(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】電力変換装置および電力変換装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/487 20070101AFI20220114BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20220114BHJP
【FI】
H02M7/487
H02M7/48 R
(21)【出願番号】P 2018077718
(22)【出願日】2018-04-13
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】児山 裕史
(72)【発明者】
【氏名】影山 隆久
(72)【発明者】
【氏名】藤田 崇
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 隆太
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-228500(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03462559(EP,A1)
【文献】国際公開第2010/079593(WO,A1)
【文献】特開2000-032665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/487
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流側端子が共通の直流リンク部にそれぞれ接続され、交流側端子が共通の系にそれぞれ接続されるインバータ及びコンバータと、
発電システムとして出力する無効電力を、前記インバータから発電機を介して出力される無効電力と前記コンバータから出力される無効電力との合計として出力するよう制御する手段と
を具備する、電力変換装置。
【請求項2】
前記制御する手段は、
前記コンバータの出力電流及び前記コンバータの出力電圧に基づいて、前記コンバータの無効電力指令値を演算する演算手段と、
前記発電機から電力系統に出力する無効電力及び前記コンバータから前記電力系統に出力する無効電力の合計の指令値と前記演算手段により演算した前記コンバータの無効電力指令値との偏差を前記発電機の無効電力指令値として出力する出力手段と
を具備する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
直流側端子が共通の直流リンク部にそれぞれ接続され、交流側端子が共通の系にそれぞれ接続されるインバータ及びコンバータと、
発電システムとして出力する無効電力を、前記インバータから出力される無効電力と前記コンバータから出力される無効電力との合計として出力するよう制御する手段と
を具備する、電力変換装置。
【請求項4】
前記コンバータは、
前記演算手段により演算した前記コンバータの無効電力指令値に応じた無効電力を、電力の出力容量の範囲内で出力する、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記演算手段は、
前記コンバータの出力電流の最大値と前記コンバータの有効電流指令値とに基づいて前記コンバータの無効電流指令値を演算し、前記無効電流指令値及び前記コンバータの出力電圧に基づいて、前記コンバータの無効電力指令値を演算する、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記インバータは、固定子巻線が電力系統に接続される発電機の二次励磁巻線に電力を供給する、
請求項1、2、4又は5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
直流側端子が共通の直流リンク部にそれぞれ接続され、交流側端子が共通の系にそれぞれ接続されるインバータ及びコンバータを有する電力変換装置を制御する方法であって、
発電システムとして出力する無効電力を、前記インバータから発電機を介して出力される無効電力と前記コンバータから出力される無効電力との合計として出力するよう制御する、
電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置および電力変換装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直流と交流を相互に変換する電力変換装置は、インバータ及びコンバータを有し、社会の中で幅広い分野で用いられている。
最も基本的なインバータは、2つの半導体スイッチング素子による2レベルインバータであり、1つのレグで2つの電圧レベルを出力する。
【0003】
図6は、中性点クランプ型(NPC(Neutral-Point-Clamped))インバータの回路構成の一例を示す図である。
図6のように、1つのレグで4つの半導体スイッチング素子(以下、スイッチング素子と呼ぶことがある)と2つのクランプ用の半導体スイッチング素子(ダイオードでも良い)と直流分圧コンデンサとを用いた中性点クランプ型インバータが存在する。
