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特許7005425電気自動車またはハイブリッド自動車のための充電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】電気自動車またはハイブリッド自動車のための充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/10 20060101AFI20220114BHJP
   B60K 6/22 20071001ALI20220114BHJP
   B60K 6/28 20071001ALI20220114BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20220114BHJP
   B60L 53/22 20190101ALI20220114BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20220114BHJP
   B60W 20/13 20160101ALI20220114BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
H02J7/10 B ZHV
B60K6/22
B60K6/28
B60L1/00 L
B60L53/22
B60W10/26 900
B60W20/13
H02J7/00 P
H02J7/00 303C
H02J7/10 P
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018096118
(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2018201325
(43)【公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-06-02
(31)【優先権主張番号】1754440
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518100258
【氏名又は名称】ヴァレオ シーメンス イーオートモーティブ フランス エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラルビ ベンダニ
(72)【発明者】
【氏名】レダ シェルゴウム
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクテ シルヴェストル
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ コンダミン
(72)【発明者】
【氏名】ミノウン アスクール
(72)【発明者】
【氏名】マッソウラング ディアッロ
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-023231(JP,A)
【文献】特表2011-526142(JP,A)
【文献】特開平05-207668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/26
B60W 20/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車またはハイブリッド自動車に搭載されるように設計されている電気システムであって、前記電気システムは、
整流器(RD)とDC-DCコンバータ(DC、DCDC2、DCDC20)を有するAC-DCコンバータ、
高電圧バッテリ(HV)に接続された絶縁DC-DCコンバータ(LLC)、
を備え、
前記電気システムは、第1動作モードにおいて、外部交流電力グリッド(G)に接続されて前記高電圧バッテリ(HV)を充電するように構成されており、前記整流器(RD)は、前記外部交流電力グリッド(G)から受け取った交流から前記DC-DCコンバータ(DC、DCDC2、DCDC20)に対して整流された電圧を供給し、前記DC-DCコンバータは前記絶縁DC-DCコンバータ(LLC)を介して前記高電圧バッテリ(HV)に接続されており、
前記電気システムにおいて、
前記DC-DCコンバータ(DC、DCDC2、DCDC20)の第1インターフェース端子は、低電圧バッテリ(LV)に接続されるように設計されており、
前記電気システムは、第2動作モードにおいて、前記電気システムが前記外部交流電力グリッド(G)から切断されると、前記DC-DCコンバータ(DC、DCDC2、DCDC20)が前記高電圧バッテリから初期電圧(V1、V2)を供給して前記低電圧バッテリ(LV)に対して電力供給するように構成されている
