63の旋回操作は行われない。したがって、ブーム67の下げ操作が単独で行われる。バケット69が接地した状態でブーム67の下げ操作が単独で行われることにより、バケット69の接地部分が固定された状態で、車体61がブーム67を含む作業装置64に対して回動する。同時に、車体61が、ブーム67との接続部から遠い側の無限軌道65の接地部分を中心として回転し、ブーム67との接続部に近い側の無限軌道65が地面から上側に離れる。これにより、修理等のメンテナンスが容易となる。
【0075】
また、油圧ショベル60を用いた転圧作業では、軟弱地盤や、排出された土砂を、押し固めることがある。この場合、バケット69の背面を押し固める対象に接触させた状態で、操作レバー8においてブーム67の下げ操作が行われる。この作業時には、操作レバー38において上部旋回体63の旋回操作は行われない。したがって、ブーム67の下げ操作が単独で行われる。バケット69の背面が作業対象に接触した状態でブーム67の下げ操作が単独で行われることにより、軟弱地盤や排出された土砂が押し固められる。
【0076】
本実施形態では、ブーム67の下げ操作が単独で行われ、操作レバー8においてブーム67の下げ操作が最大位置まで行われた状態では、ブーム方向制御弁3に供給された油圧のうち全量がブームシリンダ5に供給される。また、ブームシリンダ5に供給される圧油の流量は減少しない。このため、ブームシリンダ5における作動圧を確保することができ、十分なジャッキアップ作業や転圧作業が可能になる。これにより、ブームシリンダ5に供給される圧油の流量が減少することによってブーム67を作動させる作動力が不足することが防止され、作動力の不足がジャッキアップ作業や転圧作業に影響を及ぼすことが防止される。
【0077】
また、ブーム方向制御弁3に供給された油圧のうち全量がブームシリンダ5に供給されることにより、ジャッキアップ作業や転圧作業において、ブーム67とバケット69等との同時操作を行う場合でも、対応する油圧シリンダにおいて十分な作動圧を確保することができ、作業性が確保される。
【0078】
また、本実施形態では、単独のブーム67の下げ操作において、センターカット弁9においてセンターバイパス管路19の開閉状態を切替えることにより、タンク10への圧油の流出を防止する。このため、ブーム方向制御弁3に設けられる絞り25の大きさ(設定)に関係なく、ブーム方向制御弁3からタンク10への圧油の流出を防止することができる。したがって、ブーム方向制御弁3に設けられる絞り25を大きくすることができる。絞り25を大きくすることにより、ブーム67の下げ操作と旋回操作が同時に行われる場合において、ブーム方向制御弁3からタンク10へ流出する圧油の流量が大きくなり、ブームシリンダ5に供給される圧油をより小さくすることができる。これにより、単独でのブーム67の下げ操作におけるブームシリンダ5の作動力の低下を防止し、かつ、ブーム67の下げ操作と旋回操作の同時操作における省エネルギー効果を大きくすることができる。
【0079】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について、
図5を参照して説明する。本実施形態は、第1の実施形態の構成を次の通りに変形したものである。なお、第1の実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0080】
図5は、本実施形態の油圧回路1を示す図である。本実施形態では、油圧回路1は、切替弁53の代わりに、制御部(制御装置)57を備える。制御部57は、センターカット弁9への電力の供給を制御することにより、センターカット弁9の位置を切替える。そして、制御部57は、センターカット弁9の位置を切替えることにより、センターバイパス管路19の開閉状態を切替える。制御部57は、本実施形態における切替部である。
【0081】
制御部57は、電力制御部57aと、変位検出部57bと、変位検出部57cとを備える。電力制御部57a、変位検出部57b及び変位検出部57cのそれぞれは、例えば、制御部57においてプロセッサを構成する電子回路から形成されている。電力制御部57aは、センターカット弁9への電力の供給を制御する。変位検出部57bは、ブーム方向制御弁3の中立位置から第2の変位方向への変位を検出し、ブーム方向制御弁3が第2の変位方向へ変位したか否かを判断する。変位検出部57bは、ブーム方向制御弁3の第2の変位方向への変位に関する判断結果を、電力制御部57aに伝達する。変位検出部57cは、旋回方向制御弁33の中立位置からの変位を検出し、旋回方向制御弁33が中立位置から変位したか否かを判断する。変位検出部57cは、旋回方向制御弁33の変位に関する判断結果を、電力制御部57aに伝達する。