図6では、三相のNPCのインバータ・コンバータ回路を例示している。NPCインバータは1つのレグで3つの電圧レベルを出力する事ができ、高耐圧化、損失低減、高調波低減に寄与するため、様々なインバータに用いられている。
【0004】
図6に示した回路の構成を説明する。まず、直流リンク部において高電位側のコンデンサC1と、低電位側のコンデンサC2とが直列接続される。交流電源にはU相のコンバータ101を含むUVW相のコンバータの交流側端子が接続され、負荷にはu相のインバータ102を含むuvw相のインバータの交流側端子が接続される。
【0005】
コンバータ101は、高電位側から低電位側にかけて直列接続してレグを構成する4つのスイッチング素子SW_C1、SW_C2、SW_C3、SW_C4と、各スイッチング素子に1対1で逆並列接続される4つの還流ダイオードD_C1、D_C2、D_C3、D_C4と、スイッチング素子SW_C1、SW_C2の相互接続点からスイッチング素子SW_C3、SW_C4の相互接続点にかけて直列接続される2つのスイッチング素子SW_C5、SW_C6と、スイッチング素子SW_C5、SW_C6に対して1対1で逆並列接続される2つのダイオードD_C5、D_C6を有する。コンデンサC1は直流電圧vdc1を保持し、コンデンサC2は直流電圧vdc2を保持する。各スイッチング素子は、コレクタを高電位側としてエミッタを低電位側とする。また、各ダイオードは、カソードを高電位側としてアノードを低電位側とする。
【0006】
なお、スイッチング素子SW_C2、SW_C3の相互接続点からコンバータ101の外部へ電流iu
cが出力される。スイッチング素子SW_C5、SW_C6の相互接続点はコンデンサC1、C2の相互接続点である中性点NP(電位はvn)へ接続され、電流in
cが流れる。V相、W相のコンバータの構成はU相のコンバータ101と同様である。
【0007】
また、u相のインバータ102は、高電位側から低電位側にかけて直列接続してレグを構成する4つのスイッチング素子SW_I1、SW_I2、SW_I3、SW_I4と、各スイッチング素子に1対1で逆並列接続される4つの還流ダイオードD_I1、D_I2、D_I3、D_I4と、スイッチング素子SW_I1、SW_I2の相互接続点からスイッチング素子SW_I3、SW_I4の相互接続点にかけて直列接続される2つのスイッチング素子SW_I5、SW_I6と、スイッチング素子SW_I5、SW_I6に対して1対1で逆並列接続される2つのダイオードD_I5、D_I6を有する。
【0008】
なお、スイッチング素子SW_I2、SW_I3の相互接続点からインバータ102の外部へ電流iu
iが出力される。スイッチング素子SW_I5、SW_I6の相互接続点は中性点NPへ接続され、電流in
iが流れる。v相、w相のインバータの構成はu相のインバータ102と同様である。
【0009】
図7は、誘導発電機の二次励磁変換器の回路構成の一例を示す図である。
図7に示すように、交流発電機である誘導発電機111の二次励磁変換器は、インバータ112、直流リンク部(高電位側コンデンサ113a、低電位側コンデンサ113bの直列回路)、コンバータ114、変圧器115を含む。インバータ112は、誘導発電機111の二次励磁巻線を励磁し、この誘導発電機111から無効電力Qが電力系統側の変圧器116に出力される。二次励磁巻線の励磁に必要な有効電力P
cは、変圧器116から二次励磁変換器側の変圧器115を介して、コンバータ114が、インバータ112、コンバータ114間の直流リンク部に供給する。このような発電システムは、風力発電機、可変速発電機などに用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【文献】電気学会論文誌D, vol. 113, No. 1, 1993年, 中性点クランプ電圧形PWMインバータの中性点電位変動の解析
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
NPCインバータはPN間の直流電圧vpnを分圧するコンデンサを有する。NPCインバータの中性点NPの電位vnは、インバータの動作に従い、基本波の3倍の周波数で変動する性質を持つ。この中性点電位の変動(Ripple of neutral point voltage)が大きいと、スイッチング素子にかかる電圧が変動し、この電圧が高い時には耐圧超過で素子が破損する危険があり、当該電圧が低い時には所望の電圧が出力できずに過変調となる可能性がある。
【0013】
中性点電位の変動の大きさは、変調率(Modulation index)と力率、コンデンサ容量、負荷電流が関係する。
図8は、NPCインバータにおける、変調率と力率による中性点電位の変動の大きさの一例を示す図である。
図8では、コンデンサ容量と負荷電流とを一定値とし、変調率と力率による中性点電位の変動の大きさを計算した例を示す。
ここで、力率は電圧と電流の位相差(Phase difference)として示している。
図8では、変調率が高いほど、また、力率が低いほど、中性点電位の変動が大きい事が分かる。
【0014】
中性点電位の変動を抑える最も単純な方法は、コンデンサ容量を増加させる事である。しかし、コンデンサ容量の増加はインバータの体積およびコストの増加を招き、事故時のエネルギーも大きくなる。