ことを特徴とする電気システム。
【請求項2】
前記電気システムは、
前記低電圧バッテリに接続され、前記DC-DCコンバータ(DC、DCDC2、DCDC20)の前記第1インターフェース端子に接続された入力を備える、補助DC-DCコンバータ(DCDC1、DCDC10)、
を備え、
前記電気システムは、第2動作モードにおいて、前記DC-DCコンバータ(DC、DCDC2、DCDC20)が前記補助DC-DCコンバータ(DCDC1、DCDC10)に対して前記高電圧バッテリ(HV)から前記初期電圧(V1、V2)を提供して、前記低電圧バッテリ(LV)に対して電力供給するように構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の電気システム。
【請求項3】
前記DC-DCコンバータ(DC、DCDC2、DCDC20)と前記補助DC-DCコンバータ(DCDC1、DCDC10)はそれぞれ、前記DC-DCコンバータ(DC、DCDC2、DCDC20)と前記補助DC-DCコンバータ(DCDC1、DCDC10)によって供給される電力を制御するように構成されたスイッチ(QB)を備え、
前記第2動作モードにおいて、前記補助DC-DCコンバータ(DCDC1、DCDC10)の前記スイッチは一定デューティサイクルで動作し、前記DC-DCコンバータ(DC、DCDC2、DCDC20)の前記スイッチは可変デューティサイクルで動作し、これにより前記補助DC-DCコンバータ(DCDC1、DCDC10)が前記低電圧バッテリ(LV)に対して供給する電圧を制御する
ことを特徴とする請求項2記載の電気システム。
【請求項4】
前記電気システムは、前記高電圧バッテリ(HV)の高電圧入力端子と前記DC-DCコンバータ(DCDC20)の第2高電圧インターフェース端子との間に接続された第1スイッチ(R、R10)、前記低電圧バッテリ(LV)の低電圧入力端子と前記DC-DCコンバータ(DCDC2、DCDC20)の第2低電圧インターフェース端子との間に接続された第2スイッチ(R2、R20)、を備え、前記電気システムは、前記第2動作モードにおいて、前記第1および第2スイッチ(R1、R2)が閉じるように構成されており、これにより前記高電圧バッテリ(HV)の端子における第3高電圧(V4)が前記DC-DCコンバータ(DCDC2、DCDC20)の前記第2高電圧インターフェース端子および前記第2低電圧インターフェース端子に印加される
ことを特徴とする請求項2または3記載の電気システム。
【請求項5】
前記DC-DCコンバータ(DCDC2)の前記第1インターフェース端子は、前記絶縁DC-DCコンバータ(LLC)の前記入力において接続された端子に対応し、前記DC-DCコンバータ(DCDC2)の前記第2高電圧インターフェース端子および前記第2低電圧インターフェース端子は、前記整流器(RD)の出力において接続された端子に対応する
ことを特徴とする請求項4記載の電気システム。
【請求項6】
前記第1動作モードにおいて、前記補助DC-DCコンバータ(DCDC1、DCDC10)は、前記外部交流電力グリッド(G)から前記DC-DCコンバータ(DCDC2)によって供給される電圧(V1、V2)を、前記低電圧バッテリ(LV)に対して電力供給するために使用できる電圧(V3)へ変換するように構成されている
ことを特徴とする請求項5記載の電気システム。
【請求項7】
前記DC-DCコンバータ(DCDC20)の前記第1インターフェース端子は、前記整流器(RD)の出力において接続された端子に対応し、前記DC-DCコンバータ(DCDC20)の前記第2高電圧インターフェース端子および前記第2低電圧インターフェース端子は、前記絶縁DC-DCコンバータ(LLC)の入力において接続された端子に対応する
ことを特徴とする請求項4記載の電気システム。
【請求項8】
前記第1動作モードにおいて前記第1(R1、R10)および第2(R2、R20)スイッチは開いており、これにより前記DC-DCコンバータ(DCDC2、DCDC20)は前記絶縁DC-DCコンバータ(LLC)を介して前記高電圧バッテリ(HV)に対して電圧(V4)を供給することができる
ことを特徴とする請求項4から7のいずれか1項記載の電気システム。
【請求項9】
前記第1および第2スイッチ(R1、R2)は、電気機械リレーまたは半導体スイッチである
ことを特徴とする請求項5から8のいずれか1項記載の電気システム。
【請求項10】