【0082】
油圧回路1は、圧力センサ55と、圧力スイッチ56を備える。圧力センサ55は、ブーム下げパイロット経路14のパイロット油の油圧を検出する油圧検出部である。圧力センサ55は、検出した油圧を示す検出信号を変位検出部57bに伝達する。変位検出部57bは、圧力センサ55から検出結果が伝達されることにより、ブーム下げパイロット経路14の油圧を取得する。変位検出部57bは、取得した油圧に基づいて、ブーム方向制御弁3の中立位置から第2の変位方向への変位量を算出する。ブーム方向制御弁3の中立位置から第2の変位方向への変位量は、例えば、操作レバー8でのブーム下げ操作の操作量に対応する。変位検出部57bは、ブーム方向制御弁3の中立位置から第2の変位方向への変位量に基づいて、ブーム方向制御弁3が中立位置から第2の変位方向へ変位したか否かを判断する。変位検出部57bは、例えば、ブーム方向制御弁3の中立位置から第2の変位方向への変位量が0より大きいことに基づいて、ブーム方向制御弁3が中立位置から第2の変位方向へ変位したと判断し、ブーム方向制御弁3の中立位置から第2の変位方向への変位量が0であることに基づいて、ブーム方向制御弁3が中立位置から第2の変位方向へ変位していないと判断する。変位検出部57bは、ブーム方向制御弁3が第2の変位方向へ変位したと判断した場合に、ブーム方向制御弁3の第2の変位方向への変位量を示す電気信号を電力制御部57aに伝達する。
【0083】
圧力スイッチ56は、右旋回パイロット経路44及び左旋回パイロット経路43のパイロット油の油圧を検出する油圧検出部である。圧力スイッチ56は、検出した油圧を示す検出信号を、変位検出部57cに伝達する。変位検出部57cは、圧力スイッチ56から検出結果が伝達されることにより、右旋回パイロット経路44及び左旋回パイロット経路43の油圧を取得する。変位検出部57cは、取得した油圧に基づいて、旋回方向制御弁33が中立位置から変位したか否かを判断する。この際、変位検出部57cは、取得した油圧が所定の値より大きいことに基づいて、旋回方向制御弁33が中立位置から変位したと判断する。所定の値は、例えば、旋回方向制御弁33が中立位置に位置する状態における右旋回パイロット経路44及び左旋回パイロット経路43の油圧である。また、所定の値は、旋回方向制御弁33が中立位置に位置する状態における右旋回パイロット経路44及び左旋回パイロット経路43の油圧よりも大きい値であってもよい。変位検出部57cは、旋回方向制御弁33が変位したと判断した場合に、電気信号を電力制御部57aに伝達する。
【0084】
圧力スイッチ56の近傍には、シャトル弁59が設けられている。シャトル弁59は、右旋回パイロット経路44又は左旋回パイロット経路43での油圧を圧力スイッチ56に導き、油圧を圧力スイッチ56に作用させる。これにより、圧力スイッチ56によって、右旋回パイロット経路44又は左旋回パイロット経路43の油圧を検出することが可能になる。
【0085】
本実施形態では、センターカット弁9として、電磁弁が用いられている。センターカット弁9は、制御部57と電気的に接続されている。電力制御部57aは、センターカット弁9へ電力を供給することにより、電気信号を伝達する。
【0086】
制御部57からセンターカット弁9に電力が供給されていない状態では、センターカット弁9に電気信号は伝達されない。センターカット弁9に電気信号が伝達されない状態では、センターカット弁9において、センターバイパス管路19は開状態になる。センターカット弁9においてセンターバイパス管路19が開状態になることにより、センターカット弁9を通ってタンク10まで、圧油が流入可能になる。
【0087】
制御部57からセンターカット弁9に電力が供給された状態では、センターカット弁9に電気信号が伝達される。センターカット弁9に電気信号が伝達された状態では、センターカット弁9において、センターバイパス管路19は閉状態になる。センターカット弁9においてセンターバイパス管路19が閉状態になることにより、センターカット弁9より下流側には、圧油が流入しなくなる。
【0088】