【0015】
一方、中性点電位の変動は、NPCインバータの制御により、ある程度抑制することができる。以下の式(1)に示す零相電圧v0を各相の電圧指令値vu,vv,vwに加算する事で、中性点電位変動を抑制できる。
【0016】
【0017】
ここで、式(1)のvu,vv,vwは、1で規格化された各相(U相、V相、W相またはu相、v相、w相)レグの電圧指令値であり、iu,iv,iwは各相のレグから出力される電流である。また、式(1)のsignは符号関数を表す。
【0018】
しかしながら、これらの方法では、中性点電位の変動を抑制しきれない動作領域が存在する。
図9は、NPCインバータにおける、変動抑制制御を行なったときの中性点電位の変動の大きさの一例を示す図である。上記の非特許文献1または特許文献1に開示された制御を適用した場合の中性点電位の変動を同様に計算すると
図9のようになる。また、
図9では、力率が低いほど中性点電位の変動が大きい事が分かる。上記の
図7のような発電システムで無効電力Qを主に系統に出力する場合、インバータの力率は低く、コンデンサの中性点電位変動は大きくなる。
【0019】
本発明が解決しようとする課題は、インバータの中性点電位変動を抑制し、コンデンサ容量の増加を防ぐことが可能な電力変換装置および電力変換装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
実施形態における電力変換装置は、直流側端子が共通の直流リンク部にそれぞれ接続され、交流側端子が共通の系にそれぞれ接続されるインバータおよびコンバータと、発電システムとして出力する無効電力を、前記インバータから発電機を介して出力される無効電力と前記コンバータから出力される無効電力との合計として出力するよう制御する手段とを有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、インバータの中性点電位変動を抑制し、コンデンサ容量の増加を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置が適用されるシステムの構成例を示す図。
【
図2】第1の実施形態に係る無効電力指令の制御回路の一例を示すブロック図。
【
図3】コンバータからの電流の出力範囲の一例を示す図。
【
図4】第2の実施形態に係る電力変換装置が適用されるシステムの構成例を示す図。
【
図5】第3の実施形態に係る電力変換装置が適用されるシステムの構成例を示す図。
【
図6】中性点クランプ型インバータの回路構成の一例を示す図。
【
図7】誘導発電機の二次励磁変換器の回路構成の一例を示す図。
【
図8】NPCインバータにおける、変調率と力率による中性点電位の変動の大きさの一例を示す図。
【
図9】NPCインバータにおける、変動抑制制御を行なったときの中性点電位の変動の大きさの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態について図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置が適用されるシステムの構成例を示す図である。なお、以下においては、
図1に示す電力変換装置の構成要素と同一または相当する構成要素には、
図1で使用した符号と同一の符号を付して説明する。
図1では、可変速揚水発電システム(以下、発電システムを称することがある)の三相誘導発電機(以下、誘導発電機)1の二次励磁変換器をNPCインバータ(以下、インバータ)3、NPCコンバータ(以下、コンバータ)5により構成する。この二次励磁変換器と制御装置10とで電力変換装置を構成する。誘導発電機1には揚水発電用の水車2が接続される。
【0024】
インバータ3は、交流側端子が誘導発電機1の二次励磁巻線に接続される。コンバータ5は、交流側端子が変圧器(Transformer)6を介して電力系統に接続される。インバータ3およびコンバータ5の直流側端子は、共通の直流リンク部(高電位側のコンデンサ4a、低電位側のコンデンサ4bの直列回路)に接続される。
【0025】
インバータ3は、誘導発電機1の二次励磁巻線に電力を供給し、この誘導発電機1を励磁する。誘導発電機1の固定子巻線は変圧器7を介して電力系統に接続される。
【0026】
誘導発電機1が有効電力を電力系統に出力する際にはインバータ3からも有効電力が誘導発電機1に出力され、誘導発電機1が無効電力を電力系統に出力する際にはインバータ3からも無効電力が誘導発電機1に出力される。
【0027】
コンバータ5は、インバータ3の運転に必要な有効電力Pcを電力系統から電力系統側の変圧器7、変換器側の変圧器6を介して得て、コンバータ5とインバータ3との間の直流リンク部に供給している。
【0028】
発電システムが無効電力Qを電力系統に出力する場合について説明する。第1の実施形態では、誘導発電機1が無効電力Qgを電力系統に出力し、コンバータ5が無効電力Qcを電力系統に直接出力し、発電システムとして無効電力Qを電力系統に出力している。即ち、以下の式(2)が成り立つ。
【0029】
Q=Qg+Qc …式(2)