前記DC-DCコンバータ(DCDC2、DCDC20)は、昇圧型または昇降圧型である
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の電気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概説すると、本発明は自動車の分野に関するものである。具体的には、電気自動車またはハイブリッド自動車に関する。より具体的には、これら自動車の低電圧および高電圧バッテリ充電に関する。
【0002】
さらに具体的には、自動車の機器に対して電力を供給する低電圧バッテリと自動車を推進させる高電圧バッテリを備える電気自動車またはハイブリッド自動車において、車載充電システム(一般に略語OBCと呼ばれる)を実装するのは一般的であり、これは当業者にとってよく知られたものである。この文脈において本発明は、改善された車載充電器を形成する電気システムに関する。
【背景技術】
【0003】
一般に知られているように、電気自動車またはハイブリッド自動車は、電気駆動システムと、複数の補助電気設備とを備える。電気駆動システムは車載高電圧電気システムを介して高電圧バッテリによって電力供給され、補助電気設備は車載低電圧電気システムを介して低電圧バッテリによって電力供給される。高圧バッテリは、電気駆動システムに対して電力を供給し、これにより自動車を推進させることができる。低圧バッテリは補助電気設備に対して電力を供給する。例えば車載コンピュータ、ウインドウ上昇モータ、マルチメディアシステム、などである。高圧バッテリは通常、100Vから900Vを供給し、望ましくは100Vから500Vを供給する。一方で低圧バッテリは通常、12V、24V、または48Vを供給する。これら高圧バッテリと低圧バッテリは、充電可能でなければならない。
【0004】
高電圧バッテリの充電は、自動車の高電圧電気システムを介して、バッテリを外部電力グリッドに対して接続することによりなされる。例えば家庭交流電力グリッドである。
【0005】
したがってこの目的のため、高電圧バッテリは、車載充電システム(またはOBC)を介して家庭交流電力グリッドに接続され、これにより充電される。車載充電システムは、AC-DCコンバータを備える。AC-DCコンバータは、整流器とDC-DCコンバータを備える。DC-DCコンバータは力率改善(PFC)機能を有し、ガルバニック絶縁されていることが望ましい。
【0006】
図1に示すこのタイプのOBCシステムにおいて、家庭交流電力グリッドG1からの交流は、まずAC-DCコンバータによって処理され、PFCコンバータ(PFC1)に対して供給される前に整流器RDによって直流に変換される。
【0007】
PFCコンバータの目的は、その力率改善機能において、吸収電流に影響を与える電力グリッドの歪みを除去し、車載電気システム(具体的には高電圧電気システム)に対して有害な高調波電流が生成されることを防ぐことである。PFCコンバータを用いて、入力電流と出力電圧を同期させることができる。
【0008】
高電圧バッテリを用いて低電圧バッテリを充電できることはよく知られている。この場合、高電圧バッテリはプリレギュレータと補助DC-DCコンバータとともに低電圧バッテリへ接続され、補助DC-DCコンバータはガルバニック絶縁されている。したがって補助DC-DCコンバータが供給する低電圧は、自動車の低電圧電気システムに対して電力供給することができる。
【0009】
現在、高電圧バッテリを充電する機能と低電圧バッテリを充電する機能は分離されている。各機能は、それぞれ専用のDC-DCコンバータとプリレギュレータを実装する必要がある。
【0010】
OBCシステムを小型化し、必要な部品の個数を削減するための1つのアイデアは、車載充電システムの機能を結合することである。
【0011】
現行技術によれば、高電圧バッテリと低電圧バッテリをそれぞれ専用で充電するOBCシステムの部品は、同じ筐体に収容されている。また双方の充電システムは、同じ冷却システム、同じフィルタ、同じコマンド電子コントローラを共有している。
【0012】
WO2015/192133は、電気自動車またはハイブリッド自動車のためのOBCシステムの例を記載している。WO2015/192133が記載しているOBCシステムはガルバニック絶縁され、同システムが備えるPFCコンバータは、共振素子と磁気部品の組み合わせによって供給する電力密度を最大化するように構成されている。
【0013】
この文書は現行技術を表しており、同文献が記載しているOBCシステムは上述の課題を有している。特に占有する空間の点が課題である。