電力制御部57aは、ブーム方向制御弁3の中立位置から第2の変位方向への変位量、及び、旋回方向制御弁33が中立位置から変位したことを示す電気信号が検出されたか否かに基づいて、センターカット弁9への電力の供給を制御する。すなわち、電力制御部57aは、ブーム方向制御弁3が中立位置から第2の変位方向へ変位したか否か、及び、旋回方向制御弁33が中立位置から変位したか否か、に基づいて、センターカット弁9への電気信号の伝達を制御する。電力制御部57aは、変位検出部57bでのブーム方向制御弁3の変位量の算出結果、及び、変位検出部57cでの判断結果に基づいて、センターカット弁9への電気信号の伝達を制御する制御部である。
【0089】
図6は、電力制御部57aがセンターカット弁9への電力の供給を制御する処理において、用いられるテーブルの一例である。
図6に示す一例では、変位検出部57bからの電気信号が検出されず、かつ、変位検出部57cからの電気信号が検出されない場合、電力制御部57aは、センターカット弁9への電気信号を出力しない。すなわち、変位検出部57bにおいてブーム方向制御弁3が中立位置から第2の変位方向へ変位していないと判断され、かつ、変位検出部57cにおいて旋回方向制御弁33が中立位置から変位していないと判断された場合、電力制御部57aは、センターカット弁9への電気信号を出力しない。この場合、センターカット弁9に電気信号が伝達されず、センターカット弁9は、基準位置から変位しない。このため、センターカット弁9において、センターバイパス管路19が開状態になる。
【0090】
また、変位検出部57bからの電気信号が検出され、かつ、変位検出部57cからの電気信号が検出されない場合、電力制御部57aは、ブーム方向制御弁3の第2の変位方向への変位量に基づいて、センターカット弁9への電気信号の出力を制御する。すなわち、変位検出部57bにおいてブーム方向制御弁3が中立位置から第2の変位方向へ変位したと判断され、かつ、変位検出部57cにおいて旋回方向制御弁33が中立位置から変位していないと判断された場合、電力制御部57aは、センターカット弁9への電気信号を出力する。センターカット弁9に電気信号が伝達されることにより、センターカット弁9は、ブーム方向制御弁3の第2の変位方向への変位量に応じて、基準位置から変位位置へ変位する。これにより、センターカット弁9においてセンターバイパス管路19が絞られる又は閉状態になる。
【0091】
また、変位検出部57bからの電気信号が検出されず、かつ、変位検出部57cからの電気信号が検出された場合、電力制御部57aは、センターカット弁9への電気信号を出力しない。すなわち、変位検出部57bにおいてブーム方向制御弁3が中立位置から第2の変位方向へ変位していないと判断され、かつ、変位検出部57cにおいて旋回方向制御弁33が中立位置から変位したと判断された場合、電力制御部57aは、センターカット弁9への電気信号を出力しない。この場合、センターカット弁9に電気信号が伝達されず、センターカット弁9は基準位置から変位しない。このため、センターカット弁9において、センターバイパス管路19が開状態になる。
【0092】
また、変位検出部57bからの電気信号が検出され、かつ、変位検出部57cからの電気信号が検出された場合、電力制御部57aは、センターカット弁9への電気信号を出力しない。すなわち、変位検出部57bにおいてブーム方向制御弁3が中立位置から第2の変位方向へ変位したと判断され、かつ、変位検出部57cにおいて旋回方向制御弁33が中立位置から変位したと判断された場合、電力制御部57aは、センターカット弁9への電気信号を出力しない。この場合、センターカット弁9に電気信号が伝達されず、センターカット弁9は基準位置から変位しない。このため、センターカット弁9において、センターバイパス管路19が開状態になる。
【0093】
次に、本実施形態の油圧回路1の動作及び作用について、説明する。
【0094】
本実施形態では、制御部57の電力制御部57aは、変位検出部57bでの判断結果、変位検出部57cでの判断結果、及び、
図6のテーブルに基づいて、センターカット弁9への電力の供給を制御する。これにより、センターカット弁9の位置が切替えられる。センターカット弁9の位置が切替えられることにより、センターカット弁9において、センターバイパス管路19の開閉状態が切替えられる。すなわち、電力制御部57aは、変位検出部57bでの検出結果、及び、変位検出部57cでの検出結果に基づいて、センターバイパス管路19の開閉状態を切替える。