ここで、Qgの上添え字のgは誘導発電機1を、Qcの上添え字のcはコンバータ5を表す。ここで、誘導発電機1の発電端有効電力は任意であり、記載は省略している。
【0030】
コンバータ5の役割は直流電圧を維持する事であるが、電力の出力容量に余力があれば、コンバータ5は、無効電力を出力する事が出来る。
【0031】
図2は、第1の実施形態に係る無効電力指令の制御回路の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、コンバータ5の無効電力指令値Q
c*は、制御装置10により与えられる。ここでは、誘導発電機1の無効電力指令値Q
g*の演算についても説明する。
【0032】
図3は、コンバータ5からの電流の出力範囲の一例を示す図である。
図3のように、コンバータ5が電力を出力できる範囲は、d軸とq軸(d軸に直交する軸)を用いた回転座標系で表すことができる。コンバータ5の出力電流I
cは
図3中の破線の円に対応する出力電流最大値I
max
cの範囲で出力する。直流電圧維持に必要な、有効電流I
d
cが
図3に示すd軸上のベクトルで表される時、出力可能な無効電流I
q
cは
図3のq軸に平行なベクトルI
q
cで表される。この関係からコンバータ5の無効電流指令値I
q
c*は以下の式(3)で求められる。
【0033】
【0034】
ここで、コンバータ5の有効電流指令値Id
c*、コンバータ5の無効電流指令値Iq
c*、コンバータ5の有効電圧指令値Vd
c*とコンバータ5の無効電圧指令値Vq
c*から、コンバータ5の無効電力指令値Qc*が以下の式(4)のように求められる。
【0035】
Qc*=Vq
c*Id
c*-Vd
c*Iq
c* …式(4)
この無効電力指令値Qc*が発電システムとしての無効電力指令値Q*、つまり、誘導発電機1から電力系統に出力する無効電力およびコンバータ5から電力系統に出力する無効電力の合計の指令値を上回ってはならないので、リミッタ18は、無効電力指令値Qc*を-Q*~Q*の範囲でリミットする。
【0036】
ここで、誘導発電機1の無効電力指令値Qg*は、発電システムとしての無効電力指令値Q*からコンバータ5の出力無効電力指令値Qc*の分だけ下げた値とすることができるので、以下の式(5)が成り立つ。つまり、第1の実施形態では、電力変換装置は、発電システムから電力系統に出力する無効電力指令値を、コンバータ5の無効電力指令値および誘導発電機1の無効電力指令値の合計として出力する。
【0037】
Qg*=Q*-Qc* …式(5)
このように、制御装置10は、誘導発電機1の無効電力指令値Qg*をインバータ3を介して誘導発電機1に与え、コンバータ5の無効電力指令値Qc*をコンバータ5に与える事で、発電システムとしての無効電力指令値Q*を与える。
【0038】
図2に示すように、制御装置10は、演算回路として、演算器11,12、減算器13、演算器14、乗算器15,16、減算器17、リミッタ18、減算器19を有する。この演算回路は、例えばCPU、記憶装置等からなるコンピュータ装置により実現することができる。この演算回路を用いた無効電力指令値の出力の具体例について説明する。
演算器11は、コンバータ5の出力電流最大値I
max
cの二乗を出力し、演算器12は、コンバータ5の有効電流指令値I
d
c*の二乗を出力する。出力電流最大値I
max
cは、設計上の任意の値である。
【0039】
減算器13は、演算器11からの出力値から演算器12からの出力値を減じた偏差を出力し、演算器14は、減算器13からの偏差の平方根をコンバータ5の無効電流指令値Iq
c*として出力する。
これらの演算器11、12、減算器13、演算器14を用いた演算は、上記の式(3)に従った演算に対応する。
【0040】
乗算器15は、演算器14からのコンバータ5の無効電流指令値Iq
c*にコンバータ5の有効電圧指令値Vd
c*を乗じた値を出力する。乗算器16は、コンバータ5の有効電流指令値Id
c*にコンバータ5の無効電圧指令値Vq
c*を乗じた値を出力する。
【0041】
減算器17は、乗算器16の出力値から乗算器15の出力値を減じた偏差を出力する。これらの乗算器15、16、減算器17を用いた演算は、上記の式(4)に従った演算に対応する。
リミッタ18は、減算器17からの偏差を-Q*~Q*の範囲でリミットした値をコンバータ5の無効電力指令値Qc*として出力する。
【0042】
減算器19は、発電システムとしての無効電力指令値Q*から、リミッタ18からのコンバータ5の無効電力指令値Qc*を減じた偏差を誘導発電機1の無効電力指令値Qg*として出力する。この減算器19を用いた演算は、上記の式(5)に従った演算に対応する。
【0043】
ここで、従来例について説明する。従来例では、上記で説明した
図7のように誘導発電機111からのみ無効電力Qが電力系統に出力される。即ち、以下の式(6)が成り立つ。
【0044】
Q=Q
g …式(6)
図7に示すコンバータ114は有効電力P
cを直流リンク部に供給する一方で、コンバータ114から無効電力Q
cは出力されない。つまり、誘導発電機111の無効電力指令値Q
g*は以下の式(7)で表され、コンバータ114の無効電力指令値Q
c*は以下の式(8)で表される。
【0045】