【0014】
これら課題を緩和するため、本発明はAC-DCコンバータのPFCコンバータを用いることを提案する。家庭交流電力グリッドからの交流は、高電圧バッテリの充電と低電圧バッテリの充電の双方において、高電圧電気システムのための直流に変換される。すなわち高電圧バッテリが充電されているときではない。
【0015】
本発明により、PFCコンバータは、外部交流電力グリッドからの整流された電圧からの出力電圧をレギュレートする、標準PFCコンバータとして機能する。具体的には、高電圧バッテリを充電するとともに、高電圧バッテリを充電していないとき、低電圧バッテリに対して電力供給する補助DC-DCコンバータのためのプリレギュレーション機能を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、電気システムに関する。具体的には、電気自動車またはハイブリッド自動車に搭載されるように設計されており、前記電気システムは、
整流器とDC-DCコンバータを有するAC-DCコンバータ、
高電圧バッテリに接続された絶縁DC-DCコンバータ、
を備え、
前記電気システムは、第1動作モードにおいて、外部交流電力グリッドに接続されて高電圧バッテリを充電するように構成されており、前記整流器は、前記外部交流電力グリッドから受け取った交流から前記DC-DCコンバータに対して整流された電圧を供給し、前記DC-DCコンバータは前記絶縁DC-DCコンバータを介して前記高電圧バッテリに接続される。
【0017】
前記電気システムにおいて、
前記DC-DCコンバータの第1インターフェース端子は、低電圧バッテリに接続されるように設計されており、
前記電気システムは、第2動作モードにおいて、前記電気システムが前記外部交流電力グリッドから切断されると、前記DC-DCコンバータが前記高電圧バッテリから初期電圧を供給して前記低電圧バッテリに対して電力供給するように構成されている。
【0018】
本発明に係る電気システムによれば、OBCシステムは小型化される。DC-DCコンバータが2つの機能を有し、低電圧バッテリを充電する専用のプリレギュレータを有する必要はないからである。
【0019】
さらに第2動作モードにおいて、前記DC-DCコンバータは、低電圧バッテリを充電するために、電流が非連続となることなく初期直流電圧を供給することができる。
【0020】
1実施形態において、前記電気システムは、
前記低電圧バッテリに接続され、前記DC-DCコンバータの前記第1インターフェース端子に接続された入力を備える、補助DC-DCコンバータ、
を備え、
前記電気システムは、第2動作モードにおいて、前記DC-DCコンバータが前記補助DC-DCコンバータに対して前記高電圧バッテリから前記初期電圧を提供して、前記低電圧バッテリに対して電力供給するように構成されている。
【0021】
前記DC-DCコンバータと前記補助DC-DCコンバータはそれぞれ、前記DC-DCコンバータと前記補助DC-DCコンバータによって供給される電力を制御するように構成されたスイッチを備える。したがって前記第2動作モードにおいて、前記補助DC-DCコンバータの前記スイッチは一定デューティサイクルで動作し、前記DC-DCコンバータの前記スイッチは可変デューティサイクルで動作し、これにより前記補助DC-DCコンバータが前記低電圧バッテリに対して供給する電圧を制御する。
【0022】
1実施形態において、前記電気システムは、前記高電圧バッテリの高電圧入力端子と前記DC-DCコンバータの第2高電圧インターフェース端子との間に接続された第1スイッチ、前記低電圧バッテリの低電圧入力端子と前記DC-DCコンバータの第2低電圧インターフェース端子との間に接続された第2スイッチ、を備え、前記電気システムは、前記第2動作モードにおいて、前記第1および第2スイッチが閉じるように構成されており、これにより前記高電圧バッテリの端子における第3高電圧が前記DC-DCコンバータの前記第2インターフェース端子に印加される。
【0023】
前記DC-DCコンバータの前記第1インターフェース端子は、前記絶縁DC-DCコンバータの前記入力において接続された端子に対応し、前記DC-DCコンバータの前記第2インターフェース端子は、前記整流器の出力において接続された端子に対応する。
【0024】
前記第1動作モードにおいて、前記補助DC-DCコンバータは、前記外部交流電力グリッドから前記DC-DCコンバータによって供給される電圧を、前記低電圧バッテリに対して電力供給するために使用できる電圧へ変換するように構成されている。
【0025】