【0095】
(ブーム上げ操作)
本実施形態においても、ブーム67の上げ操作が行われた場合、操作レバー8においてブーム67の上げ操作が入力されることにより、ブーム方向制御弁3が第1の変位方向へ移動する。ブーム方向制御弁3が第1の変位方向について最大変位位置に移動すると、第1吐出流路11とセンターバイパス管路19との連通が遮断され、第1ポンプ2からブーム方向制御弁3に供給される圧油のうちの全量が、ブームシリンダ5に供給される。
【0096】
ブーム67の上げ操作では、第1吐出流路11とセンターバイパス管路19との連通が遮断されるため、センターカット弁9には、ブーム方向制御弁3に供給された油圧は流入しない。したがって、旋回操作の有無、及び、センターカット弁9の状態等に関わらず、ネガコン絞り21には圧油が流入しない。このため、吐出容量制御部23には、ネガコン絞り21で発生した油圧が伝達されず、第1ポンプ2からの圧油の吐出量は減少されない。このため、ブームシリンダ5に供給される圧油の流量が大きい状態が維持される。
【0097】
(ブーム下げ操作と旋回操作の同時操作)
操作レバー8でブーム67の下げ操作が入力されると、第1の実施形態と同様にして、ブーム方向制御弁3からブームシリンダ5に圧油が供給され、ブームシリンダ5が収縮する。そして、ブームシリンダ5が収縮することにより、ブーム67がブーム下げ方向に作動される。この際、第1ポンプ2からブーム方向制御弁3に供給される圧油は、一部がセンターバイパス管路19に流入し、センターバイパス管路19に流入しない残りがブームシリンダ5に供給される。
【0098】
このとき、変位検出部57bでは、ブーム方向制御弁3が中立状態から第2の変位方向へ変位したと判断される。そして、変位検出部57bから電力制御部57aに、ブーム方向制御弁3の中立状態から第2の変位方向への変位量を示す電気信号が伝達される。
【0099】
ブーム67の下げ操作と旋回操作が同時に行われた場合には、操作レバー38で旋回操作が入力されることにより、リモコン弁37が中立位置から変位し、上部旋回体63が下部走行体62に対して旋回する。この際、変位検出部57cでは、旋回方向制御弁33が中立状態から変位したと判断される。そして、変位検出部57cから電力制御部57aに、旋回方向制御弁33が中立状態から変位したことを示す電気信号が伝達される。
【0100】
電力制御部57aは、変位検出部57bからの電気信号が検出されたこと、変位検出部57cからの電気信号が検出されたこと、及び、
図6のテーブルに基づいて、センターカット弁9への電力の供給を制御することにより、センターカット弁9において、センターバイパス管路19を開状態にする。
【0101】
このように、ブーム67の下げ操作と旋回操作の同時操作では、第1ポンプ2からブーム方向制御弁3に供給される圧油の一部がセンターバイパス管路19に流入し、かつ、センターカット弁9においてセンターバイパス管路19が開状態となる。したがって、ブーム方向制御弁3からセンターバイパス管路19に流入した圧油は、センターカット弁9及びネガコン絞り21を通って、タンク10に流出する。
【0102】
この際、ネガコン絞り21に圧油が流入することにより、ネガコン絞り21において油圧が発生する。ネガコン絞り21で発生した油圧は、ネガコン圧経路22を介して吐出容量制御部23に伝達される。このため、吐出容量制御部23は、第1ポンプ2からの圧油の吐出量を減少させる。第1ポンプ2からの圧油の吐出量が減少することにより、ブーム方向制御弁3を介してブームシリンダ5に供給される圧油の流量が減少する。
【0103】
(単独のブーム下げ操作)
ブーム67の下げ操作が単独で行われた場合、操作レバー38での旋回操作は行われない。この場合、変位検出部57cでは、旋回方向制御弁33が中立状態から変位していないと判断される。このため、変位検出部57cから電力制御部57aには、電気信号が伝達されない。
【0104】
電力制御部57aは、変位検出部57bからの電気信号が検出されたこと、変位検出部57cからの電気信号が検出されないこと、及び、
図6のテーブルに基づいて、センターカット弁9への電力の供給を制御することにより、センターカット弁9においてセンターバイパス管路19を絞る又は閉状態にする。
【0105】