Qg*=Q* …式(7)
Qc*=0 …式(8)
上記のように、NPCインバータの中性点電位変動は、力率が低いほど大きい。本実施形態において、誘導発電機1が無効電力を電力系統に出力する際にはインバータ3からも無効電力が出力される。
【0046】
実施形態の説明に戻る。本実施形態では、誘導発電機1が電力系統に出力する無効電力Qgは、発電システムとしての無効電力出力値(実際の出力値)Q(または発電システムとしての無効電力指令値Q*)に対して、コンバータ5から電力系統に出力する無効電力出力値Qc(またはコンバータ5への無効電力指令値Qc*)だけ低下した電力であるので(式(5)参照)、インバータ3の力率が向上する。この結果、NPCインバータの中性点電位変動を小さくすることができる。
【0047】
本実施形態によれば、NPCインバータ・コンバータにおいて、NPCインバータの中性点電位変動を抑制し、コンデンサ容量の増加を防ぎ、この結果、小型・低コストで安全な電力変換装置を提供することができる。
【0048】
以下に、第1の実施形態を含む各実施形態の共通事項を述べる。
NPCコンバータはT型NPCコンバータでも構わない。また、制御装置10の演算回路での演算にあたり、コンバータ5の有効電圧指令値Vd
c*とコンバータ5の無効電圧指令値Vq
c*に代えて、コンバータ5の有効電圧出力値Vd
cとコンバータ5の無効電圧出力値Vq
cを用いても構わない。
また、制御装置10の演算での演算にあたり、コンバータ5の有効電流指令値Id
c*に代えて、コンバータ5の有効電流出力値Id
cを用いても構わない。
【0049】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る電力変換装置が適用されるシステムの構成例を示す図である。
本実施形態にかかる電力変換装置が適用されるシステムの基本的な構成は第1の実施形態と同じだが、第1の実施形態の水車2に代えて風車30が誘導発電機1を回す。つまり誘導発電機1を風力発電機として用いる。
【0050】
本実施形態では、誘導型の風力発電機の二次励磁変換器を、第1の実施形態と同様のNPCインバータ・コンバータで構成しており、無効電力の出力は第1の実施形態と同様に行われる。誘導発電機1が電力系統に出力する無効電力Qgが、発電システムとしての無効電力出力値(実際の出力値)Q(または発電システムとしての無効電力指令値Q*)に対して、コンバータ5から電力系統に出力する無効電力出力値Qc(またはコンバータ5への無効電力指令値Qc*)だけ低下した電力であるので(式(5)参照)、インバータ3の力率が向上する。この結果、中性点電位変動を小さくすることができる。
【0051】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、NPCインバータ・コンバータにおいて、NPCインバータの中性点電位変動を抑制し、コンデンサ容量の増加を防ぎ、この結果、小型・低コストで安全な電力変換装置を提供することができる。
【0052】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態に係る電力変換装置が適用されるシステムの構成例を示す図である。
本実施形態に係る電力変換装置が適用されるシステムは、第1の実施形態で説明した誘導発電機1を設けない、電力系統の電圧補償装置またはパワーフローコントローラなどに適用できる。第3の実施形態では、変圧器6、7に代えて、変換器側の並列変圧器41と、電力系統側の直列変圧器42を設け、インバータ3の交流側端子が直列変圧器42を介して電力系統に接続し、コンバータ5の交流側端子が並列変圧器41を介して電力系統に接続し、直流リンク部は共通になっている。
【0053】
通常は、インバータ3が補償電圧またはパワーフローを制御する電圧を電力系統に出力し、コンバータ5は、インバータ3の動作に必要な有効電力のみを系統から得る。本実施形態では、電力系統への無効電力の出力を第1の実施形態と同様に行う。ただし、第1の実施形態での誘導発電機1への無効電力指令値は、インバータ3への無効電力指令値Qi*として出力する。
インバータ3が出力する無効電力Qiが、発電システムとしての無効電力出力値(実際の出力値)Q(または発電システムとしての無効電力指令値Q*)に対して、コンバータ5から電力系統に出力する無効電力出力値Qc(またはコンバータ5への無効電力指令値Qc*)だけ低下した電力となるので、インバータ3の力率が向上し、中性点電位変動を小さくできる。
【0054】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、NPCインバータ・コンバータにおいて、NPCインバータの中性点電位変動を抑制し、コンデンサ容量の増加を防ぎ、この結果、小型・低コストで安全な電力変換装置を提供することができる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1…誘導発電機、2…水車、3…インバータ、5…コンバータ、6,7…変圧器、10…制御装置、11,12,14…演算器、13,17,19…減算器、15,16…乗算器、18…リミッタ、30…風車、41…並列変圧器、42…直列変圧器。