前記DC-DCコンバータの前記第1インターフェース端子は、前記整流器の出力において接続された端子に対応し、前記DC-DCコンバータの前記第2インターフェース端子は、前記絶縁DC-DCコンバータの入力において接続された端子に対応する。
【0026】
前記第1動作モードにおいて前記第1および第2スイッチは開いており、これにより前記DC-DCコンバータは前記絶縁DC-DCコンバータを介して前記高電圧バッテリに対して電圧を供給することができる。
【0027】
1実施形態において、前記第1および第2スイッチは、電気機械リレーまたは半導体スイッチである。
【0028】
実施形態において、前記DC-DCコンバータは、昇圧型または昇降圧型である。
【0029】
1実施形態において、前記電気システムは、前記整流器の入力に接続され、前記外部交流電力グリッドによって供給される電圧をフィルタリングし、前記整流器に対してフィルタリングされた電圧を供給する、フィルタリング手段を備える。
【0030】
1実施形態において、前記DC-DCコンバータの前記スイッチは、第1動作モードにおいて、前記高電圧バッテリの電圧需要に基づき前記DC-DCコンバータが初期電圧を供給するように構成されている。
【0031】
1実施形態において、前記DC-DCコンバータの前記スイッチは、第2動作モードにおいて、前記低電圧バッテリの電圧需要に基づき前記DC-DCコンバータが初期電圧を供給するように構成されている。
【0032】
1実施形態において、前記電気システムは、前記低電圧バッテリの電圧需要を判定する手段を備える。
【0033】
1実施形態において、前記電気システムは、前記高電圧バッテリの電圧需要を判定する手段を備える。
【0034】
本発明は、以下の説明を読むことによりさらに理解されるであろう。以下の説明は例示のためのみのものであり、以下の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】現行技術におけるOBCシステムの機能ブロック図である。
図2】本発明に係るOBCシステムの機能ブロック図である。
図3】本発明に係るOBCシステムの第1実施形態の簡易電気回路図である。
図4】本発明に係るOBCシステムの第2実施形態の簡易電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
複数の実施形態にしたがって本発明を以下に説明するが、これは本発明をこれら実施形態に限定するものではない。本発明は、当業者にとって既知の様々なバージョンで実装することができる。これらも本発明に含まれる。
【0037】
図1は、現行技術におけるOBCシステムの機能ブロック図である。このOBCシステムは、高電圧バッテリHV1に対して電力供給する。HV1は通常、電気自動車またはハイブリッド自動車を推進するために用いる。OBCシステムはさらに、低電圧バッテリLV1に対して電力供給する。LV1は自動車の電気設備に対して電力供給する。
【0038】
図1において、高電圧バッテリHV1を充電するために用いる自動車の高電圧電気システムに対して電力供給するため、OBCシステムはAC-DCコンバータを備える。AC-DCコンバータは、整流器RDを備える。整流器RDは外部交流電力グリッドG1(例えば家庭交流電力グリッド)によって電力供給される。整流器RDは、電圧コンバータに対して整流された電圧を供給する。電圧コンバータは、PFCコンバータ(図1におけるPFC1)として機能し、ガルバニック絶縁DC-DCコンバータ(図1におけるDC11)を介して高電圧バッテリHV1に対して電力供給する前に電圧をレギュレートする。
【0039】
図1において、低電圧バッテリLV1を充電するために用いる自動車の低電圧電気システムに対して電力供給するため、OBCシステムはプリレギュレータPR1を備える。PR1は高電圧バッテリHV1に接続され、HV1の端子における電圧からプリレギュレータPR1が供給する電圧を用いて、専用ガルバニック絶縁補助DC-DCコンバータ(図1におけるDC12)を介して低電圧バッテリLV1に対して電力供給する。
【0040】
図2において、設計を小型化するため、本発明はDC電圧コンバータを共用することを提案する。DC電圧コンバータは、高電圧バッテリHV2を充電する動作モードと、高電圧バッテリHV2を充電しない動作モードの双方において、PFCコンバータとして機能する。さらに、低電圧バッテリLV2に対して電力供給するための電圧を提供することができる。
【0041】