したがって、ブーム67の下げ操作が単独で行われた場合では、第1ポンプ2からブーム方向制御弁3に供給される圧油の一部がセンターバイパス管路19に流入し、かつ、センターカット弁9においてセンターバイパス管路19が絞られる又は閉状態となる。したがって、ブーム方向制御弁3からセンターバイパス管路19に流入した圧油は、センターカット弁9において減少する又は遮断される。このため、ブーム方向制御弁3からセンターバイパス管路19に流入した圧油のネガコン絞り21及びタンク10への流入が、減少する又は遮断される。このため、ブーム方向制御弁3に流入した圧油のうちブームシリンダ5に供給される量が維持される。また、ネガコン絞り21に流入する圧油が減少する又は遮断されるため、ネガコン絞り21から吐出容量制御部23に伝達される油圧が減少し、第1ポンプ2からの圧油の吐出量の減少量が抑制される。このため、ブームシリンダ5に供給される圧油の流量が大きい状態が維持される。
【0106】
(作用効果)
前述のように、本実施形態においても、ブーム67を作動させる操作において、ブーム下げ操作と旋回操作が同時に行われた場合に、ブーム方向制御弁3に供給される圧油のうちの一部がセンターバイパス管路19及びネガコン絞り21を通ってタンク10に流出し、第1ポンプ2からの圧油の吐出量が減少する。このため、ブーム下げ操作と旋回操作が同時に行われた場合において、他の場合と比べて、ブームシリンダ5に供給される圧油の流量が小さくなる。したがって、本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0107】
(第2の実施形態の変形例)
本実施形態のある変形例では、センターカット弁9に電気信号が伝達された状態では、センターカット弁9においてセンターバイパス管路19が開状態になり、センターカット弁9に電気信号が伝達されない状態では、センターカット弁9においてセンターバイパス管路19が閉状態になる。この場合、変位検出部57bにおいて圧力センサ55からの電気信号が検出され、かつ、変位検出部57cにおいて圧力スイッチ56からの電気信号が検出されない場合にのみ、電力制御部57aは、センターカット弁9への電気信号を出力せず、他の場合において、電力制御部57aは、センターカット弁9への電気信号を出力する。これにより、本実施形態においても、ブーム下げ操作と旋回操作が同時に行われた場合において、ブーム下げ操作が単独で行われた場合に比べて、ブームシリンダ5に供給される圧油の流量が小さくなる。
【0108】
また、本実施形態の別のある変形例では、操作レバー8とブーム方向制御弁3のそれぞれが、制御部57に電気的に接続される。この場合、ブーム方向制御弁3には、電磁弁が用いられる。制御部57には、操作レバー8で操作入力が行われたことを示す電気信号が入力される。制御部57は、操作レバー8から入力された操作信号に基づいて、ブーム方向制御弁3を制御する。変位検出部57bは、操作レバー8からの操作信号に基づいて、ブーム方向制御弁3が第2の変位方向へ変位したか否かを判断する。
【0109】
(その他の実施形態)
また、別のある実施形態では、センターカット弁9が変位位置に位置する状態では、センターカット弁9に設けられた絞りによって、センターバイパス管路19が絞られる。この実施形態では、ブーム67の下げ操作が単独で行われた場合には、ブーム方向制御弁3からセンターバイパス管路19に流入した圧油は、センターカット弁9において絞られる。このため、ブーム67の下げ操作が単独で行われた場合には、ブーム67の下げ操作が上部旋回体63の旋回操作と同時に行われた場合に比べて、タンク10へ流出する圧油の流量が小さくなる。このため、ブーム67の下げ操作が単独で行われた場合には、ブーム67の下げ操作が上部旋回体63の旋回操作と同時に行われた場合に比べて、ブームシリンダ5に供給される圧油の流量が大きくなる。これにより、十分なジャッキアップ作業や転圧作業が可能になる。
【0110】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0111】
1…油圧回路、2…第1ポンプ、3…ブーム方向制御弁、5…ブームシリンダ、7…リモコン弁、9…センターカット弁、10…タンク、19…センターバイパス管路、21…ネガコン絞り、23…吐出容量制御部、32…第2ポンプ、33…旋回方向制御弁、35…旋回モータ、37…リモコン弁、53…切替弁、60…油圧ショベル、62…下部走行体、63…上部旋回体、67…ブーム。