高電圧バッテリHV2が充電されるとき、DC電圧コンバータはAC-DCコンバータ内の標準PFCコンバータとして機能し、これにより整流器RDからの電圧がガルバニック絶縁DC-DCコンバータDC21を介して高電圧バッテリHV2に対して電力供給する前にこれをレギュレートする。
【0042】
高電圧バッテリHV2が充電されていないとき、DC電圧コンバータは低電圧バッテリLV2を充電する。この第2動作モードにおいて、DC電圧コンバータはPFCコンバータとして機能しない。したがってDCコンバータは、低電圧バッテリLV2のプリレギュレータとして機能する。このとき高電圧バッテリHV2は充電されておらず、OBCシステムは外部交流電力グリッドG2に接続されていない。この動作モードにおいて、高電圧バッテリHV2の端子における電圧は、スイッチRのセットを介してDCコンバータの入力端子に接続される。DCコンバータは、低電圧バッテリLV2を充電するため、低電圧供給システムのガルバニック絶縁補助DC-DCコンバータDC22に対して、レギュレートされた電圧を供給する。
【0043】
DCコンバータはプリレギュレータとして機能し、高電圧バッテリHV2からの高電圧を、低電圧供給システムが用いるレギュレートされた電圧へ変換する。すなわち、DCコンバータが供給する電圧を低電圧供給システムが用いる低電圧へ補助DC-DCコンバータによって変換することを介して、低電圧バッテリLV2を充電するために用いる電圧へ変換する。
【0044】
本発明に係るOBCシステムの設計によれば、低電圧バッテリLV2を充電するための専用プリレギュレータは必要なくなる。高電圧バッテリを充電していないとき、DCコンバータがその機能を実施するからである。
【0045】
したがって、高電圧バッテリHV2を充電するためにOBCシステムを外部交流電力グリッドG2へ接続する動作モードにおいて、DCコンバータは高電圧を供給するように制御され、これは高電圧バッテリHV2の充電を最適化するように決定される。
【0046】
高電圧バッテリHV2を充電しておらず外部交流電力グリッドG2から切断されている動作モードにおいて、OBCシステムは低電圧バッテリLV2を充電し、DCコンバータは低電圧バッテリLV2に接続された補助DC-DCコンバータDC22に対して電圧を供給するように制御される。DCコンバータの入力は、高電圧バッテリHV2の端子において供給される電圧を受け取り、低電圧バッテリLV2の電圧需要に基づきその電圧をレギュレートする。
【0047】
2実施形態において、DCコンバータは、昇圧タイプまたは昇降圧タイプである。昇圧コンバータは電圧を上昇させるスイッチモード電源の一部を形成するコンバータであり、昇降圧コンバータは電圧を上下させるスイッチモード電源の一部である。
【0048】
図3は、本発明に係るOBCシステムの実施形態の簡易電気回路図である。よく知られているように、OBCシステムは連続するステージによって表される。まずOBCシステムは、ダイオードD1、D2、D3、D4によって形成された整流器RDを備える。DC-DCコンバータDCDC2は、インダクタンスLB、スイッチQB、ダイオードDB、出力端子間のキャパシタCBを備える。絶縁DC-DCコンバータLLCは、2つのスイッチQ1とQ2、共振回路RT、2つのダイオードDo1とDo2、出力端子間のキャパシタCoを備える。共振回路RTは、インダクタンスLr、2つのキャパシタCr/2、インダクタンスLmを備える。本発明に係るOBCシステムは、高電圧バッテリHVと低電圧バッテリLVを充電するように構成されている。
【0049】
低電圧バッテリLVは、補助DC-DCコンバータDCDC1を介して充電される。DCDC1は、低電圧バッテリLVの端子へ印加される前に電圧を調整するために用いるスイッチ(図示せず)を備えることが望ましい。補助DC-DCコンバータDCDC1は、ガルバニック絶縁されていることが望ましい。
【0050】
図3の実施形態において、構造的観点から、2つのスイッチR1とR2、より具体的には2つのリレーが、高電圧バッテリHVの端子とコンバータDCDC2の入力との間に接続されている。
【0051】
これらスイッチR1とR2により、高電圧バッテリHVの端子における電圧は、整流器RDとコンバータDCDC2の間に配置されたインターフェース端子に対して印加され、高電圧バッテリHVの充電機能を実施していないときこれらスイッチは閉じられる。
【0052】
図3において、図4と同様に、V2は入力電圧であり、これは整流器RDとコンバータDCDC2との間に配置されたインターフェース端子からのものである。V1は、コンバータDCDC2と絶縁DC-DCコンバータLLCとの間に配置されたインターフェース端子における第1高電圧である。V3は、低電圧バッテリの端子における第2低電圧である。V4は、高電圧バッテリHVの端子における第3高電圧である。
【0053】
したがって図3において、第1動作モードのとき、高電圧バッテリHVの充電が実施され、このときOBCシステムは外部交流電力グリッドGに接続され、グリッドGは正弦波電圧Vinを供給する。外部交流電力グリッドGが供給する電圧Vinは、フィルタリング手段Fを介してフィルタリングされ、整流器RDによって整流されて、整流器とコンバータDCDC2との間の入力電圧V2を供給する。
【0054】
第1動作モードにおいて、コンバータDCDC2はPFCコンバータとして動作する。コンバータDCDC2の出力において、第1高電圧V1はレギュレートされ一定であり、その値は100Vから900Vであり、通常は500V周辺である。これは高電圧バッテリHVの端子において必要な第3高電圧V4に依拠する。第1高電圧V1は、絶縁DC-DCコンバータLLCによって調整され、高電圧バッテリHVを充電する。この具体例において、電圧V4で高電圧バッテリHVを充電するための第1高電圧V1を調整するDC-DCコンバータは、LLC共振ハーフブリッジを備える。LLC共振ハーフブリッジは共振回路RTを備える。この構成は例示であり、絶縁DC-DCコンバータLLCは別の回路構成であってもよい。
【0055】
この第1動作モードにおいて、リレーR1とR2は開いている。補助DC-DCコンバータDCDC1の入力は、低電圧バッテリLVに接続されており、DCDC2コンバータが供給する第1一定高電圧V1に対応する。他バージョンにおいて、補助DC-DCコンバータDCDC1は、第1高電圧V1を第2低電圧V3へ変換する。V3は約12V、24V、または48Vであり、これは補助DC-DCコンバータDCDC1が供給する変換係数に依拠する。
【0056】
このバージョンにおいて、低電圧バッテリLVは、“ダウングレード”モードにおいて充電される。専用レギュレータを有していないからである。コンバータDCDC2は、第1高電圧V1をレギュレートして、高電圧バッテリHVの電圧需要に基づき供給され、低電圧バッテリLVに対して供給される第2低電圧V3は最適調整されないように制御される。この低電圧バッテリLVに対して電力供給する“ダウングレード”モードは、このバージョンにおいて許容可能なものであり、高電圧バッテリLVが充電される。
【0057】
第1動作モードにおける“ダウングレード”モードは、許容可能なものである。高電圧バッテリHVが充電され、自動車が外部交流電力グリッドGに接続されているとき、低電圧電気システムに接続されている設備(例えばマルチメディアシステム、ウインドウ上昇モータなど)が要求する電力は、実際には最小限に減少するからである。
【0058】
第2動作モードにおいて、高電圧バッテリHVは充電されない。OBCシステムが外部交流電力グリッドGから切断されているからである。
【0059】
この場合、リレーR1とR2は閉じており、整流器RDとコンバータDCDC2との間に配置されたインターフェース端子は高電圧バッテリHVの端子に接続されている。これによりV2=V4となる。
【0060】
1実施形態において、DCDC2コンバータは、第2動作モードにしたがって、プリレギュレータとして動作する。その目的は、レギュレートされた第1可変電圧V1を、低電圧バッテリLVの端子における電圧需要に合わせることである。この場合、補助DC-DCコンバータは、スイッチを備える(図示せず)。この実施形態におけるスイッチは、コンバータDCDC2のスイッチQBとともに動作し、各コンバータに対してそれぞれ供給される電力を制御するように構成される。
【0061】
1実施形態において、低電圧バッテリLVの電圧需要を求める計算手段を備える。
【0062】
実施形態において、補助DC-DCコンバータの入力は、DCDC2コンバータが供給する第1高電圧V1に対応する。補助DC-DCコンバータは、低電圧バッテリLVの電圧需要に基づき第1高電圧V1を調整し、要求される第2低電圧V3が供給されるようにする。したがって補助DC-DCコンバータDCDC1は、自身の変換係数により定められる第2低電圧V3を低電圧バッテリLVの端子において供給する。
【0063】
第2動作モードの他バージョンにおいて(これは例示であり限定するものではない)、補助DC-DCコンバータDCDC1のスイッチは一定デューティサイクルで動作し、コンバータDCDC2のスイッチQBは可変デューティサイクルで動作し、これにより補助DC-DCコンバータDCDC1が低電圧バッテリLVに対して供給する電圧を制御する。したがって補助DC-DCコンバータは、入力電圧(すなわち補助DC-DCコンバータから出力される第1電圧V1)と、第2低電圧V3との間で、一定の変換係数を有し、これによりデューティ比の観点において50%の性能で動作し、非常に低い電圧出力を実現する。第2低電圧V3を低電圧バッテリLVの電圧需要に調整するため、補助DC-DCコンバータDCDC1は代替形態として、可変変換係数を有することができるが、この構成は電圧損失を実質的に増加させる。
【0064】
図4は、本発明に係るOBCシステムの第2実施形態の簡易電気回路図を示す。
【0065】
図3の例と比較すると、補助DC-DCコンバータDCDC10とスイッチR10,R20(通常はリレーで構成される)は反対向きに接続されている。換言すると図4において、補助DC-DCコンバータDCDC10は、リレーR1とR2が図3において接続されている接続端子に接続され、これにともなってリレーR10とR20は図3において補助DC-DCコンバータDCDC1が接続されている接続端子に接続されている。
【0066】
したがって補助DC-DCコンバータDCDC10は、低電圧バッテリLVの端子とDC-DCコンバータDCDC20の入力に接続されている。
【0067】
リレーR10とR20は、高電圧バッテリHVの端子とDCDC20コンバータの出力に接続され、これは絶縁DC-DCコンバータLLCの入力に対応する。
【0068】
さらに図3におけるダイオードDBは、図4において2方向スイッチQに置き換えられており、これはスイッチQBと同じタイプのものであってもよい。
【0069】
OBCシステムが外部交流電力グリッドGに接続され、高電圧バッテリHVの充電機能が実施されると、入力電圧V2がDCDC20コンバータに対して供給され、これは外部電力グリッドからの整流された電圧Vinに対応する。PFCコンバータとして機能するコンバータDCDC20と絶縁DC-DCコンバータLLCを介した高電圧バッテリHVの充電、および補助DC-DCコンバータDCDC10を介した“ダウングレード”モードにおける低電圧バッテリLVの充電は、いずれも有効である。
【0070】
高電圧バッテリHVの充電機能が実施されていないとき、R10とR20は閉じられ、高電圧バッテリHVの端子における第3高電圧V4は、コンバータDCDC20と絶縁DC-DCコンバータLLCとの間に配置されたインターフェース端子に対して供給され、これによりV1=V4となる。さらに2方向スイッチQは、スイッチQBのスイッチングにより動作し、これにより電流は、コンバータDCDC20と絶縁DC-DCコンバータLLCとの間に配置されたインターフェース端子から、整流器RDとコンバータDCDC20との間に配置されたインターフェース端子へ向かう。この場合、コンバータDCDC20は高圧モードで動作する。
【0071】
したがって高電圧バッテリHVの端子における第3高電圧V4は、コンバータDCDC20を経由して、整流器RDとコンバータDCDC20との間に配置されたインターフェース端子へ向かう。これは入力電圧V2に対応する。低電圧バッテリLVに対して電力供給する補助DC-DCコンバータDCDC10は、同じ端子に接続されている。1実施形態において、コンバータDCDC20は、高電圧バッテリHVが供給する電圧を下げ、これによりV2<V4となる。1実施形態において、コンバータDCDC20は、コンバータDCDC10に対して安定電圧を供給するプリレギュレータとして動作する。コンバータDCDC10は第2低電圧V3を供給して低電圧バッテリLVに対して電力供給する。換言するとコンバータDCDC20は可変デューティサイクルで動作し、補助DC-DCコンバータDCDC10は例えば50%の一定デューティサイクルで動作する。
【0072】
したがって図3の例のように、低電圧バッテリLVは高電圧バッテリHVが供給する電圧によって充電される。
【0073】
本発明の実装において、DCコンバータは昇圧タイプまたは昇降圧タイプであり、シングルセルタイプまたは複数セルコンバータであり、インターリーブであってもなくてもよく、リバーシブルであってもなくてもよい。第2実施形態において、コンバータDCDC20は例えば昇降圧タイプである。DCコンバータは絶縁されていなくともよい。
【0074】
絶縁コンバータは、上述のものでなくともよい。例えば絶縁コンバータにおいて、主回路および/または副回路は複数のコイルを備えてもよい。絶縁コンバータは、例えばPCT/EP2016/074641が記載しているものと同様のものであってもよい。
図1
図2
図3
